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Page 1 Page 2 (65) 情報の生産と探索 情報の生産と探索 はじめに 一
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Issue Date
Type
情報の生産と探索
荒井, 一博
一橋論叢, 90(2): 209-225
1983-08-01
Departmental Bulletin Paper
Text Version publisher
URL
http://doi.org/10.15057/11412
Right
Hitotsubashi University Repository
(65)憎報の生産と探索
情報の生産と探索
荒 井
内ではあるが、このような情報の販売︵生産︶者の行動
価椿と質の散らぱりが存在し、また各経済主体もその情
しかしながら、現実の経済においては無視し得ない程の
財の価樒と質に関する完全憎報の仮定が採用されていた。
伝統的な新古典派経済学の完全競争モデルにおいては、
るのであって、備報産業は広い分野にわたる圭言えよう。
通業者も財そのものとともに情報を生産かつ販売してい
場に関する情報を提供する商社等である。しかし一般流
財の価格あるいは質の検査緒果を報告する雑誌、海外市
で現実に存在するものは、不動産仲介者、職業紹介所、
を分析してみたい。惰報の生産・販売者として純粋な形
報を収集するために費用を負担しなけれぱならないこと
はじめに
も事実である。
ックス等により、如何に消費者情報を提供するかという、
更に最近のいわゆるニューメディアの発達は、ビデオテ
本論に密接に関連した問題を提起している。
スティグラー︵岩9︶の先駆的な論文以来、消費者の
情報探索行動を明示的にモデル化した研究は多数にのぽ
^1︶
るが、情報の需要者に情報を提供する情報販売者ないし
のような枠組を設定してみたい。まず消費者の価格探索
以下では、情報産業を分析するための第一歩として次
活動を考え、そこから個人と経済全体の情報に対する需
は情報産業の行動を明示的に分析した研究は皆無に等し
いと言えよう。本論においては、かなり限定された枠組
209
博
要曲線を導出する。次に一つの情報の生産者ないしは販
報を持ち合せていないが、この分布関数に関して完全情
情報産業が形成されるか、情報の産出は如何に決定され
このような枠組の中で、われわれは如何なる状況の下で
する。
なるものとする。ここでo︵・︶は可測関数であると仮定
は、一つの価格を観察する,ことにo︵良︶の費用が必要と
報を有し、もし価楕を独自に探索して財を購入する場合
るか等の問題に答えることが出来る。最後に多少広い枠
傭報の生産者・販売者に関しては後にみるが、消費者
売者を想定する。これは独占者でも公的機関でもよい。
組の中でこのような憎報生産の経済的意義を考察する。
との関連では、価格情報を入手し、それにその情報の個樒
階においては、前者の特定の価格とその情報の価椿︵手
その場所とからなるが、情報という商品の﹁陳列﹂の段
報の販売者が持っている価格惰報は、ある特定の価格と
︵手数料︶を付加して販売することがその機能となる。情
︵1︶ 以下で使用される逐次探索︵器︷昌巨巴器胃9︶の理
論に関しては、峯oO巴−︵6No︶、勾O艘8巨5︵宅ご︶、■甘・
勺冒昌彗創峯oo顯=︵sぎ︶等を参照。固定標本数探索
︵コ曽亭竃昌せoム塞ms﹃o−一︶に関してはω匡o〇一弩︵6s︶を
数料︶のみを消費者に示し、その特定の価格の場所は、
参照。田H葦宵∋彗︵−湯o︶、ω巴毛彗o津屯岸N︵6NN︶、
9彗彗O■9彗O︵6o.N︶には﹁憎報産業﹂が補助的に導
消費者がその惜報を購入する場合にのみその消費者に明
入されている。しかし憎報の質と個格は外生的に与えられ
ているため憎報産業そのものの分析は欠落している。
らかにするものと仮定する。各消費者は、これら二つの
し、その財の価格ρは零から無隈大の間に、︵・︶の分布
わすことにする。各消費者は同一の財を一単位だけ購入
