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計算機シミュレーションによるドレープ形状のノード数
Nara Women's University Digital Information Repository Title 計算機シミュレーションによるドレープ形状のノード数に関する基 礎的研究 : 内容の要旨および審査の結果の要旨 Author(s) 李, 賢眞; 今岡, 春樹; 諸岡, 英雄; 前川, 昌子; 上江洌, 達也 Citation 博士学位論文 内容の要旨および審査の結果の要旨, vol.22, pp.41-44 Issue Date 2005-08 Description 博士(学術),博課第254号,平成17年3月24日授与 URL http://hdl.handle.net/10935/1234 Textversion publisher This document is downloaded at: 2017-03-28T23:36:04Z http://nwudir.lib.nara-w.ac.jp/dspace 氏 名 ( 本 籍) 李 学 位 の 種 類 博士 ( 学術) 学 位 記 番 号 博課第 2 5 4 号 学位授与年月 日 平成 1 7 年 3月2 4日 学位授与 の要件 学位規則第 4条第 1項該 当 賢寅 ( 大韓民国) 人間文化研究科 論 文 題 目 計算機 シ ミュ レー シ ョンによ る ドレープ形状 の ノー ド数 に関す る基礎 的研究 論文審査委員 ( 委員長) 教授 今 岡 春 樹 教授 諸 岡 英 雄 教授 前 川 昌 子 教授 上江例 達 也 論文 内容 の要 旨 本論文 は、衣服 の審美性 に関連す る布 の ドレープ性 ( 襲の出来具合) について、従来 あいまいなま ま残 されていたノー ド数 ( 嚢の数) に表 出す る多安定性 に関す る基礎的知見を得 ることを目的 と して いる。 具体的には計算機 シ ミュ レ- ション実験 によ りサイズー物性空間でのノー ド数 に関す る相図を 作成 し、 その応用方法 を示 した ものである。 ドレープ形状 の研究 は長 い歴史 を持っが、 その解析 は困難で、近年 にな り、有限要素法 などの近似 計算である衣服形状予測 システムを用 いた シ ミュレー ション実験が可能 とな って きた。 この予測 シス テムを用 いることで、 ドレープ形状の多安定性 に関す る新 たな知見を得 ることがで きる。 本論文 は 5 章か ら構成 され、 ドレープ形状のノー ド数 に着 目し、形状予測 システムを用 いた研究を展開 している。 第 1章では、本研究 の目的 と意義、本研究 に関連す る国内外 の先行研究を述べ、本研究の位置づ け を行 な っている。 特 に、同 じ素材で同 じ型紙 の布で もノー ド数 の異 なる ドレープ形状がで きるとい う 実験事実 をふまえ、 ノー ド数 と素材 ・型紙 の関係 を明 らかにす ることが、素材 の選定 とい う衣服設計 上必須 なプ ロセスを支援す るための重要課題であることを指摘 している。 さ らに、布 と布が接触す る 同体接触問題 を含 めて検討す ることが必要であると指摘 している。 第 2章では、 3- 6までのノー ド数 を持っ ドレープ形状が安定 して存在で きるパ ラメータ領域 を明 らかに している。 パ ラメータは素材 を代表す る曲げ長 さと型紙 を代表す る支持台半径 ・ドレープ丈で ある。曲げ長 さは、曲げ剛性 を重量で除 した値 の立方根で、従来研究か ら ドレープ形状 に関与す る素 材特性 として最 も重要 な物性量であることが分か っている。 支持台半径 を固定 し、曲げ長 さを現実の ⊥ 布 の値を参照 し1 5 種類、 ドレープ丈を 5種類用いている。 3- 6までの 4種類のノー ド数を持つ初期形状を用 いて シ ミュレーションを行 い ( 合計3 0 0 種類)、 そのノー ド数で安定す るか否かの判定を行 った結果、多安定現象の存在を確認 し、パ ラメータ領域で のノー ド数 に関す る相図を作成 している。 また、支持台半径を変化 させた場合の相似則を示 し、得 ら れた相図の適用範囲が広 いことを明 らかに している。 さらに、 ノー ドとノー ドが接触す るか否かの判 定を行 ない、同 じノー ド数が可能なパ ラメータ領域 は、接触領域 と非接触領域 に明確 に二分 され る構 造 を持 っていることを明 らかに している。 