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6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで

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6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで
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6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで
秋葉文雄・柳沢幸夫・谷村好洋
系統関係がわかっている珪藻化石が数十八­セン
はじめに
ト も の 頻 度 で 出 現 し た り 消 滅 し た り して い る よ う
珪藻化石は,陸上や海洋の地質調査で利用され
す が み ら れ る . ま た , そ の 出 現 や 消 滅 の よ うす が,
ている微化石の一つである.数十年前には考えら
日 本 列 島 や サハリ ン そ して カ リ フ ォル ニ ア の 地 層
れなかったことだが,現在では珪藻化石のプレパ
でも同じように確認できるのである.珪藻化石の
ラートをせいぜい数分から十数分間ほど見るだけ
このような特徴は,「水中の宝石」とも称される微
で,その試料の地質時代を数十万年単位で簡単に
小 で 繊 細 な 形 態 と と も に , 嫌 が 応 で も 生 物 と して
いい当てることができるようになった.それがで
の珪藻の時空分布の連続性を実感させてくれるも
きるようになった理由の一つは,海底の堆積物や
のである.逆に,そのような連続性を信頼するこ
陸上の地層の中には驚くほど大量の珪藻化石が含
とが,珪藻層序学の基礎となる単調で忍耐を必要
ま れて い る こ と で あ る . 海 底 で そ の ほ と ん ど が 珪
と す る 検 鏡 作 業 を 支 えて く れて い る よ う に 感 じ ら
藻 化 石 か ら 構 成 さ れて い る 堆 積 物 は 珪 藻 軟 泥 , そ
れる.ここでは,そのような特徴をもつ珪藻化石
してそ れ が 固 ま って 陸 上 に 分 布 して い る も の は 珪
層序学の誕生と発展の経緯とともに,それが珪藻
藻土とよばれる.どちらも,1g程度の試料に数
化石の示準種の探索または種概念の把握の仕方と
百 万 か ら 数 千 万 個 体 に も 及 ぶ 珪 藻 化 石 が 含 ま れて
密接につながっていることも紹介したい.
おり,それらから薄い泥水(懸濁液)を作り,プ
なお,低緯度の熱帯海域や南半球の南大洋では,
レパラートに封入すると,18 18mmのカバーグ
珪藻群集が北太平洋の中高緯度域とはまったく異
ラス に 載 って い る 数 千 ∼ 数 万 個 体 の 珪 藻 化 石 を 顕
なるため,それぞれの海域で独自の珪藻化石帯区
微鏡で観察できる.もう一つの理由は,地質時代
分が設定され,堆積物の年代決定に広く利用され
を指示する示準化石種(コラム5.3参照)がたくさ
ている.
ん知られるようになったことである.これらの示
準種の出現時期や絶滅時期と,放射性同位体を用
日本の珪藻研究のはじまり
いた年代測定値(放!討 性年代値)や古地磁気の極
今から123年前の明治22(1889)年にBrunand
性反転の歴史(古地磁気層序)との対応について
Temp6re(1889)によって,日本産の珪藻の研究
の研究が進み,現在では珪藻化石を使って地質年
がはじまった.その材料となったのは,珪藻化石
代をわかりやすい具体的な数値で表現できるよう
を含む岩石試料である.この年は,日本の植物分
になった(図6.2.1).
類 学 の 創 始 者 で あ る 牧 野 富 太 郎 が 日 本 人 と して は
地 質 時 代 を 推 定 す る ツ ール と して 珪 藻 化 石 が 役
じめて日本産の植物(ヤマトグサ)を正式に新種
立つことがわかるようになるまでには,ほぼ半世
記 載 し た 記 念 すべ き 年 で も あ る . そ れ 以 前 は い わ
紀にわたる日本人研究者を中心とした珪藻化石層
ゆるプラントハンターなどによって採取された日
序学の確立のための奮闘の歴史があった.世界に
本産の植物は欧米の研究者によって研究・命名さ
先駆けて,約半世紀前に日本ではじめて珪藻化石
れて い た が, 大 型 植 物 に 関 して は , こ の 頃 か ら 日
層序が設定された当時は,珪藻の生存期間は長す
本 人 自 身 に よ って 積 極 的 に 記 載 研 究 が 進 め ら れて
ぎて生層序学に利用するのは困難だと一般には考
いく.しかし,日本人による珪藻の研究と記載は
え ら れて い た . し か し , そ の 後 の 多 くの 研 究 者 の
もう少し時を待つ必要があった.
努力によって時代決定に有効な示準種が多数見つ
さて,実はこのBrunandTemp61・e(1889)が研
かり(図6.2.2),北太平洋地域の珪藻化石層序学は
究した試料もこのプラントハンターと密接に関連
飛躍的に発展することになる.しかも
して い る . と い う の も , そ の 材 料 の 一 つ の 「 仙 台
そこには
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図6.2.1珪藻化石層序の進歩.
産 石 灰 質 団 塊 」 は , 当 時 の 日 本 に 宣 教 師 と して 滞
たのだが,その試料を見たパリ在住の珪藻研究者
在 中 の プ ラ ン ト ハ ン タ ー と して も 有 名 な フ ォ ー リ
一神父が,日本の植物標本を欧米に送るために採
の テ ンベール , あ る い は ジュ ネ ー ヴ 在 住 の ブルン
が, 貝 化 石 の 母 岩 に 珪 藻 化 石 の 含 ま れて い る の を
集 して い た 折 に 見 つ け た も の だ か らで あ る . 彼 は
見抜いて分析したというわけである.彼らが分析
そ の 中 に 含 ま れて い た 保 存 良 好 な 貝 化 石 を 同 定 し
した試料は「イ山台」と「江戸」から採取された2
てもらうためにその試料をパリの博物館に送付し
個の石灰質団塊であり,この2試料から70余種の
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図6.2.2珪藻化石帯区分(YanagisawaandAkiba,1998)で利用された珪藻示準種90種の原記載年と種数の
累積曲線.90種のうち70種以上の示準種が1959年から1998年の40年間に記載された.
