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入選論文(PDF)
出雲市立塩冶幼稚園(島根県) 好奇心、探究心から科学する心を育てる −「発見、発見、大発見」 自ら考えようとする気持ちが育つ過程に着目して− ☆この論文の選ばれたポイント☆ 園庭の身近な自然との関わりから「発見したこと」がきっかけとなり、好奇 心や探求心が育まれていく子どもの姿を把握し、 「科学する心」に結び付く体験 を明らかにしています。子ども一人ひとりが明確な目的に向かって取り組む姿 を把握し、保育者も夢中になり一緒に活動しています。そして、子どもたちは 疑問や困難を感じると、更に関心を高めて根気強く取り組みました。子どもも 保育者も発見を楽しみ、探求を深めていく体験に結び付いていることが高く評 価されました。 栽培活動の事例では、 「畑にしたい」 「看板を作ろう」 「棒で支えよう」など自 分たちで考えたり調べたりして問題を解決する体験をしています。更に、 「受粉 のチャンスはいつか?」「カラスに食べられている」「いつ収穫するか?」など よく観察し、友達と考え合い判断する体験へと深まりました。 石や砂の事例では、園内や地域の自然環境を取り入れて石や砂に関わり、特 徴を活かした製作活動に繋がっています。その一連の活動を振り返り「発見カ レンダー」を作成したことは、子どもたち自身が「科学する心」が育まれた自 分の成長を感じる体験になりました。 2013 年度ソニー幼児教育支援プログラム 最優秀園 論文 平成25年度 ソニー幼児教育プログラム 実 践 論 文 好奇心、探究心から科学する心を育てる ~「発見、発見、大発見」自ら考えようとする気持ちが育つ過程に着目して~ キラキラポタジェ作ったよ!発見!発見!大発見!! 砂鉄で遊ぶとおもしろいよ!不思議だな! 砂鉄スライム作りしたよ!! 出 雲 市 立 塩 冶 幼 稚 園 目 次 1、取り組みのテーマと「科学する心」についての考え方 ・・・P1-2 2、実践事例「発見、発見、大発見」のストリーへ・・・(序章) その①「キラキラポタジェの発見、発見、大発見」 ・・・P2-3 その②「砂・石・砂鉄の発見、発見、大発見」 ・・・P3 (1) 「キラキラポタジェの発見、発見、大発見」(4月~7月)5歳児 ・・・P4-12 (2) 「石・砂・砂鉄の不思議を探ろう」(4月~7月)5歳児 ・・・P13-P18 (3) 「わたし、カエルなんてだいきらい」 ~生き物との触れ合う一歩~(6月~7月)3歳児・・・P19 (4) 「さくらぐみ、いろいろすいぞくかん」 ~命の不思議を見つけよう~(6月~7月)4歳児・・・P19 3、まとめ(実践の考察) ・・・P20 4、今後の方向性と課題 ・・・P20 秋、冬に向かってのキラキラポタジェ(9月11日) ハロウィンのかかしを作って立てたよ!(9月5日) 好奇心、探究心から科学する心を育てる ~「発見、発見、大発見」自ら考えようとする気持ちが育つ過程に着目して~ 1.取り組みのテーマと「科学する心」についての考え方 (1)主題設定の理由 ○ 幼児は日々の生活の中で、人や物、自然に出会い、心を動かされると、驚きや喜び、不思 議さ、怖さなど感じたままを表現する。また、幼児が自然の事象・現象に働きかけ見つけ出 した“たのしさ”や“おもしろさ”は、「科学する心」の基になると考えられる。 ○ 教育要領の領域「環境」では、周囲の様々な環境に好奇心や探究心をもってかかわり、そ れらを生活に取り入れていこうとする力を養うことが求められている。また、 「遊びの中で 周囲の自然とかかわり、次第に周囲の世界に好奇心をいだき、その意味や操作の仕方に関心 をもち、物事の法則性に気付き、自分なりに考えることができる過程を大切にすること。特 に、他の幼児の考えなどに触れ、新しい考えを生み出す喜びや楽しさを味わい、自ら考えよ うとする気持ちが育つようにすること 」と明記されている。 本園では、幼児が周囲の環境に主体的にかかわり遊びを展開する中で、「科学する心」を 育てていきたい。 (2)「科学する心を育てる」について 「好奇心、探究心から科学する心を育てる」とは・・・ *子どもが興味・関心を抱きながら遊びに夢中になること。 *興味・関心から自分なりの考えをもつ。 子どもの声・気持ち・・ 「おもしろい」 「たのしい」 「もっとやりたい」 「またやりたい」 「なぜ?」 「ふしぎ」 「今度こそ・・」「この次は・・」 「わかった」 「そうか・・」「こうしたらいい」 「自ら考えようとする気持ちが育つようにする」には・・ *教師がおもしろくなければ、子どもは、おもしろくならない!! ・教師が共に遊びに夢中になること ・教師が教材研究にのめり込むこと ・教師がわくわく・どきどき・・ ●子どもと一緒に遊び、教材を探す。 ●子どもの興味・関心をつかむ。反応を予想する。 ●子どもと教師が学びを共有する。 ●子どもとともに「科学する心を育てる」 幼児の科学する心の芽生え 友 ○幼児の「あれ?」「なぜだろう?」という「科学 する心」の芽生えを捉え、不思議や好奇心 を追求するような活動を展開することが「科 学する心」を育むことにつながる。 ○活動を通して、「感じる心」「かかわる力」「表 現する力」「根気強さ」が身に付くと考えられ る。 達 教 師 保護者 県立農業技術センター 共に楽しみ、触発し合う存在 1 地域の人々 飯国さん 加古さん 出雲科学館の先生 科学する心を育てる~自ら考えようとする気持ちが育つ過程~ 「もしかして!」 「試してみよう」「わかった!」 自分なりに理解・関連づける 「おもしろそう、なぜだろう?」 「・・してみよう」 「あれ?」 工夫する 試す・繰り返しやってみる 好奇心・興味関心 触れる・感じる 出会う・見る (求める子どもの姿) ・身の回りの自然事象に気付き、自分の遊びの中に取り入れることができる。 ・事象にかかわる中で、考えたり、試したりしながら工夫していく。 (3)研究の目標 ○幼児一人一人の「あれ?」 「どうして?」 「試してみよう」を捉え、この発見や驚きを幼児の 主体的な行動や思考へとつなげる環境の構成や援助のあり方について実践を通して究明し ていく。 (4)研究の見通しと方法 見通し①自然や事象の中で体験を基にして、幼児の心情を読み取りながら、環境の構成や援助を していけば、幼児は心を動かし主体的に遊びを創造していくであろう。 見通し②幼児の「科学する心」が一層深まるように、友達同士で考えを共有したり、表現したり する活動を重視すれば、自ら考えようとする気持ちが高まるであろう。 見 通 し 見通し① について 見通し② について 方 法 方法①自然や事象との出会わせ方を工夫し、気付きを生かし好奇心を掘り起こす。 方法②場と時間を保障し一人一人がしたいことが十分にできるような援助をする。 方法①主体的に展開した活動を分析し、構想図を幼児と教師がともに作ったり、話 し合いを重ねたりすることによりイメージを共有する。 2、【実践事例】 「発見、発見、大発見」のストーリへ・・・(序章) その①「キラキラポタジェの発見、発見、大発見」 4 月・・ 今年度は、年長児の砂場の支柱に亀裂が生じたため、砂場での遊びができなくなると いう事態が生じた。そこで、子どもたちは、自分たちの畑を作る!!と言い出し、草 取りを始めた。教師は、子どもが砂遊びではなく畑での活動を求めてきたことに感銘 を受けた。 5 月・・ 年長児の熱意に動かされ、連休に草刈機とミニ耕運機を使って職員が土を耕し、本格 的に畑づくりが始まった。