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Why1 - 駿河台メディアサービス

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Why1 - 駿河台メディアサービス
第77回次世代大学教育研究会,「ワークショップ・アバウト・ワークショップ:ワークショップ型授業
の開発と改善のためのメタ・ワークショップ」,愛媛大学(愛媛県松山市),教育学部本館2階会議室,
共催:NPO法人人材育成マネジメント研究会、ケータイ活用教育研究会
創造技法としてのワークショップの作り方
~交流制約法の理論と実践~
Ver. 3.3 2012年12月15日
阪井和男(明治大学)・内藤隆(明治大学)・栗山健(学研教育総合研究所)
資料URL:
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/ne77-ehime-ws-transactional-contraint-20121215.pdf
<役職等>
明治大学震災復興支援センター(センター員)
明治大学東北再生支援プラットフォーム副代表
明治大学文明とマネジメント研究所所長
明治大学サービス創新研究所所長
明治大学死生学・基層文化研究所研究者
明治大学社会イノベーション・デザイン研究所事務局長
略歴
明治大学法学部教授
<公職等>
(理学博士)
サービス学会(Society for Serviceology)設立時発起人
阪井和男 Kazuo Sakai
情報コミュニケーション学会会長
[email protected]
facebook.com/saka1kaz
<プロフィール>
http://rwdb2.mind.meiji.ac.jp/Profiles/7/0000657/profi
le.html
<最近の発表資料>
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/
<略歴>
1952年 和歌山県和歌山市生まれ
1971年 和歌山県立桐蔭高校卒業
1977年 東京理科大学理学部物理学科卒業
1979年 同大学院理学研究科修士課程物理学専
攻修了
1985年 同大学院理学研究科博士課程物理学専
攻退学(6年間在籍)
ソフトハウスに勤務
1987年 理学博士(論文,東京理科大学)取得
サイエンスライター(フリー)
1990年 明治大学法学部専任講師
1993年 明治大学法学部助教授
1998年 明治大法学部教授
2012年12月15日
電子情報通信学会 思考と言語研究会(TL)研究会委員長
ドラッカー学会理事
サービスデザイニング研究所所長
次世代大学教育研究会事務局長
新世代デジタル教育研究会代表幹事
オープンソース&リソース戦略研究会共同代表
日本語プログラミング研究会会長
DPCマネジメント研究会理事
Ja Sakai Community運営委員(設立発起人)
大学情報サミット初代代表幹事
早稲田大学メディアネットワークセンター講師(非常勤)
早稲田大学メディアネットワークセンター 教育の情報化:
連携と支援研究部会 特別研究所員
早稲田大学情報教育研究所招聘研究員
早稲田大学商学学術院総合研究所WBS研究センター ド
ラッカー経営思想研究部会WG座長
<NPO等>
ネクストワールド・サミット第1回大会審査委員長(一般社
団法人日本儀礼協会)
一般社団法人CSスペシャリスト検定協会理事
NPO実務能力認定機構理事
NPO法人 人材育成マネジメント研究会理事
NPO法人 日本地域活性力創出機構評議員
特定非営利活動法人防災・市民メディア推進協議会理事
目次
× なぜ創造性が必要か?
10. 「分子進化の中立説」による創発プ
ロセス
× 創造性が生み出されるところ
× 成長する砂山モデル ~自己組織化
1.
教育における断絶
臨界現象~
2.
革新がもたらした大学教育の進化
11. 思考を言語化する発話思考として
3.
どの創造技法を使うか
のワークショップ Knowing-Doing Gap
4.
「ミシン問題」ミシンはなぜ縫えるか
~なぜわかっているのにできないのか?~
5.
交流制約法の発想とレシピ
12. 創造メカニズムとしての知的記憶
6.
創造できない発散収束思考
13. まとめ
7.
トヨタ生産方式における5つのなぜ × おまけ:NPSによる評価方法
8.
交流制約法
14. おまけ:「知識」と「能力」
9.
「智慧の車座」における創発プロセ
ス
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
3
研究会から刺激を得て

起源?

進歩主義教育協会の教員研修


ベルリン大学のゼミナール教育・・・?


1936年 米オハイオ州立大学での実験的ワークショップが最初
1812年 最初のゼミナール革新がもたらした大学教育の進化
目的?
「となりの学生は最大の教育資源」(原田康也・早稲田大学)
 干物としての「知識」をもどす「能力」「知識」と「能力」, Knowing-Doing Gap



能力の潜在性:意識変化で潜在していた能力が開花(短期成果)
行動変容:





アフォーダンス=行為はこれから起こることを「予期する情報」をつくる (pp. 60-76)
感情の自己開示の重要性
共鳴場:異質なものと出会い+暗黙知の共有「イノベーション・ダイアグラム」(山口栄一)
評価:「指導」と「評価」を峻別(出席は「評価」ではない。)
理想?


アジャイル開発(適応型ソフトウェア開発)次ページ
アジャイル授業・アジャイル講演の試み

情報組織論(明治大学法学部)、阪井ゼミ「復興支援プロジェクト」
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
4
ソフトウェア開発ライフサイクルの進化
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/doshisha-innovation-contents-20120121.pdf
構築
Do
計画
計画
Plan
Collaboration
思索
Think
構築
Plan
実装
Do
Implement
学習
Learning
見直し Improve
ウォーターフォール型 イテレーション型
Waterfall
Iteration
(進化型・スパイラル型・RAD)
(ハイスミス,2003年,pp. 35-37)
適応型 Adaptation
副次的な矢印は,最初に立てたプロジェ
クトのミッションプロファイルから大きく外
れた結果を見つけ出す新しい考え方(ハ
イスミス,2003年,p. 37)
ハイスミス,ジム,『適応型ソフトウエア開発(変化とスピードに挑むプロジェクトマネージメント)』,ウルシステムズ監訳,山岸耕二・中
山幹之・原幹・越智典子訳,翔泳社,2003年. 原著:Highsmith, James A., "Adaptive Software Development: A Collaborative
Approach to Managing Complex Systems", Dorset House, New York, 2000.
2012年1月21日
明治大学 阪井和男
5
なぜ創造性が必要か?
なぜ創造性が必要か?

創造とは
組織による社会環境への適応過程
 企業組織
社会環境の中で社会エコシステムを構成
 環境=動的に変化する
組織の適応問題

秩序化しようとする組織が変化する環境にいかに適応?
 既存組織にない新しい秩序(⇐仮説)を作り続けるしかない!
∴適応手段のひとつ=創造

2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
7
日本人口の超長期推移

人口爆発:現在の前後100年が特異



2006年ピーク
120,000
18世紀半ばの享保改革から150年間
1億人突破:人口爆発


140,000
16世紀までの1500年以上
3,000万人台


千人
1,000万人未満
100,000
明治維新以降140年間で4倍増
80,000
6,000万人減:人口激減
第2次世界大戦

2100年4,771万人

ピークの2006年から90年間で7割減
弥
生
時
代
60,000
関
が
原
合
戦
鎌
倉
幕
府
大
宝
律
令
享
保
改
革
40,000
明
治
維
新
20,000
0
西暦 0
500
1000
1500
2000
1846年以前のデータは鬼頭宏(2007年),1872~2009年,および2010~2105年の中位推定データは総務省統計局・日本統計年鑑(2008年)による.
鬼頭宏,『[図説]人口で見る日本史(縄文時代から近未来社会まで)』,PHP研究所,2007年7月6日.
総務省統計局,『日本統計年鑑』,第二章 人口・世帯,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/02.htm (2011年5月5日アクセス).
ここで,1872-1920年のデータは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0201a00.xls (2011年5月5日アクセス),
1921-2009年のデータは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0201b00.xls (2011年5月5日アクセス),
2010-2105年の中位推定データは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0202000.xls (2011年5月5日アクセス)から得た.
近代日本の人口爆発
千人
140,000.0
2006年ピーク
120,000.0
変
曲
点
(
1
9
7
3
年
)
明
治
大
第 学
二 (
次 学
世 校
界 教
大 育
1973年:第1次オイルショック
戦 法
1979年:第2次オイルショック
)
1900~1940年:+1.3%/年(決定係数は99.8%)
2010~2040年:-0.6%/年(決定係数は97.5%)
2050~2105年:-1.4%/年(決定係数は99.9%)
80,000.0
60,000.0
40,000.0
20,000.0
明
治
維
新
0.0
1850
明
治
法
律
学
校
1900
1950
大
変
動
?
↑
←
100,000.0
日
本
人
口
の
少
子
化
2000
2050
既存の大学や企業は
次世代に通用しない!
西暦
2100
2150
1872~2009年,および2010~2105年の中位推定データは総務省統計局・日本統計年鑑(2008年)による.
総務省統計局,『日本統計年鑑』,第二章 人口・世帯,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/02.htm (2011年5月5日アクセス).
ここで,1872-1920年のデータは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0201a00.xls (2011年5月5日アクセス),
1921-2009年のデータは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0201b00.xls (2011年5月5日アクセス),
2010-2105年の中位推定データは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0202000.xls (2011年5月5日アクセス)から得た.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
9
転換点の日本
転換点
千人
多様性
140,000.0
2006年ピーク
120,000.0
←
100,000.0
変
曲
点
(
1
9
7
3
年
)
明
治
大
第 学
二 (
次 学
世 校
界 教
大 育
1973年:第1次オイルショック
戦 法
1979年:第2次オイルショック
)
1900~1940年:+1.3%/年(決定係数は99.8%)
2010~2040年:-0.6%/年(決定係数は97.5%)
2050~2105年:-1.4%/年(決定係数は99.9%)
80,000.0
60,000.0
40,000.0
20,000.0
明
治
維
新
0.0
1850
明
治
法
律
学
校
1900
1950
2000
2050
西暦
2100
2150
1872~2009年,および2010~2105年の中位推定データは総務省統計局・日本統計年鑑(2008年)による.
総務省統計局,『日本統計年鑑』,第二章 人口・世帯,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/02.htm (2011年5月5日アクセス).
ここで,1872-1920年のデータは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0201a00.xls (2011年5月5日アクセス),
1921-2009年のデータは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0201b00.xls (2011年5月5日アクセス),
2010-2105年の中位推定データは,http://www.stat.go.jp/data/nenkan/zuhyou/y0202000.xls (2011年5月5日アクセス)から得た.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
10
進化のダイナミズム
転換点
多様性

不可逆的な進化
トランペット型オープニングの連鎖としての進化
転換点
(野中郁次郎:「企業進化論」,第4章,p.161)
多様性
 転換しつづけるパラダイム

転換点
戦略の創発
 戦略=パラダイム(Peter Earl, 1984)
 パラダイム変革
 自発的・自己超越的に進化
 メカニズム
 ゆらぎを伴うカオス的遷移
戦略=パラダイム
戦略=パラダイム
多様性
戦略=パラダイム
転換点
多様性
戦略=パラダイム
∴「神話」から脱却し、多様性を活かせ!
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
11
多様性で創造されるパラダイム
転換点
多様性
転換点
戦略=パラダイム
転換点
計画制御で行き先を
決められない!
多様性
多様性
戦略=パラダイム
戦略=パラダイム
2012年10月12日
転換点での「断絶」
明治大学 阪井和男
12
転換点での「断絶」

断絶とは・・・
情報化の進展、グローバル経済の出現、政府の無力化、知識社会と知識
労働者の興隆、企業間の合従連衡、世界的規模の産業構造の再編、
雇用の大変動、高等教育におけるイノベーション

日本:政治の危機、政党の役割の低下、政府への信頼の喪失(ドラッカ
ー、『断絶の時代』、「日本版新版への序文」より、1969年)
「変革が激しく目を引くのに対し、断絶は静かに進行する。地震や噴火として
現れるまでは、気づかれない。」(ドラッカー、『断絶の時代』、1969年)
「地震の群発のように社会を激動が襲いはじめた。その原因は地殻変動としての断
絶にある。この断絶の時代は起業家の時代、グローバル化の時代、多元化の
時代、知識の時代である」(ドラッカー、『断絶の時代』、1969年)
断絶=地殻変動
∵断絶は成長する砂山である!

2012年10月12日
明治大学 阪井和男
13
組織の創造性:2つの問題
1.
場所の問題
組織のどこから生み出されるか
 組織トップかミドルかボトム
 ライン組織のどこが担うか
2.
方法論の問題
仮説生成をどう行うか
 どの創造技法を使うか
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
14
なぜ創造性が必要か?
目次
創造性が
生み出されるところ
新秩序はどこから生まれるか?
不動点
(クラス1)

カオスの縁
生命は,秩序と無秩序(カオス)
のはざまで揺れている
 適応的な複雑系がここに属
するというのが、複雑力学系
における最近の大発見
周期的
(クラス2)
カオスの縁
複雑
(クラス4)

複雑力学系の4つのクラス

カオス

(クラス3)

あらゆる秩
序が存在!

クラス1:不動点
クラス2:周期系
クラス3:カオス系
クラス4:カオスの縁
リューイン,ロジャー,『コンプレクイシティへの招待(複雑性の科学 生命の進化から国家の興亡まですべてを貫く法則)』,
糸川英夫監訳,福田素子訳,徳間書店,1993年10月.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
17
企業組織の秩序
社長
社長室
財
務
部
人
事
部
営
業
部
企
画
部
製
造
部
企業
組織
現場
担当者
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
18
企業組織のさまざまな境界
社長・役員の外部ネットワーク
社長
社長室
担当部署の外部ネットワーク
財
務
部
サービスフロントの顧客接点
人
事
部
営
業
部
企
画
部
製
造
部
企業
組織
現場
担当者
顧客
潜在
顧客
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
19
サービスフロント=カオスの縁
社長
不動点
秩
序
(クラス1)
社長室
財
務
部
周期的
(クラス2)
複雑
(クラス4)
カ
オ
ス
の
縁
サ
ー
ビ
ス
フ
ロ
ン
ト
営
業
部
企
画
部
製
造
部
現場
担当者
顧客
潜在
顧客
カオス
乱
雑
人
事
部
企業
組織
(クラス3)
あらゆる秩
序が存在!
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
20
現場担当者の暗黙知
社長
社長室
財
務
部
顧客の欲求を無意識的に
暗黙知として獲得ずみ
人
事
部
営
業
部
企
画
部
製
造
部
企業
組織
現場
担当者
顧客
暗黙知を短時間のグループ討議によって
表出させるための会議手法とは・・・?
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
潜在
顧客
21
新サービスの創造手法
1.
場所の問題
組織のどこから生み出されるか
 組織トップかミドルかボトム
サービスフロント(ボトムの現場担当者)
2.
方法論の問題
仮説生成をどう行うか
 どの創造技法を使うか
ワールドカフェ、ドラマチック・マネジメント、ブレインストーミング・KJ法
交流制約法(収束発散思考)・・・×発散収束思考

2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
22
創造性が
生み出されるところ
目次
教育における断絶
断絶の時代

断絶とは・・・
情報化の進展、グローバル経済の出現、政府の無力化、知識社会と知識
労働者の興隆、企業間の合従連衡、世界的規模の産業構造の再編、
雇用の大変動、高等教育におけるイノベーション

日本:政治の危機、政党の役割の低下、政府への信頼の喪失(ドラッカ
ー、『断絶の時代』、「日本版新版への序文」より、1969年)
「変革が激しく目を引くのに対し、断絶は静かに進行する。地震や噴火として
現れるまでは、気づかれない。」(ドラッカー、『断絶の時代』、1969年)
「地震の群発のように社会を激動が襲いはじめた。その原因は地殻変動としての断
絶にある。この断絶の時代は起業家の時代、グローバル化の時代、多元化の
時代、知識の時代である」(ドラッカー、『断絶の時代』、1969年)

断絶=地殻変動
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
25
日本社会における断絶の構造

断絶=地殻変動
1.
2.
3.
4.
5.

