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研究論文出版のための執筆ガイドライン
研究論文出版のための執筆ガイドライン Tissue Engineering Part A, Part B Reviews, and Part C Methods 共同編集長 John P. Fisher, PhD John A. Jansen, DDS, PhD Peter C. Johnson, MD Antonios G. Mikos, PhD 研究者の第一の使命は、幅広く科学のコミュニティに向けて専門分野の研究成果を伝達すること です。記述であれ口述であれ、科学的手法で研究発表をすることは重要で、科学の分野に動きをもた らす重要な原動力となります。そのため、執筆する科学論文の構成は、軽く受け止めるべきではあり ません。広く科学のコミュニティに向けた私たちの役割の一環として、優れた構成の科学論文に共通 するいくつかの要素を特定することが有益かもしれないと考えています。ポイントを以下に短く説明 します。 受理される投稿論文には、三つの主なる要素、 (1)総合的なアイデア、 (2)研究の実施(3)研究の 発表 があります。各要素は重要ですが、本ガイドラインでは、主に三番目の要素、すなわち研究の発 表について提示しています。アイデアまたはデザインの乏しい調査は、研究の優れた発表で救うこと はできず、同様によく調査された優れたアイデアであっても、貧弱な発表では失敗に終わるでしょう。 これから記載するコンセプトが、後者の状況を最小限にする助けとなることを願っています。 構成とアプローチ 科学的研究は、明確な研究の課題から始まらなくてはならず、このことが全体的なアプローチを計 画する優れた構成の研究手順要綱を生み出します。この根本理念により、論文が構成されるもととな るデータにたどり着きます。雑誌投稿論文は、通常次のように構成されます。 • Title Page(タイトルページ) • Conclusions(結論) • Introduction(序文) • References(参考文献) • Abstract(アブストラクト) • Methods(方法) • Results(結果) • Discussion(考察) • Acknowledgements(謝辞) • Tables and Table Captions(表と表のキャプション) • Figure and Figure Captions(図と図のキャプション) 科学論文を執筆する合理的なアプローチは次の通りでしょう。大枠で著者の初期の研究手順要綱 をもとにMethods(方法)の部分を最初に書き、そして研究の実験段階で、すべての詳細を含んでも よいでしょう。研究のデータが含まれるすべての図と表を作成し、それからResults(結果)の部分を執 筆します。研究のタイプによって、データの発表とテキストの記述にいくつか繰り返しがあるかもしれ ません。論文で取り組む科学上の課題を再考し、研究手順を再度参照し、それからIntroduction(序 文)を執筆します。次に、Introduction(序文)とResults(結果)を用いて、Discussion(考察)部分の 執筆に取り組みます。すべてをAbstract(アブストラクト)に要約します。そこから要約を凝縮し、再度 要約に注意を向け、Conclusions(結論)部分へと向かいます。これから記載することは、各部分につ いての簡潔な考察で、科学論文の書き方のひとつの提案にすぎません。その他の手法も用いられる かもしれませんが、明確さが指針となるべきです。一般的に、科学論文の目的は、明確に記述された ドキュメントを構成することです。すなわち、課題を記述し、その課題に対して理論上のまたは実験上 の結果に基づいて、論理的に回答を展開することです。 科学論文は、読者に技術情報を伝えるためのものです。そのため、一般的に簡潔明瞭な発表と考 察で考案されます。読者にとって論文の科学的観点が、かなり難解であるかもしれないので、テキス ト自体はコンセプトと結果の不明瞭さを生じさせるよりも、科学情報の伝達に努めるよう、パラグラ フと文はシンプルに構成するべきです。 Title Page(タイトルページ) 基本的なことですがタイトルページを作成すべきです。このページには、短くシンプルな論文表題、 著者・共著者全員の氏名と所属機関を記載します。投稿先ジャーナル名を明記します。投稿原稿用に キーワード5つくらいとショートタイトル(ランニングタイトルとして時には参照されるもの)を記載し ます。最後に、代表著者のコンタクト先情報を全て記載します。 Abstract(アブストラクト) アブストラクトは、通常は1パラグラフです。アブストラクトは独立したドキュメントとすべきで、ア ブストラクトは本文の内容に依るものではなく、同様に、本文もアブストラクトの内容に依るもので はありません。最初の1文では研究の目的を明確に述べるべきです。研究が仮説に基づいているなら ば、非常に好ましいことで、仮説を記述し次にその根拠と評価を記述してください。次の文章で、どの ような方法が適用されたかを記述します。続く文章では、 できるかぎり明確に冗長にならないよう、 研究の結果を記述します。最後の文章で、結果の重大性、著者の研究が研究分野全般に対してもた らすインパクトについて記述します。 