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ブラジル、財政改革が進展

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ブラジル、財政改革が進展
臨時レポート
ブラジル、財政改革が進展
2016年12月16日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
【財政改革が進展】
ブラジルは2016年12月13日、歳出に上限を設定する憲法改正案を可決しました(12月15日の大統領署名を経て発
効)。市場ではこれを受けて、ブラジル株式、通貨レアルが上昇しました。この改正は今後20年にわたり実質ベースの
歳出拡大を凍結する(歳出拡大の上限を前年のインフレ率とする)もので、一連の財政改革の中でも最重要との位置
づけです。教育や福祉等を含む歳出増を長期間抑えるという非常に厳しい内容であることから、世論の反発は大き
い一方、財政の立て直し効果は大きいことから、市場の信頼回復にも繋がるものと見られます。
また、政府が2017年前半の最重要課題としている年金改革については、大統領が最低年金受給開始年齢を男女と
も65歳とする改革案を12月5日に提示しました。ブラジルの年金制度は世界的に見ても手厚いものとなっており、平均
的な退職年齢も54歳と非常に若いことから、年金にかかる社会保障支出が国家財政の圧迫要因となっています。政
府は、「将来にわたり年金制度を維持するために不可欠な改革」としており、実現されれば2018年から10年間で6,870
億レアル(2,000億米ドル程度)の社会保障支出を削減できるとの見通しを示しています。この改正案は、12月15日に
は下院委員会の賛同を得ており、今後さらに数段階の審議が進められることになります。
<年金制度の主な特徴>
現行
受給開始要件:下記の①②から選択可能
①納付期間が女性30年/男性35年
(例:20歳で納付を開始した場合、女性は50歳、男性は55
歳から受給開始)
②女性55歳/男性60歳以上かつ、納付期間が15年以上
改革案
受給開始要件:男女ともに65歳※以上かつ、納付期間が
25年以上
(50歳未満の男性、45歳未満の女性に適用。それ以上の
年齢の場合、現行法で必要な納付期間の1.5倍の期間の
納付が必要。)
※ブラジル人の寿命に連動して引き上げ
※ 上記はともに民間人の場合で、現行では公務員は別制度ですが、改革案では統一される見通しです(軍
人等例外あり)。
【景気回復への取り組み】
12月15日、政府は景気刺激策の具体的な内容を発表しました。これまでの補助金に頼った景気対策ではなく、「ブラ
ジルコスト」といわれる世界一複雑とされる税制や行政手続き等の軽減や、融資の活性化を行うことで投資の活性化
を目指すものと見られます。
<取り組みの例>
● 従業員本人によるFGTS(勤続年数補償基金)の借金返済目的での使用の許可
● 企業による前年度欠損金の繰延税金資産計上の許可
● 輸出入にかかる通関手続きを最大40%短縮
● 中銀主導によるクレジットカードローンを焦点とする低利貸出への取り組み
● 新しい住宅ローン担保証券の法的整備
● 不動産市場における全国で統一した登記制度の整備
金融政策についても、中銀は10月の会合以降利下げを続けており、景気の下支えを図っています。しかしながら、民
間の貸出金利の低下がそれほど進んでいない状況となっていることから、メイレレス財務相は国内主要銀行に対し、
金利引き下げの要請を行っています。
外交については、テメル大統領は来週トランプ次期米大統領と電話会談する予定としており、特にビジネス上での関
係強化を目指すとみられています。
出所:各種資料を基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-161216-3
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【テメル大統領への支持率は急落】
テメル政権による改革への取り組みは前進が見られる一方、政治状況については混乱が続いており、今後の政策運
営にも影響が懸念されます。現地紙(Folha de S.Paulo)による12月11日の報道ではテメル政権に対する評価が「悪
い」「非常に悪い」とした人の割合は前回7月の調査時の31%から51%まで急上昇しました。また、「テメル大統領辞
任」に賛成する割合についても63%と、ルセフ政権退陣前とほぼ同水準まで上昇しています。
テメル政権発足後も汚職に絡み閣僚の辞任が相次ぎ、また、テメル大統領自身の汚職関与疑惑が浮上しています。
さらに、下院が11月末に提出した反汚職関連法案に検察や判事の汚職捜査権限を制限する項目が盛り込まれたこと
で、反汚職を求める全国的なデモが行われる等、足元で政府に対する不信感はさらに広がっています。
【図表】テメル政権への支持率 (単位%)
良い/ 非常に良い
普通
悪い/ 非常に悪い
回答なし
前回( 7 月) 今回( 1 2 月)
14
10
42
34
31
51
13
5
出所:Folha de S.Pauloのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
【利下げペース拡大への期待が高まる】
ブラジル中銀は11月末、政策金利を2会合連続で0.25%引き下げることを決定しました。また、12月6日に公表した議
事録では景気の下振れに対する懸念を示すとともに、状況に応じて利下げ幅を拡大する可能性についても引き続き
示唆しました。
ブラジルでは11月のインフレ率が市場予想を超えて低下したことから、市場では次回会合における利下げ幅の拡大
への期待が高まっています。
(%)
16
14
【図表】政策金利・インフレ率の推移
(2010年1月1日~2016年12月15日、日次)
政策金利
インフレ率(前年比)
12
10
8
6
