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産学連携のいくつかの制度的・ 組織的問題点
産学連携のいくつかの制度的・ 組織的問題点 青木昌彦 スタンフォード大学経済学部教授 独立行政法人 経済産業研究所所長 1 1. 論じたい問題点 大学は、ベンチャー企業のインキュベーター 機能を果たすべきか? キャンパス上の産業共同研究はどうある べきか? 大学・産学連携の活性化は、公務員型の 弾力的運用で可能か? 2 2. 時代の背景-モジュール化 IT革命の本当のインパクトは、単なるIT産業という新産業の勃興に あるのではない。それは人と人との関係、業務(タスク)と業務の間の 関係、組織と組織の間の関係を劇的に変えつつある。すなわち産業 組織一般の革新的変化が起こりつつある。 キーワード:モジュール化 複雑なシステムが半自律的なモジュールに分解され、逆に革新的モ ジュールの再結合によってシステムが不断に再構成されていく傾向。 (レゴの類推) 産学関係の変化もそうした観点からとらえられるべきである。大学学 部・学科・研究室(モジュール)と企業(モジュール)の連携によって革 新的なイノベーション・システムを形成する。 添付資料:「モジュール化」 3 3. なぜモジュール化か-分離と再結合 システムの複雑化 モジュールの情報獲得・処理能力の増大、専門性による情報効率性 モジュール単位での責任明確化(ドンブリ勘定によるモラルハザード の防止) 各モジュール内部における重複した実験、その成果の中から最善の モジュールを事後的に選択・結合する事によってシステム革新を不 断に行う(オプションバリューの増大。トーナメントによるインセンティ ブ効果) モジュールのインターフェース機能を担う様々な仲介組織の創発(ベン チャーキャピタル、ヘッドハンター、インキュベーター、など) 1990年代に日本は逆のことをしてきた。 大企業によるワンセット自前主義の維持 統合による不良債権の隠蔽、問題の先送り 過剰雇用の維持 4 4. 産学連携問題への含意 研究と商業化のモジュール化 大学は、まず基礎的研究の能力を高めるべき。キャンパ ス上における、産学協同の基礎研究の推進。 インキュベーター機能は大学周辺の目利きのインキュベー ター、ベンチャーキャピタル・ファンドに委託。(アメリカの 一流のリサーチユニバーシティはこのような機能は果た していない。) 大学委託研究。オーバーヘッド・コスト、大学院学生のサ ポート 大学・仲介機関・産業の間の流動性の確保 5 5. 公務員制度の弾力的運用で十分か。 優秀人材の競争的優遇がかぎ 雇用契約の多様化(期間、報酬、研究条件、 休職、兼職)、時間との競争 テニュア制度によるセーフティネット 添付資料:「なぜ非公務員か」 6 END 7