日本人口の少子化 ・・・・・
高度成長の鈍化 ・・・・・・・
高等教育の普遍化 ・・・・・
生死の非日常化 ・・・・・・・
次世代資源の協調化 ・・・
生産人口の減少化・高齢化
競争の激化
近代型教育の限界化
人間尊厳の希薄化
協調型社会への進展化
東日本大震災
・・・?
21世紀初頭の大変動・・・???
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
時代の変わり目に
居合わせた私たち
26
復興20年説

大変動から20年後には隔絶した復興と変貌を遂げている
1868年 明治維新
1889年 大日本帝国憲法の制定(21年後)


富国強兵(明治後期)
帰結:日中戦争,第二次世界大戦の配線
1945年 第二次世界大戦
1964年 東京オリンピックの開催(19年後)


経済大国(昭和後期)
帰結:高度経済成長,バブル崩壊
2011年3月11日 東日本大震災
2030年 ??? (20年間)
鈴木典比古,「2030年・大震災復興は成る(その時、大学の役割は何か)」,じゅあ,第47号,大学基準協会,p. 1,2011年10月1日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
27
復興を担う若者たち

大変動から隔絶的変貌への20年期
 復興の重責をになったのは若い世代
 人材輩出を可能にしたのは教育

若者論:
×「内向き、無気力、安全志向」等とする見方
 彼らは,いま社会の中心にある我々ミドル・シニア世代の閉
塞感・後退感・当惑感を反映する鏡の役割を負わされている
 我々が若者を称して「内向き、無気力、安全志向」等と見るの
は無責任で失礼ですらある
鈴木典比古,「2030年・大震災復興は成る(その時、大学の役割は何か)」,じゅあ,第47号,大学基準協会,p. 1,2011年10月1日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
28
復興を担う若者たち

2011年から2030年の20年間
 復興を担う重責は現在の10歳代~20歳代の若者たち

教育の使命
今ほど大学がその本質的使命、すなわち将来を担う人間の涵
養、に立ち返ってチャレンジできる好機はない
鈴木典比古,「2030年・大震災復興は成る(その時、大学の役割は何か)」,じゅあ,第47号,大学基準協会,p. 1,2011年10月1日.
※東日本大震災を経験した東北地方から,
日本の未来を救い,世界を変える人材が育つ!
 同時代に居合わせ,寄り添えることの幸せ
阪井和男(明治大学東北再生支援プラットフォーム副代表・つむぎプロジェクト担当)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
29
教育制度の「断絶」
1.
学年学級制

2.
教育効果測定のために導入された画一的な学び方
同級生以外と学び合う場が奪われている!
相対評価

教員のクラス管理上の都合で導入された競争原理
同級生と協調させない!
(cf.) 「隣の学生が最大の教育資源」(原田康也・早稲田大学)
3.
単位制

工場労働者の時間管理の方法をそのまま適用
決められた単位数だけ科目を取得すれば卒業できる


科目配置は教員の教育理念にもとづき,学びの実態を反映していない
科目間の連携による意味づけが学習者に任されたまま
∴人間味の失せた「マンモス教育工場」(潮木*,2008年,p. 226)
2012年9月11日
*潮木守一,『フンボルト理念の終焉?(現代大学の新次元)』,東信堂,2008年3月31日.
30
阪井和男・栗山健
1つのシステムとしてみた教育
1つのシステムとしてみた教育!?
 科目間の連携
就職
ゼミ
卒業生調査
専門科目
専門科目

ゼロ段階:
アイデア
の産出


カリキュラム
設計・再設計
志願者

B
C
2012年9月11日
D
企業,高校,学生活動,・・・
外部オープン性


A
共通ポートフォリオの構築を目指す

入学試験
必修科目全体を意味付けるストーリー
大学教育と企業等との連携

教養科目
すべての矢印の始点と終点をつなぐ
ストーリー中心型カリキュラム


教育環境、
授業方法
の試験
ポートフォリオがつなぐ教育活動
ポートフォリオの公開
iTunes U・JOCWによる授業公開

阪井和男・栗山健
高等教育による新しい社会貢献
31
1つのシステムとしてみた生産

消費者
流通
消費者調査
ゼロ段階:
アイデア
の産出
検査
組立
設計および
再設計
1つのシステムとしてみた生産
(デミング,1996年,pp.68-69)
PDCAの原型(PDSAサイクル)
 品質の改善は,原材料から顧客まで,将
来へ向けての製品サービスの再設計を含
めて全生産ラインにわたる
 この図は,日本で1950年8月に使用された
(原図を回転させ修正して作成した)

製造
工程、機械、
方法、コスト
の試験

原材料の受け取り
および試験
原材料、
設備の供給業者
A
サービス組織では,生産の原資A,B,C
等は,データソースや前工程の作業等
B
C
2012年9月11日
D
デパートにおける代金,代金の計算,預金,払い
戻し,在庫の入出,転記,出荷指示など
デミング,W・エドワーズ,『デミング博士の新経営システム論(産業・行政・教育のため
に)』,NTTデータ通信品質管理研究会訳,NTT出版,1996年3月21日.
原著:W. Edwards Deming, "The New Economics: For Industry, Government, Education
(Second Edition)", Massachusetts Institute of Technology, Center for Advanced
Educational Services, Cambridge, Massachusetts, 1994.
阪井和男・栗山健
32
教育における断絶
目次
革新がもたらした
大学教育の進化
潮木守一,『世界の大学危機』,中公新書,No. 1764,中央公論新
社,第4章,2004年9月24日.
http://ja.wikipedia.org/wiki/ (2008年12月27日アクセス)
http://changhykw.uijin.com/educ1.html (2008年12月27日アクセス)
http://changhykw.uijin.com/educ2.html (2008年12月27日アクセス)
教育の世界史
西暦
キーワード
場所
内容
西暦
キーワード
場所
内容
エジプト
イスラム神学を主とし多様な大学院コースをも
つ最初の成熟した大学
1088 ボローニャ大学
イタリア
理想的戦士を養成するスパルタ教育
1096 オックスフォード大学
イギリス
ヨーロッパ最古の総合大学。世界の大学の原
点
英語圏では最古の大学で、世界を代表する大
学の1つ
個性の多様な伸長が尊重された教育が発達
1209 ケンブリッジ大学
イギリス
2007年度世界ランキング第2位。近世以降の
社会変革に貢献した著名人を輩出
1211 パリ大学
フランス
1451 グラスゴー大学
スコットランド
13の大学の総称。芸術の教育機関としても名
高い
英語圏最古の大学の一つ。イギリス全体では
四番目
1551 サンマルコス大学
ペルー
アメリカ大陸でもっとも古い大学
1551 メキシコ国立自治大学
メキシコ
アメリカ大陸で2番目に古い大学。ラテン系大
学で第1位
-2500 エドゥッバ
シュメル
神殿から独立した学校「エドゥッバ」が全土に設置
-2100 生命の館
エジプト
国立の役人養成所「生命の館」を設置
-700 スパルタ教育
ギリシャ
-700 アテネの教育
ギリシャ
-700 タキシラの僧院
パキスタン 卒業生に学位を授与
-500 ナーランダ大学
インド
大学院にあたるコースも。仏教の学問研究で有名
-400 リュケイオン
ギリシャ
アリストテレスによって開設された学園
-387 アカデメイア
ギリシャ
プラトンが創設。古代世界最大の名声を誇った学校
アレクサンドリア図
-300
エジプト
書館
古代最大にして最高の図書館、最古の学術の殿堂
988 アル=アズハル大学
1636 ハーバード大学
アメリカ
2007年の世界大学ランキングで単独1位
1721 ハバナ大学
キューバ
カリブ海域で最初の大学
200 ラテン語学校
ローマ
修辞学校などの学校システムが根付き自由七学科
が形成
258 南京太学
中国
呉の中央高等教育機関として設立
1810 ベルリン大学
ドイツ
フンボルトが構想した世界の大学モデル
500 自由七科
ローマ
「人を自由にする学問」としての「自由七科」
1836 ロンドン大学
イギリス
イングランド三番目の大学
サーサーン朝に設立され学位にあたる称号を授与
1858 慶応義塾大学
日本
福澤諭吉(25歳)による古いしきたりにとらわ
れない教育
律令制における式部省直轄の官僚育成機関
1870 ジョンズ・ホプキンス大学 アメリカ
世界初の研究大学院大学。奨学金付き院生
(フェロー)制度を創設
550
グンデシャープー
ペルシャ
ル大学
671 大学寮
日本
800 サレルモ大学
イタリア
1877 帝国大学
日本
現東京大学。国立高等教育機関および研究
機関
830 知恵の館
メソポタミア バグダードに設立した翻訳所・図書館
1881 明治大学
日本
日本の私立大学で初めて商科を設置
1882 早稲田大学
日本
大隈重信が創立。政治学で有名
1897 京都帝国大学
日本
現京都大学
849
コンスタンティノー
トルコ
プル大学
976 岳麓書院
中国
2010年3月15日
古代ギリシャ・ローマを継承した学問研究最後の砦
北宋時代に創立され学位にあたる称号を授与
明治大学 阪井和男
35
教育は文明発展のインフラ

メソポタミア文明



エドゥッバ(-2500,シュメル)
グンデシャープール大学(550,
ペルシャ)
エジプト文明








スパルタ教育(-700)
アテネの教育(-700)
リュケイオン(-400)
アカデメイア(-387)
2010年3月15日





タキシラの僧院(-700)
ナーランダ大学(-500)
中国文明



ラテン語学校(200)
自由七科(500)
インダス文明

生命の館(-2100)
アレクサンドリア図書館(-300)
ギリシャ文明
ローマ文明
南京太学(258)
岳麓書院(976)
日本文明

大学寮(671)
・・・
明治大学 阪井和男
36
世界最古の教育
紀元前2500年:エドゥッバ(シュメル)
 神殿から独立した学校が全土に設置
 教育目標

文法の習熟とシュメール語を楔形文字で書くこと
 教科

専門の教師が、シュメール語、数学、図画習字、動植物、地理、鉱
物などを教えた
 卒業試験


合格すると書記となり,専業書記、地主の財産管理人や経理士など
に就職
専業書記は高官の秘書となり、戦利品・捕虜のリストの作成を手が
けた。
http://changhykw.uijin.com/educ1.html (2008年12月27日アクセス)
2010年3月15日
2009年1月5日
明治大学明治大学
阪井和男
阪井和男
37
37
英語圏で最古の大学
1096年:オックスフォード大学(イギリス)
オックスフォード市に本部を置くイギリスの国立大学
 英語圏では最古の大学
 大学の運営

学科とカレッジ (学寮)が並列
 世界ランク

2007年度のThe Times Higher Education Supplementで世界2位
 成果


25名の英国首相
47名のノーベル賞受賞者を輩出
http://ja.wikipedia.org/wiki/オックスフォード大学 (2008年12月27日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
38
近世の知を確立
1209年:ケンブリッジ大学(イギリス)
オックスフォード大学から分離した世界を代表する名門大学
 現存する最古のカレッジPeterhouseは1284年の創立
 世界ランク

2007年度のThe Times Higher Education Supplementでは,ハーバー
ド大学に続いて世界ランキング第2位
 成果

世界の大学・研究機関で最多のノーベル賞



ノーベル賞受賞者は81人(2005年10月現在)
英国籍の69.2%に相当(2004年度までのイギリス国籍の受賞者数は171名)
近世以降、社会の変革に大きく貢献した数々の著名人

アイザック・ニュートン、チャールズ・ダーウィン、ジョン・メイナード・ケインズ等、
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケンブリッジ大学 (2008年12月27日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
39
カレッジ教育とは
大 学
学位授与
学科
学科
学科
カレッジ
カレッジ
カレッジ
講義
補習・生活
学生
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
40
カレッジの機能
1.
知の共鳴場
 分野を越えた人間関係を作り、
学際的な研究や知的なフォーラムの生まれる可能
性が高い
2.
活動の高度化
 カレッジ間で
学究やスポーツ・文化活動などの
自発的な切磋琢磨を誘発しうる
参考資料:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
http://ja.wikipedia.org/wiki/ケンブリッジ大学 (2009年1月4日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
41
近代の知:医学上の発見
600
500
400
その他
アメリカ
300
イギリス
フランス
200
ドイツ
100
0
1800-1849
1850-1899
1900-1926
潮木守一,『世界の大学危機(新しい大学像を求めて)』,中公新書, No. 1764,中央公論新社,2004年9月25日,p. 68.
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
42
近代の知:生理学での独創的研究
600
500
400
不明
その他
300
アメリカ
イギリス
フランス
200
ドイツ
100
0
1800-1824
1825-1849
1850-1874
1875-1899
1900-1924
潮木守一,『世界の大学危機(新しい大学像を求めて)』,中公新書, No. 1764,中央公論新社,2004年9月25日,p.
68.
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
43
近代の知:物理の領域での発見数
4,000
3,000
イギリス
2,000
フランス
ドイツ
1,000
0
1800-1825
1826-1850
1851-1875
1876-1900
潮木守一,『世界の大学危機(新しい大学像を求めて)』,中公新書, No. 1764,中央公論新社,2004年9月25日,p.
68.
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
44
近代の知:国別ノーベル賞受賞者
50
ドイツの圧倒
的な優位性
40
国
別
ノ
ー
ベ 30
ル
賞
受
賞 20
者
(
累
積
) 10
0
1900
1910
1920
英
独
1930
1940
米
http://ja.wikipedia.org/wiki/国別のノーベル賞受賞者 (200812月15日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
45
世界の大学モデル
1810年:ベルリン大学(ドイツ)
言語学者でプロイセンの政治家としても有名だったフンボルト
がその骨格をつくった(フンボルト理念)
 業績




国家からの学問の自由を志向し、研究を大学の重要な機能とした
各国の大学モデルとなり、その産業形成を支えた
初代の学長がフィヒテ、2代目はサヴィニー、1830年にはヘーゲルが
後任
日本からも森鴎外・北里柴三郎・寺田寅彦・肥沼信次・宮沢俊義ら
がベルリン大学に留学している。
http://ja.wikipedia.org/wiki/大学(2008年12月27日アクセス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/ベルリン大学 (2008年12月27日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
46
フンボルト理念とは
1.
研究と教育の統一
研究を通じての教育

学生も先生とともに研究し,知識獲得の方法を教育
1812年(発足2年後)最初のゼミナールを設置。専用のゼミナール室


2.
3.
さまざまな学問の統合
研究の重視


4.
5.
すべての知識をいまだ解決がついていないものとして扱う
教授の能力・資格を研究成果で判定
高度な教育が人格の陶冶につながるという信念
学術・科学・人間形成を政府の責任事項として強調
以上5点は,スウェーデンの高等教育研究者ニボーン(潮木(2004年,p. 54)による引用)
潮木守一,『世界の大学危機』,中公新書,No. 1764,中央公論新社,第2章,2004年9月24日.
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
47
フンボルト理念とは
6.
大学運営の経費を国庫から支出する国営大学

7.
中世の大学は独立した資産を持つがゆえにギルド化によって腐敗
教授の選考を国家行政機構においた

教授人事の最終決定権は文部省。大学は3名推薦するだけ
2010年3月15日
潮木守一,『世界の大学危機』,中公新書,No. 1764,中央公論新社,第2章,2004年9月24
日.
明治大学 阪井和男
48
現代の知:国別ノーベル賞受賞者
300
国
別
ノ
ー
ベ 200
ル
賞
受
賞
者
(
累 100
積
)
アメリカが
世界を圧倒:
1960年までは
9年で2倍のペース
(自然科学3分野)
イギリス
第1次
世界大戦
第2次
世界大戦
ドイツ
0
1900
1920
1940
英
1960
独
米
1980
2000
日本
日
http://ja.wikipedia.org/wiki/国別のノーベル賞受賞者 (200812月15日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
49
受賞者数と院生数
300
国
別
ノ
ー
ベ 200
ル
賞
受
賞
者
(
累 100
積
)
0
1900
1920
1940
英
1960
独
米
1980
2000
日
50,000
40,000
博 30,000
士
学
位
授
与
数 20,000
10,000
2010年3月15日
0
1900
明治大学 阪井和男
1920
1940
1960
1980
50
2000
アメリカでの博士学位授与数
50,000
40,000
博 30,000
士
学
位
授
与
数 20,000
1880~1970年までの成長率は,
11年で2倍
10,000
0
1900
2010年3月15日
1920
1940
1960
明治大学 阪井和男
1980
2000
51
大学院の発明
1870年:ジョンズ・ホプキンス大学(アメリカ)
アメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア所在の私立大学

ボルティモアの実業家ジョンズ・ホプキンスの遺志に基づいて
1876年に世界初の研究大学院大学として設立
 医学・国際関係学の研究で有名で、アメリカ医療最高峰
 米国連邦政府からの研究費額は第一位
 全米で初めて博士の学位を授与した
 全米で初めて実験室での科学実験を行った
 公衆衛生大学院
(School of Public Health) を初めて設置
 付属病院は全米ランキング1位を15年維持(2005年現在)
潮木守一,『世界の大学危機』,中公新書,No. 1764,中央公論新社,第4章,2004年9月24日.
http://ja.wikipedia.org/wiki/ジョンズ・ホプキンス大学 (2008年12月27日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
52
大学院の爆発的普及