Introduction(序文) 序文では、研究トピックに関する文献について簡潔に言及してください。それから幅広いトピックス から始め、徐々に着手中の研究に焦点を当て記述し、序文が最良になるよう構成します。3~4のパラ グラフが必要でしょう。まず読者にこの研究分野全般を紹介する文章をパラグラフ1つか2つで記述 してみてください。次のパラグラフでは、どのようにこの分野の見解を改良することが可能となったか を記述します。最後のパラグラフは重要です。ほとんどの論文では、このパラグラフの最初の文章で、 どのような課題がこの研究で解決されるだろうか明確に記述します。それから仮説を記述します。次 に、仮説を試みるために用いられた方法について簡潔に述べます。最後に著者の課題への回答が、ど のようにこの分野全体の研究に寄与するであろうか述べます。 Methods(方法) 著者の研究に使われた方法を明確に記述します。各方法は、各々セクションを分けて記載します。 最初に、1セクションで、研究に使われた材料と、そのベンダーとベンダーのコンタクト先情報を記載し てください。この情報は、読者が自身の研究機関で同じ研究を再現できるようにするため重要です。 次のセクションで、研究に用いられた鍵となる手順そしてテクニックを記載します。説明は短く簡潔に します。特殊な実験計画が用いられる場合、材料のセクションの後に、Methods(方法)の2つめのセ クションとしてこの実験計画を記述します。同様に理論上の要素またはモデリング要素が用いられる 場合、これもMethods(方法)の最初の部分に組み込みます。最後に、忘れずに結果分析に用いた統 計分析方法を記載します。これはほとんどの場合 Methods(方法)の最後のセクションに組み入れ ます。一般的には推奨されていませんが、Methods(方法)セクションは受動態で記述するほうがた ぶん適切でしょう。 Results(結果) 結果の部分では、実験データを読者に提示しますが、データの考察または、解説をする場ではあり ません。データは必ず図表(後述参照)で提示してください。図表はグループごとにわけ別々のパラグ ラフで表し、そこに全体の傾向と、特別に関心をよせていると実験データポイントを注記します。本文 中に図表の配置について記載してもよいでしょう。実験研究では必ず、サンプル数(n)散布指数(SD: 標準偏差、SEM:標準誤差)そして代表値(平均値、中央値、最頻値)のような鍵となる統計を記載して ください。実施された統計的分析を全て網羅し、P値のような特殊な統計データを必ず記載してくさ い。論文中の図表はResults(結果)のセクションでそれぞれ必ず参照されるように留意してください。 簡潔にまとめてください。 Discussion(考察) 考察の部分は、しばしば書くことが最も難しいものですが、前述の提案に従っていれば比較的簡 単でしょう。特に、序文の最後のパラグラフに注意してください。いくつかの特定の効果を調査する ことにより 研究がある現象を明らかにしたのなら、それぞれの効果を分けて記述するために結果 を用いてください。研究が仮説を提示していたならば、仮説を支持または却下する論理的な議論を構 築するために結果を用います。研究が3つの主なる研究目的を特定していたならば、これらの目的各 々に取り組むために結果を用いてください。Introduction(序文)で研究を明確に記述しておけば、 Results(結果)の部分に提示された結果を支持し、Discussion(考察)部分を容易に構成できます。 研究の概要を再度提示する短いパラグラフで、Discussion(考察)の部分を書き始めます。もっとも 重要な発見を要約し、妥当な場合、提示した仮説を支持または却下します。次に、Results(結果)の 部分で提示されたもっとも興味深く、重大で、注目すべき発見を特定し、そしてこれらの発見を、参考 文献で報告されている他の研究と照らし合わせ比較してみます。その解釈に弱点があるかもしれな いと考察することは、多くの場合有益です。そして、Discussion(考察)部分の最後で、同じ題材を扱う 文献の他の研究を念入りに調べ この研究が研究分野全般にどのように寄与しているかを考察しま す。 Conclusions(結論) 再び、最初に研究を紹介し、それから手短に主だった結果を記述します。それから考察の主なポイ ントについて記述します。最後に、研究がこの研究分野全般にどのように寄与するか記述し締めくくり ます。 Acknowledgements(謝辞) 論文の著者として含まれていない参与者ならびにコンサルタントの尽力に簡潔な謝辞の文章を記 載します。研究のための資金源をすべて記述し、この記述が資金提供機関によって規定されたガイド ラインを順守していることを明確にします。 References(参考文献) 引用したすべての参考文献を記載します。参考文献は入念に調べるべきです。そうするこ とでこの研究を支持し、この研究の動機づけとなるこれまでの研究のみならず、こ の分野のカギとなるあらゆる情報をくまなくカバーすることとなります。しか しながら、特定の著者や雑誌を単に引用するために、わざわざ無関係な 参考文献まで含めるべきではありません。自身の研究所による以前 の刊行物から引用することが適切な場合もあるかもしれません が思慮深く行われるべきです。 論文の投稿先ジャーナルが規定する参考文献フォーマット を使用します。