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第 2 日目 口頭演題・ポスター演題

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第 2 日目 口頭演題・ポスター演題
1-3-01
粟飯原けい子 1)、青柳陽一郎 2)、稲本陽子 3)、原 豪志 2)、大國茉莉 1)、増田容子 1)、
今枝小百合1)、才藤栄一 2)
日 程
High resolution manometry (HRM) を用いたeffortful swallow、
Mendelsohn maneuver、supraglottic swallowの生理学的評価
藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション部 1)、藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学I講座2)、
藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科3)
岩村健司、小薗真知子、塩見将志
熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻
下回数、嚥下音発生時における嚥下筋活動、むせ、咳、排
反射、排痰行為、嚥下筋活動などについて、無拘束・無意
痰行為などの気道防御反応の回数を比較した。【結果】安
識下で、簡便にかつ客観的に評価することを目的とした測
静時の嚥下回数は14.6回、平均嚥下筋活動は43.71%、
定方法を開発し、有用性を検討してきた。今回、本測定法
気道防御回数は8.8回であった。また、活動時の嚥下回数
を用いて、高齢者を対象に日常生活における不顕性誤嚥の
は15.4回、平均嚥下筋活動は43.83%、気道防御回数は7.4
防御機構について検討したので報告する。【方法】後期高
回であった。【まとめ】今回、高齢者における日常的な嚥下
齢者5名(平均82歳)を対象とした。対象者には、嚥下音
筋活動においては、安静時、活動時ともに、最大筋活動の
やむせ、排痰時に発生する音声を記録する咽喉マイクとIC
50%ほどの筋活動を要しており、高齢化にともない嚥下筋
活動の効率性や気道防御反応が低下してくる可能性が示唆
筋電計を、それぞれ輪状軟骨直下気管外側や舌骨上筋群上
された。
の皮膚に装着し、安静時、活動時における30分あたりの嚥
153
ポスター演題2日目
レコーダ、および嚥下筋活動を記録するリアルタイム積分
口頭演題2日目
【はじめに】われわれは、不顕性誤嚥の防御機構である咳
ポスター演題1日目
高齢者における日常的な不顕性誤嚥の防御機構に関する検討
口頭演題1日目
1-3-02
あった。 舌根部圧は、同じく、265 ± 75、275 ± 75、
265 ± 75、255 ± 83、231 ± 67 mmHg であった。
上咽頭圧、舌根部圧ともに、正常嚥下に比べてeffortful
swallow、Mendelsohn maneuver、SGSで有意に高かっ
た(Wilcoxon検定, p<0.01)
。 食道入口部弛緩時間は、
499 ± 124、554 ± 156、521 ± 85、472 ± 70msec
あり、 正 常 嚥 下 に 比 べ てMendelsohn maneuverで 有
意に長かった(p<0.05)
。【 考 察と結 論 】 手 技に精 通し
た被検者で計測したため嚥下手技の正確性は高いと考え
られる。3つの嚥下手技ともに咽頭圧は高く、咽頭残留
例で推奨されるべき手技であることが支持された。 特に、
Mendelsohn maneuverでは食道入口部弛緩時間が延長
しており、食道入口部弛緩不全患者に有効である可能性が
示唆された。今後、嚥下手技に精通した健常人、さらに嚥
下障害患者を対象に嚥下圧測定を行い、生理学的特徴を明
らかにするとともに、嚥下手技の適応を検討したい。
特別プログラム
【目的】努力嚥下(effortful swallow)
、メンデルソン手
技(Mendelsohn maneuver)supraglottic swallow
(SGS)など種々の嚥下手技が提案されている。しかし、
その生理学的事象には一定の見解が得られていない。マ
ノメトリーを用いた報告の多くは、数センチ刻みで4チャン
ネルのみ有する従来型のタイプが用いられており、食道入
口部弛緩時間の計測等で制限があった。本研究では、36
センサーを有し、より正確に計測可能なHigh resolution
manometry を用いて測定し、知見を得たので報告する。
【対象】嚥下手技に精通した言語聴覚士13名。【方法】濃
いとろみ3mlを嚥下し、effortful swallow、Mendelsohn
maneuver、SGS、通常嚥下を各2回ずつランダムに行い、
各嚥下手技での上咽頭圧、舌根部圧、食道入口部弛緩時
間を計測した。【結果】上咽頭圧は、effortful swallow、
Mendelsohn maneuver、SGS、通常嚥下の順に、222
± 55、212 ± 61、198 ± 43、171 ± 49mmHgで
1-3-03
日 程
嚥下造影検査における嚥下時の喉頭運動速度の解析
-検者内・検者間信頼性の検討-
中尾雄太 1)、大西英雄 2)、城本 修 2)、土師知行 2)、福岡達之 1)、齋藤翔太 1)、坪田功美恵 1)、
柳清尚美 1)、児玉典彦 3)、道免和久 3)
兵庫医科大学病院 リハビリテーション部1)、県立広島大学大学院 総合学術研究科2)、
兵庫医科大学 リハビリテーション医学講座3)
特別プログラム
【目的】嚥下造影検査の運動解析には、舌骨や喉頭の移動
の計4名で行った。検者内信頼性を検討するデータはVF動
距離を計測する方法があるが、これまでに喉頭運動速度に
画10名分、検者間信頼性を検討するデータはVF動画3名
着目し解析した報告はない。本研究では、嚥下時の喉頭運
分とした。統計的解析は級内相関係数ICC(1,1)、ICC(2,1)
動速度を検討する上での測定の検者内・検者間信頼性を求
を用いた。【結果】検者内信頼係数は、平均速度を求める
め、最適な測定方法を検討することを目的とした。【対象と
ための解析フレーム数が3、5、7フレームのときに0.9以上
方法】喉頭運動速度を解析するための対象データは、当院
であった。検者間信頼係数は、平均速度を求めるための解
口頭演題1日目
でVF検査を実施した嚥下障害患者13名のVF動画(30フ
析フレーム数が5、7、9、11フレームのときに0.9以上であっ
レーム/秒)とした。喉頭運動はVF画像上の声帯前交連上
た。【考察】解析フレーム数が5フレームもしくは7フレーム
縁の動きと定義し、フレームごとに観測した。喉頭運動速
のときに、検者内・検者間ともに良好な結果であった。以
度は、対象フレームを基準とし、前後複数フレーム分の喉
上より、喉頭運動速度の測定には、フレーム数の少ない5フ
頭運動の平均速度とした。さらに、最適な測定フレーム数
レーム分の平均速度を算出する方法が妥当であり、この解
ポスター演題1日目
を検討するために、平均速度を算出するためのフレーム数
析方法を用いることで、経験がない者でも正確に測定する
を1、3、5、7、9、11フレームに変化させ、それぞれ喉
ことが可能と思われた。今後は喉頭運動速度と嚥下機能の
頭運動速度を測定した。測定はVF定量解析の経験がある
関係、測定の有用性について症例を増やして検討していく
言語聴覚士2名とVF定量解析の経験がない言語聴覚士2名
予定である。
1-4-01
ALS2症例における唾液量減少を目的とした唾液腺上皮膚のアイスマッ
サージの試み〜QOL向上を目指して〜
八鍬央子、天笠雅春、大隅悦子、今井尚志、高橋里佳
山形徳洲会病院
口頭演題2日目
【 はじめ に 】 唾 液 腺 上 皮 膚 の ア イ ス マッサ ー ジ(Ice
かった。【方法】2症例とも、アイスクリッカーを用いて週に
ポスター演題2日目
Massage;以下IM)が唾液量減少に効果があることは経験
3 〜 6回、1日1回左右3分ずつIMを施行した。毎回施行前
的に知られているが、その報告は少なく、ALS症例での報
に、簡易型唾液分泌量測定シートで口腔内の唾液量を測定
告は見当たらない。今回、QOL向上を目指して唾液量減少
した。また、自覚的な「唾液量」
(症例1と2)と「むせの
を目的としIMをALS2症例で施行したのでその経過を報告
回数」
(症例1のみ)の程度を、10段階評価で聴取した。【結
する。【症例】症例1:50歳代女性。2005年発症、2013
果と考察】症例1は、IM施行開始翌日から唾液量・むせの
年気管切開・人工呼吸器装着。装着後著しい流涎がみられ
回数ともに著しく減少し、QOLの向上につながった。症例
たが薬物療法で減少した。しかし、口渇や眠気などの副作
2は、IM導入後も唾液量の減少はほとんどみられなかった。
用がひどく薬を減量したところ、再び唾液量が増加し、そ
症例1で一時的な転院によりIMを施行できなかった時期に
れに伴いむせの回数も増加してQOLの低下を来したため、
増加を自覚した唾液量が、IM再開後に再び減少したことよ
2013年6月IM開始。症例2:60歳代男性。2000年発症、
り、唾液量の減少はIMの効果であると考えられる。流涎の
2004年気管切開・人工呼吸器装着。病状の進行に伴い増
多いALS患者に対して、侵襲の少ないIMの導入はQOL向
加した流涎によりQOLが低下してきたため、薬物療法を行
上に寄与できる可能性が大きいと考える。今後は、症例を
うも効果が乏しく、2013年12月IM開始。2症例とも、IM
重ねて症例1と2のIM効果の差の原因を見極めることが必
開始時は、四肢・体幹で随意的に動かせる筋はほとんどな
要であると思われる。
154
1-4-02
赤田茉奈美、吉川文恵、木村知行
医療法人 寿人会 木村病院
X+35日胃瘻造設。X+78日3食経口摂取可能。X+100日
嚥下機能の異常を合併する。嚥下機能が低下し、経口摂取
VFにて食塊形成・移送不良、喉頭侵入、咽頭残留を認めた。
が困難または制限される状態は、当事者のQOLを低下さ
基礎訓練に舌抵抗訓練、嚥下おでこ体操を追加し、家族へ
せる。 今回、PD増悪し、嚥下障害が合併した患者に対し
間食指導を行った。X+163日FIM43点、HDS-R11点。発声・
嚥下訓練を開始したところ経口摂取が可能となり、外食の
構音機能は気息性嗄声・声量改善、発話明瞭度1.5。舌運
機会に至った症例を経験したので報告する。【症例】80代、
動範囲・筋力向上。 嚥下機能はRSST3回、摂食嚥下の能
女性、Yahr分類5、要介護4。X-211日誤嚥性肺炎発症。
力Gr.8。VF上、食塊形成・移送改善、喉頭侵入・咽頭残
留減少を認めた。軟飯・軟菜刻み食・水分ポタージュ状を
PD増悪、徐々に経口摂取困難。X-36日急性腎孟腎炎発
自己摂取可能となり、外食の機会が得られた。【考察】本
症、経鼻経管栄養管理。X日摂食機能療法開始。JCS-20、
例は、PD増悪後嚥下訓練を行い再度経口摂取が可能とな
FIM23点、簡単な会話可能。発声・構音機能は気息性嗄声、
り、QOL向上に至った。その要因として、早期より経管栄
声量低下、発話明瞭度2、舌の不随意運動、運動範囲制
養を併用した栄養管理及び摂食訓練を行い廃用萎縮の助長
限、筋力低下を認めた。嚥下機能はRSST2回、MWST5、
予防ができたと推測された。このことにより、口腔期や咽
FT5、摂食嚥下の能力Gr.3。【経過】訓練開始時は口腔
頭期の摂食嚥下機能が改善されたと考えられる。また、間
ケア、口腔器官運動など基礎訓練とプリンを用いた摂食訓
食指導などできることを増やすことも外食実現に重要であっ
練を行った。しかし、経口より栄養必要量確保困難のため
た。
継続的な嚥下訓練により経口摂取量の増加を認めた一例
中村万理子 1)、木村 航 1)、岩槻 厚 2)、牧野日和 3)、辰巳 寛 3)
行岡病院 言語療法科1)、ゆきおか訪問看護ステーション2)、愛知学院大学 心身科学部3)
経口摂取量は約6割。入院88日目、全粥・きざみ食へ変更し、
栄養状態に合わせた段階的嚥下訓練を継続することで経口
更に摂取量増加。【再評価】入院130日時点で、MWST:
摂取量の増加を認めたので報告する。【症例】89歳、女性。
4、FT:5、昼のみきざみ食半分量を見守り下で10割摂取
【疾患名】尿路感染疑い、心不全。【合併症】高血圧。【現
可能となり(総エネルギー摂取量1324Kcal、TP=6.3)
、
病歴】入院1 ヵ月前から両下腿の浮腫著明、入院4日前に
退院時(入院9 ヵ月後)には昼・夕、きざみ食半分量を経
食欲不振・熱発・頻尿を認め、近医受診後に当院入院。入
口摂取可能となった(TP=6.6)
。【考察】本症例は高齢や
廃用、誤嚥性肺炎による侵襲などの要因により嚥下障害を
呈し、経口摂取量の減少・低栄養をきたした。しかしながら、
TP5.7。【初期評価】RSST:1回、MWST:3b、FT:3b。
胃瘻からの栄養摂取と状態に合わせた段階的嚥下訓練の継
VF検査:喉頭蓋谷に食物残留を認めた。
【経過】入院43日目、
続により、廃用症候群の防止だけでなく、嚥下機能の改善・
昼のみペースト食半分量にて嚥下訓練開始。むせ・努力性
経口摂取量の増加に繋げることができた。胃瘻造設後の直
嚥下・疲労感を認め、摂取量は約3割(総エネルギー摂取
接的嚥下訓練においては、全身状態と栄養状態の変化に配
量880kcal)
。入院63日目、胃瘻造設。2日後から経管栄
慮しつつ、安全な経口摂取条件を考慮して慎重に対応する
養開始し、昼のみペースト食半分量にて嚥下訓練再開(総
ことが重要と考えた。
エネルギー摂取量1300kcal)
。入院68日目、むせが減少、
155
ポスター演題2日目
院27日目に重度誤嚥性肺炎を発症し絶食となり、入院36日
目に言語療法開始となった。 入院時栄養状態:BMI17.6、
口頭演題2日目
【はじめに】誤嚥性肺炎後に胃瘻造設となった症例に対し、
ポスター演題1日目
1-4-03
口頭演題1日目
X-192 〜 103日回復期病棟を経て施設入所待機中X-60日
特別プログラム
【はじめに】パーキンソン病(PD)では半数以上の症例で
日 程
胃瘻造設後3食経口摂取となったパーキンソン病の一例
〜“外食に行きたい”を実現するために〜
1-4-04
日 程
繰り返すCOPD増悪の原因精査目的にST介入し、嚥下障害が明らかと
なった一例
柳田直紀 1)、佐々木由美子 1,2)、中尾桂子 2)
独立行政法人国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター リハビリテーション科1)、
独立行政法人国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター 内科2)
【はじめに】慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の急性増悪
反射の遅延と喉頭侵入を認めた。この結果からSTでは液体・
特別プログラム
は生命予後を悪化させる。急性増悪の一因として誤嚥性肺
炎の関与が報告されている。今回、肺炎を繰り返す明らか
食事の摂取方法などの指導と家族指導を行った。
【考察】本症例はVF結果から誤嚥リスクが高いと考えられ
な脳血管障害の合併・既往のないCOPD症例を経験したの
たが、ベッドサイドの評価では質問紙でA項目1つ該当とい
で若干の文献的考察を加え報告する。
う点がリスク評価に有用であった。しかし、項目内容は体重
【症例】70歳男性。 主訴:たまにむせる。 喫煙歴:40本/
減少であり、特異的な指標とはならなかった。先行研究で、
日×47年(18 〜 65歳)。 現病歴:X-3年頃より咳が悪化。
COPD外来患者のVF検査にて85%が嚥下困難を示し、無
X-2年3月当院紹介受診しCOPDと診断。以降外来フォロー
症候性の誤嚥や喉頭侵入が56%に認められたとの報告があ
となっていたが肺炎を繰り返すようになる。胸部画像所見か
り、本症例も喉頭侵入の点で一致している。
口頭演題1日目
ら誤嚥性肺炎が疑われ、X年9月嚥下機能評価目的にて入
【結語】COPDによる嚥下障害の症例報告は少ないが、潜
院となる。
在的に相当数の患者の存在が示唆される。COPD患者にお
【ST評価】発声・発語器官:明らかな問題なし。RSST:5
いて嚥下評価は重要であり積極的なST介入が望ましい。今
回/30秒。MWST:5。聖隷式嚥下質問紙:A項目1項目該
後COPDの嚥下障害早期発見方法や嚥下障害の機序に合
当。食事場面:摂取ペースが速く一口量も多いが、むせは
わせた介入方法を前向きに検討したい。
認めず。VF所見:明らかな誤嚥は認めないが、液体は嚥下
ポスター演題1日目
1-4-05
喉頭閉鎖術を試行する事で経口摂取再開しADLが向上したパーキンソン
病の一例
森元隆行、勘藤和美、瀬戸大貴、為季周平
社会医療法人 緑壮会 金田病院
口頭演題2日目
【はじめに】パーキンソン病(PD)では、症状の進行に伴い
例の経過について検討したので報告する。
【症例】
77歳男性、
となり身体機能面の改善もみられFIM34点とADLの向上も
ポスター演題2日目
X−7年全身の筋固縮などの症状を認めPDの診断となる。X
みられた。【考察】本例は重度の嚥下障害を有していたが、
−2年頃より誤嚥性肺炎による入退院を繰り返し徐々に嚥下
喉頭閉鎖術を試行する事で誤嚥性肺炎は消失し経口摂取再
機能も低下。X−1年9月に胃瘻造設し経口摂取は中止とな
開可能となった。継続する誤嚥性肺炎による炎症が消失し
21点。嚥下機能はMWSTプロフィール2点、RSST1回/30
嚥下障害を発症し、生命予後に影響する。リハ介入での嚥
秒、藤島グレード2と重度に障害されていた。1カ月毎に誤
下機能維持や誤嚥性肺の予防が重要となるが症状が進行す
嚥性肺炎での入退院を繰り替えしたためX年7月に医師より
れば肺炎予防のため外科的出術も検討となる。嚥下機能低
喉頭閉鎖術の提案あり本人・家族の同意が得られA病院に
下のため胃瘻造設するが誤嚥性肺炎を繰り返すため喉頭閉
て試行となる。術後10日に当院転院し食事は常食摂取可能
鎖術を試行し経口摂取再開並びにADLの改善がみられた症
となり誤嚥も認められなかった。移乗動作は軽介助レベル
るがその後も誤嚥性肺炎での入院を繰り返し喉頭閉鎖術の
栄養状態が改善したことで身体機能の向上に繋がったと思
適応判定のため当院入院となる。【経過】意識は清明、
コミュ
われる。喉頭閉鎖術を検討するにあたり意思伝達方法、本
ニケーションは呼吸筋群の協調性乏しく音声の表出は困難
人の食事への意欲、誤嚥性肺炎のリスクなどを考慮する必
であったがノンバーバルなうなずきや書字にて意思疎通は
要があると思われた。
可能であった。身体機能は四肢の固縮を認めADLはFIM;
156
1-4-06
摂食嚥下障害者のVF所見における嚥下機能と栄養状態との関連性
金沢西病院 リハビリテーションセンター
【目的】当院ST科では、誤嚥リスクの軽減を目的としてVF
±12.6点と有意な差はなかった。(p=0.471)FILS得点で
は、なし群が平均5.1点、あり群が4.4点と大きな差はなかっ
廃用症候群でのST介入者が多い現状があり肺炎による絶
た。(p=0.364)3.栄養状態についてMNA-SFの得点は、
食状態からの介入が多い。絶食状態からの低栄養状態が多
なし群が平均4.0±2.0点、あり群が3.3±2.1点と両群共に
い中、VF所見で嚥下機能と栄養状態との関連について検
低栄養を示した。(p=0.228)CONUT値について、なし
討したので報告する。【方法】対象は平成26年4月~ 12月
群が平均6.3±2.3点、あり群が7.0±2.1点と両群共に中等
の入院患者でVF施行した誤嚥なし群(なし群)と誤嚥あり群
度異常であった。(p=0.412)4.誤嚥リスクに関しては、あ
(あり群)36名において1.背景因子(疾病、年齢、性別、
り群が口腔問題あり、咽頭残留ありが有意に多かった。(p
<0.05)残留箇所については、なし群が残留箇所なしが多
かった。一方、あり群は残留箇所が1箇所、2箇所、3箇所
視的に比較検討した。【結果】なし群24名とあり群12名に
全てにおいて有意に多かった。(p<0.05)
【考察】当院VF
おいて1.背景因子について、全体の平均年齢が84.7±6.1
施行者において、全体に栄養状態は低下していた。誤嚥な
才であり、有意差はなし。(p=0.939)性別について、あ
し群であっても、栄養状態に加えて、リスクが重複すること
り群が、男性が有意に多かった。(p<0.05)2.ADLについ
で誤嚥の危険性が高まる事が示唆された。
て、FIM得点でなし群が平均34.0±19.8点、あり群で29.4
経口摂取回復を行ない自宅退院した胃瘻造設症例
菜切秀行 1)、青木 淳 1)、吉田麻里 1)、渡邉和也 1)、松田朋子 2)、竹内麻由美 3)、森本奈津代 4)、
粕壁美佐子 5)、荒木一将 6)、林 英司 7)
【はじめに】昨年4月の診療報酬改定では胃瘻造設を施行
閉じられないであった。嚥下評価より術後筋萎縮からの顎
する患者に対して術前嚥下機能検査および術後経口摂取回
関節脱臼を伴う開口状態、それに加齢に伴う経口摂取能力
復を推進する方向性が示された。今回我々は経口摂取継続
の低下による嚥下障害と診断した。胃瘻造設直後より経口
しながら胃瘻造設術を施行し、自宅退院した症例を経験し
摂取を再開、その後閉口処置も併施し、経管栄養手技と経
口摂取方法を家人に指導した後に自宅退院となった。【まと
腔癌と診断し愛知県がんセンターでの手術後に当院で経過
め】今回の症例は下痢症状のため半固形化経管栄養剤を使
観察を行っていた。ただ経過と共に嚥下機能は低下し、高
用したが高齢の家人には経管栄養手技の早期獲得に寄与し
栄養飲料のストロー摂取で栄養確保していた状態であった。
た。ただし退院後の経口摂取は行なわれておらず、経管栄
誤嚥性肺炎を誘発し当院に搬送入院。【経過】絶食・抗菌
養により必要栄養量確保が出来ても経口摂取行わない事で
剤投与により病状回復したものの、経口摂取のみでの栄養
嚥下機能の廃用が誤嚥性肺炎につながるという意識付けが
確保は困難との判断で胃瘻造設が予定され、同時に摂食・
家族に徹底出来なかったと思われ、今後併用させる指導が
嚥下チームにも依頼された。依頼時の主訴は口がしっかり
重要な課題であると考えられた。
157
ポスター演題2日目
たので報告する。【症例】88歳男性で、7年前に当院で口
口頭演題2日目
半田市立半田病院 リハビリテーション科1)、半田市立半田病院 看護局2)、半田市立半田病院 薬剤科3)、
半田市立半田病院 中央臨床検査科4)、半田市立半田病院 栄養科5)、半田市立半田病院 歯科・歯科口腔外科6)、
半田市立半田病院 外科7)
ポスター演題1日目
1-4-07
口頭演題1日目
NST介入率)
2.ADL
(FILS得点、FIM得点)
3.栄養状態
(MNA
−SF、CONUT値、ALB値等)4.誤嚥リスクについて後方
特別プログラム
検査を毎週行い、誤嚥性肺炎の予防に努めている。また、
日 程
上野真由美
1-4-08
回復期病棟における言語聴覚士の栄養面への介入
日 程
小島 香、尾崎健一、森 志乃、宮岡華奈子、伊藤恵理奈、橋爪美香、田口大輔、鈴村彰太、
谷奥俊也、原田惠司、伊藤直樹、近藤和泉
国立長寿医療研究センター 機能回復診療部
【目的】回復期リハビリ病棟入院の高齢者では、低栄養に
量の増加を目標として嚥下調整食1400kcal、うち蛋白質
特別プログラム
加えサルコペニアの罹患率が多いとの報告がある。栄養状
約60gの摂取に加えて、リハビリの際にアミノ酸配合飲料
態を考慮したリハビリプログラムを立案する上で、栄養アセ
を追加した。飲料摂取においてはVFで水分誤嚥を認めた
スメントや栄養ケアは重要である。チーム医療の中でSTが
ため、病棟にも協力を依頼しとろみ付きでの摂取を行った。
栄養面への介入を行った経験を、症例を通して報告する。
PTは立位・歩行訓練、OTは移乗動作・立位訓練を実施した。
【症例】脳出血で入院した80歳代の女性、第25病日で回復
定期評価で日常生活動作の介助量の軽減や健側握力の筋
期リハビリ病棟に転院した。身長158.0cm、体重78.9kg、
力増強を認めた。また、体重減量と体組成を整えることが
BMI31.6、サルコぺニア肥満を疑いDEXA、InBodyを実
できた。
口頭演題1日目
施した。 骨格筋量20.5kg、体脂肪量37.4kg、体脂肪率
【考察】回復期リハビリ病棟において、STが摂食嚥下機能
49.9%とサルコペニア肥満ではないものの、著明な肥満を
評価・訓練とともに栄養ケアの役割を担い、よりよい栄養
認めた。
管理ができることで、日常生活の自立や在宅復帰を目指す
【介入方法】摂食嚥下機能評価に加えて栄養状態の評価後、
一助となり、ADL向上につながるのではないかと考える。
PT・OTの評価・訓練状況やリハビリの弊害について情報
今後高齢者が増加するにつれ、サルコペニアの改善には、
収集を行った。 主治医・PT・OTとともに、患者の栄養管
栄養管理も重要となってくる。嚥下機能のみでなく、摂食
理及びリハビリの負荷量について相談した。定期的な栄養
状況や栄養面についても更に評価・介入していきたいと考
評価及び栄養士との連携はSTが中心となって行った。
える。
ポスター演題1日目
【経過および結果】体重および体脂肪率の減少および筋肉
1-4-09
1年間の縦断調査における経口摂取が可能な女性重症心身障害児・者の
Alb値と栄養・体格指標、ADLに関連する因子
野々篤志 1)、西村愛美 1)、重島晃史 2)
国立病院機構 高知病院 リハビリテーション科1)、高知リハビリテーション学院 理学療法学科2)
口頭演題2日目
【研究背景】過去、中・長期に及ぶ入院患者の生化学検査
ADLの指標にJASPER ADL評価法Ver3.2を用いて、自立
結果とADLの関連する報告はあるが、重症心身障害児・者
度と介助度を取り上げ評価した。3)Alb値の良好(維持)群
の領域での関連した報告は散見している。【はじめに】今
と低下(維持)群の2群間で、生化学検査結果、栄養指標、
回、経口摂取を施行している女性重症児・者を対象とした
体格指標、ADLの平均値の差を比較した。【結 果】経口
ポスター演題2日目
栄養指標の一つであるAlb値に着目し、1年間の縦断調査
摂取が可能な女性重症児・者のAlb値の良好(維持)群での
で、Alb値の良好維持群と低下維持群の2群間で女性重症
4.31±0.11g/dl (n=5)と低下(維持)群での3.49±0.11g/
児・者の入院時の栄養・体格指標、ADLなどの水準との関
dl (n=13)における2群間の比較で、生化学検査結果でTp
連因子を検討した。【方法】1) 対象は、2012年12月時点
値(p<0.05)、ADLの項目で「室内(床面)の移動」の自立
で入院時に経口摂取を施行している女性重症児・者33名で、
1年後の2013年12月時点で追跡調査を実施できたのは25
度(p<0.05)と介助度(p<0.01)の平均値で有意差を認めた。
【考 察】今回、1年間の縦断調査で、経口摂取を施行して
名であった。そのうちAlb 値の4.0g/dl−5.0g/dl を良好維
いる女性重症児・者のAlb値が低値であっても、運動機能、
持とした5名、4.0g/dl未満をAlb低下維持群とした13名の
特に移動能力における機能レベルが総じて高ければ、Alb
2群間に分類した。2)調査項目は、定期健康診査より生化
値を良好に維持できることが示唆された。よって、Alb値を
学 検 査 のAlb値、t-cho値、Tg値、Tp値、Hb値を、 診 療
良好に維持するには、具体的に移動能力に必要な上肢機能、
録より体格指標とした年齢、身長、体重、BMIを、上腕三
バランス能力、体幹機能の維持あるいは改善が必要である。
頭筋皮下脂肪厚、上腕周囲長を計測して取り上げた。また、
158
1-4-10
稲本陽子 1)、才藤栄一 2)、青柳陽一郎 2)、加賀谷斉 2)、柴田斉子 2)、粟飯原けい子 3)、
藤田祥子3)、増田容子 3)、原 豪志 2)、伊藤友倫子 2)
日 程
咽頭残留に対する努力嚥下、メンデルソン手技の有効性の検討嚥下CT、
high-resolution manometry(HRM)を用いた検討
藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科1)、
藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学I講座2)、藤田保健衛生大学病院 リハビリテーション部3)
鈴木 勝 1)、松橋 彩 2)、金森 誠 3)、矢嶋美智子 1)、山田英二 1)、林 祐香 1)、小野紗愛李 1)、
大森裕之 1)、森林隆介 1)、馬渕瑶子 1)
【はじめに】摂食嚥下障害及び運動障害性構音障害のリハビ
能向上訓練(以下、口腔機能バルーン訓練法)を開始した。
リテーションにおいて舌圧の観点は重要であることが証明さ
<2.訓練>NIPROオールシリコンバルーンカテーテル(12F
れている。私達は舌圧を高める新たな訓練法を考案し第20
r)をシリンジで12cc注入して膨らませ、舌と口蓋の間にセッ
回日本摂食嚥下リハビリテーション学会で報告した。今回
トし、1.舌でバルーンをつぶす2.バルーンを吸う等のプログ
ラムを週1回30分実施した。
<3.再評価>VFでは依然ゼリー
現病歴>70代、男性。6年前から食事中の咽頭部違和感あ
と米飯の喉頭蓋谷残留は見られたが、残留量と嚥下回数は
り。2年前より違和感が強くなったため当院リハビリテーショ
減少した。オーラルディアドコキネシスでpa6.6回・ta7.0回・
ン科紹介受診された。<既往歴>2年前に胃がん手術【経
ka6.6回、最大舌圧値は25.7kpaと機能向上が認められた。
過】<1.初回評価>嚥下造影検査(以下、VF)では液体・
【まとめ】摂食嚥下障害の原因が舌圧の低下と考えられた
ソース状とろみでは問題はなかったが、ゼリー・米飯では少
症例に対して、口腔機能バルーン訓練法を3か月週1回実施
量喉頭蓋谷に残留を認め複数回嚥下が必要であった。ADL
したところ、オーラルディアドコキネシスと最大舌圧値の改
自立、口腔顔面に麻痺は見られず、発話明瞭度1、RSST4
善を認め、食塊の喉頭蓋谷残留量減少と症例の咽頭違和感
回、呼吸や認知機能に明らかな問題は見られなかった。オー
の訴えが消失したため、訓練は終了に至った。本法は舌圧
ラルディアドコキネシスでpa5.4回・ta6.8回・ka5.6回で
を高める従来の訓練方法に加え有効な訓練手段となること
あった。最大舌圧値は20kpaと正常値に比べ低下を認めた。
が示唆された。
食塊の喉頭蓋谷残留は舌圧低下によるものと考え、口腔機
159
ポスター演題2日目
第2報として報告する。【症例紹介】<診断名>嚥下障害<
口頭演題2日目
社団医療法人かなめ会 山内ホスピタル リハビリテーション部1)、
社団医療法人かなめ会 山内ホスピタル 整形外科2)、社団医療法人かなめ会 山内ホスピタル 放射線科3)
ポスター演題1日目
新たな口腔機能向上訓練法の試み〜第2報〜
口頭演題1日目
1-4-11
症例1 RS、ES、MMの順に、咽頭残留量は2.4、1.6、1.7ml、
舌根部圧は75、112、85mmHgであった。ES、MM時に
舌骨喉頭前上方の移動距離が大きくなった。食道入口部開
大時間は全嚥下で1.1秒と延長した。症例2 咽頭残留量は
2.1ml、2.4ml、1.7ml。上咽頭・舌根部圧は234・114、
496・167、453・153、ESでは上咽頭から下咽頭まで同
時収縮し、有効な食塊移動が得られなかった。MM時に舌
骨喉頭の移動距離が最も大きくなり、食道入口部開大時間
は RS、ES、MMの順に0.6、0.9、1.0秒であった。【考察】
症例1では、努力嚥下にて咽頭圧が高くなったことが残留軽
減につながったと考えられた。また症例2ではメンデルソン
手技にて舌骨喉頭挙上に伴う食道入口部開大時間延長をみ
とめたことが残留軽減につながったと考えられた。努力嚥
下もメンデルソン手技も咽頭残留軽減に有効であり、病態
にあわせた選択が必要であることが示された。
特別プログラム
【目的】嚥下障害の評価では重要所見である咽頭残留の評
価とその対応法を検討することは重要である。しかしこれま
で咽頭残留の定量評価が困難であったため、訓練法につい
ても十分に確立されていない現状である。本研究では、嚥
下CTとhigh-resolution manometry (HRM)を 用 い て、
努力嚥下およびメンデルソン手技が咽頭残留軽減に有効で
あるかを検討した。【方法】対象は、症例1 79歳女性、延
髄梗塞(26年前)
、症例2 68歳女性、左延髄外側症候群(2
年前)
。2症例とも誤嚥はみとめなかったが著明な咽頭残留
をみとめ、臨床的重症度分類(DSS)は機会誤嚥、摂食状
況スケールは5(経口調整不要)
。嚥下CT撮影(320列面
検出器型CT)その後HRM計測で、中間のとろみ4mlの通
常嚥下(RS)
、努力嚥下(ES)
、
メンデルソン手技嚥下(MM)
を各1施行ずつ実施した。3D-CT画像の作成、嚥下諸器
官の運動時間、咽頭残留量、舌骨喉頭運動軌跡、咽頭圧、
食道入口部弛緩時間を計測し、3嚥下間で比較した。【結果】
1-4-12
日 程
最大舌圧値と水分嚥下の関連性
—舌圧測定器を用いた舌挙上運動の訓練効果—
池内英里菜、黒川清博、川崎未来、森田 伸、加地良雄、山本哲司
香川大学医学部附属病院 リハビリテーション部
特別プログラム
口頭演題1日目
【はじめに】
舌機能の定量的評価として舌圧測定器の有用性が報告され
ているが、最大舌圧値と水分嚥下の関連性を検討した報告
はない。また、喉頭挙上の主動作筋である舌骨上筋群に対
して舌挙上運動の効果が報告されており、当院では運動負
荷量を可視化できる舌圧測定器を用いて舌挙上運動を実施
している。今回、最大舌圧値と水分嚥下時の増粘剤の有無
と舌挙上運動の訓練効果について検討した。
【対象と方法】
2013年4月から2015年1月までに当院にて言語聴覚療法
を受けた嚥下障害患者のうち、著しい舌の運動障害のある
者、喉頭全摘出術を施行した者を除く26例(平均年齢65.2
±15.3歳;増粘剤有18例、増粘剤無8例)を対象とした。最
大舌圧値は舌圧測定器(JMS社製)を用いて測定し、3回試
行した平均値を値とした。舌挙上運動は最大舌圧値の80%
の運動強度で5秒間保持×10回/日を2週間実施した。水分
嚥下の指標には増粘剤の有無を用いた。検討項目は1.訓練
前の最大舌圧値と増粘剤の有無との相関、2.訓練前後の最
ポスター演題1日目
1-4-13
大舌圧値の比較、3.最大舌圧値の改善率と訓練後の増粘剤
の有無との相関について統計学的手法を用いて検討した。
【結果】
最大舌圧値と増粘剤の有無について相関はなかった(r=
-0.017)。 最大舌圧値は訓練前平均値26.2±8.5kPa、訓
練後平均値32.4±10.6kPaであり、訓練後には有意な上昇
を認めた(p<0.001)。 最大舌圧値の改善率と増粘剤の有
無については有意な相関を認めた(r=-0.39)。
【考察】
水分嚥下には喉頭挙上や咽頭知覚の関与があり、最大舌圧
値のみでは水分誤嚥リスクの評価や増粘剤使用の指標には
なり得ないことが示唆された。しかし訓練効果としては、本
検討の舌挙上運動は最大舌圧値に応じて運動強度を漸増す
るため、最大舌圧値の改善率が高いほど舌骨上筋群により
高い筋力増強効果が得られたと考える。その結果、喉頭挙
上運動の改善が水分誤嚥リスクの軽減に寄与したと考えら
れた。
高齢者における継続的咀嚼訓練の意義
湯浅豪郎、前田 守、前田三和子、佐々木聡
社会医療法人慈恵会 聖ヶ丘病院 リハビリテーションセンター
【はじめに】高齢者の咀嚼嚥下は加齢や器質的変化による
と訓練群で咀嚼効率の向上がみられた。
口頭演題2日目
低下が多く、食事形態の調整による代償が一般的な対応法
【考察】近年、高齢化社会による摂食嚥下障害患者の増加
である。今回、高齢者の咀嚼訓練を実施し効果について検
に伴い嚥下調整食やトロミ調整剤など先進的に開発が進ん
討した。
できた。嚥下機能に適した調整を行いやすくなってきてい
ポスター演題2日目
【対象と方法】対象は嚥下調整食4を摂取しており、認知・
る一方で、高齢者の咀嚼嚥下機能は加齢による変化も大き
コミュニケーション訓練のみ実施している患者17名。方法
く、食事形態などの静的な対応のみならず機能改善維持に
は簡便な咀嚼訓練を週5日、4週間実施した訓練群10名と
向けた積極的介入が必要であると考える。今回用いた咀嚼
非訓練群7名に対し1.咀嚼時間、2.咀嚼後形状変化の2項目
訓練は舌捻転や頬協調運動などに着目する事で実用的咀嚼
について比較した。咀嚼訓練は1)粗大運動訓練、2)巧緻運
能力向上に寄与し、咀嚼嚥下機能の予備力維持となる事が
動訓練、3)抵抗運動訓練とした。また咀嚼時間は1回嚥下
考えられる。今後、高齢者は在宅を中心とした住み慣れた
に要する時間、形状変化は10回咀嚼後の粉砕混合率を4段
地域での生活が求められる中、言語聴覚士は従来の「飲込
階に分け評価した。
み」を重視した対応に留まらず、予防的視点からの咀嚼リ
【結果】咀嚼時間は訓練群では時間短縮5名50%、非訓練
ハビリの導入など在宅生活に関わる職種に対して必要性を
群では時間変化無し2名28.6%、時間増加1名14.3%と訓
練群で1回嚥下に要する時間が短縮傾向にあった。形状変
発信していく事が求められる。
【結語】継続的な咀嚼訓練は咀嚼嚥下能力の予備力維持向
化は、訓練群で1段階向上7名70%、2段階向上1名10%、
非訓練群は1段階向上1名14.3%、形状変化無し6名85.7%
160
上が期待できる。
1-4-14
臨床所見を有用に活用したワレンベルグ症候群の一例
医療法人 輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
【症例】
70歳代男性。右延髄外側梗塞。29病日目に当院入院。入
院時は3食経管栄養。嚥下反射はほぼみられず、唾液は咳
嗽にて自己喀出。
北山敏也 1)、田口潤智 2)、笹岡保典 2)、木下雄介 2)、堤万佐子 1)、土橋智春 3)、坂本友美 1)
【はじめに】重度嚥下障害を呈するWallenberg症候群患
訓練、舌前方保持訓練がようやく可能となってきたためメ
者に介入し常食摂取を獲得した。症例の食道入口部開大不
インの訓練とした。130病日目、三食経口摂取開始。165
全の原因とアプローチについて考察を交え報告する。【症
病日目、第3回VF実施。舌骨の前上方運動がさらに改善さ
例】30歳代男性。 右延髄外側梗塞。 急性期病院を経て
れ常食となる(藤島Gr.9)。【考察】Logemann(2000)は食
38病日目に当回復期病院に転院。気息性嗄声、軽度開鼻
道入口部開大不全の原因として1)輪状咽頭筋異常2)喉頭挙
上不全3)嚥下圧不十分を挙げ、原因に応じた対応をすべき
鼻胃経管栄養。【経過】入院時、RSST1回(喉頭挙上微弱)。
としている。我々はVF解析から喉頭挙上不全を主原因と捉
MWST(1cc) profile4、(3cc)profile3b。 飲 水 訓 練、 の
え、また原因疾患から輪状咽頭筋異常も存在すると仮定し
どのアイスマッサージ、ブローイング、頭部挙上訓練等を
た。これら2点へのアプローチを重点的に行った。また嚥下
開始した。74病日目、初回嚥下造影(以下VF)実施。舌骨
圧不足に対しても補足的にアプローチした。計3回のVFで
の前上方運動をほぼ認めず水分1.8ccで食道通過しなかっ
は舌骨の運動範囲の改善とともに食道通過がスムーズとな
た。翌日からSTは訓練にバルーン法を追加。栄養管理は間
り、我々のアプローチが奏功したと考える。発表当日はVF
歇的経口食道栄養法に変更。123病日目、第2回VF実施。
における舌骨の運動軌跡を画像解析ソフトimageJにて分析
舌骨の前上方運動が認められ食塊の食道通過を確認。翌日
したので併せて報告する。
から昼食のみ全粥、刻みトロミ副食開始。メンデルゾーン
161
ポスター演題2日目
声、唾液処理困難で嚥下障害重度(藤島Gr.2)、持続的経
口頭演題2日目
尚和会 宝塚リハビリテーション病院 療法部1)、尚和会 宝塚リハビリテーション病院 診療部2)、
尚和会 宝塚リハビリテーション病院 看護部3)
ポスター演題1日目
常食摂取に至ったWallenberg症候群患者の食道入口部開大不全の原因と
アプローチについて
口頭演題1日目
【考察】
ワレンベルグ症候群に対し、臨床場面での変化点を確認し
ながら直接訓練を進めたところ、安全に常食摂取が可能と
なった。本症例ではVFで嚥下反射惹起遅延や通過障害を
認めたが、臨床場面にて咳嗽による喀出物や湿性嗄声の有
無を確認する事で、嚥下機能の変化を捉え安全で滞りなく
食形態を変更できたと考えられる。またVF実施時期の検
討にも有効であった。VFVEの結果のみに頼るのではなく、
日々の臨床場面で確認できる視点を明確にして取り組んで
いく事が重要である事が示唆された。
【経過】
入院3日目VEVF施行。嚥下反射惹起遅延、食道入口部の
通過障害により喉頭侵入を認めた。また唾液の喉頭侵入は
咳嗽により喀出可能であった。バルーン拡張訓練や頭部挙
上訓練などを併行し、右回旋嚥下と2口に1回の咳嗽を行う
設定でトロミ付き水分の直接訓練を開始。臨床場面では咳
嗽による喀出物や湿性嗄声の有無などを確認し変化の指標
1-4-15
とした。また、栄養状態や炎症所見も確認し食形態を変更
した。食形態変更直後は咳嗽による残留物の喀出が多くみ
られたが、徐々に残留物の喀出量、湿性嗄声共に減少した。
24日目頃には喀出物や湿性嗄声がほぼみられなくなったた
め、30日目に2回目のVFを実施。 通過の左右差がみられ
なくなったため右回旋嚥下は解除。臨床所見や身体所見の
確認を継続した。最終的に61日目で常食水分トロミなしへ
と段階的に食形態を変更し退院に至った。
特別プログラム
【はじめに】
摂食嚥下障害に対しては嚥下造影検査、嚥下内視鏡検査(以
下VF、VE)の結果をもとに評価を進める事が増えている。
しかし、日々の訓練では臨床場面での所見をもとに進める
ことが重要となる。今回VFの結果を踏まえて定期的に臨床
所見を確認する事で安全に常食の摂取が可能となった症例
を経験したので報告する。
日 程
小沢駿輔
1-4-16
日 程
STが主体となりチームアプローチを行ったことで気管カニューレ抜去・
経口摂取が可能となった一例
阪口淳美、長池由香、溪口真衣、名川博之、片山美貴、石原健司、大江与喜子
医療法人財団 樹徳会 上ヶ原病院
【はじめに】耳鼻科医が在籍していない病院・施設等では気
経口摂取となった。カフなしカニューレの抜去に向けても同
特別プログラム
管カニューレの変更や抜去が進みにくい。当院も同様にカ
様の手順で気切部閉塞時間の延長を図り、8週間後にはカ
ニューレの変更や抜去に対する評価を行う者が明確ではな
ニューレの抜去が可能となり、食事は3食経口摂取となった。
い。今回、STが主体となりチームでカニューレの抜去に向
当初は職種間でカニューレに関する知識の差が生じていた
けた取り組みを行ったことでカニューレ抜去・経口摂取獲得
が、STが主体となりカニューレの種類や変更から抜去まで
に至った一例について報告する。【症例】70歳代、女性、
のステップと予想期間を説明し、その為に必要な評価・観
H26年2月に上行大動脈置換術を施行後、右横隔神経麻痺
察項目を段階的に提示した。その結果、ST場面以外でも十
を呈した。 術後23日目に気管切開術を施行し、術後39日
分な働きかけが行え、カニューレ抜去・経口摂取の獲得に
口頭演題1日目
目に胃瘻を造設した。H26年7月に嚥下訓練目的の為、当
至った。【考察】カニューレの変更や抜去には他職種の理解
院へ入院となった。【経過と結果】主治医の指示の下、ま
と多方面からみた評価、連携が重要であると考える。また、
ずはカフなしカニューレへの変更に向けて、ST時にのみカ
アプローチを進めるにあたって咽喉頭の機能に詳しい医師
フを脱気し痰量や呼吸状態の評価を実施した。その後、ST
が不在の環境では、STが主体となりえることが示唆される。
場面以外での継続した評価を実施する為、PT・OT・NSに
今後は気切カニューレ管理の患者に、より円滑なアプロー
協力を依頼した。運動時や病棟場面での痰量や呼吸状態の
チが行える様、カニューレに関する基準や手順を院内で確
変化を評価しながらカフ脱気時間の延長を図り、6週間後に
立する必要があると考える。
カフなしカニューレへ変更し、食事は3食経管栄養から一部
ポスター演題1日目
1-4-17
嚥下機能改善術後も経口摂取困難であったWallenberg症候群の1症例に
対する訓練経験
原 大介 1)、杉浦淳子 1)、飛永真希 1)、大村有希 1)、門野 泉 1)、藤本保志 2)
名古屋大学医学部附属病院 リハビリテーション部1)、名古屋大学医学部附属病院 耳鼻いんこう科2)
口頭演題2日目
【はじめに】発症後長期間の嚥下訓練後に嚥下機能改善術
喉頭挙上術施行。術後29日VFにて、軽度のリクライニン
を施行したが、食事開始に至らなかった症例を経験したの
グ位、顎突出にて食道入口部が開大し食塊の通過がみられ
で訓練経過に若干の考察を加えて報告する。【症例】73歳、
た。術後31日ゼリーを用いた直接的嚥下訓練実施。術後
男性。X年10月、右延髄・小脳梗塞発症。半年間の入院リ
41日発熱あり誤嚥性肺炎を発症。術後47日嘔吐を契機に
ハビリ後、施設入所。 胃瘻栄養。 施設では1回/週の頻度
誤嚥性肺炎が増悪、術後49日ICU管理を要し、中枢性睡
で訓練を実施していたが改善みられず、経口摂取への強い
眠時無呼吸も問題となり、術後61日までSTが中断した。術
ポスター演題2日目
希望があったため、X+2年8月当院受診。X+2年9月、喉
後91日ゼリーによる直接的嚥下訓練再開したが十分な摂食
頭挙上術、輪状咽頭筋切除術、気管切開術施行。【入院時
にいたらず、術後111日リハビリ目的にて転院。【考察】本
検査所見】VEでは声門上、両梨状窩に唾液が多量に貯留
症例では嚥下パターンの出力異常、廃用等による舌根萎縮、
しており、空嚥下を促してもWhiteoutに至らず、喉頭感
不顕性誤嚥が問題点であると考えられた。嚥下機能改善手
覚低下もみられた。VFでは、嚥下反射惹起困難、咽頭収
術により食道入口部通過の改善が得られたものの、嚥下の
縮弱く食道入口部に食塊が残留し誤嚥した。食道入口部は
惹起性の高度低下もありその後の訓練に難渋した。さらに
左右ともに開大はみられず食塊通過はみられなかった。【経
不顕性誤嚥、重症肺炎の再燃により期待した結果に至って
過】術前7日ST開始。 術後6日ST再開、VF実施。 左右側
いない。肺炎予防のための方策や訓練法、ゴール設定につ
臥位いずれの体位でも食塊は通過せず、喉頭挙上の不足が
いて再検討が必要である。
認められ、挙上糸の切断がうたがわれた。術後26日、再度
162
1-4-18
中野貴雅、木村暢夫、松尾真弓、衛藤素子、谷岡優花、山本周平、園田大輔
独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院 リハビリテーション科
カフ無カニューレへ変更し、翌日カニューレ抜管。76日目
するケースが増加している。 今回、入院後約3 ヵ月にて、
嚥下評価。78日目より1食のみ経口摂取開始。80日目3食
カニューレ抜管と3食経口摂取が可能となった2症例を経験
経口摂取となった。症例2:入院から1週間で全身状態の確
したので後方視的に振り返り、カニューレ患者に対するアプ
認、口腔内評価、嚥下スクリーニング評価を実施し、カフ
ローチ内容やSTの役割について報告する。【症 例】症例
有で直接嚥下訓練、カニューレ閉鎖訓練開始。47日目VF
1
:60歳代、男性。脳挫傷、急性硬膜下血腫、頭蓋骨骨折。
検査を実施し、48日目よりカフ有で1食のみ経口摂取開始。
JCS 10 〜 20。FIM:18点。カニューレ複管装着。胃瘻。
51日目カフ脱気状態での経口摂取。58日目終日閉鎖訓練。
吸引:2 〜 3時間おきに必要。症例2:30歳代、男性。脳
66日目レティナカニューレへ変更。73日目カニューレ抜管。
出血、脳動静脈奇形、感染性心内膜炎。JCS 3 。FIM:
83日目3食経口摂取となった。【考 察】カニューレ装着患
21点。スピーチカニューレ装着。経管栄養。吸引:2時間
者における、直接嚥下訓練及び呼吸発声訓練においては全
おきに必要【経 過】症例1:入院から1週間で全身状態の
身状態の把握と併せて、VE・VF検査等の客観的評価が有
確認、口腔内評価、嚥下スクリーニング評価を実施し、カ
用であった。カニューレ抜管に向けては、患者の状態の評
フ有で直接嚥下訓練開始。16日目誤嚥による発熱のため
価だけでなく、チーム間の密な連携が図れるマネジメント
直接嚥下訓練一時中断。30日目VE、49日目VF検査実施。
が重要と考える。
カフ有にて、直接嚥下訓練再開に併せて、スピーチカニュー
アナルトリーにおける、音の歪みと韻律障害の連続性について
川島広明 1)、小嶋知幸 2,3)、船山道隆 4)、稲葉貴恵 1)、中島明日佳 1)、青木篤美 1)、福井友美 1)、
永森芳美 1)、大賀祐美 1)、中里圭祐 1)、間々田浩明 1)、菅原遥香 1)、横山奈々恵 1)、中村智之 1)、
馬場 尊 1)
【はじめに】アナルトリーの発話特徴については、音の歪み
に残存する程度となったが、アクセントの平板化を中心とす
を主体とするタイプと韻律障害面の障害を主体とするタイ
るや不自然なプロソディが主症状となった。アクセントの受
プがあるとする説があるが、これまで、アナルトリーにおけ
容面については、SALA失語症検査の聴覚的アクセント異同
る韻律面に着目した報告は少ない。今回、明らかな構音の
弁別は全問正答であったが(12/12)
、アクセントの異なる
同音異義語(例,
「赤」と「垢」
)の異同弁別では混乱を呈
純粋アナルトリー例を経験したので報告する。
する場面が観察された。アクセントパターンを模倣すること
【症例】55歳、右利き男性。 脳梗塞を発症し、頭部MRI
は可能であった。発症2年後、韻律面にも改善を認めたが、
拡散強調画像上、中心前回に高信号域を認める。 発声発
依然、平板化や不自然さの残存を認めた。
語器官に運動麻痺は認めなかった。 神経心理学的には、 【まとめ】本症例は、少なくとも発症後2週間の時点からは
RCPM34点、SLTA上明らかな内言語の障害は検出されず、
韻律面の障害を主体とするアナルトリーと言えたが、発症
モーラ分解・抽出、拍削除ほか音韻操作課題にも成績低下
直後は、構音の歪みと韻律面の障害が併存していた。症状
を認めなかった。発話面にでは、発症当初、構音の歪みと
の中心が継時的に変化しており、ある程度改善後のケース
韻律障害双方を認め、明らかなアナルトリーの発話特徴を
が初診である場合、症状を把握する上で、発症直後の状態
呈していたが、約2週間で歪みや急速に改善し、聴覚印象
を想像することの重要性が示唆された。
上では交互反復構音動作時やわたりの一部においてわずか
163
ポスター演題2日目
歪みが短期間で軽快し、早期に韻律の障害が中核となった
口頭演題2日目
足利赤十字病院 リハビリテーション科部1)、市川高次脳機能障害相談室2)、武蔵野大学 人間科学科3)、
足利赤十字病院 神経精神科4)
ポスター演題1日目
1-5-01
口頭演題1日目
レにて閉鎖訓練開始。63日目より終日閉鎖訓練。74日目
入院患者の重症化に伴い、気管カニューレ装着患者を担当
特別プログラム
【はじめに】 DPC導入による急性期病院からの早期転院や
日 程
回復期病棟における気管カニューレ装着患者に対するアプローチ
—カニューレ抜管に至った2症例を通して—
1-5-02
音韻選択障害・失構音を呈した一症例
日 程
佐藤加奈子、須賀章公、川人理津子、前田幸子、長江浩美
医療法人倚山会 田岡病院 リハビリテーション科
特別プログラム
【はじめに】今回、失構音に加え音韻選択段階の障害を呈し
渋滞が多く、本人より「音が出てこない」と頻繁に訴えがあっ
た症例を経験した。音韻に焦点を当てたアプローチを行っ
た。書字においても音韻性錯書や文字の脱落がみられ、自
た結果、発話能力・書字能力ともに向上がみられたので報
己修正は可能であるが時間を要することが多かった。訓練
告する。【症例】60代 女性 元銀行員【現病歴】隣人
開始3 ヶ月程より音韻処理訓練を取り入れることで音韻性錯
に発見され救急搬送。CTにて脳梗塞と診断され、保存的
語・錯書は減少し、発話速度にも向上がみられたが、プロ
加療後、第5病日当院転院。回復期病棟にて週6回言語訓
ソディ障害は残存している。【考察】本症例はすべての表出
練実施。5 ヶ月後自宅退院し週2回の外来リハ継続中。【画
モダリティで音の探索を伴う発話の渋滞や音韻断片・音韻
像所見】左前頭-頭頂-側頭葉の一部に梗塞あり【神経学
性錯語が同程度に認められた。また語性錯語がなく、語想
的所見】右片麻痺(BRS:VI)
【神経心理学的所見】失語
起や書字課題において最終的には語の音韻が揃うものの正
症、口腔顔面失行、RCPM:27/36 、kohs:IQ75【初期
答に至るまでには時間を要する事からも、語彙の検索・照
口頭演題1日目
言語評価】SLTA口頭命令7/10書字命令4/10。発話はな
合は保たれており、語彙情報に従って音韻を選択する段階
く、口形模倣・母音の復唱が可能であるのみ。漢字単語書
での障害であると推測された。また、挨拶等の系列的な語
字3/5書取4/5、仮名単語書字0/5書取1/5、仮名1文字
産生においても流暢な発話は促進されず、前後の音環境や
書取10/10。【経過】訓練開始1 ヶ月程で単語レベルの表
構音動作の難易度にも影響を受ける事から、残存するプロ
出がみられるようになり、徐々に短文レベルの発話も増加。
ソディの異常は失構音によるものであると考えられた。
自発話は非流暢であり、接近行為を伴う音韻性錯語や音の
ポスター演題1日目
1-5-03
左の中前頭回から中心前回にかけての脳梗塞で非流暢性発話を呈した2症例
時田春樹 1,2)、野間 陸 1)、三縞明希子 1)、橘高美波 1)、村上琴美 1)、市本将也 1)、
三谷由梨絵1)、西本ありさ 1)、石崎和加 1)、鈴衣里佳 1)
口頭演題2日目
社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 リハビリテーション課1)、
川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科 感覚矯正学専攻 博士後期課程2)
ポスター演題2日目
【症例】<症例1>70歳代、右利き男性。主訴は言葉がしゃ
た。注意や記憶には問題がなかった。聴覚的理解障害はな
べり難い。2014年6月のある日の起床時、言葉の喋りにく
かった。発話は非流暢であり、発話開始困難と中断、言葉
さが出現したため同日受診、入院した。<神経学的所見>
のたどたどしさが著明で姓の復唱がやっとであった。音読も
意識レベル清明、四肢の動きや脳神経系に異常はなかった。
困難であった。筆談にて意思表出の訴えがあったが仮名文
注意や記憶には問題がなかった。聴覚的理解障害は軽度で
字の羅列であった。コミュニケーション意欲はあった。<神
日常会話には問題がなかった。発話は非流暢、一貫性のな
経放射線学的所見>入院時の頭部MRIにて、左の中前頭回
い音の誤りと歪み、言葉のたどたどしさが顕著であり、単
領域から中心前回にかけて病巣を認めた。【結果とまとめ】
語の復唱も困難であった。音読も困難であった。書字は単
2症例ともに、発症時軽度の失構音を呈していたが、急速
語から短文レベルで表出が可能であった。コミュニケーショ
に改善した。約2週間後には短文レベルの表出が可能となっ
ン意欲はあった。<神経放射線学的所見>入院時の頭部
た。しかし、自由会話場面における発話開始困難と発話の
MRIにて、左の中前頭回から中心前回にかけて病巣を認め
中断、たどたどしさは残存していた。非流暢性発話の原因
た。<症例2>80歳代、右利き女性。主訴は言葉がしゃべ
が失構音や発話発動性の低下によるものとは考えがたく、
り難い。2014年12月のある日の起床時、夫との会話がか
左の前頭葉損傷によって出現してくることが知られている発
み合わなかったため、同日受診、入院した。<神経学的所
話開始のシステムの障害の可能性を考えた。
見>意識レベル清明、四肢の動きや脳神経系に異常はなかっ
164
1-5-04
失語症者の外国人様発話の分析−左側頭葉の脳梗塞後の一例−
行徳総合病院 リハビリテーション科1)、臨床福祉専門学校 言語聴覚療法学科2)、
横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター 3)、横浜市立大学大学院 医学研究科 精神医学部門4)、
江東区障害福祉センター 5)、青空の会6)、富山大学 医学部 脳神経外科7)
佐々木春香 1)、民部田真緒 2)
医療法人社団 帰厚堂 こずかた診療所1)、医療法人社団 帰厚堂 南昌病院2)
介入から6ヵ月後、SLTA上で聴理解が80%以上、仮名書字
表出語のアクセント核が不適切に移動した症例の経過と背
は100%に、SLTA−ST呼称においても87/100語で、アク
景にある問題について、考察を加えて報告する。【症例】
セント異常は12.
6%、置換・省略も約半数に減少した。【考
50代 男性 【現病歴】X年2月、左中大脳動脈領域皮質下
察】本例は、自由会話が多弁な一方、呼称や音読時に接近
(島、角回、後頭葉まで)に心原性脳梗塞を認め、右片麻
行為が強まり非流暢になる事や、発話と書字の誤り音の一
痺と失語症を発症。急性期病院に1ヶ月、リハビリ病院に1ヶ
致、音韻処理の問題がある事から、音の誤りの主症状は発
月入院。退院後、当診療所にて「言葉のアクセントが変に
語失行よりも音韻性錯語と判断した。また、アクセント核の
移動が音韻処理面の向上に伴って改善されてきている事か
期のSLTAで読解は比較的良好であったが、口頭命令はほ
ら、アクセント位置の選択にも問題が生じていた事、言語
とんど困難、短文復唱は2単位以上で低下していた。発話
性STMの低下により、音韻やアクセントのリハーサル時に
は単語の言い直しが多く、仮名書字が困難であった。SLTA
適切な位置を照合できずにアクセント核が移動したと推察し
−ST呼称では72/100語で、アクセント異常を23.