大学院はアメリカが発明した教育制度



新たに研究を中心とした専門教育を行うことを目的
アメリカの大学教育は教養中心の復誦による学部教育だった
1874年,学長予定者のギルマンが「大学院」構想を発表


地元新聞から「学者のための閑職」など望んではいないとの反対を受け,
カレッジも併設することに
志願者難が予想されたため,奨学金付きの院生(フェロー,初年度10名,
年額500ドル)制度を創設


「ギルマンは金で院生を買い漁っている」と非難された
大学院の爆発的普及
1883/84年度,院生数は174名(ジョンズ・ホプキンス大学)
 全米:1900年(24年後),5,800名。1910年,9,400名。1920年,15,600名。1930年,47,300名
潮木守一,『世界の大学危機』,中公新書,No. 1764,中央公論新社,第4章,2004年9月24日.
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
53
研究型大学の興隆

教員獲得の競争市場


1900年,教員獲得の競争市場は,ドイツとアメリカのみ
アメリカでは,1970年代以降,
莫大な個人資産をもとに研究中心型大学の創設が相次ぐ


ジョンズ・ホプキンス大学,シカゴ大学,スタンフォード大学等
ハーバード大学におけるサバティカル制度の導入
1880年,エリオット学長が外部から有名教授を招く目的で導入
 7年間に一度,半分の給料で健康・休養・研究のための休暇
 契機:ジョンズ・ホプキンス大学で博士号を取得した助手を助教授に招いたが断られる




オリジナルな研究のための時間を確保する
正教授への昇任は研究業績で決定する
ハーバードの助教授より500ドル高い2000ドルの年俸
教員の研究活動を重視する政策へ変更
潮木守一,『フンボルト理念の終焉?(現代大学の新次元)』,東信堂,pp. 112-116,2008年3月31日.
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
54
現代の知を確立
1636年:ハーバード大学(アメリカ)
マサチューセッツ州ケンブリッジ市の私立大学
 世界ランク



2007年の世界大学ランキングでは単独1位(The Times Higher
Education Supplement)
学生1人当たり資産運用収入・寄付金は,511万円で桁違いのトップ
(2002,2003年度)
運用基金の規模は,180億ドル(約2兆円)で全米トップ(2001年度)
潮木守一,『世界の大学危機』,中公新書,No. 1764,中央公論新社,第4章,2004年9月24日.
 業績


7人のアメリカ合衆国大統領を輩出
多数のノーベル賞受賞者

1974年以来19人の教員が受賞など世界トップの研究機関のひとつ
http://ja.wikipedia.org/wiki/ハーバード大学 (2008年12月27日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
55
日本の私大ランク
「大学受験の手引き」(代々木ゼミナール),
http://www.geocities.jp/gakurekidata/shidaikako.html
(2008年12月24日アクセス)
偏差値の推移
80.0
70年代は
早稲田がトップ
75.0
偏差値
70.0
明治(政経・経)
65.0
慶応(経済)
早稲田(政経・経)
60.0
慶応(理工Ⅰ)
早稲田(理工・電気)
55.0
明治(工・機)
50.0
45.0
1974
1976
1978
1980
( 偏差値には上下に1.2ずつの誤差が含まれている)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
56
日本の私大ランク
『代ゼミデータリサーチ』(代々木ゼミナール)の各年度版から作成
平均偏差値の推移
10年以上にわ
たって早稲田
を引き離す
70
平均偏差値
65
慶應
70年代から
早稲田のほ
うが高かった
慶應(除医)
早稲田
60
明治
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
00年
99年
98年
97年
96年
95年
94年
93年
92年
91年
90年
89年
88年
87年
86年
85年
55
57
慶応義塾大学の偏差値推移
『代ゼミデータリサーチ』(代々木ゼミナール)の各年度版から作成
慶応義塾大学
80.0
10年近く
新学部が
牽引力を発揮
75.0
医
総合政策
法-法律
偏差値
法-政治
経済B
70.0
環境情報
商B
経済A
65.0
文
SFC(湘南藤
沢キャンパ
ス)で新学部
理工
商A
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
00年
99年
98年
97年
96年
95年
94年
93年
92年
91年
90年
89年
88年
87年
86年
85年
60.0
58
大学の革命児

1858年:慶応義塾大学
 1990年,SFC(湘南藤沢キャンパス)を創設
 総合政策学部、環境情報学部

AO入試




アメリカの制度であったAO(アドミッションオフィス)による新しい制度
学力試験を課さず、書類選考と面接だけで優秀な生徒を集める方法
現在は大半の大学が慶応の方式を踏襲
文理の枠を排除した教育を導入


早くから大学の学閥を廃し、教授陣を全国、海外から広く集めた
浅野史郎氏(元宮城県知事)、竹中平蔵氏(元総務相)、福田和也氏(
文芸批評)、富田勝氏(先端生命科学)など
吉田 敦彦,「慶応義塾大のここがすごい!」2007年12月06日,
http://allabout.co.jp/gs/univexam/closeup/CU20080722A/ (2008年12月13日アクセス)
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
59
制度の革新がもたらした進化
文明の発展は,4500年前から教育とともにあった
 イギリスは,カレッジ教育の発明で近世の知をリード
産業革命(1760年代~1830年代)

ドイツは,フンボルト理念の確立で近代の知をリード
科学革命

アメリカは,大学院の発明で現代の知をリード
大学院=「フンボルト理念」の導入
情報革命



慶応義塾大学は,SFCの創設で現代日本の私大トップ独走
??大学は,新しい教育を確立すれば世界の知をリード!?
2010年3月15日
明治大学 阪井和男
60
革新がもたらした
大学教育の進化
目次
どの創造技法を使う
か
動機

ワールドカフェの優れた点:
1.
短時間で多様な意見を共有できる優れた方法
人の意見から新しいアイデアが創発(他花受粉)される

2.
自己主張の苦手な日本人向き
少人数の意見交換のため、批判される危険が少ない


ワールドカフェは創造技法たりうるか?
 「ミシン問題」*に適用すると正解に行き着かない!

老若男女誰でも知っているが、動作原理を説明できない!
*「ミシンはなぜ縫えるか?」を数名で議論する。三宅なほみ(1985年)を参照のこと。
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,
第3章,1985年11月10日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
63
動機

なぜワールドカフェで正解に行き着かないか?
 「ミシン問題」:
高度な創造性が求められるきわめて困難な問題
 もっとも困難な問題に議論を集中できない!

 ワールドカフェの適用限界

「ワールドカフェ」=「発散思考」に分類される方法論!
 難易度の高い問題には思考を集中させる必要あり!

困難を突破するには「収束思考」による集中が重要!
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
64
どの創造技法を使う
か
目次
「ミシン問題」
ミシンはなぜ縫えるか
阪井和男・栗山健,「談話分析による創発プロセスの可視化に向けて
(マイクロ・アブダクションの連鎖としての創発プロセス)」,思考と言語
研究会「言語と学習,場の共創」 ,電子情報通信学会,早稲田大学,
2011年11月26日. http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/ieice-bamicro-abduction-20111126.pdf (2012年9月11日アクセス)
ミシン問題

「ミシンはなぜ縫えるのか?」
 誰でも知っているが理解の困難な問題
 2人の人間が言葉を交わしながら解決に導くプロセ
スを詳細に検討
 子どもから大人まで老若男女を問わず誰でも考え
ることができるものの理解することが極めて困難と
いう代表的な問題
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解とは
何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
67
ミシンの縫い方

縫い方式
 本縫い
上糸と下糸を2本使う
 解けにくく強度に優れるが,伸縮性は乏しい


ミシンの運針速度
 家庭用ミシン

最高約700~1000針/分
 職業用ミシン

最高約1500針/分
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
68
実験の背景
テーマ:理解におけるインタラクションとは何か?
 課題:ミシンはなぜ縫えるのか?
 対象:大学院生と助手
 手法:プロトコル解析
 プロセス:(1)紙と鉛筆, (2)糸と針, (3)ミシンの持ち込

み
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解とは
何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,第3章,1985年11月10日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
69
No. 発言者
1 Monitor
2 Monitor
3 Monitor
4 Monitor
5 Monitor
6 Monitor
7 Monitor
8 Solver
9 Solver
10a Solver
10b Solver
11 Monitor
12 Monitor
13 Solver
14 Solver
15 Solver
16 Solver
17 Solver
18 Solver
19 Solver
20a Monitor
20b Monitor
プロトコル
で,どうなってなくちゃなんないかというと,この下のところに糸の輪をつくるでしょ
そいでその中にボビンの糸を通す・・・
・・・
だけどそれムリだよね
つまり,上からはとじた輪が来ているわけでしょ
でここにはずっとつながった糸がある
で,だから,困るのは,このボビンの糸はこの輪の中を通れないわけ
実際何が起きているかっていうと君のいう通りなんだけど
もうちょっと複雑かな
ボビン,
だけど,ボビンについてる糸がこの輪の中通ってるんだよ
この下にはこの糸ずっとつながってんだろ
それとも端があんの?
あー,端があるんだよ
あるんだけど,すごくびっくりするような端でねェ
ボビンの端が切れてるんだ
どうなっているかっていうとボビンが小さなカゴの中に入ってて
この輪がつっこまれてくるだろ
そうするとそのカゴがその輪をつかまえてさ
ボビンの上にかぶせちゃう
オーケイ,あー,それで,それだとすごくいいんだけど,
ボビンがどう動いているのかわかればそれでいいんだけど
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
No. 発言者
21 Monitor
22 Solver
23 Solver
24 Solver
25 Solver
26 Solver
27 Solver
28 Solver
29 Monitor
30 Solver
31 Solver
32 Solver
33 Solver
34 Solver
35 Solver
36 Solver
37 Solver
38 Solver
39 Solver
40a Monitor
40b Monitor
40c Monitor
プロトコル
ボビンはどうくっついてるの?
カゴの中に納まってるのさ
・・・カバーがこうあるだろ,上にかぶせるの
こうぱちんとはまってる感じ
でそこにすき間がある
だから糸が通って
・・・そこにすき間があってさ
そこが輪をつかまえる
針はそこのすき間を通って来るの?
こう,どういう具合にだかこの上にカバーがあって
それにこのすき間がある
でそれが輪をつかまえる
ちっちゃなフックがある
・・・このスパイラルが出てきてるとこに
で,それが輪をつかまえる
で,それで輪が下に降りて来る時に
何かその輪をつかまえて
ここ(ボビンのうしろとミシン本体の間のすき間)のうしろのとこに押し込んで
で,だからさ,こんなふうに輪はここにはまっちゃうような形になるんだよ
だからさ,
もし,ボビンがほんとにボビンケースのまん中に浮いてるような感じなんならさ,
その説明でとってもいいよ
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
針の動き
2012年12月15日
「流れのアニメーション(1)」,JUKI Webミシン博物館
http://www.juki.co.jp/jp/muse/sew/anime01.html (2009年7月20日アクセス)
72
阪井和男・内藤隆・栗山健
ミシンの縫い目
『ミシンのひみつ』,学研マンガでよくわかるシリーズ38,学習研究社,p. 40.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
73
ミシン問題の定式化
三宅なほみ,「理解におけるインターラ
クションとは何か」,佐伯胖編,『理解と
は何か』,認知科学選書 4,東京大学出
版会,第3章,p. 72,1985年11月10日.
縫い目
1
2
針に
よって上
糸の輪
ができ
る
2012年12月15日
糸1が上
から来
る
糸1と糸
2がから
み合う
糸2が下
から来
る
針が輪
をおしさ
げる
下糸が
輪の中
を通る
下糸が
下から
来る
阪井和男・内藤隆・栗山健
針が輪
を引き
上げる
74
トポロジー的に不可能な問題

ミシンは2本の糸を使っている
 上糸
片一方の端は,縫っている布につながっている
 もう片一方の端は,糸巻きにつながっている

 下糸
片一方の端は,縫っている布につながっている
 もう片一方の端は,ボビンの中にある糸巻きにつながっ
ている

∴ 2本の端がない糸!
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解
とは何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,第3章,1985年11月10日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
75
プロトコル分析(1)

三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何
か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京
大学出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
モニター
 で,どうなってかくちゃなんないかというと,この下のところに
糸の輪をつくるでしょ/そいでその中にボビンの糸を通す・・
・/・・・/だけどそれムリだよね/つまり,上からはとじた輪
が来ているわけでしょ/でここにはずっとつながった糸があ
る/で,だから,困るのは,このボビンの糸はこの輪の中を
通れないわけ

課題遂行係
 実際何が起きているかっていうと君のいう通りなんだけど/
もうちょっと複雑かな/ボビン,だけど,ボビンについてる糸
がこの輪の中通ってるんだよ
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
76
プロトコル分析(2)

三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何
か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京
大学出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
モニター
 この下にはこの糸ずっとつながってんだろ/それとも端があ
んの?

課題遂行係
 あー,端があるんだよ/あるんだけどすごくびっくりするよう
な端でねェ/ボビンの端が切れてるんだ/どうなっている
かっていうとボビンが小さなカゴの中に入ってて/この輪が
つっこまれてくるだろ/そうするとそのカゴがその輪をつか
まえてさ/ボビンの上にかぶせちゃう
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
77
ミシンの縫い目
『ミシンのひみつ』,学研マンガでよくわかるシリーズ38,学習研究社,p. 40.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
78
ミシンの縫い目
ボビンが端!
『ミシンのひみつ』,学研マンガでよくわかるシリーズ38,学習研究社,p. 40.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
79
三宅なほみ,「理解におけるインターラ
クションとは何か」,佐伯胖編,『理解と
は何か』,認知科学選書 4,東京大学出
版会,第3章,p. 72,1985年11月10日.
縫い目
糸1が上
から来
る
糸1と糸
2がから
み合う
糸2が下
から来
る
2
針に
よって上
糸の輪
ができ
る
針が輪
をおしさ
げる
下糸が
輪の中
を通る
下糸が
下から
来る
3
フックが
輪をとら
える
フックが
輪を引
き下げ
る
輪がボ
ビンの周
りを回る
輪がフッ
クから
離れる
1
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
針が輪
を引き
上げる
80
プロトコル分析(3)

三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何
か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京
大学出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
モニター
 オーケイ,あー,それで,それだとすごくいいんだけど,ボビ
ンがどう動いているのかわかればそれでいいんだけど/ボ
ビンはどうくっついてるの?

課題遂行係
 カゴの中に納まってるのさ/・・・カバーがこうあるだろ,上に
かぶせるの/こうぱちんとはまってる感じ/でそこにすき間
がある/だから糸が通って/・・・そこにすき間があってさ/
そこが輪をつかまえる
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
81
ボビンのメカニズム
2012年12月15日
「ミシンのメカニズム」,JUKI Webミシン博物館
http://www.juki.co.jp/jp/muse/sew/mech01.html (2009年7月20日アクセス)
82
阪井和男・内藤隆・栗山健
ミシン問題の定式化
3
4
フックが
輪をとら
える
フックが
輪を引
き下げ
る
輪がボ
ビンの周
りを回る
輪がフッ
クから
離れる
ボビン
の表側
には何
もない
フックが
輪をおし
ひろげ
る
ボビン
の後ろ
に隙間
がある
輪の片
側1はボ
ビンの
後を通
る
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
三宅なほみ,「理解におけるインターラ
クションとは何か」,佐伯胖編,『理解と
は何か』,認知科学選書 4,東京大学出
版会,第3章,p. 72,1985年11月10日.
輪の片
側2はボ
ビンの
表を通
る
83
プロトコル分析(4)

三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,
佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京大学
出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
モニター
 針はそこのすき間を通って来るの?

