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機能のネットワーク化: センサシステムとしてのナビゲーション

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機能のネットワーク化: センサシステムとしてのナビゲーション
2009 年 6 月
RF044
機能のネットワーク化:
センサシステムとしてのナビゲーション
Dr. Dirk Hoheisel(Dr. ディルク・ホーアイゼル)、
開発担当エグゼクティブヴァイスプレジデント
カー・マルチメディア事業部
ロバート・ボッシュ GmbH
第 59 回オートモーティブ・プレス・ブリーフィングのための
プレゼンテーション
2009 年 6 月、ボクスベルク
車両エレクトロニクスの統合拡大と情報テクノロジーがかつてない
速度で開発が進み、カー・マルチメディア事業部では統合・進化が
続く革新的なシステムソリューションに力を注いでいます。私たち
は自身のビジョンを「ドライビング・コンビニエンス」と呼んでお
り、それに基づいて、セーフティ関連のアプリケーションや、より
環境にやさしいルート選択、およびそれによる燃費と有害物質排出
量の低減などで、ドライビングの利便性を高め、ドライバーを不必
要なプレッシャーから解放したいと望んでいます。自動車産業では
車両へのメディア統合において、インフォテインメントからナビ
ゲーション、テレマティックス、そしてドライバーアシスタントに
至るまで、インテリジェントなアプリケーションと、様々な機能の
ネットワーク化の期待が見込まれます。
このことは、私たちが「センサシステムとしてのナビゲーション」
を使用する理由でもあり、ナビゲーション駆動型の相互接続機能を
統合する鍵となるものです。ナビゲーションは多くのものを見て、
先を予測することができ、その結果として多くのことを知ることが
できます。
位置特定機能とデジタルマップを組み合わせることで、ナビゲー
ションは安全性と経済性の向上に大きく貢献することができ、それ
によって私たちが求める「よりグリーンな」車を提供してくれます。
自動車はすでにこの数年間でその安全性とクリーンさ、そして経済
性が著しく向上しているものの、まだまだ十分に改良の余地があり
ます。
ボッシュはすでに 20 年前からナビゲーション技術を提供しています。
1989 年に世界で初めて量産された TravelPilot IDS(Identification of
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Digitized Streets)はボッシュ製です。その一方で、ナビゲーション
技術と他のシステムとのネットワーク化は拡大の一途をたどってい
ます。ネットワーク経由のデータ交換により、システムはドライ
バーや車両固有の挙動、交通状況による挙動に合わせて「協調可
能」になりました。
システムサプライヤーとして、私たちはエンジンマネジメント、ブ
レーキ、トランスミッションコントロール、ナビゲーション、ステ
アリング、レーダーまたはビデオからのデータを、追加機能開発の
ベースとして使用します。例えば、車両がカーブへ近づいたときに
スピードを出しすぎている場合は、ドライバーアシスタンスシステ
ムがドライバーに警告を出します。エンジンマネジメントは特定
ルートにおける現在の燃費に関する情報をナビゲーションシステム
に知らせます。インテリジェントなシステムがこの情報を保存し、
後日低燃費ルートを提示するためのルート計算に使用します。
これから、ボッシュが現在行っている開発について、例を挙げなが
らそのアウトラインをご説明いたします。
例 1:安全性と信頼性に重点を置いたドライビング
ナビゲーションは最初、A 地点から B 地点まで運転する際に、ドラ
イビングアドバイスとルートガイダンスを伴ったルート選定を行う
ために開発されました。それが、1990 年代中頃までに次の段階へと
進み、現在の交通情報がナビゲーションシステムとリンクされます。
それによってルートの先の交通渋滞やその他の混雑状態を直接ルー
ト計算に使用することが可能になり、必要に応じて新しいダイナ
ミックルートアドバイスが提供可能になりました。このようなダイ
ナミック・ナビゲーション・システムを早くも 1998 年に初めて欧州
市場に供給したメーカーはボッシュなのです。このとき供給したの
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はメルセデス・ベンツ用のオート・パイロット・システム APS でし
た。
さらなる利点として危険地点の警告や現在走行中のルートに関する
情報提供などが挙げられます。このことは特に走行ルートとその特
性をあらかじめ知ることによって、初めて可能になるものです。
そして早くも来年にはカーブ警告システムが提供可能になります。
このシステムは、現在の走行速度で安全にコーナリングできない場
合に視覚信号と音響信号でドライバーに警告を出します。現在開発
中の計画では、カーブ警告システムは他の車両システムよりも早く
情報を提供し、万が一に備えてシートベルトテンショナーが準備態
勢にされたり、適切なブレーキ圧生成がブレーキシステムに指示さ
れたりします。
カーブや交差点、市街地走行や高速道路走行などの道路コースに関
する情報は、車両のライトを制御するためにも使用されます。2012
年以降、ボッシュは車両ヘッドライトの制御のために必要なデータ
を供給するシステムをアッパーミドルクラスセグメントに提供予定
です。
これによってルートを交通状況や(例えば幼稚園、学校、老人ホー
ムが付近にあるというような)特別な注意を要する地域が認識でき
るため、ナビゲーションは走行安全性により大きく貢献することが
できます。
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例 2:資源節約と環境保護
統合ナビゲーションシステムはまた、道路に関する情報や、道路の
近辺や道路沿いで起こった出来事の情報も利用します。道路の種類
や上り坂、下り坂の傾斜、交差点などのファクターを考慮すること
で予測が可能になります。このようなシステムは、車両が走行中の