6%、特
た。本例は産生型に言語性STM障害を伴う伝導失語であり、
に低頻度語において音の置換・省略・付加を認めた。アク
喚語や統語の問題も併せ持っていた。従って、なめらかに
セントや音韻処理に焦点を当て、文節ごとの長文音読、仮
話す為に、ベースの語彙数増大を図ると共に統語面の改善
名書称、音韻抽出課題を中心に自主練習と共に実施した。
も課題と考える。
165
ポスター演題2日目
なる」と訴え、週2回の通院から開始した。【経過】介入初
口頭演題2日目
【はじめに】左中大脳動脈領域皮質下の広範な梗塞により、
ポスター演題1日目
アクセント異常を主訴とした1症例の経過と発話特徴について
口頭演題1日目
1-5-05
特別プログラム
るような印象であり、FASを認めた。
【FASの発話分析】
FASの特性評価は、初回標準失語症検査「話す」下位検査
を録音し、音声学的分析(西田ら2011)・音声言語学的分
析(福井ら2006)を行った。
【結果】
音声学的分析ではアクセント位置の移動、強勢アクセントの
出現、発話速度の低下が認められた。音声言語学的分析で
は、子音・母音の歪み、音節の引き伸ばし、音節内の短い
休止、促音の省略、助詞の誤りが認められた。
【考察】
日本語の特徴は拍言語である(紺野2001)。一方、韓国人
が日本語を話すときの不自然さは母音が長母音となること
がかかわる(柳1992)。本症例は音節長において母音の制
御が不正確となったことでアクセントの異常をきたし、韓国
人様となっていたと考える。FASの診断においては、母音
の音声学的分析が有用であることが示唆された。
【はじめに】
外国人様発話Foreign Accent Syndrome(以下、FAS)と
は、音声言語の表出において母国語以外の外国語様の構
音、イントネーションとなる症状である。先行研究では、世
界的に報告が少なく、機序について一定の見解がない(谷ら
2002)。今回、左側頭葉脳梗塞により失語症を呈した症例
においてFASを認めたので、発話分析を行なった。
【症例】
60代女性、右利き、高卒。母語は日本語であり、他の言
語は話すことができない。海外への渡航歴はなかった。
現病歴:言葉の出にくさを主訴に受診し、脳梗塞の診断で入
院した。
神経放射線学的所見:MRIのFLAIR画像では両側性に中等度
の脳室周囲病変、左上中下側頭葉の高信号域を認めた。
神経学的所見:上下肢に明らかな麻痺は認められなかった
が、右に軽度の顔面神経麻痺を認めた。
神経心理学的所見:失語症、口腔顔面失行、構成障害が認
められた。発話は本人と家族、STが共に韓国人が話してい
日 程
益子紗緒里 1)、浜田智哉 2,3,4)、黒川容輔 2,5,6)、高岩亜輝子 7)
1-5-06
日 程
失語症例における聴覚的な短文の理解について。標準失語症検査「2.短文
の理解」による分析
宮崎泰広、種村 純
川崎医療福祉大学 感覚矯正学科
【はじめに】失語症例の聴覚的な短文の理解に関して、語
は16.1±11.6病日であった。
特別プログラム
彙の理解や文法的な複雑さ、文の長さなどが影響するとさ
【方法】SLTAの「2.短文の理解」の各項目の正誤および誤
れている。一方で、標準失語症検査(以下SLTA)の「2.短
反応を分析した。正誤はSLTAの段階6、5を正答とし、段
文の理解」と「3.口頭命令に従う」には異なった因子が関わっ
階4以下を誤答とした。誤反応は、ヒント前の反応とし、正
ていることが示されている。SLTAの「2.短文の理解」に用
答以外の3つの絵のいずれを指示したか、
もしくは時間超過、
いられる短文は転換語順はないが、可逆・非可逆文や能動、
わからないなどの「指示しない」の4つに分けた。
受動態、関係節を含むなど様々である。そこで、この「2.短
【結果】下位項目の10問すべて正答したものが21名、中止
文の理解」の成績と誤反応を分析することで、失語症例の
基準Bにより施行しなかったものが26名、中止基準Aが5名
聴覚的な短文の理解について検討した。
であった。下位項目のうち、最も正答率が高かったのは、(2)
口頭演題1日目
【 対 象 】A病 院において2005年4月から2009年3月まで
「お母さんが赤ちゃんにご飯を食べさせている」で、最も
の期間で失語症を呈し、SLTAを施行した連続症例とした。
正答率が低かったのは、(9)「電車が鉄橋を渡っている」で
SLTAの施行は、言語聴覚療法室にて検査の実施が可能な
あった。誤反応は、人工物の対格の名詞が異なる絵を指示
全身状態の時期とした。対象となった症例は147名(男性
するなど、一定の傾向が見られた。
100名、女性47名、65.6±13.0歳)で、疾患の内訳は脳
【結論】失語症例の聴覚的な短文の理解において、正答に
梗塞が79名、脳出血が50名、脳炎や頭部外傷、クモ膜下
影響を与える要因と誤反応のパターンを確認できた。
出血などその他の疾患が18名であった。SLTAの施行時期
ポスター演題1日目
1-5-07
失語症における名詞・動詞の喚語力の特徴
‐単独発話と文発話からの検討‐
森田一砂 1)、藤田郁代 2)、水田絵理 3)
慈誠会浮間舟渡病院1)、国際医療福祉大学大学院 言語聴覚分野2)、輝生会初台リハビリテーション病院3)
口頭演題2日目
失語症の喚語機能は語を単独に提示して評価することが多
流暢性失語群では名詞と動詞ともに単独提示と文提示の間
いが、語は文脈に沿って文中で用いられることが多い。本
に有意差を認めなかった。名詞と動詞の差:名詞と動詞の
研究では失語症者の名詞と動詞の喚語機能を単独発話と
差は非流暢性失語群(Broca)の単独提示においてのみ認
文発話で比較し、その特徴と障害メカニズムを検討する。
め、動詞の正答数は名詞より有意に少なかった(p<0.05)
。
【対象】脳血管疾患による左大脳半球病変の非流暢性失語
誤反応:両失語群において名詞では意味性の誤りが単独提
(Broca)失語7名、流暢性失語(Wernicke2名、TCS8名、
示より文提示において有意に多く(p<0.05)
、動詞では非
ポスター演題2日目
anomic1名)で、全例が右利き、発話の重症度は軽〜中
流暢性失語群(Broca)において動詞の名詞化が文提示よ
等度であった。【課題】名詞・動詞の発話テストを作成し単
り単独提示で有意に多かった(p<0.05)
。【考察】非流暢
独提示と文提示を設定した。単独提示条件:検査語は名詞
性失語(Broca)では、名詞を文中で発話することが単独
と動詞各40語で、名詞では物品のみを描いた絵を提示し名
で発話するより困難であり、これには名詞を文の組立要素と
詞を発話してもらった。動詞では動作絵を提示し動詞を発
して統語処理する機能の低下が関与すると考えられる。両
話してもらった。文提示条件:検査語は名詞と動詞各40語
失語において名詞の意味性の誤りが単独発話より文発話で
で、動作絵を提示し名詞と動詞を用いた文を発話してもらっ
増加し、語の干渉が生じた。非流暢失語では文提示におい
た。
【結果】単独提示と文提示の差:非流暢性失語群
(Broca)
て動詞の名詞化が多く出現しこれには喚語における名詞バ
では名詞は単独提示より文提示において正答数が有意に少
イアスが関与すると考えられた。
なかったが(p<0.05)
、動詞では有意差を認めなかった。
166
1-5-08
モーラ長異同弁別による音韻符号化過程の検討
江戸川病院 リハビリテーション科1)、足利赤十字病院 精神神経科2)、慶應義塾大学 医学部 精神神経科3)、
江戸川病院 神経内科4)
中川良尚 1)、木嶋幸子 1)、鍵本侑子 1)、近藤郁江 1)、鈴木香菜美 1)、井上響子 1)、阿部菜都美 1)、
佐野洋子 1)、船山道隆 2)、山谷洋子 3)、加藤正弘 3)
施した。次に最高到達得点を従属変数、性別、発症年齢、
病巣、初診時成績を説明変数として、重回帰分析を実施し
た。尚、病巣の関心領域は大脳病変11部位とびまん性病
変3種とした。
【結果】
単回帰分析の結果から、係数の信頼性を表すp値が0.25以
下であった40項目を以降の分析対象とした。重回帰分析の
結果、説明率は66.5%で、説明率の検定は1%水準で有意
であった。「発症年齢」
(p<0.01)
「
、島前部」
(p<0.01)
「
、中
側頭回」
(p<0.01)に有意な負の係数を示し、SLTA「仮
名単語の理解」
(p<0.01)や「単語の復唱」
(p<0.01)
「
、仮
名単語の書取」
(p<0.01)に有意な正の係数を示した。
【考察】
発症年齢が低く、病変に「島前部」や「中側頭回」を含ま
ず、初診時SLTAにおいて「仮名単語の理解」
、
「単語の復唱」
や「仮名単語の書取」の得点が高ければ、失語症状の回復
が見込める可能性が高いことが示唆された。
167
ポスター演題2日目
【はじめに】
失語症例の機能回復の指標であるSLTA総合評価法得点に
影響を及ぼす要因を調査する一環として、最高到達時SLTA
総合評価法得点(以下最高到達得点)と、性別、発症年齢、
最高到達時経過月数、病巣、初診時SLTA下位項目成績%
(以
下初診時成績)の関係性について検討した。
【対象】
右手利きの左大脳半球一側損傷後に失語症を呈した270例
中、発症から1年以内に初診時評価を行い、かつ1年以上
治療を継続することができた194例。 性別は男性147例、
女性47例。原因疾患は脳梗塞110例、脳出血57例、くも
膜下出血19例、脳挫傷8例。発症時平均年齢は53.3歳(±
13.1)
、初診までの平均経過月数は3.4 ヵ月(±3.4)
、最高
到達時の平均経過月数は52.8 ヵ月(±41.1)であった。
【方法】
各症例のSLTA総合評価法得点を算出し、まず最高到達得
点と性別、発症年齢、最高到達時経過月数、病巣、初診時
成績(計算を除く)
、合計42項目について単回帰分析を実
口頭演題2日目
江戸川病院 リハビリテーション科1)、足利赤十字病院 精神神経科2)、江戸川病院 神経内科3)
ポスター演題1日目
失語症の予後予測について
−初診時SLTA成績や脳画像等から−
口頭演題1日目
1-5-09
満を低下ありとした。モーラ長弁別、呼称双方で低下なし
の症例では、モーラ長弁別の反応時間が健常群平均+2SD
を上回る場合に、モーラ長弁別は低下ありとした。その結
果、モーラ長弁別と呼称の成績によって4群、すなわち、A群:
モーラ長弁別低下あり/呼称低下なし9例、B群:モーラ長弁
別低下なし/呼称低下あり4例、C群:双方低下あり5例、D群:
双方低下なし5例に分類された。(3)正答数の相関をみると、
モーラ長弁別と呼称は0.32、モーラ長弁別と音読は0.13
であった。
【考察】上記B群では、語彙想起の後、モーラ情報(個々
の音情報)は活性化されにくい一方、モーラ構造(語の形
態的構造)は比較的活性化されやすいと考えられる。その
ような症例が存在したこと、モーラ長弁別と、呼称及び音
読の相関は低かったことから、音韻符号化過程の評価にお
いて、モーラ長弁別は、呼称や音読のみでは判別できない
側面、すなわちモーラ構造の活性について検討することが
できる可能性が示唆された。
特別プログラム
【はじめに】失語症者では、音の誤りは音韻符号化過程の
何れの箇所でも生じ得る(水田ら,2005)が、音韻符号
化能力を詳細に評価するツールは少ない。今回我々はモー
ラ長異同弁別課題を作成し、音韻符号化過程について検討
した。
【対象】失語症例28例(女性7例)
。平均年齢62.0±11.3。
平均経過月数39.7±55.9。原疾患は脳梗塞17例、脳出血
8例、脳腫瘍1例、脳挫傷2例。
【方法】(1)モーラ数、心像性等を統制した48語を用い、
モー
ラ長異同弁別(以下モーラ長弁別)24試行を実施した。(2)
呼称(SLTA)を実施して(1)と比較した。(3)(1)と同じ語の
音読を行い、モーラ長弁別に対する呼称及び音読の関係を
分析した。
【結果】(1)モーラ長弁別の平均正答数は14.9±3.5、平均
反応時間は9.0±5.2秒。モーラ長弁別では、正答数が健常
群平均-2SD以上を低下なし、平均-2SD未満を低下ありとし
た。(2)呼称では操作的に正答数16以上を低下なし、11未
日 程
鈴木香菜美 1)、中川良尚 1)、木嶋幸子 1)、鍵本侑子 1)、近藤郁江 1)、井上響子 1)、阿部菜都美 1)、
佐野洋子 1)、船山道隆 2)、小西海香 3)、山谷洋子 4)、加藤正弘 4)
1-5-10
読解が不可能でも音読が可能な失語症例の音読障害のメカニズム
日 程
橋本幸成 1,2)、宇野 彰 2)
JCHO 熊本総合病院 リハビリテーション部1)、筑波大学大学院 人間総合科学研究科2)
【はじめに】
「西瓜」のような非一貫・非典型語の読解が不
能であった。SALA失語症検査の語彙性判断(漢字)は正
可能であっても音読は可能となる傾向を示した症例につい
答率78%(93/120)であり、読解(TLPA+SCTAW)の
て、音読の処理メカニズムを検討したので報告する。
正答率36%(35/95)に比べて有意に高かった(p<.01)
。
特別プログラム
【症例】症例は検査時66歳の右利き女性であった。H26年
単語の音読1(心像性×頻度)では、正答率81%(39/48)
X月、左被殻出血にて発症し、右片麻痺、超皮質性感覚失
語を認めた。X線CTでは左被殻、左内包に高吸収域を認め
であり、心像性効果、頻度効果を認めなかった。
【考察】本症例は、意味処理が行われなければ音読するこ
た。
とが難しいと思われる非一貫・非典型語を含め、実在語の
【言語検査】読解検査では、失語症語彙検査:TLPA 50%
読解が不可能であるものの音読は可能となる傾向を認め
(20/40)
、抽象語理解力検:SCTAW 33%(15/45)の
た。また、語彙性判断の正答率が読解と比べて高いことか
正答率であった。読解検査の刺激語を用いて音読検査を行
ら、文字列入力辞書は比較的保存されていると思われた。
口頭演題1日目
なった結果、TLPA 85%(34/40)
、SCTAW 78%(35/45)
本症例の音読の特徴はトライアングル・モデルで説明する
の正答率であり、読解に比べて音読の正答率が有意に高
ことが難しく、二重経路モデルを用いた分析によって、文
かった(TLPA:p<.01、SCTAW:p<.01)
。 また、 読 解
字列入力辞書から直接的に音韻列出力辞書へアクセスして
が不可能であった刺激語の内、音読が可能であった刺激語
いると解釈できた。また、この処理経路はdirect dyslexia
がTLPAでは75%(15/20)
、SCTAWでは73%(22/30)
例(Lytton et al. 1989)の音読処理経路と同一ではない
存在した。TLPAとSCTAWには読解が不可能な非一貫・非
かと考えられた。
典型語が合計10語含まれていたが、その内6語は音読が可
ポスター演題1日目
1-5-11
左PCA領域の脳梗塞により漢字単語と仮名単語の音読成績に乖離を示した
純粋失読の一例
古谷 亮、稲葉明夫、三好英一
医療法人社団 愛友会 三郷中央総合病院 リハビリテーション科
口頭演題2日目
【はじめに】左後頭葉の病変により、漢字単語と仮名単語の
語3/5、仮名単語1/5となり漢字単語よりも仮名単語の成
音読成績に乖離を示した純粋失読の一例を経験した。本症
績低下が顕著。音読困難な文字もなぞり読みにて漢字単語
例の漢字単語と仮名単語の純粋失読について、障害特徴を
5/5、仮名単語5/5正答。短文音読は逐次読み、語長効果
分析したので報告する。【症例】60歳、男性、右利き、最
を認めた。発症初期には軽度の喚語困難を認めたが現在は
終学歴は大学中退。【現病歴】発症2 〜 3日前より手足の
改善し流暢。書字は発症初期から左上肢の協調性低下もあ
痺れあり、自宅にて意識を失う。発症から4 〜 5日後自宅
り拙劣、字形バランスの崩れや書き始めの向き、濁点の配
ポスター演題2日目
にて倒れている所を発見され、A病院へ入院。【画像所見】
置などの誤り、鏡映文字が見られたが発症から3 ヶ月後に
MRIにて左後頭葉を中心とし、左紡錘状回及び舌状回、脳
は拙劣さや字形バランスの崩れのみ残存。【音読所見】発
梁膨大部、海馬傍回に梗塞巣を認める。【神経学的所見】
症から3 ヶ月後のSLTA音読成績は漢字単語、仮名単語とも
右片不全麻痺、左上肢協調性低下、右同名半盲。【神経心
に5/5、成績に著名な乖離はないが仮名単語では淀みや遅
理学的所見】見当識は良好、礼節も保たれている。 認知
延反応を認めた。【まとめ】先行研究(櫻井ら2011)にお
機能はHDS-R21/30。記憶は三宅式記名力検査が有関係
いては漢字に選択的な失読を呈す病巣を紡錘状回、仮名に
1-0-0、無関係0-0-0、日常の記憶も曖昧。漢字単語と仮
選択的な失読を呈す病巣を後頭葉後部(紡錘状回後部、下
名単語に純粋失読を認め、発症初期は統合型視覚失認を認
後頭回)
とされており、本症例は梗塞巣が双方に及んでいる。
めた。構成障害も疑われる。【言語所見初期】言語理解は
今後失読症状と病巣との関係性を検討していきたいと考え
SLTA口頭命令が9/10、書字命令は0/10。音読は漢字単
る。
168
1-5-12
左側脳室内髄膜腫により二方向性の失名詞失語と読み書き障害を呈した症例
医療法人慈光会 甲府城南病院 リハビリテーション部 言語聴覚療法科1)、
医療法人慈光会 甲府城南病院 脳神経外科2)
は「〜じゃなくて」と打消す場面がみられた。課題時には聴
例を経験した。本例の言語症状の障害構造について若干の
理解・発話ともに浮動性を認めた。読み:
[読解]SLTA漢
考察を行ったので報告する。【症例】62歳、女性、右利き。
字単語8/10、仮名単語4/10、短文3/10。[音読]SLTA
[現病歴]失語、失算、失書に気づき当院受診。髄膜腫と
漢 字 単 語3/5、 仮 名1文 字6/10、 仮 名 単 語3/5、 短 文
診断され、A病院にて腫瘍摘出術施行。[画像所見]CTに
1/5。読みは仮名優位に低下し、運動覚促通効果は不安定
て側脳室後角周囲白質、側頭葉内側に低吸収域。[神経学
であった。漢字は音読できなくとも、漠然とした意味理解
的所見]右同名半盲。[神経心理学的所見]失語症、読み
が可能であった。書き:
[自発]SLTA漢字単語2/5、仮名
書き障害、注意障害、高次視知覚障害。RCPM36/36。【術
単語3/5。[書取]SLTA漢字単語3/5、仮名1文字10/10、
後3 ヶ月 時 言 語 所 見 】 聴 理 解:SLTA単 語10/10、 短 文
仮名単語5/5、短文5/5。 仮名の書取は可能であったが、
10/10、口頭命令5/10、TLPA語彙判断II39/40、意味カ
漢字の想起困難が中心の失書を認めた。【考察】本例の音
声言語は、1)喚語困難、2)打消しを伴う意味性錯語、3)誤
レベルの低下を認めたが、上位の意味概念は保たれていた。
りの浮動性、4)意味概念の保存などの特徴がみられ、脇阪
発話:SLTA呼称7/20、動作説明10/10、TLPA名詞表出
ら(1987)の「二方向性の失名詞失語」と一致すると思われ
19/40、動詞表出31/40、と名詞と動詞の表出に乖離を
た。また、読み書き障害は、失名詞失語による意味システ
認めた。音韻性の誤りはなく、文レベルの発話が可能であっ
ムと音韻辞書間のアクセス障害の影響も受けていると考え
たが、喚語困難、迂言、意味性錯語が生じ、錯語産生時に
られた。
音読と書字の症状が異なる失語症例の障害構造について
髙橋 大 1)、橋本幸成 2,3)
医療法人 原三信病院1)、熊本総合病院 リハビリテーション部2)、筑波大学大学院 人間総合科学研究科3)
では全て正しく音読できた。一方で、ひらがな非語が刺激
方、書字では漢字単語と仮名単語/非語の全てで著しい障
語のOR37無意味語の音読の正答率は75% (42/56)と健
害を呈した症例について、音読と書字の障害構造を二重経
常者の平均値の-2SD以下であった。OR35と同一の刺激
路モデルを用いて分析したため報告する。
語が用いられているD39単語の書取2の正答率は漢字40%
【症例】症例は検査時81歳の右利き女性であった。20XX
(6/15)、ひらが な13% (2/15)、カタカナ13% (2/15)、
年11月、自宅で右半身の脱力と喚語困難が出現し、脳梗
D40無意味語の書取の正答率は9% (4/42)であり、いずれ
塞にて当院へ緊急入院となった。神経学的所見として右不
も著しく正答率が低かった。
【考察】本症例の特徴として、音読では高親密度語である
名詞失語(軽度)を認めた。X線CTでは、左上頭頂小葉か
漢字・仮名単語が全て可能である一方、仮名非語の正答率
ら下頭頂小葉にかけて病変を認めた。
が低いため、語彙ルートは保たれ、非語彙ルートに障害が
【言語検査】SLTAの音読では漢字・仮名単語、仮名1文字
あると考えられた。書字では高親密度語である漢字・仮名
が全て正答した。書字では漢字単語の書取が40% (2/5)、
および仮名非語の正答率がいずれも低いため、語彙ルート
仮名単語の書取が0% (0/5)、仮名1文字の書取が60%
および非語彙ルートの双方に障害があると考えられた。こ
(6/10)の正答率であり、漢字・仮名単語の書字はともに0%
のように、本症例では音読と書字の障害構造に違いがある
(0/5)であった。SALA失語症検査では、高親密度の漢字・
と思われた。
ひらがな・カタカナ単語が刺激語であるOR35単語の音読2
169
ポスター演題2日目
全片麻痺、右同名半盲を認め、神経心理学的所見として失
口頭演題2日目
【はじめに】音読では仮名非語で選択的な障害を認める一
ポスター演題1日目
1-5-13
口頭演題1日目
テゴリー別名詞(理解)156/200と構文機能に比し、意味
特別プログラム
【はじめに】髄膜腫により失語症、読み書き障害を呈した症
日 程
高野裕輝 1)、石田 礼 1)、中村晴江 1)、小宮桂治 1)、杉田正夫 2)
1-5-14
仮名非語の音読で特異な症状を示した産生型伝導失語の1例
日 程
山田朱里、奥平奈保子、金井日菜子、河村千映、藤永直美
東京都リハビリテーション病院 リハビリテーション部
【はじめに】仮名非語の音読が困難なのに、単語の1文字
の障害が著明だった。TLPA文字語彙判断検査(仮名)は1
を置換した非語の音読のみ比較的良好な伝導失語の症例
文字置換(あくび→あつび)と類似なし(ぬばた)は良好
を経験した。本例の障害機序について検討したので報告す
だったが、音韻転置(いびき→きいび)では非語を単語と
特別プログラム
る。【症例】67歳、右利き男性。X月Y日心原性脳塞栓症
する誤りが多かった。本検査の単語・非語を音読させたと
を発症し血栓溶解療法施行。Y+10日当院入院。MR
Iで左
ころ、単語77%、非語32%と語彙性効果を認めた。1文字
側頭葉から頭頂葉の皮質・皮質下に病巣を認めた。神経学
置換非語60%、音韻転置非語15%、類似なし非語20%と、
的には軽度右上肢感覚障害、神経心理学的には中軽度産生
1文字置換非語のみ比較的良好で、音韻転置非語では語彙
型伝導失語、軽度口腔顔面失行を認めた。RCPM32/36。
化錯読が認められた。【考察】本例は、仮名非語の中で1
【言語所見】理解は音声・文字ともに良好。発話は流暢で
文字置換非語の音読のみ比較的良好だった。これは、語彙
喚語困難は軽度だったが音韻性錯語と接近修正が著明だっ
経路でいったん喚起された音韻類似単語(あくび)を非語
口頭演題1日目
た。音読は仮名・漢字ともに単語に比べ非語が困難。仮名
彙経路によって修正して音読(あつび)していたと推測され
では音韻性錯読と同音疑似語効果を認め、音韻失読の状態
る。一方、音韻転置非語は、語彙経路で類似単語(いびき)
と考えられた。音韻操作課題では、モーラ分解はほぼでき
が喚起されるが、仮名の順序情報処理の障害のため、非語
たが抽出は4モ−ラ以上は困難。2・3モーラ単語の仮名チッ
彙経路によって修正することができずに語彙化したまま表出
プの並び替えをさせても誤りが多く、仮名の順序情報処理
されたと考えられた。
ポスター演題1日目
1-5-15
流暢型失語症例の発話における誤反応の経時的変化について
木村奈緒 1)、瀧澤 透 2)、高橋直美 1)、木戸千穂 1)、森口達生 3)
京都南病院 リハビリテーション部1)、京都光華女子大学 医療福祉学科 言語聴覚専攻2)、京都南病院 内科3)
口頭演題2日目
発話の検査において、発症直後は無反応が多かったが経過
のSLTA呼称はそれぞれ正答3・5・5、誤反応総数に占め
と共に誤反応の内容が変化した症例を経験したので報告す
る無反応の割合は90%から10%・26%と減少、一方音断
ポスター演題2日目
る。【症例】発症時53歳、右利き、男性、トラック運転手。
片(目標語の一部の表出・その他の音断片含む)の割合
糖尿病・高血圧の既往あり。【現病歴】言語障害にて発症
は8%から43%・53%と増加した。錯語に関しては音韻性
しA病院へ搬入、左側頭頭頂葉脳梗塞と診断。 保存的治
錯語が17%・0%・0%であったが語性錯語は0%・19%・
療を受け第10病日に当院に転院。第128病日に自宅退院、
11%と微増した。第113病日での100語呼称検査では、正
以後外来にてST継続中。【神経学的所見】特になし。【神
答が72、誤反応総数に占める無反応の割合は11%、音断
経心理学的所見】流暢型失語症、構成障害を認めた。【言
片59%音韻性錯語11%語性錯語19%であった。第11病日・
語所見】理解は単語レベルから不確実で、聴き返しも時
53病日・83病日でのSLTA単語復唱はそれぞれ正答1・1・5、
折認めた。第10病日から開始したSLTAでは聴理解の単語
漢字単語音読0・3・4、仮名単語音読0・0・5と改善を認
90%短文30%、読解の漢字単語100%仮名単語60%短文
めた。【考察】呼称の誤反応において経過と共に無反応が
40%の正答率であった。発話は流暢で文レベルであったが
減少し音断片の割合が増加したことは、本例の主たる障害
会話時喚語困難や錯語を認めた。書字は単語レベルで困難
レベルが音声出力辞書及び音素レベルにあることを示唆す
であった。【方法】第11病日・53病日・83病日でのSLTA
ると考えられた。発表ではモダリティによる差、その他の特
発話、及び113病日での100語呼称検査の誤反応につい
徴についても考察を加えたい。
て分析を行った。【結果】第11病日・53病日・83病日で
170
1-5-16
新造語ジャーゴンから多彩な錯語に移行したWernicke失語例の回復過程
医療法人大植会 葛城病院 リハビリテーション部
【はじめに】新造語ジャーゴンから多彩な錯語に移行した
は書字命令でも理解可能となった。漢字書字に明らかな改
重度ウェルニッケ失語例を経験したので報告する。【症例】
善を認め、仮名書字も改善傾向にあった。退院時TLPAカ
テゴリー別名詞検査[呼称]での正答は21語だったが、発症
9か月時には35語と僅かに改善し、口頭表出困難時は文字
後A病院受診。頭部MRIにて心原性脳塞栓症と診断され入
表出にて応答しようとする場面が散見され、書字内容も正
院。第39病日、リハ目的にて当院に転院。発症6 ヶ月後に
答の場合が多かった。新造語98語から70語へ減少し、意
味性、無関連性、音韻性錯語などが増加した。また新造語
MRI FLAIR所見(転院時)】左頭頂葉・側頭葉の皮質、皮質
でも“縁側”が「ひだ→えんばだい」
、
“蓮根”を「てこん
下に高信号域が認められた。【神経心理学的所見】RCPM
→れんね」
、
“ピンセットを「べくかん→ぴんなき」と目標語
29/36(第40病日時)
【言語症状】転院時のSLTA呼称は
が推測される変化が認められた。【考察】本症例は新造語
2/20で、新造語が最も多く、その他無関連性錯語、音韻
の減少に伴い多彩な錯語が増加し、宮崎ら(2013)の経過
性錯語などが認められた。聴理解、読解は共に単語レベル。
型別は混合型に相当し予後不良とされるが、意味、音韻の
書字については漢字書称のみ中等度レベルで保たれてい
両レベル強化により、相互活性化モデル(Martinら1994)
た。意味、音韻の両レベルにアプローチを実施し、退院時
で説明できるまで改善し、意味性、無関連性、音韻性錯語、
の呼称も改善はないものの新造語が減少し、意味性、無関
新造語等が認められるようになったと考えられる。
連性、音韻性錯語が増加した。聴理解は短文レベル、読解
超皮質性運動失語症例の語想起能力の改善経過と特長についての一考察
北條具仁 1)、君嶋伸明 1)、大畑秀央 1)、百瀬瑞穂 1)、小林美穂 1)、角田航平 1)、荻野真紀 1)、
二宮充喜子 2)
【目的】今回我々は左前頭葉補足運動野の損傷後に超皮質
認無し。【方法と結果】(1)第1期(Z+51 〜 85日)、(2)第2
性運動失語を呈した症例について、語想起能力の改善経過
期(Z+86 〜 145日)、(3)第3期(Z+146 〜 182日)に分け
とその特長を検討し、考察を加える。【症例】42歳右手利
て、
動物・野菜・スポーツの語想起課題
(以下カテ)
と、
「あ」
「か」
「し」の語想起課題(以下文字)を用いて想起数、特徴・
吐き気があり、A病院に救急搬送。頭部CT上くも膜下出血
内省を3期に分けて検討した。〔カテ例〕動物(1)4語→(2)8
を認め、同日クリッピング手術施行。術後、血管攣縮によ
語→(3)12語、(1)思いついたまま想起→(2)自己の体験を
る左前大脳動脈領域梗塞併発。Z+49日リハビリ目的にて
用いて想起→(3)指標を下にした想起と停滞時の指標の切り
当院に転院。【神経学的所見】ADLに影響しない程度の右
替え、
と変化した。〔文字例〕
「か」(1)0語→(2)5語→(3)7語、
上肢の軽度運動麻痺と把握反射を認めた。【神経放射線学
(1)何も思いつかない→(2)同一語を使用した複合語→(3)思
的所見】Z+146日の頭部CT画像上、左前頭葉補足運動野
いついたものから想起、と変化した。2SD以上の改善を認
内側部および上前頭回皮質皮質下、前部帯状回、前脳基
めた検査項目は、(1) 〜 (2)の時期はTMT1、(2) 〜 (3)の
底部に損傷を認めた。【神経心理学的所見】超皮質性運動
時期はAuditory Detection、PASAT1秒条件であった。
【考
失語。初診時SLTA呼称19/20、語列挙4語、自由会話で
察】本症例の語想起能力の改善経過には、初期は言語発動
自発話は殆ど無し。意味理解障害は認めなかった。WAIS3
性の改善が関与し、次に方略的な語彙の検索および認知的
知 覚 統 合101。RCPM33/36。TMT1 213秒、TMT2
柔軟性に関わる高次脳機能の改善が関与したと考えられた。
148秒。KWCST 1回目CA0、PEN4、DMS3。失行、失
171
ポスター演題2日目
き男性、高校中退、派遣社員。【現病歴】X年Y月Z日頭痛・
口頭演題2日目
国立障害者リハビリテーションセンター病院 リハビリテーション部1)、
国立障害者リハビリテーションセンター病院 第1診療部2)
ポスター演題1日目
1-5-17
口頭演題1日目
退院し、退院後も2回/週で外来にてST訓練継続中。【頭部
特別プログラム
78歳、男性、右利き、現在無職。【現病歴・経過】X年X
月、妻と会話が噛み合わなくなり、症状改善しないため2日
日 程
坂上知津、田中未来、渡辺朱美、山谷晶子、林 晃奈、安井美佐子、福家由佳
1-5-18
日 程
両側側頭-頭頂葉の血流低下のより極度の流暢性発話障害を呈した
うつ病患者の一症例
川見員令 1)、岩城裕之 1)、喜多有理 1)、平田知大 2)、川崎 拓 2)
滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション部1)、滋賀医科大学医学部附属病院リハビリテーション科2)
【はじめに】非言語表出に比し発語開始まで数分と顕著な
遅延が見られるうつ病例を経験したので報告する。【症例】
アミラーゼ評価:ストレス−。やる気スコア24点。SDS36点。
リーボウィッツ社会不安尺度74点。自己効力感
(DSES)
1点。
特別プログラム
18歳、男性、右利き。精神症状を伴わない重症うつ病に
発語困難感VAS評価19mm。OTで日記療法介入。【経過
対し向精神薬、電気痙攣療法施行するも日常行動や言語応
と結果】語列挙・呼称・書字説明・遂行課題を実施。語列挙:
答に遅延を認めた。【神経放射線学的所見】脳実質、脳血
形容詞カテゴリー>名詞カテゴリーで低下あり。呼称:低頻
管に異常無し。両側側頭-頭頂葉は前頭葉に比し血流低下。
度語で喚語困難+意味性錯語+。書字:時間延長+。遂行
口頭演題1日目
【神経学的所見】異常無し。【神経心理学的所見】喚語困
課題:反復学習効果+。DSES 5点に改善。非流暢発話の
難+ チック症状+ 失語症− 【初期状況】発語運動開始
軽減。【考察】遂行課題や非言語表出が比較的良好であり
まで数十秒から数分の遅延。一旦発語があると文レベル表
前頭葉機能は概ね維持しているが、側頭葉の血流低下が関
出。随伴症状+。口頭/書字命令課題:可能。音読・復唱・
与し喚語困難、語想起障害から流暢性発話障害が出現した
数字順唱:良好。100単語呼称:95点、平均喚語時間5.8
と考えられた。また、うつや意欲の状態に比べ自己効力感
秒。 語 列 挙:動 物14語、 野 菜4語。Stroop課 題:良 好。
との関係が示唆された。意識レベルの言語を外言語化(意
FAB16点。仮名ひろい14個。Digit span F7桁B5桁。三
識化)
、言語野を賦活させる機会の提供、高次脳機能評価
宅式記名検査:有3-9-9無2-6-7。MMSE28点。RCPM35点。
と助言等の言語聴覚士の介入は、うつ症例の社会参加支援
コースIQ107。SLTA単純総和224点。呼称時脈拍と唾液
の一助になると考える。
ポスター演題1日目
1-6-01
対人コミュニケーション行動観察フォーマットFOSCOMを用いての
2時点の評価
東川 健
横浜市総合リハビリテーションセンター 発達支援部 難聴幼児課
口頭演題2日目
対 人コミュニ ケ ー ション 行 動 観 察フォー マット( 以 下、
能。音形:メガネが[menage]になる等単語の音形の問題
FOSCOM)は、個別検査場面における、主に就学前の幼
あり。会話:質問—応答関係検査149点で4歳台のレベル。
児の対人コミュニケーション行動を把握するために開発され
文字:自分の名前のみ読み可能。コミュニケーション態度:
た評価ツールである。これまでFOSCOMを用いての縦断
FOSCOM18点(所見やや多い)
。まわりくどい意思表示、
的な変化に関する報告はない。 今回、継続的な支援を行
過剰な報告パターンあり。独特な表現
(眼鏡→
「むしめがね」
)
い、2時点でのFOSCOMを用いての評価を行った症例を経
あり。2時点目の評価(CA:6:4時)
:FOSCOM9点(所見
験したので報告する。【症例】指導開始時年齢:5歳5ヶ月。
やや少ない)。遊びへの誘いかけに対する反応、視線、表
ポスター演題2日目
男児。医学的診断名:ASD、LDリスク。既往歴・現病歴:
情変化についての不自然な点は目立たない。リマインダー
出生時、鉗子、吸引分娩。視力、聴力、身体機能等:問題
を用いれば「疲れた」
、
「休憩したいです」などの意思表示
なし。発達歴:定頸3ヶ月、座位4〜5ヶ月。独歩1歳2ヶ月、
可能。過剰な報告パターン(冗長性+)
、独特な表現(過去
始語2歳。知能検査
(臨床心理士による)
:WISC-4
(CA6:0時)
→「うしろ」)あり。【考察】数量的に変化のみられた項目、
FSIQ:88【評価結果】指導開始時ST評価(CA5:5時):言語
質的に変化のみられた項目について検討し、支援内容との
理解:PVT-R VA5:1(SS9)。<S-S法>3語連鎖2形式可能。
関連を含め考察を行う。
統語方略語順不可。言語表現:助詞を含んだ多語発話が可
172
1-6-02
自閉症スペクトラム障害における感情認知の検討
国際医療福祉大学クリニック 言語聴覚センター 1)、国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科2)
理解を全問正答し、感情語の発話も比較的良好であった(4
歳で7.2 / 8点)
。(2)談話の感情認知では、ASD児は全
本研究の目的は、4 〜 6歳のASD児の感情認知について表
年齢において他者感情の認知が自己感情の認知より有意に
情識別、感情語の理解・発話、談話における自己感情と他
低 かった が(4歳・6歳:p<0.01、5歳:p<0.05)
、健常
者感情の認知から検討した。また、談話の感情認知と心の
児ではこのような差を認めなかった。(3)心の理論の通過
理論の関係について検討した。
率は、ASD児は健常児より全年齢で低かったが(4歳、6歳:
【対象】知的障害のないASD児30名(4・5・6歳、各10名)
。
対照群は健常児36名(4・5・6歳、各12名)
。
p<0.01、5歳:p<0.05)
、ASD児と健常児ともに談話の
自己感情と他者感情の認知の通過率と心の理論の通過率の
【方法】表情識別・感情語課題:喜び、驚き、怒り、悲しみ
間に有意な連関を認めなかった。
の感情について表情写真のマッチング課題、感情語の発話・
【考察】4 〜 6歳のASD児は、喜び、驚き、怒り、悲しみ
の表情識別および感情語の理解は可能で発話も比較的良好
であるといえる。しかし、談話では自己感情の認知は可能
が対象児)と他者感情(主人公が対象児の母親)を問う質
であるが、他者感情の認知は低下しており、他者に視点に
問(40問)に口頭で答えてもらった。心の理論課題はサリー
立って感情を推論することが困難と考えられる。談話におけ
とアン課題を実施した。
る感情認知と心の理論の間に連関を認めず、これは両者が
5、6歳代高機能自閉症スペクトラム障害児の言語・コミュニケーション
の評価−ITPAと質問−応答関係検査の分析−
山田有紀 1)、笠井新一郎 2)
熊本県こども総合療育センター 診療部訓練1)、医療法人 真樹会 宇高耳鼻咽喉科医院2)
ITPA下 位10項 目 のSSの 平 均 値 の 差 をt検 定 で 検 討し、
ペクトラム障害児(以下、HFASD児)の言語・コミュニケーショ
ITPAとQ&Aの下位10項目の相関をみた。
【結果】1)ITPA下位10項目SS:5、6歳代とも「ことばの類推・
の全検査評価点(以下、全検査SS)36未満群では、質問−
ことばの表現・文の構成・形の記憶」が低く、6歳代の「絵
応答関係検査(以下、Q&A)において、5歳代は疑問詞構文
さがし」以外は各下位項目で群間に差を認め、未満群が有
応答能力の獲得に遅れを認め、6歳代は基本的な疑問詞構
意に低い結果であった。2)ITPAとQ&Aの相関:5歳代未満
文応答能力は獲得しているが、説明能力がまだ不十分であ
群はITPA「ことばの表現」とQ&A「なぞなぞ・仮定・系
ることを報告した。 今回は、前回の結果を受け、Q&Aが
列絵」
、以上群はITPA「ことばの類推」とQ&A「理由・系
ITPAの下位項目にどのように反映されているかを検討し、
列絵・文章の聴理解」との正の相関を認めた。6歳代未満
5、6歳代HFASD児の言語・コミュニケーション能力に関す
群はITPA「ことばの類推」とQ&A「日常的質問・語義説明・
る評価と訓練について考察する。
文章の聴理解」
、以上群はITPA「数の記憶」とQ&A「なぞ
【対象】生活年齢5、6歳代でITPAとQ&Aを全項目実施し
なぞ」で正の相関を認めた。 ITPAで低値となった「こと
たHFASD児99名(5歳代49名、6歳代50名)である。
ばの類推・ことばの表現」との相関を示すQ&A下位項目が
【方法】各年代でITPA全検査SS36未満群(5歳代25名、6
多く、発表ではQ&Aでの疑問詞構文応答能力の獲得の遅
歳 代27名)と 以 上 群(5歳 代24名、6歳 代23名)に 分 け、
れや説明能力の不十分さの要因を検討し、考察する。
173
ポスター演題2日目
ン能力についてITPA言語学習能力診断検査(以下、ITPA)
口頭演題2日目
【はじめに】前回の本学会で、5、6歳代の高機能自閉症ス
ポスター演題1日目
1-6-03
異なる神経機構に支えられていることによると考えられた。
口頭演題1日目
理解課題を作成し実施した。談話の感情認知課題:喜びと
悲しみの感情を表す談話10話を作成し、自己感情(主人公
【結果】
(1)ASD児は全年齢において表情識別と感情語の
特別プログラム
ASDでは扁桃体の構造・機能に異常を認めることが指摘さ
れており、感情認知に特異的問題を呈する可能性がある。
日 程
三森千種 1)、藤田郁代 2)
1-6-04
日 程
集団・個別訓練を併用した自閉症スペクトラム障害疑いの1例
−当院における早期療育の取り組みから−
十河美鈴 1)、元山理恵 1)、池内美早 1)、綾田永治 1)、笠井新一郎 2)
医療法人社団 讃陽堂松原病院1)、宇高耳鼻咽喉科医院2)
特別プログラム
【はじめに】当院STが参画しているA市の乳幼児健診では、
害疑いの児について報告する。【症例】3歳6か月男児。主
発達に問題がみられた児に対し、必要に応じて地域の子育
訴はことばが出ない、人見知りが強い、医学的診断名は自
て支援教室や医療機関等への紹介を行っているが、要観察
閉症スペクトラム障害疑い。来院経緯は1歳6か月児健診で
児の半分以上が受診につながりにくい状況が続いていた。
泣いて課題に取り組めず、自発話も出ていなかったため、1
これは、乳幼児健診で要観察となる児は障害の程度が軽度
歳10か月時に当院を受診。初期評価は津守・稲毛式乳幼
の児が多く、医療機関での個別訓練は保護者にとって抵抗
児精神発達診断法で運動以外は生活年齢よりも低い結果
が強いためではないかという理由が推察された。そこで当
で、国リハ式〈S-S法〉言語発達遅滞検査ではコミュニケー
院では、このような要観察児に対し、個別訓練よりも気軽
ション態度は非良好、受信が段階3‐2音声記号で、音声発
口頭演題1日目
に参加しやすい集団訓練(親子教室)から開始し、時期を
信はみられない状態であった。そこで、集団訓練から開始
みて個別訓練を併用している。その結果、乳幼児健診から
し、その後個別訓練も併用して集団訓練と個別訓練で相補
紹介されて当院を受診する児が増加し、初診時年齢が低年
的な対応を行った。その結果、3歳0か月時に実施した田中
齢化する等、乳幼児健診後の要観察児に対し、より早期の
ビネー知能検査では、精神年齢3歳1か月、IQ103となり、
療育開始が可能となった。今回はA市の1歳6か月児健診か
行動面の問題の改善も認められた。発表では、本症例の経
らの紹介で当院を受診、集団訓練を開始後に個別訓練も併
過および当院での早期療育の取り組みについて述べると共
用した結果、問題の改善がみられた自閉症スペクトラム障
に、若干の考察を加えて報告する。
ポスター演題1日目
1-6-05
音声発信困難リスク児における発信行動訓練の有効性
松尾基史
公益財団法人大原記念倉敷中央医療機構 倉敷中央病院
口頭演題2日目
【はじめに】音声発信困難リスク児一症例に対し1年10 ヶ月
【経 過】開始当初、身ぶり模倣は可能だが発信行動は未
のST訓練で3語連鎖発信まで獲得し顕著な改善を認めたの
確立であった。そこで発信行動の体制化・拡大等を目的に
で、その経過と要因について報告する。
訓練を実施すると、身ぶり発信、音声模倣の順に可能とな
【 症 例 】CA4:6女 児。 医 学 的 診 断 名:低 酸 素 性 脳 症、
りCA3:4には単音節の発信が増加した。 腎移植後、音声
Potter症候群、慢性腎不全。 現病歴:子宮内発育不良、
発信行動の拡大を目的に発声発語器官運動、音声発信訓
羊水過少進行のため在胎35週に帝王切開で出生。AS3/6
練を実施するとCA3:9には異音節結合の表出語彙が増加、
点、出生体重1924g。日齢27日まで人工呼吸器管理。月
CA3:10には2語連鎖発信、CA3:11には3語連鎖発信が可
齢2 ヶ月 にPT、OT開 始、CA2:5にST開 始。CA3:5に 腎
能となった。CA4:6の<S-S法>では受信4:2(語順可)、発
ポスター演題2日目
移植。発達歴:定頸0:4、座位1:6、始語2: 4。新版K式は
信3:1(3語連鎖可)と顕著に改善を認めたが構音障害は残存
CA2:0 で DQ73、DA1:6(P-M0:10、C-A1:8、L-S1:6) で
した。
あった。ST開始時、視力・聴力低下や身体欠損なし。運動
【考 察】本症例は、音声発信困難リスク児の中でも飯塚
は失調症状があり上肢操作時に企図振戦がみられた。発声
ら(1994)が提唱している構音障害移行例タイプと考える。
発語器官の形態異常、麻痺はないが運動は拙劣。CA2:8
顔面・口腔器官等の構音操作のコントロール面の発達の遅
の<S-S法>はコミュニケーション態度良好、症状分類B群(音
れがその要因と考えた。このタイプには早期から発信行動
声発信困難)リスク、受信2:1(2語連鎖可)、発信1:7未満(有
の体制化や発声発語器官運動等の発信行動訓練を導入する
意味語無)と受信面に比し発信面に顕著な遅れを認めた。
ことが有効と考える。
174
1-6-06
説明能力に問題のある児への取組み
JA徳島厚生連 阿南共栄病院 耳鼻咽喉科1)、宇高耳鼻咽喉科医院(うだかじびいんこうかいいん)2)
内山千鶴子
目白大学保健医療学部言語聴覚学科
複数の図形を同時に見分けることが特に困難だった。模写
特に模写の障害は著明である。書字指導にあたり模写の方
は拙劣で丸と縦の直線が書ける程度だった。就学前でもあ
略が有効ではなく、運動覚と図形の言語化をもとにした学
り、複数の仮名文字を読むことが出来ており、母親は自分
習が効果的であった。この結果から本児の視覚認知の神経
の名前だけでも書いてほしいと書字練習を希望して来所し
心理学的な特性を考察した。【症例】文字学習開始時の年
た。【指導方法と結果】読みの練習。複数の図形を弁別す
齢が6歳の女児。生後3か月で心雑音がありS病院を受診。
る練習。細部を見分ける練習。縦横斜めの直線と曲線を音
S病院で生後5か月の時大動脈弁狭窄症とウイリアムズ症候
声を伴って書く練習。読める文字に関して(1)形態に溝が
ある文字カードの溝を指でなぞる。(2)形態を音声で示し
院。初診時のWPPSIでは言語性IQ50、動作性IQはスケー
ながら書く。以上の練習を行ったところ、8か月で「ふ」以
ルアウトだった。6歳10か月時、大脇式知的障害児用知能
外の仮名文字が見本提示無しに書けるようになった。1文字
検査ではMA4歳、6歳11か月時、グッドイナフ人物画知能
の書き取りが出来るようになったが、単語の書き取り、呼称
検査ではMA3歳6か月だった。フロスティッグ視知覚発達
の自発書字は出来ない。【考察】本児の模写と書字の障害
検査では、視知覚年齢が視覚と運動の協応1歳9か月、図
は、視覚と運動の協応と複数の図形の同時弁別障害に起因
形と素地2歳7か月、形の恒常性3歳8か月、空間における
すると考えた。この障害を補うために指でなぞる運動覚と
位置4歳1 ヶ月、空間関係5歳だった。視覚と運動の協応と
図形の言語化が有効であったと推測した。
175
ポスター演題2日目
群と診断された。就学前本児6歳で目白大学クリニックに来
口頭演題2日目
【はじめに】ウイリアムズ症候群は視覚認知の障害が特徴で、
ポスター演題1日目
ウイリアムズ症候群を呈する児童の書字指導
口頭演題1日目
1-6-07
特別プログラム
理89±8、習得度88±8であった。
【はじめに】検査結果では言語面・認知面ともに全体的な伸
【 再 評 価(CA5:4 〜 5:9)】WPPSI知 能 診 断 検 査 は、
びがみられたが、日常会話でのやりとりや、説明能力への
FIQ113、VIQ105、PIQ117。K-ABCでは、継次処理94±9、
伸びはみられなかった症例を経験した。この症例に対して、
同時処理110±9、認知処理103±8、習得度110±7であっ
説明能力の向上を目的とした訓練を中心に実施した。その
た。検査結果においては、バラつきが小さくなり、全体的
訓練効果について検討する。
な伸びがみられた。しかし、日常会話でのやりとりや説明能
【症例】6歳3か月(初診時4歳8か月)の女児。初診時の主
力には伸びがみられなかった。また、聴覚的把持力や話を
訴は、やりとりができてほしい、話を聞くときに視線が合わ
聞くときにゴソゴソと動いたり、気持ちの切り替えの苦手さ
ない。現在の主訴は、会話が成り立たない、空気が読めない、
が残存していた。
話が聞けないである。発達歴は、運動、言語ともに特記事
項なし。集団参加はA幼稚園。家族構成は、父、母、本児、 【訓練内容】説明能力の向上を目的とした訓練を中心に訓
練を立案し、実施した。訓練内容は、異同の説明や5W1H
妹の4人家族である。
【 初診時評価(CA4:8)】聴力に問題はなし。PVT-Rでは、 を用いた出来事の説明、系列絵を用いた状況説明や因果関
係の説明、絵本の内容説明などである。本児は、視覚優位
VA3歳4か月、SS6。WPPSI知能診断検査は、FIQ88、
であったため、初めはできるだけ文字や絵などの視覚的情
VIQ83、PIQ98であり、下位検査項目にバラつきがみら
報を用いた。また、聴覚的把持の訓練も並行して実施した。
れた。また、単語の項目では、ジェスチャーや単語での
説明が多く、ことばで説明することの苦手さがみられた。 これらの訓練効果について検討し、考察を加えて報告する。
K-ABCでは、継次処理88±8、同時処理92±10、認知処
日 程
益田梨絵 1)、前田秀作 1)、野口理衣 1)、松原有沙 1)、牧野 光 1)、畠山裕子 1)、六角順菜 1)、
大西皓貴 1)、陣内自治 1)、川田育二 1)、笠井新一郎 2)
1-6-08
書字障害の1症例の訓練経過 ー構成方略の視点からー
日 程
小出知沙子、小田部夏子、三森千種
国際医療福祉大学クリニック 言語聴覚センター
【はじめに】聴覚法や視覚法による書字訓練の先行研究は
かべ、それに近づけるように点や線を足したり引いたりしな
多いが、構成方略の視点から指導を行っている研究は少な
がら徐々に完成させる。部首や偏をひとまとまりとしては認
特別プログラム
い。今回、書字障害の1症例に対して、構成方略の視点か
識しておらず、書き順や線を引く方向等が定まらない。こ
ら訓練を立案、実施したので報告する。
れらから、視覚記憶は保たれているが、視覚構成力が不良
【 症例 】10歳5 ヶ月(初診時8歳5 ヶ月)の4年男児。 普
であった。行動特徴は、不注意、衝動性を認めた。
通小学校の通常学級在籍、通級利用。 医学的診断名は
【方法】書字が出来ない2年生の漢字を訓練語とした。まと
ADHD、LD。学習の遅れ、書くことが苦手を主訴に来所。
まりごとに分解、再構成をさせる群と、視写のみをさせる
発達歴は始語2歳2 ヶ月、2語文2歳10 ヶ月と言語発達に
群に分け、1回の訓練で両群を行い、1 〜 2週に1回の頻度
遅れを認めた。知的機能はWISC−3にて遅れを認めない。
で2 ヶ月間実施した。
STRAWとReading Testより音読と読解は良好であったが、
【結果および考察】まとまりごとに分解させる群で改善傾
口頭演題1日目
書取では片仮名、漢字に問題を認めた。視力や視機能は正
向にあり、途中から視写のみの群にも改善傾向を認めた。
常範囲。Reyの複雑図形検査にて、模写14.5点であった。
Reyの複雑図形検査の模写32点(修正あり)
、直後再生10
模写では一度では完成できず、書き直しを求めてきた。4
点、遅延再生12点であった。構成方略の評価は良好な成
回目で26.5点に達し、4回目の直後再生3点、遅延再生0
績であった。Reyの複雑図形検査の再評価から、構成方略
点であった。図形記銘課題を行い、視覚記憶の問題がない
を獲得してきていると考える。本児の構成方略が良好になっ
ことを確認した。漢字書字の特徴は、頭の中に形を思い浮
たために、視写のみの群にも影響があったと考えられた。
ポスター演題1日目
1-6-09
小脳腫瘍摘出術の前後に言語評価を実施した小児の3症例
遠藤俊介 1)、沢 千晶 1)、栗原 淳 2)
埼玉県立小児医療センター 保健発達部1)、埼玉県立小児医療センター 脳神経外科2)
口頭演題2日目
【はじめに】近年、小脳と認知・言語機能の関連性が指摘
PVT-RにてSS8。 術 後6日まで自発 発 声 はほぼ 見られず
されている。小児の小脳疾患では腫瘍の頻度が高く、摘出
mutismの症状を認めたが、7日より発語出現。12日には
術後にmutismを示す症例があることが知られているが、そ
単語レベルでの構音正常。14日に/pataka/5回平均4'48
の報告は多くない。今回、小脳腫瘍摘出術の前後に言語評
価を行った3症例を経験したので報告する。
秒。ITPAの課題において術前術後に変化見られなかった。
【症例3】初診時7:3 男児。 右小脳半球から虫部にかけて
ポスター演題2日目
【症例1】初診時6:7 男児。小脳虫部に56×39×50mmの
55×36×51mmの腫瘍を認め、摘出術を施行。病理診断
腫瘍を認め、摘出術を施行。病理診断は髄芽腫。術前の
は髄芽腫。 術前の言語評価では構音は正常。/pataka/5
言語評価では、構音は正常で/pataka/5回平均3'62秒。
回平均2'54秒。PVT-RではSS9。 術後翌日には発語あり。
言語理解面はPVT-RでSS10。 術後3日まで「痛い」との
術後6日には構音正常で/pataka/5回平均1'68秒。SLTA
発語があったが、その後発語なくmutismの症状を認めた。
の課題において術前術後で変化見られなかった。
46日より発語あり、48日には構音はほぼ正常化したが、プ
【考察】2症例で術後にmutismを認めたが、発語までの期
ロソディーの問題を認めた。168日に/pataka/5回平均
間には差があった。また、mutsim消失後の言語機能の回
3'52秒、PVT-RでSS9まで回復するも、自発語の減少と語
復の様子も異なった。1症例では術後に言語の問題を認め
想起の遅延を認めた。
なかった。腫瘍の種類や大きさ、部位、発症の年齢が異な
【 症例2】初診時4:1 女児。 小脳虫部に40×35×38mm
の腫瘍を認め、摘出術を施行。病理診断は上衣種。術前
の言語評価では構音は正常。/pataka/5回平均3'72秒。
176
ることも原因であると思われるが、小脳腫瘍術後の言語症
状は多様であった。
1-6-10
小脳腫瘍摘出後に言語の問題を呈した小児の1例
埼玉県立小児医療センター 保健発達部
音類似運動でも運動の拙劣さを認めた。/pa
t
aka/5回平
と考えられてきたが、近年の研究で小脳と認知・言語機能
均4.
25秒であった。保護者より病前は音声言語に問題は無
の関連性について指摘がされるようになってきた。しかし、
かったが、術後は構音の不明瞭さと言葉の出づらさがみら
まだその報告数は多くない。そこで今回、小脳腫瘍摘出後
れると訴えがあった。さらに、臨床観察上視覚性呼称に遅
に言語の問題を呈した症例を経験したので報告する。【症
延がみられた。【経過】構音及び言語の想起に問題がある
例】初診時5:2、男児。頭部MR
Iで、小脳虫部に48×47×
と考え、訓練を開始した。訓練開始から約5か月後の再評
価で構音は正常化し、/pataka/5回平均は2秒まで短縮
ジ術を行った。病理検査で毛様細胞性星状細胞腫と診断。
した。しかし、視覚性の呼称課題において発語までに時間
手術直後より発語可能で、翌日には名前や年齢の表出も可
を要し、保護者からも言いづらさが残存しているとの訴えが
能であった。しかし、発語に非流暢さを認めたため手術後
あった。【考察】言語訓練後、構音の問題は改善したにも
13日目より言語訓練開始となった。【言語初期評価】構音
関わらず、言語に何らかの問題があると考えられた。これは、
検査では、単音レベルは構音可能であったが、単語レベル
小脳が認知・言語機能に関与しているという報告と矛盾して
以上になると一貫性のない歪みと置換を認めた。また、構
いない結果であった。
ヒトメタニューモウィルス(hMPV)による脳炎を発症した小児患者の
一例
有澤栄朗 1)、能登谷晶子 2)、岡部真子 3)、山本久美子 1)、浅井慈子 1)、須垣麻耶 1)
【はじめに】ヒトメタニューモウィルス(以下hMPV)は呼吸
く様子も伺えた。発症5日目にステロイドパルス療法開始。
器感染症を起こすウイルスである(2001)
。今回hMPVに
画像上では改善したが、従命動作への応答や発語はなかっ
よる脳炎を発症した1小児例を経験したので臨床経過と、既
た。18日目の田中ビネー知能検査V発達チェックでは動作
報告例と比較検討したので報告する。【症例】4歳女児【現
面11ケ月、認知面6ケ月、言語面9ケ月であった。発症20
病歴】X年5月夜間から熱感あり。痙攣持続し、当院小児科
日目よりTRH療法開始。徐々に指差しや発語、音声模倣出
入院となった。【既往歴】約1年前頃より夜間の全身間代性
現した。発症29日目自力歩行可能。発症35日目にS-S法実
施し、受信:段階2-3、発信:幼児語や成人語で音声模倣あ
ルス性脳炎【画像所見】頭部MRIにて左側後頭葉から頭頂
り。発症後42日目の田中ビネー知能検査VではIQ47を示
葉にかけて軽度腫脹を認めた。【ST初診】発症後18日目
し、発症後52日目で退院となった。【考察】横田ら(2013)
よりST開始。理解:質問に応答なし。表出:発声はあるも
の症例では発症28日目に意識清明となり発症後3 ヵ月に歩
有意味な言葉はなし。興味関心のあるものには手差しみら
行可能となり、1年5 ヵ月後は明らかな知的障害や運動障害
れる。粗大運動:支持での立ち上がりや立位保持可能。対
は消失した。本例は発症2日目でJCSは1桁。意識レベルや
人関係:視線は合う。人見知りなし。食事:刻み食を全介
粗大運動面での改善は既報に比べ早かった。退院時は入院
助にて摂取。【経過及び検査所見】発症後、徐々に意識障
前の能力にほぼ近い状態となったが、発症前の障害も含め
害は改善したが、従命動作への応答や発語はなかった。運
て、今後も介入が必要な例と考える。
動面では筋緊張の低下がみられた。また口に手を持ってい
177
ポスター演題2日目
痙攣を認めた。言語発達遅滞あり。【医学的診断名】ウィ
口頭演題2日目
富山市民病院 リハビリテーション科1)、金沢大学 医薬保健研究域保健学系 リハビリテーション科学領域2)、
富山市民病院 小児科3)
ポスター演題1日目
1-6-11
口頭演題1日目
60mmの腫瘍と水頭症を認め、腫瘍摘出術と脳室ドレナー
特別プログラム
【はじめに】従来、小脳は運動の調整や制御に関与している
日 程
沢 千晶、遠藤俊介、栗原 淳
1-6-12
日 程
脳室周囲白質軟化症(PVL)を有する脳性麻痺児のワーキングメモリーの
発達について
佐々木 千尋
宮城県 拓桃医療療育センター リハビリテーション技術部
【はじめに】PVL児は聴覚優位と概されることが多いが、臨
の最大桁数の差を調べ、乖離がある群と乖離がない群の2
特別プログラム
床像としては、場面や相手の発話意図に頓着せずパターン
群に分けた。(1)ITPA言語学習能力診断検査の“数の記憶”
的に一方的に話し続ける、注意の持続が困難で、話題が
における学習年齢と発達年齢について、群内、および群間
転換しやすくやり取りが深まりにくいといった印象を持つこ
で比較した。(2)GMFCSとの関連を調査した。【結果】
(1)
とが多い。その一因としては、ワーキングメモリー(以下
系列再生と逆行再生の最長桁数に乖離がある群、乖離がな
口頭演題1日目
WM)の困難さによるものと推測されているものの、具体
い群、ともに数唱の評価点が発達年齢に比して有意に優れ
的な報告はまだない。本研究ではPVLを有する脳性麻痺児
ていた。(2)系列再生の最長桁数において、乖離がある
のWMに関する課題を明らかにするため、WMの簡便な評
群と乖離がない群に有意差を認めなかった。(3)乖離がな
価方法の一つである数唱について、粗大運動能力分類シス
い群は乖離がある群に比べGMFCSが有意に高かった(p<
テム(以下GMFCS)との関連を後方視的に調査した。【対
0.05)
。【まとめ】本研究からPVL児には逆行再生の課題遂
象】1998年以降に当院で言語評価を受けた5歳〜 14歳
行に困難な群があることがわかった。PVL児は、数唱にお
のPVLと診断されている痙直型両麻痺児15名、四肢麻痺
いて系列再生が反映する音韻的短期記憶は強みであるもの
児2名の脳性麻痺児計17名。GMFCSレベルの内訳はIが2
の、逆行再生が反映する実行機能の発達が困難な群がある
名、IIが5名、IIIが4名、IVが5名、Vが1名であった。【方
ことが明らかとなった。またWMの実行機能の発達と運動
法】Wechsler知能検査における数字系列再生と逆行再生
機能の重症度とには負の相関がある可能性が示唆された。
ポスター演題1日目
1-6-13
幼少期SLI児の学齢期の教科学習の問題:3症例の各種検査の経過からの検討
小坂美鶴
川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科
口頭演題2日目
【目的】学童期は教科書を使用した本格的な学習の時期で
習の問題が顕著となっていった。6年生でのWI
SCIVではVC
ある。言語障害のある児の半数以上が学習障害を来すと言
I
69、PR
I
78、WMI
82、PS
I
102と課題間の差異が大きくなっ
われている。今回、幼少期および学童期から言語訓練を継
た。症例3は1年生になり、学習障害を主訴に他院から紹介
続した3例の発達経過から認知・言語の特徴を分析し、教
され言語訓練が開始になった。7歳4ヵ月の初回WI
SC-IIIで
科学習への影響について報告する。
VIQ90、P
IQ103であったが、中1のWI
SC-IVではVCI
88、
【方法】症例1は現在3年生の男児、症例2は6年生の女児、
PR
I
102、
WMI
91、
PS
I
86となった。文字学習が就学後になっ
症例3は中学1年の男児である。症例1は2歳5ヵ月に有意味
たこともあり、文字の対応規則の学習が不完全であった。
発話がないことを主訴として言語訓練が開始となった。初
中学から国語と数学は個別支援学級で対応している。3例
ポスター演題2日目
回の新版K式発達検査2001では認知-適応103、言語-社会
の検査経過を比較しそれぞれの問題点を明らかにする。
DQ72であった。3年生の現在のWI
SC-IVはVCI
95、PR
I
【考察】3例ともに言語性短期記憶の問題があり、語彙の問
98、WMI
82、PS
I
99と乖離はなくなった。教科学習では
題なども共通して見られた。早期から文字学習を導入した
読解問題での時間不足で全問解けないことや、推論を要す
症例1は音韻の問題も文字にて修正され、語彙も増加した。
る問題で誤りがある。症例2は5歳7ヵ月時に理解ができて
一方、症例2、3は文字学習の問題が幅広い教科学習に影
いないことを主訴として言語訓練が開始された。初回のWP
響し、学習の問題が拡大していった。
PS
IにてVIQ51、P
IQ90と乖離があった。就学後、教科学
178
1-6-14
平島ユイ子
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科
【はじめに】通常学級児童の学習困難には、言語発達の問
絵日記と絵の説明を検査者が対象児に実施し、対象児が表
題が根底にある場合が少なくなかった。幼少期の言語能力
出した文の数や語の数について言語活動の前後で比較した。
【結果】絵日記では、文の数が活動後に有意に増加し、文
は、保護者指導も容易でなく、言語発達を促すための会
型が整ったが、語の数についての有意な差は確認できなかっ
話環境が整いにくかった。通常校においても特別支援を進
た。また、絵の説明における文の数と語の数については有
めてきたが、言語発達支援を個別に頻回に行えるほどの人
意な差は確認できなかった。【考察】上級生による言語活
的資源はなく、言語発達を促すことが難しい状況にあった。
動が、対象児の発話文を増加させ、構文力を育てたと推察
そこで、上級生(6学年児童)が、絵日記を題材として言
された。上級生が新入生の世話をすることは小学校では慣
例であるため、言語活動以外の時間においても、担当した
上級生が話し相手となり、会話頻度を増加させたと推察さ
トについて検討した。【方法】小学校1校に在籍する言語発
れた。上級生が良い会話相手となるためには、対象児の言
達に問題があった新入生6名を対象として、特定の上級生が
語力を詳細に評価し、個々に合った会話方法を特別支援コー
6月から週2〜3回のペースで1ヶ月間、個別に言語活動を
ディネーターや担任に伝えるようなSTのサポートが有効で
実施した。活動前に特別支援コーディネーターとSTが6年
あったと考えられた。
生に話し方について説明した。言語活動の効果については、
吉田充嬉 1)、田上真希 1)、伊藤美幸 1)、石原章子 1)、高原由衣 1)、池田美穂 1)、竹山孝明 1)、
坂本 幸 1)、佐藤公美 1)、笠井新一郎 1)、宇高二良 1)、長嶋比奈美 2)
医療法人真樹会 宇高耳鼻咽喉科医院1)、九州保健福祉大学 保健科学部 言語聴覚療法学科2)
179
ポスター演題2日目
た。初診時評価結果をもとに、障害別に分類すると言語発
達障害が最も多く、次いで構音障害、聴覚障害、吃音とい
う結果であった。なお、今回は言語発達に遅れを認めた児
の他、明らかな障害には該当しないものの言語面が気にな
る児、言語と他の問題を併せ持っている児も言語発達障害
に含めている。受診児のなかには、評価の結果問題なしと
されたケースも全体の1割程度存在していた。来院地域は、
県庁所在地であり人口および出生率も多い徳島市が最も多
い結果であったが、人口・出生率ともに少ない地域からの
来院もあった。来院経緯は、公的機関からの紹介が最も多
く、公的機関からの紹介の内訳は、保育所・幼稚園が最多
であり、次いで保健センター、他院、小学校、療育施設と
いう結果であった。
発表では、平成27年3月までの結果を集約して詳細に分析
し、受診児数の増加や初診時年齢の低年齢化、公的機関か
らの紹介が多くなった背景などについて考察を加えて報告
する。
口頭演題2日目
【目的】
当院の小児言語聴覚外来(以下、新患外来)受診児の総
数は、過去5年間でみると年々増加傾向にある。
今回は、平成26年度の新患外来受診児に焦点をあて、初
診時年齢などから当院の新患外来の現状について検討した
ので報告する。
【方法】
平成26年4月から平成26年12月までの新患外来受診児
300名(男児199名、女児101名)の初診時年齢、主訴、
初診時評価結果、来院地域・経緯について検討した。
【結果】
平成26年12月時点で、新患外来の初診時年齢のピークは
1歳台にあり、受診児の多くは就学前の幼児だったが、学
齢児の受診もあった。1歳台の主訴は、聴こえが悪い気が
する、反応が悪いといったものが最も多く、2歳台ではこと
ばの遅れに関するものが急増していた。3歳台では発音が
気になるという主訴が出現し、ことばにつまるなど吃音の相
談も増加した。4歳以降は発音に関する主訴が多くを占め
ポスター演題1日目
当院における小児言語聴覚外来の現状とその背景
口頭演題1日目
語発達に問題のある新入生の会話の相手となるような活動
(言語活動)を実施し、その効果と言語聴覚士(ST)のサポー
特別プログラム
は大人との会話によって育つため、家庭に問題がある場合
1-6-15
日 程
通常小学校における言語発達に問題のあった新入生に対する上級生による
言語活動の効果と言語聴覚士のサポートについて
1-6-16
VF評価を利用し哺乳支援を行った無舌症と口峡の狭小を呈した乳児例
日 程
小松 岳 1)、住友亜佐子1)、仲宗根幸子1)、高木のぶ子2)、森岡江里2)、田中義之4)、和田佳子3)、
阪本浩一 1)、大津雅秀 1)
兵庫県立こども病院 耳鼻咽喉科1)、兵庫県立こども病院 GCU病棟2)、兵庫県立こども病院 新生児科3)、
神戸総合医療専門学校 言語聴覚士科4)
【はじめに】無舌症は、非常に稀な奇形で、その報告・研
すいニプルを試用し、角度をつけない姿勢から進めた。し
特別プログラム
究は少ない。舌は、哺乳を行う上で重要な役割を担っており、
かし、ムセや口腔からのミルクの流出がみられたため、栄
無舌症は、哺乳障害を呈する例が多い。本例は、口峡の狭
小も確認された。今回我々は、無舌症と口峡の狭小を呈し
養は経管栄養と経口哺乳の併用を要した。
【経過2】生後129日目に嚥下造影検査(VF)を実施、下
た乳児に対する哺乳支援を経験したので報告する。
顎の上下運動でニプルよりミルクが流出、口峡の位置は高
【 症例 】在胎39週、3038g、Apgar score5/8、経腟自
く、ごく少量ずつ口峡を通過し、誤嚥なく嚥下する様子が
然分娩にて出生。出生後より呼吸障害を認めた。酸素投与
みられた。VFの評価と日々の哺乳の様子から、ニプルと姿
なしではチアノーゼの改善を認めず、精査加療目的にて当
勢の調整を行った。
口頭演題1日目
院新生児科緊急搬送となった。転院当日耳鼻咽喉科受診し、
【経過3】母親にニプルと哺乳姿勢の指導を行い、生後162
口腔内の奇形(無舌症、口峡の狭小)
、小顎、舌根沈下を
日目に経管栄養と経口哺乳併用の状態で退院。ニプルの調
認めた。 栄養は経管栄養。 呼吸障害改善みられず、生後
整を続け、生後11カ月で経管栄養中止、全栄養を経口哺
56日目に気管切開術施行。病棟にて経口哺乳行うも吸啜難
しく哺乳進まず、摂食指導・訓練目的にST処方。
乳可能となった。
【考察・まとめ】無舌症と口峡の狭小の哺乳機能への影響
【経過1】生後91日目より、言語聴覚士介入開始。開始時
をVFにて評価し、哺乳支援を行い全栄養経口哺乳可能と
哺乳欲求あり、吸啜様の動作を認めた。顎運動により乳首
なった。哺乳機能に適したニプルと姿勢を調整する重要性
ポスター演題1日目
