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地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動

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地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
1
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動*
秋本昌士・近藤万峰・青木均・内田滋
目次
要旨
I 地域金融機関と住宅ローン・ビジネス
1 地域金融機関と市場環境
2 個人の住宅購入と家計部門向け貸出し、住宅ローン・ビジネス
E 金融機関と住宅ローン商品の選択動向
1 住宅ローン市場の現状と研究課題
2 調査・分析
E
提携型住宅ローン選択
1
2
住宅販売事業者と住宅ローン
調査分析と結果
I
V 結びに代えて
要旨
I 地域金融機関と住宅ローン・ビジネ
ス
地域金融機関の経営行動においては、企業金融
の諸ニーズへの対応戦略はもとより個人・家計向
1
地域金融機関と市場環境
けの貸出行動が所定の重要性を依然として有して
近年、我が国における地域金融の将来展望に関
いるところである。本論文においては、その中で
して、人口動態の面から経営戦略上の対応の必要
も住宅購入に向けた個人貸出である住宅ローンと
性が提起されるようになっている。少子高齢化の
その選択行動に焦点を当てて考察を試みる。そこ
進展とりわけ少子化傾向の継続については、さま
では、当初予想された個人部門の金利選好の強さ
ざまな対策が政府や民間部門で検討されそのいく
に対して、必ずしもそうではなく取引関係にもと
つかが採用されて来ているが、一部地域の例外的
づく金融機関ならびに住宅販売業者に関連する選
な成功例を除けば一般的には必ずしも十分な効果
択の実状が反映される結果が得られており、住宅
が顕現していないのが実情である。いうまでもな
ローンをめぐる今後の詳細な分析の主要課題と認
く、限界集落というレベルから消滅集落や消滅自
識されることとなった。
治体というものまでの現象が具現化するには相応
の中長期に及ぶ時間的経過をともなうが、その時
キーワード:地域金融機関、住宅ローン、メイン・
間的長さや影響の大きさは地域によって異なって
バンク、金利選好、住宅販売業者、
いる。いわゆる過疎地域等を多く抱える地方ほど
リレーションシ ップ・バン キング
その影響は、単に当該地域に居住する住民の生活
面のみならずそこでの人や組織とのつながりやそ
*本論文は、平成 26 年度愛知学院大 学流通科学研究所の研究助
成を受けた研究成果の一部である。ここに記して謝意を表する 。
れに基づくソーシヤル・キャピタルから社会・経
済面におよぶ多方面に大きな影響が短期間に押し
2
流通研究第 21 号
寄せてくるとされている。
は、必ずしもオ ー バー・バンキングではないので
はないかという指摘も存在する。それは、すなわ
産業経済面では、地場産業の持続的発展はもと
ちいかなる利潤率の大きさを以って正常ないし適
より新たな地域振興などについても、抜本的な対
正競争水準にあると判断するのかという問題でも
応策でないと現状維持すら困難であるという状況
ある 。
のところが多いといわれている。地域の経済的活
さらには、特定の地域を営業地盤として地域密
動水準やその状況は、通常、地域金融に直結する
着型の金融ビジネスを展開してきた地域金融機関
ところとなるものでもあるから地域金融機関に
ならではの顧客との継続的なリレ ー ションシツ
とっても不可避的な課題である 1 ) 。例えば、峰村
プ・バンキングで蓄積されてきた取引情報や数量
(2014) でも生産人口と預金 高の正の関 係などの
化しがたい取引関係性にもとづく相互の信頼関係、
指摘をしているように、地域の人口と産業活動は
あるいは地域特性に起因する何らかの特殊な要因
不可分のものでもあることは直感的にも容易に想
とその効果が持つ重要性も存在することなどが情
像できる。もっとも、都市近郊に立地するケース
報の非対称性の低減効果と共に考えられる。それ
や著名な観光地など何らかの魅力で以って外部地
らの多くは容易な代替性に欠ける側面 を 持 っ てい
域から招来ないし来訪する人口の大きな場合など
るから、合併等による再編後の金融機関ないし新
ではその限りではないことも十分考えられる。そ
規の他機関による取引においては十分な継続的関
れゆえ、それに関連する対応策などを少なからぬ
係性が保証されるとは限らないといった懸念も生
自治体や民間団体が検討する余地には大きいもの
じ得ょう 幻
があるといえよう。
また、金融機関における経営執行及び株式ない
かつてのバブル経済とその崩壊や平成不況の長
し資本の所有構造に関する独立性等の問題も現実
期化における不良債権処理問題ならびに金融自由
には無視しがたい要因となる。およそ組織とその
化やグローパル化に向けて経営改革に取り組んで
成果というものは、基本的には人的資源の資質と
きた我が国の金融機関であるが、より長期的な視
りわけ経営能力はもとより従業員の勤勉さや労働
点に立っとき、中でも大都会よりも地方の地域に
組合の経営に対する対応機能等に依存するところ
立地 し 営業展開する金融機関ほど近い将来におい
が大きく、サービス産業ほど原単位に占める人的
て生じうる上記課題へ向けた大胆且っきめ細かな
資源投入量が大きい側面を持つ傾向にあることか
経営戦略の構築が喫緊の課題となっており、すで
ら、金融産業にあっ て も例外ではないのである。
に多くはその対応に取り組んでいるところと考え
られる。
そのような状況においては、地域金融機関ほど
リテール分野のビジネスのウェイトが高く、中で
も個人 ・ 家計部門との取引の重要性が認識されて
他方で、パブ、ル崩壊以降、しばしば指摘されて
くる。そこでは、企業金融ビジネス よ りもデフォ
きたように、本邦金融市場におけるオーバー ・ バ
ルト率の低い個人 ・ 家計向け貸出しとりわけ住宅
ンキング問題もあって、地域金融機関聞の競争状
ローン・ビジネスの評価の高まりが再認識されて
態をめぐる議論が続いており関心も高い。ただ、
いる 。本稿では、地域金融機関と住宅 ロー ンをめ
継続的に適正利潤をあげているケースにおいて
ぐる諸視点から、その属性に関する調査・分析と
考察を試みる。
1)
ここ でいう 地域 金 融機関は、 一 般的に全国レベルでの 営業 活
動を展開せず少なくとも都道府県ないし市町村レベルの特定
地域を 営業 エリアとするもので 、 地方銀行 ・ 第 二 地方銀行・
信用金庫 ・ 信用組合 ・労働 金庫等を指す。
2) これに関連して、例えば、内田 (1995、 2003) 、筒井 ・ 植村編 (2007) 、
滝川
(2008) など参照 。
3
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
2
個人の住宅購入と家計部門向け貸出し、
などをはじめとして土地や家屋 ・商業用ビル等を
住宅ロ ー ン・ビジネス
含めた不動産関連証券化ビジネスの拡大傾向は、
家計が金融機関を選択する理由については、例
今後とも継続するものと推察される 。 ただ、米国
えば勤務先等により給与振込金融機関となってい
におけるサブ プ ライム問題等で明らかとな っ たが、
るためとか、自宅ないし居住地域で近くて便利な
証券化商品に内在する複雑な商品組成によるリス
どの立地条件、その他、金融商品や店舗ないし職
ク自体の組成変化とあいま っ て買い手はもとより
員のサービス提供に関わる印象等、さまざまな何
販売者自身でもさらには格付け機関でさえもその
らかの理由により複数の金融機関の中から選択さ
評価が不十分であるといわれたケースが取り沙汰
れる場合が多い 。
されるように、拡大傾向の限界も市場では存在す
多くの場合、給与振込口座をはじめ公共料金や
るものと考えられる 。
クレジット ・ カードなど各種購買行動における支
払い ・ 決済の口座としても使用されるから、金融
地域金融機関の 貸 出行動における個人家計部門
機関と家計の取引の固定制や継続性が期待でき、
のウ ェ イトについては、地域 金融機関の主要な担
それはいわゆるストック・ビジネスとしての金融
い手である地方銀行の場合、 2011 年 3 月
(28.3%) 、 2012.3
業とりわけリテール・バンキング・ビジネスにお
億円
いては重要な属性といえる。
1 (28.5) 、
2
2
6
7
4
2014.3
5 (28.3) 、
6
6
7
5
4
1
5
2
6
4
4
2013 .3
496566 (28.8) 、
2014 . 6
7 (28.9) と僅かながら増加傾向にある 3) 。
2
5
8
9
4
住宅自体については、耐 震性や災害対策特に近
さらに、もうひとつの主要な金融機関であり、
時、異常気象がもたらすところの風水害対策ない
協同組織金融機関でもある信用金庫の場合は、そ
し住宅構造の減災可能性の多寡などが関心を集め
の住宅ローンも合わせて表記すると、 2010 年 3 月末
ている 。 それは、当面では住宅価格にも反映され
個人 183833 億円(貸出金への構成比 28.6%)
148755 億円(同 23.1%) 、 201 1.3
るところであるから、住宅購入を考える場合にも
ち住宅ローン
考慮されるべき点である。ただ、政策的な住宅購
0 (23 .4)、 2012.3
4
2
9
4
) 1
5
.
8
2
2(
8
1
2
8
1
入促進への制度改革や時限的なものを合む措置対
う
0(23.6) 、 2013.3
1
8
0
5
1
)
6
.
8
2
6(
1
5
2
8
1
182ロ 1
)
5
.
8
2
(
4(23.8) 、
5
1
2
5
1
応などで資金ないし租税面での優遇策や取扱い等
0 (23 .9) 、
1
6
4
5
) 1
7
8.
2
4(
7
0
5
8
3 1
2014.
の内容の確認も不可欠となる。
2 (23.9) のように概ね横並び
5
4
5
5
) 1
6
8.