課題遂行係
 こう,どういう具合にだかこの上にカバーがあって/それに
このすき間がある/でそれが輪をつかまえる/ちっちゃなフ
ックがある/・・・このスパイラルが出てきてるとこに/で,そ
れが輪をつかまえる/で,それで輪が下に降りて来る時に
/何かその輪をつかまえて/ここ(ボビンのうしろとミシン本
体の間のすき間)のうしろのとこに押し込んで/で,だからさ
,こんなふうに輪はここにはまっちゃうような形になるんだよ
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
84
プロトコル分析(5)

三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,
佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京大学
出版会,第3章,p. 76,1985年11月10日.
モニター
 だからさ,もし,ボビンがほんとにボビンケースのまん中に
浮いてるような感じなんならさ,その説明でとってもいいよ
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
85
ボビンの動き
http://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Lockstitch.gif (2009年7月20日アクセス)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
86
ボビンの動き(2)
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Lockstitch_slow.gif (2009年7月20日アクセス)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
87
ミシン問題の定式化
三宅なほみ,「理解におけるインターラ
クションとは何か」,佐伯胖編,『理解と
は何か』,認知科学選書 4,東京大学出
版会,第3章,p. 72,1985年11月10日.
縫い目
1
2
針に
よって上
糸の輪
ができ
る
2012年12月15日
糸1が上
から来
る
糸1と糸
2がから
み合う
糸2が下
から来
る
針が輪
をおしさ
げる
下糸が
輪の中
を通る
下糸が
下から
来る
阪井和男・内藤隆・栗山健
針が輪
を引き
上げる
88
ミシン問題の定式化
3
4
5
三宅なほみ,「理解におけるインターラ
クションとは何か」,佐伯胖編,『理解と
は何か』,認知科学選書 4,東京大学出
版会,第3章,p. 72,1985年11月10日.
フックが
輪をとら
える
フックが
輪を引
き下げ
る
輪がボ
ビンの周
りを回る
輪がフッ
クから
離れる
ボビン
の表側
には何
もない
フックが
輪をおし
ひろげ
る
ボビン
の後ろ
に隙間
がある
輪の片
側1はボ
ビンの
後を通
る
輪の片
側2はボ
ビンの
表を通
る
ボビンは
ケースに
はまって
いる
ケース
はホル
ダーに
はまっ
ている
ホルダー
はカラー
の中に
納まって
いる
カラーは
フック
シャフト
の一部
である
フック
シャフト
はミシン
本体に
固定され
ている
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
89
三宅なほみ,「理解におけ
るインターラクションとは何
か」,佐伯胖編,『理解とは
何か』,認知科学選書 4,
東京大学出版会,第3章,
p. 72,1985年11月10日.
縫い
目
糸1が
上から
来る
糸1と
糸2が
からみ
合う
糸2が
下から
来る
2
針で
上糸
の輪
ができ
る
針が
輪をお
しさげ
る
下糸
が輪
の中を
通る
下糸
が下
から来
る
3
フック
が輪
をとら
える
フック
が輪
を引き
下げる
輪がボ
ビンの
周りを
回る
輪が
フック
から離
れる
ボビン
の表側
には何
もない
フック
が輪を
おしひ
ろげる
ボビン
の後ろ
に隙間
がある
輪の片
側1は
ボビン
の後を
通る
輪の片
側2は
ボビン
の表を
通る
ボビン
はケー
スには
まって
る
ケース
はホル
ダーに
はまっ
てる
ホル
ダーは
ラーの
中に納
まってる
カラー
はフッ
クシャ
フトの
一部
フック
シャフト
はミシ
ン本体
に固定
1
4
5
針が
輪を
引き上
げる
90
ミシン問題の結論
「コミュニケーション」≠「相互理解」
1.
役割の分化
課題をもっぱら解決する「課題解決者」(Solver)と,問題を
定義し質問を発する「モニター」(Monitor)に役割分化する
2.
理解レベルの不一致
「課題解決者」の理解は深くなるが,「モニター」の理解レベ
ルは浅いレベルにとどまっている
3.
ピザ屋の質問(ActionLearning)
理解の浅い人の質問が有効:浅い理解レベルの「モニター」の疑
問によって「課題解決者」の思考が刺激され勝手に理解が深まっていく
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
91
推論分析
知
の
具
現
化
1. 動機:「存在」
2. 事実認識:
事実(としての記述)を把握し認識する
エスノグラフィ,ブルートファクツ,
行動観察,暗黙知の顕在化
演繹推論
Deduction
3. 知の共有機能:
論理的・機械的推論によ
る具体化(具現化),視点
をミクロにズームイン,知
識を詳細化し緻密化する
2. 大前提の設定:
神話,理念,信念,文化,
常識,他の推論結果
1. 動機:「評価」
3. 知の連携機能:
科学的推論による抽象化,
視点をマクロにズームアウト,
知識に汎用性をもたせる
帰納推論
Induction
1. 動機:「意味」
2. 共鳴場:
似たものや異質なものから創発され,
新しい意味を創造する
ひらめき(気づき),アナロジー,
異質なものの新結合
アブダクション
Abduction
3. 知の創発機能:
新結合による仮説生成,視点を
根本的に転換,知識を創造する
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
92
<推論分析>
No.
役
1-2
4
5-6
7
10b
11
12
13
15
16-19
20b-21
22-24
25
26-28
29
30-32
33
34-39
40a-40c
M
M
M
M
S
M
M
S
S
S
M
S
S
S
M
S
S
S
M
解説
前提の確認
不可能問題の提起
事実の確認
不可能問題の定義
問題の再定義
制約条件の確認
仮説の生成
仮説の追認
問題の解決
問題の解決
問題の提起
問題の解決
仮説の生成
問題の解決
仮説の生成
問題の再定義
仮説の生成
問題の解決
解決策の受け入れ
2012年12月15日
演繹推論
帰納推論
アブダクション
(deduction)
Md×2
(induction)
(abduction)
Md
Mi×2
Md
Sd
Sa
Mi
Mi
Si
Ma
Sa
Sd
Sd×4
Md×2
Sd×3
Sa
Sd×3
Ma
Sd×3
Sd
Sd×6
阪井和男・内藤隆・栗山健
Sa
93
イノベーション・ダイアグラム

イノベーション・ダイアグラム*による表現
知を具現化する技術にかかわる活動と,知の創造を担う科学
の活動は,もともと独立
1. 知の具現化の軸と知の創造の軸は互いに直交
2. 知的活動の全体をこの平面上の軌跡として表す
 特長

両者が融合しているような活動も,詳細が判明
 創造的な活動への適用


結果として生じるアブダクションの特定
演繹推論や帰納推論の機能について詳細に検討可能
*山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,p. 70,2006年3月3日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
94
トポロジー的不可能性の壁
知
の
具
現
化
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
点線はM:モニター
4M,7M.ムリ
2M.糸を通す
1M.糸の輪
2M.ボビンの糸
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
95
トポロジー的不可能性の壁
知
の
具
現
化
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
4M,7M.ムリ
10S.通ってる
?
2M.糸を通す
1M.糸の輪
2M.ボビンの糸
11M.糸
つなが
ってんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造 96
マイクロ・アブダクション
知
の
具
現
化
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
4M,7M.ムリ
10S.通ってる
?
マイクロ・
アブダクション
2M.糸を通す
1M.糸の輪
2M.ボビンの糸
11M.糸
つなが
ってんだろ
12M.端が
あんの?
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造 97
連鎖によるブレークスルー
知
の
具
現
化
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
4M,7M.ムリ
2M.糸を通す
1M.糸の輪
2M.ボビンの糸
10S.通ってる
?
12M.
端が
あんの?
11M.糸
つなが
ってんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
ボビン=端
という発見
15S.ボビン
の端が
切れてる
13S.あー,
端があるんだよ
12M.端
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造 98
演繹推論による具体化
知
の
具
現
化
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
?
4M,7M.ムリ
18S.カゴが輪をつかまえて
19S.ボビンの上にかぶせる
16S,22S.
10S.通ってる
?
ボビンがカゴに
入ってる
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
2M糸を通す
1M糸の輪
2Mボビンの糸
11M.糸
つながっ
てんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
15S.ボビン
の端が
切れてる
13S.あー,
端があるんだよ
12M.端
12M.端が
あんの?
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造 99
モニターの質問
?
20bM,21M.ボビンは
どう動くの?
知
の
具
現
化
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
?
4M,7M.ムリ
18S.カゴが輪をつかまえて
19S.ボビンの上にかぶせる
16S,22S.
10S.通ってる
?
ボビンがカゴに
入ってる
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
2M糸を通す
1M糸の輪
2Mボビンの糸
11M.糸
つながっ
てんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
15S.ボビン
の端が
切れてる
13S.あー,
端があるんだよ
12M.端
12M.端が
あんの?
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造100
メカニズム解明の壁
知
の
具
現
化
4M,7M.ムリ
2M糸を通す
1M糸の輪
2Mボビンの糸
?
20bM,21M.ボビンは
どう動くの? 29S.カバーが
上にかぶさる
?
?
18S.カゴが輪をつかまえて
28S.輪を
19S.ボビンの上にかぶせる
つかまえる
16S,22S.
10S.通ってる
? 29S.針
?
ボビンがカゴに
29S.針は
25S.
入ってる
すき間 すき間を通る?
11M.糸
つながっ
てんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
15S.ボビン
の端が
切れてる
13S.あー,
端があるんだよ
12M.端
12M.端が
あんの?
阪井和男・内藤隆・栗山健
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
知の創造101
ブレークスルー
38S,39S.すき間
に押し込む
知
の
具
現
化
4M,7M.ムリ
2M糸を通す
1M糸の輪
2Mボビンの糸
?
20bM,21M.ボビンは
37S.輪を
どう動くの? 29S.カバーが
つかまえて
上にかぶさる
?
?
33S.フック
18S.カゴが輪をつかまえて
28S,32S.輪を
34S.スパイラル
19S.ボビンの上にかぶせる
つかまえる
16S,22S.
10S.通ってる
? 29S.針
?
ボビンがカゴに
29S.針は
25S,31S.
入ってる
すき間 すき間を通る?
11M.糸
つながっ
てんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
15S.ボビン
の端が
切れてる
13S.あー,
端があるんだよ
12M.端
12M.端が
あんの?
阪井和男・内藤隆・栗山健
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
知の創造102
創発ダイアグラム
38S,39S.すき間
に押し込む
知
の
具
現
化
4M,7M.ムリ
2M糸を通す
1M糸の輪
2Mボビンの糸
?
20bM,21M.ボビンは
37S.輪を
どう動くの? 29S.カバーが
つかまえて
上にかぶさる
?
?
33S.フック
18S.カゴが輪をつかまえて
28S,32S.輪を
34S.スパイラル
19S.ボビンの上にかぶせる
つかまえる
16S,22S.
10S.通ってる
? 29S.針
?
ボビンがカゴに
25S,31S. 29S.針は
入ってる
すき間 すき間を通る?
11M.糸
つながっ
てんだろ
5M.とじた輪
6M.つながった糸
2012年12月15日
15S.ボビン
の端が
切れてる
13S.あー,
端があるんだよ
12M.端
12M.端が
あんの?
阪井和男・内藤隆・栗山健
演繹推論による具体化
帰納推論による抽象化
アブダクションによる創発
点線はM:モニター
実線はS:課題遂行者
知の創造
103
1. 2つの困難の壁が存在
2. アブダクションに先行する帰納推論
3. 創発はマイクロ・アブダクションの連鎖
2つの壁
知
の
具
現
化
38S,39S.すき間
に押し込む
?
20bM,21M.ボビンは
37S.輪を
どう動くの? 29S.カバーが
つかまえて
上にかぶさる
?
?
33S.フック
18S.カゴが輪
28S,32S.輪を
34S.スパイラル
をつかまえて
つかまえる
4M,7M.
10S.
19S.ボビンの 16S,22S.
ムリ
通ってる
上にかぶせる ボビンが
? 29S.針
?
29S.針は
カゴに 25S,31S.
2M.糸
11M.
入ってる すき間 すき間を通る?
を通す
糸つな
15S.ボビン
1M.糸
がって 12M.
演繹推論による具体化
の端が
の輪
んだろ 端が
切れてる
あんの?
帰納推論による抽象化
2M.ボビン
13S.あー,
の糸
アブダクションによる創発
端があるんだよ
12M.端
点線はM:モニター
5M.とじた輪
実線はS:課題遂行者
6M.つながった糸
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造
104
創発ダイアグラムの結論

創発ダイアグラムから判明したこと
1.
2つの困難の壁が存在


2.
アブダクションに先行する帰納推論

3.
トポロジー的不可能性の壁
メカニズム解明の壁
抽象化に向かう帰納推論によって壁を迂回し,創発的
な発見へ
創発はマイクロ・アブダクションの連鎖

2012年12月15日
創発に至るプロセス=マイクロ・アブダクションの連鎖(
1M→15S,29S→33S)
阪井和男・内藤隆・栗山健
105
創発ダイアグラムの結論

マイクロ・アブダクション
 課題遂行係:1M→10S

ボビンが上から来た糸の輪を「通ってる」と仮定するしか
ありえないとする飛躍的な推論

非論理的なこの推論が正しいことは15Mで「端」の存在を納得し
たうえで「メカニズム解明の壁」を解消して初めて説得力をもつ
 モニター:11M

すぐに反論
∴もしモニターのマイクロ・アブダクション12Mがなけ
れば15Sの創発は導かれなかった可能性あり
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
106
「ミシン問題」
ミシンはなぜ縫えるか
目次
交流制約法の発想と
レシピ
阪井和男・栗山健,「創発的な学びのダイアグラム(
ミシンはなぜ縫えるか)」,情報コミュニケーション学
会 合同ワークショップin京都(第37回次世代大学教
育研究会),京都高度技術研究所,2009年8月4日.
追実験

設問
 「ミシンはなぜ縫えるのか?」

条件
 2009年度の前期に,明治大学法学部の2から4年生
 3つのクラスで計4回の追実験(各90分)を実施

初回
 小グループに分け,模造紙上にアイデアを書きながら議論

次回以降
 トポロジー的不可能問題を明示して議論させる
 ワールドカフェによる小グループ間の情報共有を計る
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
109
追実験の結果と解釈

結果
 時間内に正解にたどりつけたクラスはなかった!

理解に至らなかった理由
 すべてのグループで不可能問題を解けなかった
 ほぼ正解のアイデアを出した学生は一人だけいた
 「ボビンが端になってるんじゃない?」
 メカニズムを聞かれて答えられなかったので無視された

三宅なほみはなぜ成功したか?
 実験時間が長く,半日以上を費やしていた
 実験対象者が大学院博士課程や助手であった
 抽象思考の習熟度が高かった!
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
110
追実験から判明したこと

抽象レベルの不可能問題に到達しない
 詳細なメカニズムの議論に終始してしまう(初回)
トポロジー的な不可能問題を途中から提示するように変更

抽象レベルの不可能問題を解けない
 抽象レベルと具体レベルを分けて考えを突き詰められない
 優れたヒントも無視される
 特に,抽象レベルで突き詰めて考えることが不得手

文系学生のため,抽象思考の威力をほとんど経験していないからか?
思考のベクトルを合わせる必要がある

具体思考から抽象思考へ,抽象思考から具体思考へみんなでスイ
ッチングできる方法とは?

2012年12月15日
思考=「電子スピン」とすると,「磁場」に相当する方法論はあるか?
阪井和男・内藤隆・栗山健
111
「収束思考」による不可能問題への集中

なぜワールドカフェで正解に行き着かないか?
 「ミシン問題」:
高度な創造性が求められるきわめて困難な問題
 もっとも困難な問題に議論を集中できない!

 ワールドカフェの適用限界

「ワールドカフェ」=「発散思考」に分類される方法論!
 難易度の高い問題には思考を集中させる必要あり!
困難を突破するには「収束思考」による集中が重要!
 <不可能問題>への集中をもたらす「収束思考」
 グループ討議における「交流制約」こそ創造性の鍵!