道路とこれから走行する予定のルートの現在の交通状況も認識し、
その先の道路について予測することができます。このデータを、一
日の時間帯や曜日によって典型的だったり周期的に繰り返されたり
する交通状況を特定するために使用します。現在の交通情報ニュー
スに加えて、この予測的交通状況データは交通状況を予測するため
に重要な役割を果たします。これらすべての情報をつなぎ合わせる
ことで、エレクトロニック・ホライズン機能は実現され、ルート選
択および目的地へのルート最適化を行います。
ドライビングを開始する前から、ナビゲーションシステムは交通状
況に関するすべての情報源を考慮して最も燃料消費の少ないルート
を計算することができます。したがって、ドライバーは選択した目
的地に最少の燃料を使って可能な限りの最短時間で到着することが
できます。アシスタンスシステムは、最適なギアを選択し、求めら
れる走行タイプを支援することで、特に交通混雑時にその能力を発
揮します。私たちは、のろのろ運転も、自分の車が交通の障害にな
ることも避けたいですし、可能な限りいつも「流れに乗って走る」
ことを望んでいます。 ここにこそ、より経済的でクリーンなドライ
ビングの最も大きな可能性を見つけることができます。
走行中、次に何が起こるかを予測することができると便利です。交
通混雑時に不必要に加速し、すぐにブレーキを踏むという運転は燃
料の無意味な浪費です。時速 70 km/h から 50 km/h への減速は、50
km/h から車両停止する場合と同量の燃料分のエネルギーロスです。
空力抵抗や、車両質量のような他の影響を除くと、速度とはつまり
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運動エネルギーの平方根です。多くの研究で、燃料コストの 30%は
予測的なドライビングで節約できることが実証されています。
つい数週間前、日産自動車はボッシュの開発した新しい「コネク
ト」マルチメディアシステムを導入しました。このシステムのルー
トガイダンスはエコルートオプションを初めて提供するもので、燃
費を最低限に抑え、CO2排出量も削減できます。来年導入される第 2
のモジュール、いわゆるエコルーティングでは、個々の車両のパラ
メータが考慮されるようになります。2010 年、私たちはまた初のド
ライバー・アダプテーション・システムを試験車両に搭載して発表
する予定です。このシステムでは、たとえば旋回時やコーナリング
時の加速やブレーキングなどのドライバー固有の挙動が考慮されま
す。別の開発プロジェクトでは、1日の任意の時間帯における平均
交通量と現在の交通状況を元に、予測される状況に応じた速度プロ
ファイルを計算し、ドライバーがより経済的な走行スタイルを選択
するよう助ける、エコ機能に取り組んでいます。このシステムの実
現には、惰性走行アシスタンスまたはギアアシスタンス、あるいは
エコ方式のクルーズコントロールが必要になります。
例 3:システムが学習し、得た知識を共有
他のデータ源も考慮する場合には、さらにそれ以上の機能が可能に
なります。ナビゲーション内部に集められたデータだけでなく、車
両センサも重要な情報を与えてくれます。
例えばビデオやレーダーは、車両に接近する物体を識別します。危
険の可能性があるのか、物体が路面上にあるのか、それとも交通渋
滞か?必要であれば他の道路使用者にこの情報を提供して警告する
というのはいいアイデアではないでしょうか?このソリューション
は C2X と呼ばれています。この名前は車両がインフラや他の車両と
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通信することを表しています(C2C)。この場合はしかし、何がど
こにあるかを正確に示せることが必須となります。
ジオ・レファレンシング(Geo-referencing)がその答えです。つま
り、交通に関連するすべての物体の正確な位置を、標準化された
データフォーマットに記述し、その情報をナビゲーションが供給す
る仕組みです。この情報はまた、物体および事象に関する全情報の
投影としてマップ上に記述されることもできます。これによりシス
テム全体像に劇的な変化をもたらす、ダイナミックなエレクトロ
ニック・ホライズン機能を実現します。
エレクトロニック・ホライズン機能によって運転状況の分析が可能
になり、重要なデータが、例えばクルーズ・コントロール・システ
ムや ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)に送られて、
車両の減加速を交通状況に合わせるようにします。未来のハイブ
リッド車や電気自動車では、その作動ストラテジーの最適化も可能
になります。ブレーキエネルギーの回生は、あらかじめ示される走
行ルート上の上り坂や下り坂の傾斜、交差点や赤信号で予想される
減速に基づいてドライビング開始時に計算することができ、それに
よって車両の航続可能距離が長くなります。現在のハイブリッド車
や電気自動車のエレクトロニック・コントロール・ユニットは、車
両が動き始める前にすでに、バッテリーにいつ充電すればよいかを
予知しているのです。
この種の予測的エネルギー管理の基盤は現在開発中で、3 年後に予定
されている次期システムプラットフォーム向けに供給されます。
車両内メディア統合において、ボッシュは現在、ナビゲーション駆
動型のネットワーク機能を使用してコンポーネントとデータスト
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リームを車両内で先進的に結びつけ、よりインテリジェントなシス
テムとソリューションを作りだすことを目標としています。
このような機能によって、車両はかつてないほど安全でクリーン、
経済的になるでしょう。同時に、私たちのビジョンである「ドライ
ビング・コンビニエンス」と調和した、安心で利便性の高いドライ
ビングが可能になるでしょう。私たちは、他に類のないドライビン
グを体験できるようにするために、資源節約と環境保護に焦点を当
てながらドライバーの支援を行っていきます。
ご清聴ありがとうございました。
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