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第2章 異文化理解教育 - 名古屋大学国際教育交流センター

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第2章 異文化理解教育 - 名古屋大学国際教育交流センター
第Ⅰ部 教育活動 第 2 章 異文化理解教育
第 2 章 異文化理解教育
第 1 節 留学生と日本人学生の教育交流の意義―
古屋大学内およびこの地域で異なる文化を持つ
教養科目「留学生と日本」から―
人々が共に学び生きることの意味を考え直し、多
教養教育院の全学教養科目「留学生と日本―異
文化共生のあり方を模索するのが授業のねらいで
文化を通しての日本理解」は、1996年度留学生セ
ある。日本人学生と留学生との割合がほぼ 1 対 1
ンター教員がチーム( 4 ~ 5 名)で開講したもの
になるように、学部生には受講調整(30名以下)
である。この科目は、学部 2 年生を対象にした、
を行い、日本語・日本文化研修生と日韓理工系学
日本人学生と留学生との合同授業である。留学生
部留学生などを受講者に加えている。過去 4 年間
と日本人学生が討論や共同作業を通じて、両者の
(平成15年度~18年度)の受講者数とその内訳は
日本に対する理解と相互の理解を深めること、名
以下の通りである。
日本人学生
学部留学生
日本語・日本文化研修生、
その他の留学生
計
平成15年度
(2003)
21
3
25
49
平成16年度
(2004)
28
1
24
53
平成17年度
(2005)
20
7
26
53
平成18年度
(2006)
26
5
22
53
まず、 1 学期の授業の全体的な流れは以下の通
る。過去 4 年間のグループ活動のテーマ一覧を下
りである。
(全15コマ)
記に示す。
1 )異文化コミュニケーションの擬似体験をし、
外国人が日本で生活するときに感じる違和感につ
いて話し合う。( 3 ~ 4 コマ)
2 ) 6 ~ 7 名のグループで、留学生の日本に対す
る疑問を聞き、日本事情をより深く理解するテー
マを決め調べたことをまとめて発表する。( 7 ~
8 コマ)
3 )グループ作業での体験を振り返り、異文化コ
ミュニケーションとして捉え直し、留学を通して、
あるいは学内やこの地域で暮らす違う文化を持っ
た人々とのコミュニケーションで経験する「文化
の壁」を乗り越える技法を学ぶ。( 3 ~ 4 コマ)
この授業の中盤で多くの時間を割くグループ活
動では、留学生の日本に対する疑問にもとづいた
テーマが選ばれることが多いが、日本人学生に
とってもそれらのテーマについて調べ発表するこ
平成15年度 世界のお正月、ここが知りたい日本
(2003) (風呂、名前)
、老後の生活、○○さ
んの 1 日、各国の食文化、世界の観
光地、迷信、各国テレビ事情
平成16年度 日本人とお化け、日本の結婚事情、な
(2004) ぜ日本人は英語を話せないのか、日本
の結婚式事情、日本語のあいまいな
表現、男女の言葉はなぜ違う、レディ
ファーストと日本、バイトについて
平成17年度 子どもの名前の付け方、ココが変だ
(2005) よ!日本の礼儀、レディファースト、
お酒から考える日本文化、伝統衣装
と国際理解、日本人の紙の使いすぎ
について、日本人の金銭感覚、冷凍
食品について
平成18年度 マンガ・アニメ、大学生のアルバイ
(2006) ト事情、人との距離、ギャルこそ日
本の宝?!、バレンタインデイ、各国
の正月と日本の正月、結婚、ランド
セルから見た日本文化
とは、自文化について深く考える機会となってい
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名古屋大学留学生センター外部評価報告書 2003–2006
次に、この授業で工夫した点については、以下
います。そして、今まで真剣に考えていなかった
の 3 点があげられる。
自分の国の文化について、今さら気づいたり、ま
1 )教員の協力体制による授業運営
た違う角度から見ることができて面白かったで
毎時間、担当教員全員が授業に参加すること
す。(留学生)
で、受講生の反応を複数の眼で観察した。
2 )体験学習という視点
ゲームやグループ活動の後、その体験を振り
第 2 節 授業としての多文化理解教育の成果「基
返るフィードバックを必ず実施した。失敗も
礎セミナー A」
経験であり、その経験から何を学ぶのかを考
基礎セミナー A「多文化社会を生きる」は、
えさせた。
2003年度留学生センター教官がチームで新規開講
3 )多様な授業形態
した授業であり、対象は学部 1 年生の文理融合の
講義形式の授業だけでなく、ゲームや少人数
学生たち12名(定員)である。留学生センターで
でのディスカッションで授業を活性化した。
は、名古屋地域の身近にある外国文化を取り上げ、
なお、この授業の内容については、本学ホー
それらを通して日本社会の課題に気づき、地域住
ムページの「名大の授業」に公開されている
民として共に生きるとはどういうことかを学ぶこ
(http://ocw.nagoya-u.jp)
。
とを授業のねらいとした。当時の教養教育院から
最後に、この授業に対する受講生のコメントを
は、基礎セミナーではパワーポイントを使って口
抜粋して紹介する(すべて平成18年度のもの)。留.