様々な文献ソフト利用により参考文献マネージ メントが容易になります。 Tables and Table Captions(表と表のキャプション) Tables(表)部分は、一般的にReferences(参考文献)部分の後に分けて記載します。表には太字 でキャプションとタイトルを付与します。 (例:Table 1: Material Properties)次に引き続き、この表に 含まれるデータの内容とインパクトを1文か2文で記述します。表自体は、データが明確に表示される よう、そしてレビューアーに簡単に解釈されるようフォーマットを設定すべきです。しかしながら表は、 ジャーナルによっては版元の基準に合わせて再度フォーマット化されるかもしれません。各表は必ず 論文テキストの参照となるようにしてください。表はResults(結果)の部分でもっとも掲載されます が、Introduction(序文)やMethods(方法)、Discussion(考察)の部分で掲載されることもあるかも しれません。 Figures and Figure Captions(図と図のキャプション) 表と同様に、図もReferences(参考文献)の後に分けて記載されます。明確さがまたも重要です。 特に画像とグラフに注意してください。すべての画像は可能な限り大きくし正確なスケールバーを含 むべきです。グラフも大きくすべきで、大きめのフォントでデータポイントと軸ラベルを記載します。レ ジェンドは、グラフまたはキャプションに含めてもかまいません。すべての図にはキャプションが必要 です。キャプションは太字で図を特定し(例: Figure 3)、図の短いタイトルを記載し、簡潔に図から わかる重要な結果または解釈(これはResults(結果)またはDiscussion(考察)部分のテキストから変 更されるかもしれません)を簡潔に示し、そして最終的に、実験の反復回数(例:n=5)並びにデータ ポイントが実際に表したものを記載します。 (例:データが平均値、そしてエラーバーが標準偏差を表 示)表と同様に、各々の図は必ず論文テキストの参照となるようにしてください。 Authorship and Originality オーサーシップとオリジナリティ 最後に、出版のため提出される論文のオーサーシップとオリジナリティに関して考察するために、い くつかの点をまとめました。 • 盗用は残念ながら、編集者と出版社の間で重大な懸念となっています。故にすべてのデータとテキ ストの情報源は正確にしてください。もし論文が先行の研究をベースにしている場合、その先行研 究を引用としてきちんと記載してください。どんな形であれ、適切な引用なしでは、オリジナルの 研究論文が、すでに出版されたデータを含むことはありえません。 • オーサーシップの決定とオーサーシップの順番の決定は、すべての著者と、著者としては含まれて いない他の参与者全員の同意のもとに決定されねばなりません。 • すでに出版された論文を翻訳し提出することは許可されません。 B E OR I G I N A L ! 著者について Dr. John P. Fisher University of Maryland Fischell 生体工学部大学院 教授兼副長。Johns Hopkins University 化学工学部で理学士号(1995年)、University of Cincinnati 化学工学部で理学修士号(1998年)、Rice University 生体工学部 で博士号(2003年)を修め、University of California Davisで軟骨生体工学の 博士研究員に就任(2003年)。 Tissue Engineering and Biomaterials Laboratoryの所長として、とくに 骨、軟骨、血管系、骨格系組織の再生のため、バイオマテリアル、幹細胞、バ イオリアクターの研究を行う。成人の前駆細胞と幹細胞、両方の開発をサポ ートすることができる新しい移植可能な生体適合性材料を開発することに フォーカスして研究しており、とりわけ、埋め込まれた細胞集団間でどのようにバイオマテリアルが内 生の分子シグナル伝達に作用するかを実験している。著書65点以上、学術発表120例、特許権4件。こ れまでに修士課程3人、博士課程10人の学生の指導にあたる。さらに、Fisherは、自身の研究所で40人 以上の学部研究員の指導にあたり、うち2人は、University of Marylandの優秀学部研究員と称され、 4人はHoward Hughes Medical Instituteの学部特別研究員に就任、18人がMaryland Technology Enterprise InstituteでASPIREアワードを受賞している。 2012年、American Institute for Medical and Biological Engineeringの特別研究員に選出される。 さらに、NSF CAREERアワード(2005)、Arthritis Foundationの研究者アワード(2006)、University of Maryland 年間最優秀創案者アワード(2006)、Rice University 生体工学部より優秀卒業生アワード (2007)、Arthritis Foundation Engalitcheffアワード(2008)、University of Maryland プロフェッサー・ ベンチャー・フェア・コンペティション(2009)、University of Maryland Fischell 生体工学部ティーチング・ エクセレント・アワード(2012)などの受賞歴がある。 