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25 産直品購入におけるチャネルイメージ形成に関する一考察

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25 産直品購入におけるチャネルイメージ形成に関する一考察
【日本都市学会年報
VOL.43
2010年5月】
査読付き論文
25
産直品購入におけるチャネルイメージ形成に関する一考察
―直売所ユーザー調査から「産直品」購入の実態・評価・期待をみる―
A Study of Formation of Channel Images in Direct Marketing Product Purchase:
the Actual Condition / Evaluation / Expectation of “Direct Marketing Product” Purchase
from the Analysis of Farmers Market User Survey
福島工業高等専門学校(JMR生活総合研究所)
松
本
行
真
に、商いの場所と住まう場所が近接しており、
「相対
1.はじめに
1)
直売所 ビジネスが盛んである。直売所はその周
する」もう少しいえば、
「日常のネットワークに含ま
辺の農家が売店に農産物を販売するビジネスの形態
れている」という意味で生産と流通・販売の相互関
をとっている。
生産者である農家側にとってみれば、
係が成り立っていると考えられる 4)。この関係とい
JA 等の(品質・形状・出荷ロット数等への様々な制
う視点を利用者側に向けると、直売所を利用する人
約が存在する)中間流通の関わりが必要なく、独自
たちは二つのタイプになる。一つは「そこ(やその
の流通ルートを確保できるメリットがあげられる。
周辺)に住まう人たち」であり、もう一つは「来街
一方の利用者側では、色や形等が若干(大手流通で
者」
といえる。
あえてこうした図式にあてはめると、
購入するものより)劣っていても、安い、新鮮であ
前者は生産―流通・販売―消費の(相互作用、相互)
るというメリットが存在する。
関係の中で消費する人であり、後者は主に流通・販
これらのメリットがあるものの、どちらかといえ
売→消費の一方向において消費する人と考えられる。
ば散発的・単発的な取組が多かったといえる直売所
直売所をめぐる上記の関係が形成される中で、セ
も、道の駅での展開や、食品への安心・安全意識の
ブン・アンド・アイ等の大手資本が「直売所ビジネ
高まりも相まって、数千億円規模の市場が形成され
ス」の展開をすすめている。東北地方に目を向ける
てきている。市場の大きさには諸説あるが、無人販
と、郡山市に拠点を持つセブン・アンド・アイ傘下
売所等を含んだ全国の直売所数は約 13,500 カ所
のヨークベニマルが全店に産直コーナーを設置し、
(2005 年『農林業センサス』
)であり、JA 総合研究
イオングループのイオンスーパーセンター
(盛岡市)
所によれば、
その中で常設店舗は 5,000 カ所程度で、
は産直館を開設し、店舗内コーナーに独自の内装や
2)
年間総売上高が5~6千億円と推定している 。規
レジを施すことにより道の駅を連想させる空間をつ
模の拡大にはいくつかの要因が考えられる。一つは
くっている 5)。こうした展開は、利用者のニーズを
先述した食品への安心・安全意識の高まりによる、
捉えてそれを満足させようとする、大手資本のマス
利用者側の新鮮で安く安全な品物購入に対するニー
規模によるシステマティックな展開という意味での
ズの拡大であり、また、その場所でしか購入できな
「マーケティングの論理」で行っている。ここでも
い商品に対するニーズの高まりである。
また、零細企業の商店街と大手資本の郊外型店舗の
利用者側のニーズの高まりを受けて、販売側の取
ような対立になっていくのだろうか 6)。
組姿勢にも変化が見られる。例えば、各地の JA の指
ここに二重の問題が複雑に絡み合っていると筆者
導等で生産者(農家)による販売の組織化や集約化
は考える。一つは、地場零細企業同士による競争の
が進んだり、
販売戦略のための講習会を開催したり、
戦略が上記のようなマーケティングの論理に則ると
イベントの多様化や利用者が使いやすい売場展開を
いうことは、直売所の利用者(地元住民や来街者の
3)
行っている 。この傾向の基底にあるのは、いわゆ
どちらの)ニーズから乖離してしまうという懸念が
る「持続的な」商売を可能にするための「売れる仕
顕現すること。もう一つは、そうした利用者のニー
組み」を構築することであり、それは「マーケティ
ズが大手資本の流通企業に刈り取られてしまうので
ング」の取組ということになる。それ故に今後は、
はないかということである 7)。そうした二重の問題
数多く乱立する直売所の差別化戦略が必要であり、
から、二つの地域への視覚が浮かび上がってくる。
それが持続的取組の一つの鍵となってくるといえる。
一つはマーケティングと空間との関わり(①)
、もう
こうした直売所の活動主体の多くは、地場の零細
一つは消費と空間との関わり(②)である。これら
企業等である。これらは「地場」の文字にあるよう
の準備的な議論を松本(2010)で行っている 8)が、
- 217 -
結論だけいえば、それらは①「エリアマーケティン
グ」
、②①の抽象的次元で展開される、消費空間を照
2.直売所等各チャネルの使い方と評価
射する議論である。こうした問題に地域による差―
この調査のねらいは大きく二つある。直売所等の
利用者の産直品購入における①と②の地域性―が存
各チャネルユーザーに対して、
(1)各チャネルの物販
在するというのが筆者の問題意識の起点にある。
(食品・飲料)のサービス展開に関する利用実態・
そこで本論では、販売側と利用者側という二つの
評価・期待を確認すると共に、(2)各チャネルの差別
視点のうち、まずは直売所の利用者がどのように直
化のポイントを見出すことにある。このねらいに従
売所を使い評価しているのか、更に直売所にどのよ
った調査課題は、それぞれ次の通りである(表1)
