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米国環境情報 - 日本産業機械工業会

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米国環境情報 - 日本産業機械工業会
情報報告
シカゴ
●米国環境情報
DOE(米国エネルギー省)、CO2 捕獲貯留フューチャージェン 2.0 計画を発表
DOE は 8 月 5 日、イリノイ州ジャクソンビルに、恒久的な CO2 捕獲貯留(CCS)システムを
含む大規模な 200MW 酸素石炭火力(oxy-coal-fired)発電所を建設する『フューチャージェ
ン(FutureGen)2.0』計画を発表した。経済再生法から 10 億ドルを投じる同プロジェクトに
は、アメレン(Ameren)
・エナジー・リソース社、バブコック&ウィルコックス(B&W)社な
どが参加し、酸素ベースの工程を利用した石炭燃焼によって、圧縮や貯留に適したほぼ純粋
な CO2 の燃焼排ガスを取り出す。今回の『フューチャージェン 2.0』の発表は、もともと同州
マトゥーンに CCS システムを含む 275MW ガス化複合発電(IGCC)の建設を予定していたフュ
ーチャージェン計画の完全廃止を意味する。今回の計画の中では、マトゥーン市は濃縮 CO2
を 175 マイルのパイプラインで輸送し貯留するサイトとしての役割を担っていたが、同市は
これを拒否した。DOE によると、貯留サイトとしての役割に関心を寄せる近隣の市町村は多
いという。
気温上昇にも拘らず、地球全体の植物生産性が減少
NASA(米国航空宇宙局)は 8 月 19 日、NASA の地球観測衛星からのデータをモンタナ大学
が分析研究したところ、温暖化による影響で、2000~2009 年の 10 年間に世界全体の植物の
成長は減少していたことを報告した。2003 年の前回調査では、1982~1999 年に植物生産性は
6%増加しており、これまで、温暖化による気温上昇や成長期間の拡大は、地上の植物生産性
を高めると考えられてきた。
今回の研究にあたっても同様の結果が出ると予想されていたが、
世界の平均気温は上昇しているにも拘らず、
この 10 年間の植物生産性は 1%の減少となった。
これは、高緯度の北半球は、依然として温暖な気温と長い成長期の恩恵を受けているが、南
半球における干ばつによってそれが相殺され、地球全体としては土地の生産性が失われたこ
とが原因。
米国ガメサ・ウィンド社、輸出入銀行の支援を受けてホンデュラスへ風力タービン輸出
米国輸出入銀行は、米国ガメサ・ウィンド社(Gamesa Wind US LLC)が、ホンデュラスの
エネルジア・エオリカ(Energía Eólica)社へ 2MW の G87 タービンを 51 基輸出するのに対し、
1 億 5,900 万ドルの支援を行うことを 8 月 20 日に発表した。この 102MW の風力発電所は、中
米で最大の風力発電所になると同時に、輸出入銀行にとっては中米で最初の風力プロジェク
トとなる。
米国ガメサ社は、
ペンシルバニア州ラングホーンで風力タービンを製造しており、
スペイン企業でありながら労働力の高い米国に投資し、製品を中米の顧客に輸出するという
姿勢が高く評価された。
再生可能資源電力への依存度が高まる
不況によって米国のエネルギー消費全体が減少しているなかで、再生可能エネルギーへの
依存度は高まっていることが、DOE の国立ローレンス・リバモア研究所(Lawrence Livermore
National Laboratory)から 8 月 5 日に発表された。石炭と石油の利用は、2009 年に劇的に
減少した一方、風力を使った電力は、前年の 510 兆 BTU から 2009 年には 700 兆 BTU へ大きく
増加した。また、天然ガスの使用量は減少した一方、太陽光、水力、地熱による発電は増加
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した。エネルギー効率の高い電化製品や自動車による省エネ効果もあり、米国のエネルギー
使用量全体は、前年の 9 京 9,200 兆 BTU から 2009 年には 9 京 4,600 兆 BTU へ減少した。
世界初のエネルギー貯留フライホイール施設に 4,300 万ドルの融資保証
DOE は 8 月 9 日、ビーコンパワー(Beacon Power)社がニューヨーク州スティーブンタウ
ンに建設している 20MW のエネルギー貯留フライホイール(flywheel)施設を支援する 4,300
万ドルの融資保証をまとめた。フライホイールシステムは、ニューヨーク電力網の性能を安
定させ強化させる周波数調整サービスを提供することで、風力や太陽光といった再生可能エ
ネルギー源の利用をより拡大することができる。またフライホイール工場の運転では CO2 が
排出されないため、現在使われている化石燃料ベースの調整方法に比べて CO2 の排出レベル
を格段に下げることができるという。
ニュージャージー、オンタリオが太陽光発電市場として急成長
北米における 2009 年新設の太陽光発電量は、
州別ではカリフォルニアが 212MW と断然トッ
プで、続いてニュージャージーが 57MW、カナダのオンタリオが 46MW と急成長していること
が、州際再生可能エネルギー評議会(Interstate Renewable Energy Council:IREC)による
