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建築物の耐火設計について

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建築物の耐火設計について
Structural
Structural Engineering
Engineering Research
Research Center,
Center, Tokyo
Tokyo Institute
Institute of
of Technology
Technology
No.8
­ 建築物の耐火設計について ­
建築物理研究センター 助教授 安部武雄
我が国では、年間3万件を超す建築火災が発生し、耐火構造物の火災は約8,000件を占めている。
耐火構造物の火災は、
その多くが小火災のうちに消火されているため、
あまり認識されていない現状に
あるが、
これらの小火災が大火災に拡大しない保証はない。
火災を受けた建物は再使用の是非に関す
る調査・診断の後、
必要な補修・補強等の処置が施されるべきであるが、火災という特殊性ゆえ、
これら
の情報が公開されることは希である。
建築防耐火設計の目的は、火災から人命および財産を守るため、
耐火構造や防火材料で避難路や防火区画を構成して火災被害を低減することおよび消火活動の円
滑化である。
また、多くの火災事例の被害情報等を公開し、
火害診断や補修・補強に関する技術の研究
を推進し、
共通認識を持った技術により、
建物の安全性を確保することが重要である。
容積制限の採用と高さ制限の撤廃を骨子とする建築基準法の改正(1963年)
により、建築構造部
分の耐火性能を時間で級別する欧米と同様の体制が確立した。
この基準法改正を契機に鋼構造超高
層建築の時代が到来し、鋼構造超高層ビルが多数建設されてきた。
なお、耐火設計手法は仕様設計
であり、耐火上の特別な知識を必要とせず、意匠設計者や構造設計者が適宜行ってきた。一方、鉄筋
コンクリート造は、関東大震災および東京大空襲の市街地火災において焼け残った事実に基づき、建
築基準法上も、所定のかぶり厚さと断面寸法が確保されていれば『耐火構造』
と認められてきた。
それ
故、鉄筋コンクリートに関する研究は殆ど行われていなかったが、建設省総合技術開発プロジェクト
『
鉄筋コンクリート構造物の超軽量・超高層化技術の開発』(1988.4∼1993.3)で耐火性能に関する
研究が実施され、高強度コンクリートの爆裂現象が陽な形で認識されて以降、高強度・超高強度コン
クリートの耐火性に関する研究が増加してきた。
なお、
爆裂は普通強度コンクリートでも生じ、
加熱開始
後5∼30分間に集中し、
概ね60分後には終了する。
平成10年の法改正は、耐火構造では40年ぶりで鋼構造を中心に性能規定が導入され、耐火性能
を確認する簡易な検証法が提示された。
しかし、
コンクリート系構造物に限定しても解決しなければな
らない問題(特に、各種構造材料の熱的性質の把握等)
が多数残っている。
コンクリートは鉄筋や鋼材
を火災から防護する役割を担っているが、
爆裂が生じると断面が減少し、耐火被覆材としての期待され
た性能・条件を満たさなくなる。
近年、都市部では超高層集合住宅などが建設されるようになり、遮音性の確保や床振動の低減な
どの居住性および柱の断面寸法の低減等により設計基準強度60N/mm2を超える高強度コンクリ
ートが使用されている。
しかし、内部組織が緻密な高強度コンクリートは火災加熱による爆裂現象が
激しく起こることが良く知られている。
爆裂メカニズムを説明する有力な説として、熱応力説や水蒸気圧説などがある。水蒸気圧説を主張
する研究者等は、
ポリプロピレン繊維(PP)の溶融による空洞の形成が水蒸気の逃げ道となることを期
待し、PP混入試験体の耐火加熱試験を行い、爆裂防止効果があること確認している。
また、一部の研
究者等による低熱ポルトランドセメントを用いると爆裂が生じないという報告もある。
しかし、爆裂防
止効果のメカニズムの詳細は不明である。
写真は、骨材に石英片岩を用いた圧縮強度150N/mm2の標準試験体(3体)
で1℃/分の昇温中
に300℃近傍の温度で突然破壊した例である。石英系骨材は変態し、体膨張により崩壊を生じること
が知られており、爆裂防止には骨材の選択にも十分な配慮が必要なことを示している。
耐震分野では、
免震・制振構造の新技術が駆使されているが
、
柱断面寸法の低減等は火災時に不利になるので配慮が必要
である。
また、
再使用する火害建物は、
補修・補強後の耐震性
の確保に十分配慮しなければならない。
最後に、
『また、法改正は40年先か?』
との耐火関係諸氏
の嘆きの声が聞こえる。
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