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ウブムエ - ルワンダの平和と和解のために

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ウブムエ - ルワンダの平和と和解のために
「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
「佐々木さんを支援する会」会報
ウブムエ
事務局
〒 235-0041 横 浜 市 磯 子 区 栗 木 1-22-3 / TEL 045-774-9861
洋光台キリスト教会内(蛭川明男牧師)/●世話人会代表 金子 敬
●事務局長 播磨 聡(広島キリスト教会 TEL 082-293-8683)
二 ャ ル ワ ン ダ 語 で 「 ウ ブ ム エ 」( u b u m w e ) と は 、「 一 致 」「 調 和 」「 和 」 を 意 味 す る 。
「 響き合う平和への願い 」
佐々木 和之
さ さ き か ず ゆ き
皆さま、新年をどのようにお迎えになられたでし
ょうか?ルワンダはこの時期、晴れている時と雨が
降っている時の温度差が激しく、風邪などをひきや
すい季節です。私たち夫婦は、年末から年始にか
けて熱発し、結婚生活 25 年目にして初めて二人同
時期に寝込むという経験をしました。今は元気にな
りました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
★ セルジ君との講演旅行・平和学習
ご存知のように、昨年の 11 月の三週間、プロテ
スタント人文社会科学大学(以下、ピアス)の平和
学専攻第一回卒業生で、9 月から大学付属の「持
続可能な平和と開発にむけての研究・行動センタ
ー」(以下、「平和と開発センター」)で働いているセ
<辺野古の海上行動を視察>
ルジ・ムヴニ君と一緒に、活動報告のために帰国し
ました。セルジ君は、日本各地の教会、大学、小学
によって、きっと大切なことを学べるに違いないと確
校などで、大虐殺で父親を殺された憎しみをどのよ
信したからでした。
うにして乗り越えたのかについて、また、やがて実
彼が強い印象を受けた場所の一つが、まず「平
現したいと願っている加害者との和解への思いに
和の礎」でした。「平和の礎」は、沖縄戦で犠牲に
ついて語り、多くの人々に感銘を与えました。
なった全ての人々の名前を刻んだ記念碑です。彼
今回の滞在中、セルジ君と共に沖縄を訪問する
は、日本人、アメリカ人、イギリス人、韓国人、中国
希望が叶えられました。実は、一昨年に沖縄を久し
人といった多くの国籍を持つ人々が、敵と味方の
ぶりに訪ね、南部戦跡や辺野古を訪ねさせていた
区別なく、同じ戦争の犠牲者として記念されている
だく中で、セルジ君をぜひ沖縄に連れて来なけれ
ことに心を揺さぶられたのでした。そして、そこで感
ばと思ったのでした。
じたことを以下のように語っていました。
それは、ジェノサイドを生き延び、ルワンダの平
「ルワンダには数多くのジェノサイドの記念
和と和解のために働いていく彼が沖縄と出会うこと
碑や施設があります。しかし、そこで犠牲者と
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「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
して扱われているのは、ツチの人々だけです。
す。ルワンダの平和もこの沖縄の平和も繋がってい
ツチ以外にもジェノサイドや内戦等で犠牲になった
るからです。みなさん、どうか決してあきらめないで
人々が数多くいるにも関わらず。しかし、平和の礎
ください。勝利は間近に迫っているのですから!」
には、日本人戦没者だけでなく、アメリカ人、イギリ
座り込み参加者の皆さんは、アフリカのルワンダか
ス人、韓国人など、戦争犠牲者全ての名前が刻ま
ら青年が訪ねてきてメッセージを発してくれたことを、
れていることに驚きました。私はそれを見て、敵で
とても喜んでくださいました。
あろうと味方であろうと、戦争の犠牲になった人々
安倍政権のもと、日本は戦争によってお金儲け
を等しく追悼することは、持続可能な平和を築いて
をする国、いえ、戦争をしていなければ経済が成り
いくために必要な礎なのだと感じました。真の和解
立たない国へと変貌を遂げつつあります。この流れ
の実現のためにとても大切なことだと感じたのです。