新種が記載された他に190余種もの既知の種が
ある.ともあれ,このような事l情も含めた理由の
記 録 さ れて い る , そ の 中 に は 現 在 の 珪 藻 化 石 層 序
ためにたくさんの珪藻示準種が入っていたにも
で 活 用 さ れて い る 示 準 種 が い くつ か 含 ま れて い る
かかわらず丿仙台」試料の時代的位置づけは長い
ものの,新種の大半は極めてまれにしか見つから
間不明のままであった.その解明には,70年後の
ない海生の底生種であり,彼らの報告以外にはそ
金谷太郎による珪藻層序学的研究(Kanaya,1959)
の後ふたたび記録されなかったものがほとんどで
を待つ必要があった.
ある.「仙台産石灰質団塊」の原試料を再分析した
秋葉(2008)によると,群集の95%は多様な海生
珪 藻 化 石 層 序 学 の 誕 生 : 群 集 化 石 帯 の 設 定
浮遊性種からなり,最も多い種(全体の20%)は,
微 化 石 を 地 層 の 時 代 や 環 境 の 指 標 と して 利 用 す
後に(1959年)サハリンから新種として記載され
る微古生物学が誕生したのは,前述のBrunand
た種である.しかし,不思議なことにBrunand
Temp6re(1889)の研究に先立つ30年前の1859年
Temp6re(1889)にはこの種は記載されていない.
に世界ではじめて掘削された米国の石油試掘井
お そ ら く 彼 ら は , 既 知 種 と して リス トア ップ し た
の ド レ イク 井 が き っ か け だ っ た と い わ れ て い る .
種の中の古典的な類縁種にそれを同定したのだろ
石 油 ガ ス の 胚 胎 して い る 地 層 の 地 下 構 造 を 調 査 ま
う.彼らの目的はたくさんの珍奇な新種を記載す
たは採掘するために地層を掘削する時に,砕かれ
ることにあったため,産出する量がいくら少なく
た 小 さ な 岩 片 に は め っ た に 大 型 化 石 は 含 ま れて い
ても珍しい種を探す努力は惜しまなかったのに対
な い の に 対 して , 顕 微 鏡 サイ ズ の 微 化 石 は 大 量 に
し,たとえごく普通に産する種でもいったん既知
含 ま れて い る こ と が わ か っ た か らで あ る . 当 初 利
種 に 同 定 さ れて し ま え ばそ れ 以 上 の 吟 味 を 行 う 必
用されたのは浅海から,深海までの海底に広く生息
要はないと判断したのであろう.これは,分類し
して , 地 層 の 堆 積 環 境 の 変 化 が よ くわ か る 底 生 有
て命名すること自体が「両刃の剣」となることの
孔虫化石だった,その後の石油探鉱活動の進展と
好例の一つである.つまり,ある生物に命名する
ともに日本の大学や石油会社でも微化石の研究調
こ と に よ ってそ の 生 物 の 性 質 が 解 明 さ れ る 半 面 ,
査が盛んに行われるようになったが,その対象の
既存種名を安易に適用することでその生物には本
ほとんどはやはり有孔虫化石だった.たとえば,
来なかった性質が付加される危険性があるからで
1 9 4 7 年 に 米 国 で 出 版 さ れ た M . E グ レ ース ナ ー 著
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ヽ図6.2.31983年:カリフォルニア
ぅの米国地質調査所にてJ.Barron博
士と金谷太郎博士(57歳).
「微古生学の基礎」は,総292頁の中で有孔虫化石
((1y泌函aリ功面Assemblage)は,単なる珪藻
以 外 の 1 5 種 類 の 微 化 石 に つ いて も ふ れて い る が,
群集に対する命名ではなく,当時の用法で明確に
そ の 合 計 は 2 4 頁 の み で あ る . 残 り は すべ て 有 孔 虫
群集化石帯を意味したものであった(図6.2.1).当
化 石 の 分 類 ・ 生 態 とそ の 利 用 法 に 費 や さ れて お り ,
時はまだ,珪藻化石の地理的分布や時代によって
珪 藻 化 石 に つ いての 記 述 は わず か 1 頁 で あ っ た .
産出する化石の種類が変わることなど,珪藻化石
このような時代に,東北日本の秋田と青森に分
に 時 空 分 布 に つ いての 情 報 が ほ と ん ど 蓄 積 さ れて
布 す る 珪 藻 質 泥 岩 を 研 究 対 象 と して 珪 藻 化 石 生 層
いなかったので,種の生存期間を認定することが
序の研究を開始したのが,1948年に東北大学大学
できなかった.そのために,8種類の特徴種を選
院に入学した金谷太郎(図6.2.3)である.その研
んで そ の 産 出 頻 度 の 合 計 を 基 準 と して 3 つ の 群 集
究 途 上 に は ス タ ン フ ォ ー ド 大 学 に 留 学 して 当 時 の
化石帯を認定し,それらの分布を比較検討したも
米国における珪藻化石の第一人者であったG.D.
