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第 10 回 保険事業における二つの機能と収益構造・保険支払能力確保 1

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第 10 回 保険事業における二つの機能と収益構造・保険支払能力確保 1
亜細亜大学経営学部「保険論」
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
損保ジャパン総合研究所 小林
第 10 回
篤
保険事業における二つの機能と収益構造・保険支払能力確保
保険は、偶然な事故に関して保障・補償を提供する機能があるが、同時に主として生命保険では保険料が長期性資金となることから資産運
用の機能も併せて持っている。保険事業の収益構造には、保険引受の結果得られる損益に加えて資産運用による収益も重要であるという二つ
の面がある点を理解する。
1
保険のハイブリッド的構造
2
資産運用の機能と長期性保険の商品性
3
保険事業の収益構造・保険金支払能力の確保
キーワード 保障・補償、 長期性資金、変額保険、保険引受利益、資産運用収益、利源、責任準備金
-1© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
亜細亜大学経営学部「保険論」
1
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
保険のハイブリッド的構造
(1)保険料・保険金支払の時間差
ほとんどの場合、保険料と保険金の支払に時間差
保険料・保険金支払の時間差は、資産運用の機会
保障・補償の機能
満期
保険金支払
始期
保険料収受
保険期間
この期間に資産運用の機能
(2)保障・補償の機能と資産運用の機能
保険には、保障・補償の機能と資産運用の機能の二つの機能がある。
特に長期性の生命保険では、資産運用の機能は、他の金融商品に匹敵する内容となっている。
金融商品としてみると、長期の生命保険は金融商品に保障機能が組み込まれたハイブリッドとしても捉えることができる。
2
資産運用の機能と長期性保険の商品性
(1) 生命保険の生存保険金と貯蓄
長期性保険は、保障・補償機能+長期性資産運用機能のハイブリッド的構造になっている。
生存保険金には、長期貯蓄と同様な効果がある
更に、平準保険料方式では、後の期間に充当する保険料を先取りして、保険料積立金
としているので、更に長期性資金が生命保険会社に集まることになる。
-2© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
亜細亜大学経営学部「保険論」
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
(2)金融市場(資本市場)における生命保険会社
生命保険会社は、金融市場(資本市場)の有力なプレイヤーである。
・生保会社全社の の総資産は 318
兆 3,802 億円、
・資産構成:76.7%
が有価証券(244 兆 1,501 億円)。貸
付金は、有価証券に次いで全体の 14.
7%
(出典::生保協会二〇一〇年版『生命保険の
動向』
)
-3© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
亜細亜大学経営学部「保険論」
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
(3)変額保険
長期性保険の投資性を高めた変額保険。一般の保険では、保険会社が確定利回りを保証するが、変額保険では満期保険金に関する運
用について保証しないことがある。この場合、資産運用のリスクは、保険会社でなく、満期保険金受取人である契約者が負担している。
満期保険金(生存保険金)の運用を株式投資信託と同じように運用する。
(一般の保険とは区分経理、分離運用)
(出典:生命保険文化センター「変額保険とは」(http://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/life_insurance_q3.html )
3
保険事業の収益構造・保険金支払能力の確保
(1)損害保険
保険引受損益は、 収入保険料 - 支払保険金 - 支払経費(事業費) で算出。参考:ロイズにおける出資者への配当
収入
支出
支払保険金
収入保険料
-
支払経費(事業費)
=
保険引受損益
-4© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
亜細亜大学経営学部「保険論」
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
<注:損害保険では、通常保険期間は 1 年間>
損害保険会社の収益 = 資産運用収益 + 保険引受損益
→ 保険引受損益がマイナスでも、最終的に収益を確保できる。
資産運用
収益
