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EFFECTIVE NOTCH STRESSによる荷重伝達型十字溶接継手の疲労き

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EFFECTIVE NOTCH STRESSによる荷重伝達型十字溶接継手の疲労き
荷重伝達型十字溶接継手の疲労き裂発生点に及ぼす未溶着寸法の影響
複合構造研究室 荒川慎平
1.
3. FEM 解析
はじめに
完全溶込み溶接で設計されている荷重伝達型十
図-1 に解析対象を示す.解析は汎用有限要素解
字溶接継手において,施工不良により未溶着部が
析プログラム DIANA を用い,二次元の弾性解析を
1)
残る場合がある .このような場合,疲労き裂は溶
行った.図-2 に要素分割例を示す.解析モデルは
接止端,もしくは未溶着部の先端である溶接ルー
モデルの対称性を考慮し 1/4 モデルとした.メッシ
トから発生する.溶接ルートから発生する疲労き
ュの最小寸法はノッチ周辺で約 0.05mm とした.荷
裂は継手内部から発生・進展するため,き裂が表
重はすべてのモデルにおいて等しい公称応力とな
面に現れるまで発見が困難である.そのため,溶
る荷重を一軸引張方向に載荷した.仮想円弧の半
接ルートからの疲労き裂発生を防止することが望
径は 1.0mm とし,円弧周辺に発生する応力として
ましい.溶接ルートからの疲労き裂発生を防止す
最大主応力を用いた 2).
るためには,溶接時に残される未溶着部の寸法に
解析のパラメータは図-1 に示す板厚と溶接サイ
ズ,未溶着寸法として 74 ケースの解析を行った.
制限値を設定するといった方法が考えられる.
そこで,本研究では完全溶込み溶接で施工され
また,完全溶込み溶接では溶接時に開先を設ける
た荷重伝達型十字溶接継手を対象に,未溶着寸法
ため,溶接サイズは板厚が大きくなるに伴い大き
が疲労き裂発生点に及ぼす影響を局部応力評価手
くなると考えられる.しかし,完全溶込み溶接で
法である EFFECTIVE NOTCH STRESS 用いた FEM
はのど断面が板厚となることから,溶接サイズを
解析により評価した.そのうえで,溶接ルートか
確保する必要がないため,不等脚溶接となり,溶
らの疲労き裂発生を防止可能な未溶着寸法(以後,
接サイズが大きくなることによる効果は小さいと
許容未溶着寸法)を提案した.
考えられる.そこで,板厚と溶接サイズの比が等
2.
しいモデルと不等脚溶接のモデルについても疲労
EFFECTIVE NOTCH STRESS
EFFECTIVE NOTCH STRESS とは,線形弾性体
き裂発生点を評価した.
4.
を仮定して得られたノッチの応力である.溶接止
解析結果
端・溶接ルートのノッチを 0.5~1.0mm の仮想的な
解析結果として図-3 に最大主応力分布図の一例
半径の円弧と仮定し,円弧周辺に発生する応力範
を示す.本研究では,図-3 に示す溶接ルートに発
囲を用いることで,き裂の発生点・進展方向を評
生する最大主応力の最大値 σroot と溶接止端に発生
価できることが国際溶接学会において示されてい
する最大主応力の最大値 σtoe の比の σroot/σtoe が 1 を
2)
る .
仮想円弧
r=1mm
t
載荷方向
0.05mm
s
0.05mm
r=1mm
載荷方向
t
h
t :板厚
h :未溶着寸法
s :溶接サイズ
s
図-1
解析対象
図-2
1
要素分割例
5.
下回る場合に溶接ルートよりも溶接止端からのき
結論
裂が先に発生するとした.σroot/σtoe がちょうど 1 を
本研究では完全溶込み溶接で施工された荷重伝
下回る時の未溶着寸法 h と板厚 t との比 h/t を許容
達型十字溶接継手の未溶着寸法が疲労き裂発生点
未溶着寸法とした.
に及ぼす影響を FEM 解析で評価し,その上で溶接
図-4 に s=7mm と s=17mm とした解析ケースの
ルートからの疲労き裂発生を防止可能な未溶着寸
板厚と許容未溶着寸法の関係を示す.また,図-5
法を提案した.本研究の主な結果を以下に示す.
に s=7mm の解析ケースの板厚と溶接止端および溶
1) 板厚が大きいほど許容未溶着寸法は小さい.
接ルートに発生する最大主応力の関係を示す.図
2) 溶接サイズの増加に伴う溶接ルートの応力低
-4 より厚板ほど許容未溶着寸法が小さくなった.
減効果により,許容未溶着寸法は大きくなる
この理由は図-5 より,板厚が大きくなると溶接ル
が,板厚が大きい場合ではその効果は小さい.
ートの方が溶接止端より応力集中の増加する割合
3) 板厚の増加に伴う溶接サイズの増加による溶
が大きいためと言える.また,図-4 より溶接サイ
接ルートの応力低減効果は,不等脚溶接とな
ズが 7mm から 17mm に大きくなると許容未溶着寸
るため小さい.
4) 溶接ルートからの疲労き裂発生を防止可能な
法が大きくなった.これは,溶接サイズが大きく
なることで溶接ルートの応力集中が低減するため
未溶着寸法を提案した.
である.しかし,板厚が大きい場合では溶接サイ
<参考文献>
ズの増加効果は小さかった.
1) 例えば,森河久,下里哲弘,三木千壽,市川篤司:箱断面
図-4 に s=t=17mm とした解析ケースと,不等脚
柱を有する鋼製橋脚に発生した疲労損傷の調査と応急対策,土
溶接とした解析ケースの板厚と許容未溶着寸法の
木学会論文集,No.703/I-59, pp.177-183,2002.4
関係を示す.不等脚溶接は中板側の脚長を主板側
2) Hobbacher, A. : Recommendations for fatigue design of welded
のそれの 1/2 となるように仮定した.図-4 より,
joints and components, IIW document XⅢ-1965-03/XV-1127-03,
板厚と溶接サイズの比が等しい s=t=17mm のケー
International Institute of Welding 2003.
スでは,s=7mm の時よりも許容未溶着寸法が 2.6
倍程度大きくなるが,不等脚溶接としたケースで
板厚(mm)
は s=7mm の許容未溶着寸法の 1.1 倍程度であった.
従って,板厚が大きくなることによる溶接サイズ
の増加に伴う溶接ルートの応力低減効果は,不等
脚溶接となるために小さいと言える.
以上より,溶接サイズを 7mm 以上確保するとい
80
80
70
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
00
う条件で許容未溶着寸法を提案した.
s=7mm
不等脚溶接
s=17mm
2.6倍
1.1倍
0
0.1
0
0.1
0.2
0.2
t  9mm では h/t=0.42
図-4
17 < t  34mm では h/t=0.12
34 < t  75mm では h/t=0.09
σroot
最大主応力分布図
板厚(mm)
135
図-3
0.4
0.4
0.5
0.5
0.6
0.6
h /t
9 < t  17mm では h/t=0.18
σtoe
0.3
0.3
66
-2.5
(MPa)
2
80
80
70
70
60
60
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
00
板厚と許容未溶着寸法の関係
1.9倍
σtoe
σroot
3.4倍
00
50
50
100
100
150
150
200
200
最大主応力(MPa)
図-5
s=7mm の板厚と応力の関係
250
250
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