零から一の間の数の集合1によって消費者の集合を表
てから、その情報を購入するか、それとも自分で直接財
費用なしに観察出来るので、各自これらの価樒を観察し
消費者は情報の販売者が提供するこれら二つの価格を
料︶とを費用なしに観察することができると仮定しよう。
価楕、つまり財の特定の価樒とその情報の価格︵手数
関数︵㌧︵・︶の密度関数︶で分布しているものと仮定する。
の価格を探索するかを決定する。この決定は消費者の総
消費者
各消費者§Hは、各価楕の入手場所に関しては全く憎
二
第2号(66)
一橋論叢 第90巻
210
(67)憎報の生産と探索
を遂次探索︵器︷竃ま一器胃oεする場合には留保価椅
消費者が総期待費用を最小化するよう独自に財の価格
期待費用を最小化するように行われると仮定しよう。
となり、探索の費用が大きい消費者には高い留保価楕が
軋州目ミo︵良︶H︵句︵州目︶Vo ︵u︶
している。ωをo︵ミ︶で徴分すると
惰報の販売者が陳列する財のある特定の価格ρとその
対応することになる。
すなわち消費者αの留保価格を㌘とすると、αはある時
︵篶器;昔一昌雫一8︶が一っ存在することが知られている。
点で観察した価格がゲ以下の時には探索を止めその価樒
はαの探索の最小期待費用であるから州畠1㎏はこの情
構報の価格rとを観察した消費者αを考えてみよう。ζ
十﹃ならば、αはこの情報を購入し、独自の探索はしな
よりも小さくない、すなわち州目−おv﹃または州。v、
報の価値を表わすことになる。もしこの情報の価値がγ
で財を購入し、♂より高い時には探索を統けるのである。
︵H︶
また ゲ は 探 索 の 最 小 期 待 費 用 で あ り 、 次 式 を 満 た す 。
誉一∴、一了一ξ一
1
いであろう。逆に州。ーおく﹃または州百くも十﹃ならぱ、
αはこの情報を購入せず、独自に探索をするであろう。
以上の考察からわれわれは消費者αの情報に対する需要
曲線を導いたことがわかる。図1はそれを図にしたもの
である。縦軸には情報の価格がとってあり、横軸にはそ
の需要量がとってある。便宜上、惜報の需要量は購入す
る場含に1、購入しない場合に0とする。
情報の販売者がその場所を知っている価格ρは、憎報
の質と解釈できる。ρが低けれぱ低い程、情報の質はよ
いことになる。さて図1から明らかなように情報需要は
211
ここで左辺は探索の限界費用を、右辺は限界便益を表わ
図1
第2号 (68)
第90巻
一橋論叢
者の探索費用が大きい程、惜報に対する需要は大きくな
らかである。また②より、γとρが一定の下では、消費
情報の質がよくなる程、情報の需要は増加することは明
︵§も︶が成立するので、γの任意の単調増加数列に対し
れる。例えぱ、㈹によって、ごく§に対しb︵ごら︶U由
の需要曲線と同様な性質を有することは容易に確めら
して得られた情報に対する総需要曲線は、先にみた個人
である。ここでμはルベーグ測度を表わす。このように
る。ロスチャイルドとスティヅグリヅツ︵−署o︶の意味
石は縮小区間列となり、従ってb︵﹃ら︶はγの減少関数
情報価格の減少関数である。憎報価格が一定の下では、
で価格分布の危険が増大すると苧は小さくなることが知
となる。
のように、本論では情報の生産者は一つだけ存在すると
さて次に惰報の生産者・販売者を考えてみよう。前述
三 情報の生産者
られているので、そのような状況の下では他の事情が一
定ならぱ憎報需要は減少する。
によって次のような集合を定義する。
仮定する。それは私的利潤を最大化する独占者でもよい
次に経済全体の情報需要を考えてみよう。由︵3お︶∩ト
■︵、も︶は、価格r、質の水準ρの惰報を購入する消費
し、社会的な厚生を最大化する公的機関としてもよい。
出︵↓ら︶11︷§−州宮−おV二 ︵ω︶
者の集合である。容易に
前節の消費者行動の分析においては逐次的な探索が仮
である。b︵﹃ら︶によって、質の水準がρの情報に対す
であることを示すことができるので具、も︶は可測集合
︵令︶
そこでわれわれは固定費用を有する探索にも適用できる
定費用が存在すると仮定する方が現実に近いといえよう。