のだった.その結果,その中の一つであるコスキ
ハンナ博士(GDanasHanna:1887­1970)などの
ノ ディス ク スヤペ イ 群 集 が 秋 田 男 鹿 半 島 か ら 青
教示を得ながら研究を進めて,その成果を1959年
森の弘前周辺まで,同じ特徴をもった化石帯とし
に「女川層からの中新世珪藻群集とその東北日本
て追跡・対比できるという,世界ではじめての珪
で対比される地層での分布」(Kanaya,1959)と題
藻化石層序学の成果を得たのである.
し た 博 士 論 文 と して 出 版 し た . こ れ は 日 本 の み な
金谷が珪藻化石層序の研究を開始した背景の一
らず世界に先駆けてはじめてまとめられた珪藻化
つに束北日本や北海道の各地には珪藻化石に富
石層序学の記念碑的な労作であり,これをもって
む 新 第 三 紀 の 堆 積 物 が 広 く 分 布 して いて , 古 く か
金谷太郎を「珪藻生層序学の父」と称することが
ら地質学の諸分野の研究対象となっていたことが
できる.彼は,詳細かつ精緻な方法論を述べると
あげられるが,これらの堆積物については石油天
ともに多くの示準種を図示した.その彼が提唱
然ガスの探鉱活動や珪藻土などの工業用途なども
し だ コ ス キ ノ デ ィ ス ク ス ヤ ベ イ 群 集
含 む 地 域 地 質 の 対 象 と して も 注 目 さ れて い た . そ
jθθ一第6章世界に誇る日本の微化石研究
li
のため,金谷が研究を開始した数年後には彼と情
討や広域的な同i時性の検証などを含めて,生層序
報を交換しつつ,石油探鉱会社の小村精一および
学的に有効な
地質調査所の沢村孝之助もそれぞれの目的に応じ
れ る こ と と な る . そ して , そ の よ う な 地 道 な 探 索
た 地 域 や 時 代 を 対 象 と して 珪 藻 化 石 層 序 の 研 究 を
を経て,深海掘削計画によって世界の海洋から採
開始した.金谷の研究対象地域が秋田・青森であ
取された古い時代から新しい時代までの連続的な
っ た の に 対 して , 小 村 の そ れ は 北 海 道 西 部 の 石
試料を研究することによって,次節で紹介するよ
狩・日高地域(小村,1959),そして沢村の対象地
うに,従来の群集化石帯から,特定の示準種の生
域は北海道東部や三浦半島など(沢村,1963;沢
存 区 間 を 基 に して 定 義 さ れ た 珪 藻 化 石 層 序 の 設 定
村・山口,1961,1963)であった.彼らはそれぞれ
と して 花 開 く こ と に な る .
種の探索がこの後しばらく継続さ
の地域と研究目的に応じた独自の化石層序区分を
設定して活用した(図6.2.1).彼らの化石帯区分は,
いずれもそれぞれの地域にほぼ限定される地域的
標 準 化 石 層 序 の 設 定
前節で述べたように,金谷・小泉(1970)は広
な珪藻群集帯区分であったが,1970年代以降の珪
域的に適用できる珪藻化石層序を設定するために,
藻化石帯区分の発展に不可欠な情報を数多く含ん
先 行 して 研 究 さ れて す で に 完 成 して い た 浮 遊 性 有
でいた.
孔虫など珪藻以外の微化石層序や古地磁気層序な
最近の微古生物学では,深海掘削などで代表さ
どの デ ー タ を 参 考 に して , 広 域 的 な 同 時 性 を 保 証
れ る 海 洋 地 質 学 や 古 海 洋 学 な どへ の 適 用 が 強 調 さ
で き る 珪 藻 種 の 探 索 を 継 続 して い た . そ の 時 期 は
れる傾向にあるが,発展の基礎ともなった石油探
海 底 堆 積 物 研 究 の 進 展 の 時 期 と も ほ ぼ 一 致 して い
鉱 や 地 域 地 質 へ の 応 用 面 も 忘 れて は な ら な い 側 面
る.60年代にはソ連や米国の研究者達によって海
であり,珪藻化石層序の確立が上述のようにその
洋底から採取されるピストンコアを使った生層序
ような応用面からの研究の蓄積に負っている部分
学的な研究が盛んに行われるようになって,新し
も大きい.もちろん古生物学それ自体の研究も含
い情報もたくさん入るようになった.たとえば,
めて , 大 学 や 政 府 研 究 機 関 そ して 石 油 探 鉱 会 社 や
Donahue(1970)はJous(バ1968)をはじめとする
地 質 コ ン サ ル タ ン ト 会 社 な ど の 多 様 な ニ ーズ が あ
当時のソ連の研究者たちの熱心な分類学的研究成
っ た か ら こそ 微 古 生 物 学 は 多 分 野 の 研 究 者 が 参 加
果 を 踏 ま えて , 北 太 平 洋 高 緯 度 地 域 の 第 四 紀 の 珪
す る こ と で 発 展 して き た の で あ り , 珪 藻 化 石 層 序 ・
藻化石層序を設定したし(図6.2.1),またBurckle
の 場 合 も ま さ にそ う で あ っ た .
(1972)は束熱帯太平洋地域の中新統∼更新統の珪
ところで,珪藻生層序学の誕生を告げたKanaya
藻化石層序を設定したが,いずれも古地磁気層序
(1959)が出版されてわずか3年後に,もう一つ
とリンクさせて地質時代が明確になっているピス
の極めて重要な論文が発表された.Simonsenand
トン コ ア を 利 用 し た 成 果 で あ っ た .
