...

最近のマリンレジャーの 安全性を考える

by user

on
Category: Documents
21

views

Report

Comments

Transcript

最近のマリンレジャーの 安全性を考える
最近のマリンレジャーの
安全性を考える
①海の安全は自然の脅威を熟知することから始まる。
②将来が楽しみなエコ・ボートの普及と構造的メリット
マリンレジャーのリスク管理は海況変
化に敏感になることが最も重要だ!
寒くもなく熱くもない、そよ風が肌に
心地よい絶好のアウトドアシーズンが
やってきた。最近徐々に上昇曲線を描い
ているのはマリンレジャーだ。理由はい
くつか考えられるが、明確なことは日本
は海に囲まれた島国であるということ。
もちろん渓流や川で遊ぶことも面白いと
思うが、日本人には圧倒的に海好きの人
が多い。
一方、昨今の海釣りブームで海難事故
が増えている。釣り人はあまりにも海と
いう自然の力を甘く見ているようだ。
昨年の台風シーズンに熱海の大堤防で
釣りをしていた人が高波にさらわれると
いう事故があった。詳しい話は新聞報道
に譲るが、台風が接近しているにもかか
わらず、海に行って釣り竿を振るという
のは、危険を伴う行為であることをもっ
50
と認識してほしい。
「せっかくの休暇なんだから家でジッ
としていられない」という気持ちは理解
できるが、生命の危険までおかして荒れ
狂った台風の中、海に釣りに行くような
ことはまったくバカげたことだ。
また、天気予報では「強風波浪警報」が
出ているにもかかわらず「雲ひとつない
快晴の天気なのだから」という安易な考
えでプレジャーボートを出したために遭
難してしまった、という海難事故は後を
断たない。確かに天気は晴れかもしれな
いが風が強くて危険な状態の時に簡単に
プレジャーボートをマリーナから出すこ
とができるということは、マリーナ管理
者側にも問題がある。当然、熟練した海
の男は「強風時には舟は出さない」とい
う。海の危険度、海況の変化による予想
外の天候急変を経験していないからそう
した海難事故が相変わらず減らないの
だ。
そういえば、小型船舶操縦士免許を取
得する時に聞いた話(もう10年位前)だ
が、
「4級だろうが、1級だろうが、基本
的に落とすための試験ではないから実技
では故意に危険な操作をする性格の持ち
主でない限りほとんどパスできる」のだ
そうだ。筆記試験が重視されるため暗記
モノに強い人は間違いなく合格する。実
技試験をあまりにも軽視するためか、自
然の力に対する考え方が甘過ぎる免許取
得者が多い、ようだ。
天候により風やウネリ、潮の流れが急
変した時に対処する冷静沈着な判断能力
の欠如、経験不足が重なり海難事故が起
きる。だから、実技試験の時に「危険な
行為(操縦)をすればボートはこんなに簡
単に転覆してしまうものだということを
もっと実地に教えるべきだと思う。リス
ク管理に対する真摯な態度から教育して
いく必要がある。
これは自動車の場合でも同様で、日本
の自動車教習所は規則と操作方法の習得
が中心であり、実際の操縦ミスによるク
ルマの挙動変化や衝突の衝撃は経験させ
ない。もちろん、事故は起きない方が幸
せだが、クルマという機械を人間が操作
し、万が一操縦ミスをした場合、クルマ
が衝突するとどれだけの衝撃を受けるも
のなのか、ということを知っておくべき
である。相手がクルマだった場合の衝
撃、人間なら間違いなく死亡事故につな
がるといった内容の教習項目を設けても
らいたい。危険なことは実地に経験させ
て初めてその恐ろしさを知ることができ
る。だから、実際に時速5 km で走り、あ
る程度の硬さの外壁にクルマをぶつけさ
せてその衝撃の強さと壊れ具合を教習生
に体験させればいい。ビデオやパソコン
上での仮想体験では意味がない。人間の
体に覚え込ませることが大切だと私は考
今年の 2 月 1 日に新発売されたスズキの「アグレッサー 21」
。船体長は 21 フィートだから約 6.55m。
外洋での釣行も楽しめる本格的フィッシングボートである。搭載エンジンは「スズキDF140」と呼
ばれる4ストローク船外機だ。メーカー希望小売価格は330万円。
51
ここは佐島マリーナのブレジャーボート置き場。ここ数年で係留するプレジャー
ボートの数は激減傾向にある。ただ手放す時の中古艇は安く叩かれてしまうため
損を知りつつ泣く泣く売り払うオーナーも少なくないとか。
える。ただ、大変な費用がかかるため、民
間の教習所の授業料は高くなるかも知れ
ないが。
話しをマリンレジャーに戻すが、海の