2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
112
交流制約法の発想と
レシピ
目次
創造できない
発散収束思考
思考の発散収束モデル
Aスキーマ
思考の収束
思考の発散
Bスキーマ

思考の発散収束モデルでは,
発散思考収束思考
の順で手法を意識的に切り替える

「成就される活動」のままに「制御すべき行為」を制御させている!
上の図は、印南一路(1997年)から修正して作成。(印南一路、『すぐれた意思決定(判断と選択の心理学)』、中央公論新
社、中公文庫い-99-1、2002年1月. 原著:中央公論新社から刊行、1997 年.)
115
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
思考の発散収束モデル
Aスキーマ
思考の収束
思考の発散
Bスキーマ
発散
収束
知
の
具
現
化
知
の
具
現
化
演繹推論
アブダクション
帰納推論
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造
116
思考の発散収束モデル
Aスキーマ
思考の収束
思考の発散
Bスキーマ
発散
収束
知
の
具
現
化
知
の
具
現
化
演繹推論
アブダクション
帰納推論
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造
117
アブダクションにおける抽象化の機能

アイデアを「遠くへ」飛ばす
図表1-10(細谷功,2011年,p. 44)をもとに修正して作成
かばん
直接似ている
「収納」する(有形物)
抽
象
化
例:財布,
弁当箱,収
納箱,・・・
創造的
例:本棚,
物置,冷
蔵庫,・・・
「収納」する(無形物)
例:PCのフォルダ,
部屋の間取り,
土地の分譲,・・・
「資源を分けて配分する」
さらに「遠く」へ?
例:予算の分け方,
組織の分け方,電
車のダイヤ,・・・
アブダクション
(アナロジーが見えないものの新結合)
細谷功,『アナロジー思考』,東洋経済新報社,pp. 30-45,2011年8月11日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
118
峻別すべき現象と行為

成就される活動
A Schema
思考の収束
Convergence
思考の発散
Divergence

B Schema
制御すべき行為
収束
発散
why
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
how
119
発散収束モデルの問題点

現象と行為の見え方が違う!
 成就される活動

表出した「行動」
○観測可能, ×制御可能
 発散的に広がって創発を起こす
 制御すべき行為

意図した「行動」
×観測可能,○制御可能
 whyを問う行為は「集中」!
両者を混同してはならない!
阪井和男,「組織における戦略行動ゆらぎのカオスモデルによる解釈 -ブレークスルーのスキーマ理論-」,『ゆ
らぎの科学と技術 -フラクチュオマティクス入門-』,第11章,pp. 147-168,東北大学出版会,2004年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
120
創造できない発散収束思考

成就される活動
A
Schema
思考の発散
Divergence

現象と行為の見え方が違う
 成就される活動
 表出した「行動」
思考の収束
Convergence
B
Schema

制御すべき行為
収束
why
○観測可能, ×制御可能
 発散的に広がって創発を起
こす
 制御すべき行為
 意図した「行動」
×観測可能,○制御可能
 whyを問う行為は「集中」!
両者を混同してはならない!
発散
how
阪井和男,「組織における戦略行動ゆらぎのカオスモデ
ルによる解釈 -ブレークスルーのスキーマ理論-」,
『ゆらぎの科学と技術 -フラクチュオマティクス入門-』,
第11章,pp. 147-168,東北大学出版会,2004年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
121
創造できない
発散収束思考
目次
トヨタ生産方式に
おける5つのなぜ
トヨタ生産方式における5つのなぜ

トヨティズム(トヨタ生産方式)の基本の一つ
One of the basic method of Toyotism
 「源流方式」(problem solving at the source)




「なぜを5回問い」,Ask ‘why’ five times
ものの流れの「源流」にさかのぼって問題を発見,解決し,
課題を創出して実現する
そのアプローチ自体を,サプライチェーンの全員に繰り返して教え,
改善していくこと
 創案した人


トヨティズムの父・大野耐一(Taiichi Ohno)
工場現場での度重なる試行錯誤を通して見出した経験的な知恵
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
124
トヨタ生産方式での事例

事件(1980年代中盤) Case (Mid-1980s)
 顧客の苦情
Customer complaint
「カーステレオが不良品だから,車ごと交換しろ!」



“It was a defective car stereo. Should be replaced with a new car!”
純正カーステレオのFM自動受信チューニングが壊れた
Despite the genuine car stereo, the automatic FM tuner is broken
 トヨタの最高車種に搭載されていた
It had been installed in Toyota's best car
日本の大手音響機器サプライヤーが開発・製造
The car stereo was manufactured by a major Japanese supplier
トヨタに納入していた同社製品のなかでも最高機種
It was the best models in the product delivered to Toyota
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
125
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
知の具現化(Realization of Knowledge)
トヨタの純正カーステレオ
2012年12月15日
純正カーステレオの
FM自動受信チュー
ニングが壊れた
大手音響機器
サプライヤー (How)
の最高機種
阪井和男・内藤隆・栗山健
126
トヨタ生産方式での事例

1回目のなぜ
 トヨタがサプライヤーとの合同対策会議を開く
根本原因の究明「なぜ不良が発生したのか」
トヨタ:品質管理,購買要員
 サプライヤー:設計,製造,品質管理,セールス担当者

 サプライヤーの回答

不良原因

たまたまそのカーステレオのプリント基板の一部に異常な高圧
電流が流れて,半導体が飛んでしまったらしい
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
127
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
知の具現化(Realization of Knowledge)
1回目のなぜ
2012年12月15日
純正カーステレオの
FM自動受信チュー
ニングが壊れた
1回目のなぜ(Why1)
プリント基板の一
部に異常な高圧
電流が流れて,
半導体が飛んだ
阪井和男・内藤隆・栗山健
128
知の具現化(Realization of Knowledge)
1回目のなぜ
(How) コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
2012年12月15日
1回目のなぜ(Why1)
プリント基板の一
部に異常な高圧
電流が流れて,
半導体が飛んだ
阪井和男・内藤隆・栗山健
129
知の具現化(Realization of Knowledge)
1回目のなぜ
対処療法だ!
(How) コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
2012年12月15日
プリント基板の一
部に異常な高圧
電流が流れて,
半導体が飛んだ
1回目のなぜ(Why1)
対象への棲み込み
問題を再発させては
ならない!
阪井和男・内藤隆・栗山健
130
知の具現化(Realization of Knowledge)
2回目のなぜ
2012年12月15日
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
設計ミスでも部品
の不良でもない
製造工程か物流
かのいずれか
阪井和男・内藤隆・栗山健
131
2つのwhy’s
知
の
具
現
化
0. why
0. why ・・・ 「評価」に焦点
知
の
具
現
化
 なぜ目標が達成できないのか?
1. why
暗黙の含意:
 努力が足りないからだ!
 能力がないからだ!
(親が子どもを叱るとき・・・)
1. why ・・・ 「存在」に興味
 なぜこれが「存在」するのか?
暗黙の含意:
 まず事実を受け入れましょう!
 根拠をもとに科学的に追究しよう!
阪井和男,「知的能力は移転可能か」,サイエンティフィック・システム研究会,知的能力
の可視化WG,『知的能力の可視化WG成果報告書』,pp. 77-79,2012年5月11日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
132
知の具現化(Realization of Knowledge)
3回目のなぜ
2012年12月15日
1回目のなぜ(Why1)
設計ミスでも部品
の不良でもない
製造工程か物流
かのいずれか
2回目のなぜ(Why2)
3回目のなぜ(Why3)
製造工程のデザ
インにも,工員の
作業にも問題ない
阪井和男・内藤隆・栗山健
133
知の具現化(Realization of Knowledge)
4回目のなぜ
2012年12月15日
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
製造工程のデザ
インにも,工員の
作業にも問題ない
3回目のなぜ(Why3)
4回目のなぜ(Why4)
工場内ではなく,
「輸送中」にあり
そうだ
阪井和男・内藤隆・栗山健
134
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
3回目のなぜ(Why3)
工場内ではなく,「輸
送中」にありそうだ
4回目のなぜ(Why4)
5回目のなぜ(Why5)
下請けが組み立てたプリント基板
を本工場へ輸送する際に発生!
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
135
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
1回目のなぜ(Why1)
2回目のなぜ(Why2)
3回目のなぜ(Why3)
下請けが組み立てた
プリント基板を本工場
へ輸送する際に発生!
4回目のなぜ(Why4)
5回目のなぜ(Why5)
プリント基板を輸送する「通い箱」にハンダや電線
の細かい切れ端が付着.輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板に付着し回路をショート
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
136
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
(Why1)
(Why2)
(Why3)
プリント基板を輸送する
「通い箱」にハンダや電線
の細かい切れ端が付着.
輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板
に付着し回路をショート
(Why4)
(Why5)
アブダクション
パラダイム破壊型ブレークスルー
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
137
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
無駄な部品交換に一円も
費やすことなく問題を根治
将来発生したであろう信用
の失墜も未然に回避
(Why1)
(Why2)
(How) 毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
(Why3)
プリント基板を輸送する
「通い箱」にハンダや電線
の細かい切れ端が付着.
輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板
に付着し回路をショート
(Why4)
(Why5)
アブダクション
パラダイム破壊型ブレークスルー
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
138
トヨタ生産方式における5つのなぜ
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
コンデンサーを大容量で
耐性のあるものに交換
(How)
毎日「通い箱」をきれいに掃除
するだけ
純正カーステレオのFM自動
受信チューニングが壊れた
無駄な部品交換に一円も
費やすことなく問題を根治
将来発生したであろう信
用の失墜も未然に回避
(Why1)
プリント基板の一部に異常な高圧
電流が流れて,半導体が飛んだ
(Why3)
製造工程のデザインにも,工員の
作業にも問題ない
(Why5)
下請けが組み立てたプリント基板
を本工場へ輸送する際に発生!
2012年12月15日
(How)
(Why2)
設計ミスでも部品の不良でもなく,
製造工程か物流かのいずれか
(Why4)
工場内ではなく,
「輸送中」にありそうだ
(アブダクション)
プリント基板を輸送する「通い箱」
にハンダや電線の細かい切れ端
が付着.輸送中の振動で導電物
の切れ端がプリント基板に付着し
回路がショート
拍子抜けする
ほど単純
知の創造
139
トヨタ生産方式での事例

5つのなぜの効果
 同じ問題は二度と発生しなくなった!
根本原因が分かり,問題の根を源流で摘み取ったため
 最初の解決策では,いずれ同じ問題が再発していたはず
 別の機種に別の現れ方をして,当事者を右往左往させたであろう
 当事者双方にウィン・ウィン状況
1.
2.
3.
サプライヤーは無駄な部品交換に一円も費やさずに問題を根治
将来発生したであろう信用の失墜も未然に回避
重要な教訓を学んだ
 深い信頼関係
「トヨタさんのようなお客様には,私どもは自然についていきます。そのほうが
得だからです」(西口,2007年,p. 95)
西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,pp. 89-95,2007年1月30日.
140
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
対処療法から根治療法へ
根治療法
知の具現化(Realization of Knowledge)
対処療法
コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
異常な高圧電
流が流れ,半導
体が飛んだ
「通い箱」の細かい
切れ端が輸送中に
プリント基板に付着
毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
アブダクション
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
141
トヨタ生産方式における5つのなぜ
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
異常な高圧電
流が流れ,半導
体が飛んだ
毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
「5つのなぜ」
対象への棲み込み
重大な事実の発見
ブルートファクツ
「通い箱」の細かい
切れ端が輸送中に
プリント基板に付着
2012年12月15日
問題を再発させては
ならない!
アブダクション
アブダクションが
アフォードされる
阪井和男・内藤隆・栗山健
=ブルートファク
ツに至るための
苦悩のプロセス
拍子抜けす
るほど単純
知の創造
142
知の具現化(Realization of Knowledge)
5回目のなぜ
(Why1)
収
束
思
考
(How)
発
散
思
考
(Why2)
(Why3)
(Why4)
発散思考
(Why5)
アブダクション
パラダイム破壊型ブレークスルー
拍子抜けす
るほど単純
知の創造(Creation of Knowledge)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
143
トヨタ生産方式に
おける5つのなぜ
目次
交流制約法
明治大学サービス創新研究所,サービス創新研究会10/28研究会報告
http://www.service-innovating.jp/archives/624 (2011年11月22日アクセス)
交流制約法
マーケットと組織の界面を構成するうち,組織側のサービス従事
者側からサービス創新する方法
1.
高い志をもって究極の理想を目指す
2.
もっとも困難な問題をえぐりだす

3.
みんなで知恵を振り絞って解決


問題の再定義
ピザ屋の質問
発想の原点・・・


イノベーション・ダイアグラム+トヨタ生産方式の5つのなぜ
発散収束思考  収束発散思考
明治大学サービス創新研究所,サービス創新研究会10/28研究会報告
http://www.service-innovating.jp/archives/624 (2011年11月22日アクセス)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
146
イノベーション・ダイアグラム
対処療法
知
の
具
現
化
P
D
C
A
サ
収 イ
束 ク
思 ル
考
根治療法
発
散
思
考
帰
納
推
論
演
繹
推
論
発散思考
共
鳴
場
アブダクション
共
鳴
場
イノベーション・ダイアグラム
(山口栄一,2006年)
山口栄一,『イノベーション
破壊と共鳴』,NTT出版,p. 70,
2006年3月3日.
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
147
知的能力のプロセスモデル
外にオープン1
近所づきあい**
知
の
具
現 内にオープン
創発的分業*
化
スモールワー
ルド**の実現
抽象化
why?
具体化
how
(演繹)
知の土壌
IT知識
ビジネス知識
外にオープン2
人間系知識
遠距離交際**
美学,哲学,芸術
革新
改善
共
鳴
場
(帰納)
矛盾
具体化
how
1. 技術的矛盾
2. 物理的矛盾
3. 社会的矛盾
(TRIZ,5つの壁®)
(演繹)
まぐれ
共
鳴
場
創発 what!
(アブダクション)
知の創造
*加藤浩,「協調学習環境における創発的分業の分析とデザイン」,ヒューマンインタフェース学会論文誌、Vol.6, No.2, pp. 161-168, 2004.
**西口敏宏,『遠距離交際と近所づきあい(成功する組織ネットワーク戦略)』,NTT出版,2007年1月25日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
148
TRIZの収束発散思考
A)
B)
C)
D)
E)
F)
G)
H)
I)
J)
K)
L)
最小問題を定義する
問題の空間と時間を定義する
技術的矛盾を定義する
物理的矛盾を定義する
究極の理想解の結果を定義する
X構成要素を定義する
リソースを分析する
リソースを修正する
物理的矛盾を解消するために
発明原理を使う
技術的矛盾を解消するために
発明原理を使う
知識ベース/物理的効果を扱う
解決策がない?
定義する
収束
究極の理想解
発散
解決する
中川徹監訳,『TRIZ 実践と効用(1)体系的技術革新』,創造開発イニシアチブ,p. 350,2004年6月30日.
149
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
交流制約法の収束発散思考

創造的対立の解消プロセス
問題の提起問題の再設定究極の理想解問題の解決
1.
収束思考 :質問会議
 アクションラーニング(AL)による問題発見
ALの前半セッションのみを使う
 知恵の車座による問題発見
2.
発散思考 :わいがや
 ワールドカフェ(WC)による問題解決
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
150
交流制約法の収束発散思考
質問会議:
定義する
・アクションラーニングの
前半(Action-Learning)
・知恵の車座の前半
why
収束
究極の理想解
わいがや:
how
ワールドカフェ
World-Cafe
2012年12月15日
発散
解決する
阪井和男・内藤隆・栗山健
151
交流をどう制約するか
定義する
制約1:質問しか許さない
・アクションラーニングの
前半(Action-Learning)
・知恵の車座の前半
why
収束
問題の再定義
制約2:批判をさせない
制約3:強制的に席替え
how
ワールドカフェ
World-Cafe
発散
解決する
キーワード
収束
選定
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
152
収束思考

2つの基本ルール
その1:質問中心
質問に答えるだけで、自分からは語らない(発言しない)
 課題提供者は、質問にパスしてもよい

その2:振り返りの時間をとる

コーチはいつでも介入する権限がある
伊藤洋志(2008年7月17日)氏のアクション・ラーニングの
資料をもとに追加修正。
ワールドカップ公式イエローカード
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
153
収束思考

グランドルールの確認とコミットメント
 チームとしての信頼関係の構築と安全な場であることの共通
認識を構築する


問題の提示(2~3分)
問題の明確化(20分~1時間程度)
 メンバーの課題をグループとして明確化し共有することで、先
入観、固定概念、曖昧な認識などを打破する

問題の再定義(10分程度の休憩中に)
 課題提供者が休憩中に問題を再定義する
伊藤洋志(2008年7月17日)氏のアクション・ラーニングの資料をもとに追加修正。
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
154
発散思考

課題を設定する


話題提供者が再定義した問題を提示
はじめに3~6人のグループをつくる



テーブルには模造紙とペンを置いておく
カフェのようなくつろいだ雰囲気を出す小道具を置いておく
発言者の権利を示す小道具を準備しておくのもよい

発言者用カラーボール等
「ワールド・カフェ」,http://www.humanvalue.co.jp/service/wcafe/ (2011年8月6日アクセス)
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
155
(写真)http://de.wikipedia.org/wiki/World-Cafe より引用 2011年7月12日アクセス
発散思考

第1セッション(発散)
1.
A3用紙に自由にメモを書きながら、15~20分話し合う



2.
自分のことを語るよりも人の話を聞き出すように
セッションの終了時にコーディネーターが手を挙げる
それを見たら話すのをやめて自分も手を挙げる
ホスト(説明役)を決める

ジャンケン以外の方法で決めること
ジャンケンは意思決定ではない(Decision making without Janken, さかはらあつし)
3.
4.
他のメンバーはそれぞれ別のグループへ移動する
小休憩をとる
「ワールド・カフェ」,http://www.humanvalue.co.jp/service/wcafe/ (2011年8月6日アクセス)
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
156
発散思考

第2セッション(発散)
各グループでホストがメモを見ながらそこで出た話を説明
参加者は各々のグループで出た議論を紹介する
後は自由に話し合う
1.
2.
3.
使用済みのA3用紙にどんどん上書きしながら書き加える

コーディネーターが終了を指示する
4.