(ニプル)を圧迫する様子がみられた。ミルクが流出しや
1-6-17
が示された。文献的考察も含め報告する。
非ケトーシス型高グリシン血症児に対する哺乳及び摂食嚥下訓練の経験
間藤翔悟 1)、山田 深 2)、島崎真希子 3)、林 良幸 1)、唐帆健浩 4)、岡島康友 2)
杏林大学 医学部付属病院 リハビリテーション室1)、杏林大学 医学部 リハビリテーション医学教室2)、
杏林大学 医学部 小児科学教室3)、杏林大学 医学部 耳鼻咽喉科教室4)
口頭演題2日目
【はじめに】非ケトーシス型高グリシン血症は、重度の精神
運動麻痺はなく、人への追視はみられた。嚥下関連器官に
運動発達遅滞や痙攣発作を呈する遺伝性アミノ酸代謝異常
形態学的異常はないが、頭部や顔面に感覚過敏を認めた。
症である。今回、本疾患に対する哺乳及び摂食嚥下訓練の
吸綴動作は減弱しており、呼吸との協調性にも変動があっ
経過を報告する。
た。上唇の動きはないが、補食時の下口唇の下制や内転は
【症例】9 ヶ月男児
時折みられ、舌は前後、上方向に運動がみられた。
【現病歴】在胎38週0日、他院にて自然分娩で出生。出生
【経過】哺乳訓練として脱感作訓練、非栄養性吸綴訓練、
時体重2620 g、APGAR score 6点/6点、生下時より呼
乳首等の検討、直接訓練から開始した。1回哺乳量は一時
ポスター演題2日目
吸障害や筋緊張低下を認め、集中治療のために当院転院と
15 mlから50 mlに増加したが、その後は吸啜動作がさら
なった。呼吸状態は安定し日齢24日には緩慢ながらも哺乳
に減弱したため介入68日目で哺乳は終了とし、摂食嚥下訓
が全量可能となったが、痙攣発作や脳梁低形成を認め、髄
練に移行した。バンゲード法や直接訓練、胃食道逆流への
液/血液検査等と合わせて非ケトーシス型高グリシン血症と
対応等を行い、離乳初期食の摂取量は10 mlから介入125
診断された。月齢7 ヶ月より抗痙攣薬の増量等に伴い哺乳
量が減少し、月齢8 ヶ月で離乳初期食も開始されたが、摂
日目には30 mlに増加した。
【考察】本症例は精神運動発達遅滞に加えて、抗痙攣薬の
取量が少ないため月齢9 ヶ月よりSTが介入した。
副作用等により複合的な嚥下障害を呈していることが示唆
【評価】体重9000 g、身長72.8 cm、意識レベルは坂本
法I-2、バイタルは安定していた。未定頸であったが四肢に
180
された。非ケトーシス型高グリシン血症では発達に応じた継
続的な支援が必要である。
1-6-18
経口量アップに向けて-低酸素性脳症を呈した症例-
宮城県立こども病院 発達支援部
【はじめに】在宅で味の濃い食事を好んで食べていた低
押しつぶすような動きが見られた。また、家族が持参して
酸 素 性 脳 症を呈した症 例 の 摂 食 機 能 訓 練を経 験したの
いた幼児用のカレーを粥に混ぜたところ、経口量が増え、
で、訓練経過を報告する。【症例】3歳2か月。体重11.9kg
児の表情にも笑顔がみられた。栄養士と相談し、家族が持
参したおかずや調味料などで入院食の味を在宅で食べてい
出生。初診時2歳3か月。診断名:低酸素性脳症、心室中
た味に近づけて調整したところ 1回の食事量が200gへと増
隔欠損症。摂食嚥下機能の向上を目的にSTを開始。3歳1
えた。【考察】3歳という年齢であれば家族と同じような味
か月時に心室中隔欠損閉鎖術を施行。遠城寺式・乳幼児分
付けの食事をしており、これまでの食の経験から味の薄い
析的発達検査表にて、運動0:2-0:3、社会性0:4-0:6、言語
食事よりも在宅で食べていた味を再現することで食べたい
0:4-0:5。【経過】幼児食初期形態で訓練を開始。問診より
という意欲が沸いたことが経口量の増加に影響したと考え
焼き肉のたれなど味の濃いものを嗜好しており、水分は炭
る。また、栄養士や家族と連携を図り、児の好きな味を見
つけていくことで家族も療育へのモチベーションにつながっ
りない様子で、表情もやや苦痛な表情が見られた。間接訓
たと考える。安全に食べられる形態を美味しく楽しく食べる
練は、口腔機能へのアプローチとしてプレスピーチを行っ
ことは乳幼児期の症例においても例外ではなく、機能面だ
た。ガーゼにくるんだうまい棒を口にくわえさせると、舌で
けにとらわれることなく「食」への支援をしていきたい。
一人工内耳装用児における韻律聴取・音声産出の特徴と補聴器併用効果
富井明日菜 1)、北 義子 1)、佐々木明美 2)、近藤智英 2)
国立障害者リハビリテーションセンター学院 言語聴覚学科1)、グリーンローズ オリブ園2)
課題の成績をイントネーション課題の成績が上回っており、
音声について韻律的側面から分析し、人工内耳・補聴器併
かつ補聴器併用時のイントネーション課題の成績は100%と
用効果について検討した。
最も良好であった。(2)音声産出課題:アクセントは、
「箸」
【対象】8歳10カ月、両側感音難聴の女児。平均聴力レベ
を除き全ての語に無いか、もしくは誤りであった。一方イン
ル右105dB、左95dB。生後3カ月時補聴器装用、2歳3カ
トネーション課題では全ての文を区別して発話することが出
月時人工内耳装用。
来た。(3)CI-2004における文の聴取では、単独装用時よ
【方法】
(1)聴取弁別課題:補聴器単独装用時、人工内耳
単独装用時、補聴器併用時、それぞれについて以下の2課
【考察】韻律聴取、音声産出いずれについても、アクセン
トよりイントネーションの方が本症例にとって区別しやすく、
単語を用いた。イントネーション課題は平叙文と疑問文を用
学習が進んでいることが示唆された。このことは、それぞ
いた。1セットにつき5回ずつ音声提示し、二者択一でポイ
れが持つ情報量の違いや、学習機会の違いによるものであ
ンティングをさせた。(2)音声産出課題:聴取弁別課題の
ると考えられた。また、イントネーションについては、補聴
検査語を用いて呼称、音読をそれぞれ二回行った。(3)語
器併用により、弁別が容易となっていた。CI-2004におけ
音聴取評価検査(CI-2004)
:幼児用文検査、学童用日常
る文の聴取では、補聴器併用により音韻面、韻律面の両方
生活文検査を実施した。
【結果】
(1)聴取弁別課題:補聴器単独装用時、人工内耳
の情報を取り込み易くなり、文の理解がより向上したと考察
した。
単独装用時、補聴器併用時のいずれにおいてもアクセント
181
ポスター演題2日目
題を行った。アクセント課題はアクセント型が異なる2音節
り人工内耳・補聴器併用時の成績が向上していた。
口頭演題2日目
【目的】人工内耳・補聴器を併用した難聴児の聴取弁別と
ポスター演題1日目
1-6-19
口頭演題1日目
酸飲料を好んでいた。訓練中に出された入院食の味に物足
特別プログラム
(-1.38SD)
。 身長90.5cm。 在胎40週。 体重2600g台で
日 程
大塚由香、佐藤直子
1-6-20
日 程
教研式NRTにより評価された人工内耳装用中学生の英語学力の特徴 -学習指導要領の「読むこと」の領域の分析から-
齋藤友介 1,2)、冨澤文子 2)、河野 淳 2)
大東文化大学 文学部 教育学科1)、東京医科大学 聴覚・人工内耳センター 2)
特別プログラム
【はじめに】本邦でも学齢人工内耳装用児の増加を背景とし
する中学生のうち教研式NRTが実施できた40人であり、直
て、近年、教科の学力が長期アウトカムの指標として注目
近のCI装用閾値は25.9dB、語音明瞭度は80.2%であった。
されている。発表者らはこれまでに、小学生と中学生の学
NRTの5段階評定値に基づき、1と2(31パーセンタイル未
力についての検討を行い、同年齢の聴児と比べて学力が遅
満)を低位群、3(31以上、69未満)を平均群、4と5(69
滞する現況を報告した。【目的】人工内耳を装用する中学
以上)を高位群に分類し、各群の下位領域(上記のイ、ウ、
生の英語学力について、中学校学習指導要領(文部科学
エ)の成績を求めた。【成績】教研式NRT(英語「読むこ
口頭演題1日目
省)が示す、以下の3つの下位領域(イ:
「書かれた内容を
と」
)の成績は評定1が6人、2が14人、3が11人、4が6人、
考えながら黙読したり、その内容が表現されるように音読す
5が3人であった。下位領域の成績をz得点に換算し、プロ
ること」
、ウ:
「物語のあらすじや説明文の大切な部分などを
フィール分析と分散分析を行った結果、3群間でプロフィー
正確によみとること」
、エ:
「伝言や手紙などの文章から書き
ルに大きな差は認められなかった。【結論】人工内耳を装用
手の意向を理解し、適切に応じること」
)の成績差に着目し、
する中学生の英語学力は、特定の領域に落ち込みを有する
NRT(英語「読むこと」
)の全体成績に基づいて分類され
ものではないことが示唆された。今後、さらに症例数を増
た生徒群(低位群、平均群、高位群)ごとに、下位領域(上
やし、英語力の他の領域についても考慮しながら検討を進
記のイ、ウ、エ)の成績についてのプロフィール分析を行っ
めたい。<付記>本研究はJSPS科研費(24531265)の助成
たので報告する。【方法】対象は東京医科大学病院を利用
を受けた。
ポスター演題1日目
1-6-21
幼児期に言語訓練が十分進まなかった人工内耳装用児への就学後の指導と
支援体制について
橋本かほる 1)、能登谷晶子2)、原田浩美3)、折戸真須美4)、木村聖子5)、諏訪美幸5)、石丸 正6)、
伊藤真人 7)、杉本寿史 1,2)、吉崎智一 1,2)
口頭演題2日目
金沢大学附属病院 耳鼻咽喉科1)、金沢大学医薬保健研究域2)、聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部3)、
公立羽咋病院リハビリテーション科4)、恵寿総合病院言語療法課5)、瓢箪町耳鼻咽喉科医院6)、
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児耳鼻咽喉科7)
ポスター演題2日目
【はじめに】幼児期に人工内耳埋め込み術を受け、地域の
小学校に就学しても、軽度聴覚障害としてかかえる問題は
残存し、学習言語ならびに構音の問題は残存する。われわ
れは医療機関として就学後の聴覚管理や言語評価に努める
一方で、NPO法人金沢方式研究会と連携して、継続的支
援を続けている。今回、言語力が不十分なまま就学した聴
覚障害児2例について、就学前後の言語発達評価ならびに
就学以降の構音訓練も含めた言語指導の経過について報
告する。【対象】幼児期から就学まで金沢方式による言語
訓練を受け地域の小学校に就学した聴覚障害児2名。2例
とも3歳代に人工内耳を装用、コミュニケーション手段は音
声言語である。【症例1の経過】11歳男児。平均聴力レベ
ル102.5dB、3歳までろう学校で訓練を受け、当科での訓
練開始年齢は3歳1 ヵ月(3:1)。就学前の言語発達はPVT-R
SS4、読書力検査1年1学期以下(読書力偏差値44)
、構
音は[b/m][p/b][k/g]等の多くの問題が残存し、会話明瞭
度4。就学後は月2回の頻度で言語・構音指導(病院の他
に、患者会から依頼を受けSTが地域の公共施設に出向い
た)を継続した。11歳時のPVT-R SS7、読書力検査偏差
値52、WISC-3 VIQ84 PIQ115、会話明瞭度3。【症例2
の経過】11歳男児。 平均聴力120dB(S.O)、訓練開始年
齢は1:8であるが、親の心理的立ち直りが悪く、幼児期は
不十分な訓練に留まった。就学前はPVT-R、読書力検査は
不可。WISC-3 VIQ48 PIQ108、構音の特徴は症例1と
類似し、会話明瞭度4。就学後は症例1と同様の支援体制
の他、父親も含めた親指導、学校の担任とも連携を強化し
指導を継続した。11歳時の読書力偏差値44、PVT-R(文
字併用)SS9、WISC-3 VIQ84 PIQ138、会話明瞭度3。
【結
果とまとめ】就学時点での言語力はいずれも年齢に達して
おらず、構音も定着しなかったが、就学以降も指導を継続
したことにより、音声言語によるコミュニケーションにつな
がっていることが示唆された。
182
1-6-22
中学校期に人工内耳手術を行った先天性高度難聴の一例
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科
【はじめに】小児人工内耳装用児は手術年齢が低年齢化の
圧60dBHL, 67S):15%。CI2004日常生活文(提示音圧
傾向にあり、両耳人工内耳装用も確実に増えつつある。一
60dBHL):2%。【経過】1歳6か月からY聾学校乳幼児教
育相談を開始し、4歳から併行してA病院感覚器センターに
て筆者が就学前まで週1回の指導を行った。順調に言語力
人工内耳手術を行った一例を報告する。
【症例】22歳。女性。
を獲得し、普通小学校に入学、卒業後は私立中学校に進学
大学生。人工内耳装用歴9年。【現病歴】NHS(−)
。難聴
した。13歳5か月時に自ら決心して手術を受け、現在も常
診断:1歳。診断時のABR:両耳とも90dBnHL(−)
。補聴
用している。術後、生活音の聴取に改善はみられたが、言
器装用開始時:1歳2か月。療育開始:1歳6か月。就学前の
語聴取は十分にはならなかった。しかし、本人は生活音の
WISC-3結果:VIQ85,PIQ118。
聴取範囲の広がりを実感して、手術してよかったと話してい
人工内耳手術年齢:13歳5か月。術前平均聴力レベル:右
る。【考察】聴覚障害の病態や聴覚の活用状況によっては、
思春期以降に人工内耳手術を実施しても結果は良くないこ
明瞭度検査(提示音圧:75dBHL,67S):0%。CT・MRI所見:
とが多い。しかし、語音明瞭度検査による評価だけではなく、
異常なし。挿入機器:コクレア社CI24CS。術後5年の人工
本人のQOLの向上を考え、多角的な評価が必要になると思
内耳装用閾値:30dBHL。単音節語音明瞭度検査(提示音
われる。
聴力が聴覚処理に与える影響
堀籠未央 1,4)、松尾幸治 3)、笠井幸夫 3)、吉田憲司 3)、大橋秀美 1)、筧 一彦 4)
岡崎市民病院 リハビリテーション室1)、岡崎市民病院神経内科2)、岡崎市民病院耳鼻咽喉科3)、
中京大学人工知能高等研究所4)
を難聴とした)
、APD得点を比較した結果、有意差はなかっ
音声聴取が困難な聴覚処理障害(APD)の症例を経験した。
た。また、良聴耳4分法聴力とAPD得点には相関がなかっ
SPECTで脳血流低下を認め、軽度の記銘力低下がみられた
た。各周波数の聴力とAPD得点を比較したところ、250Hz
ことから、この症例をきっかけにAPDが認知症と関連する
と4000Hzで は 正 の 相 関 が あ り(P<.05)
、4000Hzは
か検討を進めている。調査対象は高齢者が多く、加齢によ
40dB以上で相関が強かった(P<.01)
。ステップワイズ法
り聴力低下が生じている場合が少なくない。本調査ではど
による分析でも4000HzがAPD得点と最も関連していた。
APDの質問紙14項目の主成分分析をおこない、関与が小
さかった項目を削除して質問紙を改定した。【考察】質問紙
診し、純音聴力検査を受けた48名(57.79±16.30歳)を
を用いた調査からは聴力と聴覚処理に強い相関はみられな
対象に、APDの症状に関する質問紙を実施した。聴覚的注
かった。4000Hzの聴力が40dB以上の場合は聴覚処理に
意・記憶、刺激の競合、音源定位などの14項目を設定し、
影響を与え、聴力による影響を検出してしまう可能性が考え
7段階で回答したものを得点化して分析をおこなった。【結
られた。【結論】質問紙法を用いたAPDの調査では良聴耳
果】左右耳の聴力により、正常16名、一側性難聴21名、
4000Hzの聴力がAPDの抽出に影響する可能性があること
両側性難聴11名の3群に分類し(4分法聴力が30dB以上
から、被験者の聴力により制約を受けることが示された。
183
ポスター演題2日目
の程度の聴力低下が聴覚処理に影響を与えるか検討をおこ
なった。【方法】2014/6/3 〜 7/5に当院耳鼻咽喉科を受
口頭演題2日目
【目的】純音聴力が正常であるにもかかわらず雑音下での
ポスター演題1日目
1-6-23
口頭演題1日目
耳110dBHL以上, 左耳110dBHL以上。術前の単音節語音
特別プログラム
方、幼少時から高度難聴があり、思春期以降に本人の希望
で手術を行う例も少なからず見られる。今回、中学校期に
日 程
佐藤紀代子
1-6-24
難聴がある慢性耳鳴患者に対する補聴器による音響療法の治療効果
日 程
鈴木大介 1,2)、新田清一1,2)、太田真未1)、坂本耕二1)、齋藤 真1)、野口 勝1)、藤田紘子1)、
小川 郁 2)
済生会宇都宮病院 耳鼻咽喉科1)、慶應義塾大学 医学部 耳鼻咽喉科2)
特別プログラム
口頭演題1日目
【はじめに】
難聴がある慢性耳鳴患者には、補聴器による音響療法が
効果的とされているが、本邦における報告は少ない。今回
我々は、その治療効果について検討を加えたので報告する。
【対象と方法】
対象は2006年3月〜 2014年8月までに当科を受診した
難聴がある慢性耳鳴患者144例とした。方法はまず医師が
耳鳴と難聴、補聴器による音響療法に関する詳細な説明と
カウンセリングを行った。その後に補聴器を貸し出し、初日
から常用するよう装用指導を加えた。最初の3 ヶ月間は週1
回の頻度で診察と調整を行い、治療開始3 ヶ月後に治療効
果判定と購入決定を行った。治療効果判定は、1.Tinnitus
Handicap Inventory(THI)、2.耳鳴の自覚的な大きさ・苦
痛(Visual Analogue Scale)、3.大きさ・苦痛の自覚的改
善度(5段階評価)を、自記式アンケートを用いて評価した。
またTHIとVASは治療開始前にも評価を行った。
【結果】
144例中2例が治療効果への不満と経済的問題から途
ポスター演題1日目
1-6-25
中返却となった。 残り142例は購入決定までに、ファンク
ショナルゲインと語音明瞭度曲線の測定にて適合を得た。
THI(53→10)とVAS(大きさ:68→27、苦痛:72→22)は
いずれも有意な改善が得られた(p<0.01)。 大きさ・苦痛
の自覚的改善度では約85%が改善(ほぼ消失:約30%)と
回答し、悪化は見られなかった。
【考察】
補聴器による音響療法には、患者の耳鳴に対する正しい
理解と十分な利得が必要不可欠とされている。今回の治療
効果が極めて高かった理由の1つとして、医師が詳細な説
明とカウンセリングを行ったこと、適切な調整(ハーフゲイン
相当)と常用したことが考えられた。
またSTも調整を行う際に、補助的に耳鳴の説明を行う必
要があり、耳鳴に関する知識が求められる。しかし、STが
耳鳴について学ぶ機会は乏しく、最初から耳鳴に精通して
いるSTはいない。そのため耳鳴診療に長けた耳鼻咽喉科
医の指導の下、密な連携を図っていくことが不可欠である
と考えられた。
乳児の聴覚的時間分解能に関する研究−VRAを用いた検討−
山本弥生 1)、小渕千絵 2)、城間将江 2)、原島恒夫 3)
日本聾話学校 ライシャワ・クレーマ学園1)、国際医療福祉大学 言語聴覚学科2)、
筑波大学大学院 人間総合科学研究科3)
口頭演題2日目
【目的】聴覚障害による語音の聞き取り困難には、時間分
Gapなし音を提示し、これに反応しない事を確認した上で
解能の低下が関与すると考えられているが、乳幼児におい
gapあり音を提示し、対象児が気づいた際には右側方から
てはその予測が困難である。しかしながら近年、視覚強化
強化子を提示し条件付けを行った。各Gap幅で3試行以上
式聴力検査(以下VRA)を用いた時間分解能の測定方法
検査音に対する聴性行動反応が見られた場合、その対象児
が報告されつつあり(Ranceら,2004)
、乳幼児への適用
が検出できるgapの最小反応値と判断し、月齢ごとに比較
の可能性が報告されている。そこで本研究では、定型発達
した。
児を対象にVRAを応用した時間分解能の測定を試み、発達
【結果】月齢ごとの最小反応値を比較すると、6 〜 8か月児
ポスター演題2日目
的変化についての資料を得ることを目的とした。
で25 〜 10msまでのgapには反応がみられ、9か月児以降
【 方法 】対象は生後6 〜 12 ヶ月までの定型発達乳児10
では5msへの反応もみられるようになり、月齢が進むごと
例であり、このうち6例は2回以上経過を観察し、4例は1
に反応値が低下する傾向がみられた。
回実施した。 検査は、時間分解能の測定において最も普
【考察】結果より、VRAの活用により乳児期においても時間
及している、無音区間の有無についての検出課題(gap
分解能の測定が可能であり、生後9か月齢より成人の時間
detection課題)とした。 検査音は、gapを含まない連続
分解能である2ms(高木,2002)に近似した5msのgap
ホワイトノイズとgapを含むノイズの2種とし、Gap幅は
検出が可能であった。今後、乳児期においては発達に伴う
5,10,15,20,25msの5段階とした。 防音室内スピーカよ
最小反応値の上昇についても考慮し、聴覚障害児への適用
り正面1mの距離に、対象児を母親の膝の上に座らせた。
に関しても検討していく必要性が示唆された。
184
1-6-26
特別支援学校における聴力検査の検討
宇高耳鼻咽喉科医院1)、九州保健福祉大学 言語聴覚療法学科2)
【はじめに】学校保健安全法においては、学校健診の際に
日 程
伊藤美幸 1)、佐藤公美 1)、石原章子 1)、高原由衣 1)、池田美穂 1)、竹山孝明 1)、長嶋比奈美 2)、
宇高二良 1)
も通過しなかった場合を要精査とした。測定が困難な児は
オージオメータを用いて左右別に1000Hzと4000Hzの2周
OAEを用いて難聴の有無を推定した。
【結果】学校健診では、オージオメータ64%、定性的な方
る。しかし、様々な障害を併せ持つ特別支援学校在籍児へ
法14%、測定困難22%であった。その結果、2%が要精査
の検査は容易ではない。今回我々は、特別支援学校9校で
と判断された。言語聴覚士による検査では、オージオメー
聴力検査を実施した。その結果から、学校健診における問
タ52%、ピープショウテスト(レシーバ法)12%、ピープショ
題点を明らかにし、今後の特別支援学校における聴力検査
ウテスト(スピーカ法)7%、COR20%、BOA7%であり、
のあり方を検討したので報告する。
測定困難2%であった。その結果、15%を要精査と判断した。
【方法・対象】学校健診では養護・担任教諭が実施した
特別プログラム
波数について選別聴力検査を実施するように定められてい
【考察】学校健診では、学校保健安全法の判定基準のみで
判断するため、オージオメータでの検査が出来ずその基準
学校では楽器音を実施していた。 判定は1000Hz30dB、
を適用できない者が要精査判定から除外されることで、見
4000Hz25dBで反応が得られなかった児は要精査となって
逃しが多くなっていると考えられた。選別聴力検査が困難
いた。言語聴覚士による検査では774名を対象とし、オー
な児は、オージオメータ以外の方法による聴力検査の導入
ジオメータ、S-2型乳幼児聴力測定装置、幼小児オージオ
や、測定困難児は、聴覚の専門職の介入による聴力検査な
メータPA-5を児の状態に応じ選択した。判定は、レシーバ
どを行う必要があると考えられた。
法では30dB以内、スピーカ法では35dB以内とし、一つで
口頭演題1日目
804名。オージオメータのほか、測定困難児に対し一部の
ポスター演題1日目
口頭演題2日目
ポスター演題2日目
185
P1-1-01
日 程
喉頭全摘者における単語読唇の評価と訓練効果の検証
〜無音の『声』に対してSTは何が出来るのか〜
横田 彰 1)、井上英明 1)、平石達也 1)、笹島千鶴 2)
医療法人 愛正会 やすらぎの丘温泉病院1)、東京医薬専門学校 言語聴覚士科2)
【はじめに】言語聴覚士(以下:ST)は、コミュニケーション
ら録画。この動画を担当理学療法士(以下:PT)1名・作業
特別プログラム
(以下:Com)に障害を抱えた患者の多くに、口形をはっきり
療法士(以下:OT)1名、非担当ST2名(以下:ST1・2)にPC
表示出来るように構音訓練等を実施する。しかし、実際の
にて見て頂き、症例が何と言っているのか読唇して単語ご
Com場面での訓練効果を検証する方法・研究は決して多く
とに紙に書いて頂いた。その際基準を設け、1単語につき
ない。そこで今回、多系統萎縮症の進行により喉頭全摘術
再生は3回までとした。また、全てのモーラが一致した単語
を施行された方に、主のCom手段である口形表示に対して、
のみを正答とした。【結果】OT、ST2は正答数が1 〜 2個
評価方法を検討・作成し、訓練効果の検証まで実施した。
【対
増加した。PT、ST1は正答数に変化はないが、語頭音や母
口頭演題1日目
象】A様、60歳代、女性。X年5月、多系統萎縮症の確定
音の一致数は増加した。また、4人全員から「読み取りやす
診断。X+5年2月、B病院にて気管食道分離術、永久気管
くなった」との意見があった。しかし、これらの結果からは
孔造設術を施行。 同年4月、当院へ転院。【ST訓練頻度・
明らかな訓練効果を導き出すことは出来なかった。【考察・
内容】週4・5回、40分介入。Programは、1)発話指導、2)
まとめ】本症例のような無音の『声』だけではなく、STは
顔面・頸部リラクゼーション、3)口腔体操(自動・他動)、4)
常に対象者から「少しでもこの方の言葉・想いを理解出来
車イスへの離床、5)AAC導入訓練を主に実施。【調査期間】
るようにしよう」と日々取り組んでおり、標準化された検査
H26年5月中旬から約1 ヶ月半。
【方法】67語表の20単語(3
に加えて今回のような読唇評価・訓練効果の検証は今後も
〜 4モーラ)を無作為に10単語×2組に分け、この1組ずつ
必要だと考える。
を期間前後で症例に発話して頂く。その時の口形を正面か
ポスター演題1日目
P1-1-02
一側性声帯麻痺に対しプッシング法・指圧法の併用を行った
延髄外側症候群の一例
谷 拡樹 1)、浦慎太朗 1)、出村和彦 1)、江頭 誠 2)、白銀隆宏 2)、田中有美 2)、田中一成 2)
箕面市立病院 リハビリテーションセンター 1)、箕面市立病院 リハビリテーション科2)
口頭演題2日目
【はじめに】延髄外側症候群は、Wa
l
l
enber
gが報告した球
かった。そこで訓練頻度は同様に、上肢のプッシング動作
(両
麻痺・小脳失調・交代制解離性感覚障害のほか神経核と伝
手を組んで引く動作)と母音/i:/の持続発声に合わせて
導路の障害により、めまい・眼振・嗄声・吃逆などの症状
指圧法を行ったところ嗄声の改善が認められた。上記訓練
を認める。 今回、延髄外側症候群発症後、一側性声帯麻
方法を中心に数唱や系列語・挨拶語の発声を指圧法にて3
ポスター演題2日目
【症例】70代女性。顔面のしびれにて発症し入院。頭部MR
痺により呈した嗄声に対しプッシング法・指圧法を併用した
ところ発声時声門間隙の狭小化・聴覚印象の改善が得られ
たため訓練経過を報告する。
週間実施した。
【結果】発話明瞭度1/5・自然度1/5・嗄声度:正常。M
PT16秒。喉頭内視鏡検査にて右声帯の内転運動を軽微認
Iにて右延髄外側に脳梗塞を認め延髄外側症候群と診断さ
めた。
【考察】プッシング法と指圧法の併用は、意図的な声帯の
れた。初回評価にて、構音障害・嚥下障害・眼振・失調症
内転運動の誘発に加え、指圧法による外的な運動補助が加
状を認めた。発話明瞭度2.5/5・自然度3/5・嗄声度G
わることにより、目標となる運動が促通あるいは誘発された
2R1B2A0S0。最長発声持続時間(以下:MPT)6秒。構
のではないかと考えられた。近年、ディサースリア症例に対
音器官の運動低下は挺舌のみ左方偏位を認めた。喉頭内
し脳の可塑性に着目した訓練の試みが報告されている。脳
視鏡検査では、右声帯麻痺を認め声帯は外側位で固定され
血管障害・延髄外側梗塞に起因する延髄性声帯麻痺には、
ていた。
促通反復法等の脳の可塑性に着目した訓練方法の適応とな
【経過】声門閉鎖不全に対し、プッシング法を発症15日目よ
り週5回の頻度で2週間実施したが嗄声の改善は認められな
186
るのではないかと考えられた。
P1-1-03
聴覚的フィードバックを利用することで発話明瞭度向上につながった一症例
医療法人社団 朋和会 西広島リハビリテーション病院
【はじめに】構音障害患者に対し、聴覚的フィードバックを
在籍するST10名が行い、訓練前後の「北風と太陽」の音
利用した発話速度調整訓練を行った。訓練の結果、発話明
読場面を聞き、(1)発話明瞭度(2)発話自然度(3)構音の歪
瞭度および発話自然度の改善を認めたため報告する。
みについて評価した。それをもとに、本人の発話速度と構
音の歪みについて分析した。評価項目(1) 〜 (3)は、ウィル
の11日後にギランバレー症候群を発症し、58病日目に当院
コクソンの符号符順位和検定を用いて統計処理した。
入院。初回評価の結果、鼻咽腔閉鎖機能の低下、舌・右
【結果】発話明瞭度は3から1.5に、発話自然度は3から2と
口唇の運動範囲および速度の低下、筋力低下を認め、発話
なり有意な改善を認めた。構音の歪みも有意な改善がみら
明瞭度は3であった。
れ、特に\fishhookr\音における音の省略、歪みの回数が
【方法】(1)17の短文が印刷されたプリントをゆっくり読むよ
減少した。音読時間は、3モーラ/秒から2モーラ/秒となっ
う教示し、症例に音読してもらった。(2)症例が1文音読す
た。鼻咽腔閉鎖機能、舌の運動範囲や速度および筋力につ
いても改善を認めた。
【考察】聴覚的フィードバックにより、症例の口腔器官の運
生し歪んだ音を患者とSTで確認した。(4)その後、再び同じ
動機能に応じた速度を獲得することができ、それが明瞭度
文について(1)(2)(3)の手順を繰り返し、改善点について確
の改善につながったと考えた。一方、改善点を患者ととも
認した。なお、短文は2語文から開始し、音の歪みが2割以
に丁寧に確認していく作業が、発話速度に対する学習効果
下となった場合に文節数を増やした。効果判定は、当院に
となり、行動の変化をもたらしたと推察した。
訓練法の調整により心理的変化がみられた軽度構音障害の症例
平賀深愛、増井美保、鯨井ゆき
医療法人明徳会 十全記念病院 リハビリテーションセンター
【はじめに】軽度構音障害の障害受容の問題に関する報告
ポスター演題1日目
P1-1-04
口頭演題1日目
るごとに、言語聴覚士(以下 ST)が2モーラ/秒の速さで復唱
した。(1)(2)の過程を全て録音した。(3)音読後、音声を再
特別プログラム
【症例】70歳代男性。平成X年Y月Z日に脳梗塞を発症。そ
日 程
村上優香、今橋郁美、沖田啓子、井上英二、岡本隆嗣
の為、訓練法の選択が必要であった。言い直しの減少、発
話の自覚、自信を取り戻すことを目的に聴覚的フィードバッ
心理的変化に合わせて訓練法を調整したことで周囲との関
クを行った。訓練開始当初は、マイナスな発話が聞かれた
わりが増加し、言動に変化を認めた症例を経験したため報
が、発症から60病日頃より前向きな発言を認めるようになっ
告する。【症例】40歳代女性、脳梗塞により軽度の構音障
た。入院時に比べ表情は明るくなり他の患者との会話が増
害、上肢の右片麻痺が残存。36病日目リハビリ目的で当院
加。口腔機能は著変無いが発話速度は遅くなり言い直しは
入院。入院時、発話量は少なく必要最低限のみの会話であっ
減少した。【考察】白坂は『一般に障害受容のプロセスとし
た。【評価】発話明瞭度1。口腔機能はほぼ正常範囲内で
て提示されているモデルにそって、患者さん及びご家族が
どのレベルにいるかを把握することが大切である』と述べ
ている。障害の受容段階を考慮し、症例の心情に合わせた
プロソディーの異常を認めた。発話に対する不安や自信低
訓練法の調整やコミュニケーションを行う事で少しずつ表情
下から周囲とのコミュニケーションが減少していた。【経過】
の変化や発話量などに変化が見られるようになったと考えら
発話速度調整訓練を実施。タッピング法やモーラ指折り法
れる。真の受容までには時間がかかると思われるが、元の
に比べ、メトロノームを使用しての訓練が効果的であった。
職場へ復帰予定であるため就労にむけてのサポートも必要
しかし、この時期は怒り・恨み期にあり使用道具の受け入
と思われる。
れができず、メトロノームを使用しないことを希望した。そ
187
ポスター演題2日目
あったが、舌の運動速度が速くなるとリズムに乱れが生じ
た。特に文レベルでは言い直しが多く、発話が途切れる等
口頭演題2日目
は数少ない。今回、軽度の運動障害性構音障害に対して、
P1-2-01
日 程
顔面筋への振動刺激と麻痺のない顔画像を提示することで筋の正確性が
向上した顔面麻痺の症例
大村 悠 1)、伊藤明海(OT)2)、昆野純子1)、皆川昌子(OT)1)、只野弘斗(PT)1)、角井俊幸(OT)3)
NTT東日本東北病院リハビリテーション科1)、東北福祉大学健康科学部リハビリテーション学科2)、
旭川医科大学病院リハビリテーション部3)
特別プログラム
【はじめに】構音時の顔面筋の正確性の向上を目指し、筋
し相違を明確にさせた。3.閉眼にて発音しながら母音口型
の伸張、抵抗運動と構音練習を行ったが改善が乏しい重度
を行いそのまま開眼し非麻痺顔との比較をさせた。【結果】
の感覚障害を持つ左顔面麻痺の症例を経験した。 固有感
入院4か月後、安静時・運動時ともに顔面に改善を認めた。
覚入力と母音発声時の麻痺のない顔画像を提示しながらの
閉眼においても左右差はほぼ消失した。顔面の表在深部感
練習を行い、改善をみたので報告する。【症例】70歳代男
覚の変化はなかった。 柳原法36/36。 病的共同運動も抑
性。X年10月右視床出血発症、11月当院転院。「枕が触れ
制されていた。 入院5ヶ月目、自宅退院。【考察】中枢性
ている感覚がない」など表在深部感覚脱失、左顔面下部に
顔面麻痺の多くは感覚障害を呈している。また顔面筋は筋
下垂あり。柳原法20/36(鼻翼未実施)
。【経過】過誤再生、
や皮膚に起始停止があり筋紡錘はないため筋緊張の制御が
筋拘縮の抑制、鏡を使った治療を入院2か月間実施したが
難しい。そのため単なる視覚フィードバックや抵抗訓練での
口頭演題1日目
改善を認めなかった。母音口型時は左顔面筋の収縮が顕著
改善は不十分なことがある。Rosenkranzらは「固有感覚
に遅れ鏡を見ても修正が不十分であった。
【訓練】1.マッサー
に注意を向けた場合、運動学習は促進される」としている。
ジャーにて30秒間大頬骨筋と小頬骨筋の起始に振動刺激
症例に用いた振動刺激後の感覚の自覚、合成した顔との相
を与え、その後持続する感覚の程度や感触を口頭で答えさ
違確認、閉眼で運動イメージ等の惹起させられた運動感覚
せた。2.安静時及び母音口型時の顔面の非麻痺側を切り取
が顔面筋の運動を改善させたと考えられる。【倫理的配慮】
り反転させ左右対称な麻痺のない顔画像(非麻痺顔)と麻
本人と家族の同意を得ている。
ポスター演題1日目
痺側を反転させた麻痺顔を合成し鏡を用いた練習時に提示
P1-2-02
単音節と会話速度の連続発話における構音動態の差異について
ーエレクトロパラトグラフィによる解析ー
長谷川和子 1,2)、武井良子 1)、山田紘子 1)、森紀美江 1)、山下夕香里 1,3)
口頭演題2日目
昭和大学 歯科病院 口腔リハビリテーション科1)、
誠愛リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語療法課2)、
帝京平成大学 健康メディカル部 言語聴覚学科3)
ポスター演題2日目
【目的】ディサースリア患者において、単音節や単語では構
音が比較的明瞭でも、会話レベルになると明瞭度が低下す
ることを経験する。そこで、これらの構音動態の違いを明
らかにし適切な構音訓練に繋げることを目的に、エレクトロ
パラトグラフィ(以下、EPG)による舌運動の解析を行なっ
たので報告する。【方法】対象は、口腔に明らかな器質的
機能的異常を認めない健常成人5名とした。単音節及び1秒
間に8モーラの速度の文章発話をEPGで観察し、それぞれ
の舌と口蓋の接触様式を比較した。EPGデータはEPG録音
録画システムSTARSを用いて音声と同時に記録した。接触
様式はEPG分析ソフトArticulate Assistantを用いて、音
声波形を参照しながら分析した。【結果】単音節発話にお
いても会話レベルの速度の連続発話においても、口蓋中央
部にいずれの音でも接触しない非接触部分がみられたが、
後者では非接触部分が増大した。母音単音の/a//o/では、
舌のいずれの部分も口蓋に接触していなかったが、連続発
188
話ではほとんどすべての/a//o/において硬口蓋後方側部
に舌が接触していた。子音では従来の研究のとおり、後続
母音が/a/である口唇音では舌の口蓋への接触は見られず、
また同様の舌尖音では舌は硬口蓋と歯茎部の前方へ接触し
ていた。しかし連続発話では、これらの子音の生成時にも、
子音の構音と同時に硬口蓋後方側部への舌の持続的な接触
が観察された。【考察】連続発話では、舌正中部と側縁部
は分離して運動することが推測され、母音の音響特性は舌
前後方向の正中部で生成されることが示唆された。母音の
このような特徴は、連続発話の子音生成時に生じる調音結
合にも影響していた。そのため口唇と舌の運動の分離、舌
側縁部後方と前舌または舌尖の運動の分離など、各構音器
官のより細かい選択的な運動が必要なことが示唆された。
臨床ではこれらの要素を考慮した構音訓練が必要ではない
かと考えられた。
P1-2-03
廃用症候群が進んだパーキンソン病の一例
医療法人 恵光会 原病院1)、川崎医療福祉大学 医療技術学部 感覚矯正学科 言語聴覚専攻2)
【はじめに】パーキンソン病(以下PD)における機能低下の
トナーへスムーズに伝達できず、数回の言い直しが必要。
原因に廃用症候群の関与の指摘がある。更に運動時の適切
【臨床経過】機能障害:口唇・舌・下顎の運動範囲拡大訓練、
な大きさを認識・修正する能力の低下がある。今回、長期
口唇筋力訓練、構音訓練 活動制限:発話速度調節訓練 参
加制約:環境調整
た。
【結果】開口幅は37mmに拡大。口唇閉鎖可能となる。舌
【症例】69歳、男性 医学的診断名:PD(Yahr:∨) 言語病理
尖を下唇より前方に突出できる。発話明瞭度は2.5/5、発
学的診断名:運動低下性ディサースリア 現病歴:平成X年6
話の自然度は3/5に改善。発話の短い途切れの軽減がみら
月にPDの診断。誤嚥性肺炎後、敗血症性ショック等の精査
れ、日常会話においても聞き返しが減少した。表情も豊か
加療目的等でA病院入院。気管挿管施行され常時臥床。リ
ハビリ目的で平成X+1年2月に当院転院。気管切開後スピー
になり、家族との会話が楽しいという感想が聞かれた。
【考察】PDの初期から中期にはLSVTなどの機能訓練が有
効とされ、後期になると活動制限に対する訓練が中心とな
音声言語病理学的所見:機能障害:呼吸機能低下、発声機
る。しかし臨床現場ではPDの病期が進み、臥床状態から廃
能低下、口唇・舌の運動範囲制限(舌の突出:下顎前歯列ま
用に陥りやすい。機能低下の要因が廃用症候群由来のもの
で舌尖を突出できる)、開口幅の狭小(15mm)、口唇・舌
かPD由来の固縮によるものかを判別し、運動範囲の拡大を
の筋力低下(口唇の閉鎖:開放距離6mm) 活動制限:発話明
視野において廃用に対するアプローチを行うことの有効性
瞭度低下(3.5/5)、発話の自然度低下(4/5)、気息性嗄声
が示唆された。
(+) 参加制約: 簡単な日常会話でもコミュニケーションパー
松田 崇 1)、大森友明 2)、能登谷晶子 3)
あさひ総合病院 リハビリテーションセンター 1)、あさひ総合病院 脳神経外科2)、
金沢大学医薬保健研究域保健学系3)
サースリアを呈した症例を経験したので報告する。
題なし。構成‐絵の模写は問題ないが、積木構成で若干の
問題あり。
【症例】60歳代、男性、右利き。元会社員。中学校卒業。
【音声言語病理学的所見:発症〜 1週間】ST初診時、会話
【現病歴】自宅前の道路で倒れているところを通行人に発見
明瞭度は4で、湿性嗄声を認めた。標準ディサースリア検査
され、あさひ総合病院に救急搬送された。CTで左被殻出
‐呼吸機能:問題なし、発声機能:問題なし、鼻咽腔閉鎖機能:
血の診断をされ、保存的治療を受ける。 同日、PT・OT・
ST開始。
問題なし。口腔構音機能:口唇の引き、突出−右側不動
口頭演題2日目
【はじめに】左被殻出血後に全般的精神機能の低下、ディ
ポスター演題1日目
左被殻出血後に全般的精神機能の低下、ディサースリアを呈した一例
口頭演題1日目
チカニューレ使用。 神経心理学的所見:HDS‐R:26/30
P1-2-04
特別プログラム
臥床により口腔機能低下が顕著なPD例にアプローチを行っ
日 程
松野加奈 1)、仲野里香 1)、福永真哉 2)
【考察】左被殻出血後に全般的精神機能の低下、ディサー
スリアを呈した症例を報告した。村西ら(1998)は左被殻
なし。
病変により構音の障害を呈した3症例を報告しており、3症
【神経学的所見】JCS I-3 〜 II-10、右片麻痺、右半身感覚
例とも病初期には軽度の失語症状がみられたが、1ヵ月以降
障害
の慢性期には消失した。本症例は病初期から失語症状を認
【 神 経 心 理 学 的 所 見:発 症〜 1 ヵ月】 全 般 的 知 的 機 能‐
めなかった。伊林(1987)は出血量が小さく、被殻に限局
MMSE:17/30、RCPM:22/36。 注 意‐TMT:Part A‐
した出血であれば、失語症状を生じないか、呈しても軽度
52.5秒、Part B‐約4分で中止(2/3までは正しく施行)
。
な単純失語で一過性であると述べており、本症例も被殻に
記憶‐三宅式記銘力検査:有関係対語7‐5‐7、無関係対
限局していたため、失語症状を呈さなかったと考える。発
語0‐1‐0、Rey複雑図形:模写33/36、3分後再生7.5/36。
表では、訓練経過も合わせて報告する。
言語‐語列挙(2語/1分間)を除き、問題なし。行為‐問
189
ポスター演題2日目
【画像所見】CTにて左被殻に高吸収域を認めた。脳室穿破
P1-3-01
嚥下回診対象患者の退院時の栄養摂取状況について
日 程
伊藤太枝子 1)、石川古都美4)、赤荻幸子3)、井上宜充1)、原口小菜恵1)、内山唯史1)、三宅 哲2)
横須賀市立市民病院 リハビリテーション療法科1)、横須賀市立市民病院 歯科口腔外科2)、
横須賀市立市民病院 看護部3)、横須賀市立市民病院 栄養部4)
特別プログラム
【はじめに】当院には栄養委員会の下部組織としてNST、褥
栄養は51名、静脈栄養(TPN、PPN)は72名であった。また、
瘡対策チーム、嚥下チームがあり、それぞれ他職種からな
経腸栄養、静脈栄養患者の中で経口摂取を併用している患
るチームスタッフとともに回診を行い、チームアプローチを
者は39名であった。経口のみの群では、嚥下GrはGr6(濃
行っている。言語聴覚士は嚥下チーム、NSTに所属し、嚥
厚流動食併用)が116名、Gr7が102名、Gr8 〜 10は62
下回診対象者に対しては、退院時に管理栄養士、看護師
名であり、食事形態は嚥下食ピラミッドL3が128名、L4が
と協力し、神奈川NST・嚥下連絡票Ver.2(以下連絡票)を
116名、L5は36名であった。自宅退院患者では経口のみ
作成し、退院先へ情報提供をしている。 今回、連絡票の
が94名であり、経腸栄養は13名、静脈栄養は6名であった。
情報を集計したので報告する。【方法】対象は2013年4月
【考察】当院での嚥下回診対象患者は80代以上が73%を
口頭演題1日目
〜 2014年12月迄に退院し、連絡票を作成した全408名と
占めており、嚥下機能の改善が困難な症例が多いと思われ
した。 集計は、年齢、転帰先、退院時の栄養経路、食事
たが、経口摂取で当院を退院する患者が70%であり、お楽
形態(嚥下食ピラミッド)、藤島の嚥下障害グレード(以下嚥
しみレベルでの経口摂取も合わせると79%となった。しか
下Gr)などについて行った。【結果】対象者は男性213名、
し、嚥下Gr6の占める割合が多く、濃厚流動食を併用した
女性195名、年齢は70代が79名、80代が195名、90代
経口摂取量の少ない患者が多いことがわかった。このこと
99名と、80歳以上が73%を占めていた。転帰先は自宅が
より、退院時の指導では経口摂取の方法や嚥下訓練の指導
113名、施設214名、病院81名であった。 栄養経路は経
だけでなく、食事形態、濃厚流動食などの指導が重要であ
口のみが285名で70%を占めており、
経腸 (胃瘻、
経鼻経管)
ると思われた。
ポスター演題1日目
P1-3-02
急性期病院における“嚥下障害への配慮・内服に関するアンケート調査”
からの課題抽出と業務改善への取り組み
岡田三保 1)、小久保佳津恵 2)、戸田芙美 3)
口頭演題2日目
独立行政法人地域医療機能推進機構 中京病院 リハビリテーションセンター 1)、
同 摂食・嚥下障害看護認定看護師2)、同 リハビリテーション科3)
【目的】NST活動の一環として当院病棟における嚥下障害
事形態の選定については、家族に説明できる、または医師
への配慮・内服についての実状を把握し、その課題点に
に提案できる:37%、理解しているが説明できない:34%、
対して改善策を検討する。【方法】病棟看護師515名を対
理解不十分:27%であった。食事介助において負担を感じ
象とし、嚥下障害への配慮・内服に関するアンケートを用
る時間帯は、朝:33%、昼:1%、夕:19%、時間帯で差は
ポスター演題2日目
いて調査を行った。【結果】回収率90.3%で、有効回答
ない:28%、負担はない:16%であった。<3>内服につい
率88.5%(456名)であった。<1>口腔ケアについては、
て食後の内服数で多いと感じるのは、3〜4錠:9%、5〜6
99%が重要性を理解していた。45%が十分に実施できて
錠:58%、7〜8錠:28%、9〜10錠:2%であった。【考察】
いなかった。<2>嚥下障害への配慮については、嚥下障害
口腔ケアの実施不足・食事介助における時間についての課
がある、または疑わしい患者の最も安全な摂食時姿勢は30
題は、全病棟共通のものであることが分かった。誤嚥リス
度:30%、45度:29%、60度:20%、座位:19%であった。
クの理解や食事形態の選定については難しいため、NSTリ
トロミ剤の使用方法は、他者に使用法・注意点について説
ンクナース勉強会やST業務に反映する必要があることが分
明できる:37%、理解しているが説明できない:37%、不
かった。内服については多職種連携を必要とすることが分
安がある、または失敗したことがある:12%であった。食
かった。
190
P1-3-03
嚥下外泊チェックシートの作成及び家族指導の統一
医療法人 三九会 三九朗病院 リハビリテーション部1)、藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム 歯科2)
【はじめに】当院では摂食嚥下障害のある患者様に対し、各
記載項目に経験年数により、記載の有無の差を認めた。指
担当STが外泊前や退院前にご家族へ摂食嚥下状態につい
導資料も各担当で内容のばらつきを認めた。そこで一人一
人の患者様の状態に合わせ、かつ、ST間で指導内容のばら
指導を行っている。これまで指導方法は各STが独自に行い、
つきや漏れが無いような家族指導統一フォーマット及び外泊
統一はされていなかった。しかし退院後、原因疾患となる
チェックシートを作成した。作成後、実際に試用を開始した。
再発等なく1年以内に誤嚥性肺炎で再入院された例があ
ST間で指導を統一したことで、内容の漏れを防ぐことがで
り、その要因に対し予防的措置としてSTが対応できること
き、外泊チェックシートにより、不備があった点について再
はなかったのか、検討すべき必要性を感じた。そこでSTの
指導できるようになった。【考察】経験年数により、指導内
容に差が生じてしまっていた。ST間で統一したフォーマット
容フォーマットの作成、家族の理解度を図るため嚥下外泊
を用いることで 、経験による差の軽減と指導時の内容の漏
チェックシートを作成したので報告する。【方法】当院に在
れを防ぎ、また外泊時に家庭で取り組めなかったことや家
籍しているST13名に摂食嚥下障害患者の家族指導につい
族の認識の確認ができると思われる。さらにご本人、ご家
てアンケートを実施。1指導に必要な項目2実際に記載した
族が摂食嚥下障害に向き合い、安全に継続的に誤嚥に至ら
項目の2点を複数選択式にて集計。また各個人で指導した
ない食生活を送るためにも、今後は多職種で連携した指導
際に使用した資料を回収、分析した。【結果】1必要項目2
方法の体系化を図っていく必要があると考えられた。
チームアプローチによる摂食外来の試み
小野栄治、松田千壽子、松下慎司、佐々木敬、筒井美奈子、濱本彩佳
北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター リハビリテーション課
のベストの状態を引き出す雰囲気づくり)
、(3)保護者による
チームでコーディネートしていくことが重要とされる。当セ
介助、食事の様子を観察、(4)セラピストが介入し評価、(5)
評価・支援の要旨を摂食外来手帳に記載、(6)歯科医がま
で評価・支援する形態をとっており、職種間連携が課題と
とめを伝える。【考察及び課題】
1年間の患者数は、13名(延
なっていた。これらの反省から、1年の準備期間を経て平
べ38名)
。主訴は、摂食拒否、咀嚼練習の順だった。臨床
成25年12月よりチームによる摂食外来を新たにスタートさ
像では、興味・関心の持続、発達の周辺的な問題を呈する
せたので報告する。【対象・スタッフ・特長】診療日:月1回、
児が多く、導入時の遊びが有効であった。摂食外来手帳は、
第三水曜日。診療人数:4名。専従スタッフ:歯科医、ST、
活用の差があったが家庭での経過や関係機関での関わりを
OT、PT、保育士、看護師。協力スタッフ:小児科医、栄
知る手掛かりとなった。今後は、(1)頻度やフォロー体制の
養士。対象:摂食・嚥下機能や姿勢、自力摂取に課題を持
整備、(2)評価・支援プログラムの充実、(3)他機関との連
つ児。特長:(1)多職種による評価・支援、(2)子どもの体
携や日常的に浸透する支援の検討、(4)チーム、各専門職と
調や発達状況を見極めて関わる体制(保育士の配置)
、(3)
しての質を高めていくことが課題と考えられた。【おわりに】
保護者との共通理解、他機関との連携を形にする(摂食外
摂食外来では、各職種がお互いを尊重し、能力を最大限に
来手帳の作成)
。【評価・支援の流れ】(1)歯科医師の診察、
引き出すトータルな支援を行うとともに、子どものもつ発達
主訴・家庭での様子を確認、(2)保育士による遊び(子ども
の背景に着目してくことが重要と考えられた。
191
ポスター演題2日目
ンターの摂食外来では、従来、各専門職がそれぞれの場面
口頭演題2日目
【はじめに】摂食・嚥下の支援では、多職種が情報共有し、
ポスター演題1日目
P1-3-04
口頭演題1日目
指導方法の見直し及び、指導内容の統一を図るため指導内
特別プログラム
て説明し、誤嚥に至らないように食形態や食事方法などの
日 程
森裕香理 1)、長江美穂 1)、野邊里美 1)、越田智子 1)、宇野美恵子 1)、杉浦彩夏 1)、小池知治 1)、
藤井 航 2)
P1-4-01
嚥下失行を呈した進行性非流暢性失語(PNFA)の一例
日 程
渡邉弘人 1,2,3)、宮島里美 2)、藤山二郎 3)
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院 言語聴覚療法部門1)、
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院 言語聴覚療法部門2)、
医療法人タピック 沖縄リハビリテーションセンター病院 神経内科3)
特別プログラム
【はじめに】今回、咽頭期障害もあるが口腔期の過程にお
所見:当院入院時は表出面における言語評価は困難。書字
いてより重篤な症状を示し、嚥下失行と考えられる症例を
は自分の名前や仮名は一部可能。認知症は軽度〜中等度、
経験した。本例は進行性非流暢性失語(以下PNFA)を呈
遂行機能障害も明らかで、加えて性急性の亢進などペーシ
しており、長期の経過を経て徐々に嚥下失行が表面化して
ング障害も認められた。5. VF所見 藤島のグレード:Gr3、
きたと考えられた。本例の訓練経過、症状、VF所見、MRI
DSS:グレード3。咽頭期障害もあるが口腔期の過程におい
画像等の情報より嚥下失行の定義や責任病巣との整合性に
てより重篤な症状を示し、嚥下失行と考えられた。6. ST訓
ついての検討を行った。またPNFAとの関連性についての
練経過:間接訓練と直接訓練(一日一回の摂食)を実施し
考察も加えて報告する。【方法】症例に対して施行してきた
計84日の訓練にて一部経口摂取が可能となった。7.その後
口頭演題1日目
評価や治療経過をまとめて検討、分析を行った。【症例】1.患
の経過で強いパーキンソニズム、失行症状が見られるよう
者:70歳代、右利き、女性。2.入院までの経過 H21年:
になった。【考察】本例はPNFAの臨床経過を呈し、基礎疾
当院外来にてPNFA(疑)にてST開始となり、週1回のペー
患として大脳皮質基底核変性症(以下CBD)が疑われた。
スで外来STを実施。H24年:嚥下障害が進行し、
「高張性
また本例のPNFAは進行性前部弁蓋部症候群(FCMS)に
脱水・高Na血症」となり入院加療を受けた。この間の廃
分類可能と考えられた。本例の症状は口腔期嚥下失行の定
用症候群に対するリハビリ目的にて当院入院。3.頭部MRI
義と主要な部分で一致し、また口腔期嚥下失行とFCMSも
:H24年:前頭葉優位な脳萎縮(特に弁蓋部〜ブローカ野と
主要な責任病巣での共通する報告が認められた。
前頭前野後方〜頭頂葉)が認められた。4. 神経心理学的
ポスター演題1日目
P1-4-02
肺がんの既往と脳梗塞により嚥下障害を呈した一例
佐々木なつき、三木隆史、安本絢美、熊倉勇美
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
【はじめに】7年前に肺がんの既往があり、脳梗塞の発症に
施し、水分摂取時の息こらえ嚥下を指導した。PT/OT訓練
口頭演題2日目
て嚥下障害が生じた患者を経験した。【症例】60代、男性、
では、放射線治療を受けた右頸部〜鎖骨周辺のストレッチ、
X年脳梗塞発症。その7年前に右の肺がんを発症し、放射
可動域拡大訓練を実施した。入院70日目の最終VF検査で
線と内服による治療を受けたが、肺がん治療後は問題なく
は、とろみ付き水分は誤嚥なく摂取が可能となった。しか
食事が行えていた。X年、左脳梗塞後にリハ目的で当院入院。
しとろみが弱いものでは、1口量を調整しないと、嚥下中
【経過】入院時右手指のBST:IV、その他麻痺なし。構音
に誤嚥する状態は継続して認められた。本人の希望もあり、
障害(発話明瞭度・異常度1 〜 2)
、軽度の高次脳機能障
家族指導の後、入院80日で自宅退院となった。【考察】本
ポスター演題2日目
害を認めたが、日常生活は自立。復職と自宅退院を希望し
症例は、全身状態や口腔・構音機能に比し、嚥下障害が重
訓練を開始した。摂食嚥下機能面は藤島Gr8。水分でムセ
く出現したが、放射線治療による頸部の瘢痕・拘縮による
るとの訴えがあり、とろみをつけて摂取。入院12日目に1
可動域制限や、感覚低下に、今回の脳梗塞が加わり、嚥下
回目のVF検査を実施。弱いとろみの水分では、嚥下中の
機能の低下を来した可能性が考えられた。STによる集中的
誤嚥を認め、反射的なムセがみられないなど、全身状態に
な嚥下訓練や、PT/OTが直接的に瘢痕・拘縮にアプローチ
比し嚥下機能の低下を認めた。嚥下時は、左回旋時に喉頭
することで、嚥下機能の改善を図る事ができた。このよう
挙上量低下、努力性の嚥下が観察された。間接訓練はシャ
な患者のリハにおいては、評価・訓練実施にあたり、既往
キア法・シャキア変法(頸部左回旋で挙上)
、pushingを実
歴を検討し、チームで取り組む必要があると考えられた。
192
P1-4-03
精神疾患を伴う重傷熱傷患者の嚥下障害〜1症例を通して〜
独立行政法人 地域医療機能推進機構 中京病院
と咽頭残留が減少。X+71日VE実施時の体位にて本人の
院期間が長期に及ぶ。加えて精神疾患を伴う場合はコミュ
好きなコーヒー(とろみ付)で直接訓練開始。この頃より
ニケーションや意欲の面で難渋することがある。精神疾患
ST訓練時に時々笑顔が見られた。自発話は嗄声だが単語
を伴う重症熱傷患者の嚥下障害やコミュニケーションに対し
音読で有響声の表出あり、本人に積極的にフィードバックを
ST介入が奏功した症例を報告する。
行った。訓練時の変化や患者との会話から得られたエピソー
【症例】50歳男性
ドを家族・職員と共有し、日常の関わりや看護計画に反映
既往歴:統合失調症、脳出血(左麻痺)糖尿病、高血圧、
した。ST訓練時以外での自発話量増には至らなかったが
「痛
脂質異常症
い、痒い」等の生理的なものから「おいしかった」と述べ
現 病 歴:4月X日 寝 た ば こ に よ り 受 傷 し 他 院 入 院。
るなど発語内容の変化が見られた。X+95日昼のみ軟飯・
TBSA50%。X+15日当院転院
ソフト食(頚部左回旋、全介助)
。X+99日3食開始(頚部
正中、見守り自己摂取)
、経管栄養離脱、DSS6。嗄声に対
明で自発話乏しい。統合失調症の症状はリスペリドン経腸
し発声訓練継続。X+113日転院。
投与で安定しているが、意欲低下等陰性症状も考えられる
考察:重症熱傷患者は複数回の手術と長期の入院を余儀な
状態。嚥下機能はDSS1、吸痰が必要。経鼻経管栄養。耳
くされ、食べることやコミュニケーションの果たす意義は大
鼻科診察で左声帯の委縮有(麻痺なし)
。発声、排痰訓練
きい。更に精神疾患を伴う場合はリハビリの実施自体に難
開始。発語・表情など表出が乏しい為、状態の推測が必要。
渋する場合が多いが、専門的な評価・訓練と多職種連携に
X+68日VEにてG-up30度、右側臥位、頸部正中位で誤嚥
より患者のQOLに寄与する事ができたと考える。
在宅におけるクロイツフェルト・ヤコブ病への定期的摂食嚥下評価への
関わり
森田志保
一般社団法人 北海道総合在宅ケア事業団 苫小牧地域訪問看護ステーション
【まとめ】本症例は認知機能から進行し、言語、身体、嚥下
に在宅生活を送れるようにサポートしている。その中でST
と機能低下を示した。CDJの為、胃瘻造設が困難であり在
も在宅生活を継続するうえで必要な摂食・嚥下面で評価を
宅で経口摂取を続ける必要があった。在宅で経口摂取を続
依頼されることもある。今回、
クロイツフェルト・ヤコブ病
(以
けるためには、利用者様の嚥下機能がある程度保たれてい
下、CDJ)の定期的摂食嚥下評価を経験したので報告する。
ることは重要だが、それ以上に家族の病状理解と危機管理
【症例】92歳、男性、介護度:要介護5、日常生活自立度:
といったリスク管理。調理や介助といったマンパワーの問題
C2、認知症の状況:M、息子夫婦と同居。
口頭演題2日目
【はじめに】訪問看護ステーションでは利用者様が安心安全
ポスター演題1日目
P1-4-04
口頭演題1日目
経過:4回目の手術後(全7回)
、X+39日ST開始。嗄声著
特別プログラム
【はじめに】重傷熱傷患者は複数回の手術が必要であり入
日 程
萩野未沙
が大きいと思われる。
【今後】当ステーションでは、ガン・進行性疾患を持つ利用
診断される。平成25年3月より訪問看護を開始。訪問看護
者様を多く抱えている。進行性疾患は評価を中心にSTも月
開始時より食事時のムセを認めていた。5月頃よりΑDL全
1回程度訪問している利用者様もいる。その中で食事形態・
介助となる。 平成26年2月よりST定期評価訪問(月1回)
姿勢の検討、家族やヘルパーへの指導、コミュニケーショ
開始。ST初回訪問時より全身緊張高く、驚愕反射も強く見
ンの評価、主治医への情報提供を行っている。理由は様々
られる。発話はほとんど見られないが、食事の声掛けに対し、
であるが、病院等では経口摂取困難と思われる状況でも“食
開口するなどの反応は見られる。評価は、実際の食事場面
べる”事を続けている利用者様・ご家族に対しSTがどのよ
で行い、食事形態・姿勢、介助方法について家族に指導し、
うに関わり、最終的な見極めをどうするのかが今後の課題
主治医へ報告していた。
となる。
193
ポスター演題2日目
【経過】平成24年10月頃より急速に認知症状進行しCDJと
P1-5-01
日 程
嚥下機能改善術により経口摂取可能となったが、術後1年以上経過した後
再び経口摂取困難となり再入院した2例
里 千鶴 1)、高嶋絵里 1)、谷口薫平 1)、西本昌晃 1)、青竹康雄 2)、津田豪太 3)
福井県済生会病院 リハビリテーション部1)、福井県済生会病院 リハビリテーション科2)、
福井県済生会病院 耳鼻咽喉科 頸部外科3)
特別プログラム
【はじめに】当院では年に数例、嚥下機能改善手術を行い、
にて咽頭弁形成術、両側輪状咽頭筋切断術、甲状軟骨舌
術前後に嚥下訓練を行っている。今回、当院にて嚥下改善
骨固定術を施行。 嚥下調整食の摂取が可能となり、術後
術施行し3食経口摂取可能となり自宅退院したが、術後1年
61日目に自宅退院。退院後は近医でリハビリを継続したが、
以上経過し、再び経口摂取困難となり再入院した2例を経験
術後1年7 ヶ月目に経口摂取困難を訴え当院再入院。嚥下
したので報告する。【症例1】60代、男性。延髄左側の脳
運動はスムーズでなく、食道入口部の開大不良。嚥下訓練
梗塞。発症5 ヶ月後に当院にて両側輪状咽頭筋切断術、喉
ではタイミング調節やバルーン法、頸部突出法施行。食道
口頭演題1日目
頭挙上術、左披裂軟骨内転術、気管切開術施行。常食摂
入口部はやや弛緩したが、タイミング調節は不十分で、楽
取可能となり術後64日目に自宅退院。退院後は訪問リハビ
しみ程度の経口摂取レベルで自宅退院。【考察】術後経口
リや、当院の定期受診を継続したが、術後1年9 ヶ月目に
摂取可能であっても、長期経過に伴い経口摂取困難となる
肺炎発症し当院再入院。VFではThink swallowにて誤嚥
症例を経験した。その原因として、術後の瘢痕による通過
なく嚥下運動みられたが、吃逆や注意力と体力低下により、
不良や、体力および認知機能の低下により一旦獲得した嚥
嚥下のタイミングのずれあり喉頭侵入を認めた。栄養管理
下運動が不安定となる可能性が考えられた。当院では遠方
やリハビリにて体力向上を図り、安定した嚥下運動の再獲
から手術を希望される症例も多く、術後の経過に対する迅
ポスター演題1日目
得にむけ、Think swallowに加え、左横向き嚥下、息こら
速な対応や十分な情報共有が難しい。術後経口摂取可能で
え嚥下にて嚥下訓練施行中。【症例2】70代、男性。橋左
あっても、瘢痕予防や体力維持、認知機能の維持の重要性
側、両側基底核の脳梗塞にてPEG造設。発症2年後に当院
を十分に説明していく必要がある。
P1-5-02
輪状咽頭筋弛緩不全を呈した嚥下障害患者の経過
西 千秋、中村晴子、大谷内秀子、鐡 美香、佐藤さやか、川田菜美、宮田祐志
株式会社 日立製作所 多賀総合病院 リハビリテーション科
【はじめに】当院回復期病棟に入院し、輪状咽頭筋弛緩不
自立32日内]の3名は延髄外側梗塞。損傷部位は[延髄梗塞
口頭演題2日目
全を認めた嚥下障害患者11名を予後予測に役立てる目的で
群7名/小脳梗塞群3名]で、開始日は各平均[31.9日/61
調査した。【対象】平成19年〜26年にVFで輪状咽頭筋弛
日]で有意差があり(<0.05)
、3食自立日は各平均[48.6日
緩不全を顕著に認めたバルーン法非施行11例。平均年齢
/71日]で有意差は無かった。延髄梗塞群では、開始日が
66.2歳。延髄梗塞7名(外側5名背側2名)
、小脳梗塞3名、
20日未満の早い群(2名:11日、17日)と20日以上かかっ
小脳出血(開頭血腫除去術施行)1名。全例、当院入院後、
た群(5名:30日〜60日)に分かれた。退院時の食形態が
ポスター演題2日目
口腔運動・構音訓練・アイスマッサージ・シェキアex施行。
【方
[常食に改善した群6名/つぶし・刻みの群4名]では、開始
法】以下項目をカルテから後方視的に調査1訓練法2〈入院
日が各平均[41.2日/40.8日]、入院日からのシェキアex
時〉発話明瞭度、RSST 3
〈発症から〉経口摂取開始の日数
(以
の開始日では各平均[4日/9.75日]、3食自立日は各平均
下、開始日)
、3食経口摂取自立の日数(以下、3食自立日)
[44.8日/69.5日]だった。シェキアexを[自己練習で施行
4〈退院時〉退院時の経口摂取可否、食形態【結果】調
できた8名]と、[訓練時のみ2名]で調査項目間の差はなかっ
査内容を各群に分けて分析。退院時[経口不可は小脳出血1
た。【考察】今回の症例内では損傷部位は経口開始日の目
例]で発話明瞭度3、唾液処理能力は低く退院時も吸引要。
安になる可能性と、3食経口摂取自立の時期は退院後の食
[経口可10例]は梗塞で発話明瞭度1〜2、吸引不要。以下、
形態に影響する傾向が分かった。
摂食可の10例を分析。改善が早い[開始日が32日内で3食
194
P1-5-03
くも膜下出血発症1年半後に3食経口摂取を獲得した90代高齢者の一症例
医療法人平成博愛会 世田谷記念病院 リハビリテーション科1)、日本大学歯学部摂食機能療法学講座2)
ブを入れ替えたのち、右UESに食塊を誘導するために右半
知機能、経管栄養の使用期間などが影響を及ぼすという報
側臥位で嚥下を行うと、誤嚥なくゼリーやペースト状の食物
告がある。今回、運動機能および認知機能に重度の障害を
が摂取可能であった。翌日より昼食のみペースト食の経口
持った93歳の脳卒中後遺症患者が発症1年半後に3食経口
摂取開始。同年7月に一日2食の経口摂取となったが、同年
摂取を獲得したので報告する。
8月に尿路感染による熱発で意識レベルが低下し1週間の絶
【症例】93歳、男性。平成25年3月くも膜下出血を発症。
食となった。状態が回復した後のVE所見では経鼻チューブ
同年6月回復期リハビリテーション病院に転院。同年11月
に食物が付着し誤嚥を認めた。ただし、その他に目立った
当院医療療養病棟に入院。経鼻チューブ留置による経管栄
嚥下機能の低下はなかったことから、経鼻チューブを抜去し、
養。
3食経口摂取を開始することにした。当初は栄養や水分の
【経過】当院入院時より重度の誤嚥性肺炎を繰り返したため、
不足が懸念されたため末梢静脈栄養を併用していたが、同
年9月に経口のみで栄養量と水分を充足できるまでに回復し
練を開始した。 同年6月、嚥下内視鏡検査(VE)を実施
た。
したところ、安静時の唾液誤嚥を認め、リクライニング仰
【考察】発症から約1年以上経過した高齢の重度脳卒中後遺
臥位にてペースト食嚥下時に左の食道入口部(UES)の通
症患者でも、代償法を模索し直接訓練を主としたリハを継
過障害により左梨状窩に残留を多く認めた。右UESは経鼻
続したことで意識レベルや嚥下機能改善につながり3食経口
チューブが留置されており左より通過良好ながらもチューブ
摂取を獲得できたと思われた。
に食物が付着し誤嚥を認めた。そこで左UESに経鼻チュー
櫻井 晶 1)、山口 恵 1)、馬場恵里子 1)、渡辺ゆかり 2)、岩橋美紀 2)、我妻健二 1)
上越総合病院1)、亀田第一病院2)
2週間程度で段階3まで可能となった。【症例2】60歳代男
障害などにより病的反射として高齢者に観られることがあ
性、パーキンソン症候群に伴う認知症あり、誤嚥性肺炎に
る。このような症例に関しての実態調査や報告はあるが具
て入院。発話無いが開口の協力は得られた。食物の送り込
体的な介助方法やアプローチ方法についての報告は少な
み動作は無く、重力にて咽頭流入後に嚥下惹起され頻回に
い。今回、吸啜反射が再出現し経口摂取が困難になった症
ムセあり、摂食嚥下能力Gr2と判断した。 口腔ケア時にし
例に、反射を利用して経口摂取を促した2例について報告す
ばしば吸啜反射が認められ、SBの吸啜を実施した。ゼリー
の摂取は困難であったが第2段階のトロミ水の摂取は可能と
めた。第1段階:トロミ水を少量含ませ、吸啜反射後に唾液
なった。【まとめ】口腔原始反射が再出現した症例にとって
嚥下を促す。第2段階:SBに含ませるトロミ水の量を増して
経口摂取は非常に困難であり、栄養状態やQOLの低下につ
促す。第3段階:ゼリーを口腔内に入れ、トロミ水を含んだ
ながることは先行研究でも報告されている。さらに食事介
SBを吸啜させゼリーとトロミ水の嚥下を促す。【症例1】80
助や摂食機能療法を行う医療従事者にとっても、有効な手
歳代女性、誤嚥性肺炎にて入院。oral dyskinesiaが観ら
段がないだけでなく、窒息や誤嚥事故を引き起こす危険性
れ常に舌及び下顎の不随運動があり、口腔内に唾液が大量
も高い。 今回、SBの吸啜にて少量ではあるが経口摂取を
に貯留し嚥下困難、摂食嚥下能力Gr2と判断した。口腔内
実施することができた。今後さらに症例検討を重ね有効性
への刺激入力の際に吸啜する動作が観られ、SBの吸啜を実
および実用性を検討していきたい。
施した。吸啜動作にて閉口が促され、嚥下圧も強まり開始
195
ポスター演題2日目
る。【方法】スポンジブラシ(以下SB)を使用して段階的に進
口頭演題2日目
【はじめに】吸啜反射が前頭葉障害や両側大脳のびまん性
ポスター演題1日目
口腔原始反射の再出現に対して吸啜反射を利用して経口摂取を行った2例