。
うな期待を抱いているのかについて、2009 年 10 月
(1)①現在の各チャネルの使い方はどうなってい
に実施した「直売所ユーザー調査」から確認する。
るのか、②各チャネルの物販サービスの選択基準は
その際に、①の視点として直売所で販売される産直
何か、③ユーザーの評価はどうなっているのか、④
品の地域性といったものを利用者が求めているのか、
ユーザーが今後期待する物販・サービスは何か、⑤
換言すると、満足する商品が提供されれば販売主体
魅力的なユーザーのセグメントはどこか。
が大手資本であってもよいのか、更には②の視点と
(2)①各チャネルに特徴のある物販サービスは何
して産直品の購入の仕方に地域差があるかどうか、
か、②ユーザーが各チャネルに求めている物販サー
といった問いにも接近する 9)。
ビスは何か③各チャネルの物販サービスに地産地消
具体的には、ここでは一次的な分析として、産直
的な要素はどの程度必要なのか。
品を販売するチャネルの使い方(や買い方)の実態
これらの課題を直売所等の各チャネル全体の利
と評価、チャネル同士の関係性(ポジショニング)
用・評価・期待だけでなく、各チャネルで扱う物販・
を確認する。更にチャネルへの評価・期待において
サービスのカテゴリ
地域性の差異があることを明らかにする。構成は次
例えば「子育て主婦」ならば安心・安全を重要視す
の通りである。2章では調査設計と直売所等各チャ
る 11)ため、どちらかといえば地場志向のマーケティ
ネルの使い方と評価、3章は直売所等各チャネルへ
ング的なアプローチの必要性を浮き彫りにする等、
の今後期待、4章は直売所等各チャネルのポジショ
商品・サービスのカテゴリと場所との関わりの違い、
ニング、5章では利用者の直売所と地域との関係性
つまり消費者と生産者との関係をマーケティングの
について論じる。因みに「直売所等各チャネル」は、
視点から照射することによって、地域の経済行動、
物販(食品・飲料)が中心の直売所(道の駅を除く)
、
社会行動のレベルまで問いこんでいくことが最終的
道の駅、高速道路のサービスエリア・パーキングエ
な目標となるが、先述した通り、本稿では主にチャ
リア(SA・PA)
、食品スーパー(食品 SM)や総合ス
ネルの使い方やチャネル間の関係等、一次的な分析
ーパー(GMS)等を指す。次の章では議論の中心とな
にとどめることにする。
10)
についても確認することで、
る「直売所ユーザー調査」の調査概要を示す。
表1 調査課題・仮説・項目一覧
研究課題
調査課題
調査仮説
大項目
産直品の購入・利
用はどうなっている
のか
• SA・PAや道の駅等の直売所で生鮮食品を購入するのは地域住民が主であり、来街者は購入し
たいと思うものの往路である・家まで遠いなどの理由からあまり購入しない
• 大型SCの直売コーナーや食品SMで購入するのは、地域の既婚子あり層で、よく利用する
• コンビニで購入するのは、地域の独身社会人層で、ほとんど利用者はいない
中項目
購入状況
物販
購入商品
購入理由
利用状況
サービス
利用サービス
利用理由
地産地消品をどの
チャネルにどう求め
ているのか
地産地消品の評価
はどうなっているの
か
地産地消品への期
待はどうなっている
のか
• (生鮮食品が)安価であるチャネル順に並べると、道の駅等の直売所、SA・PA、コンビニ、食品S
M、大型SCの直売コーナーとなっている
• 品揃えのよいチャネル順に並べると、大型SCの直売コーナー、食品SM、道の駅等の直売所、S
A・PA、コンビニとなっている
• 生活の一部としての使用感順に並べると、大型SCの直売コーナー、食品SM、道の駅等の直売
所、コンビニ、SA・PAとなっている
• 意外性や面白みのある品を販売しているのは、道の駅等の直売所である
• 鮮度管理の点で安心できるのは大型SCの直売コーナーや食品SM、地場産という点で安心でき
るのは道の駅等の直売所である
• SA・PA、道の駅等の直売所は、レストランで地場のものをその場で食べられる点で評価が高い
• コンビニに置いてある地場の生鮮食品は、(SA・PAや道の駅等の直売所と比べて)多少高価だが
少量で購入できるので、単身の独身社会人層が重宝している。地場産であることを理由に買って
いる訳ではない。品揃えについての不満が多い。地酒については好評
• 食品については、生鮮品(鮮度・産地を重視)を求めるのは既婚子あり層である。加工品を求める
のは、遠方在住の独身社会人や家族連れであり、土産として購入する
• 既婚子独立層は地酒への期待が高い
• 地産地消にも安近短を求めているため、直売所を模したSCでもよい
- 218 -
規模・施設
売場
チャネル
人
組織・資本
評価
物販サービス
総合
チャネル
物販サービス
評価理由
物販
サービス
展開チャネル
規模・施設、売場
人
組織・資本
物販
サービス
また、回収結果については表2の通りである。こ
を抽出し、本調査を行った対象者 1,153 人ベースで
の調査はプレ調査を行い、対象者を出現率にしたが
検討を進める。次に産地直送商品・サービス(産地
い抽出した後に、該当者に調査を実施した。 両調
から直送された食品、食材などの商品・サービス:
査共に全国の JMR 生活総合研究所のインターネット
以下
「産直品」
)
の購入率について確認すると
(表4)
、
モニター男女20代~60代を対象に、
プレ調査を2009
半年以内に約4割が購入していることがわかる。ラ
年 10 月 2 日~8 日に、本調査を同年 10 月 9 日~13
イフステージ別でみると、女性の子手離れ層以上が
日に、インターネットによる質問紙調査で行った。
多いことがわかる。
表2 回収結果
プレ調査
項目
表4 LS別でみた産直品購入率
本調査
回収数
構成比
回収数
構成比
6,732
100.0
1,153
100.0
2,589
38.6
443
38.4
20代
452
6.7
69
6.0
30代
647
9.6
110
9.5
40代
572
8.5
107
9.3
50代
450
6.7
72
6.2
60代
女性 計
468
7.0
85
7.4
4,123