頭発表ができるスキルを習得させてほしいとの要
学生と授業時間以外にほとんど接する機会のない
請があったため、発表及びレポートを課し、最終
日本人学生にとって、この授業は新鮮な発見をも
的には出席率、授業への貢献、発表、レポートで
たらしたようである。また、留学生にとっても、
総合的に評価した。
同世代の日本人をよく知る機会となっている。
★ 実際に留学生と接していく中で、留学生を留
授業の特徴として、開講 2 年目からは留学生
学生として過度に意識する必要はないのではない
を TA に起用し、学生が留学生と直接触れ合うこ
かという気がしてきた。学部の違いも国籍の違い
とで身近な外国文化を感じられる機会を意図的に
も、単なる違いという点では同じではないか。違
設定したことがあげられる。TA は、早い段階で
いというよりは個性として受け止めるべきなのか
1 コマ使って母国文化を紹介する機会を持ち、パ
もしれない。大切なのはその個性を受け止め、関
ワーポイントでの説明とともに、料理、茶、衣装、
わりの中で互いに尊重しあうことだと思った。
(日
写真等を通して学生に母国文化を伝えている。こ
本人学生)
れに先立ち、学生には TA の国を調べる宿題(事
★ この授業の前と後で、留学生と話をするとき
前学習)を与え、各自の関心に従ってテーマを決
の緊張感がいい意味で少なくなったように感じて
め調べさせている。その成果は、授業中にいろい
います。毎回考えるべきことが多く、そうしたこ
ろな質問となって出てくる。
とが自分の体の中にどんどん吸収されていく感じ
がしました。
(日本人学生)
二つめの特徴は、実際に異文化背景を持ってこ
★ この授業を通して、異文化に対して具体的に
の地域で生活する人々を学内外からゲストスピー
考えるようになりました。今まであまり興味もな
カーとして招き、「○○の人々と文化」と題して、
かったし、あったとして日本に関してだけでした
それらの人々から直接話が聞ける機会を設けてい
が、今回日本だけでなくいろいろな国の文化につ
ることである。彼らは、いわば生きた教材であり
いて少しだけど分かることができてよかったと思
学生に与えるインパクトは強く、それらの文化に
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第Ⅰ部 教育活動 第 2 章 異文化理解教育
ほとんど無知であったり、偏見を持っていた学生
学生が 4 名いたので、 5 つのグループのうち 3 つ
たちの視点を広げ、考え方に変化がみられたり、
までが留学生と日本人の合同グループとなり課題
異文化の人々に共感をもつ様子は教育効果の高さ
の改善に役立った。
を表わしている。
四つめは、発表準備に入るまで毎回授業を受け
三つめは、 3 年目の2005年度から発表を個人単
て考えたことや学んだこと等を A4 サイズ 1 枚に
位ではなくグループ発表に変えてみたことであ
書いてくる宿題を課していることであるが、学生
る。これは、学生は授業に熱心に取り組んでいた
は教養教育院のアンケート自由記述欄に、この宿
が、教室内外での学生同士の交流が進まず課題に
題が大変だったこと、しかしながらそれによって
なっていたからである。さらに、この年には、留
文章を書くことに慣れたとコメントしている。
年度
学生数
TA の
出身国
平成15 12
(2003)
平成16 12
(2004)
日本
・在日コリアン(高徹)
・在日ブラジル人(岩村ウイリアン雅浩)
・インドの食文化と日本の留学生活(コチャール・リ
トゥ)
・イスラーム(アンディカ・ファジャール、メトハト・
エル・ハラワニー)
ブルガリア ・国際結婚(稲垣達也・アイダ夫妻)
・在日韓国人(姜信和・原田芳裕・岩田梓)
・在日華僑(張玉玲)
・在日ブラジル人(岩村ウイリアン雅浩)
平成17 12
(2005)(4)
*
インド
平成18 12
(2006)(1)
*
中国
平成19 9
(2007)
○○の人たちの暮らしを詳しく知ろう
○○文化と人々(講師)
・在日ブラジル人(岩村ウイリアン雅浩)
・在日外国人の帰化(浅川晃広)
