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伊関委員提出資料 (その2)

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伊関委員提出資料 (その2)
資 料 8−2
伊関委員提出資料
(その2)
沖縄県立病院のこれからの経営についての提言
城西大学経営学部
准教授
1
伊関友伸
基本的考え方
目指すべきは、沖縄県立病院が医療の質を維持しつつ発展をしていくこと。そのために必要な
こととして、次の3点が必要である。
第1に、
「100億円の一時借入金を無くし、医療への再投資への余裕を持たせる」ことである。
現在の沖縄県立病院の財政は破綻状態にある。全国的に見ても、資金不足から、10月になると
職員の時間外手当てが支給されなかったり、県立中部病院のリニアックの3千万円の修理費さえ
修理できない事態は異常である。資金不足から必要な人や医療機器に適切な投資ができなければ、
医療の質の低下を招き、優秀な医師や看護師の離職を招く可能性が高い。再投資の余裕のなさは、
徐々に県立6病院の医療の質の低下につながる。
現在、沖縄県立6病院の病院建物は、宮古病院、八重山病院、精和病院については、建物が老
朽化したり、時代の求める精神医療に対応できなくなっており、早急に改築の必要性がある。北
部・中部病院も質の高い医療を行うためには改築の必要がある。6病院が医療の質を維持し、安
定的に経営していくためには、100億円の一時借入金の解消し、医療への再投資のための現金
を持つ必要がある。
第2に、
「単年度収支の均衡」である。再び赤字に陥ることなく、医療に再投資するための一定
の現金を有するようにするには、単年度の収支を均衡化することが必要である。収支の均衡化の
ためには、収入を増加させると共に支出を抑えることが求められる。
収入については、行う医療の質を上げ、1人当たりの入院・外来の単価を上げることが基本と
なる。その際、診療報酬加算の取得など収益を上げるために、場合によっては人や物への投資を
行うことも必要である。
支出の抑制については、職員の給料の見直しを行う必要がある。質の高い医療を維持するため
に職員の給料は低すぎてもいけないが、国立や日赤病院などの公的病院と同じレベルに適正化す
べきである。診療材料の購入や委託契約も徹底的に見直す必要がある。
第3に、
「抜本的に病院のマネジメントのあり方を変える」ことが必要である。今回、沖縄県立
病院のあり方委員会に関わって感じた沖縄県立6病院の何よりも問題は、病院マネジメントの劣
悪さであった。医療について素人の事務職員(財政・人事担当課、病院局事務職員)が、お金と
人事を握っている。病院局長や現場の病院長に権限や裁量が与えられていない。県立病院群とし
ての戦略がない。行政のルールで病院を運営しており、質が高く迅速な意思決定ができていない。
大きな病院経営の戦略は経営本部が担い、具体的な権限は各病院が持つ。病院経営のプロフェッ
ショナルによる質の高い経営を実現する必要がある。
2
具体的提案
(1)特定地方独立行政法人(公務員型)を導入する
人事や予算など経営の独立性を高めるには地方公営企業法の全部適用では限界がある。県立精
和病院が将来医療観察法の指定を受けることも考え、県立6病院が一体となり「公務員型」の特
定地方独立行政法人に移行することを提案する。総務省の見解でも、地方独立行政法人は、非公
務員型が原則であるが、県立精神病院で医療観察法の指定を受ける場合、公務員であることが必
要であり、公務員型を取る場合があるということであった(大阪府や岡山県で実例あり)。
公務員型の地方独立法人として、弾力的な予算と人事の運営が可能となる。また、独自採用の
事務職員を雇用でき、専門性の高い病院運営が可能となる。さらに、一時借入金を解消が可能と
いうメリットがある(独法化に際しては一時借入金は解消しなければならない)。
その一方、地方独立行政法人制度を導入しても、沖縄県の「お役所体質」が、沖縄県が相も変