単一的、画一的に一つの作物を作るのではなく、子どもの 自主性を生かすために「キラキラポタジェ」 (野菜と草花、ハーブを一緒に育てて楽 しむ畑)と名づけられた畑!! きゅうり、とまと、マリーゴールド、ミント、すいか、かぼちゃなどの苗や種をみ んなで買いにでかけたり、「家からもってきた!!」と朝顔やひまわりの苗や種をも ってきたりしてやる気満々。保護者からも肥やしの寄贈を受けたり、教師も苗を持ち 寄ったり・・ 「なんでもOK」のポタジェがスタートすることになる。 2 山陰中央新報6月19日、記事より 島根県農業技術センター『ときめき』より 島根県農業技術センターで、ポタジェ 地域の方たちにも、興味をもっ でいろいろ栽培した野菜や花の不思 ていただきました。また、保護 議や疑問をたくさん質問しました。研 者からは「うちでは、こんなふ 究員の方たちに、野菜や花の命につい うにしていますよ」というお便 て教えていただきました。 りが届きました。 その②「砂・石・砂鉄の発見、発見、大発見」 「年長組になった!!」 「何か、年長さんらしいことをして遊びたい!!」と張り切っている子 どもたち。昨年度の年長児が硬いスコップを持って砂山を掘り、川作りをしていたことを思い出し たA児たち。深く掘るうちに、地面が黒くなったり、ざらざらの砂粒を発見したりした。A児の「こ れは、金だよ」の言葉にビックリした子どもたちは、金集め、キラキラ光る石、すべすべの石、 「化 石もあるんじゃあない?」 ・・年長組になり高揚する気持ちとあいまってA児たちの心は地面の宝 探しへと向かう。毎日、毎日、飽きることなく園庭中の地面や赤土山が掘り返され、 「発見、発見、 大発見」は合言葉になった。教師や保護者も「今日の地球探検はどこまで?」と興味津々。砂鉄を 大量に採取したり、赤、黄色、黒、オレンジ・・のさら粉を集めたり・・。興味・関心・不思議い っぱいの思いは教師や保護者まで取り込んで「なぜ?」、 『発見、発見、大発見』のストーリが始ま った。 3 3-(1)『キラキラポタジェの発見、発見、大発見』(4 月~7 月) 5歳児 (教師の願い) ○野菜の栽培活動を通して、いろいろなことに気付いたり、疑問に思ったりしたことなどを、自分 たちで考え、解決し追求していってほしい。 ○自分たちで野菜を育てる楽しさや大変さ、収穫できる喜びを感じてほしい。 遊びのつながり・発展 子ども(C)の姿 4月中旬 「何の野菜を育てる?育ててみたい?」 「とうもろこし」 「スイカ」 「ミニトマト」 「かぼちゃ」 「きゅうり」 5月7日 自分たちが食べたい野 菜を育ててみたい。 (やる気・興味関心) ・ピーマンやなすという声は、子どもたちが 苦手な野菜ということもあり育てたい野 菜に出てこなかったため、「先生たちが育 てようかな?収穫したらどうやって食べ ようかな?」と声をかける。 ☆子どもの「やってみたい」「どうなるか な?」という興味関心、意欲を大事にし、 教師自身もわくわくした気持ちで畑作り に取り掛かることが、その後の子どもたち の興味関心のあり方に大きく影響した。 1-①「ぼくたちのキラキラポタジェ大作戦」 いろいろな野菜の苗を『キラキ ラポタジェ』に植える。 「どうやって植えるのかな?」 飯国さんに「優しくそっと苗を 出して、土も優しくかける」と 教えてもらう。 「お家を作ってあげよう!」 「苗を買いに行った時にまだ寒 いからお家を作ってあげて ね」と言われたことを思い出 し、倉庫に行ってどんな物で お家を作るか決める。 「確か年中の時にも、お家を作 ったよね」 今までの栽培経験(田植 え、畑でのさつま芋、おく ら)から、植える時に大切 なことを、友達や教師に教 える。 (想起する) 野菜の苗のことを、自分 たちのことに置き換え て、寒い時にはどうすれ ばいいか考える。 (気付く) お家を作る材料を選ぶ。 (試してみる) ・毎年お世話になっている地域の飯国さんに 野菜の植え方を教えていただくように依頼 する。 ☆「ピーマンやなすは少し離して植えないと 駄目だよ」 「かぼちゃやスイカは、どんどん 伸びるから、くっつけて植えたら確かいけ ないよ」など、自分が見たり聞いたりした ことを自分たちの畑作りに結び付けて考え ているようであった。 5月10日 教師(T)の援助・環境構成 ☆考察 ・店の人が話されたことを思い出して、お家 作りをしようとしている姿を大事にし、昨 年のことを思い出させながら子どもと一 緒に風除けや寒さ対策をする。 ☆「野菜が倒れないように」「野菜が寒くな いように」と大切な物としてかかわろうと している。 「毎日、水やりをしよう!」 「大きくなってね」 「どんなきゅうりができるか な?」 「とうもろこしは、どれくらいま で伸びるかな??」 「ピーマンやなすは嫌いだけど、 食べてみたい」 「野菜を育てるためには、太陽も 雨も水も必要なんだよ」 天気も気にしながら、水やりを進 んでする。 ・子どもたちと一緒に水遣 りをしながら、子どもの つぶやきに耳を傾け、気 付き、発見、疑問、不思 議に思ったことなどを 捉え、絵本や図鑑などを さりげなく出しておく。 水やりをしながら、野菜の生長を楽しみにする。 (期待する) 野菜が大きくなるために、必要な物(水、太陽、雨)がある。 (知る) 4 5月13日 1-②「看板作り」 水遣りをしたり、草取りをしたりし てお世話をしている。 「ねー、そこを踏んだら駄目だよ」 「何かあるといいよね」 「野菜の名前が分かるといいね」 「そうだよね。何か分かる物があ T: ると踏んだりしないし、見てすぐに 何の野菜か分かるね。何がいいか な?」 「そうだ!看板があるといいね」 「そうそう!」 「外だから、雨に濡れても大丈夫の 物じゃないと駄目だよね」 看板作りが始まる。 ・子ども同士で相談し、看 板を作ろうとしている 姿を捉え、材料や道具な ど要求があればすぐに 出せるように準備して おく。 ☆野菜の名前が分かるよ うに、畑を踏まないよう にという思いから看板 作りが始まった。日頃の 製作遊びの体験を活か し、工夫する姿が見られ た。 見て分かりやすい方法を考 え看板を自分たちで作りな がら、雨が降った時のこと も考えて材料を選ぶ。 (試行錯誤する) 5月20日 1-③「野菜の生長にビックリ!!」 「ピーマンに白いかわいい花が3個咲いたね」 「とうもろこしがすごく大きくなった」 「なすびの紫の花がなくなって、ギザギザになってきてる」 「赤ちゃんきゅうりができている」 「サニーレタスもう食べられるから食べよう!この前も食べた のにまたできたね。何で?どうして?」 「かぼちゃに黄色い花が咲いた」 野菜が大きくなるために必要な 物(支柱、水)がある。 (調べる・気付く・知る) 野菜によって咲く花の色が違う。 (気付く・知る) 食べても食べても出てくるレタ スの葉に不思議だと感じる。 (疑問をもつ) 収穫して食べる。(喜ぶ) ・野菜が日に日に大きくなり、花の色が違うことや疑問をもつようになってきたことを捉え、 疑問がたくさんになったときに地域や近くの野菜の先生に聞いてみる機会をもつことができ るように連携をとっておく。 ・不思議に思う気持ちに共感し、 「なぜだろう?」と一緒に考えたり、図鑑や絵本などで調べた りできるようにする。 ・収穫した野菜は採れたての新鮮さがある時に、子どもたちに食べさせるようにクッキングを し、美味しさを味わえるようにする。 ☆自分たちで野菜のお世話をして、日に日に大きく生長しいろいろな変化があることなどに気 付き始め、疑問をもったり、試してみたりする姿が見られる。 ☆苦手な野菜も自分たちで育てたという気持ちがあり、食べてみようという気持ちになったり、 収穫できる喜びを感じるようになってきている。 