2012年12月15日
多人数の場合は、手を上げさせるのが有効
「ワールド・カフェ」,http://www.humanvalue.co.jp/service/wcafe/ (2011年8月6日アクセス)
157
阪井和男・内藤隆・栗山健
収束思考(2)

第3セッション(収束)
1.
2.

3~5つ程度のキーワードをグループで選択する
選び終えたグループから順次小休憩
発表
1.
2.
コーディネータが再開のベルを鳴らす
各グループのホストが総括する


3.
マインドマップ等を利用するのが有効
はじめにキーワードを5つ程度列挙する
終了
Freemind
「ワールド・カフェ」,http://www.humanvalue.co.jp/service/wcafe/ (2011年8月6日アクセス)
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
158
安心の確立から問題の発見
(目的と場の共有が十分な場合は省略可)
知
の
具
現
化
【1】問題の発見
強制ブレーン
ストーミング
【0】安心の確立
ワールドカフェ
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
159
問題の発見から問題の再定義
知
の
具
現
化
【2】動機の確立
【1】問題の発見
問題解決への
強い動機
【3】問題の再定義
アクション
ラーニング
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
160
問題の再定義から解決策の発見
知
の
具
現
化
【2】動機の確立
【1】問題の発見
問題解決への
強い動機
【3】問題の再定義
アクション
ラーニング
【4】解決策の発見
ワールドカフェ
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
161
問題の発見から解決策の発見
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
【2】動機の確立
【1】問題の発見
問題解決への
強い動機
【3】問題の再定義
アクション
ラーニング
【4】解決策の発見
ワールドカフェ
アブダクション
拍子抜けす
るほど単純
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
162
創発へのプロセス
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
【2】動機の確立
【1】問題の発見
強制ブレーン
ストーミング
問題解決への
強い動機
【3】問題の再定義
【0】安心の確立
ワールドカフェ
アクション
ラーニング
【4】解決策の発見
ワールドカフェ
アブダクション
拍子抜けす
るほど単純
知の創造
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
163
運営上の工夫
●質問の制約(収束思考)
●発言の制約(発散思考)
批判・批評を禁止する
イエローカード
発言の可視化
ボールを持った人が発言
2012年12月15日
砂時計で発言時間を制約
阪井和男・内藤隆・栗山健
164
運営上の工夫
●休憩の制約(収束思考)
●発表の制約(収束思考)
再開を知らせる
ディナー・ベル
5つに絞るキーワード
Freemind
(写真)http://de.wikipedia.org/wiki/World-Cafe より引用 2011年7月12日アクセス
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
165
交流制約法
目次
「智慧の車座」におけ
る創発プロセス
自分を立てなおす4つのステップ
0. まず建前で語りなおす

とりあえず、組織上の建前で、立場や役割上
の「べき論」で、語りなおしてみる
1. 本音を吐き出す
3. 本気を
2. 本心を 形にする
見出す
1. 本音を
吐き出す
0. まず建前で
語りなおす

自分が抱えている気持をあえて言葉にするこ
とで、自分の中にある葛藤や矛盾を認める
2. 本心を見出す

葛藤や矛盾の背後に隠れていた本心(「本当
は~したい」という気持ち)を自覚する
3. 本気を形にする

本心を自分の立ち位置に据えて、いまの自
分にできること、変えられることを見つけ出し
、最初の出発点を作る
加藤雅則,『自分を立てなおす対話』,日本経済新聞出版社,p. 26,2011年6月1日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
168
自分を立てなおす4つのステップ
0. まず建前で語りなおす
どうして会
問題をほぐす
「智慧の車座」
何でオレ
社は・・・
とりあえず、組織上の建前で、立場や役割上
が・・・
の「べき論」で、語りなおしてみる
どうせ私な
んて・・・
しょせん言っ
1. 本音を吐き出す
ても・・・
3. 本気を
 自分が抱えている気持をあえて言葉にするこ
2. 本心を 形にする
とで、自分の中にある葛藤や矛盾を認める

見出す
○○って、どう
1. 本音を
いうことですか?
吐き出す
0. まず建前で
語りなおす
もう少しだけ、
話してもらって
いいですか?
2. 本心を見出す

実は、私、
葛藤や矛盾の背後に隠れていた本心(「本当
~したかっ
は~したい」という気持ち)を自覚する
たんです
3. 本気を形にする

本心を自分の立ち位置に据えて、いまの自
分にできること、変えられることを見つけ出し
、最初の出発点を作る
加藤雅則,『自分を立てなおす対話』,日本経済新聞出版社,p. 26,2011年6月1日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
169
パラダイム破壊型イノベーション
0. まず建前で
語りなおす
知
の
具
現
化
抽象化
why?
(帰納)
1. 本音
3. 本気を
2. 本心を 形にする
見出す
1. 本音を
吐き出す
イノベーション・ダイアグラム
0. 建前
自分を立てなおす4つのステップ
「智慧の車座」は
「収束発散思考」
2. 本心
具体化
how
(演繹)
創発 what!
(アブダクション)
共鳴場
3. 本気
知の創造
加藤雅則,『自分を立てなおす対話』,日本経済新聞出版社,
p. 26,2011年6月1日.
2012年12月15日
山口栄一,『イノベーション 破壊と共鳴』,NTT出版,p. 70,
2006年3月3日.
阪井和男・内藤隆・栗山健
170
「智慧の車座」7つの対話のステップ
1
セットアップ(2分)
• 司会進行役(MC)は、コミュニケーションのルール、時間配分を再確認する
2
問題提示(3分)
what
• 相談者が抱えている問題を共有する
3
質問タイム(15分)
• 支援メンバーが、順番に問題を明確にするための質問をする。質問は一度
に1つに限定する。2~3ラウンドがメド。
4
直感を伝える(3分)
• 支援メンバーは、問題の本質を直感で伝えてみる
5
how
解決策のブレインストーミング(7分)
• 相談者は輪の外に抜ける。支援メンバーは、無責任かつ自由に、解決策を
議論する
7
異なる視点の提供
リフレクション
テーマの再設定(2分)
• 相談者が、自分のテーマを再設定する
6
問題を物語る
解決策の選択&振り返り(3分)
• 相談者は輪の中に戻り、自ら納得の行く解決策を選択し(もしくは創り出し)、
次回までの行動を約束する
(合計時間の目安:約35分程度)
自己選択(1)
自己の相対化
自己選択(2)
171
加藤雅則,『自分を立てなおす対話』,日本経済新聞出版社,p. 151,2011年6月1日.
課題創発型「交流制約法」の試み

交流制約法の「制約」
 前提:
「課題提起者」の存在
1.

「参加者」の存在
2.


強く解決を願っている動機の強い「課題提起者」
「課題提起者」に共感し課題解決に意欲をもつ「参加者」の存在
課題創発型「交流制約法」
 問題をほぐす

「智慧の車座」の前半  課題提供者を選定
 交流制約法へ
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
172
全体
1. 導入
1.1 説明
全体の流れの説明
1.2 グループ分け
グループ
7
7
7
37
44
80
124
15
15
0
10
134
16
150
2
2. 車座(小グループで問題をほぐす)
2.1 車座の話題提供者の選出
12
テーマに沿った悩みを一人ずつ発表
10
もっとも動機の強い人を選出(自薦・他薦)
2
2.2 車座の実施
25
確認質問(事実や状況を確認)
10
気持ち質問(話題提供者の気持ち)
10
私にはこう聞こえた
5
10
8
2
40
20
18
2
3.2.3 発散思考1
3.2.4 発散思考2
3.2.5 5つのキーワード選定とまとめ指示
4. まとめ(車座とは別グループ)
4.1 収束思考(2):5つのキーワード選定
4.2 まとめ
5. 発表(ワールドカフェ結果の共有)
5.1 まとめの発表
5.2 アンケート記入
累積
5
テーマ:究極の理想と
しての企業研究所と
は?
3. 交流制約法(創造的な解決を図る)
3.1 交流制約法の話題提供者の選出
車座の話題提供者の感想
交流制約法の一名を選出
3.2 交流制約法の実施
3.2.1 収束思考
<休憩>
3.2.2 問題の再定義「究極のテーマ」
分
16
15
1
10
5
5
課題創発型「交流制約法」
発散
問題をほぐす
課題提起者選定
定義する
制約1:質問しか許さない
・アクションラーニング
の前半(Action-Learning)
・知恵の車座の前半
why
収束
問題の再定義
制約2:批判をさせない
制約3:強制的に席替え
how
ワールドカフェ
World-Cafe
発散
解決する
キーワード
収束
選定
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
174
「智慧の車座」におけ
る創発プロセス
目次
「分子進化の中立説」
による創発プロセス
分子進化の中立説

「分子進化の中立説」(木村資生,Nature, 1968)
 木村資生(国立遺伝学研究所名誉教授・1924~1994年)
集団遺伝学の第一人者
 1992年 日本人初のダーウィン・メダル授与(英国王立協会)


自然淘汰万能説へ反論
 自然淘汰万能説

「進化」=「遺伝子の突然変異」+「適者生存」
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
177
分子進化の中立説

自然淘汰万能説への反論
進化は長期もわたり連続して少しずつ改良を重ねたのではない
 「恐竜」と「ネズミ」の例:



「ネズミ」は生存闘争のあとで「恐竜」に入れ替わったわけではない
「ネズミ」は、「恐竜」が姿を消した時から、偶然に実用性が発揮されて
いた形質全体を、遺伝形質に組み込んでいただけ
こうして「ネズミ」は「恐竜」がいなくなったあとのニッチを奪取できた
 進化を生み出す条件:
×環境に適応した強いもの
○もっとも幸運な種が生き残りの条件
 機会が能力より重要な意味をもち、核心になるのは競争ではなく偶然
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
178
自然淘汰万能説

自然淘汰万能説
「進化」=「遺伝子の突然変異」+「適者生存」
突然変異は、厳しい外部環境によってのみ引き起こ
される
新たな種の誕生を促すためには、自然環境は生命種に
対して強い拘束条件をもたなければならない
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
179
分子進化の中立説

分子進化の中立説
多様性や目覚しい進化が起こるのは、拘束が緩和された時

生態学的な拘束が厳しいと、どの種もあるがままの状態をとり続け
る。自然における革新の「上場コスト」が高すて進化できない
新しい種の出現を促すのは、自由であって拘束ではない!

大きな進化が起きるためには、自然淘汰が緩まなければならない。
その時中立的な変異がどんどん出て、新しい環境へ適応していく
∴中立変異は「機会」と「偶然」の積み重ねによって蓄積され、
そして「拘束条件の緩和」によって出現する!
中立変異を受容するには、有害変異の可能性も
受容しなければならない!
•
•
「中立変異」=「演繹」と直交する「アブダクション」?
「有害変異」=「演繹」に逆行する「帰納」?
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
180

自然淘汰万能説
種の進化
商品・サービス・ブ
ランドの進化
(外見上の)
(表現系として
の)突然変異
(明らかに見て分
かる)(アド・オンを
含む)差別化要因
の開発・設定
生存の優位性
獲得
商品・サービス・ブ
ランドの生存条件
が確立
種の繁栄
商品・サービス・ブ
ランドのヒット
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ
(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.

分子進化の中立説
種の進化
商品・サービス・ブラ
ンドの進化
中立的な(良くも
悪くもない)膨大
な突然変異のス
トックの存在
市場原理からは中立
的な(良くも悪くもな
い)ポテンシャリティ
のストックの存在
自然淘汰の拘束
力が緩む
競争原理を軸とした
発想の前提(=拘束
力)が緩む
未使用な中立変
異が突然効力を
発揮
ポテンシャリティの顕
在化
偶然の適応
生活者の世界観を偶
発的に革新
種の繁栄
商品・サービスのヒッ
ト
良いワークショップ

自然淘汰万能説
 「進化」=「遺伝子の突然変異」+「適者生存」

分子進化の中立説
 「進化」=「中立変異の蓄積」+「拘束条件の緩和」
良いワークショップとは・・・
1.
2.
3.
中立変異を受容するには、有害変異の
可能性も受容しなければならない!
「中立変異」をあぶり出す機会を提供する
「中立変異」とおもわれる「何か」から、議論の扉を開く機
会を提供する
「中立変異」を蓄積する機会を提供する
「中立変異」=「演繹」と直交する「アブダクション」?
「有害変異」=「演繹」に逆行する「帰納」?
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
182
「分子進化の中立説」
による創発プロセス
目次
成長する砂山モデル
~自己組織化臨界現象~
努力は報われるか?

努力すれば期待した成果は得られるか?
 Yes?
 No?
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
185
努力は報われるか?

努力すれば期待した成果は得られるか?
 Yes?
悪魔のささやき:
 「成果がないのは、努力が足りないからだ」

因果関係の逆転!
 No?
努力をしても、成果が得られるとは限らない
努力以外にも成果に結びつくものがある
 第3の要因:(例)まぐれ、たまたま、偶然、幸運、・・・etc.
 真摯な努力は、成果を得るチャンスを最大化する!

2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
186
成長する砂山モデル

砂山モデルによる自己組織化臨界現象
努力のあとに結果が現れる例として,わかりやすい
モデル
1.
2.
3.
4.
板の上に砂粒を一粒ずつ落として山を作っていく
山が徐々に高くなる
十分に山が高くなると傾斜がきつくなる
たった一粒の砂で雪崩が発生
マーク・ブキャナン, 『歴史は「べき乗則」で動く(種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学)』, 水谷淳訳,早川書房,2009年8月21日.
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review Letters 59: 381–384.
doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
187
砂山モデル
砂
粒
A
砂山
2012年12月15日

自己組織化臨界現象
1.
2.
砂粒を一粒ずつ落とす
砂山ができる
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized
criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review
Letters 59: 381–384. doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
阪井和男・内藤隆・栗山健
188
砂山モデル
砂
粒
B

自己組織化臨界現象
1.
2.
3.
砂粒を一粒ずつ落とす
砂山ができる
斜面の傾きが大きくなる
地殻変動
砂山
2012年12月15日
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized
criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review
Letters 59: 381–384. doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
阪井和男・内藤隆・栗山健
189
砂山モデル
砂
粒
C
大変動

自己組織化臨界現象
砂粒を一粒ずつ落とす
2. 砂山ができる
3. 斜面の傾きが大きくなる
4. 突如、「なだれ」が起きる
 「なだれ」は砂粒Cのせい!?
1.
砂粒Cが引き金を引いた
 そもそも砂山が不安定
因果関係の錯誤

砂山
2012年12月15日
どの砂粒でも、いずれ「な
だれ」は起こる!
阪井和男・内藤隆・栗山健
190
臨界状態にある「場」
砂
努力・・・ 粒
C
成果・・・

自己組織化臨界現象
 砂山の雪崩=創発
営々と続けてきた「行為」が,新
たな「特定の行為」のために,
ひと塊の「新しい意味」をえて「
創発」を起こした

場の機能:異なる「行為」を連
携させ意味を創出

砂山
2012年12月15日
「場」は臨界状態か?
 場の中で行為の束が自
己組織化する
阪井和男・内藤隆・栗山健
191
自己組織化臨界現象
(SOC : Self Organized Critical Phenomena)

砂山モデル
多数の要素が密接に関連しているシステム
 砂粒を落とすだけで勝手に(自己組織化)臨界状態になる
∴変化の規模や時期は原理的に予測不可能


地震や経済危機等の予測も不可能
べき乗則という秩序
 「なだれ」の大きさ(=転がる砂粒の数)と起きる回数
 大きさが2倍で1/2.14
∴どんな大規模ななだれでも起きる可能性はゼロではない!
マーク・ブキャナン, 『歴史は「べき乗則」で動く(種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学)』, 水谷淳訳,早川書房,2009年8月21日.
Bak, P., Tang, C. and Wiesenfeld, K. (1987). “Self-organized criticality: an explanation of 1/f noise”. Physical Review Letters 59: 381–384.
doi:10.1103/PhysRevLett.59.381.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
192
べき乗則の例

地震のグーテンベルグ・リヒター則


破片


壁にたたきつけた凍ったジャガイモの破片の大きさが2倍の大きさにな
ると頻度が1/6
山火事


2倍の大きさの地震は頻度は1/4
規模が2倍になると頻度は1/2.48倍
戦争の戦死者

世界人口にたいする戦死者の比率が2倍になると頻度は1/2.62倍
変化の規模や時期は原理的に予測不可能
∴どんな大規模ななだれでも起きる可能性はゼロではない!
マーク・ブキャナン, 『歴史は「べき乗則」で動く(種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学)』, 水谷淳訳,早川書房,2009年8月21日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
193
自己組織化の条件と感知

自己組織化の条件
同じ場所に ・・・ 集中力
落とし続ける ・・・ 根気
↓
予測不能な大変動!

