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ヘビ720

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ヘビ720
日心第71回大会 (2007)
隠匿情報検査の裁決情報の評価に刺激感情価が及ぼす影響
-感情プライミング課題を用いて-
○小川時洋1・廣田昭久1・松田いづみ1・高澤則美2
(1科学警察研究所・2江戸川大学社会学部)
Key words: 隠匿情報検査,感情プライミング,自動的評価
方 法
実験参加者 正常な視力あるいは矯正視力を持つ男性警察
職員 24 名(平均年齢 31.04 歳)が実験に参加した。
刺激と装置 プライム刺激として,International Affective
Picture System(IAPS: Lang et al., 2005)より,ヘビとクモの写真
をそれぞれ 5 枚選定した。標的刺激には,林(2001)からポジ
ティブ特性語・ネガティブ特性語をそれぞれ 5 語,計 10 語を
選んだ。その他,中性プライムとしてアスタリスク文字列を
用いた。これらの刺激は,CRT 画面上に提示された。刺激提
示の制御および反応収集は,パーソナルコンピュータ上で心
理学実験用ソフト Super Lab Pro 2.0(Cedrus)によって行った。
手続き 実験参加者には,本実験は一種の虚偽検出課題で
あることを伝え,5 通の封筒に 1 枚ずつ入ったヘビあるいは
クモの写真を 1 枚選び,それを記憶させた。この覚えた写真
が裁決情報,それ以外の写真が非裁決情報となる。次のプラ
イミング課題では,プライム刺激としてヘビあるいはクモの
写真,標的刺激として特性語を提示した。各試行は,
“引いた
カードは”という文章の提示(800ms)に始まり,プライム刺激
提示(300ms),標的刺激提示の順で構成された。標的刺激は,
実験参加者が回答するまで提示された。実験参加者には,実
験の課題は標的刺激の意味がポジティブかネガティブかにつ
いて,ボタン押しで回答すること,特性語の直前には先に選
んだヘビあるいはクモの写真を尋ねる画面が出てくるが,そ
れらは無視するよう教示した。試行間間隔は 1800ms であり,
本試行として 72 試行を 1 ブロックとして 2 ブロック実施した
ほか,練習試行として 24 試行を本試行前に実施した。プライ
ミング課題終了後,実験参加者が選んだ写真について確認を
行った。
結 果
反応時間(Reaction time: RT)が総平均から 2.5SD を越えた試
行,エラー試行は分析から除外した。プライム(中性/裁決/非
裁決)×標的感情価(ポジティブ/ネガティブ)毎の平均反応時
間を,実験参加者ごとに算出して分析対象とした。また,刺
激カテゴリー(ヘビとクモ)について有意な主効果・交互作用
が見られなかったため,統計的検定からは除外した。各条件
の平均反応時間および標準誤差を図 1 に示す。分散分析を
行ったところ,プライム×標的感情価の交互作用が有意で
あった(F(2,44)=5.30, p<.01)。下位検定(α=0.05)の結果,ポジ
ティブ標的に対する反応時間は,中性プライム条件に比べ,
裁決・非裁決プライムは有意に長かった。一方,標的刺激が
ネガティブな場合には,非裁決プライム条件は,中性プライ
ムおよび裁決プライムよりも有意に反応時間が短かった。
考 察
本研究では,ヘビ・クモという不快刺激を用いて小川他
(2006)の結果を追試した。その結果,裁決プライムに続くネ
ガティブ標的刺激に対する反応は,非裁決プライムがプライ
ムとして提示された場合に比べて遅くなった。この結果は,
小川他(2006)と同じものであり,感情プライミングの観点か
らは,実験参加者が裁決情報を非裁決情報に比べてよりポジ
ティブに評価していたと解釈できる。したがって,裁決情報
に対して見られるポジティブな評価は,刺激の内容に依存し
ない結果であることが示唆される。
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平均反応時間(ms)
目 的
現在,我が国の犯罪捜査において活用されているポリグラ
フ検査の方法は,隠匿情報検査と呼ばれ,犯人しか知りえな
い事件内容に関する記憶の有無について,生理反応を手がか
りとして推定する一種の記憶検査である。検査では,事件内
容に相当する項目である裁決情報,及びそれと同じカテゴ
リーに属するが事件内容ではない項目である非裁決情報を提
示し,裁決情報に対して弁別的な生理反応が見られたならば
事件内容についての記憶を有すると判定する。この生理反応
の弁別的反応の基底にある心理的・生理的機序については,
これまで情動に基づく説,注意などの認知的過程に基づく説
など幾つか提唱されているが,未だ決定的なものはない。小
川他(2007)は,裁決情報に対して生じる生理反応の弁別的応
答には,裁決情報と非裁決情報に対して被検査者が持つ態度
の違い(好きか嫌いか,ポジティブかネガティブか)が関与す
ると仮定し,感情プライミング課題によって,裁決情報に対
する被検査者の評価を検討した。その結果,裁決情報は非裁
決情報に比べポジティブに評価されることを見出した。この
結果は,主に生理活動の変化を裁決情報によって生じる不快
情動との関連で考察してきた従来の見方とは異なる。しかし
ながら,彼らの結果は,数字という比較的ニュートラルな刺
激を用いたためであるかもしれない。そこで本研究では,裁
決・非裁決情報に不快な感情価を持つ刺激を用い,小川他
(2006)の結果が再現されるかどうかを検討した。
中性
裁決
非裁決
680
660
640
620
600
ポジティブ
ネガティブ
標的感情価
図1 平均反応時間
引用文献
小川 他 (2007) 隠匿情報検査における裁決情報の感情価
感情心理学研究, 14, 76.
Lang et al. (2005) International affective picture system(IAPS):
Digitized photographs, instruction manual and affective ratings.
Technical Report A-6. University of Florida, Gainesville, FL.
( OGAWA Tokihiro, HIROTA Akihisa, MATSUDA Izumi,
TAKASAWA Noriyoshi)
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