う。しかしながら情報の生産者においては、かなりの固
費用が無視されうる程小さい時に妥当性をもつといえよ
定された。この仮定は、消費者の探索行動のように圃定
る価格rにおける総需要をあらわすことにする。すると
固定標本数探索︵穿&−墨昌せ?色塞器彗oヶ︶が情報の生
・一ミ一⊥蓋三員一よ∼・二一募一一
b︵﹃ら︶⋮、冒︵﹃ら︶] ︵伽︶
212
(69)情報の生産と探索
情報の生産者も消費者と同様財価楕の分布関数向︵・︶
産者によって採用されるものと仮定する。
詐量を使うと無作為抽出による情報の質の密度関数は
Dが微分可能な関数とすると、一階の条件は、
■
冒簑﹃b︵、ら︶ ︵N︶
合、その情報の価樒は次のように決められる。
として決定されると、私的利潤を最大化する独占者の場
ひとたび惜報の質が、情報生産者の観察した最低価格
によって表わされる。
§ロー、︵、︶]自、く9︶ ︵Φ︶
を知っているものとする。さらにこの主体は期待利潤な
いしは社会的厚生め期待値を最大化するよう仮定される
ので、消費者の需要曲線の形状も知っていなけれぱなら
ない。
肌によって情報の生産者が決定する標本数とする。
蛯︵さ︶はその費用関数を表わすものとする。ここでq︵・︶
となる。ただしやはb︵﹃ら︶の最初の変数に関する偏
b︵・ら︶十・b﹃︵﹃ら︶1−o ︵o。︶
であるとする。情報を消費者に伝達するには費用が伴う
微分を表わす。もちろんこのようにして決定される憎報
は固定費用を含むが、さv−の領域においては増加関数
が、これは固定費用の中に合まれているものとする。従
の価格、は、情報の質”に依存している。それを﹃Q︶
によって表わすことにしよう。以上のような情報価格の
って情報の伝達費用は、同一情報の伝達される量とは独
立である︵隈界的伝達費用が零︶という仮定を採用する
それでは標本数犯で表わされる、情報の生産者の投入
決定方法を図示したのが図2である。
さて前節において、情報の生産者はその観察した価楕
ことになる。
を消費者に提示するとした。その価格が情報の質になる
喜一−ト島・言一ξお一さ一;弩−さ一ポ
を考慮すると、標本数が冊の場合の独占者の期待利潤は
る時、その最大収入は、スも︶b︵﹃9︶ら︶であるから、㈹
量は如何に決定されるのであろうか。情報の質がρであ
ことも述べた。情報の質がよけれぱよい程その情報に対
する需要は大きいので、情報の生産者は固定標本数探索
によって得られた価椿のうち最低のものを提示すること
によって利潤を最大化することができる。そこで順序統
213
第2号(70)
第90巻
一橋論叢
lq︵さ︶ ︵o︶
となる。独占者は側式を最大化するよう標本数πを決定
ようにみなして側またはωが一つの極大値しか持たない
負の実数とみなすと計算が容易になる。特に、肌をその
肌は非負の整数であるが、ここでの分析においては非
を得る。
.︵;︶
目§一予き一二宮一丁さ一一畠さ一亨誉一
すと、側に都分穣分法を適用することによって、
する。由︵も︶H﹃︵お︶b︵・Q︶ら︶によって最大収入を表わ
図2
時には、最適な標本数はその種大値に対応する実数値に
最も近い二つの整数のうちのいずれかになり、論理の大
勢に影響を与えないからである。
そこで①①を他で微分して一階の条件を求めると
︵−︶
司き一∴君一丁さ一一畠一冨一丁、§一さ一魯・
1鉋、︵さ︶H〇
が得られる。 二階の条件は、
べ一予ト冒一丁さ一一、口冬−勺§一固さ一鵯お
1qミ︵さ︶︿o − ︵ε
によって表わされる。ωは果して満たされているだろう
か。射、︵お︶を計算すると、
5,Q︶”﹃、︵お︶b︵﹃︵お︶一も︶
十﹃9︶[b﹃︵﹃︵お︶も︶﹃、Q︶十b埴︵﹃︵も︶も︶]
11﹃、︵も︶□b︵﹃︵博︶も︶十﹃︵お︶b﹃︵﹃Q︶一も︶]
十﹃︵お︶b七︵ス唱︶一も︶
11﹃Q︶b唱︵﹃︵も︶一お︶
︿o ︵ご︶
となる。ただしここで、b噌はb︵﹃︵お︶一お︶の二番目の
214
(71)憎報の生産と探索
号に移る過程では㈱が使われている。さらに最後の不等
変数による偏徴分を表わす。また二番目から三番目の等
号に到る過程では、情報に対する総需要は、情報の質が
