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第 36 講 工業立地

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第 36 講 工業立地
基礎からわかる地理 第 36 講 工業立地 工業立地の原則 ・ 工業の立地場所は生産の効率や労働者の環境や生活に密接に関連する。
例:地形や気候、用水等の自然条件
交通網や通信、情報などの社会条件
・ 生産費(コスト) → 輸送費、労働費、地代、用水費、電力費
※ ウェーバーの工業立地論 → ドイツの社会学・経済学者アルフレッド・ウェー
バーによる工業立地に関する理論
企業は、生産コストを最小にする地点に工場を建
設する。
原料供給値と市場を考慮、輸送費と労働費が重要
な因子となる。
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第 36 講 工業立地 工業立地の種類 ・原料指向型 → 原料産地付近に立地する工業。
原料の方が製品に比べて重量。原料の移動を嫌う。
例:昔の鉄鋼業(輸送技術が乏しい)
セメント工業(原料が石灰岩) ・市場指向型 → 普遍原料(至る所で手に入る。水等)を利用。
製品の方が重量。大消費地に立地する。
例:ビールなどの飲料品を製造する工業
いち早く情報(流行の動向)が必要な出版やアパレルも大都市周
辺に立地。
・労働指向型 → 生産費に占める労働費が大きい工業にみられる。
安く大量の労働力を必要とするため、途上国や地方に立地。
例:繊維工業 家電等の組み立て工業
先端技術産業では、高い技術・知識をもった人材が多く必要なた
め主に研究部門で大都市や大学近くに立地する。
・臨海指向型 → 海外からの安い原材料を利用する工業にみられる。
※原料立地と同様、製品の重量が重い。
例:現在の鉄鋼業や石油化学工業
※古くからの工業国は、鉄鋼業立地が原料立地から臨海立地に移動した例が多い。こ
れは、かつて自国の鉄鉱石や石炭を利用して工業を進めてきたが,自国原料の枯渇
や海外からの安い原料が流入してきたことから臨海へと移動した。
例:イギリス バーミンガム → カーディフ
フランス ロレーヌ → ダンケルクやフォス
(メス、ナンシー)
・ 動力指向型 → 製品にする際に大量の燃料や電力が必要な工業。
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基礎からわかる地理 例:アルミナの電気分解に大量の電力が必要な
アルミニウム工業など
・ 用水指向型 → 製品にする際に大量の良質水が必要な工業。
例:製紙、醸造など
※半導体の製造にも、洗浄の過程等に大量の良質水が必要なため、組み立て部門等は
地方に立地することが多い。同時に洗浄時に薬品を含んだ大量の排水が生まれ汚染
(ハイテク汚染)を起こす例もある。
・臨空港指向型 → 半導体集積回路等の先端技術産業にみられる。製品が小型で高
価(高付加価値)のため、生産費に占める輸送コストが小さい。
よって他のコストを抑えるため,地方の空港や高速道路に立地さ
せることが可能。
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第 36 講 工業立地 【ワーク】
以下の世界地図に、鉄鋼業の立地移動した代表例の場所を示しましょう。
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基礎からわかる地理 次の問に答えよ。
(1)ドイツの経済学者で工業立地に関する理論を打ち出したのは誰か。
(2)全問の(1)によると工業は何を最小とする地点に立地するか。
(3)セメント工業は、どのような地域に立地するか。
(4)市場指向型立地の代表的工業種をこたえよ。
(5)繊維工業や、家電の組み立て工業はどのような地域に立地するか。
(6)全問(5)の背景を答えよ。
(7)イギリスでは鉄鋼業の立地が大きく変化した。その変化の様子を答えよ。
(8)全問(7)と同様にフランスでも鉄鋼業の立地が変化した。その様子を答えよ。
(9)アルミニウム工業はどのような地域に立地しやすいか答えよ。
(10)用水指向型工業の代表的な工業種を答えよ。
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第 36 講 工業立地 次の各文には誤りがある。誤りを訂正し、正しい文に書き換えよ。
(1)工業の立地には、地価や労働力の得やすさも影響するが地形等は考慮されない。
(2)原料重量が製品重量と比較し、重い場合、市場から近い地域に立地する。
(3)研究開発部門は、出来るだけコストを抑えるため地方の過疎地域に立地する。
(4)石油化学工業は、大量の資源が必要となる為、油田のある地域にのみ見られる。
(5)半導体製造では、環境に優しい工業であり、汚染等の公害は少ない。
次の問に答えよ。
(1)日本の家電や繊維産業は、中国や東南アジアなどに製造拠点を移転した企業が多い。そ
の背景を 60 字以内で述べよ。
(2)半導体などの先端産業の製造拠点は、空港の近くにも見られる。こうした背景を 30 字
以内で述べよ。
電気機械工場の立地条件を説明したものとして誤っているものを,次の①
④のうちから
一つ選べ。(2001 年センター本試)
① 大都市地域に比べて安価な労働力が存在すること。
② 道路や空港の整備によって交通条件が改善されたこと。
③ 原料となる地下資源があること。
④ 大都市地域に比べて工業用地の地価が安いこと。
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