Kanaya(1961)による 海生狗,z庇池z (コラム
そ の 後 6 0 年 代 末 か ら は , 現 在 ま で 継 続 して い る
4.4参照)の研究である.この論文は,その後北太
深 海 掘 削 計 画 が 開 始 さ れて , 世 界 の 大 洋 の 各 地 か
平洋地域の新第三系珪藻化石層序が飛躍的に進展
ら連続的な長いコア試料が入手できるようになっ
して花開き実を結ぶ大きな端緒となり, 海生
た.このような背景のもとに設定されたのが,
£).タz&z加 の分類とその生層序学的利用を促進し
Koizurlli(1973a,b)による北太平洋地域の珪藻化
た.彼らは,1新種を含む5種についての詳細な
石 層 序 で あ る . 彼 は ベー リ ン グ 海 か ら ア ラス カ 沖
分類学的特徴を述べるとともに,それらのカリフ
かけての深海掘削計画DSDP第19節航海に参加し
ォルニアの陸上に露出する地層での生層序学的価
て , そ れ ら の 深 海 堆 積 物 お よ び 日 本 の い くつ か の
値を示唆した.ただし,この成果はこの時点では
地表セクションの研究成果を踏まえ,中新世から
あ く ま で も 地 域 限 定 の も の で あ る と 見 な さ れて お
現世にいたる連続的な珪藻化石層序区分を設定し
り,金谷・小泉(1970)で総括的に示されている
た.その層序区分は,それ以降の深海掘削計画の
ように,これら 海生刀.,zrか❹ぶ はもちろんのこ
航海で主に彼自身によって多用された結果,広域
と,それ以外の多様な属種について,分類学的検
に 適 用 さ れ る 標 準 層 序 と して 認 め ら れ , 珪 藻 化 石
6.2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで­jθ7
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Akiba,1983,1986;Yanagisawa&Akiba,1998
Koizumi,1973a,b
NPD
更
新
世
鮮
新
世
B
後
期
中
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世
中
期
中
新
世
前
期
中
新
世
K:地織剋訟嚢謡蛍7y・地腐え妬鹿 ,Rc:Roljx/aca//た)m/・ca,Np:/V/lzsc/1/ap//ocena
R5:771a/assloηemascカrade皿H:心太大大di:Deりがcしj/ops/s(がmo叩んa
pd:Denびcしj/ops/spae(がmo巾わa,hy:£)e耐/c❼ops/sねya//Iηa,L云赳面函 ミi言 £i皿成
pl:De耐7cひ/ops心ρΓae/aala
図6.2.4Koizur­ylj(1973a,b)とAkjba(1986)の珪藻化石帯区分の比較(秋葉,2008を一部改変)
の生層序的有効性を広く普及させる役割を果たし
Koizu1111(1973a,b)の生層序区分に組み込まれる
た.このKoizulnれD73a,b)の生層序区分の枠組
ことはなく,次の発展段階になってようやく利用
みは,第四紀はDonahue(亘三0)の層序区分をそ
されることになった.彼の大きな功績は,記載文
のまま踏襲し,鮮新統と中新統は生層序学的な利
の最後に「文献には類似した種は認められなかっ
用価値が示唆されていた海生ミ1言ふjk三轟 属のカリ
た 」 と い う 決 ま り 文 句 を 添 えて , 当 時 と して は 驚
フ ォル ニ ア に お ける 層 位 的 分 布 を 基 本 に して , そ
くほど多数の新種を発表したことである.それは,
れらの広域的な分布を考慮した上で設定された区
当時の珪藻化石研究者の種概念が非常に保守的で
分となっている.その特徴は,ごく限られた示準
あ っ た こ と , そ して 必 要 に 応 じ て 新 種 記 載 が 不 可
種 の 生 存 期 間 の 組 み 合 せ で 定 義 さ れて い る こ と で,
欠であることを気づかせてくれたものであり,そ
中新世から鮮新世にかけての6つの化石帯は,
のような意味で後続の研究者達を勇気づけてくれ
SimonsenandKanaya(1961)が議論した4種の生
た 意 義 は 極 めて 大 き い .
存期間の組み合せによって認定されている(図
6.2,4の右側).
一方,Simonsenの後輩のH.­JJchrilderは,カ
リ フ ォル ニ ア 沖 の 深 海 掘 削 計 画 第 1 8 次 航 海 に 参 加
して, 海生f)6。zrた❹α に属する多数の新種を記
なお,この 海生£)f。zfか❹♂に属する種群は,
その後元々淡水で記載された7).,zだ。Zα属とは構造
形態が異なるとの判断から,一括して7)afj乙;❹砂画
属(Simonsen,1979)に移された後,さらにその
云三1治訟k轟塩浜属自体が互いに系統の異なる
載し,さらにそれらの進化系統についても議論し
Caと・❹6・タ2&z心属,£)6・功必❹砂臨属,A/g❼・・タ戒り/α
た(Schrad(21・,1973a,b).彼が記載した新種の中に
属 の 3 属 か ら 構 成 さ れて い る こ と が 明 ら か に さ れ
ぱ海生7)f。2だ.ぶ以外にも,現在の珪藻層序区
た(AkibaandYanagisawa,1986;コラム4.4参照).
分 で 使 用 さ れて い る 重 要 な 示 準 種 が 多 数 含 ま れて
いる.しかし,それらが彼自身の,または上記
jθ2一第6章世界に誇る日本の微化石研究
|
しかし,東北日本や北海道のいくつもの地表セ
標準珪藻化石層序の増補改訂と詳細年代
ク シ ョ ン に こ の 層 序 区 分 を 適 用 し た 結 果 , 秋 葉
Koizurlli(1973a,b)による標準珪藻化石層序は,
(1979)とAkiba(1982a)は,7λ/αz心と1λ/zz❹❹筋
その後の研究の基礎となり,彼自身も含めた複数
が共存することはなく,£)./zz❹❶疵と共存するの
の 研 究 者 に よ って 何 度 も 改 訂 増 補 が 繰 り 返 さ れて ,
は,7).1α政zとは良く似ているがまったく別種の£).