悪化︵ρが増加︶する程減少するという性質が使われて
いる。蝸をωに適用してみると、二階の条件は、全ての
犯に対しq、、︵さ︶Voでさえあれぱ満たされているが、
qミ︵さ︶Voは必ずしも必要ではない。そこでわれわれは
不等式ωが全ての犯について成立しているものとしよう。
それはぎ︵.︶が凹関数であり、極大値が一つしか存在
しないことも意味する。
次に情報の生産者が公的機関で、社会の厚生を最犬化
するよう行動する場合を簡単にみてみよう。まず
さ一←昌・一ミ一ミ
と定義しよう。ミ︵、︶は情報の質がρの時の情報の社会
的な総価値である。b︵さも︶はρの減少関数であるから
ミ、︵お︶︿oである。この公的機関の情報提供によって得
られる社会的総厚生の期待値を∼︵s︶と表わすと、独
占の場合と同様な方法によって、目的関数は、
冬一∴筍さ一ら−さ一一,、さ一†§
または
芸Y暮一二畠一丁ξ一一茗さ一†§
︵宝︶
︵ご︶
であり、最大化のための一階の条件は
︵ま︶
呉予ト筥ローξ一曽口魯−さ一一一ミ婁
Iq、︵事︶1I〇
である。 二階の条件は
玉予ト、ローξ一畠口冬−さ一一一、さ一魯
で、全ての侃に対し蛯、、︵さ︶Voならぱ満たされることも
−蛯、、︵さ︶︿o ︵旨︶
明らかである。ここでは憎報の限界的伝達費用が零であ
ることに対応して、情報の価椿は零とされている。
独占の場合でも、公的機関の場合でも、二階の条件が
満たされていれぱ一階の条件を満たすような標本数がい
つも最適であるわけではない。もし期待利潤ないしは社
215
一橋論叢 第90巻 第2号 (72)
会的厚生の期待値が負になれぱ、情報の生産は行われな
いであろう。従って、どのような状況の下において情報
さくなり、⑨およぴωの第二項は小さくなる。つまり情
報の生産は引き合うのである。この状況は、結局情報産
の集団消費性という性質のために、大きな市場程、情報
業が対象とする市場が大きいということであって、情報
生産は有利になるのである。
の生産が行われるかと問うことは自然である。
われわれの枠組の中でこの澗題に答えることは容易で
て消費者は高い留保価楕を設定することになり、これは
探索の隈界便益が、限界費用に比して小さくなる。従っ
スティヅグリヅツの意味で、探索の危険が減少すると、
価格の散りばりが小さい場合である。ロスチャイルドと
第三番目の状況は、直観に多少反するかもしれないが
ある。主要な答は三つある。まず第一に、消費者の探索
費用が大きい場合である。この場合には、情報に対する
需要が大きいため⑨およびωの第一項が大きく、各々の
会的厚生の期待値は正になる。従って憎報の生産が引き
一階の条件を満たす犯に対応する期待利潤ないしは、杜
合うのである。それではどのような要因が探索費用を増
結局惜報に対する需要を増加させるのである。第一の場
通常の財生産において、独占は︵例えば眼界費用価格
る。
付けをする︶公益事業よりも少ない量の財を供給し、高
四情報の生産者と情報の質
合と同様、この場合にも側および㈹の第一項が大きくな
大させるのであろうか。重要な要因としては、所得の増
加あるいは探索者の就業による機会費用の増加を挙げる
ことができる。従って、大雑把に言って、情報の生産は、
所得が増加するにつれて採算のとれる産業になるのであ
二番目の状況としては、消費者ないしは探索者の数が
い価樒をつけるということがいえる。本節では、類似の
る。
大きい場合である。われわれのモデルでは測度空間の消
を最大化する公的機関よりも質の劣る情報を生産する確
議論として、私的利潤を最大化する独占は、社会的厚生
費者集合を考えているので、情報生産における費用関数
q︵・︶は、消費者一人当りの費用に対応している。従って、
対象とする消費者の数が大きけれぱ大きい程、o︵.︶は小
216
(73)情報の生産と探索
と公的機関の最適標本数は、それぞれωと㈹によって与
るものと仮定し、肌を非負の実数のように取扱う。独占
前節のように、われわれは二階の条件が満足されてい
ばよい。
最適な標本数が公的機関のそれよりも小さいことを示せ
率が高いことを示す。これを明らかにするには、独占の