2
8(
6
8
5
8
1
欧州のように居住者が手入れなどすることによ
り住宅自体の付加価値を高めて売買するような中
2014.9
の傾向となっているが、住宅ローンについては微
増傾向を示している 4) 。
古住宅市場の拡充については、わが国でも推進さ
れることが望ましいとする向きもある 。 ただ、人
住宅市場の 需給傾向について、長期ないし超長
口動態が比較的定常型を示している欧州、!と異なり、
期においては人口動態とりわけ生産人口や労働人
わが国では超長期の動向を予測する場合、人口減
口の推移に依存するところが大きいが、現実的に
少傾向が見込まれており、その過渡的段階にあ っ
は中短期で住宅ローン金利に関係するマクロレベ
てはそのような市場の制度設計や拡充策にも相応
ルでの 長 期金利の動きや地域の景気ないし産業経
の工夫が必要となる。
済の動向、特に 賃 金・雇用といった労働条件等の
状況にも少なからず影響される側面がある 。
周知のように、個人住宅についても証券化の進
展が見られており、わが国でも例えば住宅金融支
援機構がその主要な事業として展開しており、人
口動態にも依存するが当面は住宅抵当証券や REIT
3) 地 方銀行協会 「地銀(第 二 地銀 合まず) の個人向け 貸 出 金 J ~地
銀協月報 11 2014 年 11 月号。
4) 信金 中 央金庫 「信金の貸出先 別 貸出金 J ~ 信金 中 金月報』第 13 巻 ,
第 13 号。
4
流通研究第 21 号
平成 27 年 1 月現在では、住宅ローン金利の低下
宅ローン市場の現状と研究課題について述べる。
傾向が観察されており、日本銀行の追加金融緩和
次に、東海 3 県 の住宅ローン利用者を対象として
等で長期金利が 0.3% レベルへ下落した影 響 と見
行われた調査のうち、主に金融機関と住宅ローン
られている。すなわち、メガバンクで 10 年固定
商品の選択にまつわる質問の回答結果をもとに、
型最優遇金利は1.25% から1. 15% レベルへ向かい、
どうい っ た傾向が見られるかについて考察してい
三井住友信託は 1% から 0.9 % へ下げている 。 民間
くこととする ヘ
金融機関とタイア ップ した住宅金融支援機構の住
宅ローン商品のフラ ッ ト 35 も 10 年固定型 金 利を
1
1.47% という最低水準に設定した。これには、政
1 -1.
府の住宅減税策改定等 の動きも効いているようで
住宅ローン市場の現状と研究課題
住宅ローン市場の現状
住宅ローン市場では、「新たな形態の銀行 J 6) が、
低金利やインターネ ッ ト上で取引が完結する利便
ある 。
性とい っ た便益の提供を背景として、取扱額を
なお、株式会社に転換して民営化したが、その
急速に伸ばしてきた ヘ インターネ ッ ト専業銀行
全株を政府が所有するゅうちょ銀行については、
の住信 SBI ネ ッ ト銀行の住宅ローン取扱額は 2008
スルガ銀行との提携で住宅ローン・ビジネスに進
年 3 月末の 249 億円から 2014 年 3 月末の 1 兆 7 , 770
このスルガ銀行は、静岡県に本拠を
億円まで、ソニー銀行の取扱額も 2008 年 3 月末の
置 く地方銀行で、岡県には地方銀行上位行である
3 , 388 億円から 2014 年 3 月末の 9 , 493 億円まで、そ
静岡銀行と下位地方銀行の 清水銀行の 3 行が 営業
れぞれ毎年度一貫して増加している 8)
し、同じ地域金融市 場 で競争している 。 そのた
のイオン銀行も、自らの強みである、小売業との
めもあ っ て、スルガ銀行は 首都圏への進出を図 っ
連携によ っ て付帯的サービスを提供し、住宅ロー
て 営 業展開を進めており、特に住宅ローン・ビジ
ン市場への取組みを強化している 。 同行は、イオ
ネスではゅうちょ銀行とも組んで顧客開拓を行 う
ン・グループの小売店舗内に支店や ATM を設置
戦略を採択していると 考 えられる 。 ゅうちょ銀行
しており、支店では土曜日・日曜日でも相談サー
においては、将来の民 営 民有化に向けたバンキン
ビスを提供している 。
グ・ビ ジ ネスの拡大ないし多様化戦略への 一環と
以上、借入期間 10 年以上の契約者が「イオンセ
して住宅ローン・ビジネス・ノウハウの獲得と 営
レクト」というクレジット・カードに加入すれば、
業実績の蓄積・展開となるものである 。 ある 意 味
イオン店舗における購買金額が常時 5% 割引にな
で、それは、メガ パ ン ク等 による住宅ローンなど
る、というサービスを提供している ぺ
出している 。
0
I 流通系」
また、借入金額 1 , 000 万円
に 基 づいて考えられる 金融ビジネス展開における
クリーム・スキミングをめぐ っ ての地域 金融機 関
一 方、独 立 行政法人住宅金融支援機構が実施し
サイドからの逆戦略となる位置 づけともみなされ
るかもしれない 。
も っ とも、それは、ゅうちょ銀
行がフルラインのバンキング・ビジネスを展開す
るまでの段階においてのみ妥当するという見方も
考えられるであろう 。
5) 家森 ・ 近藤 ( 2004b ) は 、東 海 3 県の 中 で も|岐阜県 の住宅 金 融
市 場 を 取 り 上げ、住宅 ローンの 需要関数と 供 給関 数を推定し
て いる。そこから、岡県の 市 場 に おいては、住宅 ロー ン金 不 IJ
が 市 場を均衡させるよう に 調整されているという結論 を 得て
いる。さらに、同論文では 、 釜江 ( 1981 ) と村 本 ( 1986 ) を 参考
にして、住宅ローン金 利 の調整速!主の計 測 も行っている。
6) I 新たな形態の銀行」は金 融 庁の銀行分類に よ る
も のであり、
インターネット専業銀行(ジャパンネッ ト 銀行、楽天 銀行 (旧
イ ー パンク銀行)、ソニ ー 銀 行 、住信 SBI ネッ ト 銀行 、じ ぶん
E 金融機関と住宅ローン商品の選択動
向
銀行、大和ネクス ト 銀行)、 小 売業者によっ て 設立 された銀行
( イ オン銀行、セブン銀行) 、中小 企業への 融 資を主 たる 業 務
とす る 銀 行 ( 新銀行東京 )をいう 。
7) ~ 日 本経済新聞 ~, 2013 年 12 月 10 日。
8 ) 各行の決算資料にもとづく。
本節では、先行調査の結果等にもとづいて、住
9) ~日本経済新聞 ~ , 2014 年 2 月 15 日 。
5
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
た 12013 年度民間住宅ローン実態調査 J の結果
足度調査」では、ソニー銀行が 12012 年版」、 12013
から、住宅ローン利用者の購買意思決定について、
年版 J に続き 3 年連続で銀行部門における最高評
次の 2 つの特徴をうかがい知ることができる。第
価を獲得した日) 。 日本経済新聞社が実施した「第
1 の 特徴 は 、利用者が購買意思決定とそれに先立
10 回日経金融機関ランキング調査 J においても、
つ情報探索、および情報取得において、住宅販売
ソニー銀行とセブン銀行が顧客満足度で最高評価
事業者、金融機関、インターネットの 3 つを利用
を得ているは) 。 公益財団法人日本生産性本部サー
していることである。第 2 の特徴は、購買意思決
ビス産業生産性協議会が実施した 2013 年度 ]CSI
定に際し、金銭的費用に関わる属性一一一金利、
(日本版顧客満足度指数)調査では、住信 SBI ネッ
融資事務手数料、繰上返済手数料、保証料、団体
ト銀行が銀行部門における顧客満足度 1 位の評価
信用保険料等一一ーがきわめて重要視されている
を 5 年連続で獲得した 回。
ことである。「新たな形態の銀行」をはじめとす
一般 に、高い顧客満足度は、他者への推奨意向
る各行は、利用者が圧倒的に重要視する金利の引
を強め、ロイヤルティを向上させるといわれてい
下げをめぐ っ て激しい競争を展開してきた 10) 。 そ
る 16)
れにともなって、 2000 年代以降、 2014 年現在に
銀行サービス利用者を ① 過去に利用した銀行の
至るまで、住宅ローン金利は 一貫 して下落し続け
サービスに対する不満足を理由として、現在利用
ている 11 ) 。
している銀行のサービスに切 替え を行 っ た利用者、
0
s (2000) は;、
d
l
o
n
y
e
dR
n
Ganesh , Ar nold , a
こういった状況下にありながらも、日本国内の
②不満足以外の理由によって、他の銀行のサ ービ
住宅ローン貸出残高総額に占める主要インター
スから現在利用している銀行のサービスに切替え
ネット専業銀行の貸出残高の割合は現在のところ
を行 っ た利用者、 ③以前から現在利用している銀
それほど大きくなく、金利が相対的に低くない 業
行のサービスを利用し続けている利用 者、の 3 種
態一一メガパンクや地方銀行等一一一の利用者
類に分類し、これらの種類によって現在利用して
も依然として多くみられる 12) 。 これらのことから、
いる銀行のサービスに対する満足度やロイヤル
利用者の業態選択理由、 意思決定過程、意思決定
ティがどのように変化するかを、米国における調
時の考慮集合一一一相互に比較検討される選択肢
査デ ー タを用いて分析した。その結果、上記 3 種
一一一の内容、 考慮される属性等が業態によって
類の利用者のうち、①の他の種類の利用者よりも、
異なることが推測される。
現在の銀行サービスに対して高い満足を示すがこ
しかしながら、現在のところ、住 宅ローン借入
とが明らかにな っ た 。
このことは、過去に利用し
時における利用金融機関の業態と選択行動との関
た金融機関のサービスに対する満足度が、現在利
係は必ずしも明確にされていない。
用している銀行のサービスに対する満足度やロイ
ヤルティに影響を与える可能性を示唆している 。
1 ・2.