を食い止めるための闘いの最前線が、辺野古のゲ
私は今回、あらためて、ルワンダの紛争において、
ート前の座り込み、そして海上阻止行動の現場で
様々な形で犠牲になった人々について、また、そ
す。そこは、国家権力が剥き出しの暴力で民衆に
の人々の遺族のことを思いました。今ルワンダでは、
襲い掛かる場所ですが、同時に、私たち人間が尊
政治的な制約から、その人々のことについて自由
厳を持って平和のために非暴力で闘うことが可能
に語ることはできません。しかし、彼らも犠牲者であ
であることを示す希望の現場でもあるのです。その
ったときちんと承認できる日が来なければならない
本当に尊い平和構築の現場に教え子であるセル
のです。私はツチですが、将来そのために声を上
ジ君を連れて再訪できたことに感謝しています。沖
げる者になりたいと思います」。
縄でお世話になった皆さま、有難うございました。
平和の礎のメッセージが、ジェノサイドで家族を
★ お花畑プロジェクト続報
失ったルワンダの青年の心を揺さぶり、あるとても
ピアスのあるブタレから車で北に約 40 分行ったと
大切な決意へと導いたのでした。
ころにあるニャンザで、ジェノサイドの被害者である
もう一つ、セルジ君に大きなインパクトを与えた
女性たちと加害者を家族に持つ女性たちが一緒
のは、辺野古の新基地建設反対の現場でした。辺
に取り組む「お花畑プロジェクト」(切花生産プロジ
野古の米軍キャンプのゲート前で、工事を少し
ェクト)の続報です。1月 11 日に訪ねたところ、昨年
でも遅らせるために座り込んでいる人々の、平
の 10 月下旬に植え付けた球根や挿木が根を付け、
和と非暴力への勇気ある献身の姿に深い感銘を
中には花を咲かせているものもありました!
受けたのでした。彼は、若い機動隊員たちが、お
このプロジェクトは、「平和と開発センター」のセ
年寄りであろうと女性であろうと、手荒に排除してい
ルジ・ムヴニ君が責任を持っています。彼は昨年
く様子に失望を禁じ得ませんでした。しかし、座り
11月、日本での講演会で、ジェノサイドの生存被
込みの参加者お一人お一人の粘り強い抵抗、そし
害者である自分が、被害者側の家族と加害者側の
て、決して手を上げることなく非暴力を貫いておら
れる姿に、美しい自然と命を守るために決して諦め
ずに闘い続ける人々の力強さに圧倒されたのでし
た。
辺野古滞在の最終日、早朝の座り込みを終えた
方々を前に、セルジ君はこう語りかけました。「皆さ
んが平和のために体を張って行動されていること
に心を揺さぶられました。私はここで見せて頂いた
希望を、ルワンダに帰って必ず仲間たちに伝えま
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「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
家族の和解のために働くことになるなど、以前は夢
解への歩みを見守っていきたいと思います。
にも思ったことがなかったと語っていました。その彼
が今、まだ心の中にはお互いへのわだかまりを抱
えている女性たちの間に入り、和解と共生への歩
みを伴走しているのです。彼はまた、「私の母は、
まだ和解の取組みに対して否定的な考えを持って
いますが、いつかこのプロジェクトの女性たちの所
に連れて行きたい」、「赦しと和解が可能だというこ
とを知って欲しい」、との抱負を語っていました。
私はこれからも、そんなセルジ君自身の癒しと和
特集 : 『平和と和解・宣教フォーラム』
発題(講演)記録
(2015 年11 月11-12 日)
昨年、天城山荘でおこなわれた「平和と和解・宣教フォーラム」での発題の要旨をご紹介いたします。ご
発題、ご寄稿いただきました先生方に心より感謝いたします。
佐々木和之さんが取り組む「草の根」「非暴力」による平和と和解の活動について、フォーラムでは、朴
思郁先生に「対立と不信が蔓延する国際情勢におけるその意味」を、濱野道雄先生に「非暴力運動の歴史に
おけるその位置」を、加藤誠先生に「キリスト教会の宣教におけるその意義」を、ご発題いただきました。
発題1
「今日における宣教を考える
朴 思郁
ぱ く
-佐々木さんの働きを中心に」
さ う く
日本バプテスト連盟宣教研究所所長
ハンナ・アーレントは、
「20 世紀は暴力の世
と中国が世界秩序を巡る、覇権争いをしている
紀」と言いましたが、まさにその通りです。20
のです。中国は、いつの間にか、日本を追い越
世紀の国際情勢を振り返ってみると、2 度の世