より古い時代への拡張と精度向上への地道な努力
ぱ加りゆ/,乙z(Scllrader,1973a)またはf).yα❹加aか加
が重ねられた(Koizulni,1977;小泉,1975);Barron,
(Akiba,1982a)であることを明らかにした(図
1980;Maruyama,1984a,b;秋葉コ979,198:2;Akiba,
6.2.4,図6.2.5).実際にはf).ぷ・aか加および7).
1986など).中でもAkiba(1986)によるそれは
♪ r と 7 ❹ 加 り ゆ 加 の 殻 を 構 成 して い る 部 品 の 一 部 が
Koizullli(1973a,b)の珪藻化石層序の枠組みの一
7)./四加と誤認されていたのである(図6.2.5).こ
部を組み替え,かつ化石帯の数を大幅に増大させ
の衝撃的な事実は珪藻研究者にとっては想定内の
たもので,これにより北太平洋地域の新第三紀の
ことだったようであり,逆に珪藻にほとんど馴染
標準化石層序区分は一応の完成をみた.このAkiba
みのない人達にとっては理解の範囲外のことであ
(1986)の化石帯区分は,前述の石油探鉱会社の小
ったらしく,幸か不幸か世間を騒がせるようなこ
村 の 後 継 者 と しての 立 場 か ら , 東 北 日 本 や 北 海 道
とはまったくなかった.ともあれ,分離不可分な
一つの殻からできている有孔虫や放散虫とは異な
の数多くの地表セクションで,できるだけ実務的
に適用できるように化石帯区分の改訂を繰り返し
って,珪藻の殻はすべて上殻と下殻が,弁当箱の
た結果,完成したものである.
ように入れ子状態で組合わさってできており,上
Koizullli(1973a,b)とAkiba(1986)を比較する
殻と下殻がさらに複数の要素から構成されるとい
(図6.2.4)と,中部中新統から鮮新統下部にかけて
うことが,この問題の理解めためにとても大事な
の 区 間 で 化 石 帯 の 数 が 2 倍 以 上 に も 増 加 して , 時
点である(図6.2.6).したがって,7:).治政7,7).
間 解 像 力 が 格 段 に 向 上 して い る こ と が わ か る . こ
j 加 り ゆ 加 そ して 7 ) . μ α ❶ 加 り ゆ 加 を 互 い に 明 確 に
れを可能としたのは,示準種である 海生f)6。がfa/α
識別してトそれらすべてを示準種として認定して
属 の種概念の革新とバ海生1).,2rか❹♂が産出し
化石帯区分を改訂することによって,現実に対応
ない空白区間の化石帯の識別の成功という二つの
した実務的な化石帯区分とすることができたので
ブ レ イク ス ル ーで あ る .
ある(図6.2.4).このような7L)./αz加の同定につい
ての混乱が長い間あったために,これまで7).
1) 海生£)( 耐/cu/a属 の種概念の革新
一
/zz4吏おf­j).治政z帯または1),;,z❹❶筋帯に相当
SimonsenandKanaya(1961)によって基礎が築
すると報告された地質セクションについては,そ
かれだ海生£).,zrf。/♂の分類は,その後S5(こ11rader
れらがはたして現在のどの化石帯に相当するかの
(珀73a,b)によって多数の新種が追加され進化系
判断は,基本的にはオリジナル試料をもう一度検
統関係も推定されたものの,殻全体の構成や構造
鏡してみなければわからないことになる.しかし,
に不明な点が多く,そのために種の識別基準もあ
Kanaya(1959)が認定したコスキノディスクス
いまいで種概念が混乱している面があった.
ヤペイ群集については,産出表をみるとそれが現
さて,中新統の大部分に相当する部分では,
在の£),❹か❹砂地かaj加りゆ加帯と刀z6zl(zsjg❶g
Koizu1111(1973a,b)の標準層序はj:)./αz加とその
jy晶d帯に明瞭に識別できる.というのは,そこに
子孫の7:)./zzf吏❹fというたった二つの示準種の
は7).か77❹加りゆ加の殻の一部が,既に心立ii訟垂
産状で3つの化石帯に区分されている.つまり,
sp.という名前でその産出の有無が記録されていた
下位よりj)./αz心が単独で産出する7)./αz加帯,両
からである.
種 が 共 存 す る 1 λ 加 吏 が f ­ £ ) . / α 政 z 帯 , そ して D .
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んz❹❹だfしか産出しないf)./zz❹❹疵帯,というよ
2) 海生£)e,7ぴca/ 属 が産出しない空白区間
うに簡潔でわかりやすい3つの化石帯が定義され
の化石帯の識別
ている.
Koizullli(1973a,b)では,7:)。zzだa/αゐzaZ❹防帯
6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで­jの
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図6.2.5Denljcu/ops/scがmo,p/la(図1∼8),D.prae(加lorp/la(図9a∼27b)およびD.諮醤轟(図28∼32),同一種でも,
殼の組み合わせと観察方向によって異なった形態となって観察されることに注意(Akjba,1982aによる).
jθぜ一第6章世界に誇る日本の微化石研究
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図6.2.6D,M面む//ops/s属の殻の構成(YanagisawaandAkiba,1990を改変).
図{3.2.7777EI/ass/onemascわade皿a­c;SEM写真,d;LM写真(模式標本).