利用業態と顧客満足、および他者への推奨
意向との関係
しかしながら、先行研究・調査では、利用業態
と利用満足度、および他者への推奨意向との関係
顧客満足度に関する各種調査結果によれば、イ
についてもほとんど言及されていなし、。また、日
ンターネット専業銀行(以下、「ネ ッ ト銀行 J) を
本の住宅ローン市場における、過去に利用した
中心とした「新たな形態の銀行」の 顧客満足度が
他業態の銀行と比較して 高いことが示されている。
日経 BP 社による
12014 年版アフターサービス満
) ~日本経済新聞~, 2013 年 10 月 7 日 。
0
1
1) ~日 本経済新聞 ~ , 2014 年 6 月 22 日 。
1
12 ) 秋本 ・近藤 ・ 青 木 ・ 内田 (2014) 参照。
3) ~日 経 ビジネス~, 2014 年 11 月 31J 号。
1
14) ~ EI 本経済新聞~, 20 14 年 1 月 26 日 。
15 ) 評価対象銀行は、 14 行( イオ ン銀行、新生銀行、 JA パンク、
じぶん銀行、ジャ パ ンネッ ト銀 行、住 信 SBI ネ ッ ト銀行、ソニー
銀行、大和ネクスト銀行、みずほ銀行、 三 井住友銀行、 三 菱
東京 UFJ 銀行、ゅう ちょ銀行、楽 天 銀行、りそな銀行)である 。
サービス産業生産性協議会ウェブサイ ト 参照 。
16) 小野譲司 (2010) 参照 。
6
流通研究第 21 号
サービスに対する満足度と現在の満足度との関係
借入後の満足度に影響を与える可能性がある、当
について追究した研究は少ない。
該金融機関への親しみ (Q8- 1) 、当該金融機関の
サービスに対する過去の満足度 (Q8-2) 、他の金
1-3. 研究課題
以上のように、これまでの研究や調査では、住
融機関のサービスに対する過去の満足度 (Q8-3)
についての項目を追加した。
宅ローン借入時における利用金融機関の業態と選
択行動との関係、利用業態と利用満足度、および
他者への推奨意向との関係、日本市場における、
2-2. 分析方法
選択理由に関する質問項目
(Q8) 、借入後の満
過去に利用したサービスに対する満足度と現在の
足度に関する質問項目
(Q10) 、および他者への
満足度との関係は必ずしも明らかにされていなし 1 。
推奨意向に関する質問項目
本研究では、住宅ローン市場における競争の実態
については、それぞれ業態聞での差異を分析し
を明らかにし各業態についての競争戦略上の示
た。 Levene 統計量により等分散性の検定を行っ
唆を提供することを目的として、これらの関係に
た結果、等分散の仮定を満たすもの (Q8-3 , Q8-6,
ついて考究する。
Q8-7, Q8-9, Q8-10, Q8-11, Q8-12, Q8-13, Q8-14, Q8-
(Qll) に対する回答
15 , Q8-16 , Qll) については、一元配置分散分析、
2 調査・分析
上記の研究課題を達成するべく、住宅ローン利
用者に対して以下の調査・分析を行った。
および: Tukey の HSD による多重比較を行い、等
分散の仮定を満たさないもの (Q8- 1 ,
Q8-2, Q8-4,
Q8ふ Q8-8 , Q8-17, Q10) については、平均値同等
性の検定 (Welch の検定、および、 Brown- F
o
r
s
y
t
h
e
2-1. 調査方法
調査対象者は、過去 3 年間に住宅ローンを利用
の検定)の後、 Dunnett T3 による多重比較を行っ
た 18) 。
利用業態の自由回答については、回答ノミターン
した 、東海 3 県(愛知県、岐阜県、 三重県)居住
者とした。 2014 年 10 月 29 日から 2014 年 10 月 31 日
が多く、各カテゴリーの回答者数が少ないため、
まで、インターネットによりデータ収集を行った
自由回答による回答者を分析から除外し、標本数
結果、標本数 412 を得た m 。
を 372 とした。
対象者の基本属性に関する質問項目一一一性別、
年齢、居住地域(愛知県、岐阜県、三重県のいず
2-3. 分析結果と考察
れか)、未既婚、子どもの有無、世帯年収、職業
(1)金融機関の選択とその決定要因
住宅ローンの利用者は、数ある金融機関の中で
一一一以外に、独立行政法人住宅金融支援機構
が実施した 12013 年度民間住宅ローン実態調査」
もどの業態の商品を選択する傾向にあるのか、ま
を参照し、利用銀行業態 (Q1) 、借入金額 (Q2) 、
た、その理由はどこにあるのか、について考察し
不動産の購入等にかかった金額 (Q3) 、住宅ロー
ていこう。選択した金融機関の業態について尋ね
ンの利用目的 (Q4) 、金利タイプ (Q5) 、情報収
た Q1 の結果を表 1 に、比較検討した金融機関の
集媒体 (Q6) 、意思決定時に比較検討した業態 (Q7) 、
業態(最終的に選択した業態を除く)について尋
選択理由 (Q8 , Q9) に関する質問項目をそれぞれ
ねた Q7 の結果を表 2 に、現在利用している金融
設けた。
機関を選択した理由について尋ねた Q8 の結果を
借入後の満足度 (Q10) 、他者への推奨意向 (Q l1)
表 3 に、それぞれ示した。
についての質問項目もそれぞれ設定した。また、
18)
処理群 (treatment group)
のうち、 1 つでも自由度が 50 未
消i のものがあるとき、 Dunnett T3 を用いることが望ましいと
17) 株式会社マク ロミルの調査サービ スを利用した。
いわれている
( Dunnett 1980) 。
7
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
表1
Q1
1
2
3
4
5
6
7
8
あなたが住宅ローンを借りる際に利用した銀行の業態をお答えください。※複数回住
宅ロ ー ンを借りている方は直近のものについてお答えください。※複数の住宅ローン
を併用した場合は、主なものを借りた銀行の業態についてお答えください。(単一回答)
メガパンク( 三井住友銀行、ニ菱東尽 UFJ 銀行、みずほ銀行、
託銀行
りそな銀行)または信
居住県内の地方銀行
居住県外の地方銀行
インターネ ッ ト専業銀行(ジャパンネ ッ ト銀行、楽天銀行 、ソ ニー銀行、住信 SBI ネ ッ
ト銀行、じぶん銀行、大和ネクスト銀行のいずれか)
信用金庫
信用組合、 JA、労金
その他銀行【
銀行以外(公的住宅ローン、会社のローン等)【
全
体
N
%
3
6
3
.
5
1
2
2
1
8
3
6
9.
2
2
.
9
7
1
1
4.
1
6
4
6
9
8
3
2
1
4
8
.
4
1
5
.
5
1
2
.
2
2
.
9
0
.
0
0
1
表2
Q7
1
2
3
4
5
6
7
8
9
あなたが住宅ローンを利用する銀行を決定する際に、比較検討した銀行の業態を全て
お答えください。※最終的に利用した銀行の業態は合めずにお考えください。※複数
回住宅ローンを借りている方は、直近のものについてお答えください 。 (複数回答)
メガパンク( 三 井住友銀行、三菱東尽 UFJ 銀行、みずほ銀行 、
りそな銀行)または信
託銀行
居住県内の地方銀行
居住県外の地方銀行
インターネ ッ ト専業銀行(ジャパンネ ッ ト銀行、楽天銀行、ソニー銀行、住信 SBI ネ ッ
ト銀行、じ ぶん銀行、大和ネクスト銀行のいずれか)
信用金庫
信用組合、 JA、労金
その他銀行【
銀行以外(公的住宅ローン、会社のローン等)【
比較検討した銀行の業態はない
全
体
N
%
1
4
1
2
4.
3
8
5
1
6
3
3
.
8
3
7
.
8
5
6
8
.
5
1
2
7
8
7
5
6
2
1
1
2
1
4
5
.
7
1
9
.
8
1
.2
1
.5
1
2
.
7
2
0
.
0
0
1
選択においては、近くに店舗のある、よく名前を
まず、他業態に比べて 金利の低い インターネ ッ
ト専業銀行の利用率がそれほど高くないことが分
かる。インターネット専業銀行を比較検討の対象
耳にする金融機関のものを選ぶ傾向が強いと言え
るのである。
一 方で、表 3 における質問項目 1 ,.....__,
3 の要因が必ずしも重視されているわけではない
とした比率は、最終的にこの業態を選択した比率
ことから、普段利用している金融機関の満足度に
よりも高めであるが、それでも 16% 程度に止ま っ
応じて住宅ローンを選択するのではなく、近くに
ている。表 3 を見ると、どの金融機関を選択する
かを決める際に、金利以外の要因(換言すれば、
選択肢 8 以外の要因)も考慮しているという傾向
19) 家森 ・ 近藤 (2005) は、 1997年から 2002年までのデータを用いて、
住宅金融市場の分断仮説について検証し、少なくともこの期
間においては、住宅金融市場が都道府県毎に分断されている
が読み取れる。このことが、金利の低いインター
ことを 示している。インタ ーネ ッ ト 専業 銀行の利用者が必ず
しも 多くないとは 言 え、こうしたタイプの銀行の台頭によっ
ネット専業銀行に利用者が集中しているわけでは
て、前述のような状況が変化していないかを最新のデータを
用いて検証する必要があるだろう 。 なお、家森 ・ 近藤 (2007) は、
ない原因だと考えられる則。
住宅金融支援機構の証券化支援 事業 により、民間金融機関を
また、居住県に本店を 置く地域金融機関(地方
銀行、第二地方銀行、および協同組織金融機関)
を選択する比率が高く、これらの合計が約 6 割に
上ることに注目される 20) 。 つまり、住宅ローンの
通じて提供されているフラット 35 の市場分断仮説について、
dTsutsui(2003) や家森・近藤 (2005)
n
Kanoa
を応用して分析し
こちらの市 場は地域毎 に分断されてい るわけではない という
結論を得ている。
20) 地方銀 行と第 二 地方銀行の区別が つかない回答者が多くい
ることが 予 想されるため、本調査では、この 2 業態を 一 律に
地方銀 行と表記するこ ととした 。
8
流通研究第 21 号
表3
Q8
あては
まった
やや
あては
まった
4
あまり
あては
まらな
かった
5
あては
まらな
かった
6
全く
あては
まらな
かった
39
3
5
54
57
48
1
6
1
り、親しみを感じていた。
%
0
.
0
0
1
5
9.
9
.
2
1
1
.
3
1
8
.
3
1
.7
11
1
.
9
3
過去にその銀行のサービス(住宅ローン以
N
412
9
1
38
65
62
58
0
7
1
%
0
.
0
0
1
6
.
4
2
.
9
8
.
5
1
0
.
5
1
1
.
4
1
.3
41
N
412
2
1
21
33
88
6
7
2
8
1
%
0
.
0
0
1
9
.
2
1
.
5
0
.
8
.4
21
4
8.
1
2
.
4
4
N
412
29
3
2
44
61
60
5
9
1
3
.
7
4
り、そのサービスに満足していた。
他の 金融機関を過去に利用し、そのサ ービ
スに対して不満を感じていた。
4 他の金融機関を利用できなか っ た 。
5 借入時のサービスに満足した。
借入後の支援体制が充実していた。(困っ
たときに相談しやすい 等)
7 対面的なサービスがあった。
8 金利が 低か った。
9 繰上返済手数料が安かった。
0 住宅販売事業者と提携する銀行であった。
1
1 事務手数料が安かった。
1
2 団体信用保険料が安か っ た。
1
3 保証料が安かった。
1
4
1
とても
あては
まった
3
412
2 外のサービスを合む)を利用したことがあ
6
全体
2
N
過去にその銀行のサービス(住宅ローン以
1 外のサービスを合む)を利用したことがあ
3
1
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由
として、次の各項目はどの程度あてはまり
ましたか。あてはまるものをそれぞれお選
びください。※複数回住宅ローンを借りて
いる方は、直近のものについてお答えくだ
さい。(単 一 回答)
繰上返済の利便性が高かった。(繰上返済
が少額から可能であること等)
5 他の銀行にはない特典があった。
1
6 知人に勧められた。
1
7 有名な銀行であ っ た。
1
%
0
.