61.4
710
61.6
20代
886
13.2
139
12.1
30代
1,316
19.6
237
20.6
40代
1,063
15.6
190
16.5
50代
538
8.0
87
7.5
60代
320
4.8
57
4.9
合 計
男性 計
BASE
全体
男性 計
学生
独身社会人
既婚子なし
子育て
子手離れ
子独立
女性 計
学生
独身社会人
既婚子なし
子育て
子手離れ
子独立
1,153
443
18
119
46
103
63
94
710
43
131
122
210
105
99
利用・購
利用・購
入しな 不 明
入した
かった
37.7
▼ 31.4
38.9
▼ 21.0
34.8
39.8
30.2
33.0
△ 41.7
▼ 18.6
35.1
42.6
36.7
▲ 52.4
▲ 58.6
58.5
3.7
▲ 65.2
3.4
50.0 ↑ 11.1
▲ 74.8
4.2
65.2
58.3
1.9
65.1
4.8
63.8
3.2
▽ 54.4
3.9
▲ 81.4
56.5 ▲ 8.4
∵ 51.6
5.7
59.5
3.8
▽ 46.7 ∵ 1.0
▼ 40.4 ∵ 1.0
産直品のチャネル別購入率をみると(表5)
、道の
(1)利用・購入実態とチャネル
12)
と
駅(70.6)
、有人直売所(52.9)が半数以上で、SA・
(表3)
、食品スーパー(SM)
(92.9)であり、高速
PA、食品 SM、GMS・SC は3割強であることがわかる。
道路の SA・PA(50.4)
、道の駅(37.6)
、有人直売所
ライフステージ別では、独身社会人が道の駅、男性
(19.3)であった。男女のライフステージ別でみる
独身社会人は SA・PA、女性の既婚子なしは有人直売
と、いずれのチャネルも女性の利用率が高いことが
所、女性子手離れは食品 SM、GMS・SC と、各チャネ
確認できた。また、SA・PA や道の駅は子育て以上、
ルの購入状況がライフステージにより異なることが
有人直売所は上記チャネルよりもやや年代が高い。
確認できた。
プレ調査でチャネルの利用状況を確認する
表3 ライフステージ別のチャネル利用率
BASE
全体
男性 計
学生
独身社会人
既婚子なし
子育て
子手離れ
子独立
女性 計
学生
独身社会人
既婚子なし
子育て
子手離れ
子独立
6,712
2,589
225
770
282
474
331
507
4,123
379
907
575
1,119
553
590
食品SM
▼
▼
▼
∵
▼
▼
▲
∵
▲
▲
▲
▲
92.9
88.9
86.7
87.7
90.8
93.0
87.3
87.8
95.4
93.1
91.6
97.4
97.1
95.8
96.9
GMS・S
SA・PA 道の駅
C
▼
▼
▼
↓
△
▼
▲
▼
∴
▲
▲
∴
82.3
77.0
67.6
70.8
78.0
86.3
82.8
77.5
85.7
81.0
76.0
84.7
92.9
92.2
84.9
50.4
37.6
▽ 48.4 ∵ 36.2
▼ 40.9 ▼ 23.1
▼ 38.1 ▼ 27.4
53.2
40.4
▲ 66.2 ▲ 46.4
53.2
40.5
▽ 44.8 ∴ 40.4
↑ 51.7
38.6
48.5 ▼ 26.1
▼ 40.0 ▼ 30.9
▲ 57.2 ▲ 43.1
▲ 60.1 ▲ 42.4
51.2 ↑ 41.4
50.7 ▲ 44.2
表5 LS別チャネル別産直品購入率(購入者ベース)
有人直 ひとつも
売店
ない
19.3
▼ 17.2
▼ 8.0
▼ 14.3
20.6
21.5
17.2
19.9
△ 20.7
▼ 12.1
18.1
▲ 25.2
19.2
△ 23.3
▲ 25.9
BASE
0.8
1.0
1.8
1.9
0.4
0.8
0.6
0.2
0.7
1.1
1.4
0.5
0.5
0.2
0.2
∴
▲
∵
△
↓
↓
以下では、プレ調査から各チャネルを利用した人
全体
男性 計
学生
独身社会人
既婚子なし
子育て
子手離れ
子独立
女性 計
学生
独身社会人
既婚子なし
子育て
子手離れ
子独立
435
139
7
25
16
41
19
31
296
8
46
52
77
55
58
道の駅
有人直
GMS・S
SA・PA 食品SM
売店
C
70.6
52.9
35.4
35.2
35.2
73.4
49.6 ∴ 41.7
30.2
30.9
57.1
71.4
42.9
42.9
28.6
80.0 ∵ 40.0 ∴ 48.0 ▽ 16.0 ▽ 12.0
62.5
37.5
37.5
50.0
37.5
73.2
51.2
43.9
29.3
43.9
73.7
52.6
47.4
36.8
26.3
77.4
54.8
32.3
25.8
29.0
69.3
54.4
32.4
37.5
37.2
87.5
50.0 △ 75.0
50.0 ∵ 12.5
73.9
52.2 ∵ 23.9
41.3
37.0
71.2 ∴ 63.5
38.5
30.8
40.4
66.2
53.2
29.9
32.5
31.2
67.3
60.0 ∵ 25.5 ∴ 43.6 ↑ 47.3
67.2
44.8
37.9
39.7
36.2
(2)利用・購入頻度と購入商品
- 219 -
チャネル別の産直品購入頻度について確認する
べて頻度が高く、ふだん使いの人がいるものと考え
(図1)
。旅などで立ち寄る道の駅や SA・PA では購
られる。当然の結果ともいえるが、食品 SM、GMS・
入頻度は低いが、有人直売所は左記のチャネルに比
SC は上記3チャネルに比べ、購入頻度が高い。
週に 週に 月に2~3回
2回以上 1回
道の駅
N=307
有人直売所
N=230
SA・PA
N=154
0.3
2.0
半年に数回程度
半年に1回
28.7
37.5
15.3
12.7
1.9
1.9
32.6
23.5
15.2
1.7 5.2
食品SM
N=153
月に1回
40.9
22.7
11.7
GMS・SC
N=153
4.8
16.2
4.5
4.6
0.7
6.5 1.3
0.7
14.4