6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで­j巧
とその上位の£)f,daZα加77z汝加配α帯の境界は,
向 か 地 質 時 代 を 通 じ て 反 転 を 繰 り 返 して き た 歴 史
7:λ/zz❹❹戒の絶滅またはD.加.71,ic;加面αの出現で
が岩石や地層中にいわば「地球磁場の化石」とし
定 義 さ れ , こ の 二 つ の 層 準 は 同 時 期 的 な イベ ン ト
て 保 存 さ れ る こ とを 利 用 して 年 代 を 推 定 す る 方 法
と理解されていた.しかし,東北日本や北海道な
である.通常,地球磁場が現在と同じ方向を向い
どの地表セクションを調査した小村(1959)や沢
ている時期を正磁極期(図6.2.8で黒く示した区間),
村・山口(1961)などの研究では,どちらの示準種
反対を向いている時期を逆磁極期(図6.2.8で白抜
の存在が知られてい
きの区間)という.地球磁場の極性反転史は,海
た.この区間は大型のCfyfa戒sasgαな加α加sが
洋 底 拡 大 軸 を 中 心 と して 両 側 に 拡 大 す る プ レ ー ト
多く産出することで特徴づけられていたが,この
の海洋底玄武岩類が冷却する過程で記録され,そ
種は非常に長い生存期間をもつので,広域対比に
れは磁気異常の縞模様として認識できる(図6.2.8).
役立つ化石帯を定義するには適していないと考え
これらの磁気異常の縞模様については,正確な放
られていた.そこで,これに代わる示準種の探索
射 年 代 値 を コ ン ト ロ ール ポイ ン ト と して 海 洋 底 拡
が行われた結果,空白期間の下半部には新種記載
大速度を復元することにより,各縞の境界の年代
された瓦α臨sfo,・αs油,w&,・f(Akiba,1982b)が
を 極 めて 正 確 に 計 算 す る こ と が で き る . こう して
多産することや,また日本産珪藻がはじめて報告
作成された「地磁気極性年代スケール」は,地磁
された「仙台産団塊」に多産するji?四ェ泌cα/面り庇α
気極性の反転が地球全体で同時におこるために同
やΛりjrzs油加y・/fりauなどが空白区間の中上部を特
時性が高く,最も信頼できる年代推定の物差しと
徴づけることなどがわかってきた.このような示
して 各 種 年 代 ス ケ ー ル の 基 準 と な っ て い る . 一 方 ,
準種の産状に基づいて,新たに7でs油Γαj❼帯と設
珪 藻 化 石 な どの 微 化 石 が 含 ま れて い る 堆 積 物 の 中
az/加朋俵z帯が設定された.
に も 磁 性 を も つ 微 小 な 鉱 物 が 含 ま れて お り , そ れ
も産出しない
空白の区間
なお,7でs油gj雨は,Kanaya(1959)が新種記
らが当時の地球磁場の方向に
いつつ堆積し,堆
載した7;7,1と❶/α,勿/z加s(z肩a地がきっかけとなっ
積 物 が 脱 水 して 堆 積 岩 に な る 過 程 で 固 定 さ れ る た
て発見された示準種である.Scllclrader(1973a)
め,堆積岩にも地磁気の記録は残される.その同
は月/zf,・asgzゐf。,zsfsの属名を変更して77zα加❼a9.α
じ 堆 積 岩 か ら 微 化 石 を と り だ して 詳 し く 調 べ れ ば ,
/zfタフ,g肩凹地としたが,彼が7で/zfgsdfa臨とし
地磁気の反転史すなわち地磁気極性年代スケール
てカリフォルニア沖から図示した標本は,原記載
と,微化石の出現・絶滅を含む進化の歴史の関係
によるF/,fgsα筋凹地とは明瞭に形態も産出する
を直接明らかにすることができる.
時代も違っていて,上記の空白区間に限られて多
こ の よ う に して 珪 藻 化 石 帯 の 年 代 も , 地 磁 気 極
産するものであることがわかったからである(図
性年代スケールに対比することで具体的な数値年
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代が推定されてきたものの,1995年以前は,鮮新
世 よ り 上 位 を 除 く と 全 体 と して 間 接 的 な 対 比 に と
古 地 磁 気 層 序 と の 直 接 対 比 と
化 石 帯 の 拡 張 ・ 精 緻 化
どまっていたために,珪藻化石層序の年代の信頼
性 は 一 般 的 に 低 い 状 態 に お か れて い た . こ れ に 対
このように上下新旧関係と広域的同時性への信
しBarronandGla(l(2nkoヽべ191)5)では,良質の古地
頼 性 が 改 善 さ れ た 新 た な 標 準 珪 藻 化 石 帯 区 分
磁気層序が測定された同一のコアで珪藻化石層序
(Akibaj986)については,その後も様々な技術革
と古地磁気層序を直接対比し,極めて信頼性の高
新が試みられ,年代精度と確実度の向上が進めら
い数値年代を珪藻化石層序に与えることに成功し
れて き た .
た.これによって,珪藻化石層序は新たな段階に入
その一つは,BarronandGladenkc)V(1995)によ
ったといえる.また,同じコアを使った(
denkov
って,北太平洋の深海掘削で得られたコアを用い
andBarron(1995)の分析により,北太平洋珪藻
て古地磁気層序と直接に対比され,化石帯の数値
化石帯は漸新世まで拡張され,珪藻化石層序はさ
年代を極めて正確に示すことができるようになっ
らに汎用性が向上した.
一方,この間,`,7anagisawaandAkiba(1990)は,
たことである.古地磁気層序とは,地球磁場の方
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図6.2.8珪藻化石層序の数値年代を算定する方法.