『2009 年米国ソーラー市場動向(U.S. Solar Market Trends 2009)
』で明らかになった。設
置済み太陽光発電量全体としては、カリフォルニアが 768MW、ニュージャージーが 128MW、コ
ロラドが 59MW、オンタリオが 48MW となる。米国第 2 位の太陽光発電市場であるニュージャ
ージーでは、今年末までに 125MW が新設される予定で、総発電量はおよそ 250MW になる。オ
ンタリオでは、今年中に約 200MW が新設される予定である。オンタリオの太陽発電の成長の
原動力となっているのは、固定価格モデルであり、ニュージャージーでは割当モデルを採用
している。
イリノイ州、米国最大規模の 62MW 太陽光発電プロジェクト
イリノイ州知事は 8 月 19 日、経済再生法による 400 万ドル以上の助成金を受け、中西部で
最大、米国全体でも最大規模である 62MW の太陽光発電所を、同州ロックフォードに建設中で
あることを発表した。ロックフォード太陽光プロジェクトは、ロックフォード・ソーラー・
パートナーズ社と、米国 Wanxiang 社との合弁事業であり、2012 年に操業開始する予定であ
る。また知事は、同じ日に下院法案 6,202 に署名し、同州の再生可能エネルギー供給義務化
基準(RPS)の太陽光電力の割合を増強するために、2012 年に 0.5%、2013 年に 1.5%、2014
年に 3%、2015 年までに 6%とする暫定的なソーラー目標値を設定した。
申請中の集中太陽熱発電(CSP)プロジェクト、年内に建設開始への見通し
現在米国で計画されている集中太陽熱発電(CSP:光ではなく熱を利用)プロジェクトは
30 以上あるが、実際に建設中であるのは、フロリダのマーチン・ネクストジェネレーション
(Martin Next Generation)プロジェクトのみである。CSP プロジェクトが遅れる大きな要
因として、土地管理局(BLM)の環境影響表明書(environmental impact statements:EIS)
の発行に時間が掛かることがある。BLM は 8 月 13 日までに、カリフォルニア州の CSP プロジ
ェクト 5 件に EIS を発行し、年内にさらに 5 件の発行を予定している。この後、州による承
認が必要となるものの、経済再生再投資法による連邦補助金を受けるために、各プロジェク
トとも年内の建設開始を目指している。
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エクセル・エナジー社の風力電池試験
エクセル・エナジー(Xcel Energy)社は 8 月 3 日、1MW の電池貯留テクノロジーシステ
ムの予備試験が重要な局面に達したことを発表した。この風力電池プロジェクトは、米国で
初めてナトリウム硫黄電池貯留テクノロジーを、
直接エネルギーを貯留するために利用する。
ミネソタ州ルバーンの 11MW 風力発電所に接続された 20 個の 50kW 電池モジュールは、1M の
電荷・放電能力を持ち、約 7.2MWh の電力を貯留できる。完全に充電した場合は、500 世帯に
7 時間以上電力を供給することが可能である。今回の予備試験では、風力エネルギーをオフ
ピーク時からピーク時に動かすことができ、リアルタイムにおける発電と負荷の不均衡を解
決できることがわかった。このシステムは、安定した電圧で送電網に供給できるため、信頼
性が高いという。今後は、取り扱う電力量を増やして試験を続け、2011 年夏に最終報告書を
まとめることになっている。
ニュージャージー州、沖合風力発電
マサチューセッツ州沖合いのケープ風力発電が法的課題を突きつけられているなかで、ニ
ュージャージー州では 8 月 22 日に、米国の沖合風力発電を先行する法案が可決された。
『沖
合風力経済開発法案(Offshore Wind Economic Development Act)
』では、同州の公益事業委
員会に対して、沖合再生可能エネルギー認定プログラムを設立するよう命じており、このプ
ログラムは、全購入電力のうち 1%を沖合風力発電から購入するよう義務付けるものである。
この法案によって、少なくとも 1,100MW の沖合風力発電の開発が促進される。また同法は、
タービンや沖合風力発電の供給企業を誘致するために税額控除も提供する。
原子力発電所の新規建設への DOE の融資保証に対して訴訟
電力会社大手のサザン(Souther)社がジョージア州ボトゥルに建設を予定している 2 基の
原子力発電所に、DOE は 83 億 3,000 万ドルの融資保証を行うことを発表しているが、この融
資計画に対して 8 月 9 日に訴訟が起こされた。今回の動きは、米国エネルギーの安定供給の
ために数十年ぶりに新原子炉の建設を認めたオバマ政権と、原子力発電に反対する多くの環
境団体との、政治的分裂が表面化したものである。再生可能エネルギーの推進団体『クリー
ンエネルギーへのサザン同盟(Southern Alliance for Clean Energy)
』は、同団体が 3 月に
融資保証の契約の公開を求めたのに対して、DOE が詳細を隠した編集済みの書類を公開した
ことは、情報公開法に反すると主張している。
フォード自動車とシアトル市、電気自動車導入に向けて協力
シアトル市とフォード自動車は 8 月 26 日、
協力して消費者へ電気自動車に関する啓発活動
