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留学体験記

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留学体験記
留学体験記
マンチェスター大学交換留学
一橋大学社会学部四年
竹内理恵
1.はじめに
私は 2014 年 1 月から 2015 年 2 月にかけて、如水会のご支援のもと、イギリス・マンチェ
スター大学に交換留学させていただく機会を得た。本レポートの目的は、①語学②勉強③
気づきの三つの観点から、一年を通して得た経験をまとめ、留学の意義を整理することで
ある。
① 語学
私の留学の大きな目的の一つに、英語の語学力向上とブラッシュアップがあった。日本
でも、サークル活動や学外の国際交流活動を通して、英語に触れる機会を持とうとはして
いたが、やはり第一言語が英語という環境で生活することは、単純に英語に触れる機会を
増やすという意味でも非常に意義があった。
語学スキルの中でも、私が特に伸ばす必要があると感じたのは、スピーキングとアカデ
ミックライティングスキルである。
スピーキングは、特に私のような非ネイティブ/発展途上の語学レベルの者にとっては、
一般的にリーディングやライティング等よりも高い関門であると思う。その中で、まず大
事だと感じたことは、とりあえず話し出してみるという一種の開き直りである。自分のレ
ベルが不十分であることを自覚することは大切だが、やはり使用回数を増やさなければブ
ラッシュアップすることは不可能である。私はそれまで、文法的なことや相手の反応を気
にして自分から口を開けないことも多かったが、特に留学の初期は、自分に課して話し始
めることを心掛けた。しかしその一方で、「伝わればいい」というだけに終始していては、
更に語学力を発展させることはできない。その意味でも、リーディング、ライティングを
重ね、きちんとした文法・文章構造・英語らしい言い回しを自分の中にインプットしてい
くプロセスは非常に重要だと感じた。留学中は特に大学の授業で課されるリーディングや
エッセイを通して、こうしたインプットの作業に継続して取り組むことができたが、帰国
後は自分で意識して、英書や英語文献を読む等継続して行っていく必要を感じている。
アカデミックライティングは、個人的に非常に難しく感じた部分である。アカデミック
ライティング特有の言い回しや構造に慣れず、エッセイの評価でもそのことについて指摘
されることが多かった。この点については、とにかく課されるアーティクルを読み、構造
に慣れていくことが先決だと考えた。結果的に前期のエッセイよりも、後期に提出したも
のの方が、評価が相対的に高かった点からも、慣れと継続的な蓄積が大切であると実感し
た。この点についても、帰国後も自発的に触れる努力をしたい。
上記までは、特に語学スキルの向上方法という点について記述したが、一番実感したこ
とは、英語はやはりツールであり、それを使って何をするか、何をしゃべるかという部分
が一番重要であるということだ。広く世界の情勢に関心を持っていること、最低限の知識
を持っていることが、特にさまざまな国、地域出身の人と話し、仲良くなるうえでは重要
だと感じた。その点で、ツールとしての英語のブラッシュアップだけでなく、幅広い知識
を身に着け、好奇心を持って多くの人の話を聞くことが求められていると感じた。
② 勉強
私の留学の目的のもう一つに、イギリス/ヨーロッパの移民政策や、現実の生活状況を勉
強、体感したいという部分があった。私はゼミナールで国際社会学を専攻しており、特に
移民について勉強していた。特に日系ブラジル人移民の直面する課題や包摂の問題を勉強
する中で、日本と同じくまたはそれ以上に移民と社会変容/包摂にまつわる諸事情が社会問
題として取り沙汰されているヨーロッパにおいて、どのような政策が取られているか、そ
の実際の包摂状況を実際に見てみたいと考えていた。
この留学の一年を通して、特に勉強になった経験は、ドイツのギッセンにおけるアサイ
ラムシーカー収容キャンプでのボランティアである。このキャンプは、ドイツに庇護申請