努力なくして成果は出ない!
どこでもドアはきまぐれに開く!
縁:「人事を尽くして天命を待つ」
真摯な努力
帰納推論中立変異の砂山拘
束条件の緩和アブダクション
大変動を感知するには?
 どんな地殻変動が起きつつあるかを感じ取ること

これこそドラッカーがなしてきたこと*
「感じる」ことは無理なので、
現実を観察して推測する
*阪井和男,「ドラッカーの社会生態学」,2012年10月12日.
http://www.kisc.meiji.ac.jp/~sakai/presen/la-pfd-social-ecology-sakai-20121012.pdf (2012年12月15日アクセス)
194
阪井和男・内藤隆・栗山健
2012年12月15日
砂山モデル ~自己組織化臨界現象~

努力は報われるか?
 Yes・・・?
悪魔のささやき:「成果がないのは、努力が足りないからだ」
 No・・・?
努力なくして成果は出ない!

真摯な努力は、成果を得るチャンスを最大化する!
「どこでもドア」はきまぐれに開く!

縁
∴「人事を尽くして天命を待つ」
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
195
成長する砂山モデル
~自己組織化臨界現象~
目次
思考を言語化する発話思
考としてのワークショップ
Knowing-Doing Gap
~なぜわかっているのにできないのか?~
「わかる」=「できる」?
わかっているはずなのに、うまくできない!?
 スポーツ(野球)を例に・・・
 宣言型知識

・・・ 「わかる」
Know What 「バットの握りは、右手が上で、左手が下で
ある」
 手続き型知識

・・・ 「できる」
Know How 「バットを振るときは、足を踏み込んで、腰の
回転で振りぬけばよい」
しかも、イメージトレーニングも完璧である!
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
198
「わかる」=「できる」?

スポーツ(野球)を例に・・・
 宣言型知識

・・・ 「わかる」
Know What 「バットの握りは、右手が上で、左手が下で
ある」
 手続き型知識

・・・ 「できる」
Know How 「バットを振るときは、足を踏み込んで、腰の
回転で振りぬけばよい」
しかも、イメージトレーニングも完璧である!
・・・ でも、ボールに当たらない!!! (阪井ゼミ・ゼミ長)
∴「わかる」≠「できる」
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
199
知識表現の形式

従来の知識表現の形式*
 宣言型知識
・・・ 「わかる」
Know What 「~は~と関係がある、~は~である」
静的な関係に関わる知識

 手続き型知識
・・・ 「できる」
Know How 「~するには、~すればよい」
動的な関係、すなわち行為や推論を促すもの


しかし、行為そのものではなく静的な知識とみなせる
 「わかる」≠「できる」!
*安西祐一郎・石崎俊・大津由紀雄・波多野誼余夫・溝口文雄編,『認知科学ハンドブック』,共立出版,p. 256,1992年3月1日.
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエンティフィック・システム研究
会,知的能力の可視化WG,p. 35,2012年5月11日.
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
200
Knowing-Doing Gap

「知識」と「能力」の峻別
 「知識」:静的な知識の宣言型知識と手続き型知識
 「能力」:実際に推論するという行為そのもの
「能力」の不全問題
知行合一でない状態を表す「knowing-doing gap」の問題
=「知識」の問題というより、
能力を使いこなすという行為ができない問題

フェファー,ジェフリー,サットン,ロバート・I,『実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか』,長谷川喜一郎・菅田絢子訳,Harvard
business school press,ランダムハウス講談社,2005年12月23日.
ペッファー,ジェフリー,サットン,ロバート,『変われる会社、変われない会社―知識と行動が矛盾する経営』,長谷川喜一郎・菅田絢子訳,
Harvard business school press,流通科学大学出版,2000年9月.原著:Pfeffer, Jeffrey and Sutton, Robert I., "The Knowing-Doing Gap: How
Smart Companies Turn Knowledge into Action", Harvard Business School Press,2000.1.15.
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエンティフィック・システム研究
会,知的能力の可視化WG,p. 35,2012年5月11日.
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
201
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
バットの
野球 握り方
できる
バットを
振る
できない
ボールに
当たらない
スイングフォームを磨く
目的ではない!
目的はボールに当てること
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
202
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
バットの
野球 握り方
できる
バットを
振る
できない
ボールに
ボールと
当たらない の交流
スイングフォームを磨く
2012年11月7日
目的
明治大学文明とマネジメント研究所
行為
=能力
203
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
できない
バットの
バットを
振る
ボールに
当たらない
英単語・
英作文・
スピーチ
話せない
野球 握り方
英語 文法
2012年11月7日
できる
明治大学文明とマネジメント研究所
204
単独課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
わかる
できる
できない
バットの
バットを
振る
ボールに
ボールと
当たらない の交流
英単語・
英作文・
スピーチ
話せない
野球 握り方
英語 文法
基本フォームを磨く
2012年11月7日
目的
明治大学文明とマネジメント研究所
相手との
交流
行為
=能力
205
複数課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
 簡単な算数を,英語で話しながらやる
「簡単な算数でも,英語で話しながらやるとまったくできない」
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」,
第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
206
複数課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
 簡単な算数を,英語で話しながらやる
「簡単な算数でも,英語で話しながらやるとまったくできない」
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」,
第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)

「わかる」&「できる」
わかる
できる
できない
英語 英語はわかる 英語を話せる 英語を話しな
算数 計算はわかる 計算ができる がら計算する
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
207
複数課題のKnowing-Doing Gap

「わかる」=「できる」?
 簡単な算数を,英語で話しながらやる
「簡単な算数でも,英語で話しながらやるとまったくできない」
原田康也(第47回次世代大学教育研究会でのディスカッションから,岩手大学, 2010年6月19日)
原田康也・前坊香菜子・坪田康・壇辻正剛(「外国語の口頭運用時における数的処理について」,
第53回次世代大学教育研究会,早稲田大学,2010年12月18日)

「わかる」&「できる」
わかる
できる
できない
目的
英語 英語はわかる 英語を話せる 英語を話しな 思考を言語
算数 計算はわかる 計算ができる がら計算する 化する
∴Knowing-Doing Gap:単独課題&複数課題
2012年11月7日
明治大学文明とマネジメント研究所
行為
=能力 208
Knowing-Doing Gapの克服法
KnowingDoing Gap
克服法
英語学習法
1対1で英語を話す
単独課題 相手と交流しながら学ぶ
複数課題 思考を言語化して表現する 英語で話しながら考える*
*発話思考(Thinking Aloud)
考え事を口に出して言う
 英語圏:言語は思考である!
 日本語圏:言語は思考ではない!
沈黙は金なり
2012年10月26日
ワークショップが有効
第77回次世代大学教育研究会「ワークショップ・アバウト・ワークショップ:
ワークショップ型授業の開発と改善のためのメタ・ワークショップ」
http://nextedu.chiegumi.jp/com/SeminarDetail.php?ct=4345206028&cs=47
2012年12月15日(土)14:00~17:00
愛媛大学教育学部本館2階カンファレンスルーム
明治大学 阪井和男
209
思考を言語化する発話思
考としてのワークショップ
Knowing-Doing Gap
~なぜわかっているのにできないのか?~
目次
創造メカニズムとして
の知的記憶
右脳・左脳モデルの影響
戦略会議の形態としてすっかり定着している「ブレインストーミング」
だが、その手法の科学的根拠はすでに否定されている
・・・最新脳科学による本当に創造的な発想法とは?


企業はどのようにしてイノベーションを起こすものなのか?
見事なイノベーション企業として広く賞賛されているグーグル
ロビーにはおもちゃが置かれ、およそオフィスにはふさわしくないカジュア
ルなデザインのビーン・バッグチェアがあり、ゲーム室まである。社員が自
分のアイディアに取り組むことのできる時間も与えられている
∵「新しい考えを思いつくには、
人間は分析的な左脳をオフにして、創造的な右脳をオンにする必要がある」


他の会社も同じようにするべきか?
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
212
右脳・左脳モデルの影響

他の会社も同じようにするべきか?
答えは、ノーだ
 「新しい考えを思いつくには、
人間は分析的な左脳をオフにして、創造的な右脳をオンにする必要があ
る」
クリエイティビティに関する不正確な理論に基づいている
 実際、グーグルの設立者たちは、これらの手法を用いてグーグルそのも
のの基盤となるような考え方を思いついたわけではない

残念だが、グーグルは嘆かわしいほど時代遅れなイノベーショ
ン手法を採用している無数の企業の一つにすぎない
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
213
右脳・左脳モデルの起源

右脳・左脳(右脳・左脳モデル、脳二面性説)
 1981年にロジャー・スペリーが脳を2つの側に分けた研究で
ノーベル生理学・医学賞を受賞
 右脳:創造的、芸術的、直観的
 左脳:分析的、論理的、合理的
 ビジネス世界全体に、あっという間に広がった

新しいアイデアを簡単に思いつく人となかなか思いつけない人がい
る理由を説明してくれるように思われた
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
214
右脳・左脳モデルの応用

ハーマンモデル理論(ホールブレインモデル)
米国ゼネラル・エレクトリック社の能力開発部門責任者ネッド・ハーマン
が「右脳・左脳モデル」と「三位一体型脳モデル」の2つを統合して構築
 人間の脳の施行を司る部分は、大脳新皮質の左右と、辺縁系の左右、
計4つの部位で構成され、それぞれ異なる機能を担うという理論
A象限:論理・理性脳(左脳・大脳新皮質部分)


事実を重視し立証しながら論理的に物事を進める
B象限:堅実・計画脳(左脳・辺縁系部分)

系統立てて実行のための方法や準備を徹底する
C象限:感覚・友好脳(右脳・辺縁系部分)

精神的な面に影響を与え、人との関係から動機づけされる
D象限:冒険・創造脳(右脳・大脳新皮質部分)

新鮮で未知な要素を求め、全体的な視点で物事を直観視する
ハーマン,ネッド,『ハーマンモデル(個人と組織の価値創造力開発)』,高梨智弘訳,東洋経済新報社,2000年10月.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B9%E3%81%8D%E8%84%B3 (2012年11月11日アクセス)
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
215
右脳・左脳モデルの応用

ハーマンモデル理論(ホールブレインモデル)


GE社教育責任者として社員教育にあたり、共通の教育プログラムを受
けた優秀なマネージャーたちに研修効果の差が出るのはなぜか、一人
ひとりのキャリアと仕事に即した研修プログラムを開発するにはどうした
らよいか、と考え続け、1977年から10年ほどの歳月をかけて作り上げた
三位一体型脳モデルとは



米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)主任研究員ポー
ル・マクリーン(Paul MacLean)が提唱
人間の脳は「脳幹」「辺縁系」「大脳新皮質」の三層が順番に発達し、3つの
機能をもつ脳が一体となって働くという理論
思考に関する重要な部分は「大脳新皮質」「辺縁系」とされている
ハーマン,ネッド,『ハーマンモデル(個人と組織の価値創造力開発)』,高梨智弘訳,東洋経済新報社,2000年10月.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%B9%E3%81%8D%E8%84%B3 (2012年11月11日アクセス)
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
216
右脳・左脳モデルの応用

創造的ブレインストーミング
 スペリーのモデルの最も普及した応用例

左脳をオフにし、右脳をオンにして、創造的なアイディアを自由に発
想させようとするミーティング
 ブレストは世界中でほぼ普遍的なビジネス手法

戦略、意思決定、問題解決などを目指す主流のビジネス手法のど
れも重要な段階でブレストが行われている


『競争戦略』(マイケル・ポーター):「代替案をリストアップし・・・」どうや
って思いつくかは何の助言もなく、ブレスト!
戦略的アイディアを思いつくためにブレストに依存する傾向は、多く
のビジネス・イノベーションの手引書に見られる
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
217
知的記憶の起源

1998年
 「認識脳科学と記憶の研究」(ブレンダ・ミルナー,ラリー・スクワイア,エ
リック・カンデル, 『ニューロン』誌)という画期的な論文を発表

2000年
カンデルがノーベル生理学・医学賞を受賞
 脳科学者たちは脳の二面性説を受け入れるのをやめた

「脳の二面性説」=「右脳・左脳モデル」
右脳(創造的・芸術的・直観的)⇔左脳(分析的・論理的・合理的)
 1981年にロジャー・スペリーが脳を2つの側に分けた研究でノーベ
ル生理学・医学賞を受賞
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
218
知的記憶

知的記憶とは



学習と想起があるだけ、それが脳全体で様々な組合せで発生
どのような思考様式でも分析と直感が脳内で協力して働く
地球上で最大の目録システム
1.
2.
3.
人間が生まれた瞬間から、脳はものごとを取り込み、分類し棚に収める
 分類と収納分析
新しい情報が入ってくると、脳はすでに記憶内にしまってある他の情報
にそれが合致しないか調べる
合致するものが見つかると、前からあった記憶は棚から取り出され、新
しいものと組み合わされることで思考が生まれる
 検索と組み合わせ直感
バリー・ゴードン,リサ・バーガー,『知的記憶(より賢くなるための記憶力を強化する)』,未邦訳.
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
219
2つの反応
1.
無意識反応
 棚から情報の欠片がスムーズに、なじみ深いパターンでとり
出される場合(例えば何度もしたことのある単純な計算など)
、人はそれが起こったことにも気づかない
2.
アハ体験
 さまざまな欠片がいくつも組み合わさって新しいパターンが生
じるとき、人はひらめきを感じる
どちらも心的メカニズムの働き方は同じ
 知的記憶は分析と直感を組み合わせて学習と想起を行う
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
220
創造されるとき

最も優れたアイディアは
ブレストの最中にではなく、
シャワーを浴びているときや運転中、
夜眠りに就くときに生まれる
(つまり脳が特定の問題に集中するのではなく、
リラックスしてさまよっているとき)
どのような思考様式でも分析と直感が脳内で協力して働く
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
221
創造メカニズムとしての知的記憶

ブレインストーミング・・・?
×「新しい考えは、分析的な左脳をオフに、創造的な右脳をオンにせよ」
クリエイティビティに関する不正確な理論(右脳・左脳モデル)に基づく


最も優れたアイディアはブレストの最中に出ない
知的記憶・・・!
○分析と直感が脳内で協力して働く
ひらめきの「アハ体験」も「無意識反応」も心的メカニズムは同じ


シャワーを浴びているときや運転中、夜眠りに就くときに生まれる
創造の瞬間
集中解放
 特定の問題に集中するのではなく、リラックスしてさまよっているとき
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
222
創造メカニズムとして
の知的記憶
目次
まとめ
動機

ワールドカフェの優れた点:
1.
短時間で多様な意見を共有できる優れた方法
人の意見から新しいアイデアが創発(他花受粉)される

2.
自己主張の苦手な日本人向き
少人数の意見交換のため、批判される危険が少ない


ワールドカフェは創造技法たりうるか?
 「ミシン問題」*に適用すると正解に行き着かない!

老若男女誰でも知っているが、動作原理を説明できない!
*「ミシンはなぜ縫えるか?」を数名で議論する。三宅なほみ(1985年)を参照のこと。
三宅なほみ,「理解におけるインターラクションとは何か」,佐伯胖編,『理解とは何か』,認知科学選書 4,東京大学出版会,
第3章,1985年11月10日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
225
1. 2つの困難の壁が存在
2. アブダクションに先行する帰納推論
3. 創発はマイクロ・アブダクションの連鎖
2つの壁
知
の
具
現
化
38S,39S.すき間
に押し込む
?
20bM,21M.ボビンは
37S.輪を
どう動くの? 29S.カバーが
つかまえて
上にかぶさる
?
?
33S.フック
18S.カゴが輪
28S,32S.輪を
34S.スパイラル
をつかまえて
つかまえる
4M,7M.
10S.
19S.ボビンの 16S,22S.
ムリ
通ってる
上にかぶせる ボビンが
? 29S.針
?
29S.針は
カゴに 25S,31S.
2M.糸
11M.
入ってる すき間 すき間を通る?
を通す
糸つな
15S.ボビン
1M.糸
がって 12M.
演繹推論による具体化
の端が
の輪
んだろ 端が
切れてる
あんの?
帰納推論による抽象化
2M.ボビン
13S.あー,
の糸
アブダクションによる創発
端があるんだよ
12M.端
点線はM:モニター
5M.とじた輪
実線はS:課題遂行者
6M.つながった糸
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
知の創造
226
「収束思考」による不可能問題への集中

なぜワールドカフェで正解に行き着かないか?
 「ミシン問題」:
高度な創造性が求められるきわめて困難な問題
 もっとも困難な問題に議論を集中できない!