5 5月21日 1-④「とうもろこしの危機!」 ・みんなでどうしたらいいか考える ことができるよう話し合いの場 を設ける。 ・自分たちでどうにかしようとして いる姿を見守る。必要な時には声 をかけたり、材料や道具などをい つでも出せるよう準備したりし ておく。 ☆ポタジェでの栽培活動で経験し たことを活かし、とうもろこしに も同じことができると考えてや ってみようとする。 と うも ろこし が大き く なり、倒れかけていると 大騒ぎになる。 「どうしたらいいか」の 話し合いをする。 「 ミニト マト みたいに 真 ん中に 棒を 立てると いいかもしれない」 「やってみよう!」 どうにかしてとうもろこしを助けたい。(優しさ) どうしたらいいか話し合う。 (友達と一緒に考える) 経験してよかったことは、他の野菜にも同じことがで きるかもしれないと予想をたて、やってみる。(試す) 5月29日 1-⑤「今がチャンス!!」 「今がチャンスだよ」 T:「チャンスって何?どうし たの?」 H 児:「あのねー、雄花と雌花 が咲いたら赤ちゃんができる ようにくっつけないといけな いよ!」 「どうやってするの?」 「雄花をハサミで切って、雌 花にくっつけるんだよ」 「これで赤ちゃんができるよ」 T:「えー!!すごいこと知っ ているね。」 自分の知っていることをポタ ジェでもやってみようとす る。(試す) 5月30日 「そうなんだね。こっち ももう少しでチャン スができそうだよ」 「 チャン スが いっぱい できるように、水をあ げよう」 ・人工受粉(チャンス)について話すタイミングを考えていた が、H 児から出たことはすごくいいタイミングとなり、雄花 と雌花のことを聞いたり図鑑で見たりする場を設けた。 ☆実際に友達みんなの前で、人口受粉をして見せたことで、雌 花や雄花についても興味関心が出たり、他の野菜でもチャン スができることを知ったりするきっかけとなった。 ~保護者から嬉しいお便りが届きました~ 最近は幼稚園で教わったことを帰ってくると一生懸命、私に説明し教えてくれます。とにかく外 で遊びたくて仕方ないので、園外活動はもちろんですが、日々の園庭での遊びや、畑での水やり、 草取りなどの活動が楽しくて仕方ないようです。私も「へぇ~そうなの!?」と知らないことも多 く、毎日子どもが報告してくれるのを楽しみにしています。 年長さんになってまだ2ヶ月も経っていませんが、本当にいろいろな経験をさせてもらってい て、子ども以上に私が嬉しく思っています。 砂鉄集めや、畑、田んぼでの活動、生き物の飼育など活動が多いほど、不思議に思うことや悩ん で考える事が増えると思います。実際子どもも「本当だね。どうしてだろう?」と私の方が考えさ せられるような質問をたくさんしてきます。間違っていても、自分で考え、試して納得することは すごく大事なことだと思います。そんな“不思議”や“楽しい”がいっぱいの素敵な環境を作って くださる先生方に感謝の気持ちでいっぱいです。 写真入りのおたよりも頻繁に配布していただき、子どもたちの様子や考え方などがよく分かり、 一緒になってワクワクしています。毎回楽しみにしています。また、親子で幼稚園を楽しみにして います。協力できることは、出来る限り協力したいと思います。 6 6月3日 1-⑥「とうもろこしのわき芽が大きくなってきた。どうする?」 「とうもろこしのわき芽はいつ とっていいの?」と言いながら、 「このとうもろこしだけわき芽 をとってみようか。どうなるか やってみよう」 「とうもろこしの匂いがするか な?甘いかな?」 採って匂いをにおう。 T:「どんな匂いがした?」 「たけのこの匂いがする」 「緑の匂いがする」 「噛んでみたらどうかな?」 噛んでみて、 「やっぱり、たけの こみたいな味がする。まずいな」 6月10日 ・子どものつぶやきに耳を 傾け、どんな匂いか、ど んな味か五感を通して具 体的に気付けるような場 を設け、教師自身も一緒 に匂ってみる。 ☆自分たちが納得いくまで 五感を通して確かめてみ ようとしている。 見て、匂って、かじってみる。 (五感を通して確かめる・納得する) 1-⑦「キラキラポタジェで発見!発見!大発見!!」 【スイカについて】 「スイカの茎に毛が生えているの は、実を守っているからだよ」 「スイカのチャンスができた」 「スイカが少し大きくなって模様 が出てきた」 【きゅうりについて】 「きゅうりってチクチクがあるよ」 「きゅうりは細長い方がおいしい よ」 「きゅうりのトゲは、虫に食べられ ないようにあるんだよ」 気付いたことを言葉に表す。 (表現する) 自分なりに考える。 (予想を立てる) ・子どもたちのつぶやきを聞き逃すことなく捉えるこ とで、活動が広がるきっかけとなるようにする。 ☆ 活 動 の 合言 葉 に なっ て い る『 発 見 !発 見 !大 発 見!!』の言葉通り、子どもたちは栽培活動を通し て、調べたり、試したりなど自分たちでどんどんや る姿が見られる。そして、不思議に思ったことはと ことん追求しようとしている。 6月12日 【とうもろこしについて】 「とうもろこしの根が土か ら出てきたのは水をあげ るからだよ」 「わ~とうもろこしが森に なってきた」 「どこどこ?」「本当だ!」 「とうもろこしのヒゲがた くさん生えていた」 「ヒゲは、とうもろこしが できる印だよ」 「とうもろこし、みんなの センチ(背)超えているね」 「ぐんと伸びて花が咲い て、ゆらすと花粉が飛んだ よ」 「チャンスの成功だね!」 友達と一緒に喜びを共感する。 (共有体験をする) 自分たちの背の高さを比べる。 (物を測る) チャンスをやってみる。(試す) 1-⑧「生き物がたくさんポタジェに来るようになったのはなぜ?」 「最近、ちょうちょがたくさんポ タジェに飛んでくるのはな ぜ??」 「バッタ、あり、虫もいるよ」 「花の中でありがもじょもじょし ていた」 話し合いの場では・・・ 「蜜を吸いにきたんだよ」 「花粉を運んでいるかもしれない」 「チャンスをしてくれているんじゃ ない」 絵本の読み聞かせを聞く。 「チョウチョやアリたちが、黄色い花 粉を運んでチャンスしてくれてるん だね」 「なぜだろう」と思う。 (疑問をもつ) ・疑問をもったことについて、話し合いの場 を設ける。 ・人工受粉だけでなく、自然に受粉すること に気づかせるために、写真入りの図鑑や絵 本の読み聞かせをする。 ☆「なぜだろう?」という疑問にぶつかり、 自分たちで考え、答えを出そうとしてい る。 「そうだったんだ」 (見て聞いて解決する・新たに知る) ☆子どもたちの不思議に思ったことを、逃すこと なく考えさせ、また視覚的に訴えて分かりやす く話したことは、新しいことを知ることになり、 活動がさらに広がっていくきっかけとなる。 7 6月14日 1-⑨「発見!発見!大発見!!をみんなで絵を描いたり写真を貼ったりしよう」 写真を見ながら今までの様子を振り返 り、楽しみながら文字や絵を描く。 案内図作りをする。(文字や絵で表現する) ・子どもたちの発見したことや疑問に思ったことな ど、振り返って「あの時は○○だったね」「今は こうだよね」など比較したり、見て分かるような 表現の仕方を考えたりする。 ☆キラキラポタジェ案内図の前で立ち止まり、友達 と会話を楽しんだり、野菜の生長を感じ、喜んだ りする姿が見られた。 6月17日 1-⑩「ポタジェの野菜でクッキングしよう」 「ピザが作りたい」と 野菜を収穫する前から 話していた子どもた ち。 ピーマンや玉ねぎを切 ったり、チーズをのせ たりして作る。 自分たちで作って食べる。 (作る楽しさ、食べる喜び) ピザを作れて嬉しい。 (満足感を味わう) ・手を切らないように声をかけ、全員が少しずつ切 ることができるようにする。 ☆ポタジェでは、野菜の収穫ができるようになり、 子どもたちは収穫する喜びを感じている。 ☆自分たちで育てた野菜ということもあり、苦手な 物も「おいしい」と感じながら喜んで食べる姿に つながっている。 6月18日 「すごくおいしい」 「ピーマン嫌いだったのに、ど こに入っていたか分からない くらいおいしかった」 「まだまだおかわりしたい」 「とうもろこしの小さいのは食べられるかな??」 「ちびとうもろこしがお店にあ ったよ」 T:「そうなの?じゃあ食べられ るってこと??」 「そうだよ」 T:「先生、ちょうどいい本を持 って来たからみんなで見てみよ う」 本をみんなで見て確かめる。 「ブロッコリーみたいに柔らかい」 「柔らかいね」(食感を楽しむ) 「ヤングコーンって言うんだね」 ・とうもろこしについての本を持って来て、ポタジェで子どもたちに見せて話をする。 ・「食べてみよう」という気持ちをもっていることからゆでて食べさせる。 ☆ヤングコーンを食べながら自分が食べたことのある物と食感が似ていることを感じ ている。 ☆ポタジェで育てている野菜のいろいろな部分を食べて味わってみようとする姿が伺 える。 8 6月21日 1-⑪「キラキラポタジェレストラン開店!!」 「園長先生がポタジェでとれた キュウリや、わくわく畑でとれ たジャガイモでポテトサラダを 作ってくれるって言われたよ」 と、とれたての野菜でクッキン グして食べさせてもらう。 園長: 「チケットを使ってレスト ランに来てください」 「どんなチケットにしようか C: な?」とわくわくしながらチケ ット作りをする。 「おいしい」「甘い」 「やっぱりすぐに食 べ る と お い しさ も 違うね」 と れ た ての 野 菜 を何 度 も食べる経験をする。 (知る・納得する) 「どんな料理かな?」 (期待する) 「また食べられるね」 (喜ぶ) ・自分たちのポタジェの前でレストランをすることにより、子どもたちの気持ち(嬉し い・喜びなど)を実感することができるようにする。 ☆わくわくどきどきした気持ちでチケット作りをしたり、食べたりしていることから、 野菜のおいしさを活動を通して感じている。 6月25日 1-⑫「いろんな疑問や不思議を野菜の先生に聞きに行こう!」 <島根県立農業技術センター> 赤ちゃんの苗の部屋や水やりの仕方について話を 聞きながら、見て回る。 先生: 「ここは赤ちゃんの苗を育てる部屋だよ」 「赤 ちゃんの苗には、優しくシャワーのような感じで 霧吹きの水やりをするよ。花によって水やりの仕 方は違うよ」 「えー、優しく水をかけないといけないんだね」 スイカのお部屋に行き、見せてもらい、自分たち の育てているスイカと比べる。 先生: 「ここは、スイカとかぼちゃのお部屋だよ」 と話されると「私達の幼稚園でもスイカ作ってい てチャンスしているよ」と自信満々に答えていた。 先生: 「今日の朝も、チャンスしたよ」とチャンス したての赤ちゃんスイカを見せてもらう。 先生: 「チャンスをした日にちを書いて貼るよ」 質問をする。 (納得・新た な疑問をもつ) いろいろな 水遣りの仕 方がある。 (知る) たくさんのス イカに驚きな がらも、自分 たちのポタジ ェのスイカの 栽培の様子を 思い浮かべ る。 (比べる・ 知る) 子どもたちが質問する。 C: 「スイカの 1 番目のチャンスはしないのはなぜ?」 先生: 「1 番目は体(体)が小さいから大きい実をならせるとご飯 (栄養)がなくなるよ。実が大きくなってからチャンスをすると 大きいスイカができる」 C: 「サニーレタスは、とってもとってもまた出てくるのはなぜ?」 先生: 「真ん中の葉っぱの赤ちゃんがいるから、また大きくなって 次々できるよ」 C:「チョウチョとか虫がたくさん飛んでくるのはなぜ?」 先生: 「匂いをかいで飛んでくるよ。かぼちゃの花は黄色に見える けど、虫には青に見える。花が虫たちを呼んでチャンスをしてく れるよ」 などまだまだたくさんの質問をする。 質問しながらも、次から次と不思議が増えてさらに聞く。 9 ・野菜の栽培での疑問や不思議を感じながら、試したり解決しようとしたりする姿から、専 門の先生に聞く場を作る。聞く場を作ることで更に子どもたちの興味関心・意欲が高まる のではないかと考える。 ☆いろいろな野菜や花のお部屋を見せてもらい、栽培の様子を見たり聞いたりしたことでさ らに自分たちのポタジェで活かそうとする意欲や納得する姿が見られた。 7月1日 1-⑬「とうもろこしが大変だ!!どうにかしないと!」 とうもろこしが1本きれいに実 だけを食べられているのを発見 する。 「何で?カラスが食べたの では?」 「アリもついていたから アリかもしれない」 「カラスに食 べられないためにどうにかしな いと!どうしたらいいかな?」 話し合いをする。 「食べられる前にもう食べる」 「でも、早く採るとおいしくな いよ」 「キラキラ光る物を考えれば いい」 「古くなったキラキラの DVD をぶら下げる」 「糸をはるといいよね」 大事に育ててきたとうもろこ しが食べられる。 (ショック・ 解決策を考える) ・「どうしたらいいかな?」と考えよ うとしている気持ちを大事にし、 話し合いの場を設ける。 ☆大切なとうもろこしをどうにかし て守りたい気持ちが見られた。 一生懸命考える。(自分たちの 経験を振り返る・活かそうとす る) 「食べるって言っても、いつにな ったら食べられるかな??」 「あのね、毛の所が茶色くなった ら食べられるよ」 「そうそう、食べられる印」 図鑑を見る。 (調べる) 家の人に聞 く。(聞いて 確かめる) 「カラスからとうもろこしやスイカを守りたい!」 昨日の話し合いから家から DVD などを持って来る。 みんなで、ポタジェに行き、糸 を貼ったり、キラキラテープや DVD をぶら下げたりする。 「これで大丈夫!」 「毛が茶色くなっているの は、食べてみよう!」4本収 穫する。 ゆでて、とれたてのとうもろ こしを食べる。 「あま~い」「こんなに甘い とうもろこし食べたことな い」「お店のよりもおいしい ね」 「やっぱり、毛が茶色くなっ たら食べられる印だったね」 (納得する) 「守りたい!」 (強い意志をもつ) カラスよけを作る。 (行動を起こす) 7月2日 ・子どもたちの野菜を守りたい強い気持ちを知り、 教師も一緒に対策を考える。 ☆話し合った次の日に材料を持ってきて早速対策を しようとする姿から、興味関心の薄い子どもの心 にも響き、みんなでしようとする姿が見られる。 1-⑭「チャンスをしてくれるかもしれない!」 部屋で飼育していた青虫のサナギか らモンシロチョウが出ていることに 気付く。 「飛びたいっていってるよ」 「逃がしてあげよう」 「そうしよう」 「待って、ポタジェに逃がそう」 「チャンスをしてくれるかもしれな い」 「ポタジェに逃がしてチャンスして、 命はみんなつながっているんだね」 チョウチョも受粉してくれることを 知ったことから、ポタジェに逃がす。 (知ったことを確かめる) ・教師は、子どもたちのつぶやき、行動を見守る。 ☆保育室で飼育していた青虫がチョウになったことで、 喜ぶのと同時に、ポタジェでの活動を結びつけて「チ ャンスをしてくれるかもしれない」と考え、「命はみ んなつながっている」と感じる。生き物の野菜も命が あることに気付き、命を大切にしようとする気持ちが 芽生えていることが伺える。 10 7月16日 1-⑮「野菜の音を聞いてみようよ」 きゅうり、ピーマン、ゴーヤ、かぼちゃなど喜んでたくさん収穫 する。 