の検討
口頭演題1日目
状態の安定した平成26年2月より間接訓練と少量の直接訓
P1-5-04
特別プログラム
【緒言】脳卒中後の嚥下障害の予後に年齢、運動機能、認
日 程
堺 琴美 1,2)、中山渕利 2)、四ヶ浦京子 1)、前田朝美 1)、酒向正春 1)、植田耕一郎 2)
P1-6-01
当院におけるタブレット端末iPad導入による効果の検証
日 程
兵頭直樹、河島邦宏、阿部倫子、遠藤明良
松山リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語療法科
【はじめに】昨今、医療機関においてもタブレット端末の活
リを購入し、訓練方法のカスタマイズが容易に行えるように
用実践を積極的に取り組む施設が多くなってきている。そ
なった。7.訓練結果のデータ比較が容易になったため、訓
特別プログラム
のような状況で、当科は平成26年4月にタブレット端末iPad
練効果も認識しやすくなった。【タブレットのメリット】1.ど
(以下タブレット)を臨床場面に導入した。今回はそのタブ
こでも持ち運べるサイズ。2.操作が簡単。3.起動が早く、
レット導入による臨床業務への活用法やその効果について
電源がなくても使用可能。4.従来のAACより民生品である
検証してみる。【タブレット導入後の変化】1.ベッドサイドで
ため安価。5.多くの使用方法がある。【タブレットのデメリッ
のリハビリが多くの教材を準備しなくともタブレット1台で可
ト】1.落下や水没により故障する可能性。2.個人情報が流
能になった。2.四肢麻痺や失書等ケースには音声を瞬時に
出する可能性。3.ウイルスの侵入リスク。【今後の活用法に
文字に変換が可能になったため、家族への手紙やメールの
ついて】●FaceTimeを使用し、家族とのやりとり訓練や
口頭演題1日目
作成が可能になった。3.重度構音障害や気管切開等のケー
食事の介助方法等をリアルタイムで行いたい。●アプリケー
スにおいては、声の代わりにトーキングエイドのアプリを利
ションを使用した高次脳機能障害者の自立支援や外出訓練
用することで会話が可能になった。 4.視覚障害のあるケー
を実施。●訪問リハや老健施設においてタブレットだけで簡
スには、フォントサイズの変更等が容易に行えるようになっ
易的評価や訓練ができるようにしたい。医師の判断が必要
た。5.パソコン等と比較すると操作に関するハードルは低く
な時に、リアルタイムでやり取りをして迅速な対応ができる
なった。6.Wi-fiによりインターネット上から利用したいアプ
ような環境を整えたい。
ポスター演題1日目
P1-6-02
言語聴覚療法におけるモバイル端末・アプリケーションの利用実態 第1
報〜使用上のメリット、デメリット、未使用の理由からの考察〜
阿志賀大和 1)、笹岡 岳 2)、小島 香 3)
口頭演題2日目
明倫短期大学 保健言語聴覚学専攻1)、大西脳神経外科病院 言語療法室2)、
国立長寿医療研究センター 機能回復診療部3)
【はじめに】言語聴覚療法におけるモバイル端末(端末)
・
管理、アプリの種類や使用法に関するものが多かった。 ま
アプリケーション(アプリ)の使用状況についてアンケート
た、端末やアプリ未使用の理由で最も多かったものは「端
調査を行い、使用上のメリット・デメリットおよび未使用の
末がない」で、次いで「知識がない」であった。【考察】
理由を通して端末・アプリ使用の課題について考察した。
【方
端末やアプリでは従来とは異なる方法でフィードバックや情
法・対象】アンケート実施期間:2014年11月20日〜 12
報提示を行えることから、これまで反応の得られにくかった
ポスター演題2日目
月15日。対象:本研究の主旨に同意が得られた現職STに、
患者からも反応を引き出しやすくなったと考えられる。その
メールまたは郵送にてアンケートを配布し回収した。【結果】
ため、対象患者に合ったアプリを用い、使用法を工夫する
247名(男103名、女142名、未記入2名、平均経験年数:
ことでST領域においても有用な訓練道具となりうるだろう。
9.0年)より回答が得られた。業務で端末・アプリを使用し
また、携帯性に優れ、かつ多機能である端末を使用し即座
ている者は79名、未使用の者は168名であった。使用のメ
に情報の入力・更新を行い、それを共有できるようになれ
リット は携帯性や多機能性に関する回答が最も多く、
「音や
ば切れ目のない医療をすすめるうえで利点になると考えられ
動きがあり、注意を引きやすい」などの訓練機器としての
る。ただし、使用にあたっては目新しさだけでなく、STが
メリットに関する回答が続いた。一方、デメリットは「使い
端末やアプリに関する知識を身につける必要があり、セキュ
なれない人も多い」といった適応に関するものが最も多かっ
リティおよび個人情報などの情報管理についても解決すべ
た。使用上の課題は適応に関するもの、通信状態や端末の
き課題があるといえるだろう。
196
P1-6-03
笹岡 岳 1)、阿志賀大和 2)、小島 香 3)
元大西脳神経外科病院 言語療法室1)、明倫短期大学 保健言語聴覚学専攻2)、
国立長寿医療研究センター 機能回復診療部3)
【はじめに】今回、言語聴覚療法におけるアプリケーション(ア
若い方に親しまれやすい、失語症重症例でも理解されやす
い等であった。デメリットは、高齢者は使用方法の理解が難
対象領域別の使用アプリ、使用時の課題について考察した。
しい、タッチ画面が小さく反応し難い、導入が難しい等であっ
【 方法 】アンケート実施期間:2014年11月20日〜 12月
た。今後の希望アプリは、嚥下説明動画、失語症訓練教材、
15日。対象:本研究の主旨に同意が得られた現職STの内、
音響分析、自分史の作成など多岐にわたった。ST同士で情
使用していると回答した者。【結果】業務にモバイル端末(端
報共有できるアプリという回答もみられた。【考察】使用状
末)を使用している者は79名(平均経験年数:9.1年)であっ
況として、使用率の高いアプリは無料ダウンロードのものが
多く、汎用性の高いアプリを中心として個々のSTが模索し
用負担:個人51%であった。平均使用アプリ数は3.4種類、
ながら使用している状況が伺えた。電子カルテの普及やPC
89%が継続的な使用を希望していた。対象領域別は、言語
を使用した高次脳機能検査も増えつつあり、ITの発展とと
発達17種、失語・高次脳60種、聴覚7種、発声・発語39種、
もに更に端末やアプリの臨床での活用機会が増加すると思
摂食嚥下10種、AAC13種、一般業務27種、その他15種、
われる。今後の継続的な使用希望は89%と高く、第1報で
延べ188種であった。You Tube、カメラ、google map
報告した情報管理の問題に留意しつつ、個人の費用負担軽
等が複数領域で用いられていた。メリットは、撮影動画で
減や対象領域別の専門性の高いアプリの開発、使用状況の
フィードバックを行うと問題点に患者自身が気付きやすい、
情報共有が課題だと考えられた。
小島 香 1)、阿志賀大和 2)、笹岡 岳 3)
その有用性がうかがわれた。また、在宅医療の充実を目指
すうえでは、病院と在宅・施設の連携に加え、在宅に関わ
るスタッフ間の連携が重要といえる。現状では病院から在
宅・施設への情報提供書がない、または不十分なことも少
なくない。医療機関内での電子カルテが普及してきたよう
に、医療・介護の連携のためには、ICTを活用した地域医
療連携ネットワークシステムの充実が望まれる。そのため各
職種が端末を活用していくことは不可欠だと考えられる。第
1報で見られた端末に対する「知識がない」といった意見も、
システムの充実やアプリの開発に伴い、端末の使用環境を
整えることで解消される可能性もある。第2報で報告した専
門性の高いアプリの開発に伴い、アプリを使用した訓練が
可能となれば、STにとっては負担軽減や作業の効率化が図
られ、在宅・施設でも共通の訓練を継続できるようになる
と考えられる。
197
ポスター演題2日目
【はじめに】今回、言語聴覚療法におけるモバイル端末(端
末)
・アプリケーション(アプリ)の使用状況についてアンケー
ト調査を行い、在宅医療・介護保険施設における端末・ア
プリ使用の有効性および今後の課題について考察した。
【方
法・対象】アンケート実施期間:2014年11月20日〜 12
月15日。対象:本研究の主旨に同意が得られた現職STに、
メールまたは郵送にてアンケートを配布し回収した。【結果】
247名より回答が得られ、うち訪問リハビリ・通所施設・入
所施設(訪問・施設)に所属している者は50名であった。
端末を使用している者79名のうち訪問・施設所属は24名で
あった。施設・訪問所属の端末使用者の21名が今後も端末・
アプリの使用継続を希望していた。【考察】第1報・第2報
で報告した通り、現状では端末の使用割合は高いとは言え
ず、端末も個人所有であることが多く、費用面や情報管理
面など解決すべき課題もある。しかし、既に端末をしてい
る者の多くが、今後も継続して使用することを希望しており、
口頭演題2日目
国立長寿医療研究センター 機能回復診療部1)、明倫短期大学2)、大西脳神経外科病院 言語療法室3)
ポスター演題1日目
言語聴覚療法におけるモバイル端末・アプリケーションの利用実態 第3
報〜在宅医療・介護保険分野におけるモバイル端末・アプリケーションの
使用の模索〜
口頭演題1日目
た。使用端末:iPad46%、端末所有:個人60%、アプリ費
特別プログラム
プリ)の使用状況についてアンケート調査を行い、使用端末、
P1-6-04
日 程
言語聴覚療法におけるモバイル端末・アプリケーションの利用実態 第2
報 〜アプリケーション使用者の回答の分析〜
P1-7-01
日 程
食事介助の「不安」と「分からない」をなくすには
〜勉強会アンケートから見えてきたもの
桝田和子、宮澤千春、渡邊絢子、久末朋子、中島雄大
野村病院 リハビリテーション科
特別プログラム
【はじめに】2014年2月より、当院リハビリテーション科
セラピストの平均経験年数は3.9年であった。食事介助にお
PT・OT部門において、回復期病棟での早出・遅出業務が
ける不安は、経過と共に軽減したが、自信は減退した。食
開始された。業務の中で、患者への食事介助が難しいとい
事介助の知識は、勉強会後に概ね正答率が上がった。しかし、
う声が多く上がったため、ST部門で勉強会を企画・実施し
正答率が減少した項目も存在した。今後の勉強会は、95%
た。勉強会前後でアンケートを実施し、他部門における「食
のスタッフが継続的な開催を希望した。【考察】アンケート
事」についての認識や知識を調査した。その結果と考察を
結果から、知識の習得や経験によって不安は軽減されるが、
報告させて頂く。【対象と方法】勉強会実施前(2014年7
食事介助に自信を持って取り組むには時間がかかることが
口頭演題1日目
月)及び実施後(同年9月)に、リハビリテーション科PT・
示唆された。また、一度の勉強会では技術の習熟は難しい
OT24名にアンケートを配布、書面を回収した。内容は属性、
ことも分かった。今後も、計画的な勉強会を実施し、スタッ
食事介助に対する自覚、食事介助の知識、そして今後の勉
フの技術向上に努めたいと考える。
強会についてである。【結果】アンケート回収率は91%、
ポスター演題1日目
P1-7-02
嚥下障害者の経口摂取に向けた当院の取り組み
−直接嚥下訓練開始基準と指示書の作成・導入について−
及川 翔、猪瀬丈晴、石松佳奈
一般社団法人 巨樹の会 赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
口頭演題2日目
【はじめに】当院では、経験の浅い言語聴覚士(以下ST)
接嚥下訓練移行平均日数は平成25年度37日間、平成26年
が直接嚥下訓練の開始時期を検討するに当たり、自身の評
度33日間だった。直接嚥下訓練移行率は平成25年63%、
価基準が明確にないまま訓練を行っている場合が少なから
平成26年度68%だった。3食経口摂取移行率は平成25年
ずある。そのため、評価・訓練の流れを明確化し、基準を
度40%、平成26年度54%だった。アンケートについては、
設けることで、経験に関係なく適切な時期にスムーズな嚥
肯定的・否定的両方の意見が寄せられた。【まとめと考察】
ポスター演題2日目
下訓練を提供できると考え、
「直接嚥下訓練開始指示書(以
今回の結果から、この取り組みによる統計上の有意差は認
下指示書)
」と、訓練の流れを示したフローチャートを作成
められなかったが、平成25年度と26年度を比較すると、各
し、平成26年12月より導入した。今回、この取り組みにつ
データ間では若干の向上が見られた。これは、ST部門全体
いて検討したので報告する。【検討方法】指示書導入前後
の業務の効率化が図れてきていること、医師を始めとした
の平成25年4月〜7月、26年4月〜7月にて、入院時に経管
各職種との連携が強化など、数字に出せなかった部分の改
栄養だった患者様の直接嚥下訓練移行平均日数、直接嚥下
善があったと考える。今後、さらにデータを蓄積し、この取
訓練や3食経口摂取への移行の有無について後方視的調査
り組みについて検討を重ねていく。また、指示書の運用方
を施行し、統計学的検定(t検定・z検定)を用いて比較し
法について、基準点を定期的に分析、見直すことで有用性
た。また、STの各職員に現状についてアンケート調査を行
を高めていきたい。また、アンケート結果を参考にし、ST
い、指示書の運用方法について意見を求めた。【結果】直
の業務改善に向け、検討を重ねていく。
198
P1-7-03
川田菜美、中村晴子、大谷内秀子、鐡 美香、佐藤さやか、西 千秋、宮田祐志
株式会社 日立製作所 多賀総合病院 リハビリテーション科
【はじめに】他罰的発言が多い、重度ディサースリアと嚥下
用方法、食形態について妻に説明。 退院時、老健へ情報
提供。退所後在宅へ。退院後1年7か月後にケアマネジャー
問題が生じ再度STが訪問で関わる機会を得た。在宅の現状
より「嚥下と発音の悪化」でSTへ訪問依頼。訪問時、機能
から、回復期入院中のSTのアプローチの問題点を考察した。
的な低下は無し。PB使用せず、発話スピードのコントロー
【症例】70歳代男性、脳幹梗塞、重度ディサースリア、嚥
ルせず話し通じず妻に怒鳴る、通所先はST不在で発話相手
下障害(藤島GrⅢ−7)
、注意障害、MMSE22点、妻と不
もいない。退院時指導した食形態(軟飯、軟菜、水分トロ
仲。入院時発話明瞭度5、文字盤とうなづき、
「話を聞いて」
ミ付)は、本人希望で自宅、通所でも常食、水分トロミ無
と訴え不安や他罰的発言が多い。【経過】入院8日目(発症
を摂取し誤嚥性肺炎も発症した既往あり。【考察】当市は
人口19万に対しST19人のみである為、STが在宅に関われ
発話明瞭度(以下、明瞭度)3.5となりST中の発話量増加、
る場が少ない。在宅で問題が発生した要因は、入院中の家
使用無しでも明瞭度4に改善。入院49日目、携帯用にカー
族指導や次施設の申し送りが現状の指導と対策に留まった
ド型PB導入。発話に自信をつけ「聴きとれないのは相手が
点にもある。家庭環境、性格の特徴、年齢も踏まえ、今後
悪い」とPBを使用せずに話し通じずに怒る。退院時、自己
起こりうる問題を予測し介護サービスに提案していく事や、
の発話の明瞭度への意識付けが低下しPB使用無しで明瞭度
本人を取り巻く人が情報共有できる方法を検討する事も回
4.5に低下。入院中、適宜、現状の発話の工夫とPBの使
復期STの業務と考えた。
浜田広幸 1)、永井健太 1)、辰巳 寛 2)、山本正彦 2)
社会医療法人栄公会 佐野記念病院 リハビリテーション科1)、愛知学院大学 心身科学部2)
Whitney U検定を用いた(有意水準5%未満)
。【結果】
「自
行能力、ADL自立度、支援家族の状況などに加え、言語症
宅群」27名、
「転院群」8名であった。 両群間において同
状の様態も重要である。今回、回復期病棟を有する当院の
居家族数(自宅群2.2±1.5/転院群0.9±1.3)のみに有意
失語症者の転帰と言語症状の特徴について検討を行ったの
差を認め、それ以外の項目では有意差を認めなかった。入
で報告する。【方法】対象は2009年4月〜 2014年3月に
退院時のSLTA比較では、
「自宅群」の総合評価(入院/退
当院回復期病棟にて言語治療を受けた失語症者(105名)
院時:2.4/4.9)と、下位項目の「聴覚的理解」や「読解」
「
、呼
のうち、複数回の標準失語症検査(SLTA)が行われてい
称」
「音読」で有意な改善を示した。一方、
「転院群」の総
る35名( 男 性17名、 女 性18名、 平 均 年 齢:63.3±13.7
口頭演題2日目
【はじめに】失語症者の在宅復帰要因として、運動障害や歩
ポスター演題1日目
回復期病棟における失語症者の転帰と言語症状の特徴について
口頭演題1日目
57日目)、ペーシングボード(以下、PB)導入、使用時は
特別プログラム
障害を合併した1例が回復期病棟から老健経由後、在宅で
P1-7-04
日 程
重度ディサースリア1例の在宅生活から考えたこと
〜回復期リハビリテーション病棟STの役割について〜
合評価(2.1/3.6)及び下位項目には有意差を認めなかった。
【考察】本研究の結果より、入院時SLTA総合評価において
血3名、脳挫傷2名、病変部位は左MCA領域(14名)
、左
「自宅群」と「転院群」で差がなく、入院時の失語症の重
基底核(10名)などであった。対象を自宅復帰できた「自
症度から転帰を予測することは困難であった。自宅復帰で
宅群」と、施設等への入所となった「転院群」に分け、基
きた失語症者は、入院期間中における失語症の回復が良好
本属性(年齢、入院日数、同居家族数)
、運動機能(退院
であり、特に言語理解能力の向上や、呼称・音読など言語
時麻痺レベル、FIM運動項目)
、入退院時のSLTA総合評価
表出系の改善が顕著であったことに加え、同居する家族の
尺度の比較を行った。また、入退院時のSLTA総合評価と
存在が、自宅復帰に重要な要因であると考えられた。
下位項目の成績差について検討した。統計解析にはMann-
199
ポスター演題2日目
歳)
。 原因疾患は脳梗塞17名、脳出血13名、くも膜下出
P1-8-01
長期的に半側空間無視が改善し車椅子駆動が実用的になった一例
日 程
山本 総 1)、平野絵美 1)、森田秋子 2)
医療法人社団 友志会 リハビリテーション花の舎病院 リハビリテーション部1)、
医療法人 珪山会 鵜飼リハビリテーション病院2)
【はじめに】重度の半側空間無視(以下USN)を呈し、車
CBA18点。机上でUSN所見は軽減したが残存。車椅子駆
椅子駆動が困難であった患者が発症12か月にて実用的駆
動は近距離であれば周囲にぶつかりながら試行錯誤を繰り
特別プログラム
動が可能になったため、その経過を踏まえ報告する。【症例】
返し、目的地へ到達できる事が増加したが、離れた場所は
80歳女性右利き。右ACA、MCA脳梗塞。重度左片麻痺。
目的地を見失う事や通り過ぎてしまう事があり実用性は低
発症1か月後に当院回復期病棟に入院、退院まで5か月間リ
かった。発症12か月(通所利用時)
:BI40点、MMSE-J27
ハ実施。【経過】入院時:BI30点、MMSE-J24点、BIT61
点、BIT129点、CBA20点。机上検査結果に著変はないが、
点、認知関連行動アセスメント(以下CBA)12点。日中の
USNに対する病識が向上。 車椅子駆動時、慣れた環境に
口頭演題1日目
覚醒が低下し、易疲労性と傾眠を認めたが、日常会話の応
おいては周囲へぶつかる事なく、目的地まで到達できるよ
答は可能。USNは検査、行動にて重度障害を認め、ADL
うになり、実用的な車椅子駆動が可能となった。【考察】高
重度低下、車椅子駆動は困難であった。入院3か月:BI40点、
齢の左USN患者の長期経過を追った。ADLの回復は制限
MMSE-J29点、BIT114点、CBA15点。 日中の覚醒は向
があったが、車椅子駆動が可能になった。入院時は障害物
上し表情変化も増加。USNは中等度に残存し、病識に乏し
の回避、目的地の把握に障害を認め、長期的に机上検査で
く深刻性に欠けた。ADLに著変はなく、車椅子駆動は障害
は変化はなかったが、生活場面で車椅子の実用的駆動が可
物のない直線で短距離の自走が可能となるが、曲がり角や
能になった。USNへのアプローチにおいて環境調整、日常
障害物のある環境で左側の衝突がみられ介助を要した。入
生活での応用、繰り返し実施する事の重要性を示した事例
院5か月(退院時)
:BI55点、MMSE-J29点、BIT130点、
であると考えられた。
ポスター演題1日目
P1-8-02
見当識・記憶障害への代償手段の獲得により在宅復帰が可能となった
維持期クモ膜下出血患者の一例
大六鉄兵 1)、川阪尚子 1)、福岡達之 2)、杉田由美 1)、内山侑紀 3)、福田能啓 4)、道免和久 5)
口頭演題2日目
兵庫医科大学ささやま医療センター リハビリテーション室1)、兵庫医科大学病院 リハビリテーション部2)、
兵庫医科大学ささやま医療センター 地域総合医療学 リハビリテーション科3)、
兵庫医科大学 地域総合医療学4)、兵庫医科大学 リハビリテーション医学教室5)
ポスター演題2日目
地図、写真、屋外風景の確認等、視覚的手がかりを用いた
【緒言】発症後半年を経たクモ膜下出血術後の症例に、入
環境調整を行い、見当識の強化に取り組んだ。また、看護
院早期より見当識障害に対する環境調整、誤りなし学習に
師と連携し、病棟と訓練室で同一材料を用いて日付・場所
よる記憶訓練、代償手段の導入を行った。その結果、混乱
の確認を行った。徐々に混乱は軽減し訓練量増加へ繋がっ
が軽減し、記憶障害の改善と代償手段の定着により在宅復
た。見当識・記憶の代償手段獲得に向けたアプローチ全般
帰が可能となった症例を経験したので報告する。
に誤りなし学習を前提とし、書取・確認・再生課題、写真
【症例】60代男性、X年11月、クモ膜下出血を発症し同日
を手がかりとしたエピソード再生等を行った。結果、見当識
コイル塞栓術施行。発症40日後、水頭症に対しLPシャント
の改善、メモリーノートの導入に至り、数日前のエピソード
術施行。回復期病院でのリハビリを経て、発症260日後当
再生も一部可能となった。最終評価にて、MMSE:27/30、
院転院。
RCPM:30/36、TMT:A 150秒 B 277秒、順唱:7 逆唱:4、
【初期評価】意識レベルはJCSI 〜 IIで傾眠や発動性低下が
RBMT:SPS 18 SS 7と改善を認め、自宅退院となった。
みられた。言語機能保持も、当惑作話を認め帰宅願望のた
め不穏状態であった。 見当識障害、前向性健忘が著明で 【考察】本症例では、見当識障害に対する早期の環境調整
が混乱と不安を軽減し、訓練意欲向上に繋がったと考える。
あり、エピソードの保持が困難であった。MMSE:18/30、
また視覚的手がかりや誤りなし学習を前提とした記憶障害
RCPM:セットAで中止、TMT:A 321秒 B 不可、順唱:4 逆
へのアプローチが、訓練場面及び病棟生活での代償手段の
唱:3、RBMT:SPS 8 SS 1。
獲得に有効であったと考える。
【経過】当初、見当識障害による混乱が障壁となり、訓練
への集中力を欠いていた。 そこで、早期よりカレンダー、
200
P1-8-03
山本亜由美、関真奈美
一般社団法人 巨樹の会 明生リハビリテーション病院 リハビリテーション科
鈴木瑞穂、冨山陽介、佐々木類、菅野俊一郎、佐藤亮太、信太由宇子、川村瑞穂、根来亜希、
木村きこ、加藤未咲
公益財団法人 宮城厚生協会 坂総合病院 リハビリテーション科
201
ポスター演題2日目
転再開。
【症例】
A:47歳 男 性。 診 断 名:左 被 殻 出 血 神 経 心 理 学 的 所
見: 軽 度 感 覚 性 失 語 症ADL:屋 外は注 意 の 影 響 あり付 添
い 必 要 神 経 心 理 検 査:MMSE20点、TMT-A101秒、
KOHS:IQ88.0 SLTA(ま ん が の 説 明):5 B: 62歳 男
性。 診断名:左心原性脳塞栓症 神経心理学的所見: 軽度
感 覚 性 失 語 症ADL:自 立 神 経 心 理 検 査:MMSE25点、
TMT-A143秒、KOHS:IQ82.3 SLTA(まんがの説明):4
【結果】
左半球損傷者で実車評価を行い運転再開した9名のうち、
条件なし2名、一部条件付き7名、再評価1名。症例A:机上
での全般性注意機能低下は軽度残存あり。実車評価では軽
度失語症残存だが教官の指示理解は概ね良好。机上評価
では見られなかった右無視症状が見られた、症例B: 机上評
価では全般性注意機能に若干の低下あり。実車評価では教
官の指示を理解し表出するタイミングの問題、対向車とす
れ違う際の減速不十分。どちらも再開時条件1、2、3を付
け再開。
【考察】当日は2症例を提示し当院で検討した条件付けにつ
いて若干の考察を加えて発表する。
口頭演題2日目
【はじめに】
失語症状を呈した人の運転再開では明確な条件付けがな
く、当院でも再開の判断に迷っている現状がある。その中
で失語症を含む左半球損傷者の運転再開では1個以上の条
件付き再開が多かった。今回軽度失語症状を呈した2症例
を提示し当院での再開条件について検討したので若干の考
察を加えて報告する。
【対象】
H25年4月〜 H26年11月に当院入院/外来訓練中に運転再
開を希望した左半球損傷者10名、平均年齢56.9歳。
【評価方法】
1.運転オリエンテーション
2.身体機能評価、神経心理検査
3. OD式安全性テスト
4.実車評価
1、2実施後運転前カンファを実施。その後3、4の評価実施。
全ての評価終了後に運転カンファを実施。評価結果を踏ま
えて主治医が運転再開の可否を判断。
【再開時条件付け】
1. 同乗者が必要2.30分程度の短時間から再開3. 見通しの
良い道から再開。この中で1つまたは条件の組合わせで運
ポスター演題1日目
失語症者を含む左半球損傷者の運転傾向〜再開条件の検討〜
口頭演題1日目
P1-8-04
【経過・結果】介入当初、発話は単音レベル(母音以外)から
歪み、単語レベルでは音の置換が見られた。自身の発話に
対しての焦りや不安強く、自己修正繰り返すもストレス強く
コミュニケーションを諦めてしまう場面も多い状況であった。
単語レベルの表出が可能となると50音表の使用頻度が減少
し、言語訓練時は発話のみでのコミュニケーションが可能と
なった。また、音読にて発話開始時のストレスが減少し、2
文節文の表出が可能となったが、発話速度の低下と平坦な
発話が残存した。退院時においても発話速度の低下、イン
トネーションの平坦化がみられたが、2文節文までであれば
自身で発話速度の調節、イントネーションの調節が可能と
なった。3文節以上では発話速度・イントネーションの調節
が困難であった。本人・家族より希望があり、訪問リハビリ
にてリハビリ継続となった。
【まとめ】発語失行に対して言語リハビリテーションを行い、
発話のみでのコミュニケーションが可能となった。
特別プログラム
【はじめに】中大脳動脈領域(左中心前回-後回)脳梗塞後に
発語失行が残存した症例に対し、リハビリテーションを実施
したので報告する。
【症例】70歳、男性、右利き。右片麻痺、全失語にて発症し、
その後発語失行が残存した。聴覚的理解は良好で、発話量
は少ない。発語失行強く、構音の歪み著しい。コミュニケー
ションは家族の用意した50音表ポインティング、書字、ジェ
スチャーの併用で行っている。
【評価】認知面に問題はなく、病識は保たれている。SLTA
聴く項目・読む項目は良好。話す項目で成績低下あり。書
く項目では非利き手での書字となり字形の乱れと鏡文字の
出現あり。トークンテスト166/166。
【訓練】単音、単語、挨拶語、短文の音読にて段階的な視
覚的フィードバックを行い、プロソディー面へのアプローチ
としてボイスレコーダーにて聴覚的フィードバックを行った。
また、日常会話の機会増加のため環境調整と家族指導を
行った。
日 程
発語失行が残存したが、家族間で発話によるコミュニケーションが
可能になった症例
P1-9-01
日 程
高齢者介護施設におけるアソブロック®の臨床使用経験
−要介護高齢者の反応とコメディカルスタッフの主観的評価−
森 玲子 1)、辰巳 寛 2)、甘利秋月 3)
医療法人 尾張健友会 千秋病院 リハビリテーション科1)、愛知学院大学 心身科学部2)、
フェニックス総合クリニック3)
特別プログラム
【はじめに】我々は、遂行機能障害の評価及び訓練教材とし
対象者にとって見にくい色があるとの指摘もあった。ブロッ
て、アソブロック®の臨床的有用性に関する症例報告を行っ
ク使用時の要介護者の反応は、表情変化が多彩となり、笑
た(第15回日本言語聴覚学会)
。今回は、高齢者介護施設
顔や自発話量が普段より比して増加し、周囲への関心も高
での要介護者とコメディカルスタッフの使用経験に関するア
まり、自分たちの作品を話題に談話が弾んだとの報告があっ
ンケート調査結果について報告する。【方法】対象は施設
た。中には、5日以上毎日続けて使用したケースや、ブロッ
利用中の要介護者28名(男性/女性:17/11、健常高齢者
ク使用時間は2時間以上集中して取り組んだケースもあっ
1名、脳血管障害20名、非脳血管障害7名)とコメディカ
た。 しかし、一方では、はめるのが固い、片手では作りに
ルスタッフ28名(PT5名、OT5名、ST7名、介護士6名、
くい、疲れるという意見が聞かれた。【考察】現状のアソブ
看護師4名)
。アンケートは、リハビリ教材としてブロックを
ロックは、筋力低下や片麻痺を伴う高齢者には適応困難で
口頭演題1日目
使用した際のスタッフの主観的評価(パーツの大きさ、結
あり、臨床現場で広く活用するためには、ブロックの大きさ
合強度、種類、改良点など)と、要介護者の反応(表情変
や形状、結合強度等に対して要介護高齢者に顧慮した改良
化、発話量、使用時間、周囲への関心など)について調査
が必要と判断された。他方、要介護者の反応からは、ブロッ
した。【結果】スタッフの評価では、ブロックの大きさや結
クを使用することで周囲との交流が増加し、表情も温和に
合強度で複数の問題点が挙がり、適応の対象者が限定され
なるなど肯定的反応が得られ、リハビリ教材としての有用性
るなどの意見が聞かれた。また、ブロックの色については
を示唆させる結果であった。
ポスター演題1日目
P1-9-02
fNIRSを用いたお口後出しジャンケン時の脳機能解析 −介護予防分野への応用可能性−
大森智裕、森田かおり
川越リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語聴覚療法課
口頭演題2日目
ポスター演題2日目
【はじめに】
我々は昨年度本学会において、介護予防分野における口腔
機能向上プログラムの目的をサルコペニアによる誤嚥性肺
炎予防に定め、考案した「肺炎予防事業プログラム」の意
義について報告した。今回、口腔運動が脳機能に及ぼす影
響について、fNIRSを用いて検証したので報告する。また
「お
口後出しジャンケン」を考案し、
「口腔反復運動」と、
「手指
による後出しジャンケン」との結果比較から、介護予防分野
における新たな口腔機能向上プログラムの意義について考
察を加える。
【対象及び方法】
成人女性1名を対象。NIRS(日立メディコEGT-4000)を
用いて、1.口腔反復運動(舌・口唇)
、2.手指による後
出しジャンケン(勝ち・負け)
、3.お口後出しジャンケン(勝
ち・負け)の3セットを計測した。研究パラダイムは福永ら
(2005)に準じて設定し、1セットは「安静(30秒)→指示
(6秒)→準備(6秒)→ジャンケンor口腔反復運動(30秒)
」
とした。無意識に出し手を予測しないよう「勝ち・負け」は
ランダム提示し、手指と口腔のジャンケン回数を同数に設定
した。
【結果】
3セットでNIRS信号分布が異なるパターンを示した。 酸素
化ヘモグロビン(oxy Hb)
、総ヘモグロビン(total Hb)
の相対量上昇、脱酸素化ヘモグロビン(deoxy Hb)の減
少を認めた位置は、口腔反復運動時で、右中心前回下部
周囲、手指の後出しジャンケン時で左一次運動野及び右下
前頭回弁蓋部周囲、
お口後出しジャンケン時で右補足運動野
(SMA)及び右中心前回下部・右下前頭回弁蓋部周囲で
あった。
【考察】
「お口後出しジャンケン」でSMA周囲に強い信号を認めた。
これは本運動が、抑制・葛藤処理や順序・系列運動処理を
必要とする認知運動である可能性が示唆された。また、本
プログラムは他者が存在して初めて成り立つ可変的な運動
且つ、
「笑い」を伴いやすい。この意味で本プログラムの
介護予防分野における「互助」としての効果も期待される。
202
P1-10-01
軍司良江、中田理美、生田目華奈、鬼越美帆、武田要子、佐藤 誠
株式会社 日立製作所 ひたちなか総合病院
と回答した職員は95%いた。【勉強会開催】[対象]急性期・
護師、看護補助者)が高次脳機能障害(以下、高次脳)や
回復期病棟職員 [方法]知識が少ない項目やよく困る上位の
認知症患者の対応に苦慮する場合がある。急性期での対応
症状について、対応法を講義形式で紹介した。[結果] 参加
の混乱が回復期転棟後も影響した例もある。そのため、全
率は急性期10%、回復期33%であった。前後に○×テスト
病棟で高次脳の理解を高めておくことが必要と考え、勉強
を実施したが、急性期の点数が有意に向上し、中でも認知
会を実施した。この取り組みについて報告する。
【事前調査】
症の知識が向上した。事後アンケートでは
「知識が高まった」
1)リハビリテーション科(以下、
リハ科)職員の意識調査:[対
と回答したのは両病棟とも100%、
「今後も勉強会が必要」
象]PT・OT・ST51名[方法]アンケート[結果]85%が病棟の
と回答したのは両病棟とも80%以上であった。希望する勉
強会の形式は、講義のほか症例検討が多く挙がった。【まと
によるものが多かった。2)病棟職員の意識調査:[対象]病
め・展望】今回の取り組みにより、回復期に加え、急性期
棟職員急性期181名・回復期30名 [方法]アンケート[結果]
病棟でも勉強会を行う有効性が示唆された。今後は、病棟
回復期に比べ、急性期の高次脳の知識が低かった。対応に
毎の実情に合わせた内容の検討や症例検討を含めた方法の
負担を感じる職員は両病棟とも85%を超え、苦慮する症状
検討も必要と思われた。また、参加率向上に向け、日時・
は「危険行為」
「暴力・暴言」
「拒否」
「固執」が多く挙がっ
回数の配慮、看護局への働きかけも行っていく必要がある
た。高次脳に関する講義の受講経験は、回復期100%に対
と考える。
し、急性期は48%であった。両病棟とも「知識を得たい」
リハビリテーション3職種の患者とのコミュニケーションの違いについて
の調査報告
岸村佳典 1)、寺田裕美 1)、中村祐輔 1)、川村広美 1)、塚村貴子 2)、志賀康彦 3)、山名文淑 3)、
鈴木淳子 2)、田中奈三江 4)
いて解析し、統計はメディアン検定を用い、有意水準を5%
とした。【結果】事例1では「理解の確認」及び「治療方法
に関する情報提供」の出現頻度がST群で有意に高かった(p
<0.05)が、事例2では上述のカテゴリーは両方とも有意差
がなかった。事例3では「治療方法に関する情報提供」の
出現頻度のみST群で有意に高く(p<0.05)、事例毎による
違いがあった。【考察・まとめ】先行研究と同様に、職種
PT・OTとST間でコミュ二ケーション方法に違いがあった。
しかし、本研究では同じ分類で職種間での差異がある一方
で、事例によっては差異が認められないものがあった。こ
のことは、職種間の差異に加えて、事例ごとに方法が異な
る可能性があり、必ずしも職種間の差異がコミュ二ケーショ
ン方法の差異とは限らないことが示唆された。また、今後
の課題として1.経験年数による違いの有無、2.サンプル数
の増加を検討をしていきたい。
203
ポスター演題2日目
【はじめに】臨床において言語聴覚士(以下ST)は、理学
療法士・作業療法士(以下PT・OT)に比し患者とのコミュ
ニケーションを図る上で傾聴する場面が多いことを経験す
る。また、阿部らは認知障害等を抱える高次脳機能障害患
者への訓練説明で、
「相手の感情に配慮して説明している」
点で心理士がPTと有意差が認められたがSTとは近似してい
たと報告している(2012)
。症例によって、リハビリテーショ
ンの職種間で患者へのコミュニケーションの図り方に違いが
あるかについて調査を行った。【対象】当法人のPT・OT・
ST各10名とした。【方法】自由記述方式でアンケート調査
を行った。その内容は、リハビリテーションの受け入れや障
害受容に難渋し得る架空の3事例を以下のように設定した。
事例1:病識低下のある片麻痺患者、事例2:復職希望して
いる失語症患者、事例3:自動車運転を望む注意障害患者。
分析方法は、Roter Interaction Analysis Systemを用
口頭演題2日目
社会医療法人 生長会 ベルピアノ病院 リハビリテーション室1)、
社会医療法人 生長会 ベルランド総合病院 言語聴覚療法室2)、
社会医療法人 生長会 阪南市民病院 作業療法室3)、社会医療法人 生長会 阪南市民病院 言語聴覚療法室4)
ポスター演題1日目
P1-10-02
口頭演題1日目
対応が気になると回答した。内容は障害特性への配慮不足
特別プログラム
【はじめに】当院の急性期・回復期病棟では、病棟職員(看
日 程
急性期・回復期病棟職員を対象とした高次脳機能障害の理解向上に向けた
取り組み
P1-10-03
言語聴覚士による認知症評価への関わり
日 程
大塩 歩 1)、小泉智枝1)、植村聡子2)、平井亜紀子2)、榊田知美1)、深谷愛基子2)、小野真理子2,3)
(医)K.N.I 北原国際病院 リハビリテーション科1)、
(医)K.N.I 北原リハビリテーション病院 リハビリテーション科2)、武蔵野大学大学院人間社会研究科3)
特別プログラム
【はじめに】当院は、脳神経外科・循環器科を専門としている。
行するために以下の工夫を行っている。1)専用PHSを所持
「救急、手術からリハビリ、在宅へ」を基本方針に掲げ、入院・
し指示を受ける2)ST室全体でのスケジュール管理調整3)
外来患者の包括的支援に注力している。STは、脳血管疾患
認知症評価に関する教育を最優先で実施。【実績】H16 〜
による嚥下障害や失語症等の患者に対し、ICUから外来ま
H25年度の総件数4,519件(最多718件/年、最少312件
で幅広いリハビリを行っているが、加えて、当院開設以来
/年)
、ST人員3 〜 6名で対応。【まとめ】当院の外来部門
20年間、物忘れを主訴に来院した外来患者の認知症評価
では「即日診断・即日治療開始」の方針で診療にあたって
を来院当日に行い、医師の診断補助の役割を担ってきた。
いる。認知症評価専門のSTがいるわけではなく、その殆ど
この取組みについて報告する。【評価・診断の流れ】医師
が当日の予約外の指示である。通常のリハビリの予定の中
が外来にて認知症評価を必要と判断した患者に対し、血液
で、指示に応え、評価結果を出すためには、柔軟な対応力や、
検査や脳画像検査等と同時にST評価の指示を出す。STは
効率的なスケジューリング、評価・診断力を持っていること
口頭演題1日目
指示当日に介入し、患者・家族への問診、MMSE、語想起、
が要求されるため、先述のような対応策を適宜見直しなが
かな拾いテスト、三宅式記銘検査等を基本に必要な諸検査
ら対応している。こうしたSTの取組みは、病院の収益への
を行う(所要時間約60分)
。結果から認知症の有無、原因
貢献は低いものの、前述のオーダー数からも、院内外にお
疾患の可能性を評価終了後30分でまとめる。全ての検査
いて一定の評価を得ており、STの職域拡大にも通ずると考
結果は当日中に医師に報告され、即日診断・即日治療開始
えられる。
となる。【対応策】通常のリハビリを行う中で、本業務を遂
ポスター演題1日目
P1-11-01
脳卒中急性期における重度失語症に対するVisual Action Therapyの経験
大久保瑞姫、山本 実
豊橋市民病院リハビリテーションセンター
口頭演題2日目
【はじめに】失語症患者に対する訓練には、種々の治療的ア
(以下RCPM)、重度失語症検査、標準高次動作性検査(一
プローチが行われており、失語症のタイプ、重症度、病期
部抜粋)を行い、訓練内容としてVATを5日間実施した。最
などにより様々な各訓練法が選択される。急性期の重度失
終評価としてRCPM、重度失語症検査の言語機能課題、ジェ
語症患者では、言語機能の急速な改善を認めることもある
スチャー課題を一部抜粋して行った。
が、改善がなかなか認められないことも多く、訓練課題の
【結果】全例、VATを5日間実施し、ジェスチャー機能と言
選択に難渋し、非言語性訓練を行うこともある。
語機能の両方に向上を認めた。自由会話場面で、口頭言語
今 回 我 々 は 重 度 失 語 症 を 呈し た 患 者4例 にHelm-
表出とともにジェスチャー表出を認めた。VATで全12step
Estabrooksら(1982)のVisual Action Therapy( 以 下
の うち、step.7ま で のstep upが 可 能 だった の は1例、
ポスター演題2日目
VAT)を行い、改善経過と急性期における訓練適応につい
て検討したので報告する。
step.8までが2例だった。
【考察】全例ジャスチャーと言語機能の両方に改善を認め、
【対象と方法】発症後間もない脳血管障害が原因の重度失
VATを行うにはある程度の非言語性機能が保たれている必
語症者3例(88歳女性、89歳男性、74歳女性)
、診断名は
要があると考えた。また今回の症例は、コミュニケーション
脳梗塞2例(左被殻1例、多発性1例)
、脳出血1例(左被殻)。
に対して積極的であり、訓練意欲もあった。ジェスチャーの
タイプは全失語1例、ウェルニッケ失語1例、非流暢性非定
汎化には、非言語機能の重症度が関係している可能性があ
型失語1名。初回評価としてレーヴン色彩マトリックス検査
ると考えられた。
204
P1-11-02
河村民平 1,5)、高橋宣弘 2,5)、富田浩生 3,5)、小林康孝 4,5)
福井医療短期大学 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻1)、
福井総合病院 リハビリテーション課 言語聴覚療法室2)、
福井総合クリニック リハビリテーション課 言語聴覚療法室3)、福井総合病院 リハビリテーション科4)、
福井県高次脳機能障害支援センター 5)
市川理恵 1)、荒井麻美 1)、三上彩子 2)、安田守秀 3)、谷 忠伸 3)
社会福祉法人信愛報恩会 信愛病院 リハビリテーション科 言語聴覚士1)、
同 リハビリテーション科 理学療法士2)、同 医師3)
入した。また、家族の叱責などによる症例の心理的負担軽
中国籍の症例を受け入れ、訓練を行った。経過の中で発生
減を目的に、一旦、家族の見学を中止した。後期には徐々
した問題点をまとめ、考察し報告する。【症例】51歳男性。
に表情やジェスチャーでの表出が増加し、y+5月には名前
や簡単な漢字の書字練習を開始した。y+7月退院後、妻と
ともに中国へ帰国した。【考察】訓練により症例の機能は改
人暮らし。中華料理店勤務。病前、日本語の理解は日常会
善したが、家族の障害についての理解や対応は退院時まで
話程度、表出は簡単な内容のみ可能。【現病歴】x年y月、
著変はなかった。その結果、症例の機能と家族の理解との
仕事中に脳出血を発症。急性期病院にて手術、加療を受け、
間に差異が生じたまま退院となった。一因として家族の訓
y+2月に当院へ入院。 入院当初は表情が乏しく、意識障
練見学を中止した事も考えられる。現症説明にとどまらず、
害、発動性低下、失語症、失行、保続、右半側空間無視、
見学は継続して受け入れ、その場で起こった家族間コミュ
注意障害を認めた。失語症は精査困難であったが重度と考
ニケーションの問題に対してもSTが評価し、症例、家族双
えられた。【経過】初期は随意発声訓練等、主に機能訓練
方に訓練・指導的な介入を繰り返す家族参加型の訓練が必
を実施。妻は毎回見学したが再三の現症説明にも関わらず、
要であったと考える。【おわりに】外国籍の症例や家族にも
症例に対してできない事を強く叱責する場面が度々みられ、
分かりやすく実践的な説明と指導方法を今後も模索してい
障害を理解できない様子であった。中期には、コミュニケー
きたい。
ション意欲への働きかけを目的にゲームや写真撮影等を導
205
ポスター演題2日目
中国出身。母語は中国語(北京語)
。発症の約10年前に来
日。妻(日本語は片言)娘(日本語で日常会話可能)と3
口頭演題2日目
【はじめに】近年の在日外国人増加に伴い当院においても
ポスター演題1日目
重度失語症を呈した中国籍症例への言語訓練と家族指導の経験
口頭演題1日目
P1-11-03
WAB)
、Visual Analog Scale(VAS)による各言語様式
の評価を行った。rTMSは、Magstim社製8の字コイルに
て左下前頭回(BA 45野)へ低頻度刺激(1Hz)を1200
発×2回×10日間行った。また、rTMS後には脳機能の促通
を図るためにiST(60分×2回×10日間)
を実施した。【結果】
事前評価の結果、fMRIにて右前頭葉・側頭葉に有意な活動
を認めたため右半球を言語優位半球とし治療を行った。事
後評価の結果、fMRIでは左右側頭葉・下頭頂小葉および
右前頭葉の活動の強さおよび広がりに明らかな増加を認め
た。さらに神経心理検査では表出面で顕著な改善を認めた。
VASでは理解面も含めた言語様式で改善を示す反応が得ら
れた。【考察】rTMSの刺激半球と反対側の活動の増加は
先の報告を示唆するものであった。しかし本症例は刺激部
位と同半球の活動増加も認めている。これは本来左利きで
あったことが言語機能を促通させた一要因ではないかと考
えた。
特別プログラム
【はじめに】反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)は、非損傷半球
を低頻度刺激で抑制することにより損傷半球の改善を促す
と考えられている。近年、慢性期失語症者に対するrTMS
の治療効果の報告(Abo et al, 2012)もあり、回復がプ
ラトーとなった失語症に対する新たな治療法として注目され
ている。 今回、発症から4年5 ヶ月経過した中等度失語症
者に対してrTMSおよび集中的言語聴覚療法(iST)を施行
した結果、脳機能と神経心理検査に顕著な変化を認めたの
でここに報告する。【症例】脳梗塞により右前頭葉に広範な
梗塞巣を認める60歳代男性。発症時は運動性優位の重度
失語症であり発語がほぼ廃絶状態であった。発症から4年
5 ヶ月経過した事前評価時においても運動性優位の中等度
失語症が認められた。また、本症例は幼少時に左手から右
手へ利き手矯正をされていた。【方法】事前及び事後評価
として、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて言語優位
半球の同定(復唱課題)と神経心理検査(SLTA、TLPA、
日 程
幼少期に利き手の矯正をした中等度失語症者に対するrTMSおよび
集中的言語聴覚療法の効果について
P1-12-01
日 程
回復期リハビリテーション病院における言語聴覚士の卒後教育について
〜アンケート調査の結果から〜
井上典子、宮木絵里香
医療法人社団輝生会 初台リハビリテーション病院
【はじめに】回復期リハビリテーション病院(以下回復期リ
回答した。必要な内容は「言語聴覚療法に関わる技術」と
特別プログラム
ハ病院)においては、例年複数名のSTが採用される状況に
回答したスタッフが多かった。入職後に困った(困っている
なりつつあり、入職直後からの継続的な卒後教育の整備が
と思われる)ことは「訓練プログラム立案」
「患者との関わ
望まれている。【目的】回復期リハ病院勤務のSTが卒後教
り方」
「ケア技術」等が挙げられた。OJTでは患者や家族と
育に望んでいることを把握し、回復期リハ病院における教
の関わり方に期待(留意)しているスタッフが多かった。養
口頭演題1日目
育研修プログラム立案の一助とする。【方法】当法人勤務
成校教育に対しては、訓練プログラム立案や具体的な訓練・
のST63名にアンケートを配布。一部内容は1 〜 3年目と4
ケアの技術に関する希望が挙げられた。STに必要な資質と
年目以上のスタッフで質問項目を分け、卒後教育の必要性、
しては「コミュニケーション能力」と答えたスタッフが最も
効果的方法、回復期リハ病院勤務STに必要と思われる教育
多く、資質を高める方法としては臨床経験を積むことや先
内容、入職後に困った(困っていると思われる)こと、OJT
輩からの指導を受けること、
勉強会への参加等が挙げられた。
に期待(留意)していること、養成校教育への希望、STに
【考察】訓練技術や患者の実際を想定した訓練プログラム
必要とされる資質や資質を高める方法等について選択式及
立案については養成校教育だけでは十分ではなく、卒後教
び自由記載方式で回答を得た。【結果】47名から回答を得
育ではOJTが効果的と考えるスタッフが多いことが明らかと
た(回収率75%、1 〜 3年目16名。4年目以上31名)
。全
なった。OJTを重視した教育研修プログラムを検討する必
員が卒後教育は必要と回答し、96%のスタッフが効果的な
要性が示唆された。
卒後教育の方法を勤務先の教育研修プログラム(OJT)と
ポスター演題1日目
P1-12-02
臨床実習指導者の思考差が及ぼす実習評価への影響
杉山卓弥 1,2)
茅ヶ崎リハビリテーション専門学校 言語聴覚学科1)、茅ヶ崎新北陵病院 リハビリテーション科2)
口頭演題2日目
【はじめに】臨床実習評価は臨床経験10年目以下の指導者
められなかった。しかし1)に関してはA群に関してはa)b)
は認知・精神運動領域、11年目以上は情意領域を中心に
とも単位成績より実習評価を低く評価する傾向があるが、
評価を行っているとしている(杉山2014)
。このことから今
その他の群に関しては単位成績より高く評価する傾向が
回は臨床実習指導者の思考差が学生の実習評価の差となる
あった。またb)はA 〜 C群の点差が少ない傾向があった。
のかを検討したので報告する。
2)に関してはb)のB群は上位群よりも高い評価であった。
【 方 法 】 対 象: 指 導 者26名( 経 験 年 数 平 均9年 目 実習評価の下位項目に関して、上位群より評価が高い項目
SD3.92)
。12 〜 13年度に在籍した大卒2年制ST学生62名
はB群a)b)の病院・施設の理解、適切な情報収集、検査
(取得単位成績平均70.4% SD13.4)
。 内容:臨床評価
の選定と理解であった。さらにB群b)
ではスタッフとの関係、
ポスター演題2日目
実習における1)認知・精神運動領域、2)情意領域の大
実習に臨む態度、実習に対する熱意が高い評価であった。
項目に関する下位12項目の実習評価。手続き:実習評価を
【考察】臨床実習指導者経験を重ねても学力レベルの高い
指導者の経験年数からa)10年目以下とb)11年目以上に
学生に関して到達基準の設定するのが難しいのではないか
分け、さらに学生の学力差を考慮するため取得単位成績か
と考えられた。また、臨床実習指導経験を重ねると多種多
らA群:76%以上、B群:60 〜 75%、C群:60%未満の3
様の学生を多く担当することになるため、学生について認
群に分けた。上記を踏まえ指導者の経験年数と実習評価に
知・精神運動領域には大きな差を持たせず、情意領域を他
ついて比較検討した。
の領域と明確に分けて評価を行う方略をとっているのでは
【結果】指導者の経験年数と実習評価について有意差は認
206
ないかと考えられた。
P1-12-03
牧野日和 1,2)、早川統子 1,2)、瀬戸千尋 3,4)、小林季実子 5,6)、稙田千里 5,6)、山本正彦 1)
愛知学院大学 心身科学部健康科学科 言語聴覚科学コース1)、愛知学院大学附属病院言語治療外来部門2)、
医療法人社団 藤田病院3)、医療法人社団 聖仁会4)、医療法人辰川会 山陽病院5)、
社会福祉法人辰川会 特別養護老人ホーム くさど6)
客観的臨床能力試験(OSCE)における教員評価と学生自己評価との比較
高ノ原恭子、高橋泰子、稲葉敏樹、馬屋原邦博、木村秀生
大阪河崎リハビリテーション大学 言語聴覚学専攻
【はじめに】本学言語聴覚学専攻では昨年度より、医療系
ポスター演題1日目
考察:
・実習や講義前はリスクに不安を抱いているものが多かった
が、講義や実習を経験することにより重要な判断を任せら
れる重責など、不安の対象が変化することが示唆された。
・講義や実習は学生に「摂食嚥下障害領域」に関する興味
を抱かせ、臨床への不安を抑える効果があることが考えら
れた。
口頭演題1日目
P1-12-04
50.0%。3・4年生は「興味がありやりたい」62.5%。 ③
魅力は、2年生は「専門家らしい業務内容」52.4%。3・4
年生は「患者が喜ぶところ」73.0%。④魅力を感じたきっ
かけは、3・4年生は、
「講義」64.9%、
「実習」43.2%。
⑤ 業 務に対 する不 安 は、2年 生 は「 命を落とすリスク」
73.8%。3・4年生は「命を落とすリスク」45.9%、
「重要
な判断を任せられる重責」
37.8%。⑥さらに学びたいことは、
2年生は「評価・訓練テクニック」35.7%。3・4年生は「VE・
VFテクニック」37.8%、
「評価・訓練テクニック」21.6%で
あった。
特別プログラム
目的:言語聴覚士養成教育における摂食嚥下障害領域教育
の在り方の指針の作成を目標に、今回、愛知学院大学学生
に意識調査を行い、摂食嚥下障害領域に対する意識調査を
行ったので報告する。
方法:愛知学院大学の学生(2年42名、3年25名・4年12名)
を対象に、①将来摂食嚥下障害領域に進みたいか、②(①
でYESと答えた群に対し)その理由は何か、③摂食嚥下領
域の魅力は何か、④魅力を感じたきっかけ(重複回答)
、⑤
摂食嚥下障害領域の業務に対する不安は何か、⑥摂食嚥下
障害領域でさらに学びたいことは何か、についてアンケート
調査(自由記述式、無記名)を実施した。得られた結果を、
「実習未経験で摂食嚥下障害領域の講義を受ける前の2年
生(以下2年生)
」群と、
「実習経験および摂食嚥下障害領
域の講義を履修した3・4年生(以下3・4年生)
」群の2群
にわけて、比較し検討を行った。
結果:
① 進 み た い とした も の は、2年 生9.5 %、3・4年 生 は
64.9%。 ②その理由は、2年生は「やりがいがあるから」
日 程
摂食嚥下障害領域の養成教育に関する研究
―愛知学院大学学生への意識調査、講義や実習がもたらす影響―
との差異を比較検討した。【結果】知識・技術・話し方に
ついて、大きな差は認められなかったが、身だしなみと振
Objective Structured Clinical Examination) を 実 習
る舞いについて、学生自身よりも評価者の評価が低い傾向
前教育として導入し、学生の基礎知識・検査技能・マナー
が認められた。またいずれの側面も男子は女子よりも自身
など臨床場面で要求される技術・態度の習得度評価を実施
を高く評価する傾向があり、評価者との相違が認められた。
している。今回、OSCE実施後に学生にも自身の臨床態度
一方、女子は自身を低く評価する者が多いが、男子よりも
を評価させ、教員の評価と学生の自己評価についての検討
すべての側面において評価は比較的良好な者が多い。評価
を行い、学生へのフィードバックに活用する試みを報告す
結果は個人別星型グラフを作成し、学生へのフィードバック
時の資料とした。【まとめ】OSCEを経て、学生は臨床場面
子13名)
。【方法】OSCEは3種の課題(SLTA一部・最長
における言葉かけや気遣い、臨機応変な態度の必要性など
発声持続時間とオーラルディアドコキネシス測定・ことばの
様々な気づきを経験する。また教員は教育内容の振り返り
テスト絵本)を実施。各課題について模擬患者(教員)を
の機会となり、教員集団が学生の問題点を把握し共有でき
配置し、さらに評価者1名(教員あるいは学外現職ST)が
る。今後、OSCEのフィードバック方法、評価基準の統一、
同室し、学内で作成した評価表に基づき評価する。また
課題の客観性、カリキュラムにおける位置づけ、学外実習
OSCE実施後、学生に対し5つの側面(知識・技術・話し方・
との関連性などの課題について検討を継続したい。
身だしなみ・振る舞い)の自己評価を実施し、教員の評価
207
ポスター演題2日目
る。【対象】臨床評価実習前の3年生22名(男子9名 女
口頭演題2日目
教育で取り入れられている客観的臨床能力試験(OSCE:
P1-12-05
日 程
言語聴覚士養成課程における訪問リハビリテーションに関する教育実施状況
−養成校へのアンケート調査−
爲数哲司
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科
【目 的】言語聴覚障害児者や摂食・嚥下障害患者の在宅
であった。しかし、3校は実施を検討ないしは決定していた。
特別プログラム
生活をサポートするために有効と考えられる言語聴覚士(以
授業を実施している養成校では担当は非常勤講師が最も多
下ST)の訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)の普及が
く、次にST専任教員であった。授業の構成はほとんどが講
未だ十分な状況ではない。その原因の1つに養成課程にお
義のみで訪問への同伴は1校のみであった。実施コマ数は
けるカリキュラムの位置づけがないことが考えられる。本研
1/6から15コマと各校で差がみられ、1番多いのは2コマで
究の目的は、ST養成課程における訪問リハの教育プログラ
あった。教材はほとんどが講師の作成した資料を使用して
口頭演題1日目
ムを開発するための基礎資料として養成校の訪問リハに関
いた。授業の到達目標はほとんどが
「訪問リハの概略を知る」
する教育の現状をアンケート調査することである。
【方 法】
であった。【考 察】 高齢化が進む我が国において限りあ
言語聴覚士指定養成校64校に平成26年5月にアンケートを
る医療サービスを最適に配分するためにも在宅での介護等
郵送した。アンケートの内容は養成年限、訪問リハの授業
はさらに進められていくであろう。この点に関してST養成課
実施の有無、無の場合の理由、有の場合は担当教員、科
程の現在の状況は理学療法士や作業療法士の養成課程と比
目名授業コマ数、授業の教材、到達目標等である。【結 較すると大きく遅れをとっているといえる。早急に卒前教育
果】48校より返送があり、有効回収率は75%であった。半
における訪問リハを含む地域リハビリテーションに関する科
数の養成校が訪問リハの授業を行っていなかった。その理
目の検討を行うべき時期に来ていると考える。
由は「時間的余裕がない」が最も多く、次に「講師がいない」
ポスター演題1日目
P1-13-01
佐賀県言語聴覚士会 訪問リハビリテーション委員会活動報告
高原由紀子
医療法人 智仁会 佐賀リハビリテーション病院
口頭演題2日目
【はじめに】 日本は、諸外国に例をみないスピードで高齢
賀県言語聴覚士会の訪問リハ委員として活動を開始してお
化が進行し、現在65歳以上の人口は3,000万人(国民の
り、その活動報告と共に、今後の課題について考察したの
約4人の1人)を超え、75歳以上の人口割合は増加し続け
で報告する。
【活動の報告】
これまで行ってきた活動としては、
ることが予想されている。このため、厚生労働省は、団塊
1.「資源調査」として県内のSTによる訪問リハ及び通所リ
の世代が75歳以上となる2025年を目度に、重度な要介護
ハ提供施設を把握することを目的に、自由記述式でのアン
状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生
ケートを実施した。2.「広報活動」としてSTによる訪問リハ
ポスター演題2日目
の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・
のパンフレット作成し、各広域連合へ配布した。さらに「ST
予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシス
による訪問リハ及び通所リハの資源報告」を行った。3.「研
テム」構築を推進している。この「地域包括ケアシステム」
修会開催」として平成23年度より「佐賀県訪問リハ実務者
は、市町村や都道府県が、地域の自主性や主体性に基づき、
研修会」
を開催した。また、今年7月より
「佐賀県訪問リハネッ
地域の特性に応じて作り上げていくことが必要されており、
トワーク」を設立した。【今後の課題】これまで行ってきた
我々は専門職の特性を生かした地域への支援を模索してい
活動より、現在の問題点について整理し、今後の問題点と
る。
展望について検討する。
現在我々は、佐賀県訪問リハ・地域リーダー且つ佐
208
P1-13-02
岩木香菜子、照屋智美
大浜第一病院 リハビリテーション科
液腺のマッサージ・嚥下体操などの間接訓練施行。6ヶ月:
練を行い、ST/家族/施設での共通の理解と目標設定を持
施設スタッフでの直接訓練施行。【結果】 STからの情報提
つ事で、楽しみ程度の経口摂取が可能となった例を経験し
供書のみでは、施設側には具体的な嚥下機能が伝わらず、
たので報告する。【症例】90代女性。両側基底核脳梗塞。
施設と家族の溝が大きくなる結果となった。STが施設へ訪
発症1年半。施設入所中。要介護5。認知機能低下。運動
問をし、正確な情報伝達(摂食嚥下機能の説明、ST訓練
性失語。MWST:3a。嚥下重症度(才藤)
:3。摂食嚥下能
場面の見学、実技指導)や互いの抱える問題点を把握し、
力グレード:4。FT:3a。摂取状況レベル:Lv.4。MASA:
同じ目標設定を持つ事ができた。その事により、日常的な
129。【経過】1ヶ月:摂食嚥下訓練を開始。日常的な発熱
摂食嚥下機能訓練が可能となり、経口摂取に繋がった。【考
察】 情報提供書では伝わらない内容も施設訪問をする事
VF検査にて誤嚥なし。STでの直接訓練開始。不顕性誤嚥
でスムーズな経口摂取の導入が可能となった。しかし、サー
の疑いあり。3ヶ月:家族による直接訓練を開始。情報提供
ビスでのリハ介入となる為、日常的に行うのは難しい。ST
書にて嚥下機能評価報告を行う。積極的に食べさせたい家
のいない施設への介入は、日常的な地域に向けての勉強会、
族と誤嚥性肺炎を懸念する施設間で意見が相違。4ヶ月:施
ビデオでの情報提供、診療報酬の問題など今後も検討して
設へST訪問。(摂食嚥下機能の説明、ST訓練場面の見学、
いく必要性は高い。
実技指導)を行う。5ヶ月:施設スタッフでの口腔ケア・唾
通所介護施設利用者に対する言語聴覚士介入の試み
木村欣司 1)、山崎 暁 1)、鈴木真生 1)、新泉一美 2)、山下直子 3)、石田信彦 4)
多摩リハビリテーション学院 言語聴覚学科1)、多摩リハビリテーション学院 作業療法学科2)、
デイサービスセンター・パーク3)、医療法人社団 和風会4)
増加している。しかし、医療分野の勤務先を希望するもの
の食事BIは14名全て5点であった。介入は嚥下間接訓練、
が多く、介護保険分野へのSTの供給が不足している。その
食形態の再検討、食事中の音環境の調整や物理的環境の
ため、通所リハ、老人保健施設、訪問リハ、地域包括ケア
調整、代償的な姿勢の保持方法などを行った。また当施設
に勤務するSTは少ない状況にある。今回、当通所介護施設
関係職種(看護師、介護支援相談員、介護士)と情報共有を
(以下当施設)でのSTを対象とする利用者に対し、介入を
行い、ST不在時にも行う嚥下間接訓練や食事環境の調整、
試みた結果、改善がみられたので報告する。方法対象者は
代償的な姿勢保持方法などについて指導、助言を行った。
当施設利用者や家族から介護支援相談員を介し、主に摂食
結果介入後は、食事BI改善は10点が10名、変化なし4名。
嚥下状態の評価の依頼があった全利用者138名のうち、継
改善項目として、むせ込みの軽減、代償的な姿勢保持の獲
続的介入を必要とした14名。男性8名、女性6名。平均年
得、食事時間40分→25分の短縮などがあった。考察 今回
齢74.4±7.3歳。全員が要介護度1。週1回40分、個別
STの介入後、食事BIの向上が認められ。STの必要性を認
にて、嚥下状態の改善と身体的対応、食事環境調整の介入
識できた。また、介護保険分野で必要とされているのはST
を行った。期間は平成25年4月から9月。摂食嚥下に対す
だけでなく、基本姿勢の獲得や適切な摂食手段など他職種
る初期評価を行った後、食事場面観察を行った。主な問題
(理学療法士、作業療法士)との連携を行うことで対象者へ
として、不適切な食形態の提供によるむせ込み、基本姿勢
さらなる改善の可能性があることが考えられた。
が保てない、不適切な食事環境などがみられた。ADL評価
209
ポスター演題2日目
として、バーセルインデックス(以下BI)を実施し、介入前
口頭演題2日目
はじめに 近年、地域での言語聴覚士(以下ST)の求人が
ポスター演題1日目
P1-13-03
口頭演題1日目
はない。朝夕の吸引施行。唾液でのむせは稀にあり。2ヶ月:
特別プログラム
【はじめに】外来リハビリテーションにて段階的経口摂取訓
日 程
経口摂取への意欲の高い家族とSTのいない施設との経口摂取に向けての
取り組み
口頭演題・ポスター演題
第 2 日目
2015年6月27日(土)
口頭発表
第 3 会場:2F
第 4 会場:2F
第 5 会場:3F
第 6 会場:3F
第 7 会場:3F
桜1
桜2
白橿 1
白橿 2
小会議室 8
ポスター発表
展示会場:2F 橘
211
2-3-01
左前頭葉の脳梗塞により超皮質性感覚失語を呈した一例
社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 リハビリテーション科
【はじめに】今回、左の前頭葉の脳梗塞で超皮質性感覚失
音読、単語の意味理解障害、喚語困難、語性錯語などを認
語(以下TCSA)を呈した一例を経験したので、報告する。【症
めた。これらはLichtheimら(1885)が想定するTCSAに相
らびに書字言語の理解障害、良好な復唱を特徴とする失語
ADLは自立していた。【神経心理検査結果】自発語は間代
症である。その責任病巣は従来、後方言語領域、すなわち
性保続・喚語困難・意味性錯語による語停滞があるも、比
Wernicke野を取り込む左側頭・後頭葉または左頭頂・後
較的流暢な発語で、冗長性がある。時折、質問に対するエ
頭葉と考えられている。近年は前頭葉損傷によるTCSAの
コラリアや同語反復を認める。SLTAの呼称では8/20(語頭
報告が散見されており(山鳥ら 1984)、症状の特徴として、
音ヒント無効)、語列挙は1語/分 書字は漢字・仮名共に単
仮名に強い字性錯書(濱中1992)や音読能力と読解能力
語レベルで障害され、特に仮名に強い失書を認める。復唱・
の解離(高橋1996)等が報告されている。本例は左の中
音読は短文レベルで良好。理解は短文レベルまで可能であ
前頭回〜下前頭回の領域の病巣でTCSAを呈していた。ま
るが、語の選択肢・文節数が多くなると語義理解に困難を
た本例の言語症状は保続やワーキングメモリーの低下など
来した。特に聴理解の低下が顕著であった。その他所見と
の前頭葉機能障害が言語症状に影響を与えている可能性が
してはRCPMが26/32 DisitSpanは順唱5桁、逆唱2桁で、
あることを指摘している(安藤 2009)報告を示唆するもの
計算では繰り上がり下がりは困難であった。 【まとめ】本
であった。
例は失構音などが認められない流暢性発話、良好な復唱や
交叉性失語を呈した右視床出血の1例
小松 寛、常峰かな、渡邉千春
神戸市立医療センター中央市民病院 リハビリテーション技術部
発話量減少、喚語困難と語性錯語を認めた。明らかな失構
生 じ る 失 語 に 限 定 し て 用 い、Henderson(1983)や
音はないが、軽度構音障害と声量低下が認められた。呼称
Alexander(1989)によると、通常の失語と同様の病変・
13/20、語列挙0/分と低下認めた。復唱は4文節文まで可
症状が見られる鏡像型と、そのような対応の見られない異
能。音読は良好であった。動作説明と漫画の説明では機能
常型とに分類される。交叉性失語の報告は多数あるが、右
語の省略、誤用及び動詞の省略、語尾変化の誤用が認め
視床障害による交叉性失語の報告は稀である。 今回右視
られた。助詞の穴埋め課題は11/20正答したが、誤りは保
床出血による失文法を伴う交叉性失語を呈した症例を経験
続と機能語の誤用であった。書き取りは仮名一文字7/10、
漢字単語3/5、仮名単語3/5。漢字では想起困難、仮名で
障害と左片麻痺、左表在感覚低下で発症。 頭部MRI画像
は音韻性錯書を認めた。【考察】本症例は易疲労性、保続、
で右視床に出血巣を認めた。【神経心理学的所見】意識
発話量減少、声量低下、語想起障害、語性錯語、軽度構
清明、易疲労性と保続を顕著に認めた。 見当識良好。 高
音障害が認められたが、日常会話の理解と復唱は比較的保
次脳機能評価を第6病日より実施。左半側空間無視と構成
たれており、左半球損傷で生じる、視床性失語と同様の特
障害、記憶障害を初期に認めたが第14病日には改善・消
徴を認めた点で鏡像型の症状を呈していると考えた。しか