28.1
25.5
22.9
3.6
16.5
14.4
19.0
24.8
24.8
11.1
ほとんど
利用しない
図1 チャネル別産直品利用・購入頻度
チャネル別の購入商品について確認すると(図2)、
子・飲料やレストラン、食品 SM は海産物(生鮮)や
SA・PA を除いたどのチャネルにおいても野菜・果物
肉(生鮮・加工)などが、GMS・SC も食品 SM とほぼ
(生鮮品)の購入率が高い。チャネル別の比較の視
同様な傾向にあることがわかる。
点では、道の駅は野菜(生鮮・加工)、SA・PA は菓
道の駅 N=307
道の駅 N=307
野菜・果物(生鮮品)
有人直売所 N=230
有人直売所 N=230
78.2
野菜・果物(加工品)
40.4
アイスなどのスイーツ
27.4
飲食コーナーやレストラン
25.1
菓子類
23.8
海産物(加工品)
23.5
32.2
21.8
15.7
飲料
19.5
16.5
15.6
13.9
花木
14.7
13.0
12.4
11.7
7.2
19.6
35.9
18.8
49.0
11.7
酒類
7.2
8.3
4.5
4.9
6.5
2.6
24.8
7.8
28.8
1.9
7.1
27.5
24.2
7.2
8.4
7.0
49.0
24.2
24.8
20.1
8.8
41.8
21.6
29.9
11.7
38.6
34.6
10.4
工芸品(小物など)
肉(生鮮品)
31.4
45.5
4.5
32.0
22.9
31.2
21.7
そば・めん類
肉(加工品)
42.2
19.1
19.9
73.9
33.3
41.6
22.2
GMS・SC N=153
GMS・SC N=153
76.5
20.1
12.2
調味料
食品SM 食品SM N=153
33.1
14.8
海産物(生鮮品)
米や麦などの穀類
SA・PA N=154
SA・PA N=154
72.2
32.0
19.0
3.3
25.5
3.9
18.3
24.2
30.1
31.4
図2 チャネル別でみた利用・購入した産直品
(3)チャネル別の購入理由
ていることがわかる。割合は低いものの、
「地元の人
チャネル別の購入理由をみると、
「おいしそう」は
がよく利用していた」、「家族等の評判がよかった」
どのチャネルでも多いことが確認できる(図3)。道
といったリアルな口コミレベルでの理由が相対的に
の駅や有人直売所では「新鮮そう」
「安全そう」が他
多いのは有人直売所である。
のチャネルよりも相対的に高く、SA・PA ではみやげ
(4)チャネル別の評価
需要が、食品 SM ではリピート需要が傾向として現れ
- 220 -
チャネル別の評価を見ると(図4)、道の駅は利
用・購入者の9割が、有人直売所や SA・PA では8割
う」「値段が安い」、SA・PA は「おいしそう」「おみ
が、食品 SM や GMS・SC では7割程度の利用・購入者
やげによい」
「試食」があげられ、有人直売所はスー
が満足していることがわかる。チャネル間の比較に
パーの代替、SA・PA は試食からの誘因といった要素
13)
おける評価理由を見ると
、有人直売所は「新鮮そ
道の駅 N=307
道の駅 N=307
おいしそうだった
有人直売所 N=230
有人直売所 N=230
83.7
新鮮そうだった
47.2
43.5
値段が安かった
45.3
44.8
31.9
30.6
地元の人が販売していた
51.9
17.8
33.8
限定品だから
20.8
18.7
35.1
色々な地域ものが置いてある
17.3
12.2
以前も利用・購入していた
14.7
思い出にしたかった
13.0
13.0
店内に活気があった
12.1
10.9
地元の人がよく利用していた
9.4
家族等の評判がよかった
7.5
7.2
9.2
7.8
16.3
15.7
10.5
11.8
20.3
21.4
14.9
10.4
17.6
11.8
15.6
14.8
23.5
7.2
24.0
16.1
33.3
24.2
31.2
22.1
37.9
39.9
40.3
珍しいものだった
55.6
46.4
32.5
27.4
77.8
61.4
41.6
25.2
GMS・SC N=153
GMS・SC N=153
71.9
51.3
21.7
27.4
食品SM 食品SM N=153
89.6
64.8
安全そうだった
試食しておいしかった
SA・PA N=154
SA・PA N=154
70.4
66.4
おみやげによさそう
が評価されていると考えられる。
16.3
5.9
5.2
6.5
6.5
11.7
9.2
6.5
10.4
7.2
5.9
図3 チャネル別でみた産直品を利用・購入した理由(上位15項目)
利用・購入に満足した
道の駅
N=307
91.2
おいしそうだった
道の駅
N=280
有人直売所
N=230
83.0
有人直売所
N=191
SA・PA
N=154
80.5
SA・PA
N=124
食品SM
N=153
73.2
食品SM
N=112
GMS・SC
N=153
75.2
GMS・SC
N=115
新鮮そうだった
88.2
68.6
****
75.9
71.2
****
91.9
50.8
****
82.1
64.3
値段が安かった
48.9
46.1
47.6
48.7
42.7
67.9
87.0
安全そうだった
48.2
44.3
おみやげによい
****
32.5
****
****
44.6
**
36.5
27.2
50.0
****
8.0
****
11.3
*
31.8
***
23.6
29.8
試食しておいしい
40.3
***
26.8
**
27.8
図4 満足した人の各チャネルの利用・購入理由(上位6項目:各利用・購入&満足者ベース、****:1%、***:3%、**:5%、*:10%有意)
3.直売所等各チャネルの今後期待
SM や GMS・SC は「品揃え」や「安さ」が期待として
本章では産直品を販売するチャネルの今後への期
高く、上記3チャネルに比べると地域色を除いた多
待について確認する。チャネル別の産直に関する期
様性を求めていることがわかる。
待を見ると(図5)