わらずの一々口を出す過剰関与をしたり、病院運営に必要なお金を出さない責任放棄を行い、地
方独立法人制度が形骸化する危険性が存在する。職員の意識が変わらない危険性もある。
地方独立行政法人化は「目的」ではなく、県立病院再生のための「手段」となることが必要。
そのために、地方独立行政法人化を行う場合、次のことを導入の条件とすべきである。
・ 5年間は現在の一般会計の繰入金の水準(60億円)を最低限とし、南部医療センターの企
業債償還分については、さらに上乗せして繰入を行うこと。支出については、地方独立行政
法人設置条例制定時に県議会の付帯決議を行い、政治的担保をとっておくこと。
・ 職員給与の徹底的な見直し(国立や赤十字などの公的病院の職員と同一の水準とする、地方
独立行政法人化の前に速やかに実施すること)
・ 理事長は、病院経営の能力のある医師が就任すること
・ 病院長・副病院長クラスや中堅で将来の沖縄県立病院の経営を担う人材の病院経営能力の向
上を図るために病院マネジメント講座を実施すること(地方独立行政法人化の前に速やかに
実施すること)
・ 事務のトップを沖縄県庁の天下り役人にしない。病院経営の経験のある人材を招へいするこ
と
・ 理事会のメンバーに、他県の病院経営に能力のある医師の経営者を2人招へいする(1名は
都道府県立病院事業管理者クラス、1名は公的・民間の有力病院経営者)
・ 外部評価委員も沖縄県の人達だけでなく他県の人を複数招へいすること
・ 事務職員の全員を5年以内に、法人プロパー職員とする
・ 広く優秀な事務職員を招へいすること(地方独立行政法人化の前に速やかに実施すること)
・ 経営に関して外部のコンサルの指導を受けること(地方独立行政法人化の前に速やかに実施
すること)
(2)県立病院を沖縄県と県内全市町村が共同設置する地方独立行政法人に
沖縄県の財政が厳しい状況にあることから、市町村を含めた地域全体で県立病院を支える体制
とすることも検討すべきである。県と全市町村が参加する地方独立行政法人にし、運営を行うこ
とを検討すべきである(参考までに、自治体病院に対する特別地方交付税は市町村立病院に手厚
くなっている)
。市町村が県立病院の運営に関わることで、これまで全て県に丸投げであった地域
における医療のあり方について市町村も当事者となって取り組む利点も存在する。
(3)病院適正利用条例の制定
今回の委員会の仕事で、医療現場で働く医師の方々の話を聞いていると、一部の沖縄県民の医
療に対する姿勢に問題があることを良く聞く。必要のない夜間の救急受診(コンビニ医療)や理
由のない医療費の支払い拒否は、医療スタッフの疲弊や病院財務の悪化を招き、県立病院の存続
そのものを脅かす行為である。沖縄県立病院の運営において、県民は「お客様」ではなく、県立
病院を支える「当事者」である。沖縄県民が県民の財産である県立病院や他の病院を適正に利用
することを訴える県立病院適正利用条例を制定することを提案する。
3
平成21年度に行うべきこと
これらの提案を実現するために、病院局内に県立病院経営再建室を設置し、地方独立法人化及
び市町村が参加した運営形態への合意形成作業、県立病院の抜本的マネジメント改革などに取り
組むべきである。
4
終わりに
今回、公務員型の地方独立行政法人の提案をさせていただいた。私も、地方独立行政法人は非
公務員型でなければならないと思いこんでいたが、決して公務員型ができないというわけではな
い。
全国の自治体病院の崩壊を見ているが、その多くは危機感への認識が薄く、問題を先送りした
自治体病院である。残念ながら沖縄県立6病院の経営状況は財政状況だけでなく、病院マネジメ
ントそのものが限界に達している。沖縄県民の皆さんも、ただ地方独立行政法人化に反対するの
ではなく、県立病院の現状や制度についてよく勉強をし、適切な判断をされることを期待したい。
あくまでも私の意見は一つの意見であり、判断されるのは沖縄県民の皆さんである。
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