レジャーの根底には「自然を楽しむ心」
が重要だと思う。自然には人間の力では
到底かなわない不思議なパワーと脅威が
存在する。天気予報の事前チェックは当
然だし、地域による危険な風向きの違い
は、季節、昼夜で異なったりするから不
思議であり、脅威である。地域によって
は潮の干満による水位の落差が季節や潮
回りによって異なることが当たり前と漁
師は言う。海の自然に永年親しんできた
からこそわかることが多い。例えば、こ
んな言い伝えがある。「上げ潮から吹き
始めた風は満潮時間まで吹き止まない」
とか。あるいは「下げ潮から降り始めた
雨は干潮時間にならないと降り止まな
い」といった海の気象変化は潮の動きと
絡めてされている。漁師にとって海況の
変化をいち早く知ることは大切なリスク
52
管理である。海の自然の脅威を知ってい
るから素早い対応が出来るのである。
海の気象状況は気象庁より地元の漁師
に聞いた方が正確だ。
仕事がら船宿のホームページをチェッ
クするが、「ここ数日の天気は晴れれば
強風が吹いて海に出れないし、風がなく
なれば雨が降ってきて客が来てくれな
い。船宿潰すにゃ、刀はいらねぇ」とか
書いてあった。確かに、今年の3月から
4月下旬までそんな天気が続き、沖に出
られない日が何日も続いた。危険な強風
の日に釣船を沖に出して万が一遭難でも
したら完全に営業停止となる。営業停止
で済んでいるうちはまだいい。死亡者を
出すような海難事故になったら笑い事で
は済まないのだ。
プレジャーボートの将来は環境に優
しいエコ・ボートの普及にかかる。
昨年度から国土交通省のマリンレ
ジャーに対する取り組み姿勢が大きく変
わってきた。
昨年の11月頃から話題のFRP船
「エコ・ボート」は注目に値する。
「エコ・
ボート」とは長く使い続けることができ
るボート、つまり環境に優しくリユース
性の高いFRPボートの研究が進められ
ているというのだ。題して「FRP廃船
高度リサイクルシステム構築プロジェク
ト」である。通称は「エコ・ボート」と
呼ぶらしいのだが、すでに実験艇が完成
し今年春の国際ボートショーに初お披露
目となった。
エコ・ボートは軽い発泡構造の艇体、
取り替え可能なデッキ、キャビン、ブ
リッジを持つなど、従来にない特徴がい
くつもある。
こうしたエコ・ボートの誕生の根底に
は違法係留のプレジャーボートの廃棄処
分問題がある。河川に違法係留している
オーナーが永年乗って来たボートを経費
がかさむため手放したいのだが、この不
景気のために二足三文でも売れない。年
式は古いしエンジンも故障しがちという
状態では誰も買ってくれない。売れるよ
うに修理するには余計な費用が掛かる。
ならば、いっそ川底に沈めてしまえ、と
船底に穴を開けて沈めたはいいが、最近
のプレジャーボートは浮沈構造になって
いるので、なかなか完全には沈まない。
かといって、沖まで行って沈めるには時
間もカネもかかる。違法行為を手助けし
てくれるマリン関係者はいるはずもな
い。とくれば、悪いと知りつつ河川の係
留場所で沈めてしまう。秋の台風シーズ
ンにはそうした沈船が川の中央付近で立
ち往生。これを撤去しないと他の船舶が
航行できない・・・。そうなると地方自
東伊豆の網代港にほど近い和田木港。ここはプレジャーボートではなく釣り用の
貸しボートが多く、ボート釣りファンには人気がある。理由は沖合いのイケス回
りに係留できるため、面倒なアンカーの上げ下ろしが不要という点もその一つ。
53
およそ 2 年前に完成した伊東マリンタウンのヨットハーバー。係留されている船
の大半はプレジャーボート。人気の高いリゾート地だけに年間保管料も高額だ。
治体や役所がカネを使って撤去作業をす
るハメになる。
不届きものはいつの時代にもいるもの
で、マイカーの不法投棄と同じである。
所有者が特定できれば撤去作業の費用の
負担分を請求できるのだろうが、まった
く誰のものか分からなければ県や市が税
金を使ってこうした不法投棄のクルマや
船を処分するしか手はない。それでも最
近は小型船舶登録法(今年4月から施行)
という法律ができて、モーターボートや
水上バイクなど5トン未満の船舶にも自
動車同様に登録を義務付け、所有者を明
確にすることになった。
とはいえ、この法律によってプレ
ジャーボートの増加に対応し、懸案の放
置艇問題の解消と保管場所整備に役立て
ようということであろう。
しかし、ボートの数が多いのに係留で
きる場所が少な過ぎるという根本的な問
題がある。もちろん高額な係留費用を支
払えばそれなりにリッパなマリーナ内に