、どのチャネルにも共通している
更に図4のような分析を加えると、産直品への期待
のは「新鮮」である。道の駅、有人直売所、SA・PA
は 道 の駅 に多 く 出現 して お り、 他の チ ャネ ルは
は「品揃えに地元色」「珍しい」「限定品」であり、
GMS・SC の「品揃え」のみであり、人びとは道の駅
これらのチャネルには地元を含めた地域の色が明確
に対して様々な期待を持っていることがわかる。
であることを求めていることがわかる。一方の食品
- 221 -
品揃えに
地元色がある
新鮮である
道の駅
53.6
40.0
47.7
45.2
食品SM
44.1
GMS・SC
41.7
図5
**
31.7
33.7
****
****
****
SA・PA
37.7
****
****
有人直売所
産地等が
わかる
安い
34.1
28.6
****
****
11.9
****
****
11.8
27.8
****
****
35.6
19.3
****
17.6
17.9
23.2
****
11.1
****
14.0
14.5
17.5
8.2
**
27.0
9.0
14.2
**
****
14.2
15.3
****
14.6
15.6
****
25.5
16.6
*
14.2
**
25.9
17.3
***
****
22.1
19.9
19.6
21.9
****
***
37.3
****
27.3
23.3
地元に人が 店内に
限定品である 試食ができる 販売している 地域色がある
品揃えが
多い
珍しい
10.8
****
5.8
14.1
****
****
2.4
3.0
****
****
2.0
3.1
チャネル別の産直品に関する商品・サービス期待(N=1,153、****:1%、***:3%、**:5%、*:10%有意)
4.直売所等各チャネルのポジショニング
0.5
次に産直品販売における各チャネルの関係を見て
Ⅲ軸
道の駅
いくことにする(コンビニは参考値)。
直売所
(1)チャネル別の実態イメージ
食品
SM
各チャネルにおける産直品販売の実態イメージに
-0.5
関する 32 項目から因子分析を行い、Ⅰ軸:
「地域性」
、
Ⅱ軸
0.0
0.5
SA・PA
GMS
・SC
Ⅱ軸:
「洗練された売場」
、Ⅲ軸:
「顔がわかる安心」
コンビニ
の3軸が抽出された 14)。各チャネルの実態イメージ
は、道の駅や直売所は「地域+安心」、SA・PA は「地
域+洗練」
、GMS・SC は「洗練」であることが確認で
-0.5
図8
実態イメージのポジショニング(Ⅱ軸×Ⅲ軸)
きた。
GMS
・SC
(2)チャネル別の期待
0.5 Ⅱ軸
各チャネルにおける産直品販売の期待に関する
32 項目から因子分析により、Ⅰ軸:
「地域性」
、Ⅱ軸:
食品
SM
-0.5
コンビニ
「洗練された売場」
、Ⅲ軸「顔がわかる安心」の3軸
SA・PA
Ⅰ軸
0.0
が抽出された 15)。各チャネルの実態イメージと期待
0.5
のギャップ(各図における矢印部分)をみると、SA・
道の駅
PA は「地域+洗練」が、食品 SM や GMS・SC は「安
直売所
心」であることが確認できた。因みに図9~11 にお
ける矢印表記は評価とニーズのギャップを示す。
-0.5
図6
実態イメージのポジショニング(Ⅰ軸×Ⅱ軸)
0.5 Ⅲ軸
0.5 Ⅱ軸
道の駅
GMS
・SC
直売所
食品
SM
-0.5
SA・PA
食品
SM
Ⅰ軸
0.0
0.5
-0.5
GMS
・SC
Ⅰ軸
0.5
0.0
道の駅
コンビニ
直売所
SA・PA
コンビニ
-0.5
図7
実態イメージのポジショニング(Ⅰ軸×Ⅲ軸)
-0.5
図9
- 222 -
期待のポジショニング(Ⅰ軸×Ⅱ軸)
0.5
や SC では形成されていない。都市規模別でのイメー
Ⅲ軸
ジ形成の違いを確認すると、道の駅や直売所につい
ては、都市規模別でのイメージの差はほとんどない。
食品
SM
直売所
道の駅
GMS
・SC
-0.5
SA・PA をみると、
「地域性」イメージを持つのは 10
万~30 万未満の住民であり、それ以外の規模では相
Ⅰ軸
0.5
0.0
対的に低い。食品 SM では、10 万未満と 100 万~200
万未満では他に比べて「地域性」イメージが相対的
SA・PA
に強い。CVS や SC では都市規模にかかわらず、「地
コンビニ
域性」イメージは形成されていない。以上から推察
するに、「地域性」イメージについて、SA・PA 以外
-0.5
図 10 期待のポジショニング(Ⅰ軸×Ⅲ軸)
では地域差はあまりないことがわかる。
次に各チャネルにおいて、品揃え、配置等におい
0.5 Ⅲ軸
て洗練された売場のイメージが形成されているかを
確認する(図 13)。
食品
SM
直売所
-0.5
0.600
GMS
・SC
道の駅
0.0
SA・PA
Ⅱ軸
0.5
0.400
SC
0.200
SM
CVS
SA・PA
コンビニ
0.000
-0.200
-0.5
道の駅
直売所
図 11 期待のポジショニング(Ⅱ軸×Ⅲ軸)
-0.400
10万未満
N=166
10万~
30万未満
N=221
30万~
100万未満
N=230
100万~
200万未満
N=163
200万
以上
N=264
図 13 都市規模別の「洗練された売場」イメージ
5.利用者にとって直売所とは何か
本章では、居住地域の人口規模別に産直品購入チ
ャネルの使い方や期待などへの考え方を捉えること
全体についてみると、10 万未満を除き、SC、次い
を通じて、産直品を購入する利用者にとって直売所
で SM のチャネルにおいて洗練イメージが形成され
とはどのような存在なのかを考察する。
ていることがわかる。直売所は他のチャネルに比べ
(1)都市規模別の各チャネルイメージ
て、洗練イメージが弱い。都市規模別でみると、10
まず、Ⅰ軸で抽出された「地域性」が、居住する
万未満都市の居住者にとって、洗練イメージは SA・
都市規模でどう異なっているかを確認する(図 12)
。
PA、道の駅の順で強く形成されている。つまり、小
規模地域居住者は産直品購入において、SC や SM よ
0.600
道の駅
