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ケベック文庫の設立

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ケベック文庫の設立
―蔵書の玉手箱―
ケベック文庫の設立
小畑 精和*
ケベック州政府から助成を受けて、2005 年度にケベック文庫が設立され、
2006 年度より実質的な資料収集が始まっている。これは世界でもケベック
州外ではベルギーのリエージュ大学に次いで二番目のケベック研究資料セ
ンターである。まだ、十分な資料があるとは言いがたいが、ケベックに関
する図書・文献資料の収集、さらに、データベース・ネットにも加入する
予定で、わが国唯一のセンターとして、ケベック研究のみならず、カナダ
研究の重要な拠点になるだろう。
明治大学とカナダの関係は深い。最初の海外協定校はトロントにあるヨー
ク大学で、現在でも夏季語学研修を始め活発に交流を続けている。他にも
四校ある協定校のうち、ケベック州にあるのが、モントリオール大学で、
昨年協定を結び学生交換を早速行なっている。マッギール大学、ラヴァル
大学、ケベック大学モントリオール校(UQAM)とも協定を検討中である。
学内にカナダ研究者も多く、
日本カナダ学会(JACS)では、
藤田直晴副学長・
国際交流センター所長が現会長であるし、数名の教員がメンバーとして活
動している。また、ケベック文庫設立と同時期、2006 年度 2 月に特定課題
研究所として、
「明治大学カナダ研究所」が設立されて、それまで個別に行
なわれていた研究を総合して、共同研究を進めている。
授業としては、カナダ連邦政府から助成を受けて、国際交流センター主
催で長年開かれてきた「カナダ連続講座」が、2005 年度からは正式な単位
付与科目・学部間共通総合講座として、
「現代のカナダ」となり、様々な学
部から百数十名の学生が受講している。また、ケベック州政府から助成を
*おばた・よしかず/ケベック文庫選書委員会委員長/明治大学カナダ研究所・所長/政
治経済学部教授/フランス文学
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受けて、2003 年度より政治経済学部で特殊講義「現代のケベック」が開講
されている。後者はわが国でケベックだけを取り扱う唯一の授業であり、
毎年、70 ~ 100 名前後の履修者を集めている。
カナダは多文化主義を掲げ、国際社会で相互理解を熱心に進めていこう
としている注目の国である。対人地雷撤廃条約締結や国際刑事裁判所設立
に関してイニシアティヴをとって国際世論をリードしたし、国連の合意な
きイラク戦争に反対したことは記憶に新しいし、アメリカのミサイル防衛
構想に加わらないことを 2005 年に決定している。アメリカ合衆国と緊密な
関係にありながら、対米追随ではない外交を展開している点はわが国にも
大いに参考になるだろう。
問題は研究者にとっても、学生にとっても、日本では資料がまだまだ少
なく手に入りにくいことであろう。ケベック研究を志す大学院生が徐々に
増えてきているが、彼らに必要な基本的な資料をケベック文庫はまず揃え
なければなるまい。さらに、
学部学生にとっては入門書の類も必要であろう。
歴史・地理、政治・経済、社会・文化、どの分野をみても、日本語の文献
資料は数もまだ少なく、ケベック文庫にそれらすべてを収集することは可
能であろう。
もちろん、それだけでは不十分である。ケベックに限らず、人文・社会
科学において、ある地域・国の研究を掘り下げて行なおうとするならば、
当然そこで使用されている言語の習得が不可欠である。外国語で翻訳され
たもの、二次資料を通じた研究ではいつまでたっても本格的なものにはな
りえまい。日本語に翻訳されていない重要な資料は多い。これらをすべて
収集するわけにはいかないので、基本的なものは当然として、それと並行
して重点分野を決めて資料収集していかざるをえまい。また、マルチメディ
アの時代に相応しく、データベースにアクセスできるようにし、デジタル
資料の収集も考えていかねばなるまい。
繰り返しになるが、この文庫はわが国における最初で唯一のケベック資
料センターである。充実した文庫に育てて、学内者だけでなく、多くの学
外者からも利用される、明治大学図書館の名物の一つにしたいものである。
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