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FTC,BP アモコ/アルコの合併を承認
FTC,BP アモコ/アルコの合併を承認 BP アモコ、アルコの両社は4月13 日米国連邦取引委員会(FTC)から両社の合併につい て同日付で承認を得たとの発表を行った。1999年4月の買収発表以来実に1年余を経 ての承認である。「国際エネルギー動向分析」3月号で FTC と BP アモコの確執、法廷闘争 突入の可能性を取り上げたが、以下ではその後今回の承認に至るまでの経過を追いつつ、 4月18日に買収を完了し株式時価総額(2000億ドル)で世界第3位のスーパーメジャ ーとなった合併後の新会社の今後の事業展開に考察を加えてみたい。 2月早々合併阻止の仮命令を求めて訴えを起こした FTC 及び西海岸3州は3月20日の 審問開始を数日後に控え法的手続きを停止した。両社がアルコのアラスカ資産の全てをフ ィリップスに売却することに合意したことで、FTC の最大の反対理由が無くなったからと される。一部にはホワイトハウス高官が裁判開始を回避する方策を求めて動いたとの報も ある。その後も FTC 専門スタッフとBP側の協議が継続される中で、FTC が提訴理由に挙 げた項目に対しBP側の FTC 意向に沿った対応策が発表されてきた。そして4月13日F TC委員5人全員がそれまでのBP側との合意内容に賛成しBPアモコ/アルコの合併が承 認されたわけである。尚正式には 5 月 15 日までの 30 日間FTC同意に対する意見を受け 付けた後 FTC が最終決定を下すことになっている。 ここでBP側対応の内容を簡単に見ておきたい。 ・アルコのアラスカ全資産の処分について。フィリップスに 70 億ドルで売却を同意した後 エクソン・モービルから先買権を理由に売却阻止を提訴され先行きが懸念されたが、プル ードー・ベイ油田の権益調整、即ち両社の原油持分を増やし、一方でBPはガスの増量と 単一オペレーターの位置を確保することで合意に到った。尚対象資産には、タンカー、パ イプライン、長期供給契約等に加えアルコ従業員の扱いまで含まれている。当初言われた 買収効果 10 億ドルの内アラスカ分 2 億ドルが減ぜられ痛手になるかと思われたが、ジョ ン・ブラウン会長はその後シナジー効果はアラスカ資産処分後でも 10 億ドルが期待できる と発表している。 ・ANS 原油の輸出懸念について。フィリップス社は輸出をしないとし、BPは原油持分全 量がアルコの西海岸製油所に必要であるとしている。が、他方 FTC 委員長ピトフスキー氏 とトンプソン委員は承認発表とは別に輸出問題に更に踏み込めなかったことに失望の意を 表明した。他 3 委員の過剰規制の意見に押し切られたようである。 ・原油市場に影響ありとされたオクラホマ州クッシングのアルコ資産について。FTC の要 求は 5 資産を委員会の承認する買い手に 4 ヶ月以内に売却するというものである。これは 先に発表されたアルコ・パイプライン社をデューク・エナジーの子会社のパイプライン会 社に売却することで満足していると言われる。 BP アモコが一方的に譲歩したかに見える今回の取引だが、アナリストは経済的合理性が あり同社にとって非常に魅力的なディールであると見る。アルコ取得によりBPアモコは 北海、北米を主たる拠点としていた石油会社から世界的エネルギー企業に転身するとし、 アルコの西海岸での精製販売事業獲得により下流事業のネットワークが米国全土に及ぶこ とに加え、非常に有望な天然ガス資源をアジア、米国で追加できることを挙げる。ブラウ ン会長が主要な成長地域としてメキシコ湾、カスピ海に加え世界的ガス事業に言及してい ることを考え合わせると、「今日の原油生産を明日のガス生産に代える」としてアラスカの 権益調整でガス増量を採った対応も良く理解できる。 ところで FTC の提訴から承認までの間に発表された同社関連の記事で、BP 側の FTC 対 策以上に気を引かれたのは、更なる拡大を志向する内容の記事が目立ったことである。潤 滑油事業で世界有数のカストロール買収、アルコが 82%を持つ米産油会社ヴァスター社の 買取オファー、最近ではアジアのガス事業で実績を挙げるユノカルを次ぎの目標としてい るとの観測記事も出ている。米国独立系探鉱開発会社トライトンの名も挙がる。スペイン では自由化されたガス市場に外資として初の参入を果たし、中国では、ペトロチャイナと の間で天然ガス販売を目指す JV 設立に合意し更に同社の IPO で売り出される株式の 20% 取得についても合意したと報じられている。本合意内容には燃料油販売事業の推進に加え、 将来のLNGターミナル、中国の東西を結ぶガスパイプライン、東シベリアからのガス販 売での協力まで含まれる広範なものである。さらに観点を変えれば E・コマース関連の記事 にも名を連ねる。実にそのエネルギーには驚嘆させられる。 最近の報道によると「BP Amoco」を「BP」にすると言う。オールド BP ではなく、ニ ューBP であると。新生 BP の今後の事業展開に注目したい。 (国際動向分析グループ主任研究員 宮森 悠)