失。RCPM25/36(第15病日実施)
。【言語症状】日常
し、文を構成するための機能語の省略、誤用や動詞の省略、
会話の理解は比較的保たれていたが、SLTAの短文の理解
語尾の変化の誤用など失文法があり、異常型の特徴も併せ
8/10、口頭命令1/10と低下がみられた。発話は流暢だが
持つと考えられた。
213
ポスター演題2日目
したので報告する。【症例】67歳、男性。 右利き。 構音
口頭演題2日目
【 はじめ に 】 交 叉 性 失 語 とは、 右 利 き 右 半 球 損 傷 で
ポスター演題1日目
2-3-02
口頭演題1日目
当した。【考察】一般的にTCSAは流暢な発話、音声言語な
経学的所見】意識はJ.C.S.:I‐1 脳神経系に異常は認めず、
特別プログラム
例紹介】80歳代、男性、右利き。自動車販売業経営。【神
日 程
市本将也、時田春樹、野間 陸、三縞明希子、橘高美波、村上琴美、石崎和加、三谷由利絵、
西本ありさ、鈴衣里佳
2-3-03
“言葉が消える”と訴えた復唱障害の一例
日 程
西嶋卓道 1)、水田秀子 1)、武田景敏 2)
藤井会リハビリテーション病院 リハビリテーション部1)、大阪市立大学 医学部 神経内科2)
特別プログラム
【症例】30歳代、男性、右利き、大卒、弁護士。X年5月、
全く語を捉え切れていなかった。無意味語はSALA <無意
仕事中に右半身の痺れと右片麻痺、呂律困難が出現し救急
味語>42/56とさらに困難。文の復唱では「最初の四つ角
搬送。頭部CTにて左被殻出血を認め、保存的加療し、約
を右へ曲がったところにあります」→「一つ目の角を右に行っ
3週間後当院に入院。【神経学的所見】意識清明。右片麻
た〜」と意味的に置き換えた誤りを認めた。【症状の内観】
痺。軽度の右顔面神経麻痺。【神経心理学的所見】WAIS-
課題では、度々「(提示された語が)消えました」
「聞いたけ
III <PIQ> 116 失語症言語機能:発話は、時につまりあ
ど何の言葉か分からなくなる」
「書かせてほしいって思うん
るも流暢で文レベル。呼称・音読は良好(SALA呼称検査 <
です、消えるんで」と“言葉が消える”と訴えた。「(普段
モーラ数> 90/90 <親密度> 94/96 )だが、復唱は低下
の会話で)文よりも語のほうが難しいんです。(文は)文脈で
(後述)。 理解では、視覚的理解は良好(<トークンテスト>
推測しているんです」
「(消えたときは)雰囲気だけが残って
167/167)。 聴覚的理解では、語音認知は保たれていた
て、それを手がかりにしているんです。ニュアンスを覚えて
口頭演題1日目
(SALA異同弁別 <2モーラ語><無意味語> 35/36)が、<
いるというか」との内観だった。【考察】本例は復唱や文の
トークンテスト> 145/167や音韻操作課題は低下。【復唱】
聴覚的理解が低下し、
“言葉が消える”と訴えた。語音認
SALA復唱 <心像性×頻度> 47/52 <モーラ数> 84/90
知レベルの障害を認めず、語形レベルの障害、すなわち語
と低下。「口」→「うき?」
「あとめ」→「おとめ?あとめ?」と、
形聾と考えられた。他の自験例を含め、その障害機序を検
ある程度音形を捉えていると推測される誤りや、
「りんご」→
討する。
「わかりません。消えました」
、
「うさぎ」→「ひゃひゃ?」と
ポスター演題1日目
2-3-04
発語失行に対する音韻リハーサル訓練の効果
−軽度混合性失語に中等度〜重度の発語失行を合併した1症例からの検討−
青木俊仁 1)、森 智美 1)、松田美穂 1)、長谷川賢一 2)
独立行政法人 国立病院機構 鳥取医療センター 1)、東北文化学園大学 医療福祉学部2)
口頭演題2日目
ポスター演題2日目
今回、中等度〜重度の発語失行を合併した軽度混合失語
1症例に対し、発語を求めずに音韻リハーサルを促す訓練を
行った結果、発語失行の改善に一定の効果が得られたので
報告する。
症例は60歳代男性。左下前頭回を含む広範な脳梗塞を
呈し、約1か月の急性期加療後、リハ目的にて当院転院と
なった。当初、上下肢、発声発語器官の麻痺はほとんど認
めなかったが、右同名半盲、観念失行、肢節運動失行など
を呈していた。日常会話レベルの内容は概ね理解できたが、
自発話は乏しく、表出を促すと構音の歪み、発話開始時の
努力、プロソディー異常などが顕著で、口型の探索行動も
頻発した。SLTAでは4つのモダリティー全てに障害を認め、
理解面に比し表出面の障害が著しく、復唱も困難であった。
これらの結果から、本症例は軽度混合失語に中等度〜重度
の発語失行を呈しており、特に表出面は発語失行の影響が
強いと考えられた。
そこで、訓練では主に発語失行の改善を図った。方法は、
214
聴覚的指示によるかな文字(単語、一文字を段階的に使用)
の選択課題とした。文字札の提示場所から3m程度離れた
場所で指示を与え、提示場所まで歩かせることで、指示か
ら文字札選択までにインターバルを設け、指示を保持する
ための音韻リハーサルを促した。また、指示は本症例の記
憶範囲に合わせ2span(音韻的類似性を工夫し難易度を操
作)とした。
初期は、音韻的非類似の単語対でも誤りや反応潜時の延
長を認めたが、徐々に正答率は向上し、潜時も短縮した。
その後、音韻的に類似したものでも選択可能となり、イン
ターバルや文字札選択時に囁語で表出する場面が増加し、
その際の構音は改善した。さらに、日常会話場面での伝達
性も向上した。
本症例の経過は、音韻リハーサルを用いた訓練が発語失
行を改善させる可能性を示唆していると思われる。発表で
は、本症例の発語失行改善の機序について考察し、今後の
課題を述べる。
2-3-05
江藤信介、中原啓介
医療法人社団 高邦会 柳川リハビリテーション病院 リハビリテーション部
読めるようになることを目標に、音読訓練を中心に実施した。
る所を発見され救急搬送。JCS2 〜 3、右不全麻痺、右
訓練語として仮名単語50語(10語×5セット)と漢字100
同名半盲を呈し、頭部CTより左側頭葉後下部〜後頭葉の
語(20語×5セット)を作成した。文字数効果を認めたため
皮質下出血を認めた。発症58日目に当院へ転院。【評価】
仮名単語2文字から開始したが、単純に音読を繰り返す課題
MMSE26/30点、RCPM22/36点。SLTAでは仮名単語の
(文字:音読)では改善傾向を示さなかった。 仮名の写字
音読3/5・読解5/10、漢字単語の音読5/5・読解9/10、
が良好であったことから運動覚を利用した訓練(写字後に
短文の音読1/5・読解0/10と特に仮名で困難を示し、漢字
音読)を実施した。この訓練の実施後では訓練語や音読検
査の成績の向上とともに、写字を外しても正答率を維持で
40語、漢字20語)では仮名単語15%、漢字単語40%正答
きるまで音読の改善を認めた。退院時には2〜3文節の短文
と困難さを示した。模写については立方体や仮名文字、画
音読訓練、新聞の見出しをゆっくりではあるが音読可能な
数の少ない漢字は可能であった。単語レベルより音読・読
状態となった。【まとめ】仮名文字に強い失読症状を呈した
解の障害を来す一方、仮名と錯書混じりの漢字ではあるが
症例に対して写字(運動覚)を利用した音読訓練を実施した。
長文レベルの書字は可能であったため、右同名半盲を合併
その後仮名・漢字文字の音読に改善傾向を示し、退院時に
した純粋失読に近い失読と考えた。【経過】症例は音読で
は読む活動のQOLも向上した。訓練の方法や経過、改善
きた語については理解できていたため、自筆文字や新聞が
の傾向などについて若干の考察を加えて報告する。
脳梗塞後に呼称障害と失読失書を呈した1例
−意味刺激を併用した漢字単語の音読練習の効果−
吉田道子 1)、額田俊介 1)、平田裕子 1)、杉山 肇 1)、橋本汐理 1)、五味川右 1)、島村知仁 2)
錯書がみられたが即時に自己修正可能であった。漢字の読
解はTLPA意味カテゴリー別名詞検査(聴理解)を文字提
示で実施し194/200だったが、
「漢字をみても意味がピン
とこない」という発言が時折みられた。音読はSALA漢字単
語音読OR34で26/48、心像性効果がみられ、誤りは迂言
や語性錯読がみられた。漢字の書字は小学校常用漢字単語
で49/60、書取51/60、どちらも字形想起の困難さと語性
錯書を認めた。漢字優位の失読失書に対し、漢字単語の意
味刺激を併用した音読練習を実施した。
【結果(発症6ヶ月)
】漢字単語の音読練習後はSALA漢字単
語音読OR34で35/48と改善がみられた。
【考察】本症例は文字入力辞書から意味システム、および
意味システムから音韻出力辞書への経路の障害により失読
症状が生じていると考えられた。意味刺激を併用すること
で意味システムへのアクセスが促進され、音読が改善した
と考えられる。
215
ポスター演題2日目
【はじめに】呼称障害と失読失書を呈した1例に対し、意味
刺激を併用した漢字単語の音読練習を実施し効果が得られ
たので報告する。
【症例】50代女性、右利き。右同名半盲を自覚し近医受診。
頭部MR
Iで脳梗塞と診断。3週間後に当院転院。
【神経学的所見】麻痺なし。右同名半盲
【画像所見】頭部MR
Iで左後頭葉、側頭葉、頭頂葉に梗塞
巣を認めた。
【経過】入院時、知的低下はみられず、軽度の流暢性失語
を認めた。発症4カ月で聴理解は生活上問題がない程度ま
で改善したが、呼称障害と失読失書は残存した。
【意味刺激練習開始時の評価(発症4カ月)
】呼称はTLPA
意味カテゴリー別名詞検査154/200で、喚語困難や意味
性錯語が多かった。文字言語は、仮名は漢字に比し改善が
みられ、読解は単語は概ね可能、音読は音韻性錯読がみ
られた。なぞり読み効果はないが逐次読みは効果があり、
五十音の検索による代償がみられた。仮名の書字は音韻性
口頭演題2日目
社会医療法人 さいたま市民医療センター 診療技術部 リハビリテーション科1)、
社会医療法人 さいたま市民医療センター 診療部 リハビリテーション科2)
ポスター演題1日目
2-3-06
口頭演題1日目
単語の書字4/5では錯書を認めた。自作の音読検査(仮名
特別プログラム
【症例】67歳、右利き男性、高卒。 飲酒後に転倒してい
日 程
左側頭葉後下部〜後頭葉損傷により仮名に強い失読を呈した一症例
—写字(運動覚促通)を利用した音読訓練の経過—
2-3-07
日 程
頭部外傷により重度失語症を呈した症例の訓練経過について
〜文字を介した方法により発話改善を認めた一例〜
柴尾京子、熊倉勇美、橋本康子
医療法人社団和風会 千里リハビリテーション病院
特別プログラム
【はじめに】頭部外傷により重度感覚性失語を発症した若年
中心に改善が認められ、文字と音韻との結びつきが強化さ
症例の当院における言語訓練と、その後の経過について報
れた。そこで、発話訓練の方法として、発話の前に文字を
告する。【症例】20代男性。交通事故により左側頭部を中
想起し、それを音読するという方法を用いた。すると、文
心とした脳挫傷を認めた。入院時、聴覚的理解障害と、残
字を介することで音韻の誤りへの気付きが強化され、自己
語・ジャーゴンを主とする空虚な発話を認める重度の感覚
修正しながら正しい音に近づけることが可能となった。退院
性失語が認められた。【経過】入院時、著明な認知機能の
時のSLTAでは、
「話す」
「書く」の項目において文の復唱と
低下は認めず、ジェスチャーを含めた状況理解は良好であっ
短文書き取りを除いた全ての項目で6 〜 10割正解を得た。
た。受傷より1 ヶ月半後の当院入院時SLTAでは、読解と計
本症例は、6 ヶ月の入院生活を経て自宅退院後も、地元の
口頭演題1日目
算以外はほぼ段階1であり、特に発話、書字に重篤な障害
外来STによる言語訓練を継続し、その後、社会復帰を果た
が認められた。発話特徴は、ジャーゴンと残語を繰り返す
した。【考察】重度の発話障害をきたし、文字という残存機
空虚なものであり、復唱、音読も困難であった。言語訓練
能を活用することで改善を認めた症例を経験した。発話障
のプログラム立案に際し、まず残存する読解能力に注目し、
害の改善を目的に文字を使用することは一見遠回りにも思
日常コミュニケーションでは文字を活用した。また、文字読
える。本症例の場合、若年であることや意欲の高さ、訓練
解、書称、漢字への仮名ふりなど文字を中心とした内容を
時間を十分に確保できたこと、さらに効果的な方法を実施
実施した。 入院3 ヶ月目のSLTAでは仮名の理解、音読を
できたことが発話能力を改善させる近道となったと考える。
ポスター演題1日目
2-3-08
外来リハの必要性 −発症から7ヶ月経過後にリハを開始した失語症例を経験して−
小平貴恵、山下裕史、久池井朋子、山本由佳
社会医療法人社団熊本丸田会 熊本リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語聴覚科
口頭演題2日目
【はじめに】脳卒中発症後に不穏などの精神症状のため回
練・実用的コミュニケーション訓練・家族指導等を1年間継
復期病棟にてリハを受けることができなかった重度失語症
続した。家族は毎回同席した。[結果]日常コミュニケーショ
患者に対して、外来リハを行い改善が認められたので報告
ンは、簡単な会話が成立し、代償手段の使用や電話でのや
する。
りとりが可能となる。失語症は中等度へ改善(SLTA 聴く:
【症例】60歳代、男性、右利き、電気関係の仕事。くも膜
単語9割・短文7割、話す:単語の復唱4割・動作説明4割・
下出血・脳梗塞を発症し、急性期病院へ入院。その後、回
復期病院へ転院したが精神状態不良により精神病院にて加
漫画の説明段階2、読む:短文7割正答)
【考察】回復期リハ病棟にて言語リハを受けられなかった重
ポスター演題2日目
療。発症から7ヶ月経過時点で自宅退院、外来リハ開始。
[病
度失語症例に対し、約1年間外来リハを行い改善が見られ
巣]左前頭葉、脳梁膝部、左頭頂葉[神経学的所見]軽度
た。改善の要因には、機能的訓練、実用的コミュニケーショ
右片麻痺[神経心理学的所見]見当識障害、失語症(感覚性、
ン訓練、家族指導を含めた環境調整が同時期に行えたこと
重度)、失行、記憶・注意・遂行機能障害[外来開始時ST
が考えられた。発症からの期間を考慮すると、介護保険サー
評価]日常会話は極簡単な内容の理解も困難で、ジャーゴ
ビスでの対応も考えられる。しかし、失語症の回復の特性
ン様の発話のみであった。
(SLTA 聴く:単語5割・短文1割、
や発症からの経過、生活背景や家族協力等の条件や目的を
読む:漢字単語9割・仮名単語10割・短文1割正答、他項
考慮し、外来リハを選択することの必要性がある。
目は全て誤答)
[訓練]2 〜 3回/週 、40分間、機能的訓
216
2-3-09
Forestier病により嚥下障害をきたした症例からの一考察
社会医療法人祐生会 みどりヶ丘病院 リハビリテーション科
嚥下や肺炎予防の訓練を実施し158病日ゼリー食頚部左回
の異常骨化により椎体の強直や変形をきたす疾患で、頚椎
旋にて経口自立。187病日ペースト食に変更。在宅復帰に
前方に巨大な骨棘が生じると嚥下障害をもたらすことがあ
向け自然な姿勢での食事確立を目指しC3−4骨棘切除術施
るが切除後改善が見込まれる。当院でH25〜26年に上記
行。術後14病日ゼリー食再開、52病日軟菜全粥食摂取可
診断された9例のうち施術例2例、および手術適応外7例中
能となる。
リハ介入も困難であった1例について報告する。なお3例と
【症例3】87歳男性。誤嚥性肺炎後。重度認知症あり。VF
も病前はF
I
LS8であった。
にてC4−5に骨棘、誤嚥を認めたが、病態不安定かつ術後
【症例1】85歳男性。胸椎椎体骨折にて入院。舌癌の既往
の積極的なリハ困難と予測され手術適応外となる。肺炎予
あり。食事時ムセが散見されVF施行。骨棘突出による喉頭
防の訓練や代償嚥下を指導するも拒否強く介入困難。軽快
蓋の翻転阻害あり、誤嚥を認めC3−5骨棘切除術施行。術
退院したが3日後に再発し入院、30病日後死亡退院。
【考察】Fores
t
i
er病による嚥下障害は病態により手術適応
認めた。強い息止めやシャキア法、ハフィングの指導、舌
外となる症例もあるが、VF等で最適な食形態や姿勢を確認
筋力増強訓練等実施。術後31病日ゼリー食にて経口自立。
し、代償嚥下の獲得や肺炎予防のリハにより誤嚥回避が可
術後59病日軟菜食摂取可能となる。
能なことから、患者の協力や知的機能が予後を左右する一
【症例2】81歳男性。左視床出血後。重度嚥下障害を認め
因となりうる。また手術適応となれば更なる嚥下機能の改
26病日VF施行、巨大な骨棘による咽頭腔狭窄あり。代償
善が見込まれる。
白波瀬元道 1)、野本達哉 2)、東川麻里 3)
【はじめに】頸椎後縦靭帯骨化症と外傷によるC5/6椎間開
薬の調整が行われる。トラムセット中止2日後に催吐反射が
大に対する頸椎前方固定術後に摂食嚥下障害が出現した症
出現し、摂食訓練を開始する。入院2 ヶ月:咳嗽反射が出現
例を経験した。3食経口摂取に至った経過を振り返り若干の
する。メンデルゾン手技を習得、経管栄養の他にゼリー食
考察を加える。
を開始する。嗄声に改善みられる
(G1R1B1A0S1)
。入院4ヶ
【症例】70歳男性。33年前より頸椎後縦靱帯骨化症。X-1
月:ミキサー食で3食経口摂取となる。入院5 ヶ月:コデインリ
年11月転倒、頸部痛の増悪と右上肢痛が出現、C5/6椎間
ン酸中止後、より強い咳嗽反射となる。Huffing・咳払いの
習慣も定着。入院6 ヶ月:食形態をミキサー粥刻み食とする。
方固定術後、嗄声・嚥下障害が出現する。X年1月当院入
【考察】本症例は、頭頸部の可動性が失われていたが、手
院となる。
術後に左反回神経麻痺や喉頭拳上不全などによる嚥下障害
【初回評価】意識清明。四肢不全麻痺、両上下肢感覚鈍麻、
が出現した。また、鎮痛作用薬の影響で咳嗽反射も消失し
左反回神経麻痺(G3R2B3A0S2)
。 経鼻経管栄養。 頭頸
ていた。服薬調整を含めた感覚面への介入、変化が期待で
部の可動性無し。RSST:5回/30秒。催吐反射、咳嗽反射消
きる咽頭期の嚥下関連筋群等の運動面への介入、認知機能
失。舌骨・喉頭拳上に制限があり、
VFにて咽頭への早期流入、
が保たれていたことで可能であった環境面への介入を行っ
披裂-喉頭蓋基底部の閉鎖不十分等の問題を認める。認知
た。結果、機会誤嚥のリスクを減らし、気道の防御機能を
機能に著明な問題は認めない。
【経過】入院1 ヶ月:STでは基礎訓練を実施、医師により服
働かせることが可能となったため、3食経口摂取に移行でき
たと考えられた。
217
ポスター演題2日目
開大、骨傷を伴う中心性頸髄損傷の診断を受ける。頸椎前
口頭演題2日目
医療法人社団永生会 永生病院 リハビリテーション部1)、医療法人社団永生会 永生病院 診療部2)、
北里大学医療衛生学部 リハビリテーション学科 言語聴覚療法学専攻3)
ポスター演題1日目
頸椎後縦靱帯骨化症、外傷による椎間開大に対する頸椎前方固定術後に
摂食嚥下障害が出現した一症例
口頭演題1日目
後3病日VFにて咽頭部腫脹による喉頭蓋翻転不良、誤嚥を
2-3-10
特別プログラム
【はじめに】Fores
t
i
er病(強直性脊椎骨増殖症)は全身性
日 程
小田美奈、藤岡誠二、森脇美早
2-3-11
補助人工心臓を装着している心臓移植待機患者に対する言語聴覚士の関わり
日 程
辻澤陽平 1)、大澤恵留美 1)、堤 昌恵 1)、三上 愛 1)、生駒一憲 2)
北海道大学病院 リハビリテーション部1)、北海道大学病院 リハビリテーション科2)
特別プログラム
口頭演題1日目
激で嚥下反射惹起可能。5月2回目VE(トロミ水2cc:誤嚥
【はじめに】
なし、Gr.3)
。結果よりトロミ水2ccから段階的摂食訓練を
心臓移植待機期間は平均981 日(29 ~ 3,838日)と長期
行った。5月3回目VE(トロミ水継続、Gr.3)
。6月VF(1
に及ぶ。 待機期間中に脳血管障害(以下、CVA)や感染
。6月2回 目VF( 食 形 態 変 更。3食 経
症の併発より活動制限を引き起こす例は少なくない。今回、 食 開 始。Gr.3→5)
口摂取。Gr.5→7)
。7月常食(Gr.7→9)
。2:嚥下機能低
植え込み型補助人工心臓(以下、VAD)を装着している患
下(Gr.9→7)
、失調性ディサースリアを認めた。嚥下、構
者でCVAと感染による長期臥床生活よりSTリハが必要な症
音訓練を実施。 約2か月で嚥下障害(Gr.7→9)
、発話明
例を経験したので報告する。
瞭度(3→1.5)は改善。3:1か月半ICUで全身状態管理。
【症例】
ICUで少量のトロミ水から始め段階的に増量(Gr.3)
。2か
60代男性。拡張型心筋症より心臓移植適応となりX-1年3
月後1食摂取(Gr.3→5)
。4:左半側空間無視、左同名半
月にVAD装着。X年4月感染よりVADの入れ替え。1:1か
盲が出現し自力摂取困難。摂取量低下より経口+代替栄養
月間の臥床より嚥下障害出現。2:X年7月右前頭葉、右小
で管理(Gr.5→4)
。5:ST中止。
脳梗塞。3:X年9月ポンプ交換。1か月半の臥床より再度
【考察】
嚥下障害出現。4:X年11月右頭頂後頭葉〜後頭葉の出血
心臓移植待機期間は長期に及び、待機期間中にSTは都度
性脳梗塞、左頭頂葉梗塞を発症。5:X+1年1月敗血症性
対応が求められた。心理的不安に対しても対応が求められ
ショック、3月死亡退院。
た。移植待機期間中は、CVAや感染のリスクは少なくない。
【ST訓練経過】
STは全身状態やリスクも踏まえて対応し、症例が何を求め
1:4月末に初回VE。唾液誤嚥レベル。摂食嚥下能力グレー
ているのかを都度把握する必要がある。
ド(以下、Gr.)2。5月ST開始。舌の筋力低下あり。冷刺
ポスター演題1日目
2-3-12
下降性壊死性縦隔炎後に重度嚥下障害を呈したが、重点的な
リハビリテーション介入で常食摂取可能となった症例
竹松美波
伊那中央病院 リハビリテーション技術科
口頭演題2日目
【はじめに】降下性壊死性縦隔炎(以下DNM)は歯科及び頸
貯留していた。第47病日目のVF検査にて嚥下重症度分類
部感染症によって生じ、嚥下に関与する血管内臓隙の炎症
は食物誤嚥レベルで、不顕性誤嚥、喉頭侵入、口腔内残渣
で第IX 〜 XII脳神経が障害され嚥下障害を呈するといわれ
を認めた。咽頭の通過は左側のみだが残留も多く、頸部回
ている。今回、DNMにて重度の嚥下障害を呈したが、約1 ヶ
旋位の効果は乏しかった。以上から、口腔期・咽頭期の問
月の嚥下訓練にて常食の摂取が可能となった症例を報告す
題が嚥下に影響していると判断し、舌負荷運動、頭部挙上
る。
法の変法、舌前方保持嚥下訓練等の間接訓練を5 〜 6単位
【症例】60代男性。咽頭痛、発熱、頸部腫脹にてA病院を
/日で開始した。その間、経口摂取困難にて胃瘻造設術を
ポスター演題2日目
受診しCTにて右側咽頭から喉頭の腫脹、咽頭周囲から縦隔
施行した。第60病日目に気管カニューレをカフ付きからカ
内、心嚢周囲に気腫を認め入院・加療となった。その後、
フなしへ変更し、間接訓練に直接訓練も追加した。第76病
病態が悪化しB病院へ搬送・転院され、DNMに対する手術
日目で3食常食の摂取が可能となり自宅退院に至った。
が施行された。STによる積極的な訓練にのれず、VE検査
【考察】本症例の嚥下障害は、DNMによる炎症性の神経
にて不顕性誤嚥を認めた。第39病日目にA病院へ再入院と
障害と絶飲食期間の長期化による廃用性筋力低下により重
なり摂食嚥下リハビリテーションを開始した。
症化したと考えられた。そこで重点的な嚥下訓練を実施し
【経過】右側舌の萎縮を認めた。RSSTは1回、喉頭挙上範
囲は狭く嚥下困難で口腔・咽頭に泡状の唾液や痰が著明に
218
た事が機能向上に非常に効果的だったと考えられた。
2-3-13
認知症患者における食行動と経管栄養の現状
熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻
摂取方法から経口摂取群(評価時に経管栄養などの補助栄
に伴う食行動の異常等の問題と、介護量の関係に関する指
養法が全く不要で経口摂取が可能であった者)
と経管栄養群
摘がされている。しかし、それらの指摘のほとんどは医師
(部分的にでも経管栄養を用いていた者)の2群に分類した。
への意識調査や介護量を検討しており、認知症患者の食行
【結果】認知症患者146名の内訳は平均年齢85.7±8.3歳、
動と摂食状況との関連性については、検討していない。そ
男性42名、女性104名であった。認知症のタイプはアルツ
こで、我々は、認知症患者の食行動と摂食状況を明らかに
ハイマー型認知症74名、脳血管性認知症27名、レビー小
するために、認知症患者に対して、嚥下訓練を施行してい
体型認知症12名、正常圧水頭症2名、慢性硬膜下血腫2名、
る言語聴覚士を対象としたアンケートを作成し、食行動と摂
不明29名である。経管栄養の継続と関連を認めた食行動
食状況との関連性を検討した。【方法】1)調査方法:2014
の異常は、甘いもののみを食べる、咀嚼から嚥下への移行
年11月から2015年1月の期間に本研究への協力が得られ
困難、呼吸パターンの異常、呼吸機能低下による誤嚥時の
喀出困難の4項目であった。【結論】認知症患者では、さま
に入所している認知症患者の性別、年齢、認知症のタイプ、
ざまな食行動の異常があった。その中でも、偏食や呼吸機
摂食・嚥下能力のグレード、摂食状況のレベル、HDS-Rの
能の低下を有する認知症患者は経管栄養を必要とする傾向
点数、食行動の異常を挙げた。3)解析方法:評価時の栄養
を認めた。
構音障害自主訓練用支援アプリケーションの開発
鎌田勝裕 1)、柴本 勇 2)、佐々木誠 3)、中山 淳 4)
パタンアート研究所 ライフサポートプロジェクト1)、国際医療福祉大学 保健医療学部 言語聴覚学科2)、
岩手大学 工学部 機械システム工学科3)、一関工業高等専門学校 制御情報工学科4)
評価用ソフトウェアでは、音声認識機能を用いて最長発
略、付加の修正などを行う。小児から成人まで、構音運動
声持続時間、任意の単音や単語を規定回数発話したうち、
や産生音の向上を目的に、発話訓練を繰り返し行っている。
正確に音声認識された割合を点数化し、視覚的に結果を提
森岡ら(2008)らは、運動学習では目的動作を反復すること
示する機能を実現した。また結果をグラフ表示し訓練効果
でより滑らかな運動に変容することを指摘している。このよ
を継時的に示せるようにした。訓練用ソフトウェアでは、前
うに構音訓練では、より明瞭な産生音を得る為に多くの反
後左右方向に移動可能な Orbotix社のSphero2.0(ボール
復動作を促すことが期待される。しかし、日々の訓練では
型ロボット)の運動を、発声又は任意の単音や単語の発話と
関連付けて制御することで、楽しく遊びながら反復訓練で
を支援する目的で、補助練習用アプリケーションを開発した
きる機能を実現した。【結果及び考察】 今回は、入手性の
ので報告する。【方法】 アプリケーションソフトウェアには、
高い物品を用いて簡便にかつ遊び感覚で自主訓練を可能に
google社のAndroid OSに標準搭載されている音声認識
している点が特徴である。現在は限られた訓練内容である
機能を組み込んだ。利用者がスマートフォンのマイクに向
が、今後は応用品の開発を継続する予定である。加えて、
かい発した音声を認識し、フィードバックすることで利用者
Android OS端末だけでなく、iOSに対応したソフトウェア
が正確に構音したか否かを認識しながら訓練できる点が特
やスマートフォンのみで訓練できるソフトウェアの開発を継
徴である。評価用と訓練用の2つのソフトウェアを開発した。
続する。
219
ポスター演題2日目
時間的制約がある。そこで我々は、構音障害者の自主訓練
口頭演題2日目
【はじめに】 構音障害の訓練では、構音の置換、歪み、省
ポスター演題1日目
2-4-01
口頭演題1日目
た多施設にアンケート調査を行った。2)検討項目:各施設
特別プログラム
【はじめに】認知症患者において、食事場面における認知症
日 程
池嵜寛人、宮本恵美、大塚裕一
2-4-02
舌接触補助床(PAP)の継続使用に家族の協力が有効であった1症例
日 程
高島良代 1)、西脇恵子 1)、町田麗子 2)、松木るりこ 1)、橋本久美 1)
日本歯科大学附属病院 言語聴覚士室1)、日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科2)
【はじめに】下顎歯肉癌術後に摂食嚥下障害と構音障害を呈
なかったが、奥舌と舌根が残されていたことから奥舌及び
し急性期病院を退院後、嚥下・構音訓練を主訴とし当院を
舌皮弁後方の動きは訓練によって改善が期待できると考え
特別プログラム
受診した患者に対し舌接触補助床(PAP)を作成、PAPの
目標音を/k/とするPAPの作成を計画した。PAPの形態
継続使用に関して知見を得たので報告する。【症例】70代
は奥舌と口蓋部で閉鎖を付与する形になるよう歯科医師に
男性。左下顎歯肉癌。既往歴に食道癌あり。【経過】A 病
依頼した。訓練開始2か月後PAP完成、以後1か月に2回程
院にて左下顎歯肉癌に対し下顎骨区域切除術、舌半側切除
度舌運動、構音、唾液処理訓練実施。訓練開始5か月後、
術、機能的頸部郭清術、プレートおよび腹直筋皮弁による
/ka/は構音可能になったがPAPをすると唾液が出る、食
口頭演題1日目
再建術、気管切開術が施行された。術後、嚥下・構音訓練
事の味が変わる等の理由で装着しなくなった。しかし家族に
が実施されたが、術後1か月のVF検査で著明なバリウムの
PAP装着時と非装着時の構音の差を比較してもらい、装着
喉頭侵入、ゼリーの喉頭蓋貯留を認め、経口での全量栄養
時の方が明瞭になる音があることを本人に伝えると装着に
摂取は困難とされ腸瘻が造設された。術後4か月当院初診。
積極的になった。また唾液に関しては装着を続けることで次
初診時摂食嚥下能力グレードGr.6。構音検査25/50。/
第に分泌量は収まっていくことを繰り返し説明することで理
t/は口唇破裂音で代償し、/k/は声門破裂音に近い音、
解を得た。【考察】PAPを効果的に利用してもらうには装着
/r/は/j/に近い音に歪む等の症状が認められ明瞭度は
する利点や欠点を本人のみではなく身近な家族などにも説
3/9だった。 舌の可動域は前後、左右、挙上共ほとんど
明、理解を得ることが重要だと考えられる。
ポスター演題1日目
2-4-03
LSVTLOUDにおける声の高さの単調さへの治療効果についての検討
飯高 玄 1)、冨田 聡 2)、小國由紀 1)、荻野智雄 1)、金原晴香 1)、村上紗奈美 1)、田原将行 2)、
大江田知子 2)
口頭演題2日目
独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 リハビリテーション科1)、
独立行政法人国立病院機構 宇多野病院 神経内科・臨床研究部2)
【目的】パーキンソン病(以下PD)では構音障害の聴覚印
した。 解析はLOUD前後の比較をpaired t testを用いて
象所見として声の高さの単調さ(mono-pitch)が出現す
行った。SFFの変動率及びSFFのF0 rangeはF0の対数ス
る。これは話声位(speaking fundamental frequency:
ケールであるsemi-toneを用いた。【結果】(1)聴覚印象評
以下SFF)の変動性低下やSFFのF0 rangeの低下に起因
価では18例中11例で改善を示し、7例は改善を認めなかっ
するとされている。LSVT LOUD(以下LOUD)による声の
た。(2)平均音圧は両群とも有意に改善を認めた(p<0.01)。
ポスター演題2日目
高さの単調さの改善効果については、他言語において報告
SFFの変動率は聴覚印象評価の改善群で有意に改善を認め
があるが本邦では見られない。本研究では、LOUDの施行
た が( 平 均2.35±0.63→2.89±0.38 p<0.05)
、非改
によりアクセントやイントネーション構造の異なる日本語で
善群では有意差を認めなかった(平均2.77±0.77→3.04±
も声の高さの単調さが改善するかを、聴覚印象評価及び音
0.61 n.s.)。SFFのF0 rangeは両群とも有意に改善したが
響学的解析を用いて検討する。【対象】プロトコールに則っ
聴覚印象評価の改善群でより大きな改善を認めた(改善群:
てLOUDを実施したPD患者18例(女性11人 平均年齢66
平均14.6±3→17.9±2.1 p<0.0005、非改善群:17.3±
±7.8歳 平均罹病期間12.9±6年)
【方法】LOUDの施行
2.9→19.2±2.4 p<0.05)
。【考察】LOUDは他言語と同
前後で「北風と太陽」を音読させ、(1)録音した音声を聴取
様に日本語においても、PDに伴う声の高さの単調さの改善
したST5名が聴覚印象評価(4段階)を実施し、対象患者
に対して一定の効果があることが示唆され、音響学的解析
を改善例/非改善例の2群に分けた。(2)音響学的解析を
でもそれを裏付ける結果となった。
用いて平均音圧、SFFの変動率、SFFのF0 rangeを測定
220
2-4-04
飴矢美里、羽藤直人
愛媛大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
る。今回、当科での末梢性顔面神経麻痺患者に対するリハ
表情筋の麻痺を来す。神経の損傷程度が軽度であれば、薬
ビリの取り組みについて紹介するとともに、2008年6月か
物治療で良好に改善する。しかし、高度障害例では、表情
ら2014年3月までの5年8か月間に当科顔面神経外来を受
筋の麻痺が残存するだけでなく、発症4か月以降に病的共
診し、継続してリハビリを施行できた157例を後方視的に検
同運動や顔面拘縮という顔面神経麻痺後遺症が出現し、一
討した。後遺症の出現は、リハビリ前は157例中48例、リ
旦出現すると完全治癒は困難である。そのため、発症早期
ハビリ後は157例中104例であった。リハビリ前から後遺症
を認めた48例を除くと、109例中56例(51.4%)であり、
図ることが重要である。 当科では、2008年より言語聴覚
リハビリを行うことで後遺症の出現を約51%に抑えることが
士が末梢性顔面神経麻痺に対するリハビリテーション(以
できた。また、リハビリ前から後遺症が出現していた48例
下リハビリ)を開始している。専門医が発症早期に予後予
では、リハビリを行うことで病的共同運動、顔面拘縮ともに
測を行い、後遺症出現の可能性がある患者に対して、言語
その程度が軽減した。末梢性顔面神経麻痺に対するリハビ
聴覚士がリハビリを実施する。また、後遺症が出現した患
リは、後遺症の出現予防や後遺症出現時の軽減に対して一
者には、A型ボトリヌス毒素を用いた注射治療に合わせて、
助になると思われる。今後は、訓練方法の確立や重要性を
バイオフィードバックなど後遺症を緩和させる指導を追加す
広く啓蒙することが必要と考える。
音声認識(検索)アプリケーションを導入し構音訓練を実施した舌がんの一例
三瀬和人 1)、小野希美子 2)、三瀬和代 3)、鴻上 繁 4)
愛媛県立中央病院 リハビリテーション部1)、愛媛県立中央病院 耳鼻咽喉科2)、
帝京大学医学部附属溝口病院耳鼻咽喉科3)、愛媛県立中央病院 リハビリテーション科4)
た。導入初日(術後28日)の単語の認識率は48%であった。
話明瞭度改善の自覚および訓練意欲の向上につながった成
導入後、発話明瞭度の改善を自覚できるようになり、訓練
人構音障害の一例を経験したので報告する。【症例】20歳
意欲は向上し、積極的に自主訓練に取り組むようになった。
術後59日には自宅退院となり、その後2/Wの外来フォロー
舌がん(T3N1M0)と診断される。 同年7月、舌亜全摘出
を継続した。外来フォロー終了時(術後111日)の認識率は
術、自家遊離複合組織移植術(左大腿外側部皮弁)、両頚部
91%に向上し、発話明瞭度は1.5/5に改善した。フォロー
郭清術、気管切開術を施行される。術後16日よりPT、19
終了から約1週間後に復職に至った。【考察】本症例は発話
日よりST介入となった。【初回評価】術後は舌の腫脹も認
明瞭度改善の自覚に乏しく、訓練意欲が低下傾向にあった
め、舌の随意運動は困難であった。発話明瞭度は4/5であり、
が、音声認識(検索)アプリケーションを導入して、単語の認
音声言語によるやり取りは困難であり、ジェスチャーや筆談
識率をフィードバックしながら訓練を行うことで、訓練意欲
を利用してコミュニケーションを図ることとした。【経過】舌
を向上させることができたと考えられる。また、発話明瞭
の腫脹が軽減されるとともに、発話明瞭度も3/5に改善し
度改善の自覚に乏しい患者の訓練意欲の維持や向上を図る
ていたが、本人には改善の自覚が乏しく、訓練意欲は低下
には、STや家族などの人による評価だけではなく、音声認
傾向にあった。術後28日より、携帯電話の音声認識(検索)
識(検索)アプリケーションなどの機器による評価のフィード
アプリケーションを導入して、ターゲットとした単語の認識
バックも有用であると考える。
率の変化をフィードバックしながら訓練を継続することとし
221
ポスター演題2日目
代、男性、理容師。【現病歴】X年6月に当院を受診され、
口頭演題2日目
【はじめに】音声認識(検索)アプリケーションの導入が、発
ポスター演題1日目
2-4-05
口頭演題1日目
より後遺症の出現を予防すること、後遺症出現時の軽減を
特別プログラム
末梢性顔面神経麻痺は、顔面神経核より末梢が障害され、
日 程
当科における末梢性顔面神経麻痺患者に対するリハビリテーションの取り
組み
2-4-06
誤嚥性肺炎患者における入院中の再誤嚥のリスク因子
日 程
秀島麻美、入江将考
国家公務員共済組合連合会 新小倉病院 リハビリテーション部
【はじめに】当院では、誤嚥性肺炎患者の経口摂取の開始
子/介助歩行/杖歩行/独歩)、バイタルサイン、血液検査デー
時には、言語聴覚士(ST)介入による嚥下評価によって障害
タ、中枢神経疾患併存の有無とした。 統計解析にはEZR
の程度を把握し、経口摂取の可否、食事内容の決定を行っ
特別プログラム
ている。通常、藤島らの嚥下グレード(Grade)に基づいて
ver.1.27を用い、有意水準は5%とした。
【結果】再誤嚥発症患者は60名(28.3% )であった。 多変
食事内容を決定をしているが、入院治療中に再誤嚥を起こ
量 解 析 の 結 果、 性 別(男 性、odds ratio(OR);2.320、
す患者も少なくない。そこで本研究の目的は、誤嚥性肺炎
p=0.0103)、CCI(≧2、OR;2.110、p=0.0461)、 移 動
患者の入院中の再誤嚥のリスク因子を明らかにすることで
能力(ベッドまたは車椅子、OR;3.990、p=0.0332)、収
ある。
縮期血圧(<122mmHg、OR;2.540、p=0.00509)が有
【方法】2011年1月から2014年11月までに誤嚥性肺炎と
診断され、ST介入を行った入院患者のうち経口摂取を開
意な独立因子であった。
【考察】今回、既に誤嚥性肺炎を起こしているハイリスク患
口頭演題1日目
始した患者212名(平均86.3歳、男性 41.0% )を対象とし
者を対象に分析した。結果、再誤嚥のリスク因子は、男性、
た。 入院経過中の再誤嚥(発熱/絶食/抗生剤投与のいず
併存疾患、身体機能、循環動態といった全身状態を反映し
れか1つ以上のエピソードに該当)発症を従属変数とした多
たものであった。先行研究では、再誤嚥のリスクは、嚥下
重ロジスティック回帰分析を行った。 独立変数は、年齢、
反射の低下等が報告されているが、本研究では、嚥下機能
性 別、 肺 炎 重 症 度 分 類(A-DROP)、Grade、Charlson
という局所的な因子だけでなく、全身的に患者を評価した
Comorbidity Index(CCI)、Performance Status(PS)、
上で、ST介入することの重要性が示された。
Barthel Index(BI)、食事動作能力、移動能力(ベッド/車椅
ポスター演題1日目
2-4-07
認知機能が嚥下機能に及ぼす影響
濱部典子、中村純子、花城茂樹、丸尾紗織、田代 聖、北河宏之
東浦平成病院 リハビリテーション科
口頭演題2日目
【目的】当病院・介護老人保健施設には認知機能低下と嚥
p=0.001)
、物品記銘(なし群2.4±1.5、あり群1.6±1.6、
下機能低下を併せ持つ方が多数入院・入所されている。今
p=0.039)で有意差(p<0.05)が認められた。【 考察 】
回は改訂長谷川式簡易知能評価スケール(以下HDS‐R)
結果より、得点上の有意差が認められたHDS−Rの3項目に
の減点項目と嚥下障害の関連を分析し双方の関係を検討し
共通して必要な認知機能は、文字や音声、物体の形態や名
ていく。【方法】 対象は平成26年8月1日から2ヶ月の間に
称を一時的に記憶する短期記憶能力である事が分かる。こ
当病院・介護老人保健施設に入院・入所しており無作為に
の機能が低下することが食事における食物認知や、食物の
抽出した97名。その内HDS−R得点20点以下の72名を対
形態に応じた咀嚼方法の選択・実行などに困難が起こるの
象者とした。それらの内、食形態が一口大以上の嚥下障害
ではないかと考える。今回、対象者に認知訓練として計算
ポスター演題2日目
なし群36名、きざみ食以下の嚥下障害あり群36名に分け
や毎日の食事内容の確認などを実施すると、食事形態に向
HDS−Rの減点項目と食形態、嚥下障害の関係性を考察し
上が見られた。この結果より短期記憶能力の改善が嚥下機
た。なお本研究に際し当院倫理委員会にて承認を頂いてい
能向上に繋がるのではないかと裏付けられる。今後は訓練
る。【結果】 HDS−Rの結果より嚥下障害なし群とあり群
内容を検討し、病棟、施設全体で嚥下障害に対する取り組
の得点をt検定により検証した結果、各項目の平均点は即
みを実施する事が望まれる。また、取り組みを通じ認知機
時再生(嚥下障害なし群2.7±0.6点、あり群2.3±1.0点、
能と嚥下障害について更に研究を進めていきたい。
p=0.015)計算(なし群1.0±0.6点、あり群0.5±0.6点、
222
2-4-08
誤嚥性肺炎患者における嚥下機能の性差(男女差)
町田市民病院リハビリテーション科1)、町田市民病院消化器内科2)
【目的】
喉頭蓋谷及び梨状窩残留の有無について、性差(男女差)
健常高齢者における嚥下機能の加齢変化について、咀嚼時
を比較した。
間の延長、喉頭位低下などの報告があり、男女の性差につ
【結果】
男女の2群間で、年齢と、入院からVF、肺炎からVFまでの
における性差に関する報告は少ない。
期間に有意な差は無かった。藤島Gr、DSSがそれぞれ、男
今回、誤嚥性肺炎患者において、嚥下機能の性差を検討し
性は4.4±2.1、3.1±1.2、女性は5.8±2.0、4.1±1.1であ
たので、以下に報告する。
り有意な差は無かったが、男性で嚥下障害が重度である傾
【対象と方法】
向にあった。誤嚥の有無に有意な差は無かったが、男性で
不顕性誤嚥が多かった(男性28.8%、女性12.0% )。 症状
肺炎を発症し入院となり、嚥下造影検査(VF)を行った嚥下
については、準備口腔期障害の有無に有意な差はなかった
障害患者98名とした。性別は男性73名、女性25名、年齢
が、嚥下反射遅延、喉頭蓋反転不全、喉頭蓋谷残留、梨
は51 〜 98歳(83.0±5.5歳)、入院からVF実施までの期間
状窩残留は男性で有意に多かった。
は2 〜 56日(14.4±9.0日)、肺炎発症からVFまでの期間
【考察】
は2 〜 56日(14.1±9.1日)で あった。VF結 果 から、 藤 島
高齢者の加齢変化として、男性は女性に比べ安静時の喉頭
の摂食嚥下能力グレード(藤島Gr)
、Dyspasia Severity
位が低下していると言われている。そのため、誤嚥性肺炎
Scale(DSS)、誤嚥の有無を評価し、症状について、準備
患者において、男性は、喉頭挙上不全による喉頭蓋反転不
口腔期障害、嚥下反射遅延、嚥下時の喉頭蓋反転不全、
全や咽頭残留を認める患者が多い可能性がある。
伊志嶺文 1)、矢守麻奈 2)
浜松医科大学 医学部 附属病院 リハビリテーション部1)、
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科2)
有意に高かった(P<0.05)
。胃瘻受容の条件は、無苦痛、
人生観・価値観とともに、医学的情報量の多少が密接に関
短期間、確実な改善が、経済的負担の少なさよりも多かっ
与すると推測される。今回、医学的知識のある者と一般市
た。また治療選択の際、過半数が年齢は考慮しないと回答
民に対して、摂食嚥下機能に関する補装具とAHNの認識・
した。一般群は、胃瘻にすると誤嚥はなくなるが、経口摂
取が不可能でリハビリを受けられないと考える者が多かっ
下の医療職員32名および言語聴覚学(ST)専攻学生18名
た。医療職群では、ST・ST学生は他職種よりもAHN受容
と、一般群:66名の計116名。【方法】本研究の趣旨を説
度が高かった。【考察】一般群は、PAP、PLP、NGT、胃
明し理解・同意を得られた者に対し、書面によるアンケート
瘻の認識度・受容度が低かった。胃瘻に関する知識が乏し
調査を行った。統計解析は2群間の比較にMann-Whitney
い者は、豊富な者に比し胃瘻の受容度が低かった。AHNの
のU検定、3群間以上の比較にKruskal-Wallis法、多重比
受容には正しい認識が重要と考える。胃瘻の受容度が低い
較にSteel-Dwass法を用いた。有意水準は5%以下。
【結果】
要因としては、経済的負担ではなく苦痛・有効性・長期化
一般群の点滴、酸素吸入器、人工呼吸器の認識度は医療
へのおそれ等が考えられる。胃瘻にした後もリハビリを施行
職群と有意差はなかったが、PAP、PLP、胃瘻(P<0.01)
、
でき、経口摂取可能となる場合もある等のSTが持つ適切な
経鼻胃管(NGT)
(P<0.05)の認識度は有意に低かった。
情報を周知する必要がある。
胃瘻に関する知識が高い者の方が、低い者よりも受容度が
223
ポスター演題2日目
受容について調査した。【対象】医療職群:広島・静岡両県
口頭演題2日目
【はじめに】人工的水分・栄養補給法(AHN)の受容には
ポスター演題1日目
摂食嚥下機能に関する補装具および人工的水分・栄養補給法等の認識と受容
口頭演題1日目
対象は、H24.2.17 〜 H26.10.17の2年8 ヶ月間に誤嚥性
特別プログラム
いての報告も少なからずある。しかし、高齢の嚥下障害者
2-4-09
日 程
田澤 悠 1)、石井ひろみ 1)、田口郁苗 1)、石原裕和 1)、和泉元喜 2)
2-4-10
意識的な咳嗽に対して教示が及ぼす影響
日 程
冨田早紀 1)、藤井 航 2)、永井亜矢子 1)、土本友香 1)、鈴木 享 1)、大下真紀 1)、金森理恵子 1)、
稲本陽子 3)、園田 茂 4)
藤田保健衛生大学 七栗サナトリウム リハビリテーション部1)、
藤田保健衛生大学 医学部 七栗サナトリウム 歯科2)、
藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科3)、
藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学II講座4)
特別プログラム
【目的】摂食嚥下リハビリテ−ションでは、咽頭貯留物や誤
対象者を無作為に2群に分け、教示I→教示II(以下、1群)、
嚥物の排出を目的に、患者に意識的に強い咳嗽を促すこと
または、教示II→教示I(以下、2群)の順で各10回、計20回
がある。しかし、教示の理解が得られにくく、効果的な強
実施し、各測定値の比較検討を行った。本研究は当院倫理
い咳を促すことが困難なことを臨床上経験する。意識的な
委員会の承認を受けて実施した(七栗倫理第125号)。【結
咳や咳嗽訓練について、これまで方法は記載されてきたが、
果】教示Iと教示IIのPCF、意識的な咳嗽時の努力肺活量、
教示の効果についての検討は十分なされていない。本研究
一秒量を比較すると各測定値共に教示IIが高かった。1群、
口頭演題1日目
では、教示の違いが意識的な咳嗽に影響を与えるかについ
2群と教示の施行順序を変えても、各測定値は教示IIが高
て健常成人を対象に検討を行った。【対象と方法】健常成
かった。【考察】健常成人において教示Iよりも、動作手順
人20名(男性9名、女性11名、平均年齢24.6歳)を対象と
の教示である教示IIで咳嗽力が高く、喀出などにより有効で
した。スパイロメーターにフェイスマスクを装着し、被験者
あると考えられた。咳嗽には声帯閉鎖後の瞬間的に爆発的
の呼吸に合わせ意識的な咳嗽の教示を行い、最大咳嗽流量
な呼気の産生が必要である。教示IIでは、具体的な方法と
(Peak Cough Flow(以下、PCF))、意識的な咳嗽時の努
して声帯閉鎖を促す「とめて」と教示するため、爆発的な
力肺活量、一秒量を測定した。教示は、教示I「咳をしてく
呼気の産生が容易になったと推察された。今後は、摂食嚥
ださい」
、教示II「大きく息を吸って、とめて、咳」とした。
下障害患者群での検討を予定している。
ポスター演題1日目
2-4-11
完全側臥位法を選択し地域への社会復帰を果たした1症例
工藤 純、中村洋子
公益社団法人 石川勤労者医療協会 城北病院 リハビリテーション科
口頭演題2日目
【はじめに】誤嚥性肺炎を繰り返し、長期にわたり中心静脈
食塊移送をよりスムーズに行うことができる。
【リハビリテー
栄養(以下:TPN)をしていたが、完全側臥位法を選択し
ション経過】VF結果よりTPNと併用で左完全側臥位での経
経口摂取が可能となった症例を経験した。退院前に退院先
口摂取開始となり、退院時にはTPNを抜去し3食経口自力
施設職員と通所リハビリテーション(以下:デイケア)職員
摂取で有料老人ホームへ退院となった。退院後は週1回の
に対して完全側臥位法に関する情報提供を行い、理解を得
デイケア利用が介護保険サービスのプランとして組まれた。
ポスター演題2日目
られたことで退院が円滑に運べた。完全側臥位法が有効で
【考察】完全側臥位法をとることで、咽頭残留物を貯留す
あった考察に退院後の様子を加え報告する。【症例紹介】
るためのスペースが増えたことに加え、嚥下後の咽頭残留
60代男性。白血球減少、貧血進行の精査加療目的で精神
物が貯留スペースへ停滞しても気管への侵入は無くなり誤
科療養病院より転院となった。既往に右延髄梗塞(球麻痺)
嚥を防ぐことができた。また、退院先施設職員・デイケア
と繰り返す誤嚥性肺炎があり、TPNが行われていた。【嚥
職員に対して完全側臥位法の説明を丁寧に行い、疑問・不
下造影(以下:VF)※完全側臥位での評価】臨床的嚥下
安に対してしっかりと理解を得られたことを確認した上で退
重症度分類:機会誤嚥レベル、嚥下障害Grade:Grade7。
(車
院となり、退院後の社会活動参加も円滑に運べた。これら
椅子座位では臨床的嚥下重症度分類:食物誤嚥レベル、嚥
より、本症例において完全側臥位法は代償手段として有効
下障害Grade:Grade3)
。 左完全側臥位法であれば誤嚥
であったと考える。
リスクが減じられ、ベッド角度10度を加えることで食道への
224
2-4-12
嚥下障害にバルーン法が著効した皮膚筋炎の1例
旭川医科大学病院 リハビリテーション部1)、旭川医科大学病院 リハビリテーション科2)
【はじめに】食道入口部通過障害を主症状とする皮膚筋炎
摂取が可能となり、Z+92日に自宅退院となった。
の症例に対しバルーン法を実施し著効した症例を経験した。
【評価方法】Z+8・58・72日の各VF動画から、バルーン
法導入の前後において、嚥下時の食道入口部開大が最大と
ルーン法導入の前後で比較検討を行ったので報告する。
なった静止画を取り込み、食道入口部前後径(口径)と第
【症例】70歳代、女性。X年、嚥下困難、下肢筋力低下で発症、
4頚椎上縁から舌骨下縁までの距離(舌骨距離)をバルー
当院に入院し皮膚筋炎と診断され、薬物療法と嚥下訓練で
ン法の前と後で4回ずつ測定した。 解析は一元配置分析、
Bonferroni法により比較した。
常菜食になり自宅退院となった。
【結果】バルーン法導入前後で口径は、13.1±2.9mmから
【現病歴】X+2年Y−1月より嚥下困難感が出現し、X+2年
13.6±1.8mmへ変化した。舌骨距離は55.5±2.7mmから
Y月Z日当院に入院となった。入院時の嚥下の重症度は水
61.6±2.6mmへ変化した。統計解析では、バルーン法導
入前後に主効果(p<0.01)を認め、舌骨距離に有意差(p
顕性誤嚥と咽頭残留を認めた。薬物療法と頭部挙上、
ブロー
<0.01)を認めた。
イングなどの嚥下訓練を行ったが、嚥下障害が改善しない
【考察とまとめ】バルーン法実施直後から通過障害の改善に
ためZ+58日にバルーン法を行った。直後のVFにおいて食
加え舌骨距離が延長したことから、バルーン法による嚥下
道入口部通過に著しい改善を認め、Z+86日に常食常菜の
圧の低下が舌骨の前方移動に関連していると考えられた。
重度嚥下障害を伴ったWallenberg症候群に対しバルーン法と
息こらえ嚥下が有効だった一例
松浦久美子 1)、佐藤佳孝1)、森 拓麻1)、岡田勝彦1)、日野明子2)、土橋孝之2)、七條文雄3,4)
【はじめに】右延髄梗塞を呈した嚥下障害に対し、食道入口
い、バルーン法を開始し徐々に注入空気量を増加していっ
部拡張法(以下、バルーン法)
、息こらえ嚥下を用い、普
た。118病日目より自己管理にて単純引き抜き法と嚥下同
通食水分とろみなしの摂取が可能になった症例を経験した。
期引き抜き法を実施した。 その後のVFでミキサー菜まで
治療場面と嚥下造影検査(以下、VF)の動画に考察を加
の嚥下は可能であったが、喉頭侵入が見られることが多く、
えて報告する。【症例】60歳代、右利き男性【既往歴】糖
この対処法として息こらえ嚥下を追加した。摂食訓練では、
尿病、高血圧症【現病歴】X年5月、夜中トイレに起きた際
息こらえ嚥下を忘れてしまうこともあり、定着するまで訓練
時と昼食時の声掛けで強化を図った。段階的に食形態をアッ
梗塞の疑いで入院。発症23日後、リハビリ目的にて当院回
プし、退院後もバルーン法と筋力トレーニングを継続し、普
復期病棟に転院。【神経学的所見】身体麻痺はないが、左
通食水分とろみなしの摂取が可能となった。【考察】今回の
上下肢の温痛覚の低下あり。【経過】入院時、唾液の自己
症例は、広範囲の延髄梗塞により咽頭収縮と輪状咽頭筋の
喀痰が多く、嗄声あり。25病日目より等尺性前頸部の筋力
開大のタイミングのずれが残存し、機能改善に時間を要し
トレーニング、氷片やガムの咀嚼・嚥下訓練開始。39病日目、
た。しかし、自己にて単純引き抜き法を実施し嚥下回数が
VF実施。ゼリーは咽頭部で停滞し食道入口部への通過は
増加したことと、直接訓練での息こらえ嚥下の定着が誤嚥
見られず、しばらくして気管内に落下し咳と共に排出あり。
のリスク軽減に繋がり、普通食水分とろみなしの摂取に至っ
透視下でカテーテルの位置と適正な注入空気量の確認を行
たと考えられる。
225
ポスター演題2日目
ふらつきあり。翌朝、眩暈が治まらないため救急搬送。脳
口頭演題2日目
医療法人徳寿会 鴨島病院 リハビリテーション部1)、医療法人徳寿会 鴨島病院 内科2)、
医療法人成美会 鈴江病院 脳神経外科3)、医療法人徳寿会 鴨島病院 脳神経外科4)
ポスター演題1日目
2-4-13
口頭演題1日目
分誤嚥レベルで、食形態はミキサー食、VFでは液体で不
特別プログラム
嚥下時の食道入口部前後径と舌骨前方移動距離を測定しバ
嚥下機能が改善し、入院から約5か月で全粥軟菜食が常食
日 程
林 圭輔 1)、吉田直樹 2)、角井俊幸 1)、中澤 肇 1)、大田哲生 2)
2-4-14
日 程
咽頭通過障害側へのアプローチにより嚥下障害が改善したWallenb
erg症候群の一例
星 達也 1)、戸原 玄 2)、和田聡子 3)、北久保美樹 1)、須賀文子 4)
医療法人社団苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院 リハビリテーション科1)、
東京医科歯科大大学院 高齢者医科歯科分野2)、日本大学歯学部 摂食機能療法講座3)、
医療法人社団苑田会 竹の塚脳神経リハビリテーション病院 看護部4)
特別プログラム
【はじめに】Wa
l
l
enber
g症候群を呈した症例に対してVFに
比べ中間位頚部左回旋位では咽頭クリアランスの低下を認
よる訓練の再評価を行い、咽頭通過障害側への頚部回旋
めた。上記の検査結果より、頚部左回旋体幹右側屈位にて
による代償的嚥下アプローチに加え、咽頭通過側への頚部
ゼリーによる直接訓練を開始し、その後、左側(通過障害側)
回旋位による訓練を実施した結果、代償姿勢をとらず常食
食道入口部の開大を図る目的でトロミ水を用いた頚部右回
摂取が可能となった症例を経験したので報告する。【症例】
旋位での直接訓練、咽頭のアイスマッサージ、咳嗽、ハフィ
70歳代、男性。【現病歴】Wa
l
l
enberg症候群(左延髄外
ング、頚部左回旋位を組み合せた嚥下訓練を実施した。必
側梗塞)を発症し、嚥下障害を呈したため経鼻経管施行と
要に応じてVFにて、訓練効果の評価およびリハビリメニュー
口頭演題1日目
なった。25病日後にリハビリ目的でA回復期リハビリ病院に
の検討を行ったことで早期にミキサー食に移行し、段階的
入院し、49病日後に嚥下リハビリ強化のため当院入院とな
に食形態の向上が出来た。結果、左食道入口部の開大を
る。【評価および経過】当院入院時、嚥下スクリーニング
徐々に図ることができ姿勢、頚部回旋の代償手段なしで常
テスト結果は、RSST:0回/30秒、MWST:3点、FT:3点、
食摂取が可能となった。【考察】頚部左回旋体幹右側屈位
咳テスト:−であった。VE所見では、唾液の貯留著明、咽
の代償的嚥下アプローチに加え、頚部右回旋位による嚥下
頭や声帯に左右差は認めなかった。VF所見では、不顕性
訓練をおこなった。通過障害重度側へのアプローチを行う
誤嚥、食道入口部開大不全を認め、右食道入口部のみ食
ことでより効果的に食道入口部の開大を図ることが出来た
塊の通過を認めた。そのため、頚部左回旋体幹右側屈位に
と考えられる。
ポスター演題1日目
2-4-15
STとして呼吸リハへ関わり右無気肺改善に至った一症例
阿部直哉、山崎友昭、須賀正伸、今野朱美
群馬県済生会前橋病院 リハビリテーション室
【症例】60歳代男性。細菌性肺炎、右無気肺。既往歴:多
X線にて右無気肺改善。呼吸回数20回/分へ軽減。右胸郭
口頭演題2日目
発性嚢胞腎、肺癌(右肺下葉切除)、COPD、HD3回/週実施。
全体mobility向上。同日よりPT介入し呼吸理学療法開始。
約1 ヶ月の間に2度肺炎にて入退院繰り返し、同年/8/22肺
ST介入10日後酸素療法offとなりroom airにてSpO297%
ポスター演題2日目
炎の診断で3度目の入院。13病日目よりST介入。【評価】
前後維持。MRC息切れスケール:Gr3(平地歩行でも息切
意識レベル清明。呼吸状態:酸素2L使用、SpO295%前後。
れのため休む)。 血液データ:Alb2.77。 摂食嚥下機能評
呼吸回数24回/分の頻呼吸。 呼吸補助筋の筋緊張亢進あ
価:MWST:4/5、FT:4/5へ改善。 食事中の呼吸苦・疲労
り。 右胸郭全体mobility低下。 左上葉部位もmobility低
訴え減り食事中のSpO2低下95%以下認めず食事量平均8
下。 右肺呼吸音減弱、左肺rhonchus認める。 胸部X線・
割可能となる。36病日目に自宅退院。その後2 ヵ月間再入
CTにて右無気肺認める。 自己喀痰は可能だが、吸痰も
院無し。【まとめ】本症例は元々のCOPDによる換気障害と、
実施。MRC息切れスケール:Gr5(外出できず衣服の着脱
無気肺に伴う低酸素による頻呼吸が重なりエアートラッピン
も息切れする)。 血液データ:Alb2.23。 摂食嚥下機能評
グ、肺過膨張を強めていた。そこに嚥下時無呼吸が加わる
価:MWST:3a/5、FT:3b/5。食事中も頻呼吸あり嚥下後
事で低酸素、頻呼吸を更に助長していたと考えられた。低
SpO288%まで一時低下する事もあり。 呼吸苦・疲労訴
酸素の原因となっていた無気肺の改善をはかる事でその後
えあり食事量平均6割程度。【訓練】呼吸機能への訓練頻
の食事量、摂食嚥下機能の改善、繰り返す入退院を防ぐ事
度:1日2回。 呼吸訓練:Springingとsqueezingを中心に行
ができたと考える。
い、その他に頚部ストレッチ、体位ドレナージ、肋間筋ス
トレッチ、胸郭捻転等実施。【経過】ST介入5日後の胸部
226
2-4-16
当院新人言語聴覚士の食形態の予想の比較—結果からみた誤り方の検討—
医療法人 至誠堂 宇都宮病院
【はじめに】超高齢社会を迎えたわが国では摂食嚥下障害
1)食塊形成力・咀嚼力等の評価の基準が曖昧であった。 2)
を有する高齢者の対応が増えている。又、摂食嚥下障害を
評価から食形態を予想するプロセスで舌や口唇の可動域の
みに着目していた。 3)機能評価は正しいものの、障害さ
れているstageの予測が出来ていなかった。 4)食形態予
奨食事形態について、誤嚥の有無だけでなく咀嚼や食塊形
想の際の基準が曖昧であった。 5)
「嚥下食ピラミッド」
や
「嚥
成などの能力により選別されなければならないと述べてい
下調整食学会分類2013」の理解ができていなかった。 6)
る。しかし、知識や経験が乏しいとその選択は適正さに欠
各食形態の粘稠性・硬さ・安定性・離水の程度による違い
く可能性が高い。今回自験例を通し正しい食形態を選択で
等の特徴が理解出来ていなかった。 7)実際に嚥下調整食
きる事を目標として以下の内容を検討した。
を口にする経験が少なく、食感覚等の理解が出来ていなかっ
【方法】当院介護病棟に入院中の経口摂取患者23名を対象
た。
今後は適切な嚥下機能に関する評価とその解釈は当然の
態と比較し、一致率・誤りのパターンの有無・誤った原因等
ことながら、同時に嚥下調整食に限定しない様々な食形態
を抽出した。
を実際に口にする事でその特徴を知る必要性を感じた。更
【結果】演者の予想と実際の食形態を照合すると、重度の
に、評価から得られた情報と食形態の特徴を合致させ当院
嚥下障害者に適する当院嚥下調整食(主食・副食共に嚥下
対象者に適切な食事を提供し楽しく食べて頂く手助けをして
ピラミッドL1からL2に相当)での一致が高かった。
いきたい。
【考察】予想を誤った要因として以下の7点が推察された。
瑞慶覧優子 1)、小林 靖 2)、長尾恭史 1)、田積匡平 1)、堀籠未央 1)、大橋秀美 1)
岡崎市民病院 医療技術局 リハビリテーション室1)、岡崎市民病院 脳神経内科2)
嚥下訓練が開始可能であった人数などを比較検討した。
【結
難な患者が増加し、栄養摂取方法について難渋するという
果】2群間で年齢、男女比、病前移動能力などの背景因子
報告がみられる。当院でも入院患者の嚥下機能評価・訓練
で有意差はなかった。入院時・入院中の肺炎合併は経口群
で言語聴覚士(ST)が介入する件数が年々増加しており、
6名:代替栄養群17名(p<0.05)と経口群で有意に少なかっ
重度嚥下障害患者に遭遇することも多い。今回ST初回介入
た。2週間以内に直接嚥下訓練が開始可能であった人数は
時に嚥下障害重度と評価した患者の帰結を調査・分析した。
【対象・方法】2013年1月〜 4月に当院へ入院した脳血管
経口群12名:代替栄養群4名(p<0.001)と経口群で有意
口頭演題2日目
【背景】近年、高齢化に伴い嚥下障害が重度で経口摂取困
ポスター演題1日目
急性期入院時で嚥下障害重度と評価した患者で退院時に3食経口摂取が
可能となった患者の特徴
口頭演題1日目
に嚥下評価を行い、食形態を予想した。その後実際の食形
2-4-17
特別プログラム
有する高齢者には、誤嚥予防を第一の目的として各々に適
した食形態を提供する必要があると考える。柴田らは、推
日 程
岩下真弓、樋口暁子、平いつき
に多かった。【考察】急性期病院では全身状態悪化により嚥
下機能が低下している患者が多く、不必要な絶食や不適切
ST初回介入時にDSS2以下と評価した患者35名を対象とし
な食事開始などで誤嚥性肺炎を合併するリスクが高い。そ
た。なお、ST開始以前に食事が開始となっていた患者は除
のため、早期から治療と並行して口腔ケア、嚥下訓練など
外した。対象のうち当院退院時に代替栄養が不要であった
の包括的なチームアプローチを実施することが重要である。
14名(80.6±11.4:男8)を経口群、代替栄養が必要であっ
今回の調査から、入院中に肺炎を合併させないことが重要
た21名(84.7±6:男15)を代替栄養群とした。2群間で
であり、また入院時にDSS2以下であっても、入院2週間以
背景因子、在院日数、ST開始までの日数、入院時・入院中
内に直接嚥下訓練を開始できるレベルまで改善することが、
の肺炎合併、経管栄養開始までの日数、2週間以内に直接
3食経口摂取獲得の指標の一つになることが示唆された。
227
ポスター演題2日目
疾患・進行性疾患を除くST指示がでた急性期患者の中で、
2-4-18
嚥下障害早期発見への取り組み〜摂食・嚥下状態に関する質問紙を用いて〜
日 程
中山菜々恵、濱田範子
社会医療法人 孝仁会 留萌セントラルクリニック
【はじめに】当院は高齢化地域にあり、嚥下障害を呈して
【結果】15名中1名に不顕性誤嚥、3名に口腔内食物残渣、
肺炎を発症された場合、加齢により嚥下機能が低下してい
2名に咽頭食物残渣をみとめた。嚥下機能の低下を認めた
特別プログラム
る方が少なくない。加齢による嚥下障害の早期発見を図る
6名のうち3名が食事中や食後に痰が絡む認識があったが、
ツールとして外来診療にて質問紙を用いた取り組みをおこ
むせ込みやのどに食べ物が引っかかるといった咽頭残留感
なっており、そこから必要に応じて医師の指示のもと嚥下造
の自覚症状がなく飲み込みについて医師に相談をしていな
影検査(VF)を実施している。 今回、質問紙の有用性を
検討したので以下に報告する。
い状態であった。
【考察】質問紙は嚥下障害の早期発見の1つのツールとして
【対象と方法】対象は一定期間までに当院を受診した患者の
有用性が示唆された。また、患者自身がどのような症状が
うち1)認知症がある、2)脳血管障害の既往がある、3)70
あれば医師に相談を行うとよいのか意識付けにつながった
歳以上である、4)過去に誤嚥性肺炎の既往がある、5)受診
と思われる。 今回のVFにて嚥下機能の低下を認めた患者
口頭演題1日目
時のBMIが19未満である この中でいずれか1つでも当て
は現在外来リハビリテーションにて摂食・嚥下訓練を開始し
はまる方370名に15問からなる質問紙を用いて摂食・嚥下
ており、引き続き早期の介入により口腔・喉頭機能の改善
機能の問題についてA)よくある、B)ときどき、C)なし の
を図り肺炎発症の予防へつなげることができるか検討して
選択肢で質問をおこなった。A、B項目を選択した方の中で
いきたい。
医師が必要と判断をした15名にVFを実施した。
ポスター演題1日目
2-4-19
嚥下機能評価尺度MMASAとVE評価の関連について
河村幸恵
独立行政法人 国立病院機構 岩国医療センター
口頭演題2日目
【目的】MASAは、脳卒中後の嚥下障害に対する評価であり、
スト段階3、RSST 0回、Gr4、VEではゼリーが可能であった。
Modified版として、MMASAが用いられる(覚醒、従命、
2症例のMMASA下位項目の評価点に対する
呼吸、表出および聴覚的理解、構音、唾液、舌運動と筋力、
到達率(%)は、覚醒(100%)
、呼吸(80%)
、構音(80%)
、
咽頭反射、咳反射、軟口蓋の12項目)
。カットオフ94点だが,
唾液(80%)
、咳反射(20および80%)
、軟口蓋(100 〜
今回カットオフ以下でもVEでは経口が可能であった症例を
60%)の6項目では差が見られなかった。一方、従命、表
経験したので報告する。【方法】頚部に疾患がある2症例に
出および理解、舌動作および舌筋力、咽頭反射の6項目で
おいて、RSST、改訂水飲みテスト、MMASAによるスクリー
は20 〜 60%の差が認められた。嚥下Grと摂食Lv、水分テ
ニング評価と当院耳鼻科外来でVEを実施し(1週間後に再
ストとRSSTにも差がみられた。【結論】頚部疾患の2例にお
ポスター演題2日目
評価)
、摂食・嚥下能力グレード(Gr)と摂食状況レベル(Lv)
いて、水分テスト、RSST、MMASAでは経口不可と思われ
結果を比較した。【対象】症例1;女性(69歳、頚部膿瘍
る場合でも、VEでは経口可能な症例があった。また、嚥下
術後、スピーチカニューレ)
、症例2;男性(83歳、下咽頭
グレードや摂食レベルに関わるMMASAの項目として、表
Car、経鼻胃管あり)の2名。【結果】症例1;MMASA 98
出および聴理解、舌動作と筋力、咽頭反射が影響している
〜 87点、水分テスト段階5、RSST 2 〜 4回、Gr6、VEで
ことが示唆された。
はペーストが可能。症例2;MMASA 82 〜 75点、水分テ
228
2-4-20
大山治朗 1)、久野隆道 2)
小郡弥生訪問看護ステーション1)、白十字病院 総合リハビリテーションセンター 2)
【はじめに】摂食嚥下障害のある在宅生活者の中で、
「して
護者の問題。経過:嚥下機能に配慮した市販品を提案し利
用。老衰により死亡。亡くなる前日まで経口摂取を維持し
るADL」を示す摂食・嚥下能力のグレード(以下、Gr.)の差
た。症例4 70歳代女性 アルツハイマー型認知症 主介