54
保管できるのだろうが、それでは庶民の
「憧れのマイボート」という夢は潰えて
しまう。それでなくても景気が悪いのだ
から、せめてリーズナブルな価格で安全
に係留できるスペースを役所がもっと早
急に作るべきである。
河川での違法係留を取り締ることに径
費と力を入れるくらいなら、河川の一部
を正式に係留スペースとしてマリーナ施
設を作った方がよい。できれば格安な費
用でお願いしたいものである。そうすれ
ば、もっとマリンレジャーを心置きなく
楽しむことができるだろうし、河川の環
境整備にも役立つはずである。
②「組み合わせ構造を採用する」
。
③艤装品の取付けと交換が容易で
ある」
。
④「環境に対応した船外機を搭載
できる」。
以上が最大の注目ポイントである。そ
こで「エコ・ボート」がユーザーにどの
ようなメリットをもたらすのかという点
にも触れておこう。
一番魅力的に感じたのは、組み合わせ
構造を採用するためブリッジなどを部材
単位で簡単に交換できること。従って
ユーザーは使用用途に応じたバリエー
ションを選択できることになる。またオ
プションの装備品が充実されれば、自分
だけの「マイデザインボート」を仕上げ
ることも可能になるわけだ。
次に劣化の少ないウレタン発泡製ハル
の採用である。このウレタン発泡製ハル
の採用によってボートの寿命が延び、結
果的に廃船の排出量が抑制される。
現在、中古艇の価格は15年を過ぎる
と大きく下がる傾向にあるが、商品とし
ての寿命の長い「エコ・ボート」は商品
価値の低下要因が少なくなる。
安全面に関しても目を見張る点があ
る。ハル全体に発泡ウレタンを充填する
ため、今までのボートに比べて浮力が大
きく向上している。だから万一ハルが損
傷しても沈まないだけの十分な浮力性能
を確保している。
さらに、ウレタン発泡製のハルは剛性
が高いため走行中、波の衝撃音を吸収し
てくれ、静かで快適な乗り心地を体感で
きるというわけだ。
その他にも、補修の容易さや有効な船
内スペースの確保にも大きな魅力があ
る。プレジャーボートの環境面や安全性
を考えると「エコ・ボート」の普及が望
まれる。価格も普及の仕方次第では下
がってくるに違いない。
とにかく、今後は間違いなくメリット
の多い「エコ・ボート」が増加し、マリ
ンレジャーの人気の牽引役となってくれ
るだろう。
「エコ・ボート」のユーザーメリットは?
不法投棄の問題や係留施設の拡充の話
はこれくらいにして一応「エコ・ボート」
の技術的特徴について簡単に解説しよう。
注目点は4点ある。
①「船体が発泡構造である」
。
ここは葉山・あぶずり港のヨット置き場。小型ヨットが多く学生ヨットクラブ
の艇が多く見られる。葉山マリーナの隣に位置するが都心から近いから人気は
高く、年間係留代も高額だという。
55
『関東周辺・堤防釣り場ガイド』
−新刊紹介−
海釣りの中でも最も人気が高いのが堤防
釣りだ。理由は手軽に家族連れでも楽しめ
る点にある。そんな快適なアウトドアレ
ジャーのお手伝いをしたくて「関東周辺 堤防釣り場ガイド」は今年も2004年版
を新発売。
今年の特徴は、これまで以上に充実した
ポイントマップの最新情報にある。釣れる
魚はもちろんだが、港内でのトイレや駐車
場、さらに身障者向けのトイレがあるか否
かも調査。水深は実際に足を運んで水深計
付きリールで計測しているのでミャク釣
り、ダンゴ釣り、ウキ釣りの時の参考にな
るはず。
新規の港と堤防を全部で15港加
えた。中心は千葉県エリアと伊豆半
島(静岡県)エリアとなっている。神
奈川県や東京都エリアにも新しいポ
イントを加えて一層内容を充実させ
ている。
巻頭カラーページでは、アオリイ
カやクロダイ、カワハギなど人気の
高い対象魚を中心に掲載。
各エリア別のトビラのページでは
港内と周辺のパーキングやトイレ、
コンビニなどの位置、有無を○、×、
△で表示し一目でその釣り場の「利
便性」と「快適度」がわかります。
とにかく、この一冊があれば釣り
場を決定して現場まで行くのに便利
です。後は釣果だけが気になる所だ
56
2004年版
が、これは当日の潮や風、水温や潮の干満
によって大きく左右されるので何度も同じ
ポイントに足を運んでそのデータを積み重
ねる読者の「情熱」が最終的には欠かせな
い。一度行った堤防でつれないからといっ
て、すぐに諦めてはダメ。何度も釣り場に
足を運ぶ行動力こそが堤防釣りの楽しみの
原点なのだから。
注目はこの価格、他の類似雑誌では実現
できない低価格=950円ですから他の釣
り場情報と見比べてから買いましょう。
Fly UP