して世界第 2 位の経済大国になり、東アジアは
界大戦があり、その後、約半世紀の間、冷戦体
もちろん、世界全域にも影響力を増しています。
制が続き、冷戦体制の崩壊から 20 年経った今
一方、アメリカは、これまでの世界秩序を握っ
日を私たちは生きています。
そして今の時代は、
てきた覇者として、中国の勢いを抑えようとし
新しい国際秩序が再編される最中と言えるでし
て、この両強大国間の攻防が繰り広げられてい
ょう。換言すれば、G2、すなわち、アメリカ
るのです。特に、アメリカは国内経済の安定化
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「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
という難題を抱え、これまでの対アジア戦略が
放たれるという意味で、人権、差別、マイノリ
維持できず、アジアに対する費用負担を同盟国
ティ、排外主義などに対する課題です。二つ目
に負わせる、
「戦略的修正」が不可避となりまし
は、
「対話」です。それは、多元化社会における
た。それは日本の国策にも影響を及ぼし、いわ
多様性を認めながら「共生」を重視するという
ゆる「パックス・アメリカーナ(アメリカの軍事
課題です。三つ目は、
「生命」です。それは人間
力による平和)」を支援するように求められてい
のいのちに限らず、すべての「いのちの尊厳」
ま す 。 例 え ば 「 積 極 的 平 和 主 義 (Proactive
とそれらの生命を取り囲む、全世界的に対応し
Contribution to Peace)」を掲げながら主にアメ
なければならない地球温暖化や気候変動など、
リカ軍を後方支援する「集団的自衛権」の行使
環境保全まで網羅する課題です。今日における
を容認する軍事政策。中国を牽制する仕組みと
宣教的課題を考えるときに、これらの「解放」
して、アメリカが主導する巨大経済ブロック
「対話」
「生命」は、きわめて重要な課題である
「TPP(環太平洋戦略的経済連帯協定)」へ参加
と思います。特に「すべての人々が神の前で平
する経済政策などがその事例です。
等である」という「コスモポリタニズム(世界市
今日の国際情勢を理解するために、一つのキ
民主義)」に基づき、宣教的課題を果たしていく
ーワードになるのは、第二次世界大戦後の「ポ
ことが望まれるのです。
スト・コロニアリズム」です。それは「
『脱』植
民主義」とも「
『後』植民主義」とも訳されます。
ルワンダでの「平和と和解」への取り組みの
つまり、欧米強大国によるアジア、アフリカ諸
働きをこの 10 年間誠実に果たして来られた
国に対する植民主義は、表面的には終息したか
佐々木さんの働きの持つ意味は、我らバプテス
のように思われますが、その植民主義を経験し
トにとって、一つの「転機」とも言えると思い
た「植民者側」と「被植民者側」の現実認識と
ます。そもそも宣教論には、大きく分けて二つ
対応策によって、
「ポスト」の中身が変わってい
の主流があります 。一つは、いわゆる福音派の
くという意味です。特に、植民主義を経験した
「伝統的宣教論」です。この宣教論の究極の目
「被植民者側」の「
『脱』植民主義」という自覚、
的とは、いわゆる「福音化」、すなわち異教徒を
認識の変化は、先進資本国と開発途上国との経
キリスト教に「改宗(Christianization)」させる
済格差を巡る「南北問題」など、アジア、アフ
ことです。それに至るまでの宣教の働きは、あ
リカにおける紛争の主な要因にもなるのです。
くまでも「改宗」の前段階にすぎないのです。
反面、
植民主義を通して繁栄を謳歌してきた
「植
もう一つは、欧米による「帝国主義宣教」が犯
民者側」は、政治・社会的な植民地支配は終息
した「伝統的宣教論」の弊害を批判的に考察し
したとしても、経済的・文化的「植民支配」を
浮上した、いわゆるエキュメニカル側の「神の
続けているという意味で、
「
『後』植民主義」あ
宣教(Missio Dei)」という宣教論です。この宣
るいは「ネオ・コロニアリズム(新植民主義)」
教論は、単なる「改宗」ではなく、「人間化
というのです。
「新自由主義」は、ほかならぬ先
(humanization)」を目的とします。(ちなみに
進資本国の欧米諸国が積極的に行っている
「
『後』
福音派の「伝統的宣教論」に立ちながらエキュ
植民主義」を支える理論的根拠なのです。