が生じている場合は少なくない。その要因を検討した。【対
護者:夫 Lv.9 Gr.7 摂食嚥下環境:夫の作る常食を一
象】平成23年7月から平成25年12月に訪問言語聴覚療法
部介助にて摂取。Lv.を下げられない要因:高齢、男性とい
を実施した計24例中、Lv.とGr.の差が生じていた4例。【症
う主介護者と金銭面の問題。経過:定期巡回・随時対応サー
例】症例1 80歳代男性 ALS(S56年) 主介護者:妻 ビスを利用、経口摂取継続中。【考察・おわりに】Gr.に比
Lv.9 Gr.7 摂食嚥下環境:常食を自己摂取。Lv.を下げら
しLv.が高い場合、窒息や誤嚥性肺炎、脱水・低栄養のリス
クが高い状態となる。一方、Gr.に比しLv.が低いと本人の
生活の質(QOL)が低下した状態である。どちらも問題であ
性症(H21年) 主介護者:妻 Lv.9 Gr.7 摂食嚥下環境:
るが、言語聴覚士としては前者のリスクは最小限に抑えた
常食を自己摂取。Lv.を下げられない要因:本人希望。 経
い。 症例1.2.は進行性疾患であり本人の強い希望により、
過:誤嚥性肺炎による入院、その後、死亡。症例3 80歳
症例3.4.は老々介護であり、金銭面の問題と、介護者の問
代女性 心不全後廃用症候群 主介護者:妹・息子 Lv.8
題で食形態の調整は困難であった。今回は上記要因がみら
Gr.7 摂食嚥下環境:妹・息子の作る雑炊などを全介助
れたが、今後もデータを重ねていきたい。
で摂取。Lv.を下げられない要因:高齢・男性である主介
種村朝彦 1)、濱本博子 2)、南城 岳 3)、石川あかね 4)、平村敬寛 5)
う徹底した。姿勢や食形態は本人も交え、家族・ケアマネ
と何度も直接やり取りした。徐々に訓練拒否は減少し、間
接的嚥下訓練を追加した。来所時は、それまでベッド上で
過ごしたが耐久性の向上を目的にリクライニング車椅子で
過ごす設定とした。4.最終評価 口腔保持が可能となり、
喉頭挙上範囲も拡大した。ムセ自体は減少し、咳嗽は強化
された。また直接訓練で頸部屈曲姿勢が獲得され、介助で
通所利用時は全粥・常菜、水分トロミ、在宅では軟飯、常
菜摂取とした。5.考察 「普通食を食べさせたい」とご家
族の要望に応えるべくチームで取り組んだ。我々と家族の
間には「食べる」という考え方に乖離があった。嚥下障害
者にとってリスク管理の観点からも食べるとは咽ずに安全に
栄養を摂る事と考えがちであるが在宅の場合、環境的要因
も含めた配慮が必要であり、ご家族を含めたチームの連携
や語義の共有が重要と学んだ。
229
ポスター演題2日目
1.はじめに 増加する老々介護において、在宅で適切な形態
で調理することは難しく、嚥下障害者にとって誤嚥のリスク
が高いことも多い。今回、球麻痺患者で普通食摂取が求め
られた1例の評価・訓練を経験したので若干の考察を加え
報告する。2.症例紹介 A氏70代男性。X−8年脳幹梗塞
発症し、退院後当通所リハビリ4/w利用。X年に外傷性SA
H発症。球麻痺、失調症状、感覚障害などの増悪認め、発
症後2か月で当通所リハビリ再開となった。3.評価・経過
車椅子座位における姿勢保持は20分程度で耐久性も低く、
嚥下反射は認めるが、湿性嗄声やムセが頻回に見られる状
況。家族は普通食の希望が強かったが安全面を考慮し、調
理方法と食事会場の注意点を伝達し、全粥・細刻みあんか
け、水分トロミを介助で開始。訓練は拒否が強く、暴力行
為もあり積極的な介入は困難で、頸部のモビライゼーショ
ン、口腔ケア時の感覚入力、直接訓練を実施。食事姿勢の
設定・介助を看護師に限定し同一の食環境が再現できるよ
口頭演題2日目
社会福祉法人 渓仁会 コミュニティホーム美唄 ケア部 リハビリテーション課 言語聴覚士1)、
社会福祉法人 渓仁会 コミュニティホーム美唄 ケア部 リハビリテーション課 作業療法士2)、
社会福祉法人 渓仁会 コミュニティホーム美唄 ケア部 リハビリテーション課 理学療法士3)、
社会福祉法人 渓仁会 コミュニティホーム美唄 ケア部 リハビリテーション課 看護師4)、
社会福祉法人 渓仁会 コミュニティホーム白石 言語聴覚士5)
ポスター演題1日目
球麻痺による嚥下障害者の形態アップについて
−ご家族から普通食を求められた通所の症例の一考察−
口頭演題1日目
れない要因:本人希望。経過:常食摂取継続も、時間を要
し摂取カロリーは不足。症例2 70歳代男性 脊髄小脳変
特別プログラム
いるADL」を示す摂食状況のレベル(以下、Lv.)と、
「でき
2-4-21
日 程
摂食嚥下障害のある在宅生活者の摂食状況のレベルと摂食・嚥下能力の
グレードの差に関して
2-4-22
慢性期症例に対し舌接触補助床を使用した訓練経過について
日 程
今村瑞妃
さとみ歯科医院
特別プログラム
【はじめに】当院は訪問歯科と共に言語聴覚士によるリハビ
訓練を開始した。PAPの効果を確認するためVFを施行した。
リテーションを行っている。今回、慢性期症例に対し舌接触
PAPを装着しゼリーにて検査を行った結果、開始時の口腔
補助床(以下PAP)を使用した結果、嚥下機能が改善した
通過時間が8.92秒から3 ヶ月後には4.48秒へ、咽頭通過時
一例を経験したので報告する。【症例】80代女性。脳出血
間は14.54秒から6.33秒へ短縮した。なお3 ヶ月後の義歯
発症後、経口摂取困難となり胃瘻を増設し、嚥下訓練を目
装着時の口腔通過時間は11.99秒、咽頭通過時間は10.31
的に当院を依頼された。 要介護度4、ADLはほぼ全介助。
秒であった。段階的に食事形態の調整を行った結果、お粥、
家族はリハビリに対し協力的であった。【初期評価】意思疎
ソフト食の経口摂取が可能となった。【まとめ】慢性期症
通は可能。発話明瞭度3。胃瘻のみで栄養管理を行ってお
例に対しPAPを使用した嚥下訓練を行った結果、摂食状況
り摂食状況Lv.2。MWST:3b。RSST:1回。【経過】1週
Lv.2からLv.5へと向上した。また、通常の義歯よりPAPを
間に1日の頻度で訪問歯科とSTのリハビリを実施した。第1
装着した方が口腔通過時間及び咽頭通過時間が短縮した。
口頭演題1日目
期:口腔ケアと間接訓練を中心にリハビリを行った。第2期:
PAPにより食塊の移送が補助されることで通過時間が短縮
経口摂取を目的に義歯とPAPを製作した。完成後、義歯の
したと考えられる。患者の状態をみながら段階的なアプロー
装着に対する抵抗がみられ、流涎も増加したため義歯を1日
チを行い、主治医、歯科医師、ST、病院、施設のスタッフ、
30分装着する練習から開始した。第3期:義歯の装着に慣
家族等が連携し情報を共有することでより効果的な支援が
れ、流涎も減少したため嚥下訓練用のPAPを装着した直接
提供できると考える。
ポスター演題1日目
2-4-23
会議に出席しプレゼンテーションが可能となった軽度失語症者の経過
桑野 瞳、高野麻美
医療法人社団 輝生会 船橋市立リハビリテーション病院
口頭演題2日目
【はじめに】復職当初、失語症などにより仕事内容に制限に
第2期:本人から「音読ができれば仕事で発表できるかもし
あったが、会議へ出席しプレゼンテーションが可能となった
れない」と前向きな発言が聞かれ、音読訓練に意欲的に取
症例を経験したので報告する。
り組むようになった。しかし、実際の訓練場面では錯読に気
【症例】40歳代男性。左被殻出血発症後、8病日で当院へ
付くことは難しく、指摘に対し怒ってしまう様子がみられた。
入院。訓練の必要性の理解が難しく、約3 ヶ月で自宅退院。
そこで、誤りやすい部分に気付きやすいよう、毎回同じ教
21 ヶ月の外来訓練を経て、発症24 ヶ月で復職した。
材を用い錯読部分にマーキングし視覚的に提示した。その
【神経学的所見】右片麻痺(Br.stage 上肢III‐4、手指III 〜
結果、錯読に気付き、自己修正が可能となった。
IV、下肢IV‐1)
第3期:仕事での不安や工夫方法など現実的な発言が聞か
ポスター演題2日目
【神経心理学的所見】失語症(軽度流暢性、SLTA評価点
れるようになった。仕事場面で発言前に自身の言語症状に
9/10点)、高次脳機能障害(注意障害、病識低下)
ついて断りを入れるなどの対応が可能となり、会議でのプ
【経過】
レゼンテーションが成功した。
第1期:仕事内容は自分のペースで行える事に限定されてお
【考察】誤りを視覚的に示すことで錯語への認識が高まり、
り、
「仕事は何も問題ない」などの発言が多かったため、状
自身の発話状態に注意を向けながら話すことができるよう
況を確認しながら訓練を実施した。仕事内容の話題では口
になったことで、誤りに気付き自己修正が可能となったと考
を濁す場面が多かったが、徐々に出来なかった事の伝達が
える。さらに、言語症状への理解が深まったことで周囲へ
あるなど、具体的な発言が増えた。
説明するなど職場環境の調整につながったと考える。
230
2-4-24
専門機関との連携により職業復帰に至った軽度失語症の一例
吉備高原医療リハビリテーションセンター 中央リハビリテーション部1)、
吉備高原医療リハビリテーションセンター 地域連携室2)、
吉備高原医療リハビリテーションセンター リハビリテーション科3)
【はじめに】当センターは、隣接する国立吉備高原職業リハ
得や職リハでのコミュニケーション方法の提案、指導を行っ
た。職リハでは、まず職業復帰の動機づけや予備評価とし
リハビリテーション(以下リハビリ)医療から職業リハビリ
てパソコンの基礎訓練を実施。その後、休職者に対して従
まで一貫して行うことができる。今回、失語症者に対して職
事可能な職務を模索し、その職務内容に関する技能の習得
リハとの連携により職業復帰に至った症例を経験したので報
を目指す、職業リハビリ(在職者訓練)を行った。月に数回、
告する。
職リハと訓練状況を話し合い、問題点など情報共有を行っ
【症例】50代、男性、右利き、営業職。左被殻出血を発症後、
院中に職場と調整後、さらなるリハビリ医療と職業訓練のた
スを行い、配置転換し元職場復帰となった。
【考察】今回、相談を受けた当センターが、職リハと職場と
の調整を行い、在職者訓練を実施した後、職業復帰が可能
【神経学的所見】右片麻痺。
となった。その理由としては、
(1)早期から職業リハビリの
【神経心理学的所見】軽度失語、注意機能の低下。
アプローチが開始されたこと、
(2)職リハの在職者訓練と
【経過】入院時のADLは、概ね自立。STでは、喚語困難や
いう制度の利用が可能であったこと、
(3)本症例の職場の
書字困難などを認め、元職場復帰には失語症が主な問題と
受け入れが良好であったこと、
(4)リハビリ医療と職業リハ
なっていた。 そのため、STは通常の機能訓練に加え、職
ビリが専門性を発揮した訓練が可能であったことが考えられ
業復帰後に必要と考えられるコミュニケーションスキルの獲
た。今後もこのような取り組みを継続していきたい。
会話ノートの使用による失語症者の表出内容の変化 −「コミュニケーションの意図の種類」の分析−
中根佑未子 1)、中村太一 1)、外山 稔 2)、足立さつき 3)、渡邊亜紀 1)、森 淳一 1)、佐藤浩二 4)、
森 照明 4)
231
ポスター演題2日目
報・考えの発信」
「コミュニケーション困難の表出」
「肯定・
【はじめに】第4回日本言語聴覚士協会九州地区学術集会
中立的返信」
「情報・考えの要求の発信」
「伝達内容の同意
(2014)にて、話し手と聞き手の双方が会話ノートを使用
要求・確認の発信」
「感情の表出」の6種類が確認された。「コ
した場合の失語症者の表出様式の変化を報告した。今回は、
ミュニケーション困難の表出」は、双方がノートを使用しな
失語症者の「コミュニケーションの意図の種類」の観点から
かった場合は5 〜 10回、双方もしくは対象のみがノートを
分析し、会話ノートの使用による失語症者の表出内容の変
使用した場合は0 〜 2回であった。双方がノートを使用した
化を明らかにした。
「情報・考えの要求の発信」
「伝達内容の同意要求・
【方法】対象1:90歳代、女性、運動性失語、失語指数(AQ) 場合に限り
確認の発信」等、自発的に情報を求める項目がみられた。
48.9。 対 象2:70歳 代、 男 性、 感 覚 性 失 語、AQ46.0。
【考察】失語症者の会話ノートの使用は、先行研究と同じく
対象3:70歳代、男性、運動性失語、AQ24.9。対象3名
と言語聴覚士
(ST)
の氏名、出身地等を記載したノートを各々 「コミュニケーション困難の表出」を減少させた。一方、話
し手と聞き手の双方がノートを使用した場合は、失語症者
作成し、互いの自己紹介場面を5分間撮影した。撮影は、
ノー
の単独使用時に比し、相手に情報を求める項目がみられる
トを使用しなかった場合、対象のみがノートを使用した場合、
ことが明らかになった。双方のノートの使用は、方法のモデ
対象とSTの双方がノートを使用した場合の計3パターンをラ
リングや交換情報量の増加に加え、失語症者による主体的
ンダムに行った。対象の反応は「コミュニケーションの意図
な使用にも寄与できると思われた。
の種類(鹿島ら2008)
」を参考に分類、集計、比較した。
【結果】
「コミュニケーションの意図の種類」13分類の内、
「情
口頭演題2日目
社会医療法人 敬和会 大分東部病院 リハビリテーション部1)、京都学園大学 健康医療学部 言語聴覚学科2)、
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科3)、社会医療法人 敬和会 大分東部病院4)
ポスター演題1日目
2-4-25
口頭演題1日目
め7カ月後に当センター入院となった。
た。入院2カ月後には、職リハ担当者を含めたカンファレン
特別プログラム
ビリテーションセンター(以下職リハ)と連携を図りながら、
A病院にて急性期治療およびリハビリ医療を行った。前医入
日 程
村上達郎 1)、沼本晋平 2)、高橋雄平 1)、古澤一成 3)
2-5-01
日 程
レーヴン色彩マトリックス検査(RCPM)の数学的解釈 〜「RCPMレベル表」の考案とその活用〜
浅沼 誠 1,3)、根岸和希 3)、樫原みき 2,3)
医療法人美湖会 美浦中央病院1)、医療法人孟仁会 摂南総合病院 リハビリテーション科2)、
言語聴覚療法統計研究会3)
特別プログラム
口頭演題1日目
【はじめに】レーヴン色彩マトリックス検査(以下、RCPM) Lv.4:6≦A、6≦AB、B<6でかつ総得点24点以下
は視覚を介した推理能力を測定する検査である。ところで、 Lv.5:6≦A、AB<6、B<6
従来、RCPMは総得点が結果解釈の主な焦点であったよう Lv.6:A<6、AB<6、B<6
に思われる。今回、我々は総得点と各セットの課題遂行状 ※A=セットAの得点、AB=セットABの得点、B=セットBの
況の両方を考慮できる「RCPMレベル表」を考案した。そ 得点。
、Lv.2は 約3.4 %(1名 )
、
して下記の対象者群に同表を適用し、総得点と各セットの 【 結 果 】Lv.1は 約27.4 %(8名 )
Lv.3は約24.1%(7名)
、Lv.4は約6.9%(2名)
、Lv.5は約
課題遂行状況の実態把握を試みたので報告する。
、Lv.6は0%(0名)
、区分不可は約3.4%(1
【方法】対象は、協力の得られた介護老人保健施設入所・ 34.5%(10名)
通 所 者29名( 男 性12名・女 性17名、86.1±7.2歳 )
。 全 名)であった。
対象者にRCPMを施行し、下記のレベル表を適用した。尚、 【考察】今回の対象者群においては、1.セットBに問題あり
検定は2項検定(片側検定)
、有意水準は5%(ただし、補正)
、 だが25点以上、2.24点以下だがすべてのセットで偶然とは
手引における「24点以下の者を知能の低下が認められる者 言えない得点、3.24点以下だが特定のセットまでは偶然と
は言えない得点、4.下位のセットに問題ありだが上位のセッ
として捉えてよい」という記載は既知の前提とした。
トで偶然とは言えない得点、という様々な課題遂行状況が
RCPMレベル表(Bonferroni補正済)
確認された。結果解釈においては、総得点のみでなく各セッ
Lv.1:6≦A、6≦AB、6≦Bでかつ総得点25点以上
トの課題遂行状況も考慮する必要性が示唆された。また、
Lv.2:6≦A、6≦AB、B<6でかつ総得点25点以上
本手法はそのための手段の1つと考えられた。
Lv.3:6≦A、6≦AB、6≦Bでかつ総得点24点以下
ポスター演題1日目
2-5-02
iNPH の tap test における高次脳機能評価の検討
‐やる気スコアを用いて‐
川崎未来 1)、黒川清博 1)、池内英里菜 1)、森田 伸 1)、竹内茂伸 2)、岡田真樹 3)、加地良雄 1)、
山本哲司 1)
口頭演題2日目
香川大学 医学部 附属病院 リハビリテーション部1)、錦海リハビリテーション病院2)、
香川大学医学部 脳神経外科3)
ポスター演題2日目
【はじめに】特発性正常圧水頭症(以下、iNPH )とは歩行障
害・認知障害・尿失禁を三徴候とし、先行疾患を持たない
水頭症である。髄液排除試験(以下、tap test )は髄液シャ
ント術の治療効果を予測する方法であり歩行および認知機
能の改善度で評価されている。近年 iNPH の前頭葉機能
障害に伴う apathy の関与が着目されている。当院では、
認知機能評価として特発性正常圧水頭症診療ガイドライン
で推奨されている MMSE や FAB に加え apathy を評価
する「やる気スコア」(以下、AS )による評価を行っておりそ
の有用性を検討した。
【対象と方法】2007年12月から2014年12月までに当院脳
神経外科を受診し、tap test を行った possible iNPH 14
例(男6例、女8例、平均年齢72.1±6.6歳)を対象とした。
Tap test 前、tap test 後1日目及び7日目において機能評
価を行った。歩行機能評価として timed up & go test (以
下、TUG ) の他、MMSE , FAB 及び AS による認知機能
評価を行い tap test 前後の変化を統計学的手法にて検討
した。
【結果】TUG では40.0±62秒から tap test 7日目で37.3
±61秒(p=0.041)と改善を認めた。MMSE では21.6±
6.0点から1日目に23.1±4.5点(p=0.045)と改善を認めた。
FAB では差を認めなかったが、AS は19.1±4.4点から7日
目で15.4±6.6点(p=0.039)と改善を認めた。
【 考 察 】tap test 前 後における認 知 機 能 評 価にお い て
MMSE に加えて AS の改善を認めた。 iNPH では前部帯
状回の脳血流低下が報告されており前頭葉機能障害の一つ
として自発性・意欲の低下が認められる可能性がある。今
回の検討では FAB で明らかな変化を認めなかったが、AS
は前頭葉機能障害における自発性や意欲低下を尺度評価し
たものであり、tap test の判断指標の1つになる可能性が
あると考えられた。
232
2-5-03
注意障害行動評価尺度日本語版Ponsford Scaleの有効活用に関して
八潮中央総合病院 リハビリテーション科1)、筑波大学大学院 人間総合科学研究科2)、柏厚生総合病院3)
率相関係数を用いて分析した。なお、統計解析にはSPSS
する行動評価尺度として日本語版Ponsford Scaleが、しば
Statistics21(IBM)を用い、有意水準を5%と設定した。
しば用いられている。しかし、原版・日本語版ともに十分な
【結果】再検査信頼性はOT・STともにICC>0.90となり、
検者間信頼性が得られておらず、また、使用する環境につ
高い信頼性が得られた。検者間信頼性もICC>0.75以上と、
いては、急性期や回復期など様々な場面で使用されている。
高い信頼性が得られた。基準関連妥当性に関しては、原版・
本研究では、日本語版Ponsford Scaleをより有効に活用す
日本語版同様いくつかの机上検査との相関を認めた。【考
ることを目的として、信頼性と妥当性を再検証した。【方法】
察】今回、日本語版Ponsford Scaleの再検証については、
A病院及びB病院の回復期リハビリテーション病棟に入院し
高い信頼性とある程度の妥当性が得られた。特に検者間信
ている脳血管障害患者45名に対し、OTとSTがそれぞれ日
頼性については原版・日本語版よりも高かった。この結果は、
本語版Ponsford Scaleを2回ずつ行い、検者内信頼性(再
リハビリテーション環境の差異や検者側の一貫した評価、対
象患者を意識障害のない回復期患者と設定したことが要因
であると考えられる。そのため、このスケールをより有効に
α係数を用いた。基準関連妥当性は、注意障害の机上評価
使用するには、患者設定や評価基準の一貫性確保を図るこ
と日本語版Ponsford Scale得点との相関を、ピアソンの積
とが望ましい。
無症候性頚動脈狭窄症における軽度認知機能障害の検出方法
高岩亜輝子、桑山直也、秋岡直樹、柏崎大奈、遠藤俊郎、黒田 敏
富山大学 脳神経外科
そこで、WAIS-R2下位検査とJART を結晶性知能の検査と
の有無を個別に的確かつ客観的に判断するために、個人
して、RBANSを流動性知能の検査とした。つぎに個人の成
の成績を結晶性知能と流動性知能に分けて査定し検討した。
績をディスクレパンシー分析するために、WAIS-R2下位検
【方法】無症候性頚動脈狭窄症と診断された103例を対象
査とRBANSおよび、JARTとRBANSにおける検査間の差得
とした。年齢は平均71.0±6.2歳、教育年数は平均10.6±
点をマニュアルに示された信頼性係数または測定標準誤差
2.4年であった。 利き手は右利き98例、左利き5例であっ
値から5%水準値を計算し、その値を超えたものを低下と判
定した。RBANSの低下領域数を検討した結果、5領域およ
左狭窄36例、両側狭窄21例であった。 認知機能検査は
び総指標がすべて
「低下なし」
の症例は8例(7.8% )しかなく、
WAIS-R2下位検査(項目:知識、絵画完成)とJART(100題)、
95例は何らかの低下を示した。【まとめ】今回、結晶性知
RBANS(領域:即時記憶、視空間構成、言語、注意、遅延
能検査としてWAIS-R2下位検査とJARTを、流動性知能検
記憶、総指標)を用い、マニュアルに従い個人の成績を出し
査としてRBANSを用いた。2つの検査の差得点を分析する
た。【解析と結果】健常平均100と無症候性頚動脈狭窄症
ことで、無症候性頚動脈狭窄症における軽度認知機能障害
群の平均値の比較はz検定を用いた。 結果、WAIS-R2下
を症例ごとに検出した。無症候性頚動脈狭窄症は多くの症
位検査とJARTは有意差がなかったが、RBANSではすべて
例で認知機能の低下が存在した。
の領域で無症候性頚動脈狭窄症群は有意な低下を認めた。
233
ポスター演題2日目
た。 狭 窄 率はNASCET 60 % 以 上であり、 右 狭 窄46例、
口頭演題2日目
【目的】無症候性頚動脈狭窄症における軽度認知機能障害
ポスター演題1日目
2-5-04
口頭演題1日目
検査信頼性)及び検者間信頼性、内部一貫性について検証
した。統計処理は、級内相関係数(ICC)とクロンバックの
特別プログラム
【目的】現在、我が国の臨床場面において、注意障害に対
日 程
山本裕泰 1,2)、吉野眞理子 2)、猪股雄太 1)、榎本 唯 1)、菊地明周 3)、宮本 広 1)
2-5-05
植込み型補助人工心臓患者への高次脳機能評価の取り組み
日 程
伊藤純平 1)、矢内敬子 1)、池田美樹 1)、高橋秀寿 2)、内田龍制 3)、牧田 茂 3)
埼玉医科大学 国際医療センター リハビリテーションセンター 1)、
埼玉医科大学 国際医療センター 運動器・呼吸器リハビリテーション科2)、
埼玉医科大学 国際医療センター 心臓リハビリテーション科3)
【はじめに】近年、STの職域は広がりをみせ、多様化して
【結果】7名中3例に言語性記憶、視覚性記憶、注意機能
特別プログラム
いる。その中で当院心臓リハビリテーション科には言語聴覚
などに低下を認めた。【考察】植込み型LVADは自宅退院
士(ST)が配属されており、循環器疾患患者への介入を日
を想定した治療であるが、精密機器であるため多面的に自
常的に行っている。特にこの数年は重症心不全患者に対す
己管理が必須といえる。自己管理を完遂するには正常な高
る治療として行われる植込み型補助人工心臓(LVAD)が
次脳機能が必要であると考えるが、今回の結果のように低
保険適応となり、これまでにはない対応が求められるように
下項目があると、LVAD管理そのものに難渋する可能性が
なった。心不全患者は高次脳機能に低下を認めるとの先行
出てくることが容易に想像でき、さらに自宅退院が治療の
口頭演題1日目
報告があるにも関わらず評価や訓練を行ったとの報告は非
一環であるにも関わらずそれが実現不能となってしまう。そ
常に少なく、その対応を重点的に行っている。【目的】植込
れらを予防するため高次脳機能低下が存在する患者には高
み型LVAD患者の高次脳機能評価を行った経験を報告する。
次脳機能評価や訓練が行えるSTの介入が必要であり、また、
【対象、方法】男性3名、女性4名。年齢は16歳から56歳。
評価した情報を他職種に提供することが大切である。STに
評価は植込み直前または植込み後一か月程度までの時期に
はLVADを含めた循環器分野に精通する必要があり、知識
実施。脳病変は電子カルテより後方視的に調査。高次脳機
や対応可能な技術を身につけることは今後の臨床を行うう
能評価項目としてMMSE、WAIS-3、WMS-Rなどを選定。
えで重要である。
ポスター演題1日目
2-5-06
総合病院におけるもの忘れ外来の現状と動向‐言語聴覚士に出来ること‐
村田和人 1)、前田順子 1)、廣島真柄 1)、齋藤隆之 1)、岩本康之介 2)、清塚鉄人 2)
国家公務員共済組合連合会 三宿病院 診療部 リハビリテーション科1)、
国家公務員共済組合連合会 三宿病院 診療部 神経内科2)
口頭演題2日目
【目的】当院では2014年8月から、もの忘れ外来での認知
予測・治療プランを検討した。
機能検査実施に言語聴覚士が介入し、神経内科医と共に認
【 結 果 】 原 因 疾 患としてアルツハイマ ー 型 認 知 症18例
知症診療を実施している。当院もの忘れ外来の現状と動向、
(39.1% )、MCI9例(19.6% )、レビ ー 小 体 型 認 知 症3例
また言語聴覚士が評価・訓練を実施し、どのように診療に
(6.5% )、前頭側頭型認知症1例(2.1% )、混合型認知症2
携わることが出来るか、これまでの診察内容を後方視的に
例(4.3% )、仮性認知症4例(8.7% )、認知症の病型判断
分析したので報告する。
困難9例(19.6% )であった。 情報収集では在宅生活にて
【方法】2014年8月1日〜 2014年11月30日までの4 ヶ月
BPSDが問題となっており、無気力が多く、幻覚や興奮など
ポスター演題2日目
間に言語聴覚士が介入した、もの忘れを主訴とした患者46
が認められた。リハビリテーションの実施についてはノート
例(男性21例、女性25例、平均年齢81.5歳)を対象と
やカレンダーなどへ予定の記述を促す代償・補助手段の獲
し、問診による症状経過などの情報収集、言語・コミュニ
得、家族指導では選択肢を呈示し再認を促すといった指導
ケーション機能の評価、認知機能検査、リハビリテーション、
が多かった。
家族指導内容を分析した。認知機能検査として、MMSE、 【結論】問診に加え、各検査を詳細に評価することで在宅生
FAB、三宅式記銘力検査、Rey-Osterriethの複雑図形検
活での問題の分析が可能であった。今後の課題として、充
査、RBMT、ADAS-Jcog.、MoCA-J、OSIT-Jなどから必
実したリハビリテーションの提供、家族指導に際しては認知
要な検査を選択して実施した。検査結果から残存機能に合
機能のみならず、問題となる周辺症状(BPSD)等の把握が
わせたリハビリテーション・家族指導を行い、主治医へ評価
必要であり、症例の蓄積が必要と考えられた。
結果、考察内容を報告し、画像所見と合わせて診断・予後
234
2-5-07
市川 勝 1,2)、佐藤 隼 1)、井戸和宏 2)
医療法人社団哺育会 さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科1)、
特定非営利活動法人Link・マネジメント2)
【はじめに】神奈川県相模原市では、2025年に高齢化率
日 程
「認知症になっても安心して暮らせる街づくり」における言語聴覚士の役
割 第2報〜相模原市における認知症カフェ普及に向けた取り組みから〜
て認知症当事者13名、地域住民47名、専門職62名の計
122名の参加を得た。また、来場者アンケートでは「とて
れている。我々は、認知症施策推進総合戦略(厚生労働省
も満足」
「満足」の回答が63%であり、74%が認知症に対
2015)に含まれる7つの柱のうち「認知症の人の介護者へ
する不安を抱いていた。一方、専門職への期待として「中
の支援」の観点から、市内における認知症カフェの普及に
核症状に起因する生活機能障害への評価と助言」
「コミュニ
向けた取り組みを行ったので、その経緯を報告するとともに
ケーション面での評価・支援」
「地域資源のコーディネート」
言語聴覚士(ST)の役割について考察を加える。
などが挙げられた。 現在、新たに市内2つの認知症カフェ
【認知症カフェの普及に向けた取り組み】認知症カフェとは、
認知症当事者やその家族、地域住民や専門職の誰もが参
特別プログラム
27.4%、認知症有病者数約4万人に達するとの推計がなさ
の開設および運営支援に携わり、更なる普及に努めている
ところである。
【考察・まとめ】認知症高齢者が地域で安心して暮らし続け
るために、様々な情報や当事者の思いを地域に伝えていく
機関や地域住民とのネットワークを基盤に「相模原市におけ
ことも広義のコミュニケーション環境の整備に含まれるもの
る認知症カフェのあり方検討委員会」を立ち上げ、全3回
と解釈すれば、STが認知症カフェのような様々な啓発活動
の会議を経て地域ニーズに合ったコンセプトを報告書にまと
や地域社会資源のネットワーク化など、自助や互助の領域
めた。また、このコンセプトに基づき「認知症カフェイベン
で専門性を発揮していくことも有意義であると考えられた。
口頭演題1日目
加でき、集う場である。我々は認知症サポーターネットワー
クさがみはらの設立(市川ら 2014)に際し構築した関連
トinさがみはら」を開催した。 その結果、一般来場者とし
回復期病棟入院中に妄想的な発話が止まらなくなった一例
近藤晴彦 1)、森田秋子 2)、金井 香 3)
慈誠会 練馬駅リハビリテーション病院1)、鵜飼リハビリテーション病院2)、伊勢崎福島病院3)
た。また簡単な計算課題時に「自分の意思ではなく手が勝
原因が見いだせないが認知機能の低下を呈す症例を経験す
手に解いている様だ」などと話す身体的自己認識の異常や
ることがある。今回脳梗塞発症後3 ヶ月頃より認知機能の
50年以上前の出来事を話す際に「この間」
「ここ」などと
低下、特異なコミュニケーションの異常を呈した症例を経験
話すエピソード記憶の操作障害を認めた。徘徊や暴力行為
したので報告する。【症例】83歳 女性 右利き 独居【現
は認めず、幻視や人物誤認、カプグラ症候群症状も認めな
病歴】X日22時頃動けなくなり翌朝民生委員が訪問し救急
かった。同時期の画像上新たな脳血管病変は認めず、全身
搬送、脳梗塞の診断にて保存的加療。X+21日リハ目的に
状態の低下も認めなかった。【考察】近年注意や記憶など
て当院転院。【画像所見】MRIにて右橋被蓋部に梗塞巣、
の認知機能とデフォルトモードネットワーク(以下DMN)など
の脳構造との関係が注目され、アルツハイマー病では早期
所見】極軽度の左片麻痺、同運動失調【神経心理学的所見】
からDMNにおける脱賦活が起こり様々な認知症状の背景と
MMSE26/30 RCPM20/36 CBA21/30【経過】当院
なりうることが指摘されている。本例に生じた妄想的な発言、
転院後順調に経過するもX+3 ヶ月頃より認知機能の低下を
発話の転導性・衝動性の亢進、身体的自己意識の異常、エ
認 め(MMSE19/30 RCPM13/30 CBA7/30)
「 取り
ピソード記憶の操作障害などのコミュニケーションの異常に
立てが来る」
「お前は悪い人間だと警告をうけている」など
は、DMNの脱賦活が関連している可能性があり、早期の
の妄想的な発言や発話が急転換する、聞き手がいなくなっ
認知症状に起因する異常であったと考えられた。
ても話し続けるなどの発話の転導性・衝動性の亢進を認め
235
ポスター演題2日目
大脳皮質下白質に陳旧性ラクナ梗塞を認めた。【神経学的
口頭演題2日目
【はじめに】回復期リハ病棟入院中の高齢患者では明らかな
ポスター演題1日目
2-5-08
2-5-09
左頭頂葉の微小梗塞発症後にGerstmann症候群の4徴候を呈した一例
日 程
大畑友鈴奈 1)、渡邉千春 1)、三宅裕子 1,3)、川本未知 2)
神戸市立医療センター中央市民病院 リハビリテーション技術部1)、
神戸市立医療センター中央市民病院 神経内科2)、地域活動支援センター すももクラブ3)
【はじめに】Gerstmann症候群は、手指失認を中核に左右
みられなかった。聴覚的理解は保たれていたが軽度把持力
失認、失算、失書の4徴候を併せ持つと定義されており、
低下を認めた。発話は流暢、呼称良好、語列挙も保たれて
特別プログラム
角回、縁上回付近の病変で生じるとされるが、意識障害や
いた。文字理解は良好。書字では漢字、仮名共に想起可能
失語症、観念運動失行を伴うことが多く、純粋例の報告は
も文字形態の歪みを認めた。計算は、数の概念は保たれて
極めて少ない。今回、既往に左前頭葉梗塞があり、同部位
おり簡単な加減算や九九は可能も、2桁以上になると加減
及び左頭頂葉を中心とする脳梗塞後にGerstmann症候群
乗除で演算の方法が分からなくなるなどの困難さを認めた。
を呈した症例を経験したので若干の考察を加え、報告する。
手指は第2、3、4指の理解に混乱を認めた。左右は自己身
【症例】83歳、男性。 右利き。 右上下肢不全麻痺、失語
体、他者身体共に誤りを認めた。左右手指以外のカテゴリー
を主訴に当院緊急入院。第3病日には麻痺や失語は消失。
では単語の理解、呼称共に低下は認めなかった。図形模写、
口頭演題1日目
第4病日より、残存する高次脳機能障害について精査を実
写字において構成障害を認めた。他の失行、失認は認めな
施。頭部MRIにて左前頭葉に陳旧性梗塞、同部位及び左中
かった。【考察】本例は左中心後回、上頭頂小葉、下頭頂
心後回、上頭頂小葉、下頭頂小葉の境界部位に新規の散在
小葉の境界部位に限局する脳梗塞発症後にGerstmann症
性小梗塞を認めた。【神経心理学的所見】MMSE:26/30、
候群を認めた。意識障害、失語症、観念運動失行を伴わな
HDS-R:21/30、RCPM:23/36、 仮 名 拾 い 検 査:20/2分、
い純粋例であること、従来の報告例よりも前方部の小病変
三宅式記銘力検査:有関連6-7-8無関連0-0-2といずれも年
で生じた点において貴重な症例であると考えられた。
齢平均値以内であった。4年前の入院時と比べても低下は
ポスター演題1日目
2-5-10
肢節運動失行と考えられる左上肢の拙劣症状を呈した一例
下地康雄 1)、川村実佳 1)、平田佳寛 2)、前島伸一郎 3)
鈴鹿中央総合病院 リハビリテーション科1)、鈴鹿中央総合病院 神経内科2)、
藤田保健衛生大学 医学部 リハビリテーション医学II講座3)
口頭演題2日目
【はじめに】肢節運動失行と考えられる左上肢の拙劣症状
23/30点、RCPM:21/36点、構成障害(±):透視立方体、
を呈した症例を経験したので訓練経過をまじえて報告する。
五角形模写可能だが手指構成低下。BIT行動性無視検査(通
【症例】80歳、男性、無職、右利き【主訴】左手が動き
常 検 査)140/146点、WAIS-III:言 語 性IQ:94、 動 作 性
にくい【既往歴】10年来の高血圧と肝機能障害で内服中【現
IQ:83、全検査IQ:88。標準高次動作性検査(SPTA):上
病歴】X年X月X日深夜、左上下肢を動かせず当院へ搬送。
肢(片手)慣習的動作〔敬礼、じゃんけん、おいでおいで〕は、
ポスター演題2日目
アテローム血栓性脳梗塞の診断で入院。頭部MRIでは、右
左手で拙劣。上肢・物品を使う動作においても、左は拙劣
中心後回に高信号域、脳萎縮及び基底核、小脳に陳旧性
でぎこちなかった。日常生活ではコップや椀をしばしば落と
小出血を認めた。【神経学的所見】意識清明、左中枢性顔
すこと、手袋をはめる動作において、正しい位置に指を入
面麻痺、左顔面を含む左半身の感覚低下、左不全麻痺(左
れることが困難であった。口腔顔面失行(−)【経過】物品
上肢MMT3、左下肢MMT4+)BRS(左)/上肢:V、手指:V、
使用時の手指動作をビデオで撮影し本人に提示した後、正
下肢:V。ADLほぼ自立。 歩行は点滴棒使用にて可能。 握
しい行動を言語化した。手袋は装着時間が短縮された。2ヵ
力:右23.5kg、左18.1kg、軽度構音障害あり、表在感覚:
月後、左の手袋はめやコップでの飲水動作が可能となった。
左手指 異常感覚・感覚鈍麻、左手掌〜前腕部で感覚過
【考察】本症例は、物品と手指の対応を確認しながら修正
敏、痛覚過敏。振動覚:左手指鈍麻。2点識別覚:右左とも
する様子が見られたことから視覚的フィードバックが有効な
鈍麻。関節覚:左手指鈍麻。【神経心理学的所見】MMSE:
肢節運動失行と考えた。
236
2-5-11
摂食嚥下訓練を通して高次脳機能障害へのアプローチを試みた一症例
日本大学 医学部附属板橋病院 リハビリテーション科
【はじめに】半側空間無視をはじめとする高次脳機能障害を
より右を向き、スプーンを手探りするが持てない、食物の
呈した症例に対し、摂食嚥下訓練を通して高次脳機能障害
ないところですくい空のスプーンを口へ運ぶ様子が観察さ
れた。摂食動作の練習、トレー上の食器の数の確認、食器
75歳、男性。他院入院中に右中大脳動脈から後大脳動脈
に手を伸ばす練習を加え行った。トレーの左端にはマーキ
領域の脳梗塞を発症。当院へ転院後、第4病日に外減圧術
ングをした。在院中に食事動作の自立には至らなかったが、
施行。第21病日にリハビリテーション目的で転院。第65病
食事開始より15 〜 20分程度は食事動作が継続し、6割程
日に頭蓋形成術目的で当院へ再入院、第69病日に頭蓋形
度は自己摂取ができるようになった。【考察】本症例は完全
成術施行。【神経学的所見】左片麻痺、嚥下障害【神経心
経管栄養だったが食に対する意欲が高く、予定入院期間が
理学的所見】MMSE:9/30。BIT:実施困難。半側空間無視、
2週間だったため、可及的早期に経口摂取を開始し、実際
の食事場面で半側空間無視をはじめとする高次脳機能障害
運動維持困難を認めた。【経過】本症例の右側より声を掛
にアプローチすることが本症例のQOL・ADLの向上に結び
け、見当識の確認、身体部位のポインティング等を行った。
付くのではないかと考え上記のような介入を行った。動作
基礎訓練、摂食訓練を行う間も正中を向くように言語的手
誘導、言語的・視覚的手掛かりを与えながら、ADLの向上
掛かりを与えた。坐位姿勢での経口摂取が可能と判断した
に結びつくような運動を繰り返し行ったアプローチは本症例
第75病日より、食事の自己摂取を開始した。視線はトレー
に有効だったと考えられた。
非典型的な経過で福祉利用に至った交通事故後高次脳機能障がいの一例
小泉八千穂、細田真紀
大阪府立障がい者自立センター 自立支援課
【はじめに】福祉施設である当センターには、急性期病院か
ポスター演題1日目
2-5-12
口頭演題1日目
注意障害、見当識障害、構成障害、病態失認、身体失認、
特別プログラム
に対するアプローチを行ったので経過を報告する。【症例】
日 程
萩原典子
鈎に活動低下を認めた。
利用に至る経過がこのような典型例ではなく入所後の支援
て耐久性低下が顕著。検査にも疲労が強くごく短時間ずつ
にも難渋した、交通事故後に多彩な高次脳機能障がいを呈
施行。発語失行、感情コントロールの障がい、記憶障がい、
した症例を経験したので報告する。
注意障がい、聴覚・嗅覚過敏、身体機能面では左上下肢軽
【症例】30代男性。バイク走行中自動車との事故で受傷。
度麻痺、右上肢巧緻運動低下を認めた。発語失行は重度で
A病院に救急搬送されたが頭部CT上異常を認めず、顔面の
口頭での意思表出困難。てんかん発作が疑われる症状の訴
創部縫合処置のみで退院。抜糸のため訪れたB整形外科に
えもあるが入所時には未対応であった。
【介入】STは週1回。発語失行や記憶障がいに対する訓練・
院脳外科受診、月2回の診察とリハビリを約3ヶ月実施。そ
代償手段の検討、障がい理解の促進を目指すが、体調不
の間にも症状の増悪を認める。さらにD病院から紹介により
良や易疲労性により十分な実施が困難。訓練の他に、他職
E病院受診する中で当センターを紹介され、受傷約11 ヶ月
種と共に医療機関受診に際する助言や付添を実施。
後通所開始となる。E病院よりF病院紹介、SPECT検査施行。
【画像所見(他院実施)
】C病院MRIにて散在性の微小出血
【結語】本症例への関わりは、高次脳機能障がいに対して
医療から福祉へ継続的な支援を行う上での課題を改めて検
痕様異常所見、F病院SPECT検査にて帯状回、海馬傍回、
討する機会となった。発表では検討の内容について述べる。
237
ポスター演題2日目
て異常指摘され、C病院で頭部MRI施行。 紹介によりD病
口頭演題2日目
ら回復期病院を経た後に利用となったケースが多い。今回、 【入所時状況】頭痛や不眠による体調不良、易疲労性を伴っ
2-5-13
交通外傷により記憶障害と前頭葉機能障害を呈した一症例
日 程
本川聡美 1)、能登谷晶子 2)、谷内節子 1)、諏訪美幸 1)、木村聖子 1)、川北慎一郎 3)
恵寿総合病院 リハビリテーション部 言語療法課1)、金沢大学 医薬保健研究域 保健学系2)、
恵寿総合病院 リハビリテーション科3)
特別プログラム
【はじめに】今回我々は交通外傷により記憶障害を呈した一
【経過】50病日より新規の場所等の記憶が可能となり、病
症例を経験したので、その経過について考察し報告する。
【症
棟生活は自立、事故前の記憶は補助があれば想起可能、携
例】20代 矯正右利き女性 大学生。運転中事故にあい
帯で日常の予定を確認するように変化した。CATでは特に
Aセンターに脳挫傷で入院、32病日当院回復期病棟へ転
二重課題で低下がみられた。64病日より日常生活で家族の
院し、翌日よりST開始した。【MRI所見】中脳、両側前頭
来院予定の記憶が可能となり、RBMT、WMS-R、TMT、
葉、脳梁膝部に微小出血を認めた。【初期評価】失語症状
WAISで改善を認めた。しかしCATではSDMTのみ平均に
は認めず。事故前約3年の記憶が曖昧な逆向健忘や、新規
比べ若干低下した。ハノイの塔も実施可能となったが、6
の人名等の記憶が困難となる前向健忘を認めたが、自らメ
/ 9項目正答で全て手数が多く学習効果はなかった。
【考察】
モを取ることはなかった。WMS-Rでは言語性記憶73一般
転院当初、近時記憶や注意の持続性・選択性の課題で低下
口頭演題1日目
的記憶73、視覚性記憶93、注意/集中力91、遅延再生
がみられたが、3カ月経過した時点では近時記憶や全般的
75。RBMTは境界域。TMTはA・B共に平均以下。WAIS
な注意機能の改善を認めた。近時記憶に改善がみられた要
ではFIQ93, VIQ99, PIQ87。BADSは平均だが動物園
因として、全般的な注意機能が改善したことで作業記憶の
の道順での計画に若干時間を要した。【訓練】38病日から
能力が向上したことによると推測した。一方、WAISやハノ
63病日まで、4単語の遅延再生、メモ取りなしの短文記憶、
イの塔では時間を要し、前頭葉機能障害が残存しているの
メモ取りを使用しての短文記憶、ミニデー課題を実施した。
ではないかと考えた。
ポスター演題1日目
2-5-14
重篤な前頭葉障害により長期のコミュニケーション障害を呈した脳外傷例
−授受関係を利用した段階的アプローチ
菅野倫子 1)、草野修輔 2)、佐野充広 1)、板倉天子 1)、渡部恵子 1)、我妻 惠 1)
国際医療福祉大学 三田病院 リハビリテーション室1)、国際医療福祉大学 三田病院 リハビリテーション科2)
口頭演題2日目
ポスター演題2日目
【症例】28歳、男性、右利き。X年にバイクの自損事故に
意持続訓練:キャッチボール、トランプ分類、交互塗り絵、
て受傷。診断名:脳挫傷、びまん性軸索損傷。X+8年、週
2)表出訓練:首ふり動作模倣、質問応答・線画選択訓練、
1回の言語聴覚療法を開始。ADLは全介助。 常食摂取可
Blowing task、発声練習。その他、動作模倣訓練、書字
能。【神経学的症状】右上下肢優位の四肢不全麻痺。右手
訓練、コミュニケーションボード活用訓練を適宜試行した。
指は骨折後変形(+)【画像所見】受傷2 ヵ月後の頭部MRI
訓練9か月後に、1)否定反応の出現 (WAB話し言葉の理解
画像より、両側の広範囲な前頭葉病巣を呈した。【ST開始
A:17/20;うなずき9/10、首ふり8/10)、2) 視覚刺激に
時の行動特徴】自発性に乏しいが脱抑制傾向や刺激への
対する指示動作の出現(線画1/2選択:7/10)
。3) 課題持
過敏性あり。暴力行為あり。テレビ番組の適切な場面で笑
続時間の向上を認めた。ST場面における暴力行為はほぼ
う。母親は叱責が多い。高頻度の単語の理解は良好(X+8.5
消失した。【考察および結論】本例は重篤な前頭葉機能障
年:SLTA;単語の聴覚的理解10/10)。【言語聴覚療法経
害および言語障害を呈し、発症8年後に初めて言語聴覚士
過】重篤な注意障害により会話場面の維持が困難であった。
が介入した。本例のコミュニケーション能力の向上には、1)
重度の発語失行(+)。質問には自動的にうなずき動作が出
逸脱行動を誘発しない受容的働きかけ、2)残存能力を利用
現し、弁別的表出は困難であった(yes/no質問5/10)。線
した訓練の適用、3)正のフィードバックの多用という言語聴
画への注目は困難。表出手段の獲得を目的に、受傷X+9
覚療法の特性を活かした働きかけが有用であった。
年後より授受関係を利用した下記の訓練を実施した。1)注
238
2-5-15
NIRSを用いた干渉刺激付加音声聴取時における前頭葉脳血流動態測定
鹿児島医療技術専門学校 言語聴覚療法学科1)、鹿児島大学大学院 理工学研究科2)
【目的】音声波形における極値をランダムに位相方向へ変
法】対象者は正常成人10名(全20歳)
。まずADT実施中
化(位相誤差)させると、ザラザラとした劣化音声へ変化
にWNを加え、その際の的中率が80%になる音圧を求めた。
す る。 我 々 はAuditory Detection Task set 1 (ADT)
WNの音圧を求めた後、ADT+ADT実施中における前頭葉
の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)をNIRSで観察した。な
化と、 そ の 際 の 前 頭 葉 の 脳 血 流 動 態 をNear Infrared
お、プローブは前頭葉を覆うように37chを構成させた。ブ
Spectroscopy(NIRS)で測定し、±9%変化させた劣化音
ロックデザインは、rest(無音: 15秒)-task(刺激音: 60秒)-
声(Deviant-1刺激音:D1)聴取時における前頭葉のoxy-
rest(無音: 15秒)を1ブロックとし、3回繰り返した。3回分
Hbの増加が最も高かったことを第15回日本言語聴覚学会
のoxy-Hbを加算平均し、ADT+WNとD1実施中における
にて報告した。この際のADTの正答率が78%であったこと
task時のoxy-Hbを比較した。【結果および考察】ADT+
を考えると、認知リハビリテーション(注意機能賦活課題)
WNにおける前頭葉のoxy-Hbは0.0017±0.0016(AU)で
あった。なお、D1におけるoxy-Hbは0.0034±0.0013(AU)
とが考えられた。しかしながら、音声波形の極値を位相変
であったことより、ADT+WNにおける前頭葉のoxy-Hbは
化させるシステムは特殊であるため、簡便には実施できな
D1のそれに比し、有意に低い結果(p<.01)となった。聴
い。そこで本研究はADTにWhite noise(WN)を付加させ
覚性注意課題においては、干渉刺激としてWNを付加させ
た際の前頭葉脳血流動態を測定し、位相誤差とWNのどち
るより、音声そのものを歪ませた方が、前頭葉の効果的な
らがoxy-Hbの上昇が高いか検討することを目的とした。
【方
脳賦活が期待できることが示唆された。
視点取得とコミュニケーション行動の関係−ポライトネス理論からの検討−
保屋野健悟 1,2)、森岡 周 1,3)
畿央大学大学院 健康科学研究科1)、JA長野厚生連小諸厚生総合病院 リハビリテーション科2)、
畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター 3)
置した。 視点取得課題、ポライトネス課題は選択項目、
直すことにより他者理解をし、ポライトネスは、伝達相手の
reaction time(RT)を計測した。統計解析は、二元配置分
立場、親密度など様々な要因を考慮しながら言語行動を選
散分析およびBonferroni法による多重比較を行った。有意
択すると考えられている。共に、空間的認知が基盤となる
水準は5%とした。【結果】視点取得課題では、anodal群
ことが推測される。今回、視点取得の機能を担うとされる
はself条件、other条件共に、cathodal、sham群に比べ
有意にRTが短い値を示した。ポライトネス課題では、全RT
で は、anodal群 がcathodal、sham群、cathodal群 が
動の関係について検討を行ったので若干の考察を加えて報
sham群に比べ有意にRTが短い値を示した。親密さ・性別
告する。【方法】対象は、健常成人30名とした。この30名
の条件では、親しい・同性条件ではanodal、cathodal群
をtDCSの刺激群をanodal(陽極刺激)10名、cathodal(陰
がsham群に比べ有意にRTが短い値を示し、親しくない・
極 刺 激)10名、sham(偽 刺 激)10名に振り分けた。tDCS
異性条件ではanodal群がcathodal、sham群に比べ有意
DC-STIMULATOR Plus(neuroConn社 製)に よ り 各 刺
にRTが短い値を示した。【考察】rTPJは自己との類似性、
激を施行後、視点取得課題、ポライトネス課題を行った。
心理的な距離から活動が変化することが示唆され、自己か
anodal、cathodalは、共に刺激時間20分、電流量2mA
らみた他者との関係性によって機能を亢進または、抑制す
とした。 刺 激 電 極 は、 先 行 研 究(Santiesteban,2012)
ることにより認知処理過程を変化させている可能性が示唆
でrTPJと想定されている拡張10-20法のCP6を中心に設
された。
239
ポスター演題2日目
右側-頭頂接合部(rTPJ)に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)によ
り脳活動に変化を与え、視点取得とコミュニケーション行
口頭演題2日目
【はじめに】 視点取得は、自己の視点を他者の視点に向け
ポスター演題1日目
2-5-16
口頭演題1日目
は、約80%の正答率の課題が最も脳賦活が期待できるこ
特別プログラム
の 音 声波 形における極値の位相誤差に伴う正答率の変
日 程
松尾康弘 1,2)、吉田秀樹 2)
2-5-17
頚動脈高度狭窄症における血行再建術前後の高次脳機能
日 程
石橋香澄 1)、柴田 孝 2)、高岩亜輝子 3)、堀恵美子 2)、梅村公子 2)、岡本宗司 2)、久保道也 2)
富山県済生会富山病院 リハビリテーション科1)、富山県済生会富山病院 脳神経外科2)、
富山大学 医学部 脳神経外科3)
特別プログラム
【目的】頚動脈狭高度窄症に対して血行再建術を行ない、
即時記憶は95%信頼区間の値を超えて向上があったものは
その効果について治療前と治療後に高次脳機能を比較検討
40%(2例)
、低下は20%(1例)であった。視空間構成は
した。
向上20%(1例)
、低下20%(1例)であった。言語は低下
【対象】対象は頚動脈高度狭窄症と診断された5名(男性
20%(1例)であった。注意はすべての症例で変化がなかっ
5名、平均年齢71.4±8.4歳、平均教育年数13.0±2.6年、
た。遅延記憶は向上20%(1例)
、低下40%(2例)であっ
症候性2例、無症候性3例)であった。血行再建術はCEA4
例、CAS1例を施行した。
た。総指標は向上20%(1例)
、低下20%(1例)であった。
【考察】頚動脈狭窄症に対する血行再建術前後の高次脳
口頭演題1日目
【方法】高次脳機能の評価はRBANS(認知機能領域: 即時
機能は、これまでの研究では改善する、変化なし、低下
記憶、視空間構成、言語、注意、遅延記憶と総指標)を用
するとさまざまな報告があり、一様ではなかった。本研究
いて、治療前と治療1週間後に指数得点の推移を検討した。
における血行再建術の1週間後はGroup rate analysisで
解析はGroup rate analysisをWilcoxon符号順位検定で、
はすべての認知機能領域で明らかな変化は認められなかっ
Event-rate analysis は95%信頼区間を用いて比較した。
た。しかし、Event-rate analysis の側面から検討すると、
【結果】Group rate analysisの結果は、すべての認知機
95%信頼区間を超えて向上した症例や低下した症例が存在
能領域で有意差は認められなかった。治療前と治療後に有
し、個々症例をそれぞれの認知機能の側面から変化をとら
意差はみられなかった。Event-rate analysisの結果では、
えることが必要と思われた。
ポスター演題1日目
2-5-18
公共機関における申請書類の記入欄の傾向調査
川上泉美 1)、浜田智哉 1,2,3,5)、石井一成 1)、東海直宏 1)、石原寛久 1)、黒川容輔 1,4,5)
臨床福祉専門学校 言語聴覚療法学科1)、横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター 2)、
横浜市立大学大学院 医学研究科 精神医学部門3)、江東区障害者福祉センター 4)、臨床敬心クリニック5)
口頭演題2日目
ポスター演題2日目
【はじめに】
言語聴覚士の仕事のひとつに、障害を持った方の社会復帰
への援助(鈴木2010)があるものの、現状において失語
症者は社会参加が少ないという報告(中村ら1998)がある。
社会参加において必要とされる能力に公共機関の手続きが
あげられている(綿森ら1990)
。出版されている訓練教材
では公共期間の手続きを模して名前、住所、電話番号を記
入する課題がある(竹内2001)
。しかしながら、実際の公
共機関の手続きではどのような書字項目が多いかは明らか
ではない。そこで今回公共機関を中心に調査を試みた。
【対象】
市役所、郵便局、銀行、コンビニエンスストア、病院、障
害者福祉センターを対象公共機関とし、各種申込書類(計
42通)を対象とした。
【方法】
対象公共機関の申込書類を記入項目ごとに分類し、
(1)各
記入項目の総数、
(2)申請書類あたりの平均記入項目数を
集計した。また、
(3)平均記入項目数を公共機関ごとに比
較した。
【結果】
(1)各 記 入 項 目 の 総 数:数 字 記 入 欄293( 数 量・金 額
125、番号124、日付33、生年月日11)
、文字記入欄224
(名前138、住所46、その他40)
、チェック欄102、その
他17)であった。(2)申請書あたりの平均記入項目数:数
字記入欄7.0(数量・金額3.0、番号3.0、日付0.7、生年
月日0.3)
、文字記入欄5.3(名前3.3、住所1.1、その他1.0)
であった。(3)区役所では主に名前(6.8)、生年月日(1.3)
、
銀行では主に数量・金額(4.7)
、コンビニエンスストアで
は住所(2.5)が多かった。
【考察】
記入する機会が平均で1回以上のものは名前、数量・金額、
番号、住所であった。これは訓練教材の傾向と一部一致し
ているものの、実際の申請書類には数量・金額を記入する
機会が多く認められた。評価・訓練をする際の参考になる
と考えられた。ただし、公共機関ごとの傾向もあることが
推測されるため、今後対象の機関を広げ検討を行なう予定
である。
240
2-5-19
石井一成 1)、浜田智哉 1,2,3,5)、川上泉美 1)、東海直宏 1)、石原寛久 1)、黒川容輔 1,4,5)
臨床福祉専門学校 言語聴覚療法学科1)、横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター 2)、
横浜市立大学大学院 医学研究科 精神医学部門3)、江東区障害者福祉センター 4)、臨床敬心クリニック5)
【はじめに】
ダビリティスコアを測定し、各区の平均リーダビリティスコ
アを算出した。
難を⽰すことが報告されている(⼋島ら2013)
。また、近
【結果】
年東京都23 区における高齢単身者の世帯数、世帯割合は
各区の平均リーダビリティスコアは北区(2.9 SD±0.8)
、
増加傾向にあり、かつ割合には地域差も存在している(総
中央区(2.8 SD±0.8)であり、中級後半レベルであった。
務省2015)
。今回我々は高齢単身者の割合が役所の申請
【考察】
書類作成の際に考慮されているのかを検討することを目的
各区の平均リーダビリティスコアはほぼ差がなかった。また
として、申請書類の読解難易度の比較を⾏なった。
中級後半レベル(やや専門的な文章でも大まかな内容理解
【対象】
特別プログラム
失語症者の⽇常⽣活において、⾃⼒での役所の⼿続きに困
ができ、日常生活レベルの文章理解においてはほぼ不自由
がなく遂行できる)のリーダビリティスコアであり、失語症
最も低い区(中央区)とした。各区役所ホームページより
者にとって区役所申請書類の読解は困難であると示唆され
ダウンロード可能な申請書類でかつ、2区に共通する書類
た。また、高齢者単身者の多さが書類作成時に配慮されて
(各区20通 計40通)
いないことが示唆された。今後、実際の失語症者において
【方法】
難易度を測定し、失語症者にとっての難易度を図れるように
日本語文章難易度判別システム(李ら2013)を用いてリー
したい。
東海直宏 1)、浜田智哉 1,2,3,5)、石井一成 1)、川上泉美 1)、石原寛久 1)、黒川容輔 1,4,5)
臨床福祉専門学校 言語聴覚療法学科1)、横浜新都市脳神経外科病院 リハビリテーションセンター 2)、
横浜市立大学大学院 医学研究科 精神医学部門3)、江東区障害者福祉センター 4)、臨床敬心クリニック5)
【結果】
近年、東京都23区における高齢単身者の世帯数は増加傾向
書類すべての平均リーダビリティスコアは2.6であった。書
(総務省2015)にあり、今後、失語症のある高齢単身世
類は初級前半1通・初級後半3通・中級前半33通・中級後
帯数も増加が予想される。一方で、約半数の失語症者にお
半148通・上級前半104通・上級後半12通であった。
いて役所等の手続きがひとりで用事を済ませることが困難
【考察】
であるとの報告がある(八島ら2013)
。そこで、今回役所
書類の数が最も多かったリーダビリティスコアの平均は中級
の申請書類の難易度をリーダビリティ(李ら2012)を用い
後半(やや専門的な文章でも大まかな内容理解ができ、日
常生活レベルの文章理解においてはほぼ不自由がなく遂行
【対象】
できる)
、ついで上級前半(専門的な文章に関してもほぼ理
江東区役所のHP上からダウンロード可能であった申請書類
解できる。文芸作品などに見られる複雑な構造についても
(計301通)
。
理解できる)であった。よって、江東区の申請書類の読解
【方法】
においては、日常生活レベル以上の文章理解能力が必要で
日本語文章難易度判別システム(李ら2013)を用いて書
あると示唆された。
類ごとの平均値を求め、難易度ごとに分類を行うこととした。
241
ポスター演題2日目
て測定することとした。
口頭演題2日目
【はじめに】
ポスター演題1日目
区役所申請書類の読解の難易度について
口頭演題1日目
調査を行なう区を高齢単身者割合が最も高い区(北区)
、
2-5-20
日 程
高齢失語症単身者の住みやすい地域はどこか?
−役所の申請書類のリーダビリティの比較−
2-5-21
協会の職能団体としての役割を考えその発展を目指すために
日 程
清水充子 1)
埼玉県言語聴覚士会1)、埼玉県総合リハビリテーションセンター 2)
日本言語聴覚士協会設立から16年を迎えた今、改めて職
団コミュニケーション療法の再設定や摂食機能療法の条件
能団体の活動の意義を考え 、今後の進展のために方策を
改善などの診療報酬の向上、地域包括ケアの推進、がんリ
検討したい。
ハの報酬制定などである。これら国との折衝を行う活動は、
特別プログラム
まず、協会活動の進展を図る大きな拠り所として、多くの
個人単位で叶うものではない。
参画を募り、職の社会的な認知度を高める必要があろう。
また、言語聴覚士の認知度の向上は、対象とする障害への
わが国の言語聴覚士の認知度は、協会広報部の尽力やマス
社会的な理解を進めることと一体である。聴覚言語障害や
口頭演題1日目
コミなどを通じて格段に向上しているが、まだまだ欧米に比
嚥下障害は目に見えにくい障害であり、その障害への理解
して低い。その理由として、絶対的な人数の不足と協会の
と適切な対応を進めるためにも、認知度を上げることが欠
組織率の低さが挙げられる。活動の意義の正しい理解の進
かせない。それはまた、言語聴覚士自身の社会的地位や待
展により、問題改善へ向かえるのではないかと考え、次の
遇の向上にもつながるはずである。
提案をしたい。
以上のような意義が真に理解されれば、協会や各士会に所
各個人が協会に所属する目的は、単に研修、研鑽の機会や
属するメリットがないので入会しない、又は退会するという
情報を得るためだけではない。私たちの職務の多くは保険
選択肢は消えるはずである。多くの会員を募り、その力を
診療や教育制度の取り決めにより遂行されている。 行政、
結集することで、この領域の更なる進展が図られるよう願
関係省庁との連携や折衝のもとに、対象とする領域への対
い、そのための行動を共に進めて行きたいと考える。各地
応が改善されて行く。関連団体と協力し、新しい出来事に
域のより一層の活動推進や協会からの発信に期待している。
対応した様々な条件の改善が重要な鍵となる。例えば、集
ポスター演題1日目
2-5-22
言語聴覚士に求められる倫理的思考について
− 嚥下訓練場面で感じるジレンマの様相 −
渡邊淳子 1,2)、森真喜子 2,3)、井上洋士 2)
福岡大学病院 リハビリテーション部1)、放送大学大学院2)、北里大学看護部3)
口頭演題2日目
【背景】言語聴覚士(以下ST)は臨床現場における問題の
てSTは<自分の判断が患者の人生に与える影響>を考えて
解決に倫理的思考が必要とされる部分が他職種よりも多い
悩み、<ジレンマを感じる状況>が生じていた。経口摂取す
可能性が指摘されているが、倫理的思考の指針となるよう
る方針となった場合も<誤嚥リスクがある患者が経口摂取
な研究や報告はまだ少ない。【目的】倫理的思考が必要と
を続ける状況>が<ジレンマを感じる状況>を生じさせてい
される場面とはどのようなものか、まず嚥下訓練場面で遭
た。特に患者が意思表示できない場合には、STは<食べた
ポスター演題2日目
遇するジレンマに注目してその様相を明らかにすることとし
い意思を測りかねる気持ち>となり、このこともSTを<ジレ
た。【対象と方法】医療機関で嚥下訓練に携わるSTを対象
ンマを感じる状況>に向かわせる方向に働いていた。
【考察】
にインタビューを行い、得られたデータをグラウンデッド・
<ジレンマを感じる状況>のカテゴリーにおいて「誤嚥リス
セオリー・アプローチの手法で分析した。【結果】<嚥下
クが高いと思うのに食べさせなければならないジレンマ」と
障害の可能性が高い患者の存在>がある時、医師から嚥下
「食べたくないと言えない患者に食べさせ続けるジレンマ」
訓練指示を受けてSTは<患者の嚥下状態の評価>を行って
という概念が抽出された。「誤嚥リスクが高いと思うのに食
いた。そこで誤嚥リスクがあると判断された場合、その結
べさせなければならないジレンマ」は嚥下の専門家として感
果と<誤嚥リスクがある時の選択肢>を医師に伝えていた。
じるジレンマ、
「食べたくないと言えない患者に食べさせ続
経口摂取しない方針となった<残された人生を経管栄養で
けるジレンマ」はコミュニケーションの専門家として感じる
生きる患者>のうち、特に意思表示ができない患者につい
ST独特のジレンマであると考えられた。
242
2-5-23
若手言語聴覚士が早期転職を選択するに至るプロセス
聖マリアンナ医科大学東横病院 リハビリテーション室1)、目白大学大学院 リハビリテーション学研究科2)、
目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科3)
【目的】経験年数の少ない言語聴覚士について、早期転職
いな職場選択》、
《希望の配属先》、
《やりがいを感じる》、
《成
長したい自分》、《満たされない欲求》、《自分を脅かす大き
関する満足感等聞き取り調査を実施し、早期転職に至るプ
な存在》、《退職を止められない職場の対応》、《変えられな
ロセスや要因を明らかにすることを目的とした。
い職場の現状への諦観》、《退職を承認あるいは後押しする
【方法】首都圏の言語聴覚士養成校を卒業後1年3 ヶ月〜 4
存在》という10のサブカテゴリー、16の概念を作成し、若
年1 ヶ月経過し、転職を経験した首都圏在住の言語聴覚士
手言語聴覚士の退職に至るプロセスについての統合的な説
男性2名、女性6名に面接調査を実施し、修正版グラウンデッ
明図を作成した。
ド・セオリー・アプローチにて分析した。質問項目は、属性・
【考察】若手言語聴覚士の早期退職は、やりがいや成長し
言語聴覚士になる以前の就労経験の有無・臨床実習での経
たいという欲求が満たされないこと、配属先の希望が叶え
験・希望していた職場の種類・転職前の職場の種類・組織
られないこと、特定の個人との関係などが要因となってい
る可能性が示された。
育やサポート体制の有無・転職理由とした。内容は参加者
【結語】若手言語聴覚士の早期退職を防止するためには、
の同意のもとICレコーダーに録音し、逐語録を作成した。
職場でのハラスメントを防ぐ教育、相談できるシステム作り、
【結果】全101,831文字から、【入職前の状況】、【入職後
職場内外の教育、本人に対するコミュニケーション能力やス
の希望】、【退職願望を生じさせる職場の状況】、【辞めると
トレスマネジメントに対する教育などが必要であると考えら
いう選択】という4のカテゴリー、《希望の領域》、《あいま
れた。
會田梨恵、緑川美里
三春町立三春病院 リハビリテーション科
【はじめに】2015年には団塊の世代が65歳以上となり4人に
ポスター演題1日目
行動変容に着目した介護予防の取り組み
口頭演題1日目
への満足度・職場における人間関係・職場における新人教
特別プログラム
という観点から、仕事に対する姿勢や意欲、職場や職業に
2-5-24
日 程
祖父江由佳 1,2)、春原則子 3)
では口腔・嚥下体操を集団で毎週継続して行い、自宅でも
取り組めるよう配布物を作成し指導した。【結果】1年間の
豊かな老後を送れるように要支援・要介護状態の予防と要
プログラム参加後、口腔清掃の頻度は30.
8%が増加し口
介護状態等の悪化防止は重要である。今回、三春町の介
腔衛生状態は22.
6%が改善した。口腔・嚥下体操の頻度は
護予防事業に関わり行動変容に着目し支援を行ったため報
23.
6%が増加し口腔・嚥下機能は25.
6%が改善した。【考
告する。【対象と方法】平成24年〜26年に介護予防事業(週
察】要介護状態等の予防のためには機能の維持・改善に必
1回、通年)のうち、口腔機能向上プログラム(全5回)に
要な行動変容が望まれるが、行動変容ステージに合わせた
口腔機能向上プログラムにより一定の行動変容が得られた。
参加前後に口腔清掃および口腔・嚥下体操の実施頻度の調
また実行期で行動し始めた時期は行動変容の維持が最も難
査と、口腔衛生、口腔機能、嚥下機能の評価を実施。 内
しいとされているが、毎週集団で他の参加者と支えあい実
容は講義、評価、実習、個別指導で構成した。無関心期に
行しやすい環境を作り、後戻りを防ぐことができたと考える。
は行動変容の必要性を情報提供し、関心期には講義と実習
しかし、プログラム終了後の維持期については調査や支援
で行動変容の具体的な方法を正しく理解してもらった。準
ができていない。生涯にわたりセルフケア行動が継続でき
備期には個別指導を行い、実行・継続可能な具体的な内
るように支援できる取り組みを行うことが今後の課題と考え
容の助言をし自己効力感を高めるように配慮した。実行期
る。
243
ポスター演題2日目
参加した39名(男性3名、女性36名 平均年齢79.