4
2
0
2010/1
2011/1
2012/1
2013/1
2014/1
2015/1
2016/1
(年/月)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
※インフレ率=IPCA(拡大消費者物価指数)とは、最低給与からその40
倍の給与水準までの家計を調査対象にした消費者物価指数。政府の
公式インフレ指標。
※インフレ率は2016年11月まで。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-161216-3
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【レアルへの影響】
米連邦公開市場委員会(FOMC)後、新興国通貨は概ね下落しましたが、レアルは比較的堅調な動きとなっており、ク
レジットリスクの指標となる5年物CDSも概ね安定して推移しています。歳出削減法案の承認及び年金改革案の提出、
景気刺激策の発表等について、市場では現政権の政治改革が着実に進展していると一定程度評価している模様で
す。加えて、これまで景気の足かせとなってきた高いインフレ率が徐々に低下していることや、中銀による利下げは景
気の下支え要因になると見込まれます。さらに、レアルの変動要因となってきた原油価格についても、産油国の減産
合意等を受けて安定に向かいつつあることもレアルのプラス要因と言えそうです。
足元では政権支持率が急落する等、政治的な混乱が拡大しており、次の大きな課題である年金改革案の可決等にも
影響が懸念されます。このため、レアルも大きく変動する可能性があることから、引き続き注意が必要と考えます。
【図表】ブラジル・レアル(対円、対米ドル)の推移
(2011年12月31日~2016年12月15日、日次)
(円)
55
【図表】5年物CDSの推移
(2013年1月1日~2016年12月15日、日次)
(レアル)
1.0
レアル/円(左軸)
米ドル/レアル(右軸)
(%)
6.0
50
1.5
45
2.0
40
2.5
35
3.0
30
3.5
25
4.0
1.0
4.5
0.0
2013/1 2013/7 2014/1 2014/7 2015/1 2015/7 2016/1 2016/7 (年/月)
5.0
4.0
3.0
20
2011/12
2012/12
2013/12
2014/12
2015/12
(年/月)
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
2.0
出所:Bloombergのデータを基にドイチェ・アセット・マネジメント㈱が作成
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
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ご留意事項
●投資信託に係るリスクについて
投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象とし投資元本が保証されていないため、
当該資産の市場における取引価格の変動や為替の変動等により投資一単位当たりの価値が変動します。したがって
お客様のご投資された金額を下回ることもあります。
また、投資信託は、個別の投資信託毎に投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることか
ら、リスクの内容や性質が異なりますので、ご購入に際しては、事前に最新の投資信託説明書(交付目論見書)や契約
締結前交付書面の内容をご確認の上、ご自身で判断して下さい。
●投資信託に係る費用について
【お申込みいただくお客様には以下の費用をご負担いただきます。】
 購入時に直接ご負担いただく費用・・・購入時手数料 上限3.78%(税抜3.50%)
 換金時に直接ご負担いただく費用・・・信託財産留保額 上限1.0%
 投資信託の保有期間中に間接的にご負担いただく費用・・・運用管理費用(信託報酬) 上限2.0304%程度(税込)
 その他費用・・・上記以外に保有期間等に応じてご負担いただく費用があります。
投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認下さい。
≪ご注意≫
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきまし
ては、ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社が運用するすべての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における
最高の料率を記載しております。投資信託の運用による損益は、すべて受益者に帰属します。投資信託は、金融機関
の預貯金と異なり、元本及び利息の保証はありません。投資信託は、預金または保険契約ではないため、預金保険及
び保険契約者保護機構の保護の対象にはなりません。登録金融機関を通じてご購入いただいた投資信託は、投資者
保護基金の対象とはなりません。投資信託に係るリスクや費用は、それぞれの投資信託により異なりますので、ご購入
に際しては、事前に最新の投資信託説明書(交付目論見書)や契約締結前交付書面の内容をご確認の上、ご自身で
判断して下さい。
なお、当社では投資信託の直接の販売は行っておりませんので、実際のお申込みにあたっては、各投資信託取扱いの
販売会社にお問合せ下さい。
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第359号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
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