0.400
直売所
感じていることを意味する。また、10 万以上の都市
については、規模別でのイメージの差はあまりみら
0.200
れない。
0.000
SA・PA
-0.200
10万未満
N=166
10万~
30万未満
N=221
30万~
100万未満
N=230
100万~
200万未満
N=163
地域の産品に対する「顔がわかる安心」のイメー
ジは、都市規模別にどのように形成されているのか
SM
CVS
SC
-0.400
-0.600
りも SA・PA、道の駅の方が洗練された売場であると
を確認する。図 14 を見てもわかるように、規模別に
イメージ形成は異なっていることがわかる。
200万
以上
N=264
図 12 都市規模別の「地域性」イメージ
全体でみると、道の駅と直売所はどの都市規模で
も「地域性」イメージが形成されている。逆に CVS
- 223 -
0.600
0.400
0.600
SC
SA・PA
道の駅
0.200 SM
0.400
SA・PA
SC
SM
0.200
直売所
0.000
0.000
-0.200
-0.200
道の駅
直売所
CVS
-0.400
10万未満
N=166
10万~
30万未満
N=221
30万~
100万未満
N=230
100万~
200万未満
N=163
200万
以上
N=264
CVS
-0.400
10万未満
N=166
図 14 都市規模別の「顔がわかる安心」イメージ
10万~
30万未満
N=223
30万~
100万未満
N=230
100万~
200万未満
N=164
200万
以上
N=266
図 15 都市規模別の「地域性」期待
SC からみると、都市規模が大きくなるにつれて、
安心などのイメージが低下していることがわかる。
道の駅を見ると、都市規模別で期待の落差が大き
SC に近い傾向を示しているのが SM である。SM のイ
い。地域性に対する期待が高いのは 10 万未満、30
メージ増減の逆パターンを示すのが SA・PA である。
万~200 万未満であり、相対的に低いのは 10 万~30
SC や SM でいえば、これは都市規模が大きくなるに
万未満と 200 万以上である。これは 10 万~30 万未
つれ、産直品の輸送コストや商品自体の付加価値が
満と 200 万以上規模の居住者が、産直品購入チャネ
高まり、その分価格が高くなっていることが推察で
ルを道の駅ではなく、より利便性が高い SC や SM に
きる。もう少しいえば、
「都市規模:大」に居住する
代替していることがわかる。直売所も道の駅よりは
人たちは「顔が見える安心」を、旅や観光という移
スコアがやや低いものの、同じような傾向が見うけ
動コストまたは SC や SM といったチャネルで付加価
られる。SA・PA において、
「地域性」への期待が高
値分のコストを支払っているといえ、大都市の産直
いのは 30 万~100 万未満であり、その他の規模では
品が旅先で購入するよりも割高であることを示して
低い。SC や SM は道の駅や直売所とほぼ逆の傾向で
いるのではないか。SA・PA については、10 万未満や
あり、10 万~30 万未満と 200 万以上では「地域性」
10 万~30 万未満で低いのは、SC や SM 等の他チャネ
への期待が高いが、その他の規模では期待が低い。
ルで購入した方が相対的にリーズナブルであり、そ
この結果だけを見ると、SC と道の駅・直売所それぞ
の他規模については逆に「出先の」SA・PA の方が価
れにおける産直品購入時の「地域性」への期待は、
格も含めて安心・安全なものを購入できるというこ
都市規模に応じたトレード・オフの関係にあること
とだろうか。逆に都市規模が大きくなるにつれて、
が推察できる。
安心などのイメージが高くなっているのは道の駅や
直売所である。しかし、直売所における安心などの
イメージは全般的に低いことがわかる。同様に、安
0.600
0.400
SC
0.200
心などのイメージが低いチャネルは CVS である。
0.000
(2)都市規模別の各チャネル期待
模別に確認する(図 15)
。
SA・PA
SM
次に産直品を販売するチャネルへの期待を都市規
道の駅
直売所
-0.200
CVS
-0.400
10万未満
N=166
10万~
30万未満
N=223
30万~
100万未満
N=230
100万~
200万未満
N=164
200万
以上
N=266
図 16 都市規模別の「洗練された売場」期待
次に「洗練された売場」への期待について確認す
る(図 16)と、「地域性」と同様に、都市規模によ
る期待の格差が大きい。道の駅と直売所はほぼ同じ
ような傾向を示しているが、30 万未満の規模では、
道の駅の方が洗練さへの期待が高い。10 万から 200
- 224 -
万未満の規模にかけて、洗練への期待が減少してい
変化していくことである。これは大都市居住者ほど
るが、200 万以上では逆に高くなっていることがわ
「ご当地」での購入を求めていることを意味してお
かる。一方、SC と SM は先の「地域性」と同様に、
り、交通手段の発達によるモビリティの向上、もっ
道の駅と直売所の傾向とは逆の傾向である。ここで
といえば「高速道路土日千円」といった施策も要因
も両タイプのチャネルにトレード・オフの関係を見
の中の一つだと言える。しかしながら、200 万以上
て取ることができる。また、SA・PA では、都市規模
でふたたび SC や SM の期待が高まっていることをど
が大きくなるにつれて、洗練に対する期待が低くな
う説明すればよいのだろうか。これは、
「産直品は遠
っていることがわかる。
くに行くよりも、近場の SC や SM で同等品を購入す
れば事足りる」ことを意味しており、確かにこうし
0.600
0.400
た大都市居住者は労働の長時間化による余暇時間の
SC
SA・PA
道の駅
0.200
直売所
0.000
減少等、他の生活要因による可能性も否定できない
が、いずれにせよ確かなのは、200 万前後の都市規
模が産直品の「地域性」期待における境界になって
SM
いることである。
CVS