前々から、スイカをいつ収穫するか子どもたちと話し合ってい て、 「茎が茶色くなったらだよ」 「スイカの近くのつるが枯れたら だよ」といろいろと調べたり聞いたりして話している。 「だったら、スイカの音を聞いてみよう」という一人の子どもの 言葉から子どもたちは、 「でもどうやって??」と思う。 「あのね、 聴診器で聞くの。病院でも心臓の音とかお腹の音を聞くやつ」 収穫することが楽しい。嬉しい。 ・「野菜の音を聞いてみる」という子どもの発想に驚くが、思 (収穫できる喜びを感じる) いが叶うように聴診器を準備する。 野菜も音がしているかも。 (予想 音がするか聞いてみる。 を立てる・やってみる) 「きゅうり、ピーマン、ゴ ーヤは音がしない」 「スイカは、ドクドク言っ てる」 「ゴトゴト言ってる」 T: 「えーーー!!先生にも 聞かせて!」「本当だ!」 音が聞こえるか聴診器をあ てる。(確かめる) 「音がするってことは、スイカ も生きているね」 「僕たちと一緒で、生きている」 ☆野菜にも命があることに気付き、自分たちと同じと感じる。また、 「や ってみよう」 「試してみよう」という気持ちがどんどん強くなり自分 たちでどうにかしようとする姿がたくさん見られる。 7月18日 1-⑯「世界一、おいしいスイカだよ!」 「野菜も僕たちと一緒 で生きている」(命があ ると知る) いよいよスイカを切って みる時がくると、「一生懸 命カラスからも守ったし 水遣りしたよね」「ちゃん と赤くなってるかな?」 「甘いかな?」とドキドキ する。 包丁を入れると「バリッ」 と音がする。「今バリって 音がしたよね!」と期待は 膨らむ。次の瞬間「あー、 赤い!」「おいしそう」と 大歓声があがる。 「スイカのつるが茶色く なったから食べられる印 だから、ハサミで切り離そ う」と、友達が見守る中代 表の子どもたちがスイカ を切り離す。 「甘いね」 「先の方がスイカ のアイスの飴みたいに甘か った」 「水遣りを頑張ったか ら、おいしいスイカができ た」 「いっぱい赤かったから おいしかった」 「また食べた い」 「匂ってみたい」と次々に 匂ってみる。「スイカの匂 いがする」 「赤くなっててね」(心から願う) 「大成功!スイカ1号だね」 (大満足する) 匂う。(五感で確かめる) 「水遣りを頑張ったから」 (振り返る) ・子どもたちと共に大切に育ててきたスイカという思いを教師自身ももち、ドキドキしたり一緒 に喜びを味わう。 「暑い日も雨の日も、みんなでいろいろな方法を考えて大切に育てたよね。命 ある物にはみんなの気持ちもちゃんと伝わって美味しく出来たと思うよ」と話す。 ☆今まで大切に育ててきたスイカへの思いから、 「赤くなってて」と願い、そして嬉しさを体と言 葉で表現することにつながった。 11 (1)-⑰『自分の(一人一人)のキラキラポタジェ大作戦』 ・子どもたちの「やってみたい」 という気持ちを大事にし、保護 「野菜の切れ端も生きているかな?」 者へも子どもたちの気持ちを理 解してもらえるようお便りを出 絵本「やさいはいきている」 して協力をお願いする。 を友達と一緒に見る。 ☆ポタジェでの野菜を苗や種から 「これ(水栽培)やったこ 育てている経験から、 「もしかし とある」「やってみたいね」 たら切れ端も、生きているので はないか」と思い自分たちで進 「やってみたい」 (意欲) んでやってみようとする姿が見 「どうなるかな?」 (試す) られる。 ☆できた野菜を「食べる」以外の ことにも試してみようとする姿 大根、人参、ブロッコリー、 が見られる。 水菜、ジャガイモ、豆苗、ミ ニトマトのわき芽などを水栽 ・一人一人の姿を見守りながら、 培を始める。 少しずつ新しい葉が出てきてい ることを共に喜んだり、共感し 毎日観察し、 「葉っぱが伸びて たりする。 きた」 「水菜からまた水菜が生 えてきた」 「本に書いてあった通りだ」(納得する) 「もう少し伸びたら、ザリガ 「野菜の切れ端は生きていたね」(実感する) ニの餌にもなるね」 「種から芽が出るのかな?これも生きているかな?」 ポタジェで の栽培 活動をしながら、こ れも植えて みたら どうなるかな?」と 思い、いろいろな種 を植えてみる。 「大きくなってきたからあまり水はやりす ぎると駄目だよ」 「日陰に入れないといけないよ」 「メロンの 種から芽が出たね」 「びわとすいかとジュンベリーは芽が出な かったね」 野菜の栽培でも いろいろな栽培 の仕方がある。 (気付く) 試すことの楽し さを感じる。 (実感する) ・植える場所を子どもと一緒に考えたり、植えてもいいプランターを 準備したりする。 ☆種という物がある野菜、果物などを見ると、小さな種でも採ったり、 種を乾かしてみたりする姿が見られる。また、種から芽が出ると、 「水 はあまりやりすぎは駄目だよ」 「太陽があまりあたりすぎると駄目だ よ」など自分が知っていることを友達や教師に伝える姿が多くなる。 「キラキラポタジェ案内図」 ☆子どもたちが自分の興味、関心をもった場で、種を蒔 いたり、苗を植えたりしたので、活動後や帰りの会の 時に話し合いの時間をもった。M 児の発案で「写真 や絵があるとよく分かるよ」 「案内図がいい」という ことになり“キラキラポタジェ案内図”を作ることに なった。このことにより、ポタジェ全体の活動の様子 が分かるようになり、保護者への広報にもつながっ た。 12 【家から持ってきた種】 かいわれ、ジュンベリー、 おじぎそう 【ポタジェの野菜】 ピーマン、ミニトマト、ス イカ 【園庭にある】 びわ 【給食で出た物】 メロン、スイカ、いちじく (2) 『石・砂・砂鉄の不思議を探ろう』 子ども(C)の姿 (4月~7月) 5歳児 教師(T)の援助・環境構成 ☆考察 進級した喜びを感じながら園庭で力いっぱい遊ぶ子どもたち 「これは何だろう?」 「私も金を見つけたい」 昨年の年長児が硬いスコップを使って砂山を掘っていたのを思い出し、 「僕 たちも、年長組になったんだ」と硬いスコップで力いっぱい掘ったり水を流 したりして遊んでいた。そのうち「ここは温泉」 「こっちは川だよ」と言いな がら、もっと長くしよう、もっと深く掘ろうと懸命に掘り続ける。そのうち、 地面が黒くなったりざらざらの砂粒が出てきたりと変化しているのに気付い た。M君が、集めた砂を見て「これは金だよ」と教えてくれて、子どもたち はびっくりする。それから、みんなで金集めが始まった。金の他にもキラキ ラ光る石やすべすべの石を見つけたり「化石とか出てくることもあるよね」 「地面を掘るには、硬いスコップじゃないとだ と探したりするようになった。 めだよ」 「金や石を見つけるにはふるいで振るって探すんだよ」など、互いに 知っていることを伝え合い、毎日掘り続ける子どもたちの姿が見られる。 ☆ 昨年も遊んでいた園庭であるが、年長児になり硬いスコップが使えることや、年長組だからもっ と深くもっと長く、掘ったり作ったりできるという気持ちが子どもの意欲を高めていた。「年長 組だから、もっとすごいことができるぞ」という心情を大切に主体的に活動する姿を支えること にする。 ・遊びの中で不思議に思う気持ちや金や化石を発見したいという願いなど「もっと探ってみたい」 「本 当に見つけられるのかな」という知的好奇心や葛藤を喚起するような環境の準備を行う。 4月18日 砂鉄って何? 園庭の砂や石を集めている子どもたちの中で「砂鉄って磁石につくよね」と 言う子どもがいて、磁石を用意した。ところが、磁石であちこち探すが、なか なか集まらない。磁石で探りながら園庭を行き来する子どもたち。ほんのわず かしか集まらなかったが、カップに入れて大事にしまう姿が見られた。 