大化するよう情報価格を決定するとβ①より、︵﹃Q︶一b︶
ミ3忌と表わすことにしてみよう。独占者が利潤を最
ち、価椿γに対応する独占者の収入をさし引いた部分を
質の水準がρである惰報の社会的総価値ミ︵憎︶のう
け移動することによって得られる。
質の水準がハである情報の総需要を下方に︵害−誉︶だ
であるから、質の水準がμである情報に対する総需要は、
してみよう。つまり仰に対する需要が〃に対するそれの
対して独占者が↓︵嘗︶−︵§1凄︶の価樒を付けたと仮定
も︶V息︵も︶である。そこで、質の水準がμである情報に
要曲線が通常仮定されるように右下りである限り、﹁︵3
1−呉お︶であるが、それ以外の情報価格においては、需
えられるが、ぎ、︵・︶と∼、︵・︶は㈲と㈹により犯の減少
関数であるので、次の不等式を証明すれぱよい。
さ一−姜∴昌一丁さ一一畠一冬−§一
×[ミ、Q︶1馬、Q︶]包おVo ︵Hoo︶
これは明らかに
︵博−嘗︶に相当する下方移動であるため、かりにμの独
占価格も﹃9一︶からQ旧−書︶だけ低く付けられると仮
ミ、Q︶ーお、︵も︶︿o ︵岩︶
のときに成立する。そこで
定してみよう。すると、総需要曲線の下方平行移動の関
\︵﹃︵§︶−Q岬−誉︶ら旧︶︿ぺ︵﹃Q一︶も一︶ ︵曽︶
係から
息︵お︶⋮ミ︵お︶1昂Q︶ ︵8︶
と定義して、息︵博︶がρの減少関数であることを示そう。
誉く§なる二つの価楕を考えてみよう。
報の質がμであるとき独占者の収入を最大化するので
であることがわかる︵図3参照︶。ところが、﹃9旧︶は情
ー1由塞、州昌1§V﹃十誉−博−
ぺ︵﹃Q帖︶一§︶︿、︵﹃Q一︶−Q︸1誉︶ら帖︶ ︵s︶
■︵﹃ら−︶11︷ 蓋 、 州 目 − 嘗 V ユ
1−■︵﹃十§1鳶一書︶
21?
第2号 (74)
第90巻
一橋論叢
となる。かくしてわれわれは息9︶が減少関数であるこ
とを示した。
五 探索費用と情報の質
本節では消費者の探索費用が生産される情報の質とど
のように関わっているかをみることにしよう。結論から
先に述ぺると、消費者の探索費用が高い程、生産される
情報の質がよくなることが通常であることを示すことが
できる。この性質は、社会的厚生を最大化する公的機関
について証明することが容易なので、それを最初に行う
ことにする。
第三節でみたように、阻、、︵事︶Voであれぱ︵これは必
、︵、ぐ旧︶一§︶︿ぺ︵﹃Q−︶ら−︶ ︵8︶
となる。帥と㈲より
移動することを示せぱ、公的機関の最適な標本数が増加
れは消費者の探索費用の増加によって∼、︵・︶が上方に
であるから、∼、︵・︶は減少関数となる。従って、われわ
ずしも必要ではないが︶、公的機関の目的関数は凹関数
が得られる。ここで帥の定義にもどって息9一︶ーもQ帖︶
Vo
することを示したことになる。
〆ハ)一(少一伽〕
をみると、㈲の関係を使うことによって、
地D
ところで、ω式の最大化のための一階の条件は、㈹式一
γ(γ(庇)一(加一少),逸〕
息9一︶1息9旧︶n︷ミQ・︶−民9︶︸1︷ミ9︶1昂ε︶−
γ〔イカ1〕、カ〕
と少し異なった形で表わすこともできる。すなわち
図3
”、︵﹃⑤−︶ら−︶1、︵﹃Q冊︶一曽︶
■
218
(75)憎報の生産と探索
芸一∴冒さ一㌢一丁さ一一茗.ざ一事
−q、︵さ︶11o
であるoここで
①
も9さ︶H辻冒[H−貝お︶]畠、ざ︶一
とおこう。 忌︵§; ︶ に は 次 の よ う な 性 質 が あ る 。
ト畠ξさ一†ζヨ音−き一一自1く一葦
&さ
亀
H−H
︵塞︶
︵畠︶
^1︶
となるような、︵さ︶が存在する。
さて消費者の探索費用の増加の影響を考えるために、
その増加によって情報に対する総需要曲線全体が厳密に
上方に移動した場合を想定してみよう。総需要曲線の一
部のみが上方に移動し、他の部分が以前と同じ場合には、
以下の議論に.おいて必ずしも厳密な不等号が成立しない。
個格ρの下で総需要曲線が上方に移動することによって、
情報の総価値がミQ︶からミ︵お︶十§︵お︶に増加するも
のとしよう。
警く§なる二つの価格︵情報の質︶。の下における