0
0
1
0
.
7
6
5.
7
.
0
1
8
.
4
1
6
.
4
1
5
7
30
2
7
N
412
23
2
7
0
4
1
%
0
.
0
0
1
6
.
5
5
.
7
1
0
.
4
3
2
.
8
1
3
.
7
5
7.
1
N
412
23
50
1
3
1
96
34
8
7
%
0
.
0
0
1
6
.
5
1
.
2
1
.8
31
3
.
3
2
3
.
8
9
.
8
1
N
412
26
69
6
2
1
87
23
1
8
%
0
.
0
0
1
3
.
6
7
.
6
1
6
.
0
3
.1
21
6
.
5
7
.
9
1
N
412
104
1
2
1
1
0
1
45
14
27
%
0
.
0
0
1
2
.
5
2
4
29.
5
.
4
2
9
.
0
1
4
3.
6
.
6
N
412
0
7
69
0
0
1
94
30
49
.9
11
%
0
.
0
0
1
0
.
7
1
7
.
6
1
3
.
4
2
8
.
2
2
3
.
7
66
36
97
N
412
85
5
7
3
5
%
0
.
0
0
1
6
.
0
2
2
.
8
1
9
.
2
1
0
.
6
1
7
.
8
5
23.
N
412
32
50
96
8
2
1
42
64
%
0
.
0
0
1
8
.
7
1
.
2
1
3
.
3
2
.1
31
2
.
0
1
5
.
5
1
N
412
29
35
87
9
2
1
40
92
%
0
.
0
0
1
0
.
7
5
.
8
.1
21
.3
31
7
.
9
3
.
2
2
N
412
25
38
87
134
39
89
%
0
.
0
0
1
1
.
6
2
.
9
.1
21
5
.
2
3
5
.
9
.6
21
N
412
49
62
89
0
0
1
35
77
%
0
.
0
0
1
.9
11
0
.
5
1
.6
21
3
.
4
2
5
.
8
7
.
8
1
N
412
35
42
1
7
9
1
1
2
5
93
2
.
7
1
9
.
8
2
6
.
2
1
6
.
2
2
%
0
.
0
0
1
5
.
8
2
.
0
1
N
412
21
26
1
5
8
0
1
58
8
4
1
%
0
.
0
0
1
1
.
5
3
.
6
4
.
2
1
2
.
6
2
1
.
4
1
9
.
5
3
N
412
21
40
0
1
1
117
38
86
%
0
.
0
0
1
1
.
5
7
.
9
7
.
6
2
4
28.
2
.
9
9
.
0
2
9
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
ある利用しやすい金融機関の中から、より良いと
択している比率の合計は、 5 割程度かそれを超え
ころを選別しようとする姿勢が窺える。
てい る。これらのことから、住宅ロ ーンの利用者は 、
金利等の借入にかかる コストのみを検討対象にし
前述のような状況にある一方で、かつて東海地
方において圧倒的な存在感を誇っていた都市銀行
ているのではなく、金融機関のサポート体制をも
それなりに重視する傾向にあることが窺える。
の旧東海銀行などの再編によって誕生した三菱東
京 UFJ 銀行の店舗が、東海地方に多く設けられて
いるにもかかわらず、同行を含めた大手銀行の利
さらに、業態と選択理由との関係の分析結果を
考察しよう(表 4) 。
用率が圧倒的に高いとは言い難い。表 2 を見ると、
やはり当地に 三菱 東京 UFJ 銀行の店舗が多いため
質問項目 8-1 I 過去にそ の銀行のサービス(住
か、大手銀行を比較検討の対象とした利用者は 3
宅ローン以外のサービスを合む)を利用したこと
分の 1 ほどいるものの、最終的な選択には到って
があり、親しみを感じていた」については、居
いないこととなる。表 3 における質問項目 17 の結
住県外地方銀行利用者と他の 4 つの利用者カテゴ
果と併せて考えると、少なくとも住宅ローンの選
リ一一一一メガバンク・信託銀行利用者、居住
択においては、金融機関の知名度や規模が重要視
県内地方銀行利用者、信用金庫利用者、信用組
されているわけではなく、近くに多くの店舗があ
合・ JA' 労働金庫利用者一一ーとの聞で統計的に
り、利用しやすい地域金融機関のほうが優先され
有意な差異がみられた ()I債に、 P =0.04 ,
ていると 言うことができょう 21) 。
0.39<0.05) 。また、県外地方銀行利用者とインター
0.00 , 0.00 ,
ネ ッ ト専業銀行利用者との聞にも、有意ではない
次に、表 3 に注目し、住宅ローンの利用者が金
融機関を選択する際に重視する要因について考察
していこう。
ものの、大きな差異がみられた。
質問項目 8-2 I 過去にその銀行のサービス(住
宅ローン以外のサービスを含む)を利用したこと
質問項目 1""3 の要因があまり重視されていな
があり、そのサービスに満足していた」では、居
いという特徴が見られる。このことから、消費者は、
住県外地方銀行利用者と居住県内地方銀行利用者、
金融機関の選別において、預金や決済などの日常
信用金庫利用者との聞で有意な差異がみられた
的なサービスの利用と住宅ローンの利用とを切り
(順に、 P=<0.05) 。インターネット専業銀行利用
離して考える傾向にあると思われる 。 換言すれば、
者と他のカテゴリーとの聞に大きな差異はなか っ
住宅ローンの利用にまつわる諸条件や金融機関の
た。
対応のみを吟味した上で、同サービスを利用する
金融機関を選別していると考えられるのである。
また、質問項目 8 において、「とてもよくあて
質問項目 8-3 I 他の金融機関を過去に利用し、
そのサービスに対して不満を感じていた」につい
はま っ た」を選択した比率は約 4 分の 1 であり、
ては、いずれのカテゴリー聞においても有意な 差
当初の予想よりも低かった。また、質問項目 9、
異はみられなか っ た。また、この質問項目におけ
11 、 12 、および 13 の要因を 重視する比率も圧倒
る平均得点があらゆる質問項 目の 平均得点のなか
的に高いというわけではない。一方、質問項目 5
で最も低く、この要因が銀行選択の理由としてそ
~ 7 において、「とてもよ くあてはまった」、「あ
れほど重要でないことが明らかにな っ た。イン
てはま った」 、および「ややあてはま っ た」を選
ターネット専業銀行利用者の平均得点が最も高く、
過去に利用した他の金融機関のサービスに対する
21) 表 3 の質問項目 4 において 、 1 "-'3 と回答した比率の合計が
必ずしも高くないことから、強気の大手銀行から融資を断ら
れたことがこのことの主因であるとは考えづらい 。
不満が理由である傾向が相対的に強いことがうか
がえる。
1
0
流通研究第 21 号
表4
J~工泌【
平 i勾 {fü I ,f;;{if,叶同三~,
主主司民~~~去を
インターネット専業銀 1J
Q8-1:i'Jtし λぇ
メガパンク・イ,j",h:; îfH
j
u;~ 内 J 也J:i HHJ'
VI~ タト I也 )iîlH
i
インターネット lぷ
じ )11~ }liI
{, ;)II 札|介、
JA 、
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ノ
1 、I、, 11
63
123
42
17
61
66
372
2.7619
3.1301
1
.8333
3.1176
3.
2459
2.7424
2.8710
1
.68211
1
.93738
1
.39540
1
.96476
1
.73835
1
.63905
1
.79533
.
21193
.17469
.21532
.
47653
22257
.
2
0175
.09308
63
123
42
17
61
66
372
2.5873
2.7805
1
.8095
2.4706
2.9508
2.
4697
2.5968
1
.65232
1
.69152
1
.32955
1
.58578
1
.59610
1
.39471
1
.59979
.20817
.15252
.20515
.38461
20436
17168
08295
イ百 m 金 li)1
V ,~ IJ,) 1山Ji îlH
j
UI~ タト I山 )iîlH
i
インターネット I,IJI 業銀行
イ,i! II -:í子 w
じ )IJ 品IL 介、 JA 、';.;'企
ノ!、ì , 1 1
63
123
42
17
61
66
372
2.2381
2.2764
1
.7857
2.8235
4
262
2.
2.3333
2.2742
1
.44484
1
.3984
8
1
.24029
1
.62924
1
.38394
1
.28103
1
.38536
18203
12610
19138
39515
17720
15768
07183
信用金Ji)i'
V ,~ IJ,) 1
1
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J
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ホ
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UI~ タト JI!J Ji珒fi
インターネット 1,1/ 業主1H J
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JA 、労金
ノ
1 、ì ,i!
63
123
42
17
61
66
372
2.7460
2.2439
2.0476
1
.9412
2.5410
2.0152
2.3011
1
.70358
1
.56991
1
.62229
1
.14404
1
.70854
1
.22151
1
.56467
21463
.14155
25032
.27747
.21876
.15036
.08112
VI~ 内 JI!J )iîlH
i
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インターネットが淡 îJHJ
も ひ IJ -:í主),) ,
1 ,;-川品1 1.介、
JA 、ツf て;主
0
1
1
1
63
123
42
17
61
66
372
3.1270
3.5366
3.9286
4.1176
3.4262
3.
4091
3.4973
1
.34994
1
.40428
1
.36851
1
.11144
1
.65790
1
.39204
1
.43596
.17008
.12662
21117
26956
21227
.17135
.07445
信用金 JfjJ'
メガパンク
1c;' , rOH 行
~', ~ IJ、J11!J )i îlH
J
日I ~ タト I 也)i WfJ
インターネ、ット I,IJ~町民 fj
L 川合 )'ft
イ,;川品IL 介、 JA 、ツY -:JZ
ノ
I 、'、, , 1
2.9524
3.
4634
3.
4
286
3.
4706
3.
2295
3.
4697
3.3360
1
.38458
1
.48375
1
.36405
1
.06757
1
.58528
1
.21807
1
.41516
.
17444
13379
.
