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GISの新たな展開-GPS技術を利用したリアルタイム
GIS連続セミナー 講演概要 ●第2部「GIS新たな展開 − GPS技術を利用したリアルタイムサービス」 国土空間データ基盤推進協議会事務局長 今井 修氏 GISの新たな展開 ∼キーワードは「情報行動」∼ 私からは、新しいGISについて、社会的ニーズとし てどういうものがあるのかについてお話をしたいと思い ます。時間的変化や3次元データを使ったシミュレーシ ョン等、それはGISだけの話ではなく、広く社会全体 の動きの中から生まれているということです。 2000 年に入って私たちの暮らしを支える基本的な枠 組みが、ネットワークの社会へと移行してきたと言われ ます。この変化は今までのGISと大分様相が違います。 それは「e-Japan 重点計画」の中にITSと並んでGI Sが取り上げられているということ、また家庭の中も e-Life というように、様々な電子化あるいは家電の情報 化という流れと一緒になって新しいGISの展開が考えられ始めていること、等です。そこでのGISの関 係は「情報行動」というキーワードで捉えられます。これは私たちの行動は情報に基づいており、その行動 に必要な情報とは場所を示す情報であり、その意味でGISは我々の生活にこれからも非常に密接に関係し、 代表的な例として緊急時の情報と行動との関係が上げられます。緊急時にGISを利用して、迅速に正確な 情報を提供することにより、行動の混乱をさけることができます。私は、ネットワーク化された社会におい て、いつでもどこでも必要なときに場所を示す情報が手に入るということがますます重要になると思ってお ります。 GISのマーケットと社会的背景 ネットワークでつながれた社会の中では 様々な空間データが流通することによって、 多様なマーケットが立ち上がるのではないか と考えられます。試算では 1999 年に約 6,800 億円のマーケットが、2010 年には約6兆円に なるという数字です。この一番大きいマーケ ットは民間です。1999 年には約 2,500 億円で すが、2010 年には約3兆 1,000 億円が可能で あろうと見ています。それ以外にカーナビの マーケットも約 2,500 億円が約1兆円まで伸 びるのではないかとの試算結果です。携帯電 話は現在はほとんどゼロに近いですが、これ も約 9,700 億円のマーケットになるだろうと 見ています。一方、国及び地方公共団体は、 現在の 2,200 億円が、2010 年でも約 3,600 億 円までしか伸びないという数字になっていま す。現在、我々が目にしている市場の中心は 地方公共団体で、加えてカーナビゲーション で個人が利用するという、この二つのマーケ ットしか見えていないと思います。 しかし、私たちが試算した民間の3兆数千 GISのビジョンと市場予測 (GIS 官民推進協議会 H11 年度とりまとめ) 6800 億円から約 6 兆円へ 70000 60000 国業務における市場 50000 自治体業務における市場 40000 民間業務における市場 30000 カーナビの市場 携帯端末の市場 20000 家庭での市場 10000 0 1999年 2005年 2010年 億円のマーケットは、大きくは四つぐらいにカテゴリー分けできます。 一番使われるのは企業内での利用。設備・ビルの管理、企業の顧客管理、これから起こってくるエレクト リック・コマースでの取引先管理といったところにGISが利用されるであろうと思っています。そのほか、 営業マンや保守点検要員の管理も資源管理の一つとして見ています。また、従来から行われている業務の電 子化も引き続き拡大していくと見ている業務です。 二つ目が出店・拠点立地等の計画業務での利用。これはエリアマーケティングでも随分利用されています が、基本的には非常に小さい、あるいはニッチなマーケットであろうかと思います。 三つ目は、エリアマーケティングの一つのバリエーションで、電子チラシ・電子看板と言われるタイプの 情報提供の中にGISが使われてくるというものです。また、最近話題の配車とか配送計画、例えばタクシ ーの配車支援とかケアセンターの巡回バスサービスなどがあります。 それから四つ目が非常に新しいもので、把握された位置に基づく営業支援業務という分野です。サービス マンの位置把握に現在はPHSが使われていますが、個人対象になると、もっと正確な位置情報が必要にな ります。