さら粉作りは楽しいな 川を掘っている横の赤土山では、山をけずってすり鉢でつぶし、ふるいにか けてさらさらの粉作りが始まった。赤土山といっても、けずる場所によって土 の色が赤だったり黄色だったりする。そのうち、さら粉を集めている子どもた ちが、色を比べてみると「赤」 「黄色」 「ピンク」 「茶色」「黒」「オレンジ」な ど、一人一人違っていることを発見!同じピンクでも濃さが違っていることも …。同じ山なのにどうして?また、日によってさら粉が集めやすい日と集め にくい日があるのは何故?など不思議なことがいっぱいとなる。集めたさら 粉は、ペットボトルに集めて、自分の名前を書いて取っていた。 ☆ 砂鉄は、磁石にくっつくことが魅力であり、少ししか集められなかったにもかかわらず、繰り返 し探していた。石、砂、泥、さら粉、砂鉄とかかわる中で、物の性質や違いなどこれまでの経験 や知識と結びつけながら、新たに、いろいろなことに気づいていこうとしている姿が見られる。 13 (2)-①「砂鉄を集めよう・砂鉄で遊ぼう」 子どもたちは、園庭で次々にさら粉や石を集めたり、興味を 「砂鉄はどこにでもあるのかな?」 もって見たりしているので、教師は図書館で『鉱石』 『石で遊ぼ う』等の本を借りてきた。本を廊下に置いておくと、子どもた ちは、すぐに手にとって見ている。自分が集めている石を手に とって「これはこの石に似てるなぁ」と比べたり「恐竜の骨も でてくることがあるんだあ」など関心を広げたりしていた。ま た図書館の本を見るようになってから「水に浮かぶ石を見つけ たよ」とか、絵が描ける石で絵を描く子ども等、園庭での発見 や気づきに広がりが見られた。砂鉄集めの子どもたちは、やっ と、砂場のさらさらの砂の中に砂鉄がたくさんあることを見つ けて、毎日のように磁石で集めていた。 ある日、園外保育で高西公園に出かけた。久しぶりの園外保 育であり、子どもたちは滑り台や大型遊具で、大喜びで遊んで いた。しかし、しばらくすると子どもたちは、 「見て!こんな石 があったよ」「ほら、変わった色の石でしょ」「すごい!水晶で しょう、これ!」と次々と石を拾って見せに来る。また「高西 公園に砂鉄ってあるだあか…?磁石持ってくれば良かったわ」 と残念がったり「先生、磁石ある?」と聞いたりしてきた。高 西公園に遊びに来ていても、子どもたちの石や砂鉄への興味関 心はつきず、その好奇心や自ら試してみようとする気持ちには 驚かされた。自分から考えて意欲的に取り組んでいくことは、 小学校で学習する態度へとつながっていくのではと考えられ た。そこで、幼稚園に残っていた園長先生に磁石を持って来て いただくと、すぐにあちこちで砂鉄集めが始まった。幼稚園で 体験したように、砂場や砂場の近くのアスファルトには当然、 砂鉄があると思って集める子どもや、新たな場所にもあるかど うか試してみる子どもと、それぞれに目は真剣であった。 ・子どもたちの探究心や様々な疑問に答えるべく、砂鉄や石にくわしい加古さん(保護者)に来園し てもらい石や化石についての質問や砂鉄の集め方を教えていただくことにする。子ども自身の活動 が深まり体験や思考力が高まることを期待する。 (2)-②「石にも名前があるんだよ!!」 加古さんは、自宅から砂鉄を集める用具や砂を持って来て、実際にやって見せてくださった。水の中 で、石ころや砂が混じっている砂を、ざるや容器を使って、揺すったりぐるぐる回したりしているうち に器の中が黒い砂鉄だけになっていく。子どもたちは、加古さんの職人技に、目を丸くして「すごい!」 と驚いていた。そして「やってみたい人?」と聞かれると、全員が「は~い、やってみたい!」とやる 気満々で手をあげ、自分たちも体験してみた。 それから、子どもたちに絵を見せながら分かりやすく『石はどうやってできたか』を説明された。ま た、子どもたちが、園庭で集めた石を1つずつ見て「これはカコウ岩だね」 「これは砂岩かな」「これは めずらしい石を見つけたね」と、話してくださった。自分たちが興味をもって集めたり考えたりしたこ とを、加古さんが誉めたり認めたり真剣に答えたりしてくださって、子どもたちは満足感を味わうこと ができたと感じた。また、化石を持って来られ、幼稚園に寄贈してくださったので、知的好奇心を揺さ ぶられた子どもたちは新たな活動が広がっていくように予想される。 砂鉄を集めるには… この石は何ですか? だんだん砂鉄になっていくね 14 ・ 石のことや砂鉄の集め方について知った子どもたちは、家庭で情報収集してくるようになる。「斐 伊川って砂鉄があるらしいよ。たくさん集められるのかなぁ」「僕、日曜日にキララビーチで砂鉄 を集めたよ」など友達や教師に伝える姿が見られるようになってきた。教師は、家庭で出かける時 にも、磁石を持って行く子どもたちに感心する。また、「〇〇ちゃんみたいに、キララビーチに行 きたい」というクラスの盛り上がりを感じ、 「園外保育に行くのは、今だ」という思いをもつ。 ・ 年長組の担任と子どもたちと話し合いをもつ。 (どこに行くか、どうやって行くか、何を持ってい くか等)★斐伊川 ★キララビーチ ★シーサイド公園に出かけることにする。 (2)-③「斐伊川は砂鉄がいっぱいだね」 斐伊川には、貸切バスで出かけた。前日までに子どもたちと話し合い、バケツやシャベル、磁石など 持って行く物を一緒に準備した。斐伊川では、到着するなりすぐに磁石を動かして砂鉄を探す姿が見ら れ、「わ~すごい!こんなについたよ」「いっぱいあるね」と予想以上の砂鉄の多さに驚いていた。ま た、シャベルで優しく掘ってみると、横に砂鉄の層があり、そこの砂鉄を持ち帰ることにした。 加古さんは、斐伊川について来てくださったので、川の中で砂鉄を取る方法を教えてもらい、一緒に やってみる子どももいた。 砂鉄がいっぱいくっついて なかなか磁石から離れない な こんなにたくさんの砂 鉄が一度につくよ 砂を持って帰って、幼稚 園でもやってみよう (2)-④「キララビーチの砂鉄はすごい!!」 キララビーチに着いた子どもたちはびっくりした。砂浜には砂鉄が帯状に道を作っていて、磁石を 「うわ~こんなに!!」 「すごい、見て見て!!」 近づけると取りきれないほど砂鉄がくっついてくる。 とあっちでもこっちでも歓声があがるほど。夢中で集めてバケツに入れていった。砂浜の砂鉄の道を 「砂鉄の道は川みたい」とか磁石を近づけて「キララの砂鉄は竜巻みたいにぐるぐるだ~」と言 見て、 って、やや興奮気味である。あまりに砂鉄がくっついて、なかなか磁石から離れずに嬉しい悲鳴をあ げる子どももいた。 幼稚園でも砂鉄を取るために、砂をペットボトルに入れて持ち帰ることにする。 (2)-⑤「化石を発見したぞ」 やった~化石だ! シーサイド公園では、石だらけの海岸を一生懸命に歩いて、石や化石を探し た。「紫の石だ!」 「つるつる」 「これは富士山みたい」など色や手触りや形に 気づきながら、次々に拾っていった。そのうち「見て!これ!」と、化石を発 見した子どもが驚きと共に石を見せに来る。みんな、頭を寄せて化石を見せて もらい「わ~すごい。本物の化石だ!」とうらやましそうな表情であった。 いろいろな石の形や色から、子どもたちの想像も広がり、 「このハートの石 は、ポタジェ(畑)の道にしよう」「なんか絵が描けそうだわ」 「これはカコ ウ岩だよね。仏さんのとこ(墓石)に似とる」など感じたことを友達や教師 に伝えていた。 見つけた石を持って帰ろうと声をかけると、石が大きくて持ちにくかったり 重かったり、また、石畳なので歩きにくかったりしたが、自分で抱えてバスま で運ぶことができた。