を求めて来た人々が、実際に難民認定が降りるまでの間住むことになっている施設である。
ドイツの各州にそれぞれの人口比率に合わせて設置されており、一定期間を一つのキャン
プで過ごすと、ランダムに違うキャンプに送られることになっている。
ギッセンのキャンプにいる人々の多くはチェチェン、ソマリア、シリアからの難民であ
り、ほかにもセルビアからの庇護申請者等がキャンプに収容されていた。彼らは経済的援
助を受ける代わりに働くことは禁止されており、難民庇護認定がおりる保証もないまま数
か月施設で過ごさなくてはならない。また、難民庇護認定が降りなかった場合は、アサイ
ラムシーカーはとおってきたパスの中で定められている「安全な第三国」へ送り返されて
しまう。多くの人々、海路・陸路を使って EU 圏に入り込み、指紋認証等公に記録が残り
送り返されるリスクをできるだけかいくぐりながらドイツへたどり着く。
この難民キャンプでのボランティアで考えさせられたことは、難民の立場・権利的難し
さである。難民の方はいったん庇護申請を受理されても、その権利は「祖国が紛争状態か
ら脱するまで」であるため、常に不安定な状況の中で生活をしなければいけない。また、
多くの場合ドイツ語の知識を持っていないため、いったん仕事を斡旋された後の社会生活
にも困難がつきまとう。また、難民は家族単位で収容施設をローテーションするため、中々
出所前から同エスニシティ間での互助グループを形成しにくい。また、様々なエリアから
の移民が混ぜられて生活していることから、共通語がなく、ドイツ語・英語のレベルには
差がある。更に、前述のとおり収容施設のローテーションもランダムに起こるため、中々
一つの収容所内でも結束を固めにくいという現状がある。
難民受け入れに対して先進的とされるドイツでの現状の問題把握は、特に権利の面で難
民にどこまでの範囲、期間、選定方法で権利を付与していくかという、権利の拡張/縮小に
対する問題意識を得ることに役立った。こうした権利の境界決定プロセスは、一国により
行われるものではなく、より広い EU 等の国際枠組み、移民自体のフローとロビーイング
など、複数のアクターの働きかけが絡まって決定されるものだと考える。
ドイツだけでなく、世界各地で起こる移民プロセスでも、おおきな構造と複数のアクタ
ーの相互関係を考えるとともに、難民キャンプで得たようなエスノグラフィカルな体験と
いった声をかんがみながら、今後の研究も進めていきたいと考えている。
③ 気づき
上記に述べたような当初の留学の目的とは別に、私が留学で得たものとして、マインド
の変化がある。
留学前の私は、どちらかというと受動的で、与えられた環境の中で自分のベストを尽く
していく傾向が強かった。しかし、留学を通して、誰も自分のことを知らない環境の中で、
どう自分が行動するか発信していくかということが重要になったとき、はじめて「自分が
行動した分だけ自分にリターンが返ってくるのだ」ということを実感した。
例えば、留学中は努めて多くの人と話すように努力し、目の前の出会いを大切にするよ
うにした。そうすると、その人から芋づる式に様々なコミュニティに属する人と出会うこ
とができたり、日本にいては会うことがなかったような人と会ったりするチャンスが増え
た。また、夏休みという長期間のフリータイムを利用して、サマースクールやボランティ
アなど、自分の興味関心にしたがって積極的にチャレンジすることで、より実体験に基づ
く知識を吸収することができた。
もちろん、新しい環境に身を置くことだけでも、新たな発見や気づき、出会いは得られ
るが、それを最大化するためには行動することが非常に大切なのだと感じた。
留学を通して、行動力の大切さ、その行動して得た結果を最大化する普段からの地道な
努力の必要性を痛感した。特に英語等の語学スキルは日本に帰ってからも地道に伸ばす努
力を続けたい。以上が私が留学を通して得た経験の所感である。
(2015.2.19)
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