5歳)
。
口頭演題2日目
1人が高齢者になる。健康寿命を延長し、多くの高齢者が
2-5-25
介護予防事業によるコミュニケーション講座〜飯能市の試み〜
日 程
阿部真也 1)、松本多香子 2)、田中沙矢香 3)、高橋秀寿 4)、木川浩志 1)
飯能靖和病院 リハビリテーションセンター 1)、言語生活とリハビリ研究所 デイサービスはばたき2)、
飯能市 福祉部 介護福祉課3)、埼玉医科大学国際医療センター リハビリテーション科4)
特別プログラム
【はじめに】市町村が実施主体の失語症者を対象とした言語
目的は失語症者の閉じこもりを予防し、外出する機会を増
リハビリ教室は老人保健法の機能訓練事業として、埼玉県
やし、その人らしい生活を支援するとともに、仲間作りの場
にも多くの教室が存在していた。しかし、健康増進法に伴い、
を提供することである。内容は参加者とコミュニケーション
多くの市町村で言語リハビリ教室の見直しが迫られ、現在、
サポーターが一組になり、歌やリクリエーション、テーマに
口頭演題1日目
言語リハビリ教室は減少している。飯能市では平成25年よ
沿った言語課題の取り組みを行っている。【結果】コミュニ
り介護予防事業の一つとして失語症者を対象としたコミュニ
ケーション講座に参加することによって「安心して参加でき、
ケーション講座を取り入れている。そこで今回、
コミュニケー
仲間に会うことが楽しみになっている」
、
「自宅から会場まで
ション講座の活動報告とともに、失語症者の心理、行動の
1人で行動できるようになった」などといった心理や行動の
変化や今後の課題について検討した。【活動内容】コミュニ
変化がみられた。【考察】市町村が主体の言語リハビリ教
ケーション講座は毎月一度(午後、90分間)開催し、失語
室の減少により、失語症者が社会的な場に参加する機会も
症の参加者は平均10.4人である。スタッフは言語聴覚士、
減少している。そのような中で、飯能市が取り入れている
保健師、アコーディオン伴奏者、コミュニケーションサポー
介護予防事業としてのコミュニケーション講座が失語症者の
ター(ボランティア)であり、コミュニケーションサポーター
外出の機会を増やし、家族以外との交流を図る場を提供す
は事前にサポーター養成講座を開き、失語症者への理解を
る役割を担っており、介護予防の一助となっていると考えら
深めてもらえるようにしている。コミュニケーション講座の
れる。
ポスター演題1日目
2-5-26
日本言語聴覚学会に発表された抄録からみるSTの地域連携の傾向
小谷優平 1)、岩田久義 1)、竹内茂伸 1)、熊倉勇美 2)
社会福祉法人こうほうえん 錦海リハビリテーション病院1)、千里リハビリテーション病院2)
【はじめに】地域リハビリテーション(地域リハ)において、言
の割合などである。
口頭演題2日目
語聴覚士(ST)には患者家族はもとより、多職種との連携が
【結果】地域リハビリにおける「地域連携」に関連する発表
求められる。我々はSTの地域連携の傾向を明らかにする為
は65題あり、総演題数に占める「地域連携」の割合は、そ
に「日本言語聴覚学会抄録集(抄録集)」に掲載された過去
れまでは変動無かったが第13回から増加傾向を示した。研
10年間の発表の分析・検討を行った。
究主題は、
「摂食嚥下」が50.0%と最も多く、
「コミュニケー
【方法】分析対象は、第5回(2004年)から第15回(2014年)
ション」26.7%「その他」23.3%が順に次いだ。連携対象
の抄録集に掲載された地域リハ関連の発表(セッション表題
者に占める割合は「家族」が42.6%と最も多く、
「介護士、
ポスター演題2日目
に「支援」
「訪問」
「連携」
「地域」
「在宅」
「取り組み」
「生
看護師」18.1%「理学療法士、作業療法士他」16.0%「ケ
活期」
「STの役割」
「業務」を含む)254演題(発表種分類
アマネージャー」10.6%「歯科医、歯科衛生士」9.6%「ST」
の無い98演題を含む)である。分析内容は1)総演題数に
占める「地域連携」関連演題(「連携・恊働・関わり」
「伝達・
3.2%の順であった。
【考察】
「地域連携」に関連する演題は増加しており、STの
指導・情報提供」
「チーム」等を含む)の推移、2)(1)「地
活動の視点が地域に拡大してきていると考えることが出来
域連携」に関連する発表に占める研究主題「摂食嚥下」
「コ
る。テーマは「摂食嚥下」
、連携対象が「家族」の演題が
ミュニケーション」
「その他」別の割合(2)主連携対象者「家
最も多く、地域リハにおいてSTが摂食嚥下障害者および患
族」
「多職種(ケアマネージャー、介護士、看護師、理学療
者家族に環境調整、連携を図っておりその重要性を感じて
法士・作業療法士他、歯科医・歯科衛生士、その他)「ST」
いる事が示唆された。
244
2-6-01
竹中千尋、松本千賀子、佐熊夏希、浜村果奈
一般社団法人 是真会 長崎リハビリテーション病院 臨床部
活用場面は病前や病棟生活の情報収集時、問題点の整理
の問題を障害像としてわかりやすく理解するため、携帯用
時等、スタッフ間では患者情報共有時も使用されていた。
のICFカードを作成し運用している。今回は本カードの有効
経験年数では5年未満者が5年目以上者より多く使用する傾
性について検討したので報告する。【ICFカード】表面には
向があった。実際の相手への伝わり方をみると、相手に伝
ICFモデルを図式化し、裏面はICFの構成要素(心身機能・
わった・まあまあ伝わった人は15名(63%)
、一方、相手
からの伝わり方では、理解できることが増えた・まあまあ増
えた人は10名(42%)であった。患者像のとらえ方は、捉
を対象に、1)活用状況に関するアンケート、2)ICFによる
えやすくなった人15名(63%)であった。2) 障害像の理
障害像の理解度について調査した。1)アンケート調査:カー
解度調査:全体の貼付数は378枚、構成項目毎では心身機
ドの活用の有無、使用場面等について調査した。2)障害
能・構造99枚26%、活動82枚22%、参加15枚4%、その
像の理解度調査:
「その人らしいコミュニケーション」に要す
他の項目で182枚48%であった。前年に比べ活動が6%か
る項目について、ICFモデルにそって抽出・整理した。なお
ら22%に増加する等の変化が見られた。【考察】本カード
2)の作業は個人で10分間、付箋1枚1内容の書き出しを行っ
は患者の様々な問題をICFにそって整理し障害像を明確にし
た。さらに25年実施内容と検討した。【結果】1)アンケー
ていく上で有用な手段と推察された。
ト調査:カードを活用している人は20名(83%)であった。
脳卒中患者の服薬自己管理のスクリーニング法と高次脳機能評価の
関係性についての検討
加藤未咲、大川 悠
宮城厚生協会 坂総合病院
日間で誤りなし52例、誤りあり13例(1回の日付間違い7
卒中患者の服薬自己管理において、当院で考案したスクリー
例、1 〜 2回の服薬忘れ6例)。自己管理から病棟管理(カ
ニング法と高次脳機能評価との結果を比較検討した。
レンダー管理)に移行した患者が1例。 自己管理群と病棟
【対象と方法】対象は2011年8月〜 2013年2月までの回
管理群の高次脳機能評価の結果(平均点、p)はそれぞれ
復期リハビリテーション病棟で服薬自己管理が必要と想定さ
MMSE(25.0、21.3、p=0.0140)、かなひろい(15.4、9.8、
れた脳卒中患者88例(男54例、女34例、平均年齢68.5)。
p=0.0361)、FAB(12.4、10.1、p=0.0572)、RBMT 標
準プロフィール点(15.9、8.8、p=0.0002)となり、RBMT
機能評価と病棟看護師によるFIM認知項目の評価を行う(2)
で最も差を認めた。
患者に3日分の薬の空袋を渡す(3)朝・昼・夕の食事の際に
【考察】脳卒中患者の服薬自己管理において、認知機能や
空袋を病棟看護師に提出してもらう(4)提出忘れや日付誤り
注意機能はもちろん、記憶機能が大きく関与していること
の状況から自己管理開始可能かを判断し、困難とみなされ
が示唆された。特にRBMTは服薬自己管理の開始における
た場合は病棟管理とする。上記スクリーニング法で分けた
判断基準の一つとして有用であると考えられる。また高次
あと、自己管理開始後10日間の管理状況をカルテで確認し、
脳機能評価に加えて模擬的なスクリーニング法を実施する
スクリーニング法と高次脳機能評価の結果を比較検討した。
ことで、服薬管理の検討をより正確に行うことが可能と考え
【 結果 】病棟管理群が23例(病棟管理14例、カレンダー
る。
管 理4例、1日 管 理5例)。 自 己 管 理 群 が65例。 うち10
245
ポスター演題2日目
スクリーニング法は以下の通りである。(1)STによる高次脳
口頭演題2日目
【はじめに】回復期リハビリテーション病棟に入院された脳
ポスター演題1日目
2-6-02
口頭演題1日目
構造、活動、参加等)毎にコミュニケーションに関連する項
目を記載したものである。【対象・方法】当法人のST27名
特別プログラム
【はじめに】当法人STは、患者の抱えるコミュニケーション
日 程
「コミュニケーション障害」に関するスタッフ間の相互理解を図る取り組み
〜ICFカードの使用を通して〜
2-6-03
日 程
失語症者の自動車運転再開に向けた言語聴覚士の関わり(公安委員会での
臨時適性検査に同席した失語症者2例を振り返って)
中村太一 1)、森淳一 1)、佐藤浩二 2)、森 照明 2)
社会医療法人 敬和会 大分東部病院1)、社会医療法人 敬和会 大分岡病院2)
特別プログラム
【はじめに】当院では、失語症者の自動車運転再開に向け、
の疑問や確認の表出とした。評価判定は、自立、実用的、
言語聴覚士が公安委員会での臨時適性検査に同席し会話サ
一部援助、大半援助、全面援助とした。【症例】症例1は、
ポート等の支援を行っている。今回、運転再開となった失
50歳代男性、運動性失語を認めておりWAB失語症検査失
語症者の臨時適性検査での会話能力の評価及び会話サポー
語指数(以下、AQ)は89.2であった。症例2は、60歳代
トを振り返り言語聴覚士の関わりについて考察を加え報告
男性、健忘失語を認めておりAQは、81であった。【結果】
する。【臨時適性検査の流れ】まず、基本情報や症状につ
どちらも7が大半援助、4.5.6が一部援助であった。また、
いて試験官と面談が行われた。次に、検査内容の説明、シュ
9に関しては、症例1が大半援助、症例2が一部援助であり、
ミレーター操作の説明があり、練習後に検査開始となった。
本人からの意思伝達や検査に必要な内容理解に関して多く
検査内容は、ハンドル操作、ブレーキ・アクセル・クラッチ
のサポートを要した。【考察・まとめ】失語症者において
操作、急停車操作であった。最後に、検査結果の説明と運
は、日常のコミュニケーションが実用的であっても、検査と
口頭演題1日目
転再開に向けた指導があった。【会話能力の評価】評価項
いう特殊な場面かつ失語症への理解が十分でない環境下で
目は、面談では、1.基本情報の伝達、2.症状の伝達、3.試
は、本来持っている能力が最大限に発揮できない可能性も
験官からの教示理解とした。検査では、4.検査内容の説明
ある。失語症者の運転再開に向けて、病院内の評価、訓練
理解、5.シュミレーター操作方法の説明理解、6.試験官か
のみならず失語症者が最大限の能力を発揮できるサポート、
らの教示理解、7.検査内容・操作方法への疑問や確認の
環境調整を行うことも重要である。
表出とした。検査結果の説明では、8.説明理解、9.説明へ
ポスター演題1日目
2-6-04
短期間で原職復帰を果たした伝導失語の1症例
日置貴裕、池上寛子、熊倉勇美
医療法人社団 和風会 千里リハビリテーション病院
口頭演題2日目
[はじめに]軽度失語であっても、年齢や職種によっては、社
上を目的に言語訓練を行った。退院前には、院内で業務の
会復帰、特に原職復帰は困難となる。我々は伝導失語を呈
シミュレーションを行い、最終評価とした。また、復職にあ
した症例の言語訓練を担当したが、2ケ月と短期間で原職
たっては、担当ST・PTが職場に同行し、施設長・上司と面
復帰を果たしたので、訓練の経過と若干の考察を加えて報
談、身体機能面、言語面も含め情報伝達を行うことで、職
告する。[症例]40代、男性、介護職員。 左利き。 右半身
場復帰が実現した。[考察]本症例は、A語想起能力の改善
の痺れと視野障害を自覚し某病院を受診、もやもや病の診
B音韻性錯語の減少=接近行為、修正行為の減少C流暢性
ポスター演題2日目
断、STA-MCA吻合術を施行されたが、術後脳梗塞を発症
などが改善した。特にAはSLTAの語想起課題で6語⇒26語
した。 伝導失語、軽度右顔面神経麻痺、構音障害、右片
と大幅に成績改善が認められた。Bは伝導失語の中心的な
麻痺を呈し、
リハ目的で当院に入院となった。[経過]初診時、
言語症状であるが、音韻操作障害の改善だけでなく、Aの
知能面、日常会話の実用性に問題は認められなかった。し
いわゆる意味⇒語彙回収のルートが強化されたことにより、
かし精査すると、5文節程度の短文では把持困難、語想起
表出過程全体が底上げされたものと考えられた。理解面に
困難があり、音韻性錯語の出現と、頻回な言い直しを伴い
関しては、長文や複雑な言い回しを用いた際の理解の不完
流暢性低下が認められた。上記から、復職の際に職員同士
全さに対する認識は未だ不十分であり、今後、職場での業
や利用者とのコミュニケーションに支障をきたすと考え、約
務に支障の出ることも予想されるため、長期的なフォロー
2 ヶ月間、1)喚語・語想起能力の向上、2)音韻操作の向
が必要と考えられる。
246
2-6-05
岡本卓也、廣澤麻衣子、石松佳奈、及川 翔、猪瀬丈晴
一般社団法人巨樹の会 赤羽リハビリテーション病院 リハビリテーション科
芦野直子 1)、矢守麻奈 2)、牧山 清 1)
日本大学病院 耳鼻咽喉科1)、広島県立大学保健福祉学部2)
顎)に力が入り効果がなかった。呼吸様式の改善と呼吸と
部を拡張保持して弱々しい声で発声し、発声後にため息様
発声のタイミングの調整目的で、腹式呼吸と腹圧発声法を
に呼気を流出する、といった特異な呼吸様式を伴った機能
施行。腹圧発声法:体幹を正中保持し、吸気は腹部の緊張
性発声障害例に対し音声治療(以下VT)を行い音声と発
をゆるめ、呼気は下腹部に力を入れて行い、呼気と両唇音(/
声機能の改善をみたので報告する。【症例】40代男性。主
p,b,m(a,e,i,o,u)/)の発声を同期させ、単音節、複数音節
訴:嗄声。 診断名:機能性発声障害(Koufmanらの分類
の順で練習した。呼気と発声のタイミングについては、鏡・
録音・録画のフィードバックを行い、般化訓練として文章
音読、会話練習を行った。【結果】喉頭所見:声門上部過
科を紹介され受診。【初診時所見】声帯麻痺や声帯運動
内転は軽減した。MPT18秒。話声位C3。EP58.9dAPa、
の左右差なし。発声時に声門上部が過内転しストロボスコ
MFR174.3ml/s。気道抵抗値0.33daPa/ml/s、A:0 〜 1。
ピー検査は観察不可。MPT9秒、話声位F3、呼気圧(以
全項目で音声と発声機能が改善したが、VHI10等の自覚的
下EP)50.5daPa、呼気流率(以下MFR)66.5ml/s、気
評価はほぼ不変。【考察】腹式呼吸、腹圧発声法の習得に
道抵抗値0.759daPa/ml/s、無力性(以下A)3、VHI10
より呼吸と発声のタイミングが調整され、MFRの増加、気
(34/40)
、V-RQOL(28/40)
。【VT内 容 】2か 月 間 に1
道抵抗値の低下などにより音声と発声機能の改善が得られ
回/週で計10回行った。軟起声の誘導やあくび・ため息法、
たと考える。
リップトリル、チューイング法を行ったが頸部や顔面(特に
247
ポスター演題2日目
4型)
。 既往歴:咳喘息。 現病歴:6年前より嗄声を自覚し
て他院を受診し処方薬を内服するも改善せず、X年6月当
口頭演題2日目
【はじめに】吸気時に斜角筋を過剰に活動させ上胸部と腹
ポスター演題1日目
特異な呼吸様式を伴う機能性発声障害の1例に対する音声治療の経験
口頭演題1日目
2-6-06
特別プログラム
談時に家族に、失語症と高次脳機能障害の説明を実施。入
【はじめに】今回右被殻出血により失語症と高次脳機能障害
院12週目より挨拶をするなど社会性に向上がみられた。入
を呈した症例に対し、訓練を実施する機会を得た。機能回
院15週目より職場復帰への希望が強くなり、家族に役割の
復とともにご本人様の職場復帰の希望が強くなり、最終的
聴取を行った。訓練にて職業復帰へ向けた課題を実施し、
に家族の協力と環境設定を行う事で職場復帰へつなげるこ
工夫点・注意点を家族に伝達し外泊時に練習を行い退院と
とができたのでその経過を報告する。
なった。退院時、中等度ブローカ失語により、理解面は日
【症例】40代、男性、自営業
常会話レベルで可能。表出面は喚語困難によりヒントが少
【病名】右被殻出血
ない場面では自己修正を繰り返す様子がみられた。注意面
【病歴】出勤後に意識障害が出現。救急車にてA病院へ搬送。
は、環境設定により30分は課題を行えた。退院後の現在も
CTにて右被殻出血と診断され同日頭蓋内血腫除去術を施
週3回程、仕事を継続している。
行。その後リハビリ目的で発症より1 ヶ月後に当院転院。
【まとめ】職場復帰について2006年の調査では5.5%程と
【神経学的所見】左片麻痺
いうデータがあり、失語症者の職場復帰は難しい。職場復
【神経心理学的所見】失語症、高次脳機能障害
【経過】入院時JCS-1桁。 基盤的認知能力の低下により、 帰は言語機能・身体機能の他に高次脳機能障害の程度、病
前の職務の内容や受け入れの環境が大きく関係している。
ぼんやりとした印象が強く、感情失禁を認めた。重度ブロー
今回の症例は身体的機能に制限はあったが、家族に症状の
カ失語により理解は簡単な指示レベルで可能。表出は首振
説明を実施し理解と協力が得られ、環境設定を図ることで
り・頷きなどが主だった。入院3週目より易疲労性が改善し
職場復帰が行えた。
感情失禁も減少したが、注意機能の問題が表面化した。面
日 程
右被殻出血により失語症と高次脳機能障害を呈したが家族の協力と環境設
定を行うことで職場復帰に至った1例
2-6-07
日 程
川崎大動脈センターにおける心臓血管外科術後のVoiceHandicapIndex
の検討
須藤奈津子 1)、大塚洋子 1)、花方朝香 2)、松島康二 3)、渡邊雄介 4)
川崎幸病院 リハビリテーション科1)、西横浜国際総合病院2)、東邦大学医療センター大森病院 耳鼻咽喉科3)、
国際医療福祉大学東京ボイスセンター 4)
特別プログラム
口頭演題1日目
ポスター演題1日目
【はじめに】
心臓血管術前後合併症には音声障害、嚥下障害が存在する。
今回、術前後に音声評価とVoiceHandicapIndex日本語
改訂版(以下VHI)を施行。75歳以上と74歳以下の2群間
を比較し、術式別にHandicapとなる側面に関しての調査、
検討をしたので報告する。
【対象】
201X年X月〜 201X年X月、待機的大動脈人工血管置換術
を施行した全症例95例中、胸部・胸腹部大動脈人工血管
置換術を施行し術前後にVHI測定可能であった50例。
【方法】
年齢、性別、術式、声の聴覚的印象評価、術前VHIと術後
14日目のVHIを調査し統計処理を行った。
【結果】
男性34例、女性16例、平均年齢69.8歳。 術式は上行置
換5例、全弓部置換30例、下行置換11例、胸腹部置換4例。
術前後の嗄声は、術前嗄声3例、術後嗄声15例の計18例。
術式別嗄声例は、75歳以上は5例全例が全弓部置換、74
2-6-08
歳以下は全弓部置換7例、下行置換3例、胸腹部置換3例。
術後VHIの3側面について術式別の差は認めず、74歳以下
嗄声例と75歳以上嗄声例で比較すると身体的側面において
平均3.2の差を認めたが、機能的・感情的側面において乖
離は認めなかった。また、74歳以下嗄声13例について就
労有無で比較した際には、身体的側面において平均2.9の
差を認めた。
【考察】
VHIの質問項目は身体的、感情的、機能的側面の3側面で
構成される。術後早期から耳鼻科医師による予後に関する
情報提供やSTによる音声訓練を施行したが、音声障害に対
しての障害受容の混乱期でもあり就労者に関しては点数に
差が生じたと考えた。一般的に一側性反回神経麻痺の自然
改善期間は主に約3 〜 6 ヶ月とされている。心臓血管外科
治療における当院入院期間は、約3週間前後であり、術後
の音声障害の経過が十分に把握しきれていないのが現状で
ある。音声障害や嚥下障害残存患者に対し退院後の経過を
把握出来るツール作りを今後検討する必要があると考える。
日常会話への汎化に時間を要した機能性ピッチ障害の1例
谷合信一、冨藤雅之、荒木幸仁、塩谷彰浩
防衛医科大学校 耳鼻咽喉科学講座
【はじめに】
グラムを指導し、外来訓練を継続。その後、母音発声から
口頭演題2日目
機能性発声障害のうち、声の高さの障害が現れる音声障害
短文音読、文章音読へレベルアップさせた。訓練時には低
をピッチ障害と呼ぶ。今回我々は変声後にピッチ障害を呈し
音の発声が可能であるが、それ以外の時は高音発声が残
た症例を経験した。本例の音声治療経過を、文献的考察を
存。 訓練開始後2か月時(4セッション目)には、Kayser-
加えて報告する。
Gutzmann法を用いずに低音の発声が可能となるが、日常
【症例】
生活への汎化は難しかった。訓練中、以前の声をあまり好
10歳代男性。変声はすでに完成しており、いわゆる成人男
んでいなかったとの訴えがあり、カウンセリングを追加した。
性の発声をしていた。3 ヶ月前、学校の学園祭の屋台で煙
さらに患者の音声を録音し聞かせることでフィードバックを
ポスター演題2日目
を吸引し、咳を頻繁に行った。その後、話声位の上昇を自
行い、発声行動の変容を促した。訓練開始後4か月
(7セッショ
覚。近医耳鼻科を受診し消炎治療を行うが音声に変化なく、
ン目)
の評価では話声位113Hzとなり、訓練を終了となった。
音声治療目的で当科紹介となった。当科初診時、咽喉頭に
【考察】
器質的異常なく喉頭運動は正常であった。MPT25秒であっ
ピッチ障害の音声治療では、通常1-2回の治療で軽快する
たが、話声位が263Hzと高値であり音声治療開始となった。
といわれている(城本2008、牧山ら2014)
。しかし本例
【経過】
は会話への汎化に時間を要した。要因として、牧山ら
(2014)
音 声 治 療としてKayser-Gutzmann法を実 施。 即 時 効 果
が指摘するように低音発声に関するネガティブな感情が影響
がみられ低音での発声が持続母音であれば可能であった。
した可能性が考えられた。
Kayser-Gutzmann法を利用した母音発声の自主練習プロ
248
2-6-09
一側声帯麻痺の音声改善術後例に対するVocal Function Exerciseの効果
熊本大学 耳鼻咽喉科頭頸部外科
Vocal Function Exercise(以下、VFE)は、喉頭の筋
検討項目は、空気力学的検査のMPT、MFR、ピッチの下限・
力アップ、喉頭筋相互バランスの調整の改善を目的として
上限、声域、音響分析のJitter、Shimmer、HNR、声の
自覚評価のVHI-10を用いた。音声治療は、2 ~ 14セッショ
の効果について報告する。
ン施行し、治療前後の比較を行った。
対象は、201×年×月から201×年×月までに一側喉頭麻
結果を治療前、治療後の順に示す。MPTは、9.9±2.8
痺に対して音声改善術を施行されたが、さらなる音声の改
秒、13.4±3.9秒、ピッチの上限は、379±178Hz、493
善を希望されVFEを施行した5例で、男性1例、女性4例、
±224Hz、声域は、16.3±6.4半音、21.8±4.6半音となり、
平均年齢51.0±19.9歳であった。 音声改善術の内訳は、
治療前後で有意に改善した。また、音響分析のShimmer
が7.4±3.0%、7.9±2.9%、HNRが4.9±2.4dB、7.8±1.1dB
内転術1例、声帯内脂肪注入術1例、麻痺側声帯の硬化に
となり有意に改善した。MFR、Jitter、VHI-10では有意差
対してケナコルト注射を施行した症例が1例であった。麻痺
を認めなかった。
持続期間は、20 ~ 44 ヶ月、手術からVFE開始までの期間
一側声帯麻痺に対する音声改善術後例に対してVFEを行
は、2 ~ 27 ヶ月であった。内転術+神経筋弁移植術を施行
うとピッチの上限、声域が改善することが明らかになった。
した2例では術後12 ヶ月以上経過した後にVFEを開始した。
池上敏幸 1)、苅安 誠 2,3)
【目的】病院・言語聴覚士は、入院患者を診ることが多いが、
25年度は28例(新患20例、男16、女12)
、年齢3 〜 70
外来で患者を診るべきであろう。鹿児島県内の病院での音
歳、幼児が多く、吃音25例、音声障害5例で、言語の遅れ
声言語を外来で診る取り組み、臨床統計、ネットワークにつ
や構音障害の合併が数例あった。ホームページを見ての受
いて報告する。
診が13件、鹿児島県言語聴覚士会、幼稚園からの紹介も
【調査】期間は、平成25年1月から平成26年12月までの
あった。 平成26年度は34例(新患21例、男17、女17)
、
年齢4 〜 60歳、幼児・学童が多かったが成人も5例、吃音
主な音声言語障害、受診経路(紹介元)
、対応・経過(評
19例、構音障害5例、音声障害2例であった。ネット以外に、
価のみ、訓練、紹介先)を集計した。
姶良の小児専門病院や近医からの紹介も多かった。子ども
【結果】菊野病院(週6日外来)では、平成25年度は435例
(新患64例、男278、女157)
、年齢1 〜 83歳、平成26
の言語発達障害は、菊野病院に患者を紹介し、姶良の小児
専門病院へ返書を送り言語指導を依頼した。
年度は466例(新患88、男309、女157)
、年齢0 〜 82
【考察】鹿児島県内で、音声言語障害の外来を行っている2
歳、乳幼児が最も多く、小学生もかなりいた。「ことばの遅
病院での臨床統計では、言葉の遅れ、構音障害、吃音、音
れ」を主訴とした例が最も多く、保健師や保育士、市町村
声障害の診察に訪れる小児と成人が相当数あった。音声言
の発達相談会、児童発達支援事業所、他院からの紹介が
語障害は、幅広い年齢層で起こるため、子どもから高齢者
あった。吃音や音声障害があれば、鹿児島徳洲会病院を紹
までの受け入れる体制を作ることが望まれる。
介した。鹿児島徳洲会病院(月2回専門外来)では、平成
249
ポスター演題2日目
2年間とし、2病院での新患・継続の症例数と性別・年齢、
口頭演題2日目
菊野病院 総合リハビリテーション部1)、京都学園大学 健康医療学部 言語聴覚学科2)、
鹿児島徳洲会病院(医局) 音声言語外来3)
ポスター演題1日目
音声言語を外来で診る取り組み:鹿児島県内の病院の臨床統計とネット
ワーク
口頭演題1日目
披裂軟骨内転術(以下、内転術)+神経筋弁移植術2例、
特別プログラム
いる。今回、一側声帯麻痺の音声改善術後例に対するVFE
2-6-10
日 程
兒玉成博、讃岐徹治、湯本英二
2-6-11
言語聴覚士によるシャント発声リハビリの有用性
日 程
清水洋子 1)、福原隆宏 2)
鳥取大学医学部附属病院 リハビリテーション部1)、鳥取大学医学部付属病院 耳鼻咽喉科頭頸部外科2)
特別プログラム
【はじめに】ボイスプロテーゼによるシャント発声は、欧米
導のみであった。実際に使用できる様になるまでの指導回
では喉頭摘出後代替音声の第一選択となっている。しかし
数を介入群と未介入群で比較し、介入群については、指導
本邦では未だ限られた施設でしか行われておらず、その原
内容について後ろ向きに調査した。【結果】指導回数は介
因の一つはリハビリ支援が十分でないことが挙げられる。
入群平均7.73回、未介入群8.36回。 指導回数4回以下で
当院では、2010年に福原法という負担の少ない挿入法を
使用可能となった者18名。10回以上の指導を要した者は、
当院医師が開発したのをきっかけに患者数が増加し、言語
介入群5名、未介入8名。指導内容は、過緊張に対する指
口頭演題1日目
聴覚士(ST)のシャント発声へのリハビリ介入が始まった。
導が多く12名、発声時の気管孔閉鎖に対する指導が10名
指導回数、実施した指導内容、発声に関する問題点につい
であった。【考察】シャント発声獲得に、特別な発声指導
て検討し、シャント発声のリハビリへのST介入の有用性につ
を必要としなかった症例は約半数の18名であった。何らか
いて考察した。【対象・方法】当院でシャント挿入を行った
の発声困難を呈し指導回数が10回を超えて必要とした症例
全44名のうち、再発等の理由により評価できなかった5名
が、未介入群で多かった。発声困難に対する指導内容は、
を除く39名(STが介入した20名と未介入の19名)を対象
過緊張に対するアプローチが一番多かった。シャント発声獲
とした。介入群は医師の外来受診に加えSTによるリハビリ
得に対し、発声困難を呈する症例に対しては、ST介入によ
指導を行った。未介入群の指導は、外来での医師主導の指
るリハビリは特に有効と考えられた。
ポスター演題1日目
2-6-12
食道癌術後の嚥下障害について
森本邦子 1)、門司幹男 3)、深浦順一 2)、倉富勇一郎 3)
佐賀大学附属病院 先進総合機能回復センター 1)、国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科2)、
佐賀大学 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学講座3)
口頭演題2日目
【はじめに】2010年度の診療報酬改定において「がん患者
体に少量から中程度以上見られ、唾液の誤嚥が半数で見ら
リハビリテーション料」が新設され、がん患者へのリハビリ
れた。2)
咳反射による咽頭・喉頭の感覚は不良であった。3)
テーションの効果が期待されている。食道癌術後のリハビリ
喉頭の惹起性は半数で遅延しており、早期咽頭流入が見ら
テーションとしては、呼吸リハビリテーションの効果が多数
れた。4)咽頭クリアランスは3mlまで良好であったが、そ
報告されているが、摂食嚥下障害についての報告は少ない。
れ以上は複数回嚥下が必要であった。また、トロミ水につ
今回我々は、食道癌術後の摂食嚥下障害について検討した
いては、複数回嚥下でもクリアされない症例がいた。訓練
ので報告する。【対象】2014年1月〜 12月の間に、嚥下
は、直接訓練として、息こらえ嚥下や複数回嚥下や水分と
ポスター演題2日目
障害のリハビリテーション目的に当院耳鼻咽喉科へ紹介受
の交互嚥下や安全な食事形態や一口量の調整、間接訓練と
診された食道癌術後の患者10例とした。全例男性で平均年
して、声帯の過内転と促すプッシング法を用いた発声訓練
齢は68歳であった。【方法】対象患者のカルテより、初回
や喉頭挙上運動を促す裏声発声訓練を行っていた。【まと
に行った嚥下内視鏡検査の結果、訓練内容などについて検
め】食道癌術後の嚥下障害は、惹起遅延と反回神経麻痺に
討した。【結果】全例で反回神経麻痺(左側のみ:9例、両
よる声門閉鎖不全、感覚鈍磨、咽頭クリアランスが問題で
側:1例)が認められ、発声時の声門閉鎖は不完全であった。
あった。
嚥下内視鏡の結果は、1)安静時に唾液の貯留が咽喉頭全
250
2-6-13
木村暢夫、山本周平、中野貴雅、松尾真弓、衛藤素子、谷岡優花、園田大輔
独立行政法人 地域医療機能推進機構 湯布院病院 リハビリテーション科
藤森貴久、古木ひとみ、岩田恵子、原田真知子、清澤愛子、清水朋美、勝野健太、新江まりえ、
中澤修也、小境 悟、小山田菜美、笠原真紀、小松千尋、市川貴康
社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院
251
ポスター演題2日目
て極少量の菓子類の味を楽しんだ。
再入院68日目に全身状態が悪化し、看護師と協力し口腔内
衛生保持及び家族への心理的ケアを中心に介入。
再入院72日目に永眠された。
【考察】
神田は「進行がん・末期がん患者の嚥下リハは、改善の見
込みのある良性疾患や周術期の対応と異なり訓練の進め方
や対応に悩むことも多い。身体機能が徐々に悪化していく
終末期においては、積極的な機能訓練よりも代償手段の導
入や家族指導などが主体となり、心理面への配慮も必要で
ある」としている。
本症例に対し回復的リハ期では集中的に嚥下訓練を実施す
る事によりミキサー食の摂取が可能になり、維持的リハ期
では嚥下機能の維持改善を図るため外来リハにて自主訓練
や嚥下法の指導を行い、食事形態を上げることが可能となっ
た。さらに緩和的リハ期では楽しみレベルの経口摂取と、
家族も含めた心理的ケアを実施する事によりQOLの低下予
防の援助が出来たと考える。
口頭演題2日目
【はじめに】
がんリハは、病期別に予防的・回復的・維持的・緩和的介
入がある。これまで当院では回復的リハの介入が主であっ
たが、今回、回復的リハ期から緩和的リハ期の介入を行っ
た一例を経験したので報告する。
【症例】60歳台、男性、胸部食道癌。
術後両側喉頭麻痺に伴う嚥下障害を認めST介入。電気刺
激治療をはじめとした積極的な嚥下訓練と3回のVF検査を
実施。他職種とも連携し嚥下機能の改善に努めミキサー食
の摂取が確立され、入院100日目に自宅退院された。
退院後、食事状況聴取、自主訓練指導目的で外来リハを実
施。退院100日目にVF検査入院を行い全粥軟菜刻み食へ
形態変更した。
退院172日目に呼吸困難のため再入院となり多発転移を認
めた。肺転移に伴う呼吸困難に対し、気管支ステントを留
置し、再入院35日目より訓練レベルの経口摂取を再開した
が、激しいムセを認め、息こらえ嚥下等の代償手段を指導
しミキサー食の摂取を再獲得した。再入院56日目に誤嚥性
肺炎を発症したが、経口摂取の強い希望がありST介入下に
ポスター演題1日目
緩和的リハビリテーションまで介入した食道癌嚥下障害患者の一例
口頭演題1日目
2-6-14
間をベースライン期(以下、A1期)
、
バルーン訓練導入期(以
下、B1期)
、非導入期(以下、A2期)
、バルーン訓練再導
入期(以下、B2期)に区分した。RSST、RSSTの積算時間、
1日の平均食事時間について、測定値をプロットし、中央分
割法にてCeleration Lineを求め、グラフ化した。対象者
に、訓練における目的と方法を十分に説明し、同意を得た
上で施行した。【結 果】RSSTではB1期の改善が顕著で
あったが、RSSTの積算時間、1日の平均食事時間からみる
とB2期にも穏やかな改善を認めた。最終評価は、RSST:3回、
RSSTの積算時間:39秒、MWST:3、FT:3、MTFスコア:
11点(M4T2F5)となり、普通食が摂取可能となった。【考
察】バルーン訓練法は、廃用性狭窄の解除、咽頭収縮
や食道入口部開大に対する効果があり、頸部郭清術後の嚥
下障害に対する訓練としても有用であることが示唆された。
反復訓練の必要性に関しては今後も症例を重ねて検討した
い。
特別プログラム
【はじめに】頭頸部がん術後の嚥下訓練法として、バルー
ン訓練法の実施は文献等で散見されるが、その有効性を確
認した報告は少ない。 今回、頸部郭清術後10年経過した
嚥下障害患者の嚥下訓練に、バルーン訓練法が有効であっ
た1例を経験したので報告する。【症 例】70歳代、男性。
主訴「飲み込みが良くなりたい」
「食事時間がもう少し早く
なりたい」
。 現病歴:がん専門病院にて、平成X年原発巣
不明の左頸部リンパ節転移を認め、同年10月左頸部郭清
術施行。翌月6日から約1か月間、頸部に対する放射線治療
(60Gy)を施行。その後は自宅にて、1食平均2時間かけ
て食事を行っていた。今回、嚥下評価及び機能改善を目的
に当院嚥下外来受診となり、摂食嚥下リハビリを実施。外
来初診時評価:左迷走神経麻痺、左頸部肩部軽度拘縮。反
復唾液嚥下テスト(以下、RSST):1回、RSSTの積算時間:
117秒、改訂水飲みテスト(以下、MWST):3、フードテ
スト(以下、FT):3、MTFスコア:8点(M3T1F4)
。【方
法】シングルケースデザインABAB法を用いた。訓練期
日 程
頭頸部がん術後の嚥下障害に対するバルーン訓練法の有効性 ー 頸部郭清術後10年経過した嚥下障害患者の1例 −
2-6-15
日 程
日常生活への般化に至るまでに期間を要したTEシャント発声例の
ST介入意義について
喜多有理 1)、川見員令 2)、大脇成広 1)
滋賀医科大学 医学部 附属病院 耳鼻咽喉科1)、滋賀医科大学 医学部 附属病院 リハビリテーション部2)
「はじめに」TEシャント発声は喉頭摘出後の代用発声として
指導し、55日目にはMPT8秒、90日目には13秒となり発
食道発声に比べ発声の獲得が簡便で、電気喉頭より自然な
声困難感、疲労感は軽減してきたが、5分の訓練後に全く
特別プログラム
口頭演題1日目
音声が得られるとされている。今回、日常生活での音声使
声が出なくなるなどあり日常生活での使用には至らなかっ
用までに期間を要する症例を経験した。STの介入意義につ
た。そこで、日常生活の場面を設定した会話訓練に変更し、
いて考察する。「症例」61歳、男性。59歳で下咽頭癌と診
114日目で常套句発話、128日目で自宅中での会話4割程
断され、咽喉頭摘出、遊離空腸再建術、両側頸部郭清術、
度での使用につながった。「考察」本症例はMPTが13秒と
術後全頸部に放射線治療を施行。代用発声として電気喉頭
他施設の報告と比較しても平均レベルで、訓練場面では医
を習得し、より流暢な会話を希望され1年後2期的にTEシャ
療者との会話が成立し発声可能となった時期でも、日常生
ント形成術を施行。「経過と結果」術後3日目の訓練開始時
活での会話では殆ど使用されなかった。その要因としては、
には、新声門より振動を認めるが口腔内まで通気せず、6
声がすぐに出ないという状況、大きな声が出ないと伝わら
日目で初めて発声が確認できた。48日目まではMPTが5
ないのではないかという本人の不安、妻も声質への受け止
秒以内で6モーラ程度の発声のみ得られたが、息詰まりに
めができておらず、生活への般化には心理的な側面への介
よる発声困難と発声による疲労感が続いた。発話明瞭度2、
入が重要であった。発表では、CADL、Voice Handicap
発話自然度4、構音運動には問題はなかった。シャントを短
Indexなどの評価も加え、STの介入意義について報告する。
いサイズに変更し細い息と楽な発声を意識することを継続
ポスター演題1日目
2-6-16
生活期における、個別訓練と集団訓練を併用することにより、
心理的サポートに繋がった重度失語症の一例
安居和輝 1)、安居道子 1)、田中義之 2)
一般社団法人ことばの道 ことばの道デイサービス1)、神戸総合医療専門学校 言語聴覚士科2)
口頭演題2日目
【はじめに】ことばの道デイサービス(以下、
ことばの道)は、
た。また、失語症グループ訓練における心理・社会的側面
2008年4月に兵庫県神戸市須磨区に開設された。失語症
の評価表(中村ら、1998)を用いて、心理的変化を評価
や構音障害などの言語障害を持つ人を対象に、病院からの
した。【結果】ことばの道の利用開始時は、来所時から表
継続した生活期における言語リハビリテーションとして、集
情暗く俯き、しばしば泣くことも見られた。集団訓練におい
団訓練と個別訓練を行っている。今回われわれは、心理的
ても同様の様子で拒否することもあった。そのため、個別
な問題により集団訓練への参加が困難であったが、個別訓
訓練では、集団訓練参加に向け、口腔機能訓練や発声訓練
練を併用することにより集団参加に至った症例を経験したの
を実施し、できることを積み重ねた。また、会話訓練を行い、
ポスター演題2日目
で報告する。【対象】60歳代前半、男性、右利き。脳梗塞(左
安心して話せる場と時間を確保した。その結果、個別訓練
中大脳動脈閉塞)
。重度運動性失語症。X年Y月Z日、A病
でできたことを集団訓練時に実践するようになり、能動的な
院へ救急搬送。その後B回復期病院を経て、発症から約7
反応が増加した。さらに、笑顔も増え、他者への積極的な
か月後に自宅復帰し、同時期にことばの道の利用が開始。
あいさつや伝えようとする姿勢も増えた。評価表では、心
利用頻度は週2日(集団訓練は週2回各45分、個別訓練は
理的変化の改善を認めた。【まとめ】生活期においても心
週1回20分)
。【方法】ことばの道の利用開始日から2014
理的な問題を抱える失語症者に対しては、集団訓練を実施
年12月までの経過から、利用時の行動観察および訓練での
するに当たり、個別訓練を組み合わせ支援していくことがコ
反応を調べ、集団適応に至る心理的変化等について検討し
ミュニケーション能力の改善に繋がることが示唆された。
252
2-6-17
竹山彩未、高山汐里、十川純光、石川春香
医療法人渓仁会 定山渓病院
安田美智子
訪問看護ステーション みつぎ
【はじめに】今回、脳梗塞後遺症により重度要介護である訪
いかと考えた。仲間作りの場として、近隣の言語友の会を
紹介した。本症例と妻が言語友の会の定例会に参加するよ
初めて1泊旅行に行くまでの経過について振り返り、考察を
うになり、徐々に会に馴染んでくると、会の行事である1泊
加えて報告する。
旅行に行きたいと希望され、旅行を目標に経腸栄養の管理
【症例】S氏、70代男性。元内装業。要介護5。妻と2人暮
方法、経口摂取の内容の検討など行った。入会から約1年後、
らし。脳梗塞後遺症による右片麻痺、重度失語症、嚥下障
山口方面へ1泊旅行に行くことができた。
害を呈している。
【考察】訪問リハの目的は、機能面の改善やADL向上であ
ることが多い。しかし、訪問リハでは、生活の場を家庭から
院入院中に脳梗塞発症。急性期のB病院入院。状態落ち着
社会へ拡大するという視点が必要ではないかと考える。重
き、維持期のC病院に転院し胃瘻造設。主介護者である妻
度要介護者でも生活を見ていくことで社会参加の時期を図
が在宅復帰を希望し、リハビリ目的にて当院転院。平成X+
り、ボランティアなどのインフォーマルなものも含めた地域
1年、自宅退院。楽しみ程度の経口摂取を目的に訪問リハ
資源の情報を提供することで社会参加を促していくことがで
開始。平成X+2年経過し、楽しみ程度の経口摂取も継続可
きる。また、社会参加により人と関わる中で新たな目標が
能となった。
定されていたが、余暇的活動が全くなかった。生活状況を
出来たときに、実現する方法を提供できるのも訪問リハで
はないかと考える。本症例を通して、訪問リハが担う役割
を再確認することができた。
見る中で、社会参加を目的とした活動が可能な時期ではな
253
ポスター演題2日目
【経過1】平成X年8月、アルコール依存症治療のためA病
口頭演題2日目
問リハビリテーション(以下訪問リハ)利用者が在宅復帰後
【経過2】本症例の生活は介護保険サービスを受けながら安
ポスター演題1日目
重度要介護者の社会参加における訪問リハの役割
口頭演題1日目
2-6-18
特別プログラム
【はじめに】
る機会が増え見当識や短期記憶が向上した(HDS-R20点、
コミュニケーション障害が著しく集団コミュニケーション療
FAB11点)。
法(以下、集コ)に適応出来なかった一例に対し、集団の特
【考察】
性を持つ個別訓練(以下、小グループ訓練)を導入した事で
1.小グループ訓練によって、交流の成功体験が得られ自信
意欲・認知面に向上が認められたため報告する。
がついた事でコミュニケーション意欲が向上し、伝達の工夫
【事例紹介】
や自発性の向上に繋がり、患者さま同士の交流が促進され
A様、70代女性、パーキンソン病。不安神経症、中高度難
た。
聴、認知症(HDS-R17点、FAB6点)。
2.能力や境遇の近い患者さまと協力して訓練に取り組む事
【訓練経過】
で親密な対人関係が構築され、訓練が楽しみや生きがいと
1.訓練拒否あり傾聴中心に実施。徐々に不安症状が軽減し、 なり、全般的な意欲向上に繋がった。
他者交流に意欲的な発言が増加。
3.患者さま同士のコミュニケーションの中で互いに高め合い
2.集コ開始となるが難聴や周囲との認知機能の差から交流
喜びが共有された事で脳が活性化し、難易度の高い課題で
に多くの介助を要し否定的な発言が増加。訓練意欲低下し
の達成感を得られる機会が増えたことで認知機能の向上に
集コ中止。
繋がった。
3.個別対応が出来る小グループ訓練に訓練形態を変え、能 【おわりに】
力が同程度のB様と合同で訓練を開始。各担当STの援助で
小グループ訓練は1人1人の患者さまに個別対応ができ、
患者さま同士の交流が円滑化し、”一緒に長生きしようね” 能力に合わせた最大限の関わりが可能。今後は症例数を増
等の意欲的な発言が増加。 徐々に介助量が減り伝達の工
やし、小グループ訓練の有用性を示していきたい。
夫や自発性が向上。難易度の高い課題にも協力し達成出来
日 程
「一緒に長生きしようね」
−小グループ訓練によって意欲・認知面が向上した一例−
2-6-19
日 程
在宅復帰後、初期に混乱がみられた失語症一例の経過
〜地域リハビリテーションにおける言語聴覚士の役割〜
菊地晋平 1,2)、田村絵里1,2)、千吉良貴子3)、内海友佳2)、山田孝江2)、萩原和也4)、浦野幸子2)
訪問看護ステーション 孫の手1)、デイホーム孫の手・おおた2)、デイホーム孫の手・かさかけ3)、
居宅介護支援事業所孫の手4)
特別プログラム
【はじめに】退院後ADLはほぼ自立しているものの重度Bro
精神的負担軽減、症例の会話機会の増加を目的に通所を促
ca失語により、本人の混乱や妻の精神的負担増加を認め
し、拒否していた症例を利用開始に導いた。【考察】STと
た症例に対して、訪問リハビリ(以下訪問)と通所施設(以
して訪問や通所双方において目的を定めアプローチしてき
下通所)
、双方で関わった症例を経験したので報告する。【症
た。訪問では、言語機能の向上のみならず、症例や妻の精
例紹介】80代男性。脳梗塞発症(H25.
10)、退院(H26.
1)
神的安定にも繋げることができ、通所を促し一つの社会参
後、週2回訪問、週1回通所利用。妻と二人暮らし。【評価】
加を導いた。コミュニケーションに問題を抱えたまま急性期
口頭演題1日目
WAB、Com−Bを施行。【経過】入院中はリハビリを拒否、
病院を退院し、早期より在宅でSTが関わる症例は非常に少
帰宅願望も強く妻に対する暴言などが認められた。言語機
ないと感じる。失語症による精神的混乱がみられた症例に
能において表出面は単語レベルで低下、理解面は簡単な日
対し、退院後早期にSTが適切にアドバイスすることによる存
常会話は可能。症例は妻と意思疎通が困難で自暴自棄にな
在の重要性を改めて感じた。機能面も含め、地域において
り自傷行為もみられ、妻の精神的負担は増加。STは退院後
居宅における問題や社会交流を受け入れるに至るまでの環
3日目より訪問開始し、まず症例・妻・サービス事業所担
境や精神整備は、非常に役割として大きいと考える。今後、
当者とコミュニケーションにおける情報共有を図った。訪問
地域リハビリテーションという環境は、STが活躍できる職域
において機能的練習以外に、居宅内の会話手段の問題な
として本症例を通し、再認識することができた。
どを把握し、妻と症例双方に会話指導を実施。また、妻の
ポスター演題1日目
2-6-20
当院における言語聴覚士の役割に関する臨床検討
中根知子 1)、森本邦子 1)、池下博紀 1)、前田香織 1)、佐藤慎太郎 2)、倉富勇一郎 2)
佐賀大学医学部附属病院 先進総合機能回復センター 1)、佐賀大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科 頭頸部外科2)
口頭演題2日目
言語聴覚士は現在約2万4千人の有資格者を生み出してい
検査、音響分析、知能検査など多岐に渡っていた。訓練は
る。しかし、聴覚障害や小児言語障害といった領域を対象
難聴や構音障害、言語発達遅滞などは小児が対象であり、
とする言語聴覚士の数は多いとはいえず、日本言語聴覚士
外来での対応が主であった。音声障害や嚥下障害などは成
協会でも有資格者5分の1程度の約5千人と公表されてい
人が主な対象であり、入院中からの対応も多くみられた。
る。当院の言語聴覚士は開院以来、耳咽喉科所属として勤
入院症例の大多数は頭頸部癌を含む耳鼻咽喉科領域の術
務し、嚥下障害や成人言語障害のみならず聴覚障害や小児
後の訓練であった。また、耳鼻咽喉科以外の科の症例でも
ポスター演題2日目
言語障害についても対象としている。当院における言語聴
反回神経麻痺をはじめとして耳鼻咽喉科医との密接な連携
覚士の役割を考えるにあたり、耳鼻咽喉科の専門的な領域
を要する症例が多くみられた。(3)入院中にリハビリを開
への関わりを把握することは有用であると考え、業務内容
始した症例の大多数が癌を基礎疾患としており、退院後の
について検討を行った。
外来訓練へ継続または経過観察している症例もみられた。
検討の対象は2014年4月1日〜 2015年12月31日に言語
まとめ:当院の耳鼻咽喉科担当の言語聴覚士は、脳血管疾
聴覚士が検査もしくは訓練を行った症例であり、これらの
患、変性疾患を除く全ての領域を対象とし、多様化するニー
症例について(1)年齢(2)実施した検査および訓練(3)
ズに応じて外来・入院に関わらず携わっていた。成人症例
経過の各項目につきレトロスペクティブに検討した。(1)0
は入院患者が主であり、年齢、ADL、摂食・嚥下機能、家
歳〜 90歳までの幅広い年齢を対象としていた。(2)聴力
族支援、訪問リハビリの有無は外来リハビリ移行への要因と
検査や補聴器適合検査を始め、嚥下内視鏡検査や音声機能
して重要であった。
254
2-6-21
当院における脳卒中急性期リハビリテーションの現状分析について
社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 リハビリテーション課1)、
川崎医療福祉大学大学院 医療技術学研究科 感覚矯正学専攻 博士後期課程2)、
社会医療法人祥和会 脳神経センター大田記念病院 循環器内科3)
されていた。また2013年では、脳梗塞例679名(全体の
DPC)とは、診断群分類包括評価を用いた入院医療費の
82%)
、脳出血例186名(全体の89%)
、SAH例36名(全
定額支払い制度である。当院は年間約1200例の脳卒中患
体の39%)に実施されていた。月平均リハ実施量は2011
者が入院する急性期病院であり2009年よりDPCを導入し
年では1798単位であったが2013年度では2064単位で
ている。近年、脳卒中急性期リハの早期介入や実施量の増
あった。入院からリハが開始されるまでの日数は平均3.65
加、チームアプローチの重要性が指摘されている。しかし、
日から2.74日へと変化した。平均在院日数の短縮もみられ
DPC病院におけるリハ部門の現状について検討されたもの
た。【考察】2011年度と2013年度では、
セラピストが増え、
休日出勤の体制も変化していた。2011年度は、PTは12名
報告する。【対象・方法】対象は2011年と2013年に入院
で休日出勤は5名体制、OTは7名で2名体制、STは6名で2
し、脳血管疾患等リハを受けた脳卒中患者である。方法は
名体制であった。一方で2013年度は、PTは16名で5名体
girasol分析ソフトを用いて平均在院日数やリハ開始日数、
制、OTは11名で4名体制、STは9名で3名体制であった。
リハ実施量を抽出した。【結果】2011年では脳梗塞例624
セラピストを増員したことが主に平日のリハ実施量の増加に
名(全体の68%)
、脳出血例198名(全体の84%)
、SAH
つながり、休日出勤者数を増加したことがリハ開始日数の
例36名(全体の57%)に対して脳血管疾患等リハが実施
短縮につながったものと考えられた。
当院における精神科急性期病棟での取組みについて
〜専任STの配置、地域移行・退院後の安心した生活に向けて〜
板垣康司、岩水章彦、武田伊織、本池理史、山崎吉隆、藍田翔太、松本太蔵、廣江ゆう
医療法人養和会 養和病院 リハビリテーション課
あった。その後の退院促進・地域移行に伴い、一般入院患
完結型」から、地域全体で支える「地域完結型」への方
者は減少し、現在では精神科急性期病棟入院患者(3 ヶ月以
向性が示され、この流れは精神科領域においても例外では
内の退院が前提)へのリハ指示が増加し、介入対象も認知
ない。我が国の精神科病棟では入院患者の高齢化、認知
症、精神障害、知的・発達障害等へと拡大、さらなる地域
への早期退院促進・退院後の安心した生活への支援が求め
の移行が進まず入院が長期化するケースが問題視されてい
られるようになった。【おわりに】多くのSTにとって精神科
る。当院では平成26年6月より精神科急性期病棟へ専任ST
は未知の領域である。しかし、実際に介入すると、摂食嚥下・
を1名配置し支援を開始した。STの精神科急性期専任は全
高次脳機能障害、知的・発達障害をもつ方が多い事に気付
国的にも非常に珍しい。今回は当院での取り組みについて
いた。これらはもともとSTが専門とする領域である。これ
報告する。【取組み】当院では身体障害に対するリハ支援と
らの方に対し専門的な関わりを行うことで、地域移行に貢献
して、平成23年よりPT、平成24年よりOT、平成25年よ
できることが分かってきた。今後は、地域での安心した生
りST介入を開始、平成26年より専任STを1名配置した。当
活を支える為、訪問看護、就労支援事業所等との連携を強
初はリハ算定可能な一般入院患者(3 ヵ月以上の入院、又は
めていきたいと考えている。また、社会適応が難しい知的・
精神科退院後3 ヵ月未満での再入院、他精神科病院からの
発達障害者のかたもおられるため、社会への適応支援がで
転院、又は長期的治療が必要と医師が判断した患者)に限っ
きる体制作りも検討している。
ての介入であり、対象は摂食嚥下・高次脳機能障害のみで
255
ポスター演題2日目
症、脳卒中等により身体障害を合併する例も多く、地域へ
口頭演題2日目
【はじめに】現在、社会保障・税一体改革において、
「病院
ポスター演題1日目
2-6-22
口頭演題1日目
は少ない。今回、当院のDPCデータをもとに検討したので
特別プログラム
【はじめに】Diagnosis Procedure Combination(以下
日 程
時田春樹 1,2)、野間 陸 1)、三縞明希子 1)、橘高美波 1)、村上琴美 1)、井上雅博 3)
2-6-23
日 程
リハビリテーション専門職作業療法士(OT)の職業性ストレスとの関係に
ついて 〜精神科病院作業療法士との比較を通して〜
日置久視
日本聴能言語福祉学院 補聴言語学科
特別プログラム
【目的】リハビリテーション専門職(PT OT ST)における各職
意に低かった。p<0.01疲労度では、一般病院で有意に高
種と職業性ストレスとの関係については前回の報告で明ら
く回復期リハ病院で低かった。p<0.01ストレス原因因子は
かにしたが、その中で特に作業療法士にストレスが集中して
仕事の負担度では総合病院や回復期リハ病院が有意に高く
口頭演題1日目
いる可能性がみられた。そこで、今回は精神科病院に勤め
精神科病院で有意に低くなっていた。p<0.01 働きがい
る作業療法士を調査対象に含めて施設ごとの職業性ストレ
では有意差は認められなかったが精神科病院で高い傾向が
スについて考察する。【方法】医学的リハビリテーションを
みられた。【考察】年齢については精神科病院では、業務
行っている病院に勤める作業療法士119名を対象に2010
内容が比較的固定しているため定時に帰宅できており離職
年から2011年にかけて自記式質問紙調査を行ったものに
が少ないことにつながっているのではないかと推測された。
新たに2014年に精神科病院に勤める作業療法士51名(回
有意に低かった回復期リハ病院についてはアクティビティが
収率43.2% )を対象に行ったものを含めて比較分析した。
高い環境で若手スタッフを多く起用している点やバーンアウ
有意差検定はScheffeの多重比較を用いて行った。【結果】
ト得点、ストレス度も有意に高くなっている点が在籍期間の
年齢では精神科病院で有意に高く、回復期リハ病院で有意
短縮につながっているのではないかと推測された。しかし、
に低かった。p<0.01バーンアウト得点では回復期リハ病院
働きがいについては4群で有意差は認めなかったものの回
で有意に高く、総合病院で有意に低かった。p<0.05スト
復期リハ病院で高い傾向にあり、専門技術が生かされてい
レス度では回復期リハ病院で有意に高く、精神科病院で有
ることを反映していると考えられた。
ポスター演題1日目
2-6-24
本学園における児童発達支援事業について
福永陽平 1,2)、福永晴香 1,3)、提 雄輝 1,2)、戌亥啓一 1,2)、植木章子 2,4)、西 洋介 2)、
松尾康弘1)、小牧祥太郎 1)
口頭演題2日目
鹿児島医療技術専門学校 言語聴覚療法学科1)、学校法人原田学園ことばの支援センター 2)、しらゆき保育園3)、
鹿児島キャリアデザイン専門学校 こども学科4)
こどもの支援には、命を救うための周産期医療、子育て世
ウを生かし、地域の子どもたちがいきいきと生活するため
代の保護者のストレス・悩みを解消するための子育て支援
の手助けを他職種連携により実現する事を目的とし、平成
事業、発達障害を抱えるこどもの発達を促進する発達支援
25年10月より原田学園ことばの支援センターの運営を開始
事業の3つが存在する。2010年、本県はこども療育センター
した。また、平成26年4月に指定事業所認可を取得し、学
を開設した。しかしながら、受け入れには限界があり、発
習障害や自閉症、構音障害などのある1歳〜 18歳を対象と
達障害の診断や支援を受けることが出来ずに待機する児童
して支援を行っている。ことばの発達に対するニーズは非
ポスター演題2日目
数が平成24年度末時点で、およそ300人という状況となっ
常に高く、本センターにおいてもニーズに応じた体制強化
ている。このように行政による発達支援事業が立ち遅れる
に力を注いでいる。現在、言語聴覚士の活用といった地域
中で、民間の発達支援サービスは急速な広がりをみせてお
支援事業の構築のため、本学が運営する保育園、高等学
り、地域社会におけるニーズが高い事を示唆している。本
校等への言語聴覚士の配置と支援、さらには、保育士と幼
学園は幼稚園・保育園、高等学校および各種専門学校を運
稚園教諭を養成する学科のカリキュラム再編を行い、言語
営しており、人間教育ならびに本県の教育文化の進展に率
聴覚士の活動や支援等を学習するためのプログラム策定を
先して取り組んでいる。長きにわたって培った学園のノウハ
行っている。
256
2-6-25
教育委員会、小学校、言語聴覚士会の連携による放課後学習支援の試み
医療法人 川村会 くぼかわ病院 リハビリテーション部 言語聴覚療法室1)、
高知リハビリテーション学院 言語療法学科2)
【はじめに】文科省(2013年)は、通常学校にも特別支援
人の読む、書く、聞く、視る領域別評価とその対処法を具
の必要な児童が6.5%程度在籍している可能性を報告して
体的に書類で示し、伝達した。
【結果】児童の参加率は100%であった。児童の能力評価
門家による巡回相談等が行われているが、STが直接、児童
で問題のみられた児童数は、それぞれ11名中、読む6名、
の評価や学習支援を行った試みはみられない。今回、教育
書く6名、聴く8名、視る8名であった。教諭への伝達では、
委員会、小学校、言語聴覚士会の連携で、小学校児童に対
担任より児童の評価が理解できたこと、また、具体的な対
しSTが評価及び学習支援を実施する機会を得たので報告す
応法について、授業に応用できることできにくいことの報告
る。
があった。
【目的】学習に問題のある児童の能力評価を目的とした。
【考察】児童の能力評価では、読む、書く、聞く、視る課
その際、保護者の拒否感が予想される発達検査の実施は見
題の実施により、概ね児童個々の能力を数値化でき、今後
の学習支援に繋げることができた。教諭へ伝達した具体的
任教諭に伝えることも目的とした。
な対応法では、一斉授業で使いやすい技術使いにくい技術
【方法】実施期間は10から12月の週1回、計10回。 対象
があることを考慮した学習支援を考えることが重要と思われ
は小学校1から6年生の11名。 児童の能力評価は、読む、
た。
書く、聞く、視る課題を実施した。担任教諭へは、児童個々
森近千穂、細川淳嗣
県立広島大学 保健福祉学部 コミュニケーション障害学科
257
ポスター演題2日目
に有用な支援(2件法)
、5) 発達障害に関して望む情報と
その取得方法(選択肢)
、6) 発達障害者と業務上での関わ
り経験(再質問)の全46問である。なお、3)及び4) は役
所の行政手続きなどの場面を想定した質問を入れた。
【結果と考察】
一般行政職でも業務上で発達障害者に関わっている可能性
は高い。一方障害名といった概要の認知がその症状や支援
方法の認知に必ずしも繋がっていないことが示された。ま
た、職場研修で業務に沿った支援を知りたい希望が多数あっ
た。
本研究は特定の市役所での実施であるため、この結果の一
般化には限界があるが、一般行政職に対しても、発達障害
に関する研修のニーズは高く、窓口対応において起こりう
る問題の例示とそれへの対応方法など、業務に即した内容
が求められていることが明らかになった。今後は、本研究
に基づいた研修の企画および実施を市役所と連携して実施
する予定である。
口頭演題2日目
【はじめに】
平成17年に発達障害者支援法が施行されて以来、発達障
害関連領域職種に対する発達障害の認知度調査が行われて
きた。一方、発達障害者へ直接支援をすることは少ないも
のの、行政手続きなどの窓口業務で関わる可能性がある市
役所の一般行政職も含めた認知度調査は行われていない。
本研究では、役所の全職員へのアンケート調査を実施し、
発達障害の認知度の実態把握および地方公共団体内での
発達障害に関する研修のあり方について検討した。
【方法】
X市市役所全常勤職員876名に対し、調査の依頼文と発達
障害に関する無記名調査用紙を配布し、研究者に郵送で返
送があった有効回答74.2%の回答について分析した。なお、
調査用紙返送で本研究への協力同意とした。
質問内容は1) 職種、発達障害者と業務上での関わり経験(2
件法)
、発達障害に関する情報収集方法等の基本情報、以
下先行研究も考慮し、2) 発達障害の概要の認知度(4件法)
、
3) 発達障害者の行動の特徴と、4) 発達障害者に関わる際
ポスター演題1日目
市役所職員へのアンケートから示された発達障害の理解と支援への課題
口頭演題1日目
送った。また、能力評価から個々の児童への対応方法を担
特別プログラム
いる。これに対し、言語聴覚士(以下、ST)等の外部の専
2-6-26
日 程
西田香利 1)、西森有紗 1)、岸田江美子 1)、竹内ゆず 1)、山本理恵 1)、稲田 勤 2)
2-7-01
言語聴覚士が活用できるコーチング理論—言語聴覚士教育への導入
日 程
小薗真知子、栗林幸一郎
熊本保健科学大学保健科学部リハビリテーション学科言語聴覚学専攻
【はじめに】近年、コミュニケーションの技法の1つとして
自分の特性5項目を抽出する、2.特性の似通った学生ごとに
「コーチング」が人材育成や自己啓発に活用されている。
グループに分かれ、特徴的な思考・行動のパターンをディ
医療福祉系の専門職でも、コーチングを生涯学習に取り入
スカッションし表にまとめる、3.全体が集まり、各グループ
特別プログラム
れる職種が増えているが、言語聴覚士における活用は他職
の成果を発表し特性の違いによる多様性を理解する、とい
種に比し少ない状況である。言語聴覚士は言語聴覚障害の
う流れをとった。
【結果】参加学生の意見で多かったのは、
「こ
専門家ではあるが、職場での人間関係や実習生指導の難
れまで自分では短所と思っていたことが、長所として生かせ
しさを訴える現職者は多く、このような面でコーチング理
るということを知って驚いた」
「同じテーマでも、特性が違
論が活用できると思われる。言語聴覚士の養成教育は言語
うと全く違う方向からの捉え方があることを実感した」など
口頭演題1日目
聴覚障害の専門的知識・技術が主であり、人間関係にかか
で、これまでと違う視点で自己と他者の関係を理解できたこ
わる広義のコミュニケーションについて学ぶ機会は少ない。
とがあげられた。【まとめ】良好なコミュニケーション関係
今回、コーチングを学生教育に取り入れコミュニケーション
を築くには、自己肯定感を持ち、他者の価値観の多様性を
の基盤育成を試みたので報告する。【方法】言語聴覚学専
認めることが重要である。今回の試みを通して、自己理解
攻の4年生43名に対し正規の授業時間でコーチング理論を
から他者理解、そして相互理解を深めるためにコーチング
取り入れた講義、演習を実施した。演習の具体的手順は、
の理論を活用することは、言語聴覚士のコミュニケーション
1.授業前に各自で、ストレングス・ファインダーを活用して
力向上の一助となることが示唆された。
ポスター演題1日目
2-7-02
当院言語聴覚療法部門における卒後教育システムの現状と課題
〜回復期リハビリテーション病棟での実践から〜
清水宗平 1,2)、土屋 朱 1)、市川 勝 1,3)
口頭演題2日目
医療法人社団 哺育会 さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科1)、
介護老人保健施設 横浜あおばの里 リハビリテーション科2)、AMG協議会リハビリテーション部3)
【はじめに】当院リハビリテーション(以下リハ)科では卒後
介入について実技を中心に構成し、その後のリハ計画やモ
教育の充実を目的に、職能要件書を主体とした教育システム
ニタリングに直結しやすいよう配慮した。以降、中期研修
(以下ラダー)を構築している。また言語聴覚療法部門(以
を実施する中でラダーを用いた面談を実施し、その結果に
ポスター演題2日目
下ST部門)においては、2014年度よりラダーを基盤とし
ついて管理職から本人および教育担当STそれぞれにフィー
た独自の教育計画を策定し卒後教育を実践したので、その
ドバックを行った。【ラダーの効果】入院時初回評価やベッ
内容について考察を加え報告する。【ラダーの概要】部署、
トサイドでの直接的嚥下訓練の自立時期が2013年度と比
職種、職種共通の項目それぞれの職能要件書を用いた卒後
較し約1か月早まった。また、入院時に経口以外にて栄養管
教育は、2013年度よりリハ科全体での運用を開始した。同
理を行っていた回復期リハ病棟入院患者のうち、新卒STが
年度末に教育担当ST4名および2013年度入職の新卒ST3
担当となった患者の経口摂取への移行率も前年度実績より
名を対象に、ラダーについて「教育が十分だった点」
「不十
も高い結果となった。職能要件書についても、上半期の結
分だった点」
「来年度の新人教育に追加すべき内容」に関
果をフィードバックすることで、下半期により多くの項目を
するアンケートを実施した。その結果から、2014年度の重
通過することが可能となった。【考察】ラダーを中心に臨床
点項目として「摂食嚥下障害への介入とリスク管理」を掲
で新人が躓きやすい摂食嚥下リハに焦点を当て初期研修を
げることとし、回復期リハ病棟配属の2014年度新卒ST3名
組み実践した結果、一定の効果が得られた。今後は、多様
を対象に、初期研修として2週間の集中的なOJT、Off-JT
な側面の教育にいかに活用していくかが課題である。
を実施した。入院時の包括的評価および摂食嚥下障害への
258
2-7-03
清水宗平 1,2)、市川 勝 1,3)
医療法人社団 哺育会 さがみリハビリテーション病院 リハビリテーション科1)、
介護老人保健施設 横浜あおばの里 リハビリテーション科2)、AMG協議会リハビリテーション部3)
【はじめに】本研究の目的は、地域リハビリテーション(以
業は全ての学生が受講しており、内容として在宅生活の維
持、社会参加の推進などが多かった。一方、
「地域包括ケ
役割について、言語聴覚士(以下ST)養成校の学生がど
アシステム」
「2025年問題」では「聞いたことはあるがよ
のように認識しているかを明らかにすることである。【対象・
く分からない」との回答が多かった。訪問STに関する授業
方法】対象は2年制〜4年制の専門学校および大学に在籍
も全ての学生が受講しており、内容として活動や参加への
する学生50名で、調査用紙は養成校への郵送、または直
介入、家族指導などが多かった。また訪問STへの関心につ
接訪問により、養成校教員に実施を依頼した。調査項目は
「地
いて、講義、実習ともに関心があるとの回答が多い一方で、
域リハに関するもの」および「訪問STに関するもの」7項
就職後訪問STに携わることに対して積極的でない傾向がみ
目ずつであり、結果は統計学的および質的に分析を行うこ
られた。今後STが必要とされる領域としては、
「終末期」
や
「認
知症」との回答が多かった。【考察】訪問STの地域ニーズ
にて説明し同意を得た。【結果】学生の属性として20代の
は高く(2013清水)
、地域包括ケアシステムにおいてSTが
学生が最も多かった。現時点で希望する就職先としては成
どのように貢献し、役割を明確にできるか、は喫緊の課題
人領域で病院、介護老人保健施設が多く、ついで小児施設
である。しかしながら、これらに対する学生の認識は十分と
の順であった。一方、訪問看護ステーションや訪問リハ事
は言えないため、訪問リハなど地域で活動するSTが卒前教
業所を希望する学生は皆無であった。地域リハに関する授
育にさらに関わっていく必要があるものと考えられた。
大内田博文、徳田和恵、原 延枝、大田史穂
福岡国際医療福祉学院 言語聴覚学科
259
ポスター演題2日目
導者評価に比べ有意に低かった(p<0.05)。自己と指導者
の評価の差と実習総合成績は前後半とも負の相関を認めた
(各々 r=-0.55、r=-0.62)
。 実習前後のGSESは相関が高
い(r=0.81)が、自己評価や指導者評価、実習総合成績と
は相関を認めなかった。
【考察】後半実習は前半実習に比し自己評価が下がり、指
導者評価が向上傾向を示した事で評価の差が拡大した。実
習を重ね自己課題を客観視できた為と考えられる。自己評
価が指導者評価より低い事は、指導を真摯に受け止め、自
身を律した現れであろう。自己課題を見つめ努力する姿が
実習総合成績の良さに反映したと考えた。実習総合成績を
言語聴覚士の適性評価の一つと捉えるならば、自己の客観
的評価は臨床家としての重要な要素と思われた。自己効力
感は実習経験の影響を受けず、自己評価とも関連は無かっ
た。自己評価に与える要因について今後検討を重ねる必要
がある。
口頭演題2日目
【はじめに】大卒2年課程の当学院では臨床実習が初の臨床
体験となる。前半と後半の2度の実習において、指導者の
指摘で臨床での自分の不足点に気付く事も多い。指導の多
さや改善の乏しさ等の背景には自己評価と指導者評価のず
れが関係している可能性がある。実習成績の自己評価と指
導者評価の差が実習総合成績に関連するか検討し、その要
因について調査した。
【方法】言語聴覚学科2年生34名を対象とした。実習成績
表のA.実習に臨む基本的な姿勢・態度の7項目、B.医療従
事者としての基本的マナーの3項目、C.学習面の6項目の
評価を数値化し、前半と後半の各実習終了時に、学生に自
己評価を、指導者に指導者評価の記載を求めた。自己評価
平均から指導者評価平均を差分し、プラス値を自己評価が
高い、マイナス値を自己評価が低いとした。自己と指導者
の評価の差を前半実習と後半実習で比較し、その差と実習
総合成績や自己効力感をみるGSESとの相関をみた。
【結果】前半実習で差は無いが、後半実習の自己評価は指
ポスター演題1日目
臨床実習における自己評価と指導者評価の差に関する研究
-自己評価と臨床実習成績との関係について
口頭演題1日目
ととした。なお倫理的配慮として、アンケート実施者に書面
特別プログラム
下リハ)および訪問言語聴覚療法(以下訪問ST)の概念や
2-7-04
日 程
地域リハビリテーションと訪問言語聴覚療法についての卒前教育の現状
〜言語聴覚士養成校へのアンケート調査から〜
2-7-05
日 程
言語聴覚士国家試験の合否に影響を与える要因
−在学時学業成績と模擬試験の得点推移−
後藤多可志、春原則子、立石雅子、宮本昌子、今富摂子、小林智子、都筑澄夫、高崎純子、
齋藤佐和
目白大学 保健医療学部 言語聴覚学科
特別プログラム
口頭演題1日目
と不合格者群(n=13)に分類し、3年次秋学期までの累積
【はじめに】言語聴覚士指定養成校において国家試験の合
GPA(Grade Point Average)と、国家試験受験年度の
格率を高く維持することは、在学生の学習意欲向上に繋が
20XX年9月〜翌年1月にかけて学内で毎月1回実施した模
るだけでなく、入学志願者数増加への有用な対策ともなり
擬試験の得点を検討した。
得る。したがって、養成教育において国家試験の合否に影
響を与える要因を明らかにし、科学的根拠のある効果的な 【結果】国家試験不合格者群は、合格者群に比して3年次秋
学期までの累積GPAが有意に低かった(p <.05)
。また、
国家試験対策を展開することは非常に重要な意味を持つと
国家試験受験年度の20XX年11月と翌年1月に実施した模
思われる。しかし、現状では言語聴覚士の国家試験の合否
擬試験の点数が有意に低かった(p <.05)
。
に影響を与える要因については未だ十分な検討が行われて
【考察】
3年次秋学期までの学業成績を指標にすることによっ
いない。
て、国家試験合格に困難を示す学生を早期抽出できる可能
【目的】言語聴覚士国家試験合格が危ぶまれる学生の早期
性が示唆された。さらに、国家試験受験年度の11月の段
抽出を目的に、国家試験合格者群と不合格者群における3
階で模擬試験の成績が十分でない学生に対して学習到達度
年次までの学業成績と国家試験対策模擬試験の得点を分析
を確認するとともに学習方法についての丁寧な指導によっ
した。
て、国家試験合格が危ぶまれる学生の早期抽出・早期対応
【方法】対象者は、4年制大学の言語聴覚士養成課程で言
に繋がるのではないかと考えられた。
語聴覚療法学を学び、第α回言語聴覚士国家試験を受験し
た学生44名である。対象者を国家試験合格者群(n=31)
ポスター演題1日目
2-7-06
当院回復期リハビリテーション病棟における言語訓練拒否の実態
馬場 恵、萩原由香、角田美奈、保坂敏男
山梨リハビリテーション病院 リハビリテーション部 言語療法課
口頭演題2日目
【はじめに】言語聴覚療法は個室で行うことが原則であり、
みられたケースは12名であった。拒否の内容では、
「言語
理学療法、作業療法に比べ、机上で行う検査バッテリーや
訓練自体を拒否」が11名、
「検査を拒否」が9名、
「課題を
教材の数が多いことが特徴である。 臨床の場では、言語
拒否」が5名であった。担当STの対応は、リハ時間の変更・
訓練に対し、拒否がみられるケースを経験することがある。
分割・短縮、他職種への相談、机上の検査の非実施、訓
今回、言語訓練への拒否の実態、経過、言語聴覚士(以下
練内容の変更等であった。経過では、拒否の状態に「変化
ST)の対応について調査を行ったので報告する。【対象と
あり」が11名、
「変化なし」が10名であった。【考察】言語
方法】平成26年4月から9月に当院回復期リハビリテーショ
訓練対象者の23.