に対する需要曲線は﹄■によって表わされ、μに対する
§︵誉︶と§Q冊︶とを考えてみよう。図4において、抑
それは﹄Qによって表わされる。μとμの差異によって、
”o
それぞれの需要曲線を表わすグラフの原点は0ーとαにな
また忘︵§さ︶は
念9事︶■ロー、Q︶]皇1くQ︶[一十己ooq︵一−、Q︶︶]
っており、前にみたように01とαの間の距離は凄−凄
︵塞︶
と書き変えることもできる。[−−、Q︶]畠,寸︵も︶Voで、
上方に移動すると、ハのそれは﹄、由、に、μのそれは
である。消費者の探索費席の増加によって総需要曲線が
従って1から−8に単調に減少してゆくので、各肌に対
㌧、Q、。になる。§︵誉︶は四角形﹄bb、ト、の面積によって
[H+己ooq︵H−句︵、︶︶]はρが零から無隈大に変化するに
して
表わされ、§Q胆︶は四角形﹄QQ、㌧、のそれによって表わ
される。従ってo︿εQ冊︶︿§Q一︶であり、§Q︶は減少
おく唱、︵き︶ならぱも︵§さ︶Vo
噌V唱、︵さ︶ならば念9一3︶︿o
︵ミ︶
219
第2号 (76)
第90巻
一橋論叢
畠
§⑤︶忘︵きさ︶魯
関数であることがわかる。
よび吻の関係を使い、最後の等式には㈲を使った。㈲は
ただし右の不等式を得るには、S︵も︶Vo,S,9︶︿o、お
明はおわった。
以上においては公的機関が情報を生産するものと仮定
新しい限界収入曲線が以前のものと比べてかなり複雑な
費用の増加によって情報に対する需要曲線が変化すると、
程容易ではないようであみ。というのは、消費者の探索
したが、私的利潤を追求する独占の場合にも同様な結果
ト冒一さ一・ξ一峯曇・ト宮ささき
が得られるであろうか。この場合の一般的な証明はそれ
みよう。
を証明すれぱよい、 そこで㈱式の左辺の一部を計算して
︵轟︶
には、
さて本節の最初に触れたように、消費者の探索費用の
”o ︵s︶
−ξ讐§ト昌ξ喜
・ξ、一さ一一汽一ξき
・ξ、一さ一一ト皇、畠ぺ一ミ喜
∴、、、ξ一ξ曇ニポ・婁ミ一魯
ト
明らかに㈱が成立することを示しており、われわれの証
亙
増加によって∼、︵・︶が上方に移動することを示すため
図4
220
(η)情報の生産と探索
ある。
される情報の質が向上する確率が高くなると言えそうで
独占の場合にも、消費者の探索費用の増加によって生産
入曲線を使って同様な証明を行うことができる。従って、
公的機関の場合の議論における需要曲線の代りに隈界収
い限界収入曲線が以前のものの右上方に移動する場合は、
形になる可能性があるからである。しかしながら、新し
われわれは、情報の生産者として私的な期待利潤を最
合的な状況を挙げることが出来る。
販売者の間も探索しなけれぱならないという、探索が複
空間的に離れている場合があり、消費者は情報の生産者、
る。二番目の理由としては、陳列される情報が現実には
全に同一な財に関するものでないことが一つの理由であ
故であろうか。まず第一に、実際に提供される情報が完
しかし現実には一部競争的であるようにみえるのは何
憎報の生産の方が質の高い情報が供給されることを明ら
的機関とを想定した。第四節の考察は、公的機関による
大化する独占と、社会的な厚生の期待値を最大化する公
︵ユ︶ 正確に言うと、⑫司が成立するためには、員、︶Voの条
件が必要である。呉、︶Voでも議諭の本質は不変であるが、
、、︶1Ioの場合も考慮しなけれぱならないので、説明に多
少余分の手間がか・かる。
かにした。従ウて情報の生産は公的機関による方が望ま
する。従って情報需要者一人当りの情報生産費は、需要
は何回使用しても消耗しない、つまり集団消費性が成立
当な枠組であろうか。情報という財の性質上、ある情報
せいぜい一つだけ存在するものとした。果してこれは妥
前節までの考察において、われわれは情報の生産者が、
れ、限界的伝達費用が零の場合には、情報の価格も零と
慮しておく必要がある。情報が公的機関によって生産さ
用が零であると仮定されたが、それが正である場合も考
またわれわれの考察においては、情報の限界的伝達費
新たに生じてくる。
よって賄われなければならなくなり、その負担の問題が