第 3章では、 ノー ド数別、接触 ・非接触別のヘムライン ( 裾線)の回帰式を作成 している。 空間曲 面である ドレープ形状を代表するのが、空間曲線であるヘムラインであるとし、ヘムラインの記述法 と して円柱座標系におけるフーリエ係数を用いている。回帰式 はフ- リエ係数を目的変数 とし、曲げ長 さ、 支持台半径、 ドレープ丈を説明変数 と想定 している。 相似形 に対する汎用性を考え、最終的に目的変 数 と説明変数をともに無次元量へと改良 している。曲げ長 さと ドレープ丈を零 と無限大に近づけた場合 の思考実験 により、非線形な関数関係を想定 し、非線形重回帰分析 により精度のよい回帰式を求めて いる。 この結果、一つのシミュレーションに要する平均 5分の時間を大幅に削減でき、任意のパ ラメー タに対応する予測形状の高速表示を可能にしている。また、接触 と非接触では解 くべき力学方程式が異 なると考え られるため、それぞれ異なった回帰式を作成 している。 その根拠を示すために、接触 と非接 触の境界で、二つの回帰式 は連続 しているが滑 らかには連続 していないことを示 している。 第 4章では、ヘムライ ンか ら ドレープ形状を生成す るための線形補間法を曲面の曲率を用 いて評価 している。支持台 と-ムライ ンの線形補間によ り生成 した ドレープ形状 とシ ミュレーションで得 られ た ドレープ形状を比較 している。比較の試料 としてノー ド数 3- 6で接触 と非接触の合計 8試料を用 いている。曲面 の曲率 として、平均曲率 とガウスの曲率を用いている。 ドレープ形状の表現方法 は三 角形パ ッチによる多面体であるため、多面体 における平均曲率 とガウスの曲率を定義 し、 カラー表示 による視覚化を可能 に している。 コンピュータ ・グラフィックスの シェーデ ィングで表示す ると、全 体的には比較的良い一致を示 しているが、詳細 に分析す ると、平均曲率では良い一致を示すがガウス の曲率では良い一致が見 られないことを指摘 している。 この原因 として、線形補間により生成 され る 曲面が線織面であるため正のガウスの曲率を生成できないことを示 し、 ガウスの曲率を一致 させ る方 向で 2次補間法を用いるなどの改良の余地があることを指摘 している0 第 5章では、各章で得 られた結果の総括を行 い、今後の課題を述べている。 本研究成果の応用 とし て、素材の選定を支援す る計算機 システムの構想を述べている。 まず、 ノー ド数を指定す ると、その ノー ド数が存在可能 なパ ラメータ領域か ら幾っかの ドレープ形状が表示 される。 ドレープ丈や形状の 好みによりその中の一つを選択す ると、素材を示す曲げ長 さが得 られるシステムである。 本研究 によ り、 この システム構築のための基礎的な知見が得 られたと結論づ けている。 二 二 論文審 査 の結 果 の要 旨 近年、着装 シ ミュレーションと呼ばれ る衣服形状予測 システムが開発 されて きた。 これは、型紙、 人体形状、布の力学特性、色柄を入力 し、着装 した衣服の形状を出力す るシステムである。 型紙、人 体、色柄 は視覚的に判断で きる入力項 目である。一方、重量、曲げ剛性 などの力学特性 は数値で入力 され るため、一般のユーザーにとってその大 きさを決定す ることは困難である。 典型的な題材 につい ての形状を提示す ることで力学特性 を視覚化できれば この問題 は解決す る。本研究 はこのような問題 意識の もとに、布の ドレープ形状 ( 嚢の形状)を題材 とし、計算機 シミュレーション実験 によ り布の 力学特性 と形状 との関係を明 らかにす ることを目的 として行われたものである。円盤状の支持台 ( 支 持台半径で決 まる) に、それより ドレープ丈分大 きい半径の布を載せたときの形状が ドレープ形状で、 資料の審美性評価 に多用 されている。 この研究を遂行す るにあたって注意すべ き現象 として、多安定 性がある。 同 じ力学特性で同 じ型紙の布で もノー ド数 ( 嚢の数)の異 なる ドレープ形状がで きる可能 性をいう。 したが って、力学特性 と形状量である支持台半径、 ドレープ丈を変化 させたときの ドレー プ形状の可能 なノー ド数を調べ ることが重要な課題 となる。 第 1章では、本研究の目的 と意義、本研究 に関連す る国内外の先行研究を述べ、本研究の位置づ け を行な っている。 第 2章では、 3- 6までのノー ド数を持つ ドレープ形状が安定 して存在で きるパ ラメータ領域 を明 らかに している。 