子どもたちには、少々困難なことでも、目的があれば達 成しようとする気持ちや態度が育っていることを感じる。 15 (2)-⑥「砂から砂鉄を取り出そう」 斐伊川やキララビーチで集めた砂から、加古さんに教えてもらった方法で、砂鉄を取る活動を行 った。道具がたくさんなかったこともあり、自然と役割分担ができ、粗い砂をザルで取り除く子ど もたちと水の中で砂をふるって砂鉄だけ取り出す子どもに分かれた。その作業をしながら、子ども たちは「昔は、砂鉄で剣とか作っていたんだよね」「剣を作っていたということは、砂鉄は宝って ことだね」「でも、今はあまり作っている所はないんだよね」等の会話が聞かれる。家庭で聞いた のか、5歳児らしい会話や知識に感心する。作業を進めていくうちに、器の中に砂鉄だけ残ると「砂 鉄があったよ」と友達と見せ合って喜ぶ姿が見られた。 「さらさらとざ 「あっ砂鉄が らざらの砂を 見えてきた 分けよう」 よ」 「これはもう分 「難しいな けたから使っ ぁ」 ていいよ」 『砂鉄の取り出し方』 (2)-⑦ 「『はっけん はっけん だいはっけん かれんだー』を作ろう」 砂から砂鉄を取り出したり化石の石を発見したりする中で、子どもたちが不思議に思ったこ とを調べたり気づいたりする姿に何度も出会った。そして、もっと集めたい、試したいという 気持ちは尽きることがなく活動が続いたので、子どもたちと相談して『はっけん はっけん だ いはっけん かれんだー』を作ることにする。自分たちの活動の写真を見ながら、 「ここで砂鉄 を見つけたね」 「斐伊川には、砂鉄や金うんもがいっぱいあったよ」「石の名前がいろいろ分か ったね」など活動を振り返りながら、絵を描いたり試したことを書き記したりして、楽しくカ レンダー作りを行った。 16 (2)-⑧「世界でひとつだけの砂時計を作ろう」 子どもたちが、歯磨きのときに使っていた砂時計が壊れてしまい困って いると「自分で作ればいいんじゃない」と言い始める。「さら粉もあるし、 砂鉄もあるしね~」と簡単にできると思っていた。しかし、実際に教師が 作ってみると、うまく砂が落ちなかったり途中で止まってしまったりする。 砂時計作りを通して試行錯誤や工夫する姿が育って欲しいと願い、取り組 み始めた。 ・教師が、ペットボトルや100円ショップで見つけた容器を使い、さら粉と砂鉄で作ったいくつかの砂時 計を子どもたちに見せる。 H 児「こっちの方が早い、ざーっと出るわ」 教師「これは、砂が落ちないけど…どう?」 R 児「砂の量が違うんじゃない」 S児「こっちは、ここの所の形が太くなってるから」 教師「これとこれは砂の量は同じだよ」 N児「普通は、もっとすらすら落ちるもんね」 Y 児「穴の大きさが違う?!」 「すり鉢を持っとい てね」 「力を入れてつぶす んだよ」 ・砂の中のゴミや大きな石を取り除く ・ふるいで細かい砂と粗い砂に分ける ・すり鉢とすりこぎですりつぶす ・この作業を数回繰り返す 子どもたちが思った以上に大変で時間がか かる作業だった。互いにすり鉢を押さえたり 励ましたりするなど協力する姿が見られる。 何度かやるうちに、すりこぎの使い方が上手 になってくる。 大事な砂がこぼれない ように、気をつけて… 世界に一つだけの砂時計を作ろう 「僕は歯磨きの時の3分時計を作るわ」 「私は、片付けの時の5分時計にする」な ど、自分用の時計を作ることを楽しみに砂 をつぶしていた。砂の量と穴の大きさや砂 の粒の大きさの関係に気づいて繰り返し試 して作るようにしていきたいと考える。 子どもたちにとって砂時計は生活の道具として捉えら れていたが、 『邇摩サンドミュージアム』で「砂時計展」 を見学し、いろいろな砂時計を見たことから、砂時計を 装飾品として考えるようになっていった。 「キラキラ光る 砂時計にしたい」「カエルの形がいいな」「砂鉄で作ると 磁石で砂が動かせるね」 「ピンクの砂にしたい」等、造形 的にも工夫しようとした。 絶対に、さら粉で砂時計を作るぞ! H児は、どうしても自分が集めたさら粉で砂時計を作りたいと思い、 すりつぶしていたが、さら粉はもともと赤土なので、湿っていて、ふる いにかけても砂時計の砂のようにさらさらにはならないようだ。でも、 H児はあきらめず、 「もっと、細かくすりつぶせばできるかな」と、さら にすりつぶそうとする。また、「もう少し目の小さいふるいってない?」 と考えたり、さら粉に砂浜の砂を混ぜてみたり、やり方を変え、自分で 納得いくまでやろうとする。1 週間の試行錯誤の後に H 児のさら粉砂時 計は完成した。 17 (2)-⑨「砂鉄スライムを作って遊ぼう」 科学館の幼稚園理科学習が塩冶幼稚園で行われた。これまで、砂や石、砂鉄の遊びを継続して取り 組んできた子どもたちにとっては、大変貴重な体験となった。 科学館の山内博士(子どもたちは『博士』と呼んでいた)の説明を聞きながら、自分で砂鉄スライ ムを作る活動であった。山内博士が、この日、子どもたちに体験させたいことの一つに、プラスチッ クのビーカーの線が引いてある所まで、自分で水を入れるという課題があった。目線をビーカーの線 まで下ろさないと、水が正確に入れられないし、水の量によってスライムの硬さが決まってしまうの で、子どもたちも慎重に入れていた。難しそうに思えるが、「できない」と言う子どもはいない。砂 鉄スライムを作りたいという思いが、子どもの気持ちを真剣にさせていることを感じる。ビーカーを 見つめる子どもたちの目の真剣さは、みんな小さな科学者のようだった。糊に水とホウ砂を加えて、 袋の上からこねるとどんどん感触が変化していく。「ぷにゅぷにゅする」「きれい」「ゼラチンみたい になった」など、ホウ砂を混ぜる前と比較して、その変化について気づいたことを次々言葉にしてい た。次に、砂鉄を入れるとキラキラととても綺麗だった。(砂鉄スライムと普通のスライムの2種類 作った)ビニール袋から出して、トレイに乗せ、磁石で試してみる。砂鉄スライムは、まるで生きて いるかのように、びよ~んと伸びて磁石にくっついた。みんな、大喜びで何度も磁石をくっつけたり 離したり試していた。 片付け、手洗いをしてから終わりの会を行い、子どもたちに、砂鉄スライム作りの感想や気づいた 「混ぜると固まった」 「砂鉄を入れると色が ことを尋ねると、たくさんの子どもたちの手があがった。 変わった」など、物の性質の変化を不思議に感じた子どもが多かった。これまでの活動の中でも、砂 や泥など水と混ぜたりふるったりすることで変化し、その性質に気付いてきた子どもたちだったの で、スライム作りの活動でも、いろいろな事に気づくことができたと感じる。また、新たに糊やホウ 砂などを使うことで遊びが広がった。 「砂鉄スライム作りについて保護者からの感想」 作った2種類のスライム を「見て見て~」「触ってみ て」と言って帰るなり見せて くれました。砂鉄入りの方 は、磁石を近づけたりして幼 稚園でやってみたことを家 族にもやって見せてくれま した。興味をもって集めてい た砂鉄が「砂鉄スライム」に なるなんて、親もびっくりで す。砂鉄集めという一つの体 験から出前事業を通して新 しい体験をさせていただき 嬉しく思います。 前日から楽しみにしていた我 が子。家に帰ってから早速、弟 に自慢げに話をしていました。 「僕が作ったんだよ」 「おにいち ゃん、すごいね!」と兄弟で盛 り上がっていました。この経験 で得た不思議、発見、達成でき たという気持ちを大切にして欲 しいなと思います。私自身、小 さい頃、緑色のスライムで遊ん だことがあると話をすると「じ ゃあ、次は緑色のスライムを作 ろう!」とやる気満々。近々、 家族みんなで作る予定です。 ぷるぷるになったね~! 