メニカル側の「神の宣教」にも賛同することを
そのような国際情勢の中で、21 世紀における
標榜する「ローザンヌ運動」の折衷型の宣教論
重要な宗教的課題は、次のように三つにまとめ
もありますが、ここでは対照的な二つの立場を
られると思います。一つ目は、
「解放」です。そ
取り上げています)。私たちバプテストは、定ま
れは、人間誰もがあらゆる「抑圧」からの解き
った教義や信条を「絶対化」しない、というス
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「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
タンスです。ゆえに、私たちの宣教論も、一つ
そういう意味で、佐々木さんの働きの持つ意味
のパターンではないのは言うまでもありません。
は、きわめて重要であると思います。つまり、
実際、宣教研究所に委託された宣教師の研修に
バプテスト連盟にこれまでにない佐々木さんの
携わるものとして感じるのは、連盟の派遣宣教
働きは、伝統的な「宣教師」に拘らない「IMV
師の福音理解、宣教論理解も様々で、宣教師ご
(国際ミッションボランティア)
」というステー
とに異なるということです。要するに、それの
タスだけでなく、この 10 年間、進化し続けて
良し悪しを論じようとするのではなく、教会現
きた働きのビジョンやコンテンツを通して、こ
場の宣教に対する認識には、
「相当な幅」がある
れまでの私たちの福音理解、宣教論を受け継ぎ
ことを念頭に置かなければならないのです。そ
つつも、バプテスト連盟における宣教の新たな
のため、自分とは違う福音理解、宣教論理解が
地平を切り開く役割を果たしていると思います。
あることを互いに認めながら、その間隔を縮め
これから第 5 期(2017-19 年)を迎える佐々木
ていく努力は不可欠です。とは言え、私たちに
さんの働きがますます充実したものとなり、ル
福音を伝えてくれた初期の米国宣教師たちの影
ワンダの現場から発信される情報や刺激によっ
響や米国南部バプテスト宣教団の宣教師派遣の
て、日本における私たちの福音理解、宣教理解
仕方の踏襲などで、
現実的には
「伝統的宣教論」
もさらに深められていくことを期待します。
が私たちの主流な宣教論理解であると思います。
濱野 道雄
発題2 「非暴力抵抗運動の視点より」
は ま の み ち お
西南学院大学神学部教授
非暴力抵抗運動の流れの整理と、佐々木さん
の戦争があげられもします。しかしそれらは、
の活動の位置について話します。
「人が戦う」のではなく、
「神が戦う」ものとし
平和に関するキリスト教倫理には従来4つ
て描かれています。つまり神が正しくさばくの
の考え方があります。1番目は聖戦論です。こ
で、人が自ら戦いのイニシアティブをとること
れは十字軍など、神の命じる聖なる戦争がある
はないのです。また私たちが聖書を読む時に、
という考え方です。その根拠として、旧約聖書
「キリスト中心」で聖書を読むことが大切に思
えます。つまり聖書は色々な状況で書かれたの
で、様々な矛盾するような表現もある。それを
読む時に、イエス・キリストの福音、「殺すな」
「敵を愛せ」と言った方の視線で読むのです。
その時、聖戦論は成立しないでしょう。
2 番目に正義の戦争論です。これは現在もア
メリカをはじめとして根強いです。戦争には正
しい戦争もあるという考え方です。もともと4
世紀のアンブロシウスが教会の内の倫理と、外
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「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
の倫理を分けた時に始まったものです。しかし
にそって行動するとも言われます。①非暴力直
宗教改革までは、それでも戦争は悪であり、正
接行動をサポートする ②脅威を軽減するため
義の戦争論は古典文化から借りたものという位
に独立のイニシアティブを取る(太陽政策等)
置付けでした。それが宗教改革期に教理に組み
③紛争解決の方法を協力して用いる ④紛争と
込まれていきます。バプテストでも第 2 ロンド
不正の責任を認める(戦争責任告白等) ⑤民
ン信仰告白には
「正当でやむを得ない場合には、
主主義、人権尊重、信教の自由を促進する ⑥
合法的に戦ってもさしつかえない」とあります。
公正で持続可能な経済発展を促進する ⑦国際
では何が正しい戦争か。例えば次の8つが挙げ
