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「電池交換だけでは正常復帰しない?」 平成21年式のスズキ・ワゴンR(車両型 式CBA–MH23S、エンジン型式K6A)でコ ンビネーション・メータ内にキーレス・ プッシュ・スタート・キー電池消耗警告灯 が点灯し、電池交換をしても消灯しないと いうトラブル相談を受けた。 症状を詳しく確認すると、ドアのロック、 アン・ロック及びエンジン・スタートは正 常に作動するが、電池交換後も電池消耗警告灯が消灯しないとのことだった。 この車両はキーレス・プッシュ・スタート・キーが採用されており、室内にキーがあれ ばキー・シリンダにキーを差し込まなくとも、エンジン・スイッチを押すとエンジンが始 動出来るようになっている。また、キーの電池消耗が著しい場合、メータ内に電池消耗警 告灯を点灯するようになっている。 キーの電池を交換してもメータ内に電池消耗警告灯が点灯することから、何らかのDTC (ダイアグノーシス・トラブル・コード)を検出している可能性があるので、スキャンツー ル(外部診断機)で確認してもらうとB1134「携帯リモコン電池消耗」を表示した。 DTCを検出したことにより電池消耗警告灯が点灯したままになっている可能性もあるの で、DTCを消去してもらったが消去できないとのことだった。 FAINESでB1134「携帯リモコン電池消耗」及び「DTCの消去」の内容を確認すると、こ のコードは修理を完了させてもBCM&J/B(ボデーコンピュータ)が正常であると判定す るまで、DTCを消去することができないと記載があった。また、その判定方法を正常判定 操作と言う。 電池消耗警告灯が消灯しないのはBCM&J/Bが正常判定を認識していないことによりDTC が消去出来ないと考え、以下の手順を行ってもらった。 <電池消耗警告灯消去の方法> 1 、登録済み携帯リモコンを全て用意する。 2 、電池が消耗している登録済み携帯リモコンを判断する。 3 、電池を交換する。 4 、正常判定操作を行う。 44 NEWS 2014 12月号 【正常判定操作の方法】 以下何れかを行う。 ・全ての登録済み携帯リモコンで、キーレス・エントリにより 2 回以上ドアをロッ ク、アンロックさせる。 ・全ての登録済み携帯リモコンが車内にある状態かつイグニッションONで、2 回以 上ドアを開閉させる。 ・全ての登録済み携帯リモコンがドア・アンテナ検知範囲にある状態で、リクエス トSW(リクエストSWの場所は参考資料を参照)により 2 回以上ドアをロック、 アンロックさせる。 5 、ダイアグノーシスコードをスキャンツール(外部診断機)にて消去する。 以上の手順を工場側に伝えると後日連絡があり、電池消耗警告灯は消灯し、DTCも消去 できたと報告が入った。 今回の内容は電池交換を行っても電池消耗警告灯が点灯し、DTCが消去できない症状だ たので、一見トラブルと思ってしまうが実際は電池交換を行った後に正常判定操作を行え ば電池消耗警告灯消灯及びDTC消去が出来るものであった。このようにトラブルと勘違い して時間を費やさないためにも、FAINESなど活用してから作業を行ってはどうだろうか。 〈参考資料〉 運転席ドア・リクエストSW 電池消耗警告灯 NEWS 2014 12月号 45 DTC B1134 診断内容/推定不具合箇所 診断内容 推定不具合箇所 B1134:携帯リモコン電池消耗 携帯リモコンからリモコン電池消耗信号を受信した。 ・携帯リモコン電池 ・携帯リモコン DTC再現手順 参考:再現手順を行う前に必ず登録済み携帯リモコンを全て用意すること。 1 )携帯リモコン電池消耗警報が作動モードであることを確認する。 2 )携帯リモコンをエンジン始動機能作動範囲に設置して 2 回以上ドアを開閉する。 3 )手順 2 )を 6 回繰り返す。 4 )全ての登録済み携帯リモコンで手順 2 )、 3 )を行う。 故障診断 Step Action YES NO 1 電池消耗携帯リモコンの点検 1 )全ての登録済み携帯リモコンを用意する。 2 )携帯リモコンを 1 個車内に入れてイグニッションをON にする。 3 )携帯リモコン電池消耗警告灯が約15秒間点灯するか確認 する。 4 )全ての携帯リモコンで手順 2 )、3 )を実施する。 携帯リモコン電池消耗警告灯が約15秒間点灯したか? Step 2 へ。 2 携帯リモコンの電池点検 1 )対象となる携帯リモコンの電池を新品に交換する。 2 )DTCを消去する。 3) “DTC再現手順”を行い、DTCを点検する。 DTC B1134を検出するか? 携帯リモコンを交換 診断完了。 して再度点検する。 (電池の不良(消耗)) 診断完了。 (過去にリモコン電 池消耗電号を検出し た(DTC未消去)) DTCの消去 概要 ・BCM&J/Bは、一部のDTCが成立した場合、修理を完了させてもBCM&J/Bが正常であると判定する までDTCを消去することができない。このため修理完了後、BCM&J/Bに正常であると判定させるた めの操作が必要である。 修理完了 作業の流れ 車両の状態 BCM&J/Bの判定状態 DTC DTCの消去 異常発生中 異常発生中 現在故障 不可 正常判定操作 正常 異常発生中 現在故障 不可 正常 正常 過去故障 可 〈正常判定操作の方法〉 DTC No B1134 46 DTC名称 携帯リモコン電池消耗 NEWS 2014 12月号 正常判定操作 以下何れかを行う ・全ての登録済み携帯リモコンで、キーレスエントリにより 2 回以上ドアをロック↕アンロックさせる ・全ての登録済み携帯リモコンが車内にある状態かつイグニッ ションONで、 2 回以上ドアを開閉させる ・全ての登録済み携帯リモコンがドアアンテナ検知範囲にあ る状態で、リクエストSWにより 2 回以上ドアをロック↕ アンロックさせる