パ ラメータは素材を代表す る曲げ長 さと型紙を代表す る支持台半径 ・ドレープ丈で ある。曲げ長 さは、曲げ剛性を重量で除 した値の立方根で、従来研究か ら ドレープ形状 に関与す る素 材特性 として最 も重要な物性量であることが分か っている。 支持台半径を固定 し、曲げ長 さを1 5 種類、 ドレープ丈を 5種類、 3- 6までの 4種類のノー ド数 を 持っ初期形状を用 いて計算機 シミュレーションを行 い ( 合計 3 0 0 種類)、 そのノー ド数で安定す るか否 かの判定、 ノー ドとノー ドが接触するか否かの判定を行ない、それ らの結果をパ ラメータ領域でのノー ド数 に関す る相図 として表現 している。 あるノー ド数を指定す るとこの相図か らそのノー ド数が保持 で きるパ ラメータ領域が具体的に特定できるという結果 は、力学特性の視覚化 に必須の情報 として貴 重である。 第 3章では、 ノー ド数別、接触 ・非接触別のヘムライ ン ( 裾線)の回帰式 を作成 している。 空間曲 面である ドレープ形状を代表す るのが、空間曲線であるヘムライ ンであるとし、-ムライ ンの記述法 として円柱座標系におけるフー リエ係数を用いている。 曲げ長 さと ドレープ丈を零 と無限大 に近づけ た場合の思考実験 によ り、非線形な関数関係を想定 し、非線形重回帰分析 によ り精度のよい回帰式を A 求 めている。 また、接触 と非接触で は解 くべ き力学方程式が異 な ると考 え られ るため、 それぞれ異 な っ た回帰式 を作成 して い る。 この結果、一 つ の シ ミュ レー シ ョンに要 す る平均 5分 の時間 を大幅 に削減 で き、任意 のパ ラメー タに対応 す る予測形状 の高速表示 を可能 に した ことは新 しい方法 と して高 く評 価 で きる。 第 4章 で は、 ヘ ム ライ ンか ら ドレープ形状 を生成 す るための線形補間法 を曲面 の曲率 を用 いて評価 して い る。 支持台 とヘ ム ライ ンの線形補 間 によ り生成 した ドレープ形状 と シ ミュ レー シ ョンで得 られ た ドレープ形状 を比較 して い る。 多面体 にお ける平均 曲率 とガ ウスの曲率 を定義 し、 カ ラー表示 によ る視覚化 を行 って い る。 単 に シェーデ ィングで表示す ると、全体 的 には比較 的良 い一致 を示 して い る が、詳細 に分析 す ると、平均 曲率 で は良 い一致 を示すが ガ ウスの曲率 で は良 い一致 が見 られない こと を示 し、 ガ ウスの曲率 を一致 させ る方 向で 2次補間法 を用 い るな どの改良 の余地 が あ る ことを指摘 し て い る。 曲率 の視覚化 は形状 の比較 に とって有用 であ り評価 で きる。 また、精度 をあ る程度犠牲 にす れば線形補 間法 で高速 に形状表示 が可能 で あ ることは、力学特性 を視覚化 す るための重要 な指摘 で あ る。 第 5章 で は、各章 で得 られ た結果 の総括 を行 い、今後 の課題 と して素材 の選定 を支援 す る計算機 シ ステムの構想 を述 べて い る。 まず、 ノー ド数 を指定 す ると、 その ノー ド数 が存在可能 なパ ラメー タ領 域 か ら幾 っかの ドレープ形状 が表示 され る。 ドレープ丈 や形状 の好 み によ りその中の一 つ を選択 す る と、素材 を示 す曲 げ長 さが得 られ る システムであ る。 以上 のよ うに、本研究 は、 ドレープ形状 につ いて、与 え られ た ノー ド数 を保持 で きる支持台半径、 ドレープ丈、 曲 げ長 さのパ ラメー タ領域 を特定 し、 その領域 を接触 と非接触 の領域 の分割 し、 それぞ れのヘ ム ライ ン形状 に対 す る回帰式 を作成 した もので あ る。 また、 ヘ ム ライ ンか ら立体形状 を作成 す るため には詳細 には検討 を要 す るが線形補 間で近似 的 な形状 を提示 で きることを示 した ものであ る。 これ らの結果 は、着装 シ ミュ レー シ ョンの入力項 目であ る力学特性 を視覚化 して提示 す るための基礎 的 な情報 を与 え、今後、 アパ レル製 品 の設計 を容易 にす る もの と高 く評価 され る。 これ らを総合 的 に 判断す ると、本論文 は、奈良女子大学博士 ( 学術) の学位 を授与 す るに十分 な内容 を有 して い ると認 め られ る。 割 引