6%に訓練拒否がみられ、言語障害の種
ン(以下リハ)病棟に入院し、言語訓練を行った患者89名。
類では、高次脳機能障害に伴うCom障害が最も多く、自分
ポスター演題2日目
言語訓練への拒否の有無、拒否の内容、担当STの対応、
の状況を認識していないことも拒否の要因の一つと考えら
経過について調査した。【結果】言語訓練に対し何らかの拒
れた。拒否の内容では、言語訓練自体を拒否するケースが
否がみられたケースは21名(男性13名、女性8名、平均年
最も多かった一方で、検査や課題で拒否がみられたケース
齢71.
1歳、発症から入院までの平均日数31.
2日)であった。
もあり、各種検査で評価を行い、様々な教材や課題を用い
言語障害の種類は、失語症3名、運動障害性構音障害3名、
て訓練を実施することが困難なケースがみられた。やりとり
高次脳機能障害に伴うコミュニケーション障害(以下Com
や会話の中で、評価、訓練を行うといったSTの技術向上が
障害)15名であった。そのうち、ST以外のリハにも拒否が
より必要となると思われた。
260
2-7-07
和田英嗣
医療法人さくら会 さくら会病院 リハビリテーション科
【はじめに】本症例は両側脳幹・小脳梗塞を発症後、重度
向上を図ることを検討した。摂食の意識化、取り込み〜嚥
の構音障害、摂食・嚥下障害と高次脳機能障害を呈した。
下に至る間の口唇閉鎖の意識化や介助、取り込み時の舌上
刺激や感覚入力などを行いながら、同時に間接的嚥下訓練
を実施し自己摂取に至ったので、その介入経過を報告する。
も可能な範囲で実施した。経過とともに口唇からの漏出は
【症例】70歳代、男性。MRIにて両側椎骨動脈閉塞によ
軽減し、徐々にベッド角度を座位へ、また側臥位から仰臥
る脳幹・小脳の多発性脳梗塞を発症。第4病日目に症状の
位へ姿勢を変更した。経過中に実施したVF検査では、咀嚼、
増悪を認めた。既往歴は高血圧。第25病日目に当院回復
食塊形成、送り込み不良は継続しており、固形物は粉砕さ
期病棟に転棟。【経過】JCSΙ‐1。口唇、舌ともに右側に強
れないまま嚥下に至る状態であった。75病日後、発話明量
度2-3、藤島Gr.8、食事形態は副食は粗刻み、全粥、水分
度4。藤島式摂食・嚥下グレード(以下、藤島Gr.)7。準備
とろみ。車椅子座位での自己摂取の状態となった。
【まとめ】
期〜咽頭期障害を認め、食事形態は刻みにあんを掛け、全
本症例は間接的嚥下訓練には協力が得られにくかったため、
粥、水分とろみ。口唇閉鎖不全、食塊形成や送り込み不良
直接的嚥下訓練を通して機能訓練を実施した。口腔機能低
を顕著に認めたため、ベッド45度左側臥位で全介助摂取。
下は残存しているものの、発話明瞭度や食事形態、摂取姿
摂食中にも注意障害の影響が観察された。間接的嚥下訓練
勢の改善に至った。実際の摂食場面においても、口腔機能
に対して協力が得られにくく、直接的嚥下訓練を通して機能
の向上のための工夫が必要であることを再認識した。
真田恵子、神田 亨、田沼 明
静岡県立静岡がんセンター リハビリテーション科
ポスター演題2日目
261
口頭演題2日目
会話も曖昧。 徐々に改善みられ、聞き手の配慮があれば
【はじめに】癌の治療過程で、脳梗塞を合併し失語症を呈す
簡単な日常会話は概ね可能になったが、すぐに独居に戻る
ると、自分で意思を決定することが難しくなる場合がある。
今回、化学療法施行中に脳梗塞を発症し失語症を呈したが、 ことは困難と思われたため、本人に理解を促し、54病日リ
ハビリ病院へ転院。(2)転院先から自宅退院3日後(113病
自ら意思を伝え、自宅退院に至った症例を経験したので報
日)
、心房細動の疑いで当院に緊急入院。心機能は安定し
告する。
たが、原因不明の嘔吐と食欲不振、不正出血が続き退院延
【症例】70代女性。X年食道癌(T3N0M0)の診断で、化学
期。抑鬱に対する内服開始、ジギタリス製剤中止、子宮留
放射線療法施行。完全寛解を得た。X+6年CTにて胃小彎
膿腫の治療施行、看護師と栄養士が中心となり食事内容を
リンパ節再発を指摘され開腹術を施行、腹膜播種を認め試
工夫。131病日頃より、食欲が徐々に回復。家族は転院を
験開腹のみ、X+7年2月から化学療法施行、治療中の同年
希望したが、本人はST時「ご飯が食べられるようになった
6月に脳梗塞を発症。CTで左前頭葉〜島に低吸収域を認め
から、自宅に帰りたくなった」と発言。主治医と家族にも思
た。脳梗塞発症前は独居、ADL自立。
いを伝達でき、医療相談員が介入しサービスを調整、139
【神経学的所見】軽度右片麻痺、嚥下障害。
【神経心理学的所見】中等度失語症、注意障害。SLTA
「聴く」 病日自宅退院。
【考察】癌の治療中に失語症を呈した患者の退院支援は、
単語の理解7/10、
「話す」呼称12/20、
「読む」漢字単語
多職種が病状に合わせて介入し、本人と家族がその時々の
の理解7/10、仮名単語の理解6/10。
思いを表出できる場を設けることが重要と考えられた。
【経過】(1)7病日から言語聴覚療法(以下、ST)
、理学療
法開始。意識はJCS1桁、コミュニケーションは簡単な日常
ポスター演題1日目
化学療法施行中に脳梗塞を発症し失語症を呈した食道癌患者の本人の意志
に合わせた退院支援の一例
口頭演題1日目
く麻痺症状の出現あり、軟口蓋拳上不全も認め、発話明瞭
特別プログラム
入院当初から訓練拒否があったため、主に直接的嚥下訓練
2-7-08
日 程
主に直接的嚥下訓練での介入を継続し自己摂取に至った摂食・嚥下障害の
一例
2-7-09
日 程
摂食嚥下リハビリテーションにおけるSTの役割
〜回復期から生活期への効果的な情報提供〜
神野 民 1)、小島一宏 1)、宇野木昌子 1)、山本映子 1)、江端広樹 2)
済生会神奈川県病院 リハビリテーションセンター 1)、済生会神奈川県病院 リハビリテーション科2)
特別プログラム
口頭演題1日目
濃度』『むせの有無』『誤嚥の有無』であった。訪問看護
師では、
『経口摂取の可否』『経腸栄養剤の種類・内容』『現
状の食形態』『摂食方法』『服薬方法』『むせの有無』『痰
の有無・量・性状』であった。3)の他職種に求める情報に
ついては、病棟看護師は挙げられる項目が少なく、訪問看
護師では嚥下障害の症状だけでなく、栄養、義歯・口腔ケ
ア等の歯科領域、摂食場面での条件設定(代償法を含む)、
間接訓練方法など多岐に渡った。患者の入院中は多職種が
それぞれに専門的な関わりを持つため、回復期病棟看護師
は摂食場面での直接症状に着目する傾向だが、訪問看護師
では多岐に渡って着目し、かつ情報として欲していることが
わかった。STは嚥下障害患者に最も近く関わっている職種
として、多職種の情報を総合的に把握できる。そのため退
院時にはST領域に関わる情報だけでなく、包括的な内容を
提供することが、在宅生活への円滑な移行に繋がると考え
られた。
【はじめに】摂食嚥下障害患者に対するより良いチームア
プローチの実現を目的に、院内関連職種に対し摂食嚥下臨
床に関わる際の注目点と他職種に求める情報についてアン
ケートを実施した。その結果の中から回復期病棟看護師と
訪問看護師の回答に着目し、言語聴覚士(以下、ST)が看護
師との協業・情報共有について心掛けるべき点について検
討した。
【方法】当院で摂食嚥下障害患者に関わる関連職種にアン
ケートを実施。1)職種・職種経験年数・回復期病棟経験年
数、2)摂食嚥下障害を抱える患者と関わる際の観点につい
ての注目度(42項目を各4段階評価)と特に重要視している
観点(上記より5項目を抽出)、3)他職種に求める情報(2)の
項目から選択し、求める優先度を2段階で評価)について回
答を得た。
【結果と考察】回答数は回復期病棟看護師43名、訪問看護
師7名であった。回復期病棟看護師が2)で「必ず注目して
いる」項目は、『経口摂取の可否』『水分のとろみの有無・
ポスター演題1日目
2-7-10
脳幹梗塞に伴う重度嚥下障害に対する急性期STの役割
榊田知美 1)、小泉智枝 1)、大塩 歩 1)、相原元気 1)、田中友梨 1)、祖母井龍 2)
医療法人社団KNI 北原国際病院 リハビリテーション科1)、医療法人社団KNI 北原国際病院 脳神経外科2)
口頭演題2日目
【はじめに】球麻痺により重度嚥下障害を呈した症例に対し、
し、ベッドサイドにてsqueezing・胸郭可動域訓練・咳嗽訓
発症直後からST介入し、状態変化に合わせた対応を継続し
練に努めた。当初気管切開の可能性もあったが、13 〜 16
て行い、40病日目に直接的嚥下訓練まで実施可能となった
病日合併症なく経過できた為、医師より気管切開は施行せ
一例を経験した為報告する。【症例】80代男性。右延髄外
ずと判断された。25病日離床が図れるようになりADLが拡
側・小脳梗塞を発症。初期評価時JCSΙ-1、認知機能保持、
大。頸部・体幹機能向上が頭頸部の安定や口腔器官の協
右上下肢体幹失調、右軟口蓋運動麻痺、解離性感覚障害、
調性に奏功し、頸部右回旋位で氷片摂取可能となった。咳
ポスター演題2日目
咽頭感覚低下、口腔器官の協調性低下、粗造性嗄声を認
嗽力も高まり、嗄声も軽減した。34病日VF実施。食道入
めた。これらによる混合性構音障害や球麻痺による重度嚥
口部開大不全を認め、バルーン拡張法とOE法を施行し、
下障害を呈し、藤島Gr.2であった。【経過】2病日ST開始。
40病日頸部正中位にてトロミ水3cc摂取可能となった。【考
咳嗽力は弱く、痰量が日増しに増加。無気肺・誤嚥性肺炎
察】容態が変動し易い急性期において、嚥下・発声発語機
を合併し、5病日経鼻気管内挿管となった。合併症改善後、
能を客観的に評価し、その時々に必要な訓練・ポジショニ
13病日抜管。口腔器官の協調性低下により口腔内の唾液
ング調整等、柔軟な対応を行った。早期から継続的に介入し、
も出せず。咳嗽力低下と気息性嗄声も認めたが、pushing
十分なリスク管理のもと合併症・廃用症候群の予防に努め、
法で咳嗽力と声質が改善した。抜管後から痰や唾液の自己
積極的なリハビリテーションを行ったことが早期嚥下機能改
喀出が可能となるまでの期間、合併症予防と嚥下・発声発
善につながったと考える。
語機能改善図る為、リスク管理のもとポジショニングを徹底
262
2-7-11
重度軸索型ギランバレー症候群の発声・発語と経口摂取の実用化までの経過
市立奈良病院 リハビリテーション室1)、同 栄養室2)、同 神経内科3)、同 耳鼻いんこう科4)
レッツチャットの使用につなげた。45病日より唾液随意嚥下
後良好とされており、重度GBSに対するST介入の報告例は
改善、少量水分嚥下開始。68病日よりカフ脱気下で水分
少ない。今回、43日間の人工呼吸器管理後、発声・発語
嚥下開始。下位脳神経Ⅶ,Ⅻの障害は依然として強く、咽頭
と経口摂取の実用化に至った症例の経過を報告する。【症
期の回復が先行した。そのため顔面・舌運動・咀嚼訓練を
例】30代女性。入院時JCS2、ICUにて同日人工呼吸器管理。
強化。94病日には痰量減少、夜間カフ脱気可能となり、レ
17病日気管切開、カフ付カニューレ装着。18病日よりST
ティナへ変更。スピーチバルブ装着下で発声可能、発話明
介入。【ST介入時神経学的所見】意識障害、四肢弛緩性麻
瞭度は2に至った。101病日とろみ刻み食1食開始、106病
痺、呼吸筋麻痺、構音・嚥下障害、膀胱直腸障害、左難
日VF評価後3食開始、翌日に気切カニューレ抜去。115病
日軟菜食自力摂取、RSST5回、藤島グレード8に改善、発声・
発語、経口摂取ともに実用レベルに達し、125病日に転院
首振りで表出。嚥下は、RSST0回、藤島グレード2、唾液
となった。【まとめ】急性期のGBSにおけるST介入として、
不顕性誤嚥持続。まず、コミュニケーションの継続と口腔
初期には意思伝達手段の確保、発声発語器官の廃用性萎
運動機能の改善及び廃用・拘縮予防のための基礎訓練を実
縮・拘縮の防止、直接嚥下訓練段階では、下位脳神経障害
施。43病日人工呼吸器離脱。意識障害は改善傾向、脳神
の改善過程に即した集中的な顔面・舌運動及び段階的なカ
経Ⅰ,Ⅵ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ,Ⅻの障害が依然強く認められた。コミュニケー
ニューレ変更が回復の促進につながったと考える。
ションは50音読み上げ法を導入、上肢麻痺改善に合わせ、
重度嚥下障害を呈した球麻痺の1例
—嚥下反射惹起不全に対するリラクゼーション中心の訓練について—
久保維子、池田美樹、伊藤純平、高橋秀寿
埼玉医科大学 国際医療センター リハビリテーションセンター
筋群に対し筋力増強訓練を実施した。しかし、4週間過ぎ
に難渋した1例を報告する。【症例】60歳代男性。既往は
ても変化なく、努力的な嚥下動作が見られていることから、
静脈血栓症、多発陳旧性小梗塞。ADLは自立していた。【現
喉頭挙上筋群の過緊張に起因する喉頭挙上不全の可能性を
病歴】 X年Y月、眩暈を自覚し当院に受診し、左延髄外側
考え、リラクゼーション中心の介入に切り替えた。更なる過
と橋被蓋部外側の急性期梗塞、脳底動脈狭窄症の診断で
緊張軽減のため低周波を使用し、4日過ぎた第34病日に嚥
下反射惹起が見られた。第36病日より直接嚥下訓練を開始
JCS1、失調症状がありADLに介助が必要であった。構音
し、咽頭内圧を高める筋力増強訓練に切り替えた。第61病
面は3度の鼻漏出があり、軽度開鼻声であった。左顔面神
日に常食で自宅退院となった。【考察】 本症例は、陳旧性
経麻痺は軽度で、会話明瞭度は1.5/5であった。嚥下面は
小脳梗塞や脳底動脈狭窄があることから、球麻痺に偽性球
RSST0回/30秒、咽頭反射を認めず、唾液嚥下困難であっ
麻痺が合併し、喉頭挙上筋群の過緊張が嚥下反射の妨げに
た。MWST3点で嚥下反射惹起を認めず嚥下前に誤嚥した。
なったと考えた。途中からリラクゼーション中心の訓練に切
第10病日に初回のVFを実施したが、食塊が下咽頭に停滞
り替えたが、もう少し早期に反射惹起不全の原因の検討を
し、喉頭マッサージ施行も嚥下反射は生じなかった。咽頭
行う必要があった。また、低周波を使用し始めてから嚥下
期に起因する重度の嚥下障害であった。
【経過】初期評価時、
反射が見られ、一定の効果があったと思われるが、自然回
口腔内圧不十分と喉頭挙上筋群の筋力低下に起因する喉頭
復との判別が難しい症例であった。
挙上不全と思われ、冷却刺激と鼻咽腔閉鎖機能や喉頭挙上
263
ポスター演題2日目
入院となった。 第2病日にリハビリが開始された。【評価】
口頭演題2日目
【はじめに】球麻痺により喉頭挙上不全をきたし、嚥下訓練
ポスター演題1日目
2-7-12
口頭演題1日目
聴【経過】介入時JCS10、四肢麻痺に加え下位脳神経は
ほぼすべて障害されlocked-in状態。意思はわずかな頷き・
特別プログラム
【はじめに】一般的にギランバレー症候群(以下GBS)は予
日 程
東谷 彩 1)、木下舞子 1)、上田佳世 1)、小瀧弘正 1)、田中芳果 2)、宮崎将行 3)、福田多介彦 4)、
長見周平 3)
2-7-13
日 程
び慢性脳損傷(DBI)でAnarthrieは起こるか?
−外傷例にみられた発話障害を通して−
佐藤幸子 1)、古口徳雄 1)、小嶋知幸 2,3)
千葉県救急医療センター 1)、市川高次脳機能障害相談室2)、武蔵野大学 大学院3)
特別プログラム
口頭演題1日目
ポスター演題1日目
【はじめに】脳損傷後の発話障害の1つであるAnarthrieの
責任病巣については、多くの脳血管障害例を通して、中心
前回であることで一定の見解が得られている。今回、局所
性脳損傷の明らかでないDBI例においてAnarthrieが疑わ
れたので、その臨床経過から発話障害の機序について検討
した。
【症例】20代右利き男性。交通外傷(出血性ショック、意識
障害、骨盤骨折、右大腿骨骨折、右下腿不全切断)。現病
歴:X日、オートバイと乗用車との接触事故。数時間後に発
見され搬送。 即日、右下腿切断、骨盤創外固定術、開腹
止血を施行。
【初診時放射線学的評価(X日)】頭蓋骨骨折なし。中心前回
を含め頭蓋内に所見を認めず。
【 初 診 時 神 経 心 理 学 的 評 価(X+22日 〜 )】 意 識)
GCSE4V1M6。傾眠。
コミュニケーション能力)無力性嗄声(+)。YES−NO形式で
のやりとり可能。
発声発語器官および摂食嚥下機能)右口角下垂、挺舌時
右偏倚(+)
。 奥舌並底化(+)。RSST不可、MWST段階4、
2-7-14
FoodTest段階3。複数回嚥下後、
むせ出現。喉頭挙上不良。
咳嗽反射減弱。
【経過および再評価(X+3か月〜 X+5か月)】意識障害から
の回復に、約3か月要した。
発声発語器官に軽度の右麻痺が残存。 口部顔面動作拙
劣。 発話面では、嗄声改善や声量増加に伴い、自発話
が 増えたが、 話し方に違 和 感を訴えた。 聴 覚 的 印 象で
は、 一 音ずつの 構 音に明らかな歪 みはない が、 前 後 の
音環境によって音の渡りの不自然さが散見され、軽度の
Anarthrieを疑い、文水準の音読訓練を実施。その他、全
般的精神機能活動低下、全般性注意障害、右方向性注意
障 害 を 認 め、MMSE25→26/30、HDS-R29→29/30。
RCPM27→31/36、KohsIQ73.4→84.4と推移した。
【考察】少なくとも形態画像において、中心前回を含む局所
脳病変が明らかではないにも関わらず、軽度のAnarthrie
が疑われた外傷後DBI例を経験した。機序については推測
の域を出ないが、病変に影響されず、発話に対する言語病
理学的診断の重要性が示唆された。
選択式SFA・PCAによる急性期の呼称訓練の効果
石井由起 1,4)、坂本佳代 1)、鶴田明子 1)、大竹奈央 1)、田上正茂 1,2)、浅井 亨 1)、春原則子 3)
川口市立医療センター リハビリテーション科1)、同センター救命救急科2)、目白大学3)、
元目白大学大学院リハビリテーション学研究科4)
口頭演題2日目
【はじめに】急性期に失語症の言語訓練を始めると、回
比較した。【結果】訓練語の呼称成績は5名中4名で有意に
復期以降開始や未治療と比べ最大のリハ効果が得られる
改善し、選択式SFAとPCAの双方の改善が2名(うち1名は
(Robey,1998)。ただし、国内で有効性を示す研究はほと
非訓練語も有意に改善)
、選択式PCAのみ改善が2名だっ
んどない(鶴田,2010)。急性期失語症リハ効果のエビデン
た。全く改善しなかったのは1名だった。改善した4名は初
スを上げるには、自然治癒を更に促進できる具体的な機能
回SLTAの単語聴理解・読解や復唱・音読が良好〜軽度だっ
訓練手法の検討が必要である。昨年、本学会で報告した選
たが、改善しなかった1名は聴理解・読解は良好なものの
ポスター演題2日目
択式SFA・PCAによる呼称訓練(石井ら,2014)を急性期に
復唱・音読が不良だった。【考察】選択式SFAやPCAによ
実施し、訓練効果及び初回SLTA成績との関係を検討した。
る訓練語の呼称成績は非訓練語の改善度に比べ有意に改善
【方法】参加者は発語失行や全失語を除いた流暢性失語
し、自然治癒に加えて訓練効果があったものと推察された。
症5名(SLTA呼称重度3名・中等度1名・軽度1名。ST開始
今回の結果はGodeckeら(2012)による急性期失語症の訓
1-14病日目。訓練回数4-10回)。リスト語呼称を実施し(ベー
練効果を示した報告を支持した。また、今回の訓練による
スライン)、正答率5割以下の単語を選択式SFA、選択式
急性期の呼称改善にはSLTAの単語音読・復唱成績が関与
PCA、非訓練語の3条件に分けた。いずれかの訓練で呼称
している可能性があった。症例により訓練効果の現れ方に
正答率が連続2日80%を超えた、または転・退院予定の前々
違いがあったことから、今後、症例数を重ねて喚語困難の
日を訓練最終セッションとした。直接確率法またはχ2検定で
障害機序と訓練効果の関連性について検討したい。
参加者毎にベースラインと最終2セッションの呼称正答率を
264
2-7-15
冨田三鈴、竹迫仁則、金城亜紀、渡辺啓子、新町咲子
公立学校共済組合 九州中央病院
前田秀作 1)、野口理衣 1)、松原有紗 1)、畠山裕子 1)、益田梨絵 1)、牧野 光 1)、六角順菜 1)、
川田育二 1)、陣内自治 1)、大西皓貴 1)、笠井新一郎 2)
JA徳島厚生連 阿南共栄病院 耳鼻咽喉科1)、宇高耳鼻咽喉科医院2)
進展度分類第2層であり、手・足をばたつかせる随伴症状
調整法がある。しかし、環境調整法だけでは吃音が改善し
も認められた。【訓練経過】吃音の改善、流暢な発話の獲得、
ない例も多い。今回、吃音と構音障害を合併した児に対して、
正常構音の獲得を目的に言語訓練を開始した。訓練内容は、
環境調整法と直接的言語指導及び構音訓練を実施した。そ
主に環境調整法と直接的言語指を実施した。本児の吃音を
の結果、
吃音が消失し、
構音にも改善を認めたため報告する。
軽減させる関わり方として、
EasySpeech(楽な発話モデル)
【症例プロフィール】6歳4か月男児(初診時年齢4歳9か月)。
を導入した。直接的言語指導では、
しりとり、音韻遊びをゲー
A保育所に在籍。家族構成は、父、母、二卵性双生児の兄姉、
ム感覚に取り入れ実施した。構音指導は、吃音が安定した
時期に再評価を行い、獲得できていない構音の訓練を行っ
月頃に吃音を発症し、経過を見ていたが、半年後に悪化し
た。【結果】訓練開始後、徐々に吃音は減少し、随伴症状、
たため友人へ相談し当院を勧められ受診した。【評価CA4:
情緒性反応は認めなくなった。その後、非流暢性発話も認
09】聴力は標準純音聴力検査で正常範囲であった。言語
めなくなり、悪化することなく、吃音は消失した。WPPS
I知
発達は、絵画語い発達検査(PVT)で、語い年齢5歳11か
能診断検査の再評価は、VIQ120、P
IQ121、IQ125であっ
月、SS14であった。構音は、/su、so/、/t
su、dzu/
た。発表では、吃音が消失した要因と構音、言語能力の変
が未獲得であった。WPPS
I知能診断検査は、VIQ97、P
IQ
化について検討し、報告する。
124、IQ113であった。吃音は、ブラッドシュタインの吃音
265
ポスター演題2日目
本児。両親ともに高校教諭である。来院経緯は、3歳9か
口頭演題2日目
【はじめに】幼児期の吃音への重要なアプローチとして環境
ポスター演題1日目
吃音の消失と構音の改善を認めた児一例
口頭演題1日目
2-7-16
特別プログラム
と同様STとNsで間接訓練、食事観察を実施した。再入院
8病日目にVF施行。前回と大きな変化は認めず。食事は前
回より形態を下げた嚥下調整食L2(ミキサー粥・半固形食)
で対応し人工流動食を併用した。妻においては、栄養指導
を再度行い、調理法や宅配食の注文法を記載したパンフレッ
トを作成。また退院前カンファレンスを施行し再入院19病
日目に退院をした。
[考察]誤嚥性肺炎を繰り返し呈した原因として、放射線療法
後の嚥下関連筋群の機能低下及び既往の胃管再建術後の
吻合部狭窄、妻に対し嚥下状態の情報提供不足により起き
たと思われる。退院より数か月経過するが大きな問題なく
経過し、食事形態の維持や宅配も継続して行えておりパン
フレットの作成は有効であった。急性期病院は多職種での
協働は必須であり地域を見据えた対応が必要となる。今後
も適切な評価、訓練を行った後に本人が望んだ方向へ進め
るようにチームで取り組むことが大切であると考える。
[はじめに]誤嚥のリスクはあるも経口摂取継続を希望した症
例を経験した。経口摂取継続を目標に摂食嚥下チームでア
プローチを行ったので報告する。
[症例紹介]70代男性、誤嚥性肺炎を発症。既往歴に胸部
食道癌(胃管再建術)
、脳梗塞、頸部食道癌(化学放射線
療法)あり。
[経過]3病日目に介入。評価にてはちみつ状とろみ10mlで
むせあり。嚥下調整食L3(全粥・半固形食)を摂取。訓練
内容はST及びNsで間接訓練、食事観察を施行。7病日目
に嚥下造影検査(以下VF)を実施。明らかな誤嚥や喉頭
侵入はないも咽頭残留あり。また食道に食物停滞がみられ
たが一定以上の貯留は認めず。主治医より誤嚥のリスクが
あることを伝えた後に経口摂取を希望した。食事は嚥下調
整食L3を継続し横向き嚥下を行い摂取。妻に対し栄養指導
を施行。11病日目に自宅退院をした。しかし退院から24日
後に誤嚥性肺炎で再入院となった。当日より介入し、はち
みつ状とろみ7mlで咽頭貯留音を認めた。訓練内容は前回
日 程
経口摂取を強く望んだ食道狭窄症の1例
〜誤嚥性肺炎を繰り返した食道癌後患者へのアプローチ〜
2-7-17
日 程
アクセントが吃音生起に与える影響の検討
〜第2音節への移行に着目して〜
新発田健太郎 1,2)、前新直志 3)
那須脳神経外科病院リハビリテーション部1)、国際医療福祉大学大学院言語聴覚分野2)、
国際医療福祉大学言語聴覚学科3)
特別プログラム
【はじめに】臨床において吃音を軽減させるために語のアク
まえ、本研究では第2音節に着目することとした。そこで、
セントをなくした平板な発話を用いることがあり、これは発
第2音節をV、CVの2種に統制した。【結果】アクセント別
声発語器官の緊張を和らげる効果がある。日本語のアクセ
の吃音生起率は高いほうから自由→頭高→平板→尾高の順
ントと吃音生起に注目した研究には小児を対象とした報告
であり、一元配置分散分析で検討した結果、アクセントによ
(Matsumoto-Shimamori,2013)があり、これによるとア
る吃音生起率に有意な差が認められた(F=3.23, p=0.008
クセントの位置やパタンによる吃音生起率に有意な差は示
<0.05)。音節構造については、CVに比べVのみの場合に
されていない。今回、成人を対象にアクセントを統制した
吃音生起率が低かった。音素別でみた場合、/g/を含む音
条件での吃音生起率を調べ、さらに吃音が生起した語にお
節で最も吃音が生じやすいことが判かった。さらに被験者
口頭演題1日目
ける音節構造について検討した。【対象・方法】発達性吃
個々でみると、それぞれに特徴が認められた。【考察】アク
音と診断された男性2名(A:20歳、B:19歳)とした。課題
セント条件において、吃音が最も生じにくいとされる平板型
語は2音節非語とし音読で行い、条件はアクセントと音節構
よりも、吃音を生じにくいタイプがあることが分かった。音
造の2つを設定した。アクセントは頭高、尾高、平板、被験
節構造でCVの場合に吃音生起が高まることは、子音がある
者任意(以下;自由)の4種とした。音節構造については、
ことによって音節移行の難易度が高まるのではないかと推
第1音節の吃音生起(例:音節の繰り返し)は第2音節への
測される。今後対象者を増やして検討する必要がある。
移行の困難さによるとする知見(Shimamori,2007)を踏
ポスター演題1日目
2-7-18
発吃が5歳頃であった1成人吃音例について
金塚智恵子 1)、若島 睦 1)、能登谷晶子 2)、丸山裕美子 3)
黒部市民病院 リハビリテーション科1)、金沢大学 医薬保健研究域保健学系 リハビリテーション科学領域2)、
黒部市民病院 耳鼻咽喉科3)
口頭演題2日目
【はじめに】発吃が5歳頃で、20歳で初診した成人吃音例に
返し、言い直しあり。音読:短文でブロック、ブロック+音・
ついて報告する。【症例】初診時20歳8 ヶ月、右利き男性、
音節の繰返し、文章ではブロック、ブロック+語句の繰返し
大学3年生。【主訴】就職活動に入るため、吃らないように
がみられた。プロソディー:異常なし。各検査での吃回数
したい。【生育歴】問題なし。【家庭環境】両親は教育熱心
は数回だった。【随伴症状】自由会話・質問応答時には頸
で、幼い頃から多くの習い事をしていた。両親ともに躾が
部を動かす身体随伴症状、文章の音読では心理行動反応の
厳しい傾向にあった。【性格】人見知りが強い。【吃歴】本
回避が観察された。【質問紙による評価】都筑の吃音質問
ポスター演題2日目
人からの聴取では、発吃は5歳頃で小学3、4年生の時に音
紙では、話への注目が6/8項目、構音運動の意図的コント
読がとくに苦手で、他人と自分の話し方が違うと自覚した。
ロールが3/11項目、延期が5/10項目、回避が2/5項目該
高学年では、言いにくい言葉を別の語に言い換えて話すよ
当した。CMIでは領域2(どちらかといえば正常)であった。
うになるにつれて、他人と話すことが苦手となった。大学生
一般性自己効力感尺度(GSES)では、段階2で自己効力感が
となり、挨拶語で吃り始めた。アルバイト先の店長から吃
低い傾向を示した。 吃音の重症度は、Bloodsteinの進展
音を指摘され、吃る機会が増えた。【発話課題評価】ディア
段階の第4層と判断した。【考察】小学生頃から吃音を自覚
ドコキネシス:とくに問題なかったが、全て開始時にブロッ
していたが、訓練歴はなく、就職活動をきっかけに訓練を
クが出現した。自由会話・質問応答:
「えーと」の挿入がみ
希望して来院した例である。当日は臨床経過を含め、若干
られた。単語呼称:ブロックが1回。復唱:短文で語句の繰
の考察を加え報告する。
266
2-7-19
児童精神科と連携を図った吃音症例
宮城県立こども病院 発達支援部
【はじめに】中学3年生で高校受験を控え、面接もあるので
症状としては第2層だが認知感情面では第4層で本人の悩み
吃症状を治したいという主訴で来院したケースに対し、児童
も深いと感じた。【経過】初回情緒不安定であり家庭環境
精神科医と臨床心理士との連携をはかり無事高校入学を果
も複雑であり、言語のみに焦点をあてず、心理面の掘り下
げのため主治医と相談し児童精神科医と臨床心理士にも関
診時15歳女子。右利き。始語1歳台。二語文2歳台。3歳
わってもらった。精神科医からは「不安障害」の診断がつ
児健診で言語面の指摘なし。幼児期の吃症状は母の記憶に
き服薬も開始した。STはリラクゼーション、ゆっくりと単音
ない。家庭環境は本児が小学1年生の時父母離婚。母に引
節、単語の復唱。文の斉読を行った。6回の指導で自由会
き取られた。3年生で吃症状をからかわれ数日不登校。言
話でのブロック消失。朗読で初頭音の繰り返しやブロックは
語相談機関に赴くも軽度とのことで特に指導なし。4年生で
みられたが本児はめげずに読み通せた。高校も合格し笑顔
本児が母を否定し父の元へいく。5年生で父が病気になり
で終了した。【考察】本ケースは吃音の発吃時期の認識も
小学3年生と遅く、家庭環境も不安定で情緒面の問題が大
諭より本児の吃音が悪化しているとの指摘があり、当院に
きいケースだった。ST以外に児童精神科と臨床心理士が入
来院。【症状】初回で朗読や自由会話でブロックあり。また
ることで精神的に安定し、吃症状も軽減し連携が有効であっ
咳払いもある。吃症状について本児に尋ねるとぽろぽろ泣
た。
き出し情緒反応もみられた。吃音の進展段階でみると吃音
鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音症例の実態
山田紘子 1)、武井良子 1)、今井智子 2)
昭和大学 歯科病院 口腔リハビリテーション科1)、北海道医療大学 心理科学部 言語聴覚療法学科2)
【目的】声門破裂音は、口蓋裂や先天性鼻咽腔閉鎖不全症
ポスター演題1日目
2-7-20
口頭演題1日目
再度母の元へ戻った。中学3年生の2学期に担任と養護教
特別プログラム
たし吃症状も軽減したケースについて報告する。【症例】初
日 程
佐藤直子、大塚由香
り音の種類、声門破裂音以外の誤り音の有無と種類とした。
【結果】初診時年齢は2歳から22歳で、平均5.7歳であった。
鼻咽腔閉鎖機能不全のない言語発達遅滞や機能性構音障
性別では男性17名、女性1名と男性が多かった。発達に問
害症例にも少数例出現することが知られているが、発症原
題がある症例や、舌小帯短縮症を伴う症例がみられた。ま
因や臨床的特徴は明らかになっていない。今回われわれは、
た、初語の出現が遅い、偏食や丸呑みなど摂食に関わる問
鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音症例の臨床的特徴
題がある、舌の随意運動機能が低いなどの傾向がみられた。
を明らかにすることを目的に実態調査を行ったので報告す
声門破裂音の誤り音では/k/が最も多く、ついで/ts//t//s/
る。
口頭演題2日目
などの鼻咽腔閉鎖機能が不全な症例に多くみられる。一方、
が続き、無声音に誤りが多かった。構音様式別では破裂音
および摩擦音、構音点別では歯茎音と軟口蓋音の誤りが多
例18名である。鼻咽腔閉鎖機能については、聴覚判定に
かった。声門破裂音以外の誤りでは置換が多く、/s//ɕ/の
て開鼻声や呼気鼻漏出による子音の歪みを認めないことに
/h/への置換など舌を使用しない音への置換が多くみられ
加え、構音時に鼻息鏡にて呼気鼻漏出を認めないことを確
た。
認した。また、声門破裂音の診断は、聴覚印象および構音
【結論】鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音は多様な臨
操作の観察にて行った。調査項目は、初診時年齢、性別、
床像を示し、言語発達や舌運動機能、摂食に関する問題な
言語発達および器質的問題の有無、初語の出現時期、摂食
どさまざまな要因が関連している可能性が示唆された。
に関わる問題の有無、舌の随意運動機能、声門破裂音の誤
267
ポスター演題2日目
【方法】対象は、鼻咽腔閉鎖機能不全のない声門破裂音症
2-7-21
日 程
鼻咽腔閉鎖機能と異常構音の関連性の検討 −ナゾメーターでの客観的評価を用いて−
上島佑佳里 1)、寺島さつき 1)、藤田研也 2)
長野県立こども病院 リハビリテーション技術科 口唇口蓋裂センター 1)、
長野県立こども病院 形成外科 口唇口蓋裂センター 2)
特別プログラム
【目的】ナゾメーターは鼻咽腔閉鎖機能を客観的に評価が
歳、L群8.3歳、性別(男/女)H群8名/12名、L群12名/8
できる検査法であるが、その数値が実際の構音障害の出
名、疾患は口蓋裂単独H群9名、L群13名、軟口蓋裂H群2名、
現頻度、種類にどのように影響しているかという報告は少
L群1名、両側唇顎口蓋裂H群1名、L群3名、粘膜下口蓋裂
ない。今回、われわれはナゾメーターでの客観的評価と構
H群4名、L群3名、先天性鼻咽腔閉鎖機能不全H群4名、L
音の関連性を調査した。【対象】2013年8月から2015年
群0名であった。言語訓練の有無はH群が20名中8名、L群
1月の間に当院口唇口蓋裂センターを受診され、ナゾメー
は1名のみ施行していた。異常構音は声門破裂H群3名、L
ターでの鼻咽腔機能評価とSTによる音声言語評価ができ
群0名、口蓋化H群0名、L群1名、側音化H群1名、L群4名、
た87名を対象とした。【方法】ナゾメーターでの評価(母
鼻咽腔H群1名、L群0名、その他H群11名、L群4名であっ
音、4word、高圧文:キツツキパッセージ)の平均値(以下
た。疾患と訓練の有無で2群間に有意差を認めた。
(p<0.05)
口頭演題1日目
N-score)
を求め、N-scoreの高い群
(以下H群、平均:43.8)
、
【結語】N-scoreが高い群では先天性鼻咽腔閉鎖機能不
低い群(以下L群、平均:7.7)それぞれ上位20名を選出し、
全の患者が多く、また訓練を継続的に施行していることが
2群間で比較検討を行った。調査項目は、年齢、性別、疾
明らかとなった。異常構音に関しては必ずしもN-scoreが高
患、言語訓練の有無、異常構音の有無(声門破裂、口蓋化、
値であるから出現するというわけではなく、その他の誤りが
側音化、鼻咽腔、その他の誤り:浮動的な音の誤りや歪み)
多い結果となった。
とし、2群間で有意差検定を行った。
【結果】平均年齢H群9.6
ポスター演題1日目
2-7-22
言語聴覚外来における評価・鑑別の重要性
−構音を主訴に来院した児を通して−
田上真希 1)、吉田充嬉 1)、伊藤美幸 1)、石原章子 1)、高原由衣 1)、池田美穂 1)、竹山孝明 1)、
坂本 幸 1)、佐藤公美 1)、笠井新一郎 1)、宇高二良 1)、長嶋比奈美 2)
口頭演題2日目
医療法人真樹会 宇高耳鼻咽喉科医院1)、九州保健福祉大学 保健科学部 言語聴覚療法学科2)
ポスター演題2日目
【はじめに】
当院の小児言語聴覚外来には、構音の誤りを主訴に多くの
児が来院している。しかし、初診時評価において構音以外
にも問題が疑われる児が少なくない。今回、構音を主訴に
来院した児の現状から5領域での評価・鑑別の重要性につ
いて検討したので報告する。
【対象・方法】
対象は、平成26年4月〜 12月の9か月間に構音のみを主訴
として来院した90名(男児52名、女児38名)である。方法は、
初診時年齢、来院経緯、初診時評価の結果を基に、構音を
主訴とする児の実状を検討した。
【結果】
初診時年齢の内訳は、4歳、5歳台が最も多く就学前に来
院する児が大半を占めていた。
来院経緯は、公的機関からの紹介が大半であり、そのうち
保育園や幼稚園、学校の先生からの紹介が多くを占めてい
た。保護者の気付きによる自己受診は少なかった。
初診時評価は、聴覚、認知、言語、構音、行動の5領域に
ついて評価を行った。その結果、構音以外の領域に問題を
認めた児が53%と、過半数を占めていた。内訳は、言語の
問題を認めた児が55%、行動が32%、聴覚が9%、認知が
4%であり言語が最も多い結果であった。
【考察】
今回の結果より主訴の構音のみでなく、その他の領域に問
題を呈していた児が多く認められた。構音障害は表面的に
わかりやすいため保護者や保育者も気付くことが可能であ
るが、その陰に隠れた他領域の問題は見逃されていた可能
性が示唆される。見逃されていた問題を発見し、正確に鑑
別するために、我々言語聴覚士が丁寧に評価する必要があ
る。
初診時評価の結果から、主訴である構音への対応だけでな
く、他領域の問題への対応を踏まえた方針を決定すること
で効果的な訓練に取り組むことが可能になる。そのために
も初診時評価の際に、言語聴覚士が5領域についてきちん
と把握しておくことが重要である。
発表では、平成27年3月までの結果と症例を加え発表を行
う予定である。
268
2-7-23
棈松亜希
社団医療法人啓愛会 美希病院 リハビリテーション科
【はじめに】当院は医療型介護病棟を有する一般病院であ
プローチを行い、対象児童やその保護者が何を今練習すべ
る。当院がある地区には言語聴覚士を有する医療機関が当
きなのか明確に提示できた。しかし、双方で似た内容を行
うため対象児童が課題に飽きてしまうことがあり、教員とS
Tとで役割を決め実施し、対象児童のモチベーション向上を
唇口蓋裂児(以下、対象児童)の多くがことばの教室のみ
図った。さらに、教育機関の研究会に参加し、教員の視点
の実施となっている。この度、教育機関と連携を深めなが
や指導方法を学び、教員が抱える悩みや状況も知ることが
ら小児リハを行う機会を得て、とりくみ内容と利点及び今後
でき、逆にSTの存在や業務内容を周知するきっかけとなり、
教員より当院へ紹介と至った例もある。【今後の課題】児童
や当院小児科非常勤医からの紹介等で小児リハを開始して
にとっての目標に到達できるよう役割分担することによりお
いる。開始時期は4歳前後が多く、小学校就学と共にこと
互いの不足分を補いあえた。しかし、業務の都合上全ての
ばの教室を併用することが多い。就学後、ことばの教室担
児童の実施場面を毎回見学しあうのは難しく、個々の対応
当教員(以下、教員)話し合いの機会を持ち、お互いに指
の差やSTの経験不足などの問題点も露呈することとなった。
導場面の見学を行った。他に、教員間で行われている研究
今後、地区全体での関係性を深めていくとともに、お互い
会に参加し、交流を深めるとともに対象児童へ共通した認
に知識を共有し、最適なフォローができる環境作りが必要と
識のもと実施している。【利点】STと教員との視点の違い
考える。
などがあり実施内容の統一に難しさはあったが、共通したア
口頭演題1日目
の課題について検討した。【とりくみ内容】I大学付属病院
特別プログラム
院を含め3施設あり、内、小児言語聴覚療法(以下、小児
リハ)を実施しているのは当院のみである。そのため、口
日 程
口唇口蓋裂児童へのアプローチ方法について
—ことばの教室との関わり方の模索—
ポスター演題1日目
口頭演題2日目
ポスター演題2日目
269
P2-1-01
言語聴覚士による語の獲得月齢推定の特徴とその応用
日 程
阿久津由紀子 1)、小林哲生 2)、片桐有理佳 2)、南 泰浩 3)、齋藤貴美子 1)、塚田 徹 1)
竹田綜合病院 リハビリテーション科1)、日本電信電話株式会社2)、電気通信大学大学院 情報システム学研究科3)
【はじめに】語彙発達に関する知識は、言語聴覚士(ST)
や遅めに見積もる傾向があること、業務経験年数に応じて
の小児臨床に重要と思われるが、どんな語がどの時期に獲
その推定が基準データに近くなること、語の獲得順序の点
特別プログラム
得されるのか具体的数値を学ぶ機会や情報は少ない。そこ
では基準データに近い順序で推定していたことが明らかと
で、STを対象に語の獲得時期を推定してもらう質問紙調査
なった。また、質問紙のフィードバック調査から、STが語の
およびフィードバックを行ない、STが持つ語彙発達像の特
獲得月齢推定が難しいと感じつつも、こうした知識が業務に
徴と、その顕在化が日常業務に与える影響について検討し
大いに役立つと感じていたことがわかった。【考察】STが語
口頭演題1日目
報告する。【方法】NTTコミュニケーション科学基礎研究所
の獲得時期を遅めに見積もる傾向は、言語発達遅滞児と関
で開発中の「幼児語彙発達データベース」を用いた基準デー
わる日々の経験や、遅れを90-95%の通過率を基準に考え
タをもとに対象語を24語選定し、定型/非定型を含めて
る教育が反映されているかもしれない。全体的傾向として
50%の児が各語を発話できる月齢を推定してもらう質問紙
は、経験年数とともに獲得月齢推定が精緻化されていたが、
を作成した。 調査は、2014年7−11月にかけて、福島県
特に経験が浅いSTにとっては、言語発達像を顕在化してそ
会津地方に勤務するSTを対象に無記名で質問紙に回答して
の知識習得を促す試みの意義は大きい。本研究で実施した
もらう形で実施した。データ解析対象は24名であった。さ
質問紙とフィードバックはSTのスキル向上に有効である可能
らに、質問紙への回答後、各語の獲得月齢を示した情報を
性が示唆され、今後はその実現に向けた具体的研究と実践
紙面にてフィードバックし、内容に関するアンケートに記入
の両面を進めていきたい。
を依頼した。【結果】STは各語の獲得時期を全体としてや
ポスター演題1日目
P2-1-02
訪問リハで関わったSMA児の言語発達について
太田和彦 1,2)、黒木康 1)
クオラリハビリテーション病院 リハビリテーション部1)、クオラクリニックせんだい2)
【はじめに】既にレッツチャット(LC)、伝の心などのAAC操
くい。一部の文章表出は定型文様に使用可能。Yes反応は
口頭演題2日目
作可能な状態であったが周囲の大人は曖昧な言語評価の中
瞬目で明確であるがNo反応はわかりにくい。有意味語では
で関わっていた。今回STが関わる中、日常会話で表出され
ないがカニューレからの短い呼気もれ発声で意思表明する
た単語やPVT-Rなど一部の検査項目から評価した本児の言
こともある。言語評価:PVT-R実施。9:6では実施困難で
語発達について報告する。【基礎情報】10歳女児。SMA(I
あったが10:0では語彙年齢3歳未満レベルとなり、質問応
型)
。人工呼吸器管理、胃瘻にて在宅生活。ADLはすべて
答態度が形成され1/4選択が可能となった。田中ビネー知
介助。週2〜3日の訪問教育にて特別支援学校小学4年に在
能検査V:呼称項目実施。9
:
6では11/18正答となった。【考
籍。9歳6ヶ月(9
:
6)時に訪問リハでのST介入開始。【評価】
察】今回、言語発達を評価するにあたりより精度の高い言
ポスター演題2日目
AAC:小学1年から使用のLCと小学3年で導入した伝の心を
語検査をするため本児の特徴をふまえた工夫が必要であっ
併用。入力は下肢母趾ピエゾスイッチ。各種文字入力が可
た。本児の言語発達はAACによる文字表出が中心で表出
能。カタカナ入力は必ずカタカナ画面に切り替えるなどの
された内容は発話より制限されたものとなるため単純な言
固執性みられる。また伝の心の設定変更や単語登録を独力
語発達遅滞とは捉えにくい。今後は在宅生活での経験の少
で行い潜在的な知的能力の高さが伺える。コミュニケーショ
なさにどのような配慮をするべきか、また本児の会話パター
ン状況:挨拶や名前の表出は可能。名詞単語表出はあるが
ンがやや一方的で他者のコメントに対するコメントが少ない
助詞や形容詞など機能語の表出が少なく本意が読み取りに
ことへの解決策をどのように示していくかが課題となる。
270
P2-1-03
鬼越美帆 1)、森山伸子 2)、軍司良江 1)、直井高歩 2)
(株)日立製作所ひたちなか総合病院 リハビリテーション科1)、同 小児科2)
日 程
知的水準は境界域から正常域に向上したが、平仮名習得に困難を示した
自閉スペクトラム症の1例
【はじめに】知的正常域の自閉スペクトラム症(以下ASD) 【経過】意味理解や表出語彙の増大、コミュニケーション
支援を目的に指導を開始した。5歳時のWPPS
Iは言語性IQ
89、動作性IQ103、全IQ95で、知的正常域だが下位検査
知的水準は境界域から正常域になったが平仮名の習得に困
項目で乖離を示した。構音は軟口蓋破裂音[k・g]→歯茎
難を示した。経過と言語特徴を考察し報告する。
破裂音[t・d]等の置換を認めた。音韻認識能力の難しさ
【症例】7歳(小1)の男児、当院初診は3歳10ヵ月。[初診
を示し、5歳6ヵ月時に清音単語のモーラ分解は困難であっ
時主訴]言葉がはっきり出ない。一斉指示に従えない。[発
た。6歳時のWI
SC−4は全検査合成得点99、言語理解95、
知覚推理109、ワーキングメモリ85、処理速度104であった。
言語発達の遅れが認められた。[現病歴]3歳児健診で言葉
6歳5ヵ月で平仮名を習得し始め、現在は清音はほぼ書字が
の遅れと構音不明瞭を指摘され、当院小児科外来を受診し
可能だが、拗音等の特殊音節は読みと書字ともに未獲得で
た。ASDの診断で4歳4ヵ月から言語指導を開始した。[初
ある。漢字は平仮名より習得は円滑だが、複数の読みの習
診時評価]新版K式発達検査2001は認知適応領域DQ72、
得には難渋している。構音の誤りも残存している。
言語社会DQ74、全領域DQ74であった。発話は助詞のな
【まとめ】本症例は音韻認識能力の低さを主な背景に、平
い二語文が中心で、自発話は少なく時に身振りを使用した。
仮名習得の困難が生じたと考えられた。早期から将来の文
構音は置換や歪みが多かった。
字習得の困難を予測した介入が必要であった。
自閉症スペクトラム障害児のフィクショナルナラティブにおける
発話特徴の検討
夏目知奈 1)、廣田栄子 2)
東京小児療育病院 リハビリテーション部 言語聴覚科1)、筑波大学大学院人間総合科学研究科2)
3種の図版の特性(因果表現、叙述表現、心理表現)の表現、
語用は、成人による基準ストーリーに基づいて話題の逸脱
ショナルナラティブの発話特徴を解析することを目的とした。
度を評価した。【結果と考察】ASD児では配列課題の系列
理解に低下はなかった。ASD児のフィクショナルナラティブ
に、系列絵4枚の配列課題と物語産生課題を実施し、定型
は、言語形式では、発話量や文長に低下はないが、助詞の
発達児(TD児:5 〜 6歳保育園児10名)と比べた。ナラティ
誤用と省略が多く、統語規則の習得に遅滞を認めた。自立
ブ図版は、3種のストーリー(機械的:因果関係、行動的:
語数・異なり語数に差がないがストーリーとは無関連な語
行動系列、心理的:登場者の心理的描写、Baron-Cohen
彙の使用が多かった。内容では、因果表現や心理表現の使
ら:1986、一部改変)各4セット計12セットを用いた。予備
用によるストーリー構成に課題を示した。語用は、基準から
実験により、成人12名のナラティブを採取し、4種の基準(基
逸脱した無関連unitが多く、話題の一貫性に課題を示した。
準unit、関連unit、コメントunit、無関連unit)を作成した。
以上、ASD児では、心理表現や因果的表現、話題の一貫
分析は、配列理解得点を算出し、物語産生課題の発話デー
性などの語用面に課題を示し、意味的に関連性の乏しい語
タについて言語形式は、文(文の長さ、助詞・接続詞の使用)
彙やストーリー unitの使用傾向を認め、フィクショナルナラ
と、語彙(自立語、異なり語、無関連語)の使用、内容は、
ティブ指導時に注目すべき特徴と考えられた。
271
ポスター演題2日目
【 方 法 】ASD児(5 〜 7歳:IQ81 〜 106)10名 を 対 象
口頭演題2日目
【目的 】知的発達に遅れのない自閉症スペクトラム障害
(Autistic Spectrum Disorder;以 下、ASD)児 のフィク
ポスター演題1日目
P2-1-04
口頭演題1日目
達歴]始歩13ヵ月、始語1歳11ヵ月、二語文2歳10ヵ月と
特別プログラム
に読み書き習得の困難が伴う場合があることは知られてい
る。症例は幼児期にASDの診断を受けて言語指導を開始し、
P2-2-01
保育所におけるSTの役割〜保育・育児支援にむけて〜
日 程
足立さつき 1,2)、池田泰子 1)、能登谷晶子 3)
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科1)、
金沢大学 医療保健学総合研究科 保健学専攻2)、金沢大学 医療保健学研究域3)
【はじめに】第15回日本言語聴覚学会にて、幼児教室での
がいるか」は、どの年齢クラス担当も「いる」と回答した。
特別プログラム
言語聴覚士(以下:ST)の指導について報告した。今回は、
自由記述では、
「発達段階の詳細を再確認できた。」
「当た
同保育所内での保育士とSTとの勉強会を通した保育・育児
り前と思って行動していることの意味を考える必要があると
支援についての協働の取り組みを紹介する。
思った。」
「日々の保育を振り返ることができた。」
「気になる
【方法】埼玉県内の保育所2園で、毎年1回、2歳児以上の
子どもへの対応のヒントを得られた。」などの保育士自身を
クラスに在籍する園児に言語発達評価を実施している。用
振り返る内容が多かった。STに対する要望では、評価のよ
いる検査は、<S-S>法言語発達遅滞検査、絵画語彙発達
り具体的なフィードバックや対応についての助言が求められ
検査(PVT−R)
、質問-応答検査(短縮版)
。STが個別に実
た。
施し、評価結果を主任・園長に報告し、必要に応じて担当
【考察】地域に開かれた保育所の機能(一時保育・つどい・
保育士の同席または事後に助言を行っていた。今回は、園
育児相談等)が拡大している中、保育士も日々の保育業務
口頭演題1日目
児に対する言語発達評価に加え、年度当初の5月に保育士と
の中で、困っていることが多いと確認できた。「ことばの育
STとの発達に関する勉強会を開催し、アンケート調査を行っ
ちはぐくみbook」や書籍の提供、個別な助言・指導のみ
た。勉強会後に択問・自由記述のアンケート用紙(A4.1枚)
ではなく、体系的な学習や具体的な活用方法・助言が必要
を配布し、後日回収した。
であった。育児・発達支援の観点から保育所にもSTが介入
【結果】アンケートの回収率は100%。全員が勉強会に参
する余地があると思われる。
加して良かったとの回答であった。「発達の気になる子ども
ポスター演題1日目
P2-2-02
福岡県大川市の保育所・幼稚園における「気になる子どもの保育ニーズ」
に関する実態調査
山口浩明 1,5)、安立多惠子 2,5)、日田勝子 3,5)、新川寿子 3,5)、山口雅子 4,5)
口頭演題2日目
専門学校柳川リハビリテーション学院 言語聴覚学科1)、国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科2)、
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 作業療法学科3)、大川市子育て支援センター 4)、大川子育て支援研究会5)
ポスター演題2日目
【はじめに】
近年、言語聴覚士や作業療法士が保育所・幼稚園から巡
回相談を求められるケースは増えており、
「気になる子ども」
も複数存在しているのが実情である。2012年の文科省の
調査では、
「知的発達の遅れはないものの、学習面や行動
面で著しい困難を持っている」子どもの割合が小学校に限
ると7.7%であった。保育園・幼稚園の中にも、同程度の要
支援の子どもが在籍する可能性を示唆する。
このような状況を受け、福岡県大川市では、2015年度
より保育所・幼稚園での特別支援教育コーディネーター養
成講座を開催することとなった。そこで、
「気になる子ども」
はどの程度保育所・幼稚園に在籍しているのかを把握し、
さらに、
「気になる子ども」への保育ニーズを把握する目的
で調査を行った。
【方法】
大川市内の15カ所の保育所・幼稚園に園長会を通じて
調査用紙を配布した。 調査は2014年12月〜 2015年1月
に配布回収した。調査用紙は各クラスの担任1名に記入を
依頼した。回収率は86.7%であった。
【結果】
在籍子ども数は、1015名であり、
「気になる子ども」の
在籍数は90名(8.9%)であった。「気になる子ども」の保
育実践上で不安なことは、
「適切に指導ができているか不安」
(53.5%)が最も多かった。
【考察】
「気になる子ども」の在籍率は8.9%であり、保育所・幼
稚園においても特別な支援の必要性がうかがえる。また、
園別にみると10%以上在籍する園が約4割で、17.8%の
園もあり、保育所・幼稚園においても特別支援教育コー
ディネーターが必要と思われる。さらに、養成講座で学び
たいことでは、
「気になる子どもの保護者への対応の仕方」
(37.6%)
、保育を進める上で望むこととして、
「子どもの
状態を保護者に理解してほしい」
(37.6%)が最も多く、
「保
護者支援」がキーワードであることがうかがえ、乳幼児か
ら学齢・思春期のライフサイクルを見通した地域支援ネット
ワーク作りが望まれる。
272
P2-2-03
安川健治 1,2)、小林章子 1,3)、竹内洋彦 1,4)、月岡幸子 1,5)、土屋直子 1,5)、野沢由紀子 1,5)、
原 哲也1,5)、原田千恵子 1,6)、福島 徹 1,7)、牧野眞知子 1,8)
日 程
長野県における言語聴覚士が係わった就学前児に対する巡回相談支援に
ついて 第1報〜保育園・幼稚園へのアンケート調査の結果から〜
長野県言語聴覚士会1)、児童発達支援センター にじいろキッズらいふ2)、駒ケ根市教育委員会 こども課3)、
長野県立総合リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部4)、松本市こども部 こども福祉課5)、
北信総合病院 リハビリテーション科6)、長野県伊那養護学校7)、松本圏域障害者総合相談支援センター Wish8)
野沢由紀子 1,2)、小林章子 1,3)、竹内洋彦 1,4)、月岡幸子 1,2)、土屋直子 1,2)、原 哲也 1,2)、
原田千恵子1,5)、福島 徹 1,6)、牧野眞知子 1,7)、安川健治 1,8)
あり、全員がチームでの業務が望ましいと回答した。保育
参観や担当保育士とのカンファレンスは全ての機関で行って
いたが、対象児や家族との面談はせず、家族へのフィード
バックを園に一任しているとの回答が半数近くあり、家族へ
の対応に疑問を呈する意見も多かった。対象児の年齢は、
全員が未満児から年長児までの全年齢にわたると答えた。
1回の巡回時の対象児が5名以上だったり、1日に複数の園
を巡回する場合もあり、改善を望む声も上がっていた。 3)
STが専らとするコミュニケーションや食事に関する相談以外
にも様々な相談が寄せられ、全員が自身の力量や助言の実
効性に対する不安を訴えていた。特に単独の場合は、対応
に苦慮することも多いと回答していた。
【考察】チームでの支援の重要性、家族への対応のあり方、
STの資質向上といった課題が、本調査から示唆された。今
後、関係機関と連携しながら検討していきたい。
273
ポスター演題2日目
【目的】長野県内では、近年多くの市町村で、保育園や幼
稚園(以下、園)に対する巡回相談支援(以下、巡回)が
行われるようになり、参画する言語聴覚士(以下、ST)も
増えてきたが、支援の有効性や課題についての総括はなさ
れていない。そこで、われわれは、巡回に従事したSTへの
アンケート調査を実施し、よりよい支援のあり方について検
討した。
【方法】県内で、2011年4月〜 2013年10月までの間に園
の巡回に従事したST8名を対象とし、1)雇用先・雇用形態
2)業務形態・内容 3)相談内容・家族への対応 4)意見・
要望等 について回答を依頼した。複数機関で従事したST
の場合、機関ごとの回答を求めた。
【結果】回答数19、回収率100%。1)雇用機関は市町村
が74%、雇用形態は非常勤・嘱託が90%であった。半数
以上のSTが、園以外にも様々な機関の巡回に従事していた。
2)チームで巡回した場合が半数以上だが、単独の場合も
口頭演題2日目
長野県言語聴覚士会1)、松本市こども部 こども福祉課2)、駒ケ根市教育委員会 こども課3)、
長野県立総合リハビリテーションセンター リハビリテーション療法部4)、
北信総合病院 リハビリテーション科5)、長野県伊那養護学校6)、松本圏域障害者総合相談支援センター Wish7)、
児童発達支援センター にじいろキッズらいふ8)
ポスター演題1日目
長野県における言語聴覚士が係わった就学前児に対する巡回相談支援に
ついて 第2報〜従事したSTへのアンケート調査の結果から〜
口頭演題1日目
P2-2-04
特別プログラム
領域に関わることも多かった。 2)巡回要請に至る経緯とし
【目的】長野県内では、近年多くの市町村で、保育園や幼
稚園(以下、園)に対する巡回相談支援事業(以下、巡回) ては、家族よりも担任等からの要望による場合が多かった。
が行われるようになり、参画する言語聴覚士(以下、ST) この場合、家族の了解を徹底している地域もあったが、事
前の了解や事後の報告をしていない園も少なくなかった。3)
も増えてきたが、その実態把握や有効性の検証は十分とは
巡回が「大変役立つ」との好意的な意見が多かった。理由
いえない。そこで、われわれはSTが巡回に従事した園に対
としては、
「継続的フォローの中で、こどもの発達・改善点
するアンケート調査を行い、よりよい支援のあり方を検討し
が示され、保育士の気づきが促された」
「具体的な対応策、
た。
係わり方が示された」
「専門機関にうまく繋がった」という
【方法】STが、2011年4月から2013年10月までの間に訪
回答が多かった。これらは、要望としても最も多かった。一
れた園(180園)を対象とし、1)頻度・職種(ST以外)・相
方、巡回スタッフの言動の問題点への指摘もあった。
談内容 2)要請までの経緯・家族への対応 3)有用性 4)
【考察】1)継続的フォロー、具体的対応策の提示、専門機
意見・要望等 について回答を依頼した。
関とのパイプ役という巡回の有用性や役割が示唆された。
【結果】回答数130、回収率72%。1)頻度は、年1〜 2回
2)家族に対しての対応(事前の了解、事後の報告など)は、
ないし3 〜 5回が多かった。頻度増に対する要望もみられ
再検討が必要であろう。3)今後、巡回に対して、よりレベ
た。ST以外の職種は多岐にわたり、地域間で相違がみられ
ルの高い期待と評価がなされると予想され、いっそうの資
た。職種が周知されていない場合もあった。いずれの地域
質向上が求められよう。
でも相談内容は多様で、コミュニケーションや食事などST
P2-3-01
日 程
特別支援学校における言語聴覚士活用の取り組み 〜神奈川県内の特別支援学校への巡回相談を通して〜
栗島会理 1)、早乙女千佳 2)、岩木寛子 3)、小澤芳則 4)、川内 彩 5)、鷲田かおり 6)、奥 玲子 7)、
平見寛志 8)、石坂郁代 9)、原 由紀 9)
神奈川県立平塚ろう学校1)、神奈川県立伊勢原養護学校2)、神奈川県立小田原養護学校3)、
神奈川県相模原中央支援学校4)、神奈川県高津養護学校5)、神奈川県立武山養護学校6)、
神奈川県立みどり養護学校7)、神奈川県立藤沢養護学校8)、北里大学 医療衛生学部9)
特別プログラム
口頭演題1日目
【はじめに】神奈川県は、県立特別支援学校に常勤の自立
活動教諭(専門職)として理学療法士(以下PT)
、作業療
法士(以下OT)
、言語聴覚士(以下ST)
、臨床心理士(以
下心理職)を配置している。しかし、STが県立のすべての
特別支援学校に配置されているわけではなく、神奈川県立
特別支援学校を6つのブロックに分け、その各ブロック内に、
PT、OT、ST、心理職をそれぞれ1〜2名となるように配置
している。そのため、学校に配置されていない職種は、必
要に応じてブロック内の特別支援学校より派遣する形で、巡
回相談を行っている。STは、平成27年3月末時点県立特別
支援学校27校中8校に配置されており、STがいない県立特
別支援学校への巡回相談を行っている。今回は、その神奈
川県立特別支援学校への巡回相談ついて報告する。【資料
収集および分析】平成26年4月より平成27年3月における
県内専門職STの神奈川県立特別支援学校における巡回相
ポスター演題1日目
P2-3-02
談の件数やケース数、巡回相談での関わり方に関する資料
に関して検討を行う。今回の抄録に関しては、平成26年12
月末現在の集計・分析、結果やまとめである。【結果】各
ブロックにおける方針、各校における方針による違いはある
ものの、STが所属していない学校19校中14校へ巡回相談
を実施した。巡回相談の回数は、1回のみの要請から多い
ところでは5回と複数回の要請がある。巡回相談での関わ
り方は、行動観察後ケース会を実施している。他に、長期
休業中に研修会の講師として2校派遣要請があった。【まと
め】外部専門家とは違い、日常から学校の教員と協働して
いることにより、学校生活に関する知識を持っていることは
メリットである。また、巡回先にST以外の職種が配置され
ていることにより、職種は違うものの専門職の立場を理解し
た上での連携のしやすさ、事前情報等の収集にも役割を果
たしている。
特別支援学級所属教諭に関する実態調査
〜より有効的なコンサルテーションを目指して〜
池田泰子 1)、芳川玲子 2)、足立さつき 1)
聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 言語聴覚学科1)、東海大学 文学部2)
口頭演題2日目
【目的】特別支援学級(支援学級)所属教諭に対してより有
18.8年(SD12.72)
、 支 援 学 級 経 験 年 数 の 平 均:5.7年
求めると回答した割合上位3項目)
:
「専門的な視点を得て生
ポスター演題2日目
(SD6.18)
。3.所属している児童の障害(上位3項目)
:
「軽
徒を多角的に捉える(81.4%)
」
「児童の発達の状況を具体
度知的障害(63.4%)
」
「自閉症(49.1%)
」
「注意欠陥多動
的に知る(80.0%)
」
「知能検査等によって客観的な資料を
性障害(33.3%)
」
。4.STの認知度(業務内容を知っている
得る(78.4%)
」
。【まとめ】教諭によって経験年数、環境、
新版K式:9.2%、2)遠城寺式:9.3%、3)WISC:65.4%、4)
効的なコンサルテーションを行うことを目的に実態調査を実
田中ビネー :50.9%、5)PVT-R:13.7%、6)S-S法:3.9%。7.専
施したので報告する。【方法】2012年4月〜 8月に神奈川県
門家が書く検査結果報告書に記載してほしい内容(必要と
6市の小中学校特別支援学級教諭348名に質問紙を郵送し、
回答した割合)
:1)検査の概要:89.9%、2)結果に対する専
返信用封筒・回収ボックスにより回収した。【結果】1.回
門家の解釈:93.4%、3)学校で何をやればよいかの具体的
収数:218部(回収率62.6%)
。2.教諭経験年数の平均:
な提案:94.3%。8.外部専門家に求める支援内容(支援を
と回答した割合)
:48.8%。5.外部専門家との連携経験(経
知識、ニーズが様々であった。本結果から実際やりとりす
験ありと回答した割合)
:46.8%、STとの連携経験(経験
る担当教諭の情報を事前に把握することにより有効的なコ
ありと回答した割合):27.8%。5.知能検査等の検査を依頼
ンサルテーションを行えるのではないかと考える。今後はコ
できる施設の有無(あると回答した割合)
:66.2%。病院等
ンサルティを