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詳細 - 日本心理学会
日心第70回大会(2006) 自 己 の 構 造 ( 試論その 12 ) -自己の本質について:我とは何ぞや- 稲松信雄 (東邦大学医学部) Key words: 自己、 霊性、 根源的 Energy [霊性問題]:WHO の健康の定義から説明したいと思う、現 明できないし、如何なる科学機器をもちいようとも感覚し得 在の定義は 1945 に制定されて、改定問題が起きたのは 1999 ないので、科学としての心理学では仮説としてしか取り上げ である。当時の東京新聞には、世界保健機関で 51 年ぶりに られない。これが瞑想や座禅行による把握しかないのである。 は、“Health is a 天風師は、まことや、この力(神、仏、宇宙創造物、造物 dynamic state of complete physical, mental, spiritual and 主、宇宙霊 Something Great)たるものは宇宙本体たる social well-being and not merely the absence of disease or 宇宙霊より沸き出るヴリル(vital magnetism)の噴泉にして、 infirmity.”以前と違うのは dynamic と spiritual が加わっ また人の命の価値の本源である、としてし、そして その中 ただけである。そこで Spiritual の言葉、どう訳す 「健康」 にあらゆる芸術 一切の創作並びに発見の動機と端緒とが、 の定義に魂込める?と各新聞は戸惑ったわけである。新聞ば 秘め隠されているのである。と結ばれている。仏教の空、無 かりではなく厚生省が一番頭を悩ませたのである。それほど または虚空の世界とは Nothingness の世界ではなく根源的 この Spiritual は問題となった。 健康の定義を見直すとある。改訂の訳 この改定にあたっては、宗教各派を代表するメンバーが加 Energy の充満した世界なのではないかと推察される 。 Smuts,J.は Holism and Evolution で以下のように宇宙の本 わっている。イスラム教、ユダヤ教、キリスト教、ヒンズー 体を描写している。“この宇宙は思慮分別のない静的で無気 教、さらに日本からの代表は、仏教に造詣が深い京都大学の 力な構成体ではない、宇宙はなまけものではない、エネルギ 数学者山口昌哉氏である。彼は仏教の特集号で次のように述 ッシュに力動的で、限りなく創造的なものである。それはよ べている。人間と言うものは物質と精神から成り立っている。 り高次に、全てを取り込んで、体系化、組織化、秩序化して しかもこの二つは絶えず矛盾するものである。この二つを背 いる。この全宇宙の発展過程は、進化以外の何物でもない、 後から操っているものが霊性(Spirituality)である。この 時と共に開示しより高次な統合体へと発展し続けている。今 ように人間が生きてゆくためには、どうしても、物質と精神 や自然の全進化は、どこでも休むことなくより高次へ、高次 とを矛盾したたまにしておくことができない。霊性とは生き へと生成発展する統一体である。それは人間の中にも、成長 て行く為に欠くことができないものなのである。この見解は や発達として示されている。 ”と 鈴木大拙の「日本的霊性」から引用したと語っている。 [自我本質の自覚]:心が霊的境地に置かれて居る霊的階級 [Mental v.s. Spiritual] :中村天風財団の天風師は悟りとは、 者は、本能階級者や理性階級者と異なり、心や肉体を「自己 “真我(自己を自己たらしめている存在)が自分なりと思う =われ」というものの活きるのに必要な方便を行う要具とし ことがその第一であると同時に、いわゆる真我が自分だとい て行使し、決してこれを自己そのものとは誤認してない。 うのは、肉体が自分じゃなくして、目に見えない霊魂とうい またそれでは真我と心の関係は? うものが自分で、そうしてそれが自分の一切を動かしている 常識的に簡単にその説明を解決することはすこぶる困難で だと、こう思うところに本当の悟りがあると指摘している。 ” ある。しかし真我というものは、自分自身の存在を、自己意 そこで 肉体と真我の関係ほど 物質と心の関係について以下のように分類してい 識で自覚する以前から、厳として実在していたという大きな る。人間の根源にあるのが物質心(臓器・器官・細胞・遺伝 事実に想到する事である。 即ち判りやすくいえば、諸君が 子・分子・原子・・・・・そこに血液 白血球 リンパ球 顆 諸君の真我に付属している心や肉体の存在を意識的に自覚 粒球 する以前から、諸君というものが、既に立派に存在していた ヘモグロビンその他神経伝達物資等:明瞭に心なるも のは存在しない)→ 植物心(抹消の神経 とくに自律神 と言うことを思量するからである。 経:これも心として明確に意識できるものではないが、無意 [纏め]:横山大観は童女の姿を[無我]と命名している、 識の世界ではその関係はかなり明瞭にされている)→ しかし実際は未我である、さらに有我、無我となる無我の背 動物心(本能、感情等)→ 人間心 (理性心、霊性心)、 後に真我が厳として存在している。我は意識された自己であ ここでの区分では、Mental は理性までの範疇である 霊性 る。感覚、本能、欲望、理性心、霊性心も意識状態、その背 心は霊魂を中心に発動するも。ここまでの記載で霊性心でも 後に真我が厳として存在している。生後三年か四年して意識 真我に付随する心の作用であって我なるものの本質ではな 状態が芽生える、しかしそれ以前から厳として真我は存在し い。理性を超えた霊性から発動される霊性心(Spirituality) ていたのである。 を WHO の定義として依然として認めていないのは時代錯 ① 中村天風 研心抄 誤に等しいと考えられる。 ② 中村天風 安定打座考抄 [自己の構造]:上記の内容は心と身体との関係について言 ③ Smuts,J. Holism And Evolution 及した。人間本来は霊魂を中心に心と体が統一されているの ④ 山口昌哉 仏教 NO45 が本来の人間の姿である。ただこれは(霊魂)は科学的に証 引用・参考文献 INAMATSU nobuo