を行うと同時に、充電ニーズや必要な電力グリッド要件などの情報を共有していくことを発
表した。具体的には、許認可関係、電気自動車に対する税制上の優遇措置、将来の法規制な
どに関して、州政府やその他の地方自治体と協力することも含まれる。フォード社は、今後
2 年間で 5 種の電気自動車を登場させることにしており、税制上の優遇措置の継続や、充電
施設の許可プロセスの簡素化は、
シアトル市および全米で電気自動車普及の鍵とされている。
シアトル市電力(Seattle City Light)は、家庭用充電設備の許可申請に 3 営業日以内に対
応することを約束している。
エナーケム社、都市固形ゴミからバイオ燃料を作る初の大規模工場
カナダのモントリオールに本社を持つエナーケム(Enerkem)社は 8 月 31 日、都市固形ゴ
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ミからバイオ燃料を生成する、世界初の産業規模の工場の建設を開始した。アルバータ州エ
ドモントンに 7,500 万ドルをかけて建設するこの工場では、エタノールを 5%混合し、40 万
台以上の自動車を走らせるに足るバイオ燃料を生産できる。エナーケム社は、エドモントン
市と年間 10 万トンの都市固形ゴミをバイオ燃料に転換する 25 年契約を交わした。カナダで
は、温暖化ガス排出量削減の手段としてバイオ燃料の開発に力を入れているが、この 9 月に
も、ガソリンに再生可能バイオ燃料を 5%含有させる義務化が発表される予定である。
バーモント州のバイオディーゼル工場、税額控除の廃止により操業停止
バーモント州のバイオカーデル(Biocardel)社は、バイオディーゼルの生産を支援する税
額控除の期限が切れるにともない、同州スワントン工場の操業を停止したことが、8 月 21 日
に明らかになった。同社は、ガロン当り$1 の税額控除を受けて、大豆油や廃油などからの
バイオディーゼル精製を経済的に存立させていた。バーモント経済開発局は、ニューイング
ランド最大といわれたバイオディーゼル工場の建設に投じられた64万5,000ドルの低利融資
の回収を図っている。
ペンシルバニア州立大学、省エネビル設計のハブに
ペンシルバニア州立大学の主導するチームが、エネルギー効率の高い建築技術の開発に焦
点を絞ったエネルギー革新ハブ(Energy Innovation Hub)を建設するために、DOE から今後
5 年間にわたり 1 億 2,200 万ドルを受領することが 8 月 24 日に発表された。このハブでは、
既存・新築いずれの建物にも利用可能な省エネ構造部品やシステムの研究・開発・実証を行
い、コンピューター・シミュレーション、熱電併給システム、建物統合型太陽光発電などが
対象となる。また DOE は、国立オークリッジ研究所に、原子炉モデルとシミュレーションに
関するハブを、カリフォルニア工科大学に、太陽光燃料の開発に関するハブを設立し、全部
で 3 つのハブの樹立を計画している。
米国のスマートメーター設置数が 200 万台に
DOE は8 月31 日、
米国内のスマートメーター設置総数が200 万台に達したことを発表した。
米国の電力網は、経済再生法の資金拠出によって近代化が促進され、スマートメーター技術
によって停電や故障への反応時間が短縮されると同時に、消費者によるエネルギー利用量や
コストの監視が可能となった。電力研究所(Electric Power Research Institute)の推定で
は、スマートグリッド技術の導入により、電力使用量は 2030 年までに年間 4%以上、金額に
して 204 億ドル削減できるという。
五大湖の有毒な藍藻類ブルームとリンの関係を研究
米国海洋大気庁(NOAA)は 8 月 3 日、植物の成長に欠かせないリンのうち、どの形態のリ
ンが五大湖の有毒藍藻類ブルーム(大発生)を誘発するのか 3 年がかりで調査するために、
ストニブルック(Stony Brook)大学に 28 万 5,895 ドルを拠出した。このプロジェクトで注
目するミクロキスティスは、エリー湖やオンタリオ湖で頻繁に大発生し、人体に有毒な物質
を発生するため、飲用水に与える問題が深刻化している。複数の化学形態を持つリンのどの
形態がミクロキスティスの成長や有毒化に関与しているのか、またリンの形態を管理するこ
とでブルームや毒性を抑制できるかについて研究を行う。日本では夏に諏訪湖や霞ヶ浦でブ
ルームが発生し、問題となっている。
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EPA(米国環境保護局)、セメント工場の大気中への水銀排出に新しい規制
EPA は、米国第 3 位の水銀排出源であるセメント工場からの水銀排出を規制する最終規則
を 8 月 9 日に発表した。今回は、既存のセメントキルン(釜)から大気中に排出される水銀
に対して、初めて排出上限値が設定されるほか、新規のキルンへは規制値が強化されると同
時に、酸性ガスの排出についても規制される。粒子状汚染物質に関しては、既存・新規を問
わずに排出上限値が設定され、スモッグの原因となる窒素酸化物や二酸化硫黄に関しては、
新規キルンを対象とした上限値が設定される。
これにより、
2013 年までに水銀排出量を 92%、
粒子状汚染物質を 92%、酸性ガスを 97%削減できると試算している。
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