・イスラム(サルカール・アラニ・モハメド・レザ)
・国際結婚(稲垣達也・アイダ゛夫妻)
担当教員
三宅政子(責任者)
浮葉正親
田中京子
松浦まち子
松浦まち子(責任者)
浮葉正親
田中京子
松浦まち子(責任者)
浮葉正親
堀江未来
・イスラム(服部美奈、コンダカル・ミザヌル・ラハマン、 松浦まち子(責任者)
イスラム文化研究会)
浮葉正親
・在日ペルー人(中村パトリシア)
堀江未来
・在日外国人の帰化(浅川晃広)
髙木ひとみ
・国際結婚(稲垣達也・アイダ夫妻)
ウズベキスタン ・日系ブラジル人(櫻庭セルソ智)
松浦まち子(責任者)
・イスラム(S・イスラム・カーン、イスラム文化研究会) 浮葉正親
・在日韓国人(金 栄一)
髙木ひとみ
・国際結婚(稲垣達也・アイダ夫妻)
*留学生数(内数)
2005年度:香港 1 名、マレーシア 3 名、2006年度:韓国 1 名
下記に、この授業に対する学生のコメントを抜
そうしたことについてじっくり考えることができ
粋して紹介するが、学生が異文化を通して多くの
ました。
新鮮な学びや気づきを得て、クラスでの発言への
★ 様々な方のゲスト講演が百聞は一見に如かず
積極性を身につけたことは担当者の期待に十分応
で、とても現実味を持って聞けてよい勉強になっ
えるものであった。
た。ただ教材だけで学ぶよりも深く印象に残り、
★ この授業は毎回考えさせられることばかりで
問題意識の根付きとなった。プレゼンでは、自分
すごく勉強になりました。多文化共生社会は本当
の社会に対する関心、興味をあらためて確認でき
に難しい問題ですが、この基礎セミナーを通して、
たと同時に、他の学生の関心もよく理解できて面
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名古屋大学留学生センター外部評価報告書 2003–2006
白かった。
★ 毎週違う刺激があってとても楽しい授業でし
づき、授業が進められている。上記のうち、( 1 ).
「異文化間コミュニケーション」は短期留学生の
た。
みに開講され、( 2 )「多文化理解とコミュニケー
★ 各国のゲストの方のお話を聞くことができて
ション」および( 3 )
「多文化環境におけるコミュ
感じるものがたくさんありました。この経験はこ
ニケーションと人間関係」は、開放科目として名
れからも生かして行けると思います。
古屋大学生の受講も認められている。
★ 一人一人が違うことを認め、気軽に発言でき
同授業の大きな利点は、名古屋大学にアジア・
る雰囲気での学習にしてくださったことで、自.
欧米豪地域からバランスよく短期留学生が受入れ
分なりの考えをたくさん表現することができまし
られ、これらの授業を受講していることである。
た。このセミナーを通して他の受講生とも仲良く
教室内で交わされるコミュニケーションに多様な
なれて嬉しかったです。
個性、文化の違いや考えが反映され、活発な話し
合いが生まれ、学生の学びに寄与している。特に
( 2 )( 3 )の授業は、受講者の三分の一以上が名
第 3 節 NUPACE 科目「異文化間コミュニケー
古屋大学の日本人学生であるため、外国人留学生
ション」及び「多文化環境におけるコミュニケー
と日本人学生が対話を深める機会として、双方の
ションと人間関係」
学生によい出会いと刺激を与えている。(出身地
1 .科目概要
域分布については表 1 、 2 を参照。)同授業の受
短期留学生を対象に英語で開講されている
講を希望する者も多く、本来25名程度に限定して
NUPACE 科目のうち、2004年度後期から、専門
いる受講者数も、結果的には45名前後の学生を受
科目群の一環として下記の科目が提供されてい
け入れている。
る。
(1)
「異文化間コミュニケーション」
2 .教育効果
担当教員:筆内美砂助手(現助教)(2004年度~
日本に滞在中の短期留学生にとって、同授業は
2005年度)
(後期 1 コマ、 2 単位)
大きく分けて 3 つの教育効果を含んでいる。①自
(2)
「多文化環境におけるコミュニケーションと
分自身の異文化体験とその適応のプロセスを客.
