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方剤④ 附子剤 2007年12月4日(火)
方剤④ 附子剤 2007年12月4日(火) 琉球大学中国医学研究会 當山 千巌・三枝 正彦 1 附子剤 • 構成生薬の一つに附子(ぶし)が入っているも のを総称して附子剤という。 附子 • キンポウゲ科、トリカブトの塊根で、漢方生薬 の中で最も毒性が強い。 • 性味:味は辛・甘、性は熱・有毒 2 附子の薬効 • 新陳代謝亢進作用 • 鎮痛作用 • 利尿・強心作用 3 漢方薬理的な位置づけ • 虚証、寒証の温熱薬(補陽薬) • 鎮痛薬 • 利水、強心薬 4 附子剤の使用目標 • • • • 体力の低下 四肢・体幹の冷えや痛み 尿量減少 浮腫 5 中毒症状 実証・熱証の状態(体力が充実、赤ら顔、のぼ せが強い)に用いると、附子の中毒症状が現れ る可能性が高くなる。 • 舌のしびれ • 動悸 • 悪心や嘔吐 ↓ 実証や熱証に附子剤は禁忌である。 6 使用量 • 中毒を避けるため、過量にならないようにす る • 少量から始めて効果を見ながら徐々に増量 していく • 補益薬の作用を強める:1.5~5.0g • 強心、冷え、止痛:5.0~9.0g • 虚脱、ショック時の緊急:18~24g 7 附子剤の構成生薬〈1〉 附子 ○ 朮 +葛根湯(葛根 麻黄 桂皮 芍 薬 大棗 生姜 甘草) ○ 朮 +桂皮湯(桂皮 芍薬 大棗 生 桂皮加朮附湯 姜 甘草) ○ 茯苓 朮 +桂皮湯(桂皮 芍薬 大 桂皮加苓朮附湯 棗 生姜 甘草) 当帰芍薬散加附子 ○ +当帰芍薬湯(当帰 芍薬 川芎 朮 茯苓 沢瀉) ○ +人参湯(人参 朮 乾姜 甘草) 附子理中湯 葛根加朮附湯 8 附子剤の構成生薬〈2〉 附子 桂皮芍薬知母湯 ○ 桂皮 麻黄 知母 防風 芍薬 朮 生姜 甘 草 芍薬甘草附子湯 ○ 芍薬 甘草 真武湯 ○ 茯苓 芍薬 朮 生姜 大防風湯 ○ 当帰 芍薬 川芎 熟地黄 人参 黄者 防風 朮 羗活 杜仲 牛膝 大棗 乾姜 甘草 麻黄附子細辛湯 ○ 麻黄 細辛 牛車腎気丸 ○ 桂皮 地黄 山茱萸 山草 茯苓 沢瀉 牡丹 皮 牛膝 車前子 八味地黄丸 ○ 桂皮 地黄 山茱萸 山草 茯苓 沢瀉 牡丹 皮 9 附子と配合される生薬 • 附子+乾姜 作用増強の働きで脾と腎を温め、陽気の虚脱による ショック、循環不全、四肢厥冷、水様性下痢に用いる。 • 附子+桂皮 経絡を温めて陽気を通じ、寒邪を除いて冷えや痛み を止める。陽虚症のものが更に風寒湿の邪をうけて起 こす極度の冷え、四肢の疼痛、神経痛、リウマチ、関 節痛に用いる。 10 • 附子+麻黄 温経通脈、助陽散寒の作用により、風寒による痺痛、 陽虚で邪気の侵襲をうけて起きる浮腫に用いる。 • 附子+人参 気虚を補い、陽を回復させる効能を高め、寒邪によ る胃腸機能の低下、腹痛、下痢に用いる。 • 附子+茯苓 寒邪による新陳代謝機能低下によって生じる浮腫や 小便不利に用いる。 11 葛根加朮附湯 • 比較的体力のある人の感冒や肩こり・上半身 の神経痛など、炎症性疾患や疼痛性疾患に は葛根湯が用いられるが、冷えと痛みが強い 場合には、葛根加朮附湯がよいことがある。 葛根湯と桂皮加朮附湯の合方で代用するこ ともできる。必要に応じて適宜、加工附子製 剤を追加・増量する。 • 適応症:肩こり、上半身の神経痛 15 桂皮加朮附湯、桂皮加苓朮附湯 • 体力の低下した冷え症体質の人の関節痛や 神経痛など、四肢・体幹の疼痛性疾患に用い る。 • 適応症:関節痛、神経痛 16 当帰芍薬散加附子 • 比較的体力の低下した、冷え症で貧血傾向 を有する女性の、月経不順や月経痛、不定 愁訴などに用いられる当帰芍薬散に、浮腫や 冷えの程度に応じて附子を加えるとよいこと が多い。当帰芍薬散と加工附子製剤の併用 で代用可能である。 • 適応症:貧血、月経不順、月経困難症、更年 期障害など 17 附子理中湯 • 体力の低下した冷え症の人で、食欲不振、胃部のも たれ感、下痢など、慢性消化器障害があり、尿が希 薄で量が多い、口中に薄い唾液がたまるなどの症 状を伴う場合には理中湯(人参湯)がよく用いられる が、冷えや下痢が激しい場合には、附子が加わった 附子理中湯が適する。腹部が軟弱無力が振水音が あることを目標にする。人参湯と加工附子製剤の併 用で代用可能である。 • 適応症:急性・慢性胃腸炎、胃・十二指腸潰瘍、悪 阻、低血圧症など 18 桂皮芍薬知母湯 • 慢性関節疾患で、とくに膝関節の腫脹と熱感 があり、骨破壊もあるような場合に用いる。 • 適応症:関節リウマチ、神経痛 19 芍薬甘草附子湯 • 骨格筋および平滑筋の急激な痙攣性疼痛に は芍薬甘草湯がきわめて有効であるが、冷 えと痛みが激しい場合には、附子が加わった 本処方が用いられる。芍薬甘草湯と加工附 子製剤の併用で代用可能である。 • 適応症:神経痛、関節痛、肩こり、腓腹筋痙 攣(こむら返り)など 20 真武湯 • 体力が低下した虚弱な人の、下痢や腹痛な どの消火器症状に対して、あるいは普段から そういう傾向のある体質の改善薬として用い る。また、前記の消化器症状がある体質の、 めまいや身体動揺感、心悸亢進などに有効 なことがある。 • 適応症:消化器の諸疾患、神経症、リウマチ 性疾患、皮膚疾患など 21 大防風湯 • 身体が冷え、顔色が不良、体力が著しく低下した人 の関節痛疾患に用いる。炎症疾患が急性期を過ぎ、 発赤や熱感がほとんど消失した慢性期に用いるの が一般的である。痛みを抑える目的以上に、全身状 態を改善させることを目的とすることが多い。参耆 剤の一つでもあり、補血作用がある四物湯(当帰、 芍薬、地黄、川芎)も含まれていることを考えれば、 使用目標が明確になる。 • 適応症:関節リウマチ、慢性関節炎、痛風 22 麻黄附子細辛湯 • 悪寒が強い上気道疾患の初期に用いる。発 熱の有無にかかわらず、あくまでも悪寒に注 目すべきで、脈は沈細が特徴である。高齢者 や日頃から虚弱で冷え症体質の人の感冒の 初期には、このような症状になりやすい。 • 適応症:感冒、気管支炎など 23 牛車腎気丸 • 八味地黄丸に、尿路系の症状を緩和すると いわれている牛膝(下半身の筋肉を強める)、 車前子(利尿作用)が加わったものである。し たがって、基本的には八味地黄丸を用いるべ き対象の状態で、とくに泌尿器系の訴えが強 いものによいとされている。 • 適応症:腰痛、坐骨神経痛、膀胱炎、前立腺 肥大、糖尿病、高血圧症、腎炎、ネフローゼ、 白内障、インポテンスなど 24 八味地黄丸 • 腰部や下肢の疲労や倦怠、脱力感、痛みや しびれ、口渇や(とくに夜間の)頻尿、下肢の 浮腫を目標に用いる。下腹正中部(臍下)が軟 弱無力(小腹不仁)であることも目標の一つに する。これらは高齢者によくみられる症状や 所見で、中年以降の諸疾患に頻用される処 方であるのは、このためである。 • 適応症:糖尿病、腰痛、坐骨神経痛、膀胱炎、 前立腺肥大、高血圧症、インポテンスなど 25 参考文献 『入門漢方医学』 日本東洋医学会学術教育委員会 『〔図解〕 中医方剤マニュアル』 東洋学術出版社 ご静聴ありがとうございました 26