21048
25892
20297
14993
07337
信川金庫
日, ~ 1人)J 山止iîJHJ
日lL タト 11!J )iîlH ,
インターネット I,IJ: 業銀行
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1 , UIJ 斜l 介 、
JA 、
ツj伊合
ノ
I 入ìlil
63
123
42
17
61
66
372
メガノ f ンク
りIL タトよ山 H 宝lHJ
インターネット 1,1i~ 業銀行
イ"川 てíZ li)i
1 , j' 川和|合、 JA、ッ'5'~
{7r
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1
以外J J:山 )iîlHJ
~ç~ タト上山 )i (f以 1J
インターネット f 与業銀行
イパ川 イî2 h
分1ît
01
1
メガノ《ンク
りfL 体) 11!Jん'îlHJ'
りI ~ タト 11!JJi îlH:í
インターネット内業主Hfi
1 ,;-川金J;jI
日 JIJ 造11 介、 JA 、ジf :JZ
メガパンク
リI~ ト人; 1也んÎîlHi
リI~ タト J 也プJîlHJ'
メガパンク
Vr~ 1
*
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U[~ タト i也ノョー îJH J'
信州品1'1.介、 JA 、労てiz
ノ
l 、ì ,1 1
メガ、ノ、ンク
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Uf~ タト士山ブ'iîH 行
信用金 FI7:
イロ用組作、 JA 、
ジj' 金
ノ
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Q8-14*~己
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V~ タト J 山方 ~;[H]
ネット lギ業銀行
イバ用車Il 今、 JA、
ツf 金
介, 11
63
123
42
17
61
66
372
3.
0159
3.2683
3.3095
3.8824
2.8033
3.9242
3.2984
1
.33793
1
.35546
1
.25888
1
.69124
1
.37622
1
.28075
1
.39104
.16856
.12222
.19425
.
41019
17621
15765
.07212
63
123
42
17
61
66
372
2.8095
2.9187
3.0714
4.0000
2.9344
3.8333
3.
1317
1
.26819
1
.43489
1
.27629
1
.65831
1
.36466
1
.48410
1
.44676
15978
12938
19694
40220
17473
18268
07501
63
123
42
17
61
66
372
2.
7619
2.9187
3.0714
3.4118
2.8361
3.9545
3.1022
1
.26637
1
.37658
1
.23748
1
.69775
1
.50754
1
.38599
1
.43701
15955
12412
.19095
41176
.
19302
17060
07451
63
123
42
17
61
66
372
3.
4762
3.3740
3.2143
4.5294
2.8852
4.1515
3.
4839
1
.58478
1
.56498
1
.53870
1
.54587
1
.48434
1
.32714
1
.56693
.19966
.
14111
.23743
.37493
.
19005
.16336
.08124
63
123
42
17
61
66
372
2.6984
3.0000
3.0714
4.4706
2.8361
3.6212
3.1075
1
.44395
1
.53644
1
.47157
1
.50489
1
.46265
1
.38969
1
.52402
.18192
.13854
.22707
.36499
.
18727
.17106
07902
63
123
42
17
61
66
372
2.2698
2.5610
2.6190
2.2941
2.8689
2.9091
2.6183
1
.37026
1
.48294
1
.39603
1
.26317
1
.68795
1
.53650
1
.49914
17264
.13371
.21541
30636
.21612
.18913
07773
63
123
42
17
61
66
372
3.7937
3.3008
2.8810
3.0588
2.7049
3.3030
3.2285
1
.62797
1
.36667
1
.31042
1
.02899
1
.32091
1
.20217
1
.39462
20510
12323
.20220
63
123
42
17
61
66
372
4.0635
4.
4
228
4.
6429
4.9412
4.
4
262
4.
5152
4.4274
.
80067
79967
.61768
.74755
.99094
66199
81270
10087
07210
09531
18131
12688
08149
04214
63
123
42
17
61
66
372
3.7619
3.
9024
4.2143
4.5294
3 ,9508
4.1364
3 ,9919
81744
85329
.
75015
.79982
.92062
.
65366
.
82902
.10299
07694
.11575
.19398
.
11787
08046
04298
Q8-15 他の銀行にはない qij 典
メガパンク
り I~ 内 Ji!l)i W1J'
民主タト I山力 îH 行
ネット咋業銀行
イパ用組合、 JA 、
ツf 合
ノ
I 、B 主I主iI
Q8-16 知人からのJí[;焚
メガパンク
以内 1也元i )J艮11'
以外地方銀行
信 )lcJ 金 !中
63
123
42
17
61
66
372
4.0000
4.
4797
5.1905
5.0588
4.2623
4.4697
4
677
4.
1
.50269
1
.37513
86216
.96635
1
.36506
1
.20537
1
.34045
.18932
12399
13303
23437
17478
14837
06950
信用金庫
63
123
42
17
61
66
372
3.5556
3.8293
3.9286
4.8824
3.2459
4.2121
3.
8145
1
.58397
1
.51877
1
.50435
1
.31731
1
.44517
1
.28321
1
.50847
19956
13694
23213
31949
18504
15795
07821
イ ~'ffJ 金 F\J'
1
.64766
1
.76366
1
.66487
.
20759
.15902
.
25689
イバ用金 11ド
イ r;')IJ 組合、 JA 、ジ7' ::Îì
f、ì ,i!
Q8-17 知名度一
メガパンク
以内地方銀行
県外地点銀 1J
f ä m 組合 、 JA、労金
合計
ー 24957
.16913
.14798
.07231
Q10満足皮
メガパンク
以内地方銀行
リI~ タト I也 ユ庁主i主行一
インターネット専業鋭げ了
4.
2063
3.9350
4.3571
40166
.22818
20920
.09477
1: 立孟 f斉の平Jj{~'性カ~ {':;'Jし、
メガハンク
18445
13347
21888
33792
20187
15579
07542
63
123
42
1
.65609
1
.78212
1
.69958
1
.82784
Q8-131lt: 刊.料がやすい
1
.46402
1
.48029
1
.41852
1
.39326
1
.57664
1
.26565
1
.45460
信用組合、 JA 、
労金
合計
Qll 他人への推奨以向
メガパンク
県内地 l王銀 1J
U~~ タト i也方?民行二
インターネット守業銀1]
Q8-10 住 宅版 J己 ']1 染者と払Hj!) する銀行だから
2.6471
2.6066
3.0606
3.5968
Q8-12 同体信 JIJ 保険料がやすい
3.
2222
3.
6667
3.5000
2.7647
3.5410
3.5758
3.
4946
Q8-9 繰|返済 T 数料がやすい
1今計
ヅf 金
偂f
n
インターネット専業銀行
メガパンク
JA.
信 m 品 11 介 、 JA 、
63
123
42
17
61
66
372
Q8-8 イ民 金利
信Jl J 組合、
ネント専業主lH J
インターネ y ト専業銀行
Q8-7 刻 r(ri 的なサビス
リfL 外JJ也 )iîlHJ
~~.~外地方銀行
インタ
Q8-61'"'' 人後の允'ぶした支十副本 í liリ
メガノ《ンク
Ui~ 内 1i!lノョ'îJHi
インタ
Q8-5 仇人 11.',のサービスに i的以
17
61
66
372
f)'j T 主文料
メガパンク
インターネット専業銀 1J
Q8-4 他を利川できない
メガノくンク・{,;', iHJHj
介元 |
Q8-11 'li
インターネ y ト専業銀:'{ J
Q8-3 他に士、l する小川1',í JJ.!:.
メガパンク・イ,j ,h:;JaH j
日 m 中 11.介 、 JA 、労金
インタ
Q8-2jJ{:\よーの yl ,V,í 1E
メガノくンク. {,;', I毛主lHi
イ l守 HJ -:'ìZ J車
信用組合 、 JA、労金
合計
1
1
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
質問項目 8-4 1他の 金融機関を利用できなかった」
においても、カテゴリー聞に有意な差異はみられ
居住県外地方銀行利用者との聞においても有意な
差異がみられた(順に、 p=O.OO ,
0.00 , 0.00<0.05) 。
なか っ た。また、この質問項目における平均得点
質問項目 8-11 1 事務手数料が安か っ た」で
はあらゆる質問項目の平均得点のなかで前の項目
は、インターネ ッ ト専業銀行利用者と信用組
に次いで 2 番目に低く、この要因も銀行選択の理
合・ JA. 労金利用者の得点が特に高く、インター
由としてあまり 重要 ではないと考えられる 。
ネ ッ ト専業銀行利用者と信用金庫利用者との間
(p =0.04<0.05) 、および信用組合 .JA ・労金利
質問項目 8-5 1 借入時のサービスに満足した」
用者とメガパンク・信託銀行利用者、居住県内
については、有意 な差異は検出されなか っ たが、
地方銀行利用者、信用金庫利用者との問(順に、
インターネット専業銀行利用者と居住県外地方銀
p=O.OO , 0.02 , 0.00<0.05)
行利用者の平均得点が高くな っ た。
質問項目 8-6 1 借入後の 支援体制が充実してい
に有意 な差異がみられた。
質問項目 8-12 1 団体信用保険料が安か っ た」に
おいても、インターネット 専業銀行利用者と信用
た(因ったときに相談しやすい等) J では、有意
組合. JA. 労金利用者の得点が特に高くな っ た 。
な差異は検出されなかったものの、メガパンク・
インターネット専業銀行利用者とメガパンク・信
信託銀行利用者の平均得点が特に低くな っ た。
託銀行利用者、居住県内地方銀行利用者との間 ()I慎
質問項目 8-7 1 対面的なサービスがあ っ た」に
に、 p=0.02 , 0.04, <0.05) 、および信用組合 .
JA.
ついては、有意な差異は検出されなか っ た。イン
労金利用者とメガパンク・信託銀行利用者、居住
ターネット専業銀行利用者の平均得点が最も低く、
県内地方銀行利用者、信用金庫利用者との間 ()I頃
特に県内地方銀行との差異が大きか っ た 。
に、 p =0.00 ,
質問項目 8-8 1 金利が低か っ た」では、インター
1<0.05) に有意な差異が確
0
.