的なシステムの中に出現しつつある協力体制と
られる事もあります。①正当な理由(中略)…
共に働く ⑧国連および国際的な組織を強める
⑧戦闘員に対する戦闘、です。しかし実際にこ
⑨攻撃用の武器を削減し、武器の売買を制限す
の8つを満たす戦争はありません。例えば、⑧
る
では戦闘員に対する戦闘、とありますが、民間
的な提携を助長する。これらは佐々木さんの活
人の死亡者はイラク戦争では 99%と言われて
動と多くの点で共通していると思います。
います。結局この8つは実際には戦争をする口
⑩草の根の平和づくりグループおよび自発
ヨーダーから思想を発展させた人には、佐々
実に使われるだけです。
木さんの活動にも大きな影響を与えているハワ
3 番目の絶対平和主義は、イエスの姿であり、
ード・ゼアもいます。彼によれば、現在の応報
いくつかの例外はあったものの、基本的にキリ
的司法では国が加害者を罰することで国の秩序
スト教が公認される4世紀までの教会の姿です。
を守ることに主眼があり、被害者自身が置き去
ヨーダーによれば、平和主義にも2種類あると
りにされる司法になっている。そうではなく被
いいます。非暴力をルールと捉えて従うものと、
害者を、さらには加害者をもう一度その人生に
それをイエスに従う、神の国での生き方として
連れ戻し、あるべき関係性を回復する修復的司
捉えるものです。
ヨーダーは後者を主張します。
法への転換をゼアは主張します。これはここま
これにも問題を指摘する人もいます。
「非暴力無
で述べてきた平和の神学に呼応しているでしょ
抵抗」と言う言葉が使われ、被害を受けてもそ
う。
のまま受けとめる態度が勧められているように
神の与える平和・シャロームとはもともと
思えることがあります。その結果、被害者が置
「完全」を意味する言葉です。円です。ところ
き去りにされ、その痛みがケアされない危険性
がその円は一部の力ある者が自分の取り分を越
が指摘されることもあります。またこの絶対平
えて富や力をかき集めて山を作ると、その分し
和主義は、この世界の価値観からは理解されな
わ寄せが起き、谷間に暮らす人たちが生まれま
いものだからと、社会に対する働きかけもなさ
す。この山と谷を、再び平らにする、シャロー
れず、教会に閉じこもってきた歴史が事実とし
ムにすることが聖書の言う正義であり、それは
てあります。
極めて具体的な作業です。このような正義の働
そこで 4 番目に「正義の平和づくり論」が、
きをパウロは「和解」とよび、その和解の働き
1980 年代、アメリカの教会より発生します。バ
はもともと「平和の神」から、キリスト者に委
プテストのスタッセン等が、ヨーダーから神学
託されたものといいます。なぜなら、そのしわ
を発展させていきます。文字通り非暴力抵抗運
寄せが集まる場に立つ十字架に架けられたまま
動と言えるでしょう。戦争に応じたり、被害に
のキリストが今もおり、そのキリストと共に復
甘んじたりするのではなく、新しい関係性を創
活させられることが和解だとパウロは考えるか
造しようという主張です。具体的に10の指標
らです。このシャロームと言う関係を神が新し
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「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
く創造してくださる、その働きが教会の与るべ
中国、韓国、北朝鮮の人々と共に実際に連帯を
きものでしょう。
生み出す、教会としての「然り」のプログラム
連盟そして教会として、佐々木さんの活動の
ももっとあっていいし、すでに連盟にあるもの
位置はどこに見えてくるでしょうか。まず佐々
をさらに具体的、直接的にアジアの平和に関連
木さんの働きと私たちの働きは、関係の新しい
させるのも良いかもしれません。また安保法批
創造という神の業に与る、同じ働きだというこ
判において、被害者を置き去りにしないために、
とです。
沖縄、在日の人々との連帯は、現行憲法を守れ
次に、佐々木さんのルワンダでの尊い実践を、
というラインより以上に、教会にとっては重要
私たちの働きの一つのモデルとさせてもらえる
に思えます。佐々木さんがルワンダで、加害者
でしょう。例えば安保関連法を批判すると言う
と被害者の間で行っていることを、私たちもヤ
働きを考えてみましょう。安保関連法には明確
マトンチュとウチナンチュの間で、在日の人々、
に「否」なのですが、それであれば、同時に積