最近は、徘徊老人、子供、あるいは車の位置を把握するサービスもスタートしており、配達小荷物 の位置情報提供サービスなども行われています。さらにCTI、コールセンター等でのGIS利用は数多く 出てくると思います。これはCRMと言いますが、顧客サービスの中核に利用が発展していくだろうと想像 しています。 こうした結果、例えば年間 10 万円程度の費用でサービスが受けられると、これが中小企業の方々に広く展 開し、家庭や個人向けにも、もう少しきめ細かいサービスとして利用され、コストが下がり利用者が増える と想定したわけです。様々な形で動いているネットワーク社会そのものが拡大・進化することによって、行 動に結びつくサービスという意味のGIS利用が広がっていくと考えています。 地域ポータルサイトとGIS もう一つ、将来大きな可能性を秘めているテーマが地域ポータルサイトです。 これはアメリカの方が先で、 「デジタル・シティ・プロジェクト」というものがあります。ロサンゼルスの 例ですが、毎日のトピック、娯楽、地域コミュニティ、ショッピング、今やっている映画など、こうした情 報がサイトにあります。これ以外にも幾つかのネットワーク化された全米規模の地域ポータルサイトがたく さんあります。地域ポータルサイトもショッピングモールと同様、大きいほどいいのかもしれませんが、可 能性はまだ始まったばか りと私は見ています。 わが国でも行政の例と して豊中市があります。 地域ポータルサイト( 豊中市提供) 豊中市はいろいろな意味 で地図情報の利用が進ん 防災情報 都市計画 でいる市ですが、この地 域ポータルサイトでは転 入者をターゲットとして、 必要とするであろう情報 として、二、三百メート ルの範囲で地図を表現し、 公共施設を表示するとい うことを第1に考えたそ 文化財情報 うです。それ以外に様々 な市民サービス向け情報 があり、防災、文化財、 都市計画あるいは福祉ボ ランティアがどこにいる かといった情報を提供し ています。 こうした公共的サービスがこれからの地域サービスの一つの重要なコンテンツになるだろうと考えていま す。地域ポータルサイトは、基本的には家庭における様々な問題解決を行おうという趣旨のものです。残念 なことに、このサイトは現在、行政が提供するサイトと民間が提供するサイトが完全に分かれております。 その結果、住民にとって本当に必要な情報がこの中から十分取れないという問題があります。 地域ポータルサイトの可能性のもう一つのキーワードはリアルタイムの地域情報です。リアルタイムの地 域情報の一つとして横浜市の高密度強震計ネットワークというサイトがあります。地震、強震計の情報を5 分ごとにホームページで地図上に出しています。それと同時に、別のページでは、南関東地震を想定した地 震マップというものを出しています。それぞれ見比べてみれば、自分の場所がどういうところにあるか、あ るいは地震の際にはどういうことが周りで起こっているか一目瞭然でわかるというものです。これはまさに リアルタイムの情報がネット上に流れる非常に効果的な住民サービスの例で、気象台が提供する情報を民間 が二次利用するサービスも代表的な例だと思います。また、交通情報についても道路交通法を改正して交通 情報を自由に使えるという時代がもうすぐ来そうですし、河川情報、道路工事情報、民間では駐車場の空き 情報等が出ており、これから多様な二次利用の予測サービスに使えるはずです。行政が予測サービスに踏み 出せないところを民間が多様なサービスを提供するという形は十分あり得るだろうと思います。 こうした情報はいろいろなデバイスで利用することを想定すべきだろうと思っています。携帯電話ですべ てが成り立つのではなく、場所に応じた様々なデバイスが我々の周りにでき上がってくると思います。 情報デバイスの変化とGIS利用の新形態 最近、情報家電の世界が急速に動いています。双方向テレビばかりでなく、我々の生活を支える様々なデ バイスごとに情報の提供の仕方あるいは情報の中身が違うと考えれば、情報家電は非常に大きな可能性を持 っているように思います。目的地までのルーティングを情報家電が扱うのではなく、自分の住んでいる周り の情報を身近に出すデバイスとして考えるとか、いろいろな機器と情報の中身がどんどん特化していく可能 性を持っているのです。つまり、携帯電話も数千億円のマーケットになるだろうが、それ以外の企業サイド と同時に家庭におけるGISの使い方として、例えば、冷蔵庫の壁面に地域情報あるいは電子チラシといっ たものが提供されると、社会的ニーズからは決して無視できないと思います。 