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TA 不足にある舗装損傷箇所の深層改良補修の施工事例の紹介

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TA 不足にある舗装損傷箇所の深層改良補修の施工事例の紹介
TA 不足にある舗装損傷箇所の深層改良補修の施工事例の紹介
中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋(株)
金沢支店
〇水野
卓哉
中日本高速道路(株) 富山保全・サービスセンター
中村 誠
中日本高速道路(株) 金沢保全・サービスセンター
松口 大輔
1. はじめに
中日本高速道路株式会社(以下 NEXCO 中日本 とする)金沢支社では、北陸自動車道(木之本 IC~朝
日 IC)と、東海北陸自動車道(白川郷 IC~小矢部砺波 JCT)、および、舞鶴若狭自動車道(小浜 IC~敦
賀 JCT)の 3 路線を管理しており、管理延長(IC 間距離の合計)は 340km である。
北陸自動車道は昭和 47 年に一部供用を開始してから現在まで 42 年が経過しており、路面性状だけで
なく舗装の構造的な耐力低下の課題も顕在化している。図-1 に NEXCO 中日本 金沢支社管内の各 IC 間の
供用年数と舗装厚を整理したものを示す。
2015年4月 時点
片
山
津
加
賀
41
41
小
松
41
美
川
42
42
42
金
沢
森
本
金
沢
東
金
沢
西
白
山
36
40
小
矢
部
40
砺小
波矢
J 部
40
40
富
山
西
小
杉
41
39
富
山
39
立
山
34
滑
川
34
魚
津
31
黒
部
31
朝
日
31
23
北陸自動車道
金津
砺
波
福光
41
14
丸岡
東海北陸自動車道
五箇山
39
12
福井北
39
白川郷
福井
供用年数
40年以上
38
30年以上40年未満
鯖江
38
20年以上30年未満
武生
10年以上20年未満
37
10年未満
今庄
(下り) 34 37 (上り)
舞鶴若狭自動車道
(Ⅱ期)
敦賀
34
0
小
浜
0
若
狭
上
中
0
若
狭
三
方
0
若
狭
美
浜
舗装厚
26cm以上
敦賀J
22cm以上26cm未満
34
木之本
18cm以上22cm未満
図-1 NEXCO 中日本 金沢支社管内の各 IC 間の供用年数と舗装厚
これらの路線は、主にこれまでの供用年数による交通量があたえる舗装体の疲労やひび割れの増加に
より、部分的に TA 不足となっている区間が確認されている。そこで、これら TA 不足箇所を対象に補修
を行うにあたり、抜本的な舗装耐力の回復を目的として、2 種類の深層改良補修の試験施工を行った。
本稿においては、これら試験施工の概要と知見を紹介するものである。
2.TA 不足に対する深層改良補修方法の検討
前述の深層改良補修を行うに当たり、試験施工の目的を以下のように定めた。
① 現状の舗装高さを上げないこと(単純なオーバーレイとしない)
② アスファルト系とセメント系の工法を選択すること
上記①②の施工条件を満たすべく、下記の 2 種類の施工方法を選定した。
(1) 大粒径アスファルト混合物による上層路盤の増厚工法
(2) CFA にる路上路盤再生工法による路盤層の改良
これら 2 種類の補修工法による試験施工を行い、施工性・施工後の改良効果の確認を行った。
3.試験施工の概要
3.1
大粒径アスファルト混合物による上層路盤の増厚工法
補修層の設計を行うに当たり、上層路盤(アスファルト安定処理層)の厚さを増すことにより TA 不足を
解消する検討を行った。ここでは上層路盤材として、大粒径アスファルト混合物(以下 大粒径 As 混合
物 とする)を選定した。大粒径 As 混合物の選定においては、アスファルト混合物の最大粒径を大きく
して、耐荷力・耐流動性を向上させ、増厚施工による施工能力を高めることを目的としている。
今回設計した舗装断面を図-2 に、配合設計概要を表-1 に示す。
表-1 大粒径 As 混合物の配合設計概要
骨材最大粒径
30mmTop(4 号砕石)
アスファルト量
4.8%(ストアス 60/80)
空隙率
【飽和度】
動的安定度(回/mm)
3.9%
【74.2%】
2,170
図-2 大粒径 As 混合物を用いた設計断面
3.2
路上路盤再生工法による路盤層の改良工法
補修層の設計を行うに当たり、路盤層の改良を行うことにより TA 不足を解消する検討を行った。ここ
では路盤材の改良として、CFA(セメント・フォームドアスファルト安定処理工法)を選定した。CFA 工
法の選定においては、セメントによる路盤の固結化と、アスファルトによるたわみ追従性の確保、ゼロ
エミッション(環境保全)や高耐久性、および、経済性を目的としている。
今回設計した舗装断面を図-3 に、配合設計概要を表-2 に示す。
表-2 路上路盤再生材料の配合設計概要
既設 As 混合物混入率
52.4%
アスファルト添加量
4.8%(ストアス 60/80)
セメント添加量
2.5%(無粉塵タイプ)
一軸圧縮強さ
図-3
CFA 工法を用いた設計断面
残留強度率
(MPa)
1.94
(%)
78.4
改築断面は、両工法とも事前の FWD 調査より残存 TA を算出し、残存等値換算係数(TA0)を適用し、NEXCO
設計要領より過去の交通量の実績と路床の CBR 値から、必要 TA(補修設計 TA)を満たす舗装構成断面の