0.00 , 0
認された。
ネット専業銀行利用者とメガパンク・信託銀行利
質問項目 8-13 1保証料が安か っ た」では、信用
用者との間(戸 =0.16<0 .05) 、および 居住県外地
組合 .JA ・労金利用者の得点が最も高く、次いで
方銀行利用者とメガパンク・信託銀行利用者、居
インターネット専業銀行利用者の得点が高い、と
住県内地方銀行利用者、信用金庫利用者、信用組
いう結果にな っ た 。 インターネ ッ ト専業銀行利用
合 .JA ・労金利用者との間(順に、 p =0.00 , 0.00 , 0.00 ,
者以外のすべてのカテゴリーと信用組合. JA. 労
0.01<0.05) で 有意な差異が検出された。
金利用者との問で有意な差異がみられた(順に、
質問項目 8-9 1 繰上返済手数料が安か っ た」に
p=O.OO , 0.00 , 0.02 , 0.00<0.05) 。
おいては、インターネット専業銀行利用者とメガ
パンク・信託銀行利用者、信用金庫利用者との
質問項目 8-141繰上返済の利便性が高かった(繰
間(順に、 p=O.Ol , 0.00<0.05) 、および信用組合­
上返済が少額から可能であること等)J においても、
JA ・労 金利用者と信用金庫との間 (p =0.00<0.05)
信用組合・ JA ・労金利用者の得点が最も高く、次
でいずれも有意差がみられた。
いでインターネ ッ ト専業銀行利用者の得点が高く
なった。信用組合・ JA ・労金利用者と居住県内地
質問項目 8・ 10 1住宅販売事業者と提携する銀行
方銀行利用者、居住県外地方銀行利用者、信用金
であ っ た J については、インターネ ット専業銀行
庫利用者との間(順に、戸 =0.01 , 0.02 , 0.00<0.05) 、
利用者とメガパンク・信託銀行利用者、居住県内
インターネット専業銀行利用者と居住県内地方銀
地方銀行利用者、居住県外地方銀行利用者との間
行利用者、居住県外地方銀行利用者、信用金庫利
で有意な差異が検出された()I慎に、戸 =0.01 , 0.046 ,
用者との間 ()I慎に、 p=0.04,
0.01<0.05) 。同様に、信用金庫利用者とメ ガパン
意な差異が検出された。
ク・信託銀行利用者、居住県内地方銀行利用者、
0.03 , 0.00<0.05)
で有
質問項目 8-151他の銀行にはない特典があった」
2
1
流通研究第 21 号
では、インターネット専業銀行利用者の得点がき
較して高いものではなく、他業態に対する明らか
わだって高く、信用組合・ JA ・労金利用者の得点
な差別化要因が少ない、といえる。
がそれに続いた。インターネット専業銀行利用者
居住県外地方銀行利用者については、得点が高
とメガパンク利用者、居住県内地方銀行利用者、
いものから順に、質問項目 8-8 1 金利が低かった 」 、
居住県外地方銀行利用者、信用金庫利用者との聞
質問項目 8-10 1 住宅販売 事業者と提携する銀行で
で有意な差異がみられた ()I慣に、 þ=O.OO ,
あった」、質問項目 8-91繰上返済手数料が安かった J
0.00 , 0.01 ,
0.00<0.05) 。また、信用組合・ JA ・労金利用者と
となった。上記質問項目 8-8 の分析結果を考慮す
メガバンク・信託銀行利用者、信用金庫利用者
れば、低金利は、インターネット専業銀行を除く
との聞においても有意な差異がみられた(順に、
他業態との強い差別化要因になっているといえそ
うである。また、利用者にとって居住県外の地方
戸 =0.01 , 0.03<0.05) 。
質問項目 8-16 1知人に勧められた J では、有意
銀行は「親しみ」が少ないものの、金利や繰上返
済手数料の安さが大きな魅力であり、選択の際に
な差異が認められなかった。
質問項目 8-17 1 有名な銀行であった」では、メ
考慮される属性になっていることがうかがえる。
ガパンク・信託銀行利用者と居住県外地方銀行利
用者、信用金庫利用者との間で有意な差異がみら
インターネット専業銀行では、質問項目 8-8 1 金
利が低かった」、質問項目 8-9 1繰上返済手数料が
れた()I頂に、 þ=0.03 , 0.00<0.05) 。
安か っ た」、質問項目 8-14 1 繰上返済の利便性が
次に、業態別に分析結果を考察しよう 。
高か っ た(繰上返済が少額から可能であること
メガパンク・信託銀行利用者の選択理由のうち、
等) J 、質問項目ふ 151他の銀 行にはない特典があっ
得点が高いものから順に、質問項目 8-10 1 住宅
た」の順に得点が高くなった。上記質問項目 8-8
販売事業者と提携する銀行であった」、質問項目
の分析結果を考慮すれば、低金利は、居住県外地
7 1 有名な銀行であった」、質問項目 8-9 1繰上
1
8
方銀行を除く他業態との強い差別化要因になって
返済手数料が安か っ た」、質問項目 8-14 1 繰上返
いるといえそうである。また、上記質問項目 8-9
済の利便性が高か っ た(繰上返済が少額から可能
の分析結果から、繰上返済手数料の安さも、メガ
このこと
パンク、信託銀行、信用金庫に対する差別化要因
であること等) J
という結果になった 。
と上記質問項目ふ 17 の分析結果とを合わせて考
と考えられる。
えれば、メガパンク、信託銀行にと っ て、これら
の事業者との関係の形成と維持、および知名度が
信用金庫では、質問項目 8-8 1 金利が低かった 」
他業態との重要な 差別化要因になると考えられる。
の得点が高くなった。しかしながら、金利による
利用者が住宅ローン・サービスの内容にもとづい
他業態との差別化は難しく、今後、強い差別化要
て選択しているとはいえないことがうかがえる。
因を模索する必要性がうかがえる。
一方、上記質問項目 8-14 の分析結果を参照すれば、
最後に 、 信用組合、 JA、労働 金庫では、質問項
繰上返済手数料はメガパンク、信託銀行にとって
目 8-8 1 金利が低かった J 、質問項目 8-9 1繰上返済
差別化要因にはなりにくい 。
手数料が安かった」、質問項目 8-131保証料が安かっ
た」、質問項目 8-11 1 事務手数料が安かった」、質
居住県内地方銀行利用者では、得点が高いも
問項目 8-12 1 団体信用保険料が安かった」の順に
のから順に、質問項目 8-8 1 金利が低か っ た」、質
得点が高い。利用者が価格関連属性によって選択
問項目 8-10 1 住宅販売事業者と提携する銀行で
していると考えられる。同様に利用者が価格関連
あ っ た」、質問項目 8-9 1繰上返済手数料が安か っ
属性によって選択する傾向が強いインターネット
た」となった。これらの項目の得点は他業態と比
専業銀行と競合していると捉えることもできる。
3
1
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
表5
Q6
1
2
3
4
5
6
7
住宅ローンについての情報収集は、どの媒体で行いましたか。あてはまるものを全て
お選びください 。※複数回住 宅ローンを 借りている方は、直近のものについてお答え
ください。(複数回答)
4
4
2
1
9
1
23
1
0
5
5
1
1
0
1
2
1
4
金融機関(店頭,相談コーナ一等)
インターネ ッ ト
知人、友人からのクチコミ
住宅情報誌
ダイレクト・メーノレ
その他【
全
%
N
住宅販売事業者(店頭,モデル・ルーム,住宅展不場)
体
2
.
9
5
4
6.
4
9
.
9
2
1
.
2
1
6
.
3
2
.
0
4
2.
0
.
0
0
1
しているローンサービスに満足しているかについ
(2) 情報収集の方法
住宅ローンの利用者が、金融機関を決める際
て尋ねた Q10 の回答結果をまとめたものが表 6 、
に、どのような方法で J情報収集を行っているかに
それを他人に薦めたいかについて 尋 ねた Qll の回
ついて考察しよう。情報収集の方法について尋ね
答結果をまとめたものが表 7 である。
た Q6 の回答結果をまとめたの が表 5 である。
表 6 において、「非常に満足している J
住宅販売業者と回答した比率が最も高くな っ
と回答
した比 率は高くないものの、 9 割弱の利用者が 、
ており、やはり受動的に情報提供が受けられるこ
自分の利用している住宅ローンに概ね満足して
の媒体 を利用す る家計は多いと言える。 一 方で、
いる(選択肢 1 ~3)
この選択肢の 比 率が他を引き離し て 圧倒的に高い
にもかかわらず、表 7 では、「どちらかと 言 えば
というほどでもなく、金融機関やインターネ ット
薦めたくない」と回答している比率が比較的高め
を利用し ている比 率がそれなりに高いことにも注
である 。
という結果が得られ ている 。
このことは、現在利用している住宅ローンは、
目される。
また、表 3 の質問項目 10 において、「とてもあ
自らが重視する要因を概ね満たしており、満足度
てはまった J よりも「ま っ たく当てはまらなか っ
は高いものの、他人が何を重視するかは不明なた
た」を選択した比率が高く、かっ選択肢 4~6 の
め(例えば、自分は、金融機関のサポート体制を
合計比率が約 5 割に上っている。さらに、表 3 の
重視するが、他人は、借入コストを最重視するか
当てはまらなかったと回
もしれないなど)、他人にも満足してもらえるか
答した 比 率(選択肢 4~6 の比率)の合計が 7 割
は分からないということを反映しているのではな
を超えている。これらのことから、住宅ローンを
かろうか。表 3 において、住宅ローンの選択の際
選択するのに際して、住宅販売業者や知人の話を
に重視する要因にばらつきが見られることからも
質問項目 16 において、
一方的に鵜呑みにす るのではなく、自ら情報を収
表6
集し、それを吟味することによって、自らの判断
で選択しようとする利用 者 も比較的多くいること
が窺える。
(3)選択した住宅ローンの満足度、および他者
への推奨意向
住宅 ローンの利 用者が、自らが選択した住宅
ローン商品に満足しているかを考察しよう 。利用
直近で利用した(している)住
・サービスに満足して
いますか 。 (単 一 回答)
Q10 宅ローン
1
2
3
4
5
6
非常に満足し ている
満足している
やや満足している
あまり満足していない
満足していない
ま っ たく満足していない
全
体
N
%
8
.
8 6
2
.0
9 41
6
1
.3
0 41
7
1
0
.
7 9
3
.2
5 1
7
.
3 0
0
.
0
0
2 1
1
4
4
1
流通研究第 21 号
表8
表7
Qll
1
2
3
4
5
6
直近で利用した(している)住
宅ローン・サービスを他の人に
薦めたいと思いますか。(単一
回答)
ぜひ薦めたい
薦めたい
どちらかといえば薦めたい
どちらかといえば薦めたくない
薦めたくない
まったく薦めたくない
全
体
Q5
N
3
1
6
7
2
3
2
8
7
6
7
2
1
4
%
2
.
3
4
8.
1
3
.
6
5
9
.
8
1
.5I
1
.7
1
0
.
0
0
1
1
2
3
あなたが直近で借りた住宅ロー
ンの金利タイプとして、あては
まるものをお選びください 。 (単
一 回答)
N
全期間固定型
91
6
5
1
5
6
1
2
41
固定期間選択型
変動型
全
体
%
1
.
2
2
9
.
7
3
0
0.
4
0
.