Simonsen&Kanaya,1961
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図6.2.9£)e酎/cu/ops/s属の種概念の変化による種数の変遷;
6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで­jθア
七
拝
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図6.2.10(::;,ljc/cy,l,耐/c❹a属,D,9nl/c❼a属および/\/eod69耐/cび/a属の系統と生存期間.
電子顕微鏡を使用した形態観察と連続的なコア試
Yanagisawa(2005)は,古地磁気層序との対比に
料の詳細な分析を併用することにより,示準種で
難のあった区間の分析を行って種々の問題を解決
ある 海生£)f。2だじz,/♂グループの分類学的研究を
し,ここに北太平洋地域の珪藻化石層序区分か実
さらに押し進め(図6.2.9),示準化石として有用な
務 的 な 地 質 ツ ー ル と して 最 終 的 に 完 成 を み た .
生存期間の極めて短い新種を多く追加し,合わせ
現在では,珪藻化石層序を使って1000万年以上
て信頼しうる進化系統関係を推定した(図6.2.10).
前 の 試 料 で あ って も 平 均 して 数 十 万 年 の 精 度 で 数
そして,YanaSrisE1ヽvElandAkiba(1998)は,この海
値 年 代 を 決 定 で き る ま で に 技 術 が 向 上 して い る
生£).,zff。Z♂グループの分類の細分化を化石帯区
(たとえば,柳沢,1999).この精度のよい珪藻化
分に組み入れるとともに,BarronandGladenkov
石層序は,古海洋学などの海洋学的研究ばかりで
(1995)の成果も取り入れて,さらに精密で高精度
なく,地層の年代を極めて正確に決定することで,
な珪藻化石帯区分を確立した(図6.2.11).その特
貝類や脊椎動物化石の進化の研究や日本海の拡大
徴は,化石帯を定義する生層準以外にも年代推定
を含む広域のテクトニクスの解明など幅広い分野
に有用な示準化石の出現や絶滅の数値年代を示し
に お いて も 重 要 な 役 割 を 果 た して い る .
て,時間分解能を向上させたことにある.また,そ
れらの示準層準(生層準)に体系的なコード番号
おわりに
( D コ ー ド ) を 導 入 して , 一 般 の ユー ザー に も 使 い
半世紀前,日本とドイツからはるばるカリフォ
やすくする工夫を行った.その後,W三tanabeand
ル ニ ア の ス ク リ ップ ス 海 洋 研 究 所 にや って き た 2
jθ,9一第6章世界に誇る日本の微化石研究
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図6.2.11
珪藻化石帯区分収anagisawaandAkiba,1998)とこ)69❹cむ//ops/s属各種の系統関係と生存期間.
人の若き研究者の絶妙な出会いがあった.東北大
扨,z面z加の論文(SinlonsenandKanaya,1961)は,
学で珪藻化石の研究を開始した後,スタンフォー
後続の多くの研究者達に大きな刺激をあたえて新
ド大学に留学して,珪藻化石の研究で著名なHanna
たな論文を次々と生み出すことになった傑作であ
博 士 の 教 えを 受 け つ つ, 世 界 に 先 駆 け て 珪 藻 生 層
り,半世紀を経て北太平洋の新第三系の精密な珪
序学の開始を告げた記念碑的な学位論文(Kanaya,
藻化石層序区分として大きな実を結んだ。現在で
1959)を出版したばかりの金谷太郎博士,そして
は,当初わずか5種しか認められていなかっだ海
珪藻分類学の大家フーステッド|孝士(FI・iedrich
生£)1。zが。/ぶ は,その後属種の概念が時代ととも
Hustedt:1886∼1968)の直弟子のR.Simonsen博士
に 洗 練 化 さ れ た 結 果 と して , 今 で は C a z ゴ & 7 z & ❹ α ,
である.そこで彼等が共著で書いた前述の 海生
£)・❹かzゐかな,Mむ・&7z汝z加の3属から構成される
6。2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで­jθ夕
総 数 3 7 種 類 も の 種 ・ 変 種 が 認 め ら れて , そ れ ら の
系 統 関 係 も 明 ら か に さ れて い る . そ の 多 く は 極 め
て短い生存期間をもち,しかも群集全体の数10%
を占める程に圧倒的に多産する場合が多いので,
生層序学的に飛び抜けて優れた
種となっている
(図6.2.10,6.2.11).これらの種属がこのような特
徴をもっているのは,もちろんそれら自体の固有
な性質であるからには違いないが,それが解明さ
significanceofanewdiatom,7で/z❹αs吋θg,?回α
s油忽面河.召αd//αパα,5:43­61.
秋 葉 文 雄 , 1 9 8 3 . 北 太 平 洋 中 高 緯 度 地 域 の 新 第 三 系 珪
藻 化 石 帯 区 分 の 改 訂 一 基 準 面 の 評 価 と 時 代 ­ . 月 刊
海洋科学,1E5:717­724.
Akiba,I;l,1986.MiddleM沁cenetoQuaternarydiatom
13祐lstraljiilraphyintheNankaiTroughandJapan
lj・ench,andmodifiedLowerMiocenethrough
Quaternarydiatomzonesformi(1(11e­to­highlatitudes
oftheNorthPacific.加H.Kagami,D.E.Karigdα/.
れたのは,SinlonsenandKanaya(1961)の刺激を
(eds.),みzぷ❹鉛加咄げp
受けて,以来半世紀にもわたって多くの研究者に
:393­48L
よ っ て 先 行 す る 研 究 を 踏 ま えて 新 た な 分 類 学 的 研
・&α£)バ//f昭丹む・/❹,87:
秋 葉 文 雄 , 2 0 0 8 . 幻 の 仙 台 産 石 灰 質 団 塊 一 珪 藻 化 石 層
序 の 話 ­ . 地 質 ニュ ース , ( 6 4 8 ) : 6 2 ­ 7 1 .