しいのであるが、その場合には情報の生産費用は租税に
者の数が大きくなれぱなるほど小さくなる。このため情
するのがよいが、隈界的伝達費用が正である場合は、そ
大 消費者情報と情報生産の意義
報産業が長期的に競争的になるとは考えにくい。
221
一橘論叢 第90巻 第2号 (78)
れを情報の需要者に負担させることが効率的な情報の生
採算がとれない場合である。このような状態は、かなり
回線使用料︶を消費者負担にする予定であることは理に
とされるピデオテックスが情報の隈界的伝達費用︵電話
︵情報の隈界費用価楕付け︶。この意味で、将来普及する
探索費用が零である消費者の数が小さくなるに従って、
から外部経済を受けていることになる。しかしながら、
正の探索費用を有する消費者は、探索費用のない消費者
消費者の情報が完全である場合である。このような時、
の消費者の探索費用が零である場合、あるいはかなりの
適っている。
競争価楮より高い価楕でも採算のとれる売り手が出現し、
産に結ぴつくことは、通常の経済理論の教える所である
さて、純粋に同一の財を販売する市場において、情報
消費者が少数または皆無であっても、情報産業が廉価ま
この外都性は減少する。このことは、たとえ完全情報の
い枠組の中で考察してみることにしよう。
たは無料で消費者情報を提供できるような制度を設定し
生産がどのような意義を持つか、前節までよりも多小広
情報産業が存在せず、消費者の情報が不完全な場合に
なる可能性が高いことを意味している。
ておくと、市場価格は競争価格またはそれに近い価格に
サロヅプとスティヅグリッツによると、全ての消費者
は、市場は独占的競争状態になる。全ての売り手が同一
でU字型の平均費用曲線を有し、参入も自由であるとす
つまり完全備報の消費者が最低の価楮でしか購入しない
すると、市場価椿は最低の競争価楕になることがある。
いとしても、他の消費者の探索費用が零で完全情報を有
は、留保価楕そのものである。これは全ての消費者の探
あるとすると、ただ一つの一物一価に対応する均衡価椿
失わないからである。全ての消費者の留保価格が同一で
、的均衡は生起し得ない。というのは、ある売り手が価格
を徴量に上げても、探索費用が正であるため顧客を全く
の探索費用が正であるとき、ただ一つの価格を伴う競争
^1︺
ると、市場価格は平均費用曲線の底に対応する価楕︵競
争価椿︶以上の値をとる。
ため、それより高い価楕を設定する売り手は不完全情報
索費用がかなり大きいときに生じる。この場合、ある企
一都の消費者の探索費用が正で完全な惰報が得られな
の消費者の一部のみを引きつけることができ、それでは
222
(79)憎報の生産と探索
増加させようとするためには、探索費用が大きいので、
業がその価格を下げ、消費者の探索を誘発し、販売量を
不安定化する傾向がある。
くの確率を与えるような密度関数になる。従って価格は
留保価格と非負の利潤が得られる最低価椅の両極端に多
のモデルにおいて情報生産は如何なる意味を持つのであ
スティッグリッツとサロヅプのモデルおよびバリァン
利潤が負になる程価格を下げなけれぱならず、結局引き
合わなくなるのである。その他市場の条件によって、均
衡は価椿分布になる場合、価格が競争価格を下限として
値する。サロツプとスティッグリヅフのモデルは、価格
^2︶
しては、前述のものの他にバリアンによる分析が注目に
バリアンモデルの比較静学においても、完全情報の消費
廉価な情報の提供によってかなり克服しうるものである。
離あるいはその変動は情報の不完全性に起因しており、
ろうか。明らかに両モデルにおける市場価格の競争価楕
の空間的分布を示しており、長期的に同一の均衡が維持
者の割合が増加する程、不完全情報の消費者が支払う平
上下に運動する場合等がある。
されるとは考えにくいが、バリアンのそれは、時間的価
均価格が減少することがわかり、このことは、われわれ
︵または利潤零となる価格のうち最低のもの︶からの乖
格分布ともいうべき状況を考察している。
の考察に一致する結果であるといえる。
正の探索費用または不完全情報による価格の分布に関