0
0
1
全期間固定型よりも、変動型を選択している比
率のほうが高いという傾向が見られる。本調査は、
このことが窺える。以上のことは、住宅ローンの
20 14 年 12 月中旬の解散総選挙の前に実施したも
選択において重視するポイントが人それぞれであ
のであるが、すでにこの時点から、今後しばらく
ることを示唆している。
は、大規模な金融緩和が継続されると考え、さら
なる金利の低下を期待する利用者が多かったもの
次に、業態と満足度、および他者への推奨意
と予想される。
向との関係を分析した結果を検討しよう。
「直近で利用した(している)住宅ローン・サー
(5)
小括
ビスに満足していますか」については、メガバン
本節では、調査の質問項目のうち、利用者の住
ク・信託銀行利用者の評価がとりわけ低く、メガ
宅ローン選択にまつわるものの全体像を分析して
パンク・信託銀行利用者と居住県外地方銀行利用
きた。
者、インターネ ッ ト専業銀行利用者、信用組合­
まず、金融機関の業態の選択において、金利の
JA ・労金利用者との間で有意な差異がみられた(順
低いインターネット専業銀行や、知名度と規模に
1<0 .05) 。特に、インターネッ
0
.
0.00 , 0
おいて優れているメガパンクなどの大手銀行 よ り
ト専業銀行利用者の満足度が他のカテゴリーと比
も、地域に多くの店舗が設置されており、利便性
較して高くなった 。 選択理由の分析結果を鑑みれ
の高い居住県に本店を置く地域金融機関を選択す
ば、サービス内容に納得して選択していないこと
る利用者が多いことが明らかにされた。また、金
が、メガパンク・信託銀行利用者の満足度が低い
融機関を選択する際に重視する要因として、金利
理由の 1 つといえるかもしれない。
の低さを重んじる利用者が多くいる一方で、金融
に、 þ=O .OO ,
「直近で利用した(している)住宅ローン・サー
機関によるサポート体制に重きを置く利用者も比
ビスを他の人に薦めたいと思いますか」では、イ
較的多く存在するという傾向が見出せた。これは、
ンターネット専業銀行利用者とメガパンク・信託
住宅ローンを提供する金融機関にとって、今後の
銀行利用者、居住県内地方銀行利用者との聞で有
マーケティング戦略を構築する上で、示唆に富む
意な差異が確認された(順に、 þ=O.O l , 0.04<0 . 05) 。
結果であると言えるだろう。
住宅ローンを選択する際の情報収集方法につい
(4) 選択 した 金利タイプ
ては、やはり住宅販売業者が提供する情報を受動
住宅ローンの利用者が、どの金利タイプの商品
的に利用する家計が最も多いことが明らかにされ
を選んでいるかをもとに、今後の金利の動向をど
た。一方で、人生で最も高い買い物とされる住宅
う捉えているかを探っていこう。表 8 に、利用者
購入のことであることを意識してか、金融機関や
が選択した金利タイプをまとめた。
インターネットを利用し、自らの力で情報収集を
行う利用者が比較的多いという傾向も見出せてい
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
5
1
る。また,住宅ローンを選んだ決め手については,
る。
今後の研究課題としては、本調査の個票データ
金利が低いこと 69.8% ,繰り上げ返済手数料が安
を用いて、本節において検出された傾向について
いこと 24.5% ,住宅販売事業者に薦められたから
より突っ込んだ分析を行うことが挙げられる 22) 。
22.7% と報告され,金利・手数料のような価格的
具体的には、利用者の年齢や年収によって、業態
要因以外では,住宅販売事業者の薦めが最も高い
選択や重視する要因等に相違が見られるかをより
数値を得ている。この住宅販売事業者は基本的に
詳細に分析していくこととしたい。
提携ローンを提案していると推察される。
E 提携型住宅ローン選択
1
住宅販売事業者と住宅口ーン
2
調査分析と結果
本研究における独自調査から,提携ローン関連
の項目に対する回答を分析していく。表 9 に見ら
住宅販売事業者と提携する銀行から住宅ローン
れるように,住宅ローンを利用した銀行を決定し
を借りるという行動(提携ローン選択)に着目し
た理由として,住宅販売事業者と提携する銀行で
た。提携ローンは,住宅販売会社が提携している
あったという項目(提携ローン選択)において,
金融機関によって,住宅購買者に提供されるロー
とてもあてはまったと答えた人は 20.6% ,あては
ンのことで, 一 般的に,金利が優遇される場合が
まったと答えた人は 18.2% ,合計 38.8% であった。
ある,比較的審査期間が短い,手続の一部を住宅
全くあてはまらないと答えた人は 23.5% ,あては
販売事業者が肩代わりしてくれるなどの長所があ
まらないと答えた人は 8.7% ,合計 32.2% であ っ
る一方で,住宅ローンの支払い方法が自由に選べ
た。本調査からは,提携ローンが住宅購買におい
ない,融資手数料を金融機関と不動産会社の双方
て優勢であると断じることはできない 。しかしな
に支払う場合があるなどの短所もある。
がら有力なローン選択の一つであることは理解
できる。
独立行政法人金融支援機構の 12014 年度民間
他の項目とのクロス集計によ っ て,提携ローン
住宅ローン利用者の実態調査(民間住宅ローン利
利用者の実態を少し分析する。傾向として,年齢
用者編第 1 回) J によれば,利用した住宅ローン
が下がると,提携ローン利用をとてもあてはまる・
を知るきっかけとして影響が大きかった媒体とし
あてはまると答える割合が増えている(表 9) 。回
て,住宅販売事業者が 4 1. 1% ,インターネットが
答者が既婚者か未婚者によって,提携ローン利用
2 1.3% ,金融機関が 2 1. 1 %と報告され,住宅販売
度に関する傾向は明確に見いだせない(表 10) 。
事業者が最大である。さらに, 利用した住宅ロー
また,性別による提携ローン利用度に関する傾向
ン決定に際して影響が大きかった媒体として,住
についても見出すことはできない(表 11) 。しかし,
宅販売事業者が 34.9% ,金融機関 18 .9 % ,インター
回答者の子供の有無による,提携ローン利用度に
ネットが 15.4% と報告され,住宅販売事業者が最
関する傾向を見出すことができる。子供なしの人
大である。住宅ローンの利用に関する消費者行動
が,子供ありの人と比ベて,提携ローン利用をと
において,認知から決定まで住宅販売事業者が影
てもあてはまる・あてはまると答える割合が高い
響力の大きな情報獲得媒体であることを示してい
傾向にある(表 12) 。これは子供なしの人は年齢
が比較的低いからであると考えられる。
22) 家森・近藤 (2004a) は、
1990 年代に 実 施された住宅金融制
度改革が住宅ローンの利用者に及ぼした影響について考察し
ている 。そ こから 、一 連の改革は、住宅ローン金利の低下と
いう恩恵をもたらしたものの、その恩恵を被 っ たのは、 主 に
中高所 得者層である としている 。今後の住宅金 融政策のあり
方を考える上で、こうした側面からの分析も不可欠になって
くるであろう。
以上に対して次の仮説が考えられる。すなわち,
年齢の低い住宅購入者は,金融に関する知識が比
較的低水準であるため,その取引を円滑に進める
6
1
流通研究第 21 号
表9
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,回答者の年齢とのクロス集計
)
%
(
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由が提携銀行であった
年齢
4
2
'
"
"
0
2
9
2
'
"
"
5
2
4
3
'
"
"
0
3
9
3
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"
"
5
3
4
4
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"
"
0
4
9
4
'
"
"
5
4
4
5
'
"
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0
5
9
5
'
"
"
5
5
'
"
"
0
6
全体
表 10
とてもあて
はまった
0
.
0
0
.
0
2
7
.
5
2
2
2.
2
5
.
4
2
8
.
4
1
2
5.
1
3
.
4
1
7
.
6
6
.
0
2
あてはまった
ややあては
まった
0
.
0
0
1
0
.
8
0
.
0
2
2
.
7
1
8
.
3
1
7
.
9
1
2
.
8
1
1
.
7
0
.
0
0
.
6
1
0
.
0
0
.
4
2
6
.
8
1
.
0
1
.7
11
1
.
3
1
1
.
9
7
.
5
3
7
.
6
2
9
.
2
1
0
0.
0
.
0
2
7
.
5
1
2
.
8
1
1
.
9
1
1
.
3
1
2
8.
1
3
.
4
1
7
.
6
4
2
.
8
1
あまりあて
はまらない
あてはまら
ない
全くあては
まらない
0
.
0
0
6.
1
6
.
8
1
3
.
7
2
1
.
9
1
8
.
2
3
3
.
0
3
3
.
4
1
0
.
0
2
5
.
3
2
0
0.
0
.
2
1
.4
11
1
.
5
7
.
1
1
6
.
6
1
.
9
3
.
4
1
0
.
0
7
.
8
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,回答者の未既婚とのクロス集計( %)
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由が提携銀行であった
未既婚
未婚
既婚
L 全J本
表 11
とてもあて
はま っ た
.9
21
5
0.
2
6
.
0
2
あてはまった
ややあては
まった
8
.
8
1
2
.
8
1
2
.
8
1
あまりあて
はまらない
8
.
8
1
8
.
5
1
6
1
6
.
5
1
6
.
2
1
9
.
2
1
あてはまら
ない
全くあては
まらない
8
.
8
1
9
.
3
2
5
.
3
2
3
.
6
9
.
8
7
.
8
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,回答者の性別とのクロス集計
(%)
住宅 ローンを利用した銀 行を決定した理由が提携銀行であった
性別
男性
女性
全体
表 12
とてもあて
はま っ た
2
.
7
1
3
.
5
2
6
.
0
2
あてはま った
ややあては
まった
9
.
8
1
2
.
7
1
2
8.
1
あまりあて
はまらない
8
.
6
1
9
.
4
1
6
1
1
.
5
1
8
.
9
9
.
2
1
あてはまら
ない
全くあては
まらない
2
.
5
2
.3
21
5
.
3
2
7
.
6
.5
11
7
.
8
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,回答者の年齢とのクロス集計
)
%
(
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由が提携銀行であった
子供有無
子供なし
子供あり
全体
とてもあて
はまった
2
.
5
2
1
.
9
1
6
.
0
2
あてはま った
ややあては
4
0.
2
5
7.
1
2
.
8
1
まった
7
.
9
9
.
3
1
9
.
2
1
あまりあて
はまらない
5
.
6
1
9
.
5
1
0
6.
1
あてはまら
ない
8
.
7
1
9.
7
.
8
全くあては
まらない
4
20.
6
.
4
2
5
3.