するかが、産直品のマーケティング戦略構築におい
-0.200
-0.400
そこで、この境界の出現をどの視座で捉え、解釈
10万未満
N=166
10万~
30万未満
N=223
30万~
100万未満
N=230
100万~
200万未満
N=164
200万
以上
N=266
て今後の課題となるのではないか。冒頭でも論じた
図 17 都市規模別の「顔がわかる安心」期待
が、一つの方向としては、産直品購入とふだんの生
活との関わり等も含めたマーケティングの論理に関
最後に「顔がわかる安心」の期待について確認す
する地域差を考察することである。これまでエリア
る(図 17)
。道の駅を見ると、100 万以上の規模では
マーケティングの文脈で論じられてきたことである
安心などへの期待が高い。逆に、10 万未満と 30 万
が、それはあくまでア・プリオリに設定されたエリ
~100 万未満では期待が低い。直売所もほぼ同様の
アについてのことであり、人びとの諸活動によって
傾向が見られるが、期待は全体的に低い。SC はここ
形成されるネットワークの総体としてたちあらわれ
でも道の駅と逆の傾向になっており、10 万未満の規
た領域のことではない。従って、基底にある(マー
模での期待は高いが、それ以上の規模になると減少
ケティングの)論理は同一であり、この部分をどう
基調にある。SA・PA は 10 万~30 万未満と 100 万以
組み替えるかが必要となろう。具体的な次元に立ち
上の規模において、他のチャネルよりも安心などへ
返るのであれば、道の駅等の産直品購入チャネルに
の期待が高い。また、SM と逆の傾向になっており、
おける属性別の購買行動を詳細に問い込んでいくこ
トレード・オフの関係になっていることが推察でき
とがさしあたりの(二次的な分析という意味で)手
る。
がかりとなるのではないか。もう一つは、
「移動」の
問題が考えられる。経済学的な文脈でいえば、立地、
6.むすびにかえて
移動や輸送費用、更には弾力性などで上記の説明が
以上のように産直品の購入チャネルに対する利用
出来るかもしれないが、更に深く立ち入るためには、
者のイメージと期待を一次的な分析により確認した
移動そのものへの問いが必要であると考える。何故
が、主な帰結は次の二つである。一つは産直品の購
というと、自工会(2007)によれば、若者の自動車
入チャネルにはそれぞれのイメージが形成されてい
離れが顕著であり、それは移動自体への価値の変化
ることであり、もう一つは各々のチャネルへの利用
にあるとしている。そうした問いには、アーリ(2006)
などから形成されるイメージと今後の期待には(調
等によるツーリズムの議論、吉原(2008)のグロー
査対象者の居住都市規模という尺度で)地域差が存
バル/ローカルの両義性におけるモビリティ、空間
在することである。
や場所との関係へのまなざしも必要であるといえ、
特に後者について象徴的であるのが、図 15 の結果
産直品をめぐる直売所のマーケティング戦略ひとつ
ではなかろうか。すなわち、10 万以上から 200 万未
をとっても、実は多面的、多層的な問題が潜んでい
満まで、居住都市の規模が大きくなるにつれて、
「地
るのである。
域性」期待が SC や SM→SA・PA→道の駅や直売所と
- 225 -
参考
おける問題意識もそこにある。また、商業や流
本研究は福島県いわき市・NPO よつくらぶ・福島
通の観点からは組織小売業による大型店だけに
工業高等専門学校の三者による産官学連携事業「道
依存しない地域やまちづくりの近年の議論があ
の駅よつくら港『交流館』等利活用基礎調査業務」
、
る。例えば、宇野・吉村・大野(2008)や加藤・
高速道路関連社会貢献協議会平成 21 年度研究助成
石原(2009)等。
「高速道路のサービスエリア・パーキングエリアに
7)
そうなってしまった場合、大手資本の論理によ
おける地産地消をはじめとした物販・サービス受容
る均質化が進み、この地域との関係を失ってし
に関する調査研究」の成果の一部である。
まった産品は「どこでも手に入る地域ブランド」
注
となり(例:ブランド米)
、結果として利用者に
1)
ここで論じる直売所を無人、有人にかかわらず、
飽きられてしまうという懸念を筆者は抱くから
周辺に住まう人が生産し、それを地場産品とし
である。
て販売するチャネルとして捉える。但し、考究
8)
松本(2010 近刊)を参照。
を進めるにあたって、厳密な定義は難しいので
9)
直売所や道の駅を調査対象にする時、3つの視
はないだろうか。何故なら、道の駅や高速道路
点―施設、運営・管理、利用者―があり、ここ
の SA・PA での地場産品の販売はその管理が周辺
では利用者に焦点を定めるが、これまでの利用
に住まう人でない場合もあるが、ユーザーには
者調査は例えば、駄田井(2004)、山本・山根・
それがわからないからであり、それは大手資本
小八重(2007)、三木・宮原(2009)等がある。
による産直コーナーにも同様だからである。ま
これらの調査は利用者の購買行動を分析してお
た、別稿でも触れていることだが、直売所の分
り、その点については本調査と同じである。し
類は千葉県商工労働部(平成 18 年 3 月「千産千
かしながら、他のチャネルとの関連では論じら
消推進型」商業活性化実験事業報告書)や小林
れていない。大手の組織小売業による「直売所
(2008)等で行われている。
ビジネス」の展開を考えると、従来の直売所や
2)
『日本経済新聞』2009 年 9 月 3 日。
道の駅は、組織小売との差別化を図らねばなら
3)
例えば、千葉県にある JA 富里市は、多品目の農
ない。そのためには現状と今後のポジショニン
産物について多様な販売戦略を展開、部会活動
グを把握する必要があり、後述するように調査
等組合員の自主運営を支援しており、
「若い農業
を設計した。
者にやりがいのある農業」を後押しする(『日本
4)
10) 例えば、大項目レベルでは食品、飲料、工芸品
農業新聞』2008 年 2 月 24 日)。
等であり、中項目では食品は肉・魚・野菜や菓
この文脈で筆者が用いている相互関係は、食品