バリアンのモデルにおいては、各売り手が各期の期待
は各期に最低の価格で購入し、後者は、偶然に出会った
は、完全情報の消費者と無情報のそれとからなり、前者
行われる安売りと解釈することもできる。消費者の集合
戦略を採用する。この戦略は、現実の経済において時々
例えぱ公的機関による情報の生産は如何なる利点を有す
場合もある。そこで、企業による広告活動と比鮫して、
現実の情報入手は売り手による積極的な広告活動による
た惰報を利用するかのいずれかの仮定が採用されたが、
情報を手に入れるか、あるいは情報産業において得られ
以上の考察においては、消費者は探索によって独自に
価椿で購入する。売り手は期待利潤を最大化するように
るかをみることにしよう。
利潤を最大化するよう、意識的に価格を変動させる混合
価格の確率密度関数を決定するのであるが、均衡戦略は
223
一橋論叢 第90巻 第2号 (80)
広告にも種々の形態があり、店頭における小規模な広
告から、主要なマスコミを利用し殆ど全ての消費者に伝
達されるような大規模なものまで幾つかの規模形態を考
えることができる。ある市場の全ての消費者に対して伝
達されるような価格広告を想定してみよう。全ての売り
手が同一の価椿を広告すると、これは均衡ではありえな
い。なぜならある一企業が徴量だけ価椿を引き下げると
全ての消費者を引き付けることができるからである。か
︵1︶ ω巴名︵6き︶、uo巴毫彗Ooo己智S︵5N、︶、ω匡oq奉H
類の消費者が想定されており、売り手の平均費用曲線は同
︵6遣︶参照。これらのモデルでは探索費用の異なる二種
︵2︶ <胃一彗︵−湯o︶参照。このモデルは平均費用曲線が減
一でU字型をしている。
少関数である点において、サロップとスティッグリヅツの
︵3︶ ︸暮冨易︵宅ミ︶参照。
ものと異なる仮定を採用している。
ると仮定されている︶の平均費用の最低点まで下げられ、
る特長を有し、時代の要請にも適っていることがわかる。
以上の考察により、構報産業による情報生産が種々な
七 結
各売り手は広告費を回収できないという逆理に到達する。
しており、それはまた生産される情報の質をも良化させ
所得あるいは就業率の増加は、情報産業の存立を可能に
くして価格は各売り手︵ここでは同一の費用曲線を有す
しかしバターズのモデルのように売り手の広告が一部
を広告した売り手は多くの消費者を引き付けるが、高価
は、市場において価格分布が生じる。このとき、低価格
な機関によるよりも良質の情報の提供される可能性が高
る。情報の生産は公的機関によってなされた方が、私的
最後に二、三の留意点を述べておこう。まず、われわ
け、広告による猪報提供が持つ問題も回避されうる。
三者による情報の生産と提供は、広告の逆理を回避しう
れの考察は価格情報について行われたが、同様な分析は
く、それは市場価椿を競争価椿︵最低価椿︶に一層近づ
るだけでなく、中規模広告の場合には生ずるであろう価
財の質についても行われうると考えられる。次に財の売
格を広告した売り手は少数の消費者を引き付けるという、
楕分布を競争価格に近づける働きもする。
他のモデルと類似の結果となる。従って、公的機関等第
^3︶
の消費者にある確率で伝達されるような中規模な場合に
劃
回口
2泌
(81)憎報の生産と探索
り手は無数に存在すると仮定されたが、これは分析と説
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︵一橘犬学助教授︶
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勾9テ竃=−9 昌−一︵老Nω︶一雲o︹−o−蜆 9峯曽﹃斥90﹃oq嘗目守脾饒o昌
明を容易にするための便宜上の仮定であって、議論の本
質は売り手の数がほんの数個であっても成立する。また
同様に消費者の数も無限大と仮定されたが、これも分析
の便宜をはかるためであって、その数が有限であっても
結論に変化は生じない。
参考文献
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