2
能力が低い。そのため,取引に関するコスト(取
期間固定型と回答した人は 19.8% ,固定期間選択
引のための情報探索や選択,取引履行の確認に要
型と回答した人は 17.3% ,変動型と回答した人
する手間や時間など)が高くなりがちである。し
は 24.2% ,あてはまったと答えた人のうち,全期
たが っ て,取引に関するコストを低減させる可能
間固定型と回答した人は 13.2% ,固定期間選択型
性のある提携ローンを選択する傾向にある。
と回答した人は 14.1% ,変動型と回答した人は
提携ローンの金利タイプについて調査結果を
24.8% であ った (表 13) 。提携ローン選択者にお
見ていく。提携ローン利用について,とてもあ
いて,変動金利が比較的多く選ばれていることが
てはまったと答えた人のうち,金利タイプを全
分かる 。金利低下が予想されている現状では,変
17
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
動金利の選択が増加することは予測される。提携
いて,そのうち,非常に満足していると答えた人
ローンにおいても同様であることが理解できる 。
は 39.3% ,満足していると答えた人は 25.4% 存在
している。他のローンと比較して,提携ローンが
高い顧客満足度を生み出すのかどうかは不明であ
提携ローンの満足度に関する調査結果を見てい
く(表 14) 。提携ローン選択について,とてもあ
る。
てはまったと答えた人のうち,非常に満足してい
ると答えた人は 35.7% ,満足していると答えた人
それに関連して,直近で利用した住宅ローン
は 20.1% であった。提携ローン利用について,あ
の他者への推薦度に関する調査結果を見ていく
てはま っ たと答えた人のうち,非常に満足してい
(表 15) 。 提携ローン利用について,とてもあて
ると答えた人は 3.6% ,満足していると答えた人
はまったと答えた人のうち,他者に是非薦めた
は 20.1% であった。とてもあてはまったと答えた
いと答えた人は 38.5% ,薦めたいと答えた人は
人の大半はローンについて満足していたことが分
23.7% ,どちらかといえば薦め たいと答えた人は
かる。ただし,提携ローン利用について,全く当
17.2% ,どちらかといえば薦めた くないと答えた
てはまらなかったと答えた人は 23.5% が存在して
人は 24.4% ,ま っ たく薦めたくないと答えた人は
表 13
)
%
(
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,金利タイプとのクロス集計
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由が提携銀行であ った
金利タイプ
全期間固定型
固定期間選択型
変動型
全体
表 14
とてもあて
はま っ た
あてはまった
ややあては
まった
あてはまら
ない
全くあては
まらない
8
.
0
3
6
.
7
2
8
.
5
1
5
3.
2
1
.
2
1
3
.
0
1
5
.
5
7
.
8
1
.
2
1
7
.
6
1
6
.
7
1
6
1
1
.
2
1
1
.
4
1
1
.
2
1
9
.
2
1
2
.
3
1
1
.
4
1
8
.
4
2
2
8.
1
8
.
9
1
3
.
7
1
2
.
4
2
6
.
0
2
あまりあて
はまらない
(%)
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,回答者のローン満足度とのクロス集計
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由が提携銀行であ っ た
満足度
非常に満足している
満足している
やや満足している
あまり満足していない
満足していない
ま っ たく満足していない
全体
表 15
とてもあて
はま っ た
7
.
5
3
1
.
0
2
6
.
7
1
3
.
4
2
0
.
0
2
3
3.
3
6
.
0
2
あてはま っ た
6
3.
1
.
0
2
6
.
0
2
8
.
0
1
0
.
0
2
0
.
0
2
.
8
1
ややあては
ま った
1
.
7
0
3.
1
9
2.
1
9
.
8
1
0
.
0
0
.
0
9
.
2
1
あまりあて
はまらない
7
.
0
1
2
.
1
1
6
.
0
2
9
.
8
1
0
.
0
2
3
.
3
3
0
.
6
1
あてはまら
ない
6
.
3
1
.
0
1
6
.
7
8
.
0
1
0
.
0
2
0
.
0
7
.
8
全くあ ては
まらない
3
.
9
3
4
5.
2
6
.
0
2
2
.
6
1
0
.
0
2
3
3.
3
5
3.
2
住宅販売事業者と提携する銀行の選択と,回答者による他者へのローン推薦度とのクロス集計
推薦度
ぜひ薦めたい
薦めたい
どちらかといえば薦めたい
どちらかといえば薦めたくない
薦めたくない
ま っ たく薦めた くない
全体
)
%
(
住宅ローンを利用した銀行を決定した理由が提携銀行であ っ た
全くあ ては
あてはまら
あまりあて
ややあては
とてもあて
あてはまった
ない
まらな い
はまらない
まった
はま っ た
5
.
8
3
7
.
3
2
2
.
7
1
4
24.
0
.
0
9
.
2
4
6
.
0
2
4
5.
1
7
.
9
1
0
.
9
1
4
5.
1
7
.
6
1
3
.
4
1
2
.
8
1
0
.
0
2
.
3
1
1
.
5
1
4
.
6
0
.
0
5
0
.
0
9
.
2
1
8
0.
3
.8
11
8
.
6
1
4
5.
1
7
.
6
1
3
.
4
1
0
.
6
1
0
.
0
5
.
0
1
9
.
6
1
.
4
1
7
.
6
1
0
.
0
7
.
8
4
5.
1
.1
21
0
.
5
2
4
24.
0
.
0
6
.
8
2
5
.
3
2
8
1
流通研究第 21 号
42.9 であった。提携ローン利用について,あては
その点については、今回のデータの限界等に依
まったと答えた人のうち,ぜひ薦めたいと答えた
存することもあって、今後の課題としてもう少し
人は 15 .4%,薦めたいと答えた人は 19.7% ,どち
多様な調査方法やデータ収集方法を試みることで
らかといえば薦めたいと答えた人は 19.0% ,どち
一層詳細な研究の展開 を期したい 。
らかといえば薦めたくないと答えた人は 15 .4%,
薦めたくないと答えた人は 16.7% ,まったく薦め
たくないと答えた人は 14.3% であった。提携ロー
ンを利用した人のうち,それを他者に推薦したい
と考えている人が多いか,少ないか不明である。
<参考文献>
秋本昌士・近藤万峰・青木均・内田滋 (2014) 1 金融サー
おそらく,提携ローンは,住宅販売事業者が住宅
ビスとマーケテイング ー 我が園地域金融機構の
購買者に薦めるべきものであるという考えが,そ
場合一 J W 流通研究』第 20 号、 pp.1-22
の回答の背景にある。
内田滋 (1995) W 金融自由化と銀行競争』千倉書房
内田滋 (2003) W 現代生活経済とパーソナル・ファイ
これらの議論をまとめると,提携ローンは有力
なローン選択の 一 つであり,比較的年齢の若い住
宅購買者に選択される傾向にある。そして,変動
ナンス』ミネルヴ、ァ書房
小野譲司 (2010) W 顧客満足 [CS] の知 識 』日本経済新
聞出版社
型の金利対応が比較的多く選ばれる。しかし,そ
釜江虞志 (1981) 1 日本の貸出市場の不均衡の存在:古
の利用満足度や他者への推薦度が高いとは言えな
川論文に寄せて J W 山口大学教養部紀要・人文科
し1。
学篇 』 第 15 巻、 pp.87-92
国土交通省住宅局 (2013)
N
結びに代えて
本稿では、住宅ローンの選択に関して、金融機
関とりわけ取引先の金融機関とそれ以外のものと
1 平成 24 年度民間住宅 ロー
ンの実態に関する調査結果報告書 J
信金中央金庫 (2013) W信金中金月報』第 13 巻,第 13 号
滝川好夫 (2008) W リレー ションシップ・バンキング
の経済分析 』税務経理協会
を交えた形からの選択行動等について調査実施に
地方銀行協会 (2013) W 地銀協 月報j] 11 月 号
よる回答をベースに調査・分析を行った。そこ
筒井義郎・植村修一 (2007) W リレーションシ ップ ・
では、今回のデータの多くが地域金融機関である
ところの地方銀行や信用金庫などの個人・家計部
門におけるメイン・パンクを必ずしも選択すると
バンキング、と地域金融 』日 本経済新聞出版社
独立行政法人住宅金融支援機構調査部 (2013)
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年度民間住宅ローン実態調査J
は限らず、住宅販売業者関連の金融機関との住宅
日経 BP 社 (2014) W 日経ビ ジネス j] 11 月 3 日号
ローン取引の存在が少なからず指摘されることで
日本経済新聞社 (2013a) W 日本経済新聞j] 10 月 7 日号
あった。
日本経済新聞社 (2013b) W 日本経済新聞j] 12 月 10 日号
さらに、インターネットに基づく調査方法にお
日本経済新聞社 (2014a) W 日本経済新聞 j] 1 月 26 日号
ける対象者にあっては、 一 般的にネット取引にお
日本経済新聞社 (2014b) W 日本経済新聞 j] 2 月 15 日号
ける金利や手数料率の低さから、ネット専業銀行
日本経済新聞社 (2014c) W 日本経済新聞j] 6 月 22 日号
等の低利の ローン取引を選択するという傾向が 見
峰村英二 (2014)
られるように推測されたが、今回の調査に関する
限りにおいては必ずしもそうとはいえず金利選好
の強さが顕著であるとの結果を得ることにはなら
なかった。
1 人口減少時代の地域銀行 J W 住宅金
融j] 2014 年秋季号、 pp .40-45
村本孜 (1986) W 現代日本の住宅 金融システ ム』千倉
書房
家森信善 ・ 近藤万峰 (2004a)
1 利用 者の視点から見た
地域金融機関と住宅ローンに関する選択行動
住宅金融改革の成果と課題(前編)一新商品の
登場と借入金利の変化を中心に 一 J W 住宅金融月
報』第 630 号、 pp.32 聞43
家森信善・近藤万峰 (2004b)
I 利用者の視点から見た
住宅金融改革の成果と課題(後編)一地域の住
宅金融市場への影響を中心に一 J W 住宅金融月報』
第 631 号、 pp .34-45
家森信善・近藤万峰 (2005)
I 住宅金融市場の規制緩
和と住宅金融公庫の廃止が地域生活者へ与える影
響-住宅金融における市場分断仮説の検証を通じ
た考察一 J W会計検査研究』第 31 号、 pp.119-130
家森信善・近藤万峰 (2007)
I 住宅金融支援機構の証
券化支援事業が地域の住宅金融情勢に与えた影
響 J W 会計検査研究』第 36 号、 pp.125-137
Dunnett , C
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UシbanED仰ωnics ,
33, p
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<参考 URL>
サービス産業生産性協議会ウェプサイト
service-js.jp/) , 2015 年 1 月 26 日。
秋本自士
本商学部准教授
近藤万峰
本経済学部教授
青木均
本商学部教授
内田滋
本商学部教授
(http://www.
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