人間関係」
(NUPACE 科目及び開放科目として)
観的に見直す、②他文化を通して自分自身の文化
担当教員:堀江未来助教授(現准教授)(2005年
(以下、自文化)の価値観、コミュニケーション
度~現在)
(前期 1 コマ、 2 単位)
や思考の傾向に気づく、③視野を広げ、文化を多
(3)
「多文化理解とコミュニケーション」
角的に捉える。これらに加えて、日本人の学生に
(NUPACE 科目及び開放科目として)
とっては、④英語で自分の考えを伝える、という
担当教員:高木ひとみ講師、筆内美砂助手(現助
挑戦も伴う。英語をネイティブとする留学生、ま
教)
(2006年度~現在)(後期 1 コマ、 2 単位)
たは高い英語力を持つ短期留学生とともに学ぶこ
とで、英語を聞きとり、考え、意見を言う訓練の
これらの授業は、異なる文化的背景を持つ学生
場ともなっている。また、これから留学を予定し
が集まり、コミュニケーションに関わる多様な文
ている名古屋大学生も多く受講していることか
化的要素を学び合うことで、異文化環境における
ら、⑤留学先で体験しうる異文化適応のプロセス
柔軟な姿勢(適応力)とコミュニケーション能力
を知り、異文化環境におけるコミュニケーション
を高めていくことを目指している。学際的なアプ
について考える、⑥留学先大学での授業を模擬体
ローチとして、異文化コミュニケーションに関連
験する、という効果も持ち合わせ、名古屋大学生
した社会心理学、異文化間教育学などの理論に基
の留学準備にも貢献している。
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第Ⅰ部 教育活動 第 2 章 異文化理解教育
表 1 .2006年度「多文化理解とコミュニケーション」受講者出身地域分布
表 2 .2007年度「多文化環境におけるコミュニケーションと人間関係」受講者出身地域分布
3 .授業形態・内容
た学生とそうでない学生とのバランスを工夫する
授業は講義とディスカッション、さらに異文化
ことが常に課題となっている。
間コミュニケーションを擬似体験するシミュレー
ションやアクティビティなどを取り入れて行われ
4 .成果
ている。講義で説明を受けた学生は毎回小グルー
NUPACE で は、 毎 学 期 終 了 時 に す べ て の
プに分かれ、実体験に基づいた事例や自身の考え
NUPACE 科目について受講者にアンケートを取
を交換しながら、各テーマについて理解を深め.
り、学生の意見を集めている。同授業については、
る。また、学期半ばからは継続的なグループワー
「自分自身が日本で経験していることを言葉で理
クが進められる。グループワークはプレゼンテー
解し、考え、表現できること」「多彩な国から集
ションを課題としているが、準備の過程で交わさ
まっている学生と話し合うことができ、意見交換
れるグループ内のコミュニケーションから学ぶこ
の貴重な場であること」「授業を通して友人がで
とも大きい。
きたこと、交友関係が広がったこと」が特に有益
教材資料は取り上げるテーマに応じてさまざま
であったとの感想が多い。資料を通して、異文化
な文献から集められ、授業毎に渡される。次の授
間コミュニケーションに関わる理論を理解するこ
業までに読むことが課題となっているが、英語で
とも大事な要素のひとつであるが、授業内および
書かれたものが一定量渡されるため、日本人学生
グループワークを通して交わされる考えや具体的
また一部の留学生にとってはその内容についてい
な事例が、身近なものとして学生の興味をかきた
くことも大変な作業となる。英文資料を読み慣れ
てている。
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名古屋大学留学生センター外部評価報告書 2003–2006
多様な文化的背景を持った学生に交じり、話し
の方策として、異文化相互理解教育や異文化を持
合うことで、これまで他の文化に向けられていた
つ人々とのコミュニケーション教育の必要性を単
視点も、自分自身を見直すという成果につながっ
位になる「授業」という形で確立したのである。
ている。自文化の特徴や傾向を知ることは、また
これらは学生たちにとって新しくも必要な教育で
他の文化と接する自分を客観的に捉え、どのよう
あった。
な点に考慮してコミュニケーションを図るべきか
を知るきっかけとなる。
教養科目「留学生と日本」は平成 8 (1996)年
に開講されて以来10年以上続いている留学生と日
5 .今後の課題
本人学生の合同授業である。チームティーチング
受講希望が多く寄せられる同授業は、人数制限
を担う留学生センター教員の所属部門は様々であ
のため、やむをえず授業登録を断るケースが起き
るが、連携しながらそれぞれの専門性と業務の成
てしまう。学生の関心と授業の教育効果を活かす
果を活かす厚みのある授業を行なっている。
ためにも、同分野の授業のコマ数を増やすこと、
平成15(2003)年度からは「基礎セミナー A」
または複数名による授業進行が望ましいと考え
に協力して「多文化社会を生きる」を開講してい
る。そのための人員確保が今後の課題である。
る。身近なところにある外国文化に触れること.