2007年から、全米科学財団がサポートする、学部生サイトのための分子細胞生体工学研究経験プ ログラムを指導。いくつかの業績で編集に従事し、現在はTissue Engineering, Part B: Reviews.の編集 長を務める。2冊の書籍を編集し、The Biomedical Engineering Handbook 第3版(2006)刊行にあ たり再生医療部分の編集を担当。 John A. Jansen, DDS, PhD Radboud University Nijmegenで歯学を学び、1977年に同校を卒業。 同年にオランダのマーススラウスでパートタイムの歯科医として仕事を始 める。1984年、Radboud University Nijmegenで、 「上皮細胞の歯科イン プラントへの接着」で博士号を修了。アムステルダムとライデンでアシス タント・プロフェッサーを務めた後、1991年にナイメーヘンに戻り、1996年4 月にプロフェッサー就任前に、バイオマテリアルとインプラント学のアシス タント・プロフェッサーとなる。 2008年4月、Royal Netherlands Academy of Arts and Sciences(医学部門)のフルメンバーに選 出される。2009年、中国、四川大学の名誉教授となり、2010年 サウジアラビア、リヤドの King Saud University 歯学部Implant and Osseointegration Research Chair (DIORC)に研究教授として就任。 500以上の出版物に執筆、7つの特許を持つ。 Tissue Engineering, Part C: Methods を含む8つの 国際科学雑誌の編集ボードメンバーまたは編集者である。 Peter C. Johnson, MD University of Notre DameとSUNY Upstate Medical Universityで学位を修 める。一般・形成外科の研修を経て、University of Pittsburghで10年間、再建 手術を担当した。そこでは自らPittsburgh Tissue Engineering Initiativeを創設 し初代会長も務めた。 TissueInformaticsの共同設立者、CEO、Life Sciencesの副社長 Icoria のCMOならびにCBO, そして Entegrion, Inc. の副社長を務める。現在 は、Vancive Medical Technologies an Avery Dennison business の研究開 発とメディカルアフェア―ズの部長を務めている。Plastic Surgery Research Councilの委員長を務め、Pennsylvania Biotechnology Associationと国際 再生医療学会で会長を務めた経験がある。現在は、Tissue Engineering(3 誌構成)の共同編集長である。TERMIS 産業委員会, the Pittsburgh Tissue Engineering Initiative 理事会、University of North Carolina Medical Foundationの各委員を務めている。Chapel Hill、University of North Carolina で、外科、生体工学、ビジネス学において、また NC State(North Carolina State University)で生体工学において、Wake Forest University医学部で再生医療学におい て兼任教授を務めている。 Antonios G. Mikos, PhD Rice University、生体工学、化学、生物分子工学の教授。組織工学の骨格とし て、またコントロールされたドラッグデリバリーのキャリアーとして、そして遺伝 子治療のための非ウイルスベクターとして利用するための新しいバイオマテリア ルの合成、加工、評価に焦点を当て研究している。460以上の出版物に執筆、25 の特許を持っている。American Association for the Advancement of Science, American Institute for Medical and Biological Engineering, Biomedical Engineering Society, Controlled Release Society, International Union of Societies for Biomaterials Science and Engineering, そしてTissue Engineering and Regenerative Medicine International Societyの特別研究員である。ま た、the National Academy of Engineering とthe Institute of Medicine of the National Academiesのメンバーでもある。3つのパートからなるTissue Engineering(3誌構成)の共同 編集長である。