 ワールドカフェの適用限界

「ワールドカフェ」=「発散思考」に分類される方法論!
 難易度の高い問題には思考を集中させる必要あり!
困難を突破するには「収束思考」による集中が重要!
 <不可能問題>への集中をもたらす「収束思考」
 グループ討議における「交流制約」こそ創造性の鍵!

2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
227
創造できない発散収束思考

成就される活動
A
Schema
思考の発散
Divergence

現象と行為の見え方が違う
 成就される活動
 表出した「行動」
思考の収束
Convergence
B
Schema

制御すべき行為
収束
why
○観測可能, ×制御可能
 発散的に広がって創発を起
こす
 制御すべき行為
 意図した「行動」
×観測可能,○制御可能
 whyを問う行為は「集中」!
両者を混同してはならない!
発散
how
阪井和男,「組織における戦略行動ゆらぎのカオスモデ
ルによる解釈 -ブレークスルーのスキーマ理論-」,
『ゆらぎの科学と技術 -フラクチュオマティクス入門-』,
第11章,pp. 147-168,東北大学出版会,2004年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
228
トヨタ生産方式における5つのなぜ
根治療法
対処療法
知
の
具
現
化
コンデンサーを
大容量で耐性の
あるものに交換
異常な高圧電
流が流れ,半導
体が飛んだ
毎日「通い箱」をきれ
いに掃除するだけ
「5つのなぜ」
対象への棲み込み
重大な事実の発見
ブルートファクツ
「通い箱」の細かい
切れ端が輸送中に
プリント基板に付着
2012年12月15日
問題を再発させては
ならない!
アブダクション
アブダクションが
アフォードされる
阪井和男・内藤隆・栗山健
=ブルートファク
ツに至るための
苦悩のプロセス
拍子抜けす
るほど単純
知の創造
229
交流制約法
課題提起者選定
定義する
制約1:質問しか許さない
・アクションラーニングの
前半(Action-Learning)
・知恵の車座の前半
why
収束
問題の再定義
制約2:批判をさせない
制約3:強制的に席替え
how
ワールドカフェ
World-Cafe
発散
解決する
キーワード
収束
選定
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
230
課題創発型「交流制約法」
発散
問題をほぐす
課題提起者選定
定義する
制約1:質問しか許さない
・アクションラーニングの
前半(Action-Learning)
・知恵の車座の前半
why
収束
問題の再定義
制約2:批判をさせない
制約3:強制的に席替え
how
ワールドカフェ
World-Cafe
発散
解決する
キーワード
収束
選定
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
231
良いワークショップ

自然淘汰万能説
 「進化」=「遺伝子の突然変異」+「適者生存」

分子進化の中立説
 「進化」=「中立変異の蓄積」+「拘束条件の緩和」
良いワークショップとは・・・
1.
2.
3.
中立変異を受容するには、有害変異の
可能性も受容しなければならない!
「中立変異」をあぶり出す機会を提供する
「中立変異」とおもわれる「何か」から、議論の扉を開く機
会を提供する
「中立変異」を蓄積する機会を提供する
「中立変異」=「演繹」と直交する「アブダクション」?
「有害変異」=「演繹」に逆行する「帰納」?
中西紹一(編著)・紫牟田伸子・松田朋春・宮脇靖典,『ワークショップ(偶然をデザインする技術)』,宣伝会議,第1章,2006年9月15日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
232
砂山モデル ~自己組織化臨界現象~

努力は報われるか?
 Yes・・・?
悪魔のささやき:「成果がないのは、努力が足りないからだ」
 No・・・?
努力なくして成果は出ない!

真摯な努力は、成果を得るチャンスを最大化する!
「どこでもドア」はきまぐれに開く!

縁
∴「人事を尽くして天命を待つ」
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
233
創造メカニズムとしての知的記憶

ブレインストーミング・・・?
×「新しい考えは、分析的な左脳をオフに、創造的な右脳をオンにせよ」
クリエイティビティに関する不正確な理論(右脳・左脳モデル)に基づく


最も優れたアイディアはブレストの最中に出ない
知的記憶・・・!
○分析と直感が脳内で協力して働く
ひらめきの「アハ体験」も「無意識反応」も心的メカニズムは同じ


シャワーを浴びているときや運転中、夜眠りに就くときに生まれる
創造の瞬間
集中解放
 特定の問題に集中するのではなく、リラックスしてさまよっているとき
「“ひらめき脳”の作りかた(たいしたアイディアが出てこない不毛な『ブレスト』はもうやめよう!)」,pp. 20-23,「人生を豊かにする『脳』
の使い方」,クーリエ・ジャポン,第8巻,第3号,Vol. 088,pp. 18-43,講談社,2012年3月1日.
2012年11月14日
明治大学 阪井和男
234
Knowing-Doing Gapの克服法
KnowingDoing Gap
克服法
英語学習法
1対1で英語を話す
単独課題 相手と交流しながら学ぶ
複数課題 思考を言語化して表現する 英語で話しながら考える*
*発話思考(Thinking Aloud)
考え事を口に出して言う
 英語圏:言語は思考である!
 日本語圏:言語は思考ではない!
沈黙は金なり
2012年10月26日
ワークショップが有効
第77回次世代大学教育研究会「ワークショップ・アバウト・ワークショップ:
ワークショップ型授業の開発と改善のためのメタ・ワークショップ」
http://nextedu.chiegumi.jp/com/SeminarDetail.php?ct=4345206028&cs=47
2012年12月15日(土)14:00~17:00
愛媛大学教育学部本館2階カンファレンスルーム
明治大学 阪井和男
235
まとめ

組織の創造性とは
組織による社会環境への適応過程

1.
既存組織にない新しい秩序(⇐仮説)を作り続ける!
場所の問題
組織のどこから生み出されるか
 組織トップかミドルかボトム
サービスフロント(ボトムの現場担当者)
2.
方法論の問題
仮説生成をどう行うか
 どの創造技法を使うか
交流制約法(質問会議&わいがや)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
236
まとめ
目次
おまけ
NPSによる評価方法
なぜ「究極の質問」か?

従来のアンケート方式
【目的】 客観的な分析のため

アンケート実施者が知りたいことを聞いている



知りたいことを聞いてもダメ!
顧客の答えたいことではない!
「究極の質問」によるアンケート
× 客観分析

みんなはきっとこう考えるだろう
○ 主観推測

私はこう感じてしまったのだ
主観から顧客の行動を予測すること
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
240
サービスの評価
ロイヤルティが高く、友人に
も顧客になるよう薦める
顧客
サービス
劣悪な関係を強いられた
不満客
2012年12月15日
推奨者
中立者
満足はしているが、
競合他社からの働き
かけになびきやすい
批判者
阪井和男・内藤隆・栗山健
241
推奨者<批判者
ロイヤルティが高く、友人に
も顧客になるよう薦める
顧客
サービス
劣悪な関係を強いられた
不満客
2012年12月15日
推奨者
中立者
満足はしているが、
競合他社からの働き
かけになびきやすい
批判者
阪井和男・内藤隆・栗山健
242
推奨者>批判者
ロイヤルティが高く、友人に
も顧客になるよう薦める
顧客
推奨者
サービス
劣悪な関係を強いられた
不満客
中立者
満足はしているが、
競合他社からの働き
かけになびきやすい
批判者
成長エンジン=推奨者-批判者
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
243
成長エンジンは噴射しているか?

顧客ロイヤルティを知る
 究極の質問
この会社を友人や同僚に薦める可能性があるとすると,
10点満点でどのくらいでしょうか?

その理由
その理由でもっとも大きいものを一つだけ教えてください
フレッド・ライクヘルド、『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』、
堀新太郎訳、ランダムハウス講談社、2006年9月27日.
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
244
究極の質問

既存の顧客満足度調査=「役に立たない」
誤った顧客を調査対象
 真意を汲み取れない質問


究極の質問
顧客ロイヤルティの有効な測定方法
 特徴
たった一文の質問とその理由を聞くだけ
 正味の推奨者率(NPS: Net Promoter Score)を計算する
 正なら成長エンジン噴射中(口コミで爆発的に広がる)

2012年12月15日
フレッド・ライクヘルド、『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』、
堀新太郎訳、ランダムハウス講談社、2006年9月27日.
245
阪井和男・内藤隆・栗山健
究極の質問

企業の真の成長
 顧客がその企業との取引をとても気に入り、
友人や同僚に称賛の声を伝えることから生まれる

利益の意味
 「悪しき利益」=顧客を食い物にする
 「良き利益」=顧客の熱心な協力による

究極の質問
「この会社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいあるか」


「良き利益」と「悪しき利益」を識別する
10点法で聞く(0点から10点まで)
2012年12月15日
フレッド・ライクヘルド、『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』、
堀新太郎訳、ランダムハウス講談社、2006年9月27日.
246
阪井和男・内藤隆・栗山健
究極の質問
「良き利益」
=顧客の熱心な
協力による
10, 9
ロイヤルティが高く、友人に
も顧客になるよう薦める
究極の
質問
顧客
「悪しき利益」
=顧客を食い物
にする
推奨者
劣悪な関係を強いられた
不満客
中立者
8, 7
満足はしているが、
競合他社からの働き
かけになびきやすい
批判者
6~0
成長エンジン=推奨者-批判者
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
247
究極の質問

顧客の分類 3分法
 推奨者(10~9点)

ロイヤルティが高く、友人にも顧客になるよう薦める
 中立者(8~7点)

満足はしているが、競合他社からの働きかけになびきやすい
 批判者(6~0点)


劣悪な関係を強いられた不満客
指標=推奨者の正味比率(NPS: Net Promoter Score)
 「推奨者-批判者」の割合

企業の収益、市場シェアと相関性あり
2012年12月15日
フレッド・ライクヘルド、『顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」』、
堀新太郎訳、ランダムハウス講談社、2006年9月27日.
248
阪井和男・内藤隆・栗山健
紙面による方法(水本式*)
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
*水本 好彦(国立天文台,2008年)
249
ケータイによる方法
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
250
設問3 4) この分野への学習意欲が湧いた
(平均値4.3, NPS=29%)
80
分布とNPS
頻度
40
20
0
設問3 9) 学生の積極性が促されていた
40
1
(平均値3.6, NPS=△23%)
△23%
頻度
2
3
4
5
80
60
40
20
0
(平均値3.8, NPS=△14%)
40
△14%
60
0
40
2
3
4
5
△16%
20
0
2
3
4
80
60
40
20
0
4
5
1
頻度
△2%
20
3
4
5
4
5 251
(平均値4.8, NPS=83%)
150
40
2
設問3 3) 講師が熱心だった
(平均値3.9, NPS=△2%)
100
+83%
50
0
0
1
2
5
+47%
設問3 8) 教材・資料などの利用が効果的だった
2012年12月15日
3
(平均値4.4, NPS=47%)
40
1
2
設問3 1) 総合的によい授業だった
頻度
頻度
5
+34%
1
(平均値3.8, NPS=△16%)
60
4
0
設問3 6) この分野の知識が身についた
80
3
20
1
60
2
(平均値4.3, NPS=34%)
80
20
80
5
設問3 7) 内容がシラバスに沿っていた
頻度
頻度
60
4
+31%
1
設問3 5) 自分はこの授業に熱心に取り組んだ
80
3
(平均値4.2, NPS=31%)
20
1
2
設問3 2) 自分にとって重要な授業だった
0
頻度
2
0
0
8
年
度
ソ
フ
ト
パ
ワ
ー
論
頻度
60
+29%
60
3
阪井和男・内藤隆・栗山健
4
5
1
2
3
解釈と利用

分布とNPSの関係
 NPSが正

スケールフリー分布
 NPSが負


中央集中分布
改善方法
 「得点」の昇順で「理由」をソート

「批判者」「中立者」「推奨者」の順に並ぶ
 「批判者」の「理由」を検討し改善すればよい
2012年12月15日
阪井和男・内藤隆・栗山健
252
NPSによる評価方法
目次
「知識」と「能力」
知的能力の4要素と3つの推論
能力
演繹推論
帰納推論
アブダクション
知識
倫理(意志)
情動(態度)
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
255
知的能力の2つの可視化法
学力ダイアグラム(プロセスモデル)
演繹推論
帰納推論
アブダクション
能力
知識
倫理(意志)
情動(態度)

「知識」と「能力」の
関係とは・・・?
阪井和男・鈴木克明・原田康也・小松川浩・戸田博人・多賀万里子,『知的能力の可視化WG成果報告書』,サイエン
ティフィック・システム研究会,知的能力の可視化WG,2012年5月11日.
http://http://www.ssken.gr.jp/MAINSITE/download/wg_report/pf/index.html (2012年7月27日アクセス)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
256
教師主導型:知識の体系
干物*としての知識
具
体
的
抽
象
的
Teacher-directed
Richmond (1993)のFig. 2を参考に大幅に修正加筆して作図。
Barry Richmond, "Systems thinking: critical thinking skills for the 1990s and beyond", System Dynamics Review,
Vol. 9, no. 2 (Summer 1993), John Wiley & Sons. Ltd., pp. 113-133.
http://www.clexchange.org/ftp/documents/whyk12sd/Y_1993-05STCriticalThinking.pdf (2009年8月2日アクセス)
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
257
現代心理学の動向
教師主導型から学習者主導型へ
行動主義
1913年 行動主義宣言(ワトソン)
行動主義的学習観
・客観的な評価基準を設定し,学習者の反応が評価基準
を満たしたかどうかで学習を判定する考え方
・行動をすべて刺激と反応の「条件づけ」で説明
個人能力主義
1960年代 知的活動の情報処理過程のモデル
・学習者個人の能力の向上が志向されている
1960年代後半 認知心理学
学習は理解を通した知識獲得
個人能力主義
・学習者個人の能力の向上が志向されている
認知主義
社会構成主義
教師主導型
1910
1920
1930
学習者主導型
1940
1950
1960
1970
1980年代 ヴィゴツキー(1896-1934)心理学に注目
学習や発達は社会的な関係の中で育まれる
1991年 状況論(レイヴ・ウェンガー)
1999年 拡張された学習論(エンゲストローム)
協調学習,学習環境デザイン,関係論
1980
1990
2000年
佐伯胖(2008年,pp. 2-5)をもとに作図
佐伯胖監修,『学びとコンピュータ ハンドブック』,CIEC編,東京電機大学出版局,2008年8月1日.
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
258
学習者主導型:知識の獲得
なま物*としての知識
具
体
的
Learner-directed
凡例
知識
能力
能力=既知から新しい知識を生み出す力
能力の始点と終点には知識がある!
抽
象
的
∴能力は知識と独立に存在しない
「移転可能な能力」は幻想にしかすぎない・・・?
Richmond (1993)のFig. 2を参考に大幅に修正加筆して作図。
Barry Richmond, "Systems thinking: critical thinking skills for the 1990s and beyond", System Dynamics Review,
Vol. 9, no. 2 (Summer 1993), John Wiley & Sons. Ltd., pp. 113-133.
http://www.clexchange.org/ftp/documents/whyk12sd/Y_1993-05STCriticalThinking.pdf (2009年8月2日アクセス)
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
259
ストーリー化知識の記憶効果
95.2%
93.0%
94.1%
93.7%
93.7%
94.8%
94.8%
94.1%
93.3%
80.0%
80.4%
80%
84.4%
100%
なま物*としての知識
エピソード記憶
「大人の教育学(andragogy)」
ストーリー群
8.1%
8.5%
18.9%
11.5%
9.3%
4.4%
3.7%
3.0%
20%
20.4%
14.4%
ストーリーのない群
13.7%
40%
27.8%
60%
干物*としての知識
意味記憶
「こどもの教育学(pedagogy)」
0%
0
2
4
6
8
10
12
松波晴人(2011年,p. 197)による森敏明・他(1995年)からの引用を修正して加工.
松波晴人,『ビジネスマンのための「行動観察」入門』,講談社現代新書 2125,講談社,2011年10月20日.
森敏明・他,『グラフィック認知心理学』,サイエンス社,1995年. (Bower & Clark, 1969)
*岩崎夏海がドラッカーのマネジメントを論ずるときに用いた比喩(第6回ドラッカー学会大会,旭川ターミナルホテル(旭川市),2011年9月11日)
2012年9月11日
阪井和男・栗山健
260
「知識」と「能力」
目次
おわり
Fly UP