子の次元になるが、本調査では中項目レベルで
の川上から川下までの物流や流通までのいわば、
の使い分けまでに立ち入ることを目標としてい
フードシステムを念頭に置きつつも、主眼を食
る。
品の安心へのこだわりが生産者やその過程への
11) むろん、価格「だけに」敏感な層も否定はしな
関心を顕現させ、それによって形成されるネッ
トワークとしての関係に据えている。こうした
い。
12) 本論文の分析は集計ソフト「Assum for windows」
議論は例えば、永木(2007)や櫻井(2008)等
により有意差検定(両側)を行い、その結果を
がある。
▲▼:1%有意、△▽:5%有意、↑↓:10%
5)
『日本経済新聞』2009 年 6 月 11 日。
有意、∴∵:20%有意で表している。
6)
ここでの「マーケティングの論理」の基底にあ
13) ここでは各項目で1位となっているチャネルを
るのは、何らかのメディアを通じて消費者への
基準として、他チャネルとの有意差検定を行っ
認知・浸透というプロセスを経て、結果として
ている。
あらわれる製品・サービスのコモディティ化、
14) 因子分析結果は次の通りである。固有値と寄与
換言すれば消費の均質化が働くことである。こ
率であるが、Ⅰ軸が 5.55、49.6%、Ⅱ軸が 2.02、
の力により、生産から販売までの地域性をはじ
18.0%、Ⅲ軸が 1.08、9.7%であり、これら3軸
めとした特性や関係が(全部ではないが)失わ
による累積寄与率は 77.2%であった。
れていくものもあり、脚注 1)とあわせて本論に
- 226 -
店内やコーナーの地域色が強い
0.645
地域の人たちと交流ができる
0.570
店員と交流ができる
0.556
地元の人が販売している
0.521
思い出になる
0.512
Ⅰ軸 懐かしさが感じられる
地域性 飲食コーナーやレストランのメニューに地域色がある
0.470
0.466
限定品(数量限定、地域限定、店限定)である
0.412
耳寄りな情報がある
0.400
地元の人がよく利用・購入している
0.360
商品がきれいに並んでいる
0.577
店員の接客がよい
0.525
商品がどこにあるのかがすぐわかる
0.522
ドシステム研究』第 15 巻 1 号、2008
4) 櫻井清一「産地マーケティング論の展開と関係
性マーケティング論」
『農産物産地をめぐる関係
性マーケティング分析』農林統計協会、2008
5) 駄田井久「農産物直売所における消費者行動の
0.505
実証的分析」
『岡山大学農学部学術報告』vol.93、
0.489
0.467
2004
0.450
デザインやパッケージがよい商品が置いてある
0.416
飲食コーナーやレストランのメニューが安い
0.410
商品に関する説明書きがある
0.353
新鮮である
0.559
Ⅲ軸
顔がわか 産地、生産者がわかる
る安心 値段が安い
3) 小林千夏「地域ブランドのイメージ分析」
『フー
0.482
珍しいものがある
6) 駄田井久、佐藤豊信、石井盟人「農産物直売所
におけるマーケティング戦略の構築―安心・安
0.428
全の視点から」
『農林業問題研究』vol.43,No.1、
0.399
15) 因子分析結果は次の通りである。同様に固有値
と寄与率であるが、Ⅰ軸が 5.30、52.5%、Ⅱ軸
2007
7) 千葉県商工労働部「『千産千消推進型』商業活性
が 1.14、11.3%、Ⅲ軸が 1.03、10.2%であり、こ
れら3軸による累積寄与率は 73.9%であった。
店内やコーナーの地域色が強いこと
0.538
地元の人が販売していること
0.514
地域の人たちと交流ができること
0.482
店員と交流が出来ること
0.442
Ⅰ軸
品揃えに地元色が強いこと
地域性
珍しいものがあること
8) 永木正和「地産地消の意義と展開」
『消費行動と
9) 自工会『2006 年度乗用車市場動向調査』、2007
10) 松本行真「都市と相互作用の世界」吉原直樹ら
0.424
0.400
限定品(数量限定、地域限定、店限定)であること
0.372
地元の資本が入っていること
0.366
飲食コーナーやレストランのメニューが豊富であること
0.549
飲食コーナーやレストランのメニューが安いこと
0.504
編著『場所から空間へ』法政大学出版局、2010
近刊
11) 三木佳光・宮原辰夫「道の駅「大和(そよかぜ
0.502
館)の利用者に関する実態調査」
『文教大学国際
0.494
0.482
学部紀要』第 19 巻 2 号、2009
0.422
店内に活気があること
0.398
大手企業・メーカーが生産・製造や販売していること
0.324
Ⅲ軸 新鮮であること
顔がわか 産地、生産者がわかること
る安心 値段が安いこと
化実験事業報告書」
、2006
フードシステムの新展開』農林統計協会、2007
0.438
思い出になること
商品がどこにあるのかがすぐわかること
Ⅱ軸 商品がきれいに並んでいること
洗練され
た売場 店員の接客がよいこと
休憩施設、物販等以外の多様な施設が設置されている
地
域商業の競争構造』中央経済社、2009
0.487
地元の資本が入っている
飲食コーナーやレストランのメニューが豊富である
Ⅱ軸 店内に活気がある
洗練され
た売場 休憩施設、物販等以外の多様な施設が設置されている
大手企業・メーカーが生産・製造や販売している
2) 加藤司・石原武政編著『シリーズ流通体系4
12) 山本直之・山根芳樹・小八重祥一郎「農産物直
0.559
売所に対する消費者ニーズと設立のための課
0.434
0.402
題」
『宮崎大学農学部研究報告』53(1・2)、2007
参考文献
13) 吉原直樹『モビリティと場所』東京大学出版会、
1) 宇野史郎・吉村純一・大野哲明編著『地域再生
の流通研究―商業集積間競争とまちづくりの視
2008
14) Urry. J, The Tourist Gaze, 1990(=加太宏
邦訳『観光のまなざし』法政大学出版局、2006)
点―』中央経済社、2008
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