中国や韓国、北朝鮮、そしてアジアの人々との
極的に平和をつくりだすため、アジアの人々と、
間で行っていきたいと願うのです。
●
事務局からのお知らせ
佐々木和之さんは、今年も 6 月と 11 月に帰国し、報告
集会をおこなう予定です。
報告会等を希望される教会、
地方連合、学校関係の方は、「支援会」事務局長の播磨(携
帯 090-6150-0268)までご相談ください。
佐々木和之さんは、ニヤンザで女性グループによる協働プロジェクトを、ルワンダの若い人々と共に
立ち上げています。このプロジェクト推進のために、年間 100 万円のプロジェクト資金を 3 年間必要と
します。現在の支援会の資金では足りません。支援会としては、このプロジェクトを佐々木さんに進め
ていただくために、みなさまにご協力を呼びかけています。支援会への参加、寄付をお願いします。
●事務作業を簡素化するため、すべての支援者に一律に「振替用紙」を同封させていただいています。
請求ではありませんのでご了承ください。必要な方はご利用ください。
●郵便振替口座
00250-0-112907
佐々木さんを支援する会●
●佐々木さんを支援する会HP(ホームページ)
佐々木さんの活動報告、写真館、等。HPから入会手続きも可能
http://rwanda-wakai.net/
●世話人会
金子
です。 佐々木和之さん、恵さんのブログも適時更新しています。
敬(古賀教会牧師)、中條智子(長住教会牧師)、蛭川明男(洋光台教会牧師)、
村上千代(日本バプテスト女性連合幹事)、播磨
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聡(広島教会牧師)
「佐々木さんを支援する会」会報
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
佐々木さんを支援する会主催
ルワンダ 第2回 和解の現場・訪問ツアーのご案内
「佐々木さんを支援する会」の皆様。
いつもルワンダの和解の働きのために、ご支援をいただきありがとうございます。
支援する会では、2013 年に第1回ルワンダ訪問ツアーを行い、虐殺の現場を訪ね、その悲劇を心に刻
みつつ、佐々木さんの活動現場を訪問し、和解と癒しのプロセスを見てまいりました。
2回目となる今回は、前回の訪問地の今を知るとともに、PIASS の学生や教職員の方たちとの交流など
も行い、和解の働きを担う人たちの育つ場を訪ねる機会としたいと願っています。
またとない企画です。ぜひ、ご参加ください。
ツアー日時
2016年 9月5日(月)~14日(水)
飛行機便の都合により、日程が前後する場合があります。あらかじめご了解ください。
訪問地
参加費用
ルワンダ共和国
30万円 (学生には支援する会より5万円の補助を行います。)
※フライト料金や US ドルのレートによって、増減することがあります。
募集人数
12名
●前日9月4日(日)に成田のホテルに集合し、事前オリエンテーションを行います。
●現地での主な訪問先:キガリ虐殺資料館・記念施設、キレヘ郡での和解プログラム(償いの家づくり、
養豚協働組合、クラフト製作グループ)、ピース・インターナショナル・スクール、PIASS(学生たち、
教職員との交流)、ニャンザ女性協働プロジェクト
等
●参加費用30万円には、成田宿泊費、成田~キガリ往復航空券、現地移動費、滞在費、食費、 ガイ
ド費用、ビザ取得費用などが含まれます。ご自宅から成田までと成田からご自宅までの 交通費や、事
前に必要となる予防接種代金は含まれません。
●参加者の決定は、申込み順、動機、健康面などを考慮し、事務局で決定させていただきます。参加決
定のお知らせとあわせて旅行準備の詳細を、後日お届けいたします。
●申込み締め切り
2016年 5月14日(土)13:00
申込先にご連絡下さい。所定の申込み用紙をお送りします。郵便、FAX にてお申し込みください。
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「佐々木さんを支援する会」会報
申込み先
洋光台キリスト教会
NO.34 / 2016.2.12(季刊)
佐々木さんを支援する会事務局
〒235-0041 横浜市磯子区栗木 1-22-3 TEL 045(774)9861/FAX
- 9 -
045(774)9859
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