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山梨ものづくり憲章
山梨ものづくり憲章 2013年2月 甲府商工会議所 1/6 【はじめに】 我が国は様々な顔を持つ風土と、そこに暮らす人々の交流とが生み出した多層の 文化を持つ国である。そして、その中から創造されたのが日本経済の原点となる「市 井の匠達が生み出したものづくりの技」である。 我が国のものづくりは、時代を導く生業(なりわい)として国を牽引してきた。感性 と創造力に富んだ匠達が、長い時間をかけて維持発展させてきた資産であり、幾多の 環境変化に適応してきた。そして今、震災や洪水などのたび重なる自然災害、世界経 済の明らかな構造変化など、未だかつてない厳しい環境に直面している。「日本のも のづくり」の基盤となる中小企業の果たす役割は、ますます重要になった。 私たちは、ものづくりの国に生まれ、様々な困難に遭遇し悩みながらも、その都度 新たな解決策を見出しそして、「新しい価値観」を生み出してきた。成熟社会に到達 した我が国だからこそ創り出すことができる質の高い「もの」がキーワードとなり、 つくり手たちの真価が今こそ問われている。 本県には、「信頼の標的」としてのオリジナリティを発信できる、風土に根ざした 地場産業があり、また、世界経済を支える機械・電子、ICT産業がある。「新しい 経済の形」に合う産業として再び築いていくことが、本県を世界に誇る「ものづくり 県」につなげる。成熟社会に達した我が国だからこそ創り出すことのできる「質の高 いものづくり」に向けて、本県として一丸となって取り組んでいきたい。 こうした認識に立ち、県内の「ものづくり」を行なう全ての中小企業と、「ものづ くり」に携わる全ての人々が、自社が作りだす製品や技術を信頼し、誇りと夢を持て る環境づくりを進めるため、ここに「山梨ものづくり憲章」を定める。 2/6 【基本理念】 「ものづくり」とは、森羅万象の素材に、匠や匠企業が持つ「技術(わざ)」を加 えることで、新たな製品として付加価値を生み出すことにある。最新技術は伝統技術 を見据え、伝統技術は最新技術をにらむ。思考を究極まで凝縮させた工夫と創造は、 オンリーワン製品を創り上げていく。 永きにわたり継承され培われた職人技や職人の目利きが、様々な価値観で織りなさ れた混沌とした社会を深く見つめている。そしてその眼差しが、消費者との信頼の 「絆」と紡がれることにより、優れた「ものづくり」産業の創造につながっていく。 ◆職人技と職人の目利きが「ものづくり」の原点にある 我が国にある質の高い「ものづくり観」は、受け継がれた技術(わざ)に、職人の作 法と職人の目利きを糧として、新たな技術(わざ)を溶け込まして創造してきた。 中小企業の良心は、現場で働く職人の感性を研ぎ澄ます。こうして、「新しい経済 の形」に合う質の高い価値観を醸成していく。 また、豊かで多様な自然に育まれて深い文化を生み出してきた我が国では、細やか で緻密な優れた技能が生まれてきた。受け継ぎ、伝えていく努力が重要である。 ◆消費者を見据えた「ものづくり」 「ものづくり」の先にいる消費者のニーズを的確に捉えた製品開発を行なう。歴 史に寄りかかるのではなく、社会が求めるものをいかに早く、正確に作り出すかを企 業として常に考え、行動する。 これから求められるのは、我々自らが「あるべき流行」を創造していく、という気 概であり、この気概こそが「不易」の価値を実現する。 3/6 ◆若者の夢が世代を超えた魅力を創る 高い技術と優れた技能からなる「匠の技」が「ものづくり」の思想を確立する。「匠 の技」が社会に感動を与えると共に、製品は適切な市場で評価されていく。自らが誇 りを持ち、自らの主体性によって切り拓くことのできる社会の実現に向けて、ものづ くりに励む若者に大きな夢を与える企業環境を創る。 ◆世界をターゲットとした経営を行なう 我が国は島国、本県は山国、そして海山故に閉ざされた地域という固定観念に縛ら れてきた。しかし、中世において、本県の先達が、海外を見据えて領国経営を行って きたことは事実であり、本県は「開かれた山国」であった。 歴史に改めて学び、我々は地域に埋没せず、世界に飛び出していくためのチャレン ジを行なう。海外の様々な文化を基礎にした新たな市場が、本県のものづくり産業の 個性を浮き彫りにし、メリハリのある価値観を鍛え上げていく。国際化によって企業 としてのブランド力を強化する。 ◆企業を育てる最先端技術の開発を行なう 大学や行政、公的研究機関や金融機関、各種支援機関などとの新たな連携を進めて、 「新しい経済の形」に向けての最優先に求められる人材育成や技術力を結集した製 品・技術開発を積極的に行なう。我々が常にイノベーションを興すことで、中小企業 が必要な技術やノウハウを経営に取り込めるような環境づくりを進める。 4/6 ◆教育界と連携して人材育成を行なう 大学では、能力開発の素地となる幅広い教養の習得を実現する。 さらに、本県の教育活動の現場では、英語による講座を更に充実させるとともに、グ ローバル社会で指導力を発揮できるための基礎能力を涵養するための外国語教育にも注力し、 日本人の言語による弊害を取り除く。同時に、留学生が魅力を持つ教育に取り組む必 要もある。 また、外国人を含めた海外即戦力人材の育成などを積極的に展開する。世界に目を 向けた教育に依って培われた技が、「山梨の職人文化」・「日本の職人文化」を発信 させていく。 ◆「緑の革命」による新成長産業の創出 本県は、県土の 8 割弱を森林が占め 4 つの国立・国定公園に囲まれた世界的にも価 値のある地域であり、また、県の名前の語源が「交ひ(かひ)」であることが示すよ うに、様々な自然環境や文化の産物が交わる地である。 地域の森や植生は豊かな水や農産物、生活環境を生み出してきた。私たちは、こう した豊かな「緑」の価値を再認識し、これを生かして、ものづくり、ホスピタリティ、 観光、農業などの産業やこれらがクロスオーバーする領域において革新を起こす必要 がある。つまり、個々人の心の豊かさへの要求や直面する問題の解決に向けたイノベ ーションに対して、我々は社会的役割を担っている。 こうしたニーズに応えるため、イノベーションを追求するものづくり産業、ものづ くりとツーリズムとの新結合が創る新たな観光、情報産業、環境産業、医療・介護関 連産業など、地域経済をリードする産業の創出に積極的に取り組む。魅力ある中小企 業が育つことで、優秀な人材が育成され、それらの人材の就業が促がされる。新たな 切り口で取組を行なうことにより、リーディング産業として育つ。 5/6 【最後に】 企業のグローバル化が進む中で本県の「ものづくり」企業がこれまでと同様の成 果を上げていくためには、そのフィールドを拡大していくことが必要となる。 「ものづくり」は、発想~創造の現場~製品という一連の循環の中に職人の魂を注 ぎ込むことにより、さらに質の高い循環を造り上げていくものである。 今まで以上に努力と創意工夫を重ねることに注力し、若者に夢を提供しながら「も のづくり」への取り組みを進めていかなければ地域の製造業の発展はないことをここ に再認識する。 「山梨ものづくり憲章」は甲府商工会議所のホームページからもダウロードできま す。ご活用ください。 甲府商工会議所ものづくり振興委員会 6/6