【科学館モデル事業の成果】 ・ 子どもたちにとって、日常の保育と異なり、 「博士に教えてもらう…」という期待感をもって取り 組むことができた。今までの活動の積み重ねで興味関心が深まっている砂鉄と普段の遊びの中で 使わないビーカーやホウ砂を使い実験するという内容だったので意欲的だった。 ・ 教師にとっても、教材の示し方、発問、援助など全ての面で、理科学習を学ぶことができた。ま た、子どもたちと共に「科学する心」を深めることができた。 ・ 事前事後の話し合いを通して、幼児期から学童期における学びについて、科学館の職員と共通理 解を図ることができた。 18 (3)『わたし、カエルなんてだいきらい!』~生き物との触れ合う一歩~(6 月~7 月)3歳児 みんながカエルで 遊んでいると、D 児やH児は「わた し、カエルだいき らい」と泣き出す。 しかし、カエルの お面で遊びたい様 子が見られる。 まだカエルには 触ることができ ないが、カエル なって遊び、関 心をもち始め る。 教師と一緒に、園 庭の草の中をそ っと歩きながら 探し、カエルを見 つけると「い た!」と喜ぶ姿が 見られるように なった。 「カエル触れるようになったん だよ!」と嬉しそうにH児とD児 は言い、自分でカエルを捕まえる 場面を教師に見せる。 T:「Hちゃん、Dちゃん、自分 でカエル捕まえたね!すご い!!」 H児:とても嬉しそうな顔にな り、得意そうであった。 ☆考察☆ 教師が子どものつぶやきをありのまま受け止めたり、カエルを捕まえて一緒に遊んだりしたこと で、カエルに興味関心をもつことができた。また、お面を作りカエルになりきって遊ぶ体験を通して、 よりカエルに親しみをもつことができた。カエル(生き物)に「触ってみよう」という子どもの心を 動かすきっかけとなった。 (4)『さくらぐみ、いろいろすいぞくかん』~命の不思議を見つけよう~(6 月~7 月)4歳児 【ドジョウの仲間入り】 【オタマジャクシの成長過程】 【ザリガニの名前付け】 【メダカがころんってなってる】 「うわぁ、ぬるぬる だ~。」 「ひげやてんてん したもようがある んだ!」 触ってみる。 (生態に気づき、 かわいがる) 「ぴょっこと手が出てき た」 「オタマジャクシがかえ るの目になった!ほら、目 がくりくりしてるが!」 成長を喜ぶ。 (興味、関心の深まり) 生態の変化に気づく。 (不思議に思う) 「ざりちゃ んおはよう」 名前を付ける。 (親しみをもつ) 「メダカ、どうして死 んじゃったの?」 「悲しいよ」 「僕たちも めだかも 一緒なんだ」(命があ ることを知る) ☆考察☆ ドジョウ、オタマジャクシ、ザリガに、メダカがさくら組に仲間入りしたことで、1 学期間を通し て生き物との触れ合いを深めることができた。この時期に、自分たちの仲間として一緒に過ごし、親 しみをもってかわいがったり生態の変化に気づいたりしたことで「僕たちの仲間の○○ちゃんが」と 興味、関心を深めた。時には生き物の死に出会い悲しい体験もしたが、このことにより命の大切さを 感じることができた。 3【まとめ(実践の考察) 】 実践を通し子どもが「あれ?」 「おもしろそう」 「なぜだろう?」 「・・・してみよう」と感じ、遊び込む プロセスに教師は後を追いかけながら幾度となく感動し、教師にとっても学びとなった。 見通し①自然や事象の中で体験を基にして、幼児の心情を読み取りながら、環境の構成や援助をして いけば、幼児は心を動かし主体的に遊びを創造していくであろう。 見通し②幼児の「科学する心」が一層深まるように、遊びや活動を友達同士で話し合ったり、表現し たりする活動を重視すれば、自ら考えようとする気持ちが高まるであろう。 このような見通しをもって実践を進めたが、教師の予想以上の子どもの思考、表現、行動に教師が感 動する場面が多々あった。子どもの思いに添って、共感し、一緒に活動することで子どもと教師が自ら 考えようとする気持ちをもち、科学する心を育てることにつながった。 19 検証 見通し①の方法①自然や事象との出会わせ方を工夫し、気付きを生かし好奇心を掘り起こす。 3 歳児「わたし、カエルなんてだいきらい」、4 歳児「さくらぐみ、いろいろすいぞくかん」の活動から、 教師が夢中でカエルになって遊ぶ、水族館で命の不思議を見つける・・の根底には、教師自身の「科学 する心」が流れていた。遊びの主役は子どもであり、一番の環境は教師であることを実感した。 ①子どもの興味・関心をつかみ、その子が遊びの中で、満足感をもつように認める。 ②全身を使ってたっぷりと遊べる時間を保障し、教師も一緒に遊ぶ。 見通し①の方法②場と時間を保障し一人一人がしたいことが十分にできるような援助をする。 5 歳児「キラキラポタジェの発見、発見、大発見」の活動では、子どもは、ポタジェの野菜、草花、 虫の世界に 自分を同化させ取り組んだ。ある時は、とうもろこしの気持ちになり、ある時は、スイカ の気持ちに、飛んでくるチョウやテントウムシ、ミツバチにも感情移入し自然と向き合い、今までの体 験と結びつけたり、 「どうして?」と感じたりすることで気付きや疑問を深めていった。 教師は、子どもの思いに共感し自分自身の働きかけ(ヒント)をいかに用意しているかが子どもの心 を動かす鍵になった。子どもの思い、行動を読み取りながら、働きかけ、意図した通りに活動が進む場 合もあれば、予想外の展開になる場合もあった。 子どもの活動の広がりとともに、地域、保護者を巻き込み、様々な絆が生まれた。ポタジェを核に 子ども、教師、保護者、地域が一緒に「科学する心を育てる」ことができた。 ①子どもが繰り返し活動できる時間と場所を保障した。 ②子どもの活動の様子を見守り、思いを共有した。 ③子どもの傍で、幼児一人一人のポタジェとのかかわりを把握した。 ④子どもの自慢を受けとめ、褒め認める。 ⑤情報や知識をもち、外部の方に相談したり協力を求めたりする。 見通し②の方法①主体的に展開した活動を分析し、構想図を子どもと教師 がともに作ったり、話し合いを重ねたりすることによりイメージを共有する。 「砂・石・砂鉄の発見、発見、大発見」の活動から、子どもの自然体験、疑問は、「科学する心」を育 てることにつながり、 「生きる力」になることを改めて実感した。子どもが自ら考えようとする心を育 むために、遊び込む力と子どもの思いに心を寄せる教師の関わりが必要である。 ①遊びの中で(砂鉄、化石の発見)科学的発見をする子どもがいた。 ②友達の興味、関心や話し合い、構想図作りから「どうして」と科学的疑問をもつ子どもがいた。 (砂 から砂鉄を取り出す) ③疑問に対して自分なりの考えをもつ子どもがいた。(砂鉄を集めよう・砂鉄で遊ぼう) ④疑問を持ち続ける子ども(なぜ石に名前がある。なぜ斐伊川は砂鉄がいっぱい)がいた。 好奇心の芽生え ⑤遊びの中で体験したことを基に疑問の解決に向かう子どもがいた。 (砂時計、砂鉄スライム)園内 だけでなく、園外で活動したことが子どもの心を動かし科学する心の広がりとなった。 4【今後の方向性と課題】 ○ポタジェの活動では、今年度が1年目であった。上記のような「科学する心」を育む成果があった。 来年度以降も、方向性はそのままに、今年度の活動を活かしさらに科学する心を育んでいきたい。 ○来年度も今年度の子どもの興味・関心を基にした活動を柱にし、指導計画、保育の構想を立てる。 ○保護者や地域との連携を図り、保育の中で地域を活かしていきたい。 ○教師自身が地域の自然を教材として見つめ直す力をつけていく。 <参考文献> ・幼稚園教育要領解説 ・幼稚園では遅すぎる 井深大著書 ・心の教育 井深大著書 ・NHK テレビテキスト 趣味の園芸 やさいの時間 20