また同授業は英語で行われるため、学生の語学
で、日本社会の課題を考え地域住民として共に生
力の違いを踏まえて、文献の内容、量などのバラ
きるとはどういうことかを学ぶものである。大学
ンスを配慮する必要がある。適度な受講者数調.
入学直後の 1 年生の前期に開講し、授業では異文
整、および語学力の差を補う指導方法、授業進行
化の刺激を与えながら先入観や偏見を越える視野
に引き続き取り組みたい。
の拡大と多文化への気づきを促している。
NUPACE 科目や開放科目に見られる特徴は使
用言語が英語である点である。これらも留学生と
第 4 節 まとめ
日本人学生の合同授業であるが、教養科目「留学
留学生センターが教養教育院に協力して開講し
生と日本」が日本語で行われ、日本人学生が留学
ている科目や NUPACE 生に提供している科目は、
生の日本語を見守る雰囲気があるのに対して、こ
教養科目「留学生と日本」
、基礎セミナー A「多
ちらは英語のネイティブ学生に混ざって日本人学
文化社会を生きる」
、NUPACE 科目や開放科目.
生が英語で自分の意見を言うという挑戦を続けて
「異文化間コミュニケーション」「多文化環境にお
いる。
けるコミュニケーションと人間関係」
「多文化理
これらの授業に共通して底辺に流れていること
解とコミュニケーション」である。これらは留学
は、この多文化時代にあって、どのように異なる
生センターの特徴をよく表わしている、言い換え
文化を持つ人々とコミュニケーションを図り、相
れば留学生センターだからこそ開講できる科目で
互理解を深め、共生していくかを自分で考え、自
あるとも言える。
分の意見を述べる力を身につけることといえる。
以前から、学内では授業で隣に留学生が座って
授業での体験は異文化への関心を高めるだけでな
いても授業が終わればそのまま右と左に分かれて
く、自文化を見つめなおす視点をもたらし、バラ
しまい、日本人学生と留学生はなかなか友人関係
ンスの取れた人間としての成長を予感させるもの
が構築できない状態であった。お互いに関心がな
となっている。日本人学生にとっては、更なる挑
いわけではなく、むしろ友達になりたいと思って
戦として「海外留学」にもつながっている。
いるのにである。この状況を留学生センター教員
時が流れ、ここ数年の学生を見ていると、以前
は憂慮をもって注目し、その課題を解決する一つ
よく言われた「シャイな日本人」は消え、「積極
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第Ⅰ部 教育活動 第 2 章 異文化理解教育
的な日本人」に変わって来たように思う。留学生
はない学生もいるが、そこから逃げたりせずに失
に話しかける日本人学生は決してシャイではな
敗しながらも努力して何とかついていこうとする
い。英語で開講されている授業にも積極的に参加
姿は立派である。
し、自分の英語力を駆使しながら意見を述べ、刺
留学生センターは、これからも名古屋大学の学
激をもらい、さらに向上させるべく努力する学生
生が国際的競争力を持ち、異なる文化への理解と
の姿がみられるようになっている。もちろん一部
尊重を忘れないよう教育していきたい。
には英語でのコミュニケーション力がまだ十分で
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