究 が 繰 り 返 さ れて , そ の 成 果 が 累 積 さ れ た 結 果 で
Akiba,F.&Y.Yanagisawa,1986.Taxonomy,
あるともいえる.つまり,ある種群についての詳
morphologyandphylogenyoftheNeogenediatom
しい分類学的検討が行われなければ,その種群の
zonalmarkerspeciesinthemiddle,to­highlatitudes
生層序学的または古生態学的価値は不明のままと
oftheNorthPacific.佃H.Kagami,D.E.Karigd❹.
(eds.),加浪z/鉛加咄げ1) ・S凹7)・引Zf昭フニ?・毎・❹,87:
なる.たとえば,ごく最近これまでの珪藻化石の
483­554.
研究ではまったく無視されるか,ほとんど注目を
Barron,J.A.,1980.LowerMiocenetoQuaternary
浴びていなかった浅海性珪藻のC加心,昂aりs属の
diatomb沁55tratigraphyofLeg57,0ffNortheastern
休 眠 胞 子 に つ い て の 分 類 学 的 研 究 が 急 速 に 進 んで ,
古第三系∼新第三系の古海洋学的復元に珪藻化石
Japan,DeepSeaDrimngPIoject.佃ScientificParty
(ed.),/肩加Z7?ゆa店げ1)gゆSaz£)耀/f昭丹・7y❼,56
&f57:641­685.
を使った新しい解釈がなされている(須藤,5.2.1
Barron,J.A.&A.Y.(11adenkov,1995.EarlyM沁ceneto
参照).さらに,S㈲濤乙zzz砂y治属やn❹αss加E。zα
l)leistocenediatoms;tratigraphyofLeg145.加D.K.
属 な どの 分 類 学 的 検 討 が 不 足 して い る 為 に 生 層 序
Rea,I.A.Basov,D.yV.Scho11,d❹.(eds.),?7rr?t?ε❹加ぶ
丿尚・C)Eazタ2f)パ//f昭7)7 μ7zg,ji函・が加Eji?f・a/お,145:
学的価値や生物進化のようすが不明のものがまだ
た く さ ん 残 さ れて い る の で, 今 後 と も 珪 藻 化 石 に
は新たな研究を進める余地が大きいと思われる.
3­19.
Brun,J.&J.Temp&re,1889.Diatom6esjyossilesdu
Jal)on,Esp(1cesmilrines&nouvellesdescalcaires
arlJi1(・uxdes艶lldaTet&・Yedo.Mj回吻笞心/αj9❶❼
乙11?7気y皿7wdどf f元豆θ仔,?yvα治だ陥面G四加1?,j&回.,
謝辞
(30):1­75.
珪 藻 生 層 序 学 の 世 界 に l 先 駆 け た パイ オ ニ ア だ っ
Burckle,L.I・I.,1972.LateCenozoicdiatomzonesfrom
た金谷太郎先生は,その記念碑的著作(Kanaya,
the(2asternequatorialPacmc.yv むαど❶耀な必,召,?治φ,
1959;SinlonsenandKanaya,1掴匪)を出版されてか
39:217­250.
Donahue,J.G.,1970.1:)回stocenediatomsasdimatic
ら半世紀後の昨年2011年8月に逝去された.小論
indkatorsinNorthPacincsedim(,nts.佃J.D.Hays,
を 筆 者 ら が 長 年 大 変 お 世 話 に な っ た 先 生 に 慎 んで
(ed.),G(・ologicallnvest汝ationsoftheNorthPacific,
捧げて,深甚なる感謝を表したい.
121­138.
Gladenkov,A.Y.&J.A.Barron,1995.01111()(2neand
earlyMiddleMiocenediatombiostratigraphyofHole
文 献
秋葉文雄,1979.f)。池cz心d倆りゆ加とその類縁種の
形 態 , お よ び 新 第 三 系 珪 藻 化 石 層 序 区 分 。 石 油 資 源
開発(株)技術研究所報,122:148­189.
Akiba,I;l,1982a.LateQuaternarydiatombiostratigraphy
oftheBemnll,;11ausenSea,AntarcticOcean.j?ゆaだが
治ε几油加/りgy7i?f・sgα❹・C四加rが治g却y・の回Vαf泌uZ
びZGかagzfa,(1(5):31­74.
Akiba,F.,1982b.Taxonomyandb stratigraphic
j7θ一第6章世界に誇る日本の微化石研究
884B.佃D.K.Rea,I.A.Basov,D.W.Scholl三回心.
(eds.),7切c;f・❹f昭sがr加1!)aの77)パ//f昭7)りgg肌
Sd・・耐加d?6❹お,145:21­41.
(・21essner,M.E,1947.1:゛IinciplesofMklopaleolltology.
Melbourneuniv(?rsityPress,U.S.A.Edition,292pp.
J()us6,A.R,1968.Newl;peciesofdiatomsinbottom
sedimentsofthePacmcandtheSeaofOkhotsk.菌w
勿出回α良丿7V乙・lz・ノαsc zrRα肋,Acad.Nauk,S.S.S.R,
3:12­21.
Kanaya,T,1959.Miocenediatomassemblagesfrom
新統の珪藻による対比.地質調査所月報,14:91­94.
theOnnagawaFormationandtheirdistributionin
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6.2北太平洋の珪藻化石層序の誕生から完成まで­j77
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