設計を行った。
4.試験施工の状況概要
両工法の施工状況と施工後の仕上がり面の
状況を写真-1 に示す。
大粒径 As 混合物においては、現場締固め度
99%を示し、舗装表面のキメも良好な施工状況
となった。
また、路上路盤再生工法においては、アスフ
ァルト添加時に筋状の添加ムラが発生したが、
現場締固め度 99%に加え、所要のアスファルト
添加量、および、一軸圧縮強度を確保すること
大粒径 As 転圧状況
が出来た。
写真-1
路上路盤再生工法状況
両工法の施工状況と仕上がり面
5.補修後の改良効果の確認
5.1
FWD による残存 TA の確認
両工法による補修後の耐荷力の回復の効果を確認するために、FWD による残存 TA の確認を行った。
図-4 に大粒径 As 混合物による上層路盤の増厚工法の調査結果を、図-5 に路上路盤再生工法による路盤
層の改良工法の調査結果を示す 1)。
30
補修設計Ta=28.6cm
25
建設時Ta=24.3cm
Ta不足箇所
20
(cm)
35
30
残存Ta
35
(cm)
40
残存Ta
40
25
補修設計Ta=32.0cm
建設時Ta=26.5cm
20
既設工区 (施工前)
15
15
施工前
10
252.80
252.85
252.90
252.95
施工後1年
253.00
10
145.80
253.05
路上路盤再生工区 (施工後)
145.90
146.10
146.20
測点(KP)
測点(KP)
図-4 大粒径 As 混合物 残存 TA 調査結果
146.00
Ta不足箇所
図-5
路上路盤再生工法による残存 TA 調査結果
図-4 の大粒径 As 混合物の上層路盤の増厚工法では、施工前においては残存 TA が建設時 TA(24.3cm)を
下回っており TA 不足が確認されたが、補修後においては残存 TA は約 35cm に回復し、補修設計 TA(28.6cm)
を満たしていることが確認された。また、図-5 の路上路盤再生工法では、現状の既設工区においては残
存 TA が一部建設時 TA(26.5cm)を下回っており Ta 不足が確認されたが、補修後においては路上路盤再生
工区では残存 TA は約 38cm に回復し、補修設計 TA(32.0cm)を満たしていることが確認された。
5.2
順解析による補修後の将来の許容輪数の推計
上記 5.1 での FWD にて測定された「たわみ量」を基に、補修後の各工法の許容 49kN 輪数(残存寿命)
の推計を行った。
ここでの順解析は、土木学会にて公開されている「GAMES」を使用した。
各工法の許容 49kN 輪数の試算結果を整理したものを表—3 に示す 2)。
表-3 各工法の許容 49kN 輪数と残存寿命
工法
Nfa 輪数(百万輪)
Nfs 輪数(百万輪)
破壊傾向予測
大粒径 As 混合物工法
381
475
Nfa<Nfs
路上路盤再生工法
217
579
Nfa<Nfs
Nfa:路面がひび割れ率 20%となるまでの 49kN 輪荷重の許容回数
Nfs:わだち掘れ量が 12.7mm(1/2 インチ)に達するまでの 49kN 輪荷重の許容回数
今回の補修の設計舗装断面構成においては、表-3 より Nfa と Nfs を比較すると、両工法とも Nfa の方
が Nfs よりも小さくなっており、将来的に「疲労ひび割れ」により舗装体の破壊が進展するものと推測
された。また、大粒径 As 混合物工法の方が路上路盤再生工法よりも許容 49kN 輪数が大きくなることが
推察された。
6.両工法の総合的な適応性の検討
今回の TA 不足箇所に対する両工法の適応性を総合的に評価したものを表-4 に整理する。今後は両工
法の定期的な追跡調査を実施し、施工条件に応じた適用工法のルール化の整理を検討する予定である。
表-4 試験施工の適応性の評価一覧表
検討項目
施工性
施工時間
(優) ← 評価内容 → (劣)
施工単価
路上路盤再生
Ta 回復
許容輪数
Co2 削減
大粒径 = 路上路盤再生
大粒径 > 路上路盤再生
路上路盤再生 > 大粒径
大粒径
>
路上路盤再生
>
大粒径
コメント・注記
大粒径は As 施工機械の 1 編成で施工が可能
路上路盤は、リミキサ + As 施工機械の 2 編成が必要
路上路盤再生はリサイクル材を利用するため材料費用が安
価
両工法とも改良厚が厚いため、補修断面設計検討が重要
両工法とも将来的に疲労ひび割れが進展するものと推測
路上路盤再生はリサイクル材利用・常温施工が利点
7.まとめ
1. 供用後 40 年以上経過した路線に対して、抜本的な舗装耐力の回復を目的として、2 種類の深層改良
の試験施工を実施した。
2. FWD にて補修前後における残存 TA を測定した結果を基に、両工法とも補修により所要の TA の回復を
確認することが出来た。
3. 今後においては、両工法の定期的な追跡調査を実施し、施工条件に応じた適用工法のルール化の整
理を検討する予定である。
<参考文献>
1) 水野、森山、西澤:Ta 不足箇所における大粒径 As シックリフト工法と路上路盤再生工法の適応性の検討
(その 1)、平成 26 年度 土木学会年次学術講演会 Ⅴ部門
2) 石田、水野、西澤:Ta 不足箇所における大粒径 As シックリフト工法と路上路盤再生工法の適応性の検討
(その 2)、平成 26 年度 土木学会年次学術講演会 Ⅴ部門
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