損失
収益
+
-
+
保険引受
損益
(2)生命保険
① 三利源(費差益、死差益、利差益) ・・・ 生命保険会社の利益の源泉を三つに分けて把握する。
→ 保険料算出の際、予定として使用した基礎率と、実際の結果との差が、利源となる。
生命保険では、剰余金のなかから毎年保険契約者に契約者配当金を支払うことが一般的(実際の配当金の支払はまとめて
行われることが多い)。<注:生命保険では、通常保険期間は、10 年単位の長期間>
内
生命保険料を計算する元となる基礎率
基礎率と実際の結果の差:保険会社の利益の源泉
部
予定死亡率:多数の人々のうち、1年間に死亡する人数の
死差益(損)
:
留
割合。過去の統計をもとに予測し、将来の保険金の支払に → 予定死亡率に基づく保険金・給付金等支払予定
保
あてるために必要な保険料を算定する。
額と実際の保険金・給付金等支払額との差額
契
剰
約
予定利率:資産運用による運用収益を見込み、その分保険
利差益(損):予定利率に基づく予定運用収益と
→ 余 →
者
料を割引く。
→ 実際の運用収益の差額
金
配
予定事業費率:
費差益(損)
:
当
保険会社の事業の運営上必要となる経費(=事業費)を見 → 予定事業費率に基づく事業費支出予定額と実際
金
込んで、保険料に組み込む。
の事業費支出との差額
-5© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
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2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
収益構造
経常損益
経常収益
収支差
特別損益
経常費用
保険料等収入
保険金等支払金
資産運用収益
資産運用費用
事業費
責任準備金等繰入額
(3)将来の支払能力確保のための責任準備金
会計年度末(通常 3 月末)に、保険会社は次年度以降の支払債務を認識し、その額を計算し責任準備金として積立てる。
責任準備金積み立ては、将来の保険金支払を確実にするための措置である。
①損害保険の未経過保険料
a.保険契約は、年度内に完結するか
b.保険金支払は、年度内に完結するか <注:損害保険では、通常保険期間は 1 年間>
→ 保険契約の締結時期・期間はまちまちで、年度をまたぐ場合もある。また、事故が発生してから、保険金支払までに時間がかか
る場合も。
◎保険会社は、保険契約に基づく次年度以降の保険金支払などの責任を果たすために、決算期末に保険契約準備金を積立てる
-6© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
亜細亜大学経営学部「保険論」
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
2008 年度
2009 年度
2010 年度
★
△
事故発生 保険金支払
2011 年度
保険契約
★
事故発生
△
保険金支払
年度末時点での未経過期間(この間、事故が発生するかどうかわからない)
年度内に発生する支出
年度を超えて発生する可能性のある
(または支払が確定している)支出
年度末の損益・収支の計算のとき
どうすべきか?
保険会社の貸借対照表は、次のような構成となっている。負債の大部分を「保険契約準備金」が占めているのが特徴
資産の部
負債および純資産の部
資
負
産
預貯金
有価証券
(債券、株式など)
土地・建物
など
債
保険契約準備金
(支払備金)
(責任準備金)
(配当準備金)
責任準備金の種類
生命保険
未経過保険料準備金
保険料積立金
危険準備金
損害保険
純 資 産
資本金・剰余金等
-7© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
普通責任準備金
異常危険準備金
亜細亜大学経営学部「保険論」
2014 年度前期 第 10 回 6 月 20 日
保険会社のバランスシート
負債の多くは、
保険契約責任準備金
負債
資産
保険契約責任準備金
支払備金(既に事故が発生し保険金を支払
う必要がある場合)
責任準備金(将来の保険金支払責任に
備えるための準備金)
純資産
契約者配当準備金(長期保険を扱う生保会
社では、契約者に配当
金を払うことが一般
的。配当金の支払のた
めの準備金。)
将来の支払能力確保のための責任準備金は、将来の支払保険金を見積もることであり、それは保険料の算出と同じである。このため、
責任準備金の計算には、保険数理の専門家(アクチュアリー)が担当する。
将来の支払能力確保のための責任準備金を計上し、それに見合う資産が確保されれば、将来の保険金支払は確実のはずである。
しかし、将来予想の見積もり額よりも実際の保険金支払額が多くなる場合には、純資産(資本金等)がバッファーになる。
-8© 2014 年 損保ジャパン総合研究所
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