そもそもGISは明らかに紙で書かれたものを電子化して活用するところから始まり、そしてカーナビが 代表例ですが、位置情報サービスで新しい力を得たと思います。一方、私は今、地域ポータルサイトという 流れにより新しい力を持つものであると目をつけています。それらが徐々にネットワーク社会でつながって くると、いつでもどこでも利用可能な姿になっていくのではないかと思います。そのさきがけがもう始まっ ていて、例えばセコムがやっているのは、情報機器を持っている人を探す・駆けつけるというサービスで、 この前、新幹線の中で盗難された宝石を見つけました。12 月からはauがGPS内臓の携帯電話を始めまし た。ホームページを使って地図情報配信サービスをしている各企業は、ほとんどすべて最終的には携帯電話 を使ったサービスとセットで考えています。一つのプラットフォームが決まると、そこに各社がいろいろな サービスを打ち込んでいきます。 こういうものに一般の利用者がお金を払うだろうかという問題ですが、ある会社が先行的にドコモで地図 情報配信サービスをスタートして約1年、月額 300 円ですが、予想以上に払うことがわかった。それがわか れば、今度はサービスの内容の競争に行くだろうと思います。東急のバスナビゲーションあるいは緊急通報 サービスというHELPNETで行われているサービス等です。これらの非常に身近な個人向けサービスの 特徴は、GPS利用のリアルタイムサービスにあります。これらは個人向けサービスに限らず、物流でもト ラックにGPSを置いて、トラックの利用率の向上、配達時間の精緻化等の業務効率化に使うという事例は 既にたくさん出ています。 GIS利用拡大の課題は環境整備 情報家電は 2005 年か 2006 年ぐらいが入り口になるだろうと言われています。家庭の中で、机の上、台所 (冷蔵庫)、あるいは車、居間(テレビ)、個人(携帯電話)がつながっていくと、いろいろなデバイスを利 用して移動していくのではないかと思います。それはこれまで言われた「ユビキダス・ネットワーク」とい う社会で、その中で位置情報は大 空間情報の発生と流通 きな役割を果たすはずです。 しかし、必ずしもGISがすべ てを解決するわけではなく、環境 の問題が非常に大きいと思います。 つまり、GISを新しいビジネス として展開するには、幾つかの環 車の情報サービス 境を整える必要があります。 携帯電話 第1は、あらゆるところで位置 情報の取得を可能にすること。こ 地域ポータルサイト れは地下街、ビルの中といった不 感地帯をなくすことで、新しいサ ービスが可能になります。例えば 情報家電 医療や福祉サービスの中でも使え るとか、障害者支援でもより深く オンラインシステム 個人・家庭 街角の情報掲示板 使うようになります。 第 2 には、情報家電の場合、個々 の企業は自社製品のプロトコル統一に取り組んでいますが、社会的にデバイスのインターフェイスをそろえ ていく必要があります。また、あらゆるところにIPアドレスがついてくるということも当然必要になるで しょう。その上で初めてGISそのものの問題が出てくると思います。 多様で質の高いコンテンツを提供する必要がありますが、ベースをどうするのかについては、この6年間 ぐらい国土空間データ基盤や電子基準点といったものを国は整備しており、自治体では統合型GISのよう な形のサービスが考えられてきましたが、全国をこれまで以上のスピードで整備するためには民間も参加し て新しいサービスを行っていくことも必要であろうし、さらに、その上に載せるコンテンツの提供体制、例 えば観光情報では観光協会など様々な組織の協力も必要だろうと思います。 環境整備そのものも大変かも しれませんが、これ自体は電子 政府の動きにあわせ整備が進め まとめ られるでしょうが、体制確立は もっと大変かもしれません。し 目指す姿と課題 かし、私たちが目指す新しいG ISを築くということは、この • あらゆる所で空間情報(位置情報)が発生 ような体制を確立しいろいろな • 空間情報が流通し、あらゆる所で利用可能に 分野の方々の協力と、その中で 相互にデータを流通させるため に具体的な(デジュール、ある w あらゆる所で位置情報が取得可能に いはデファクトの)プロトコル w 流通のための互いのプロトコルの統一 の統一といったものを避けては w あらゆる装置にIPアドレス 通れないと思いますし、そうい うことが必ずGISにおける新 たな産業の発展につながるとい w 多様で品質の高いコンテンツ提供組織の確立 うことを強く思っております。 リアルタイム ユビキダス・ネットワーク ビジョン 環 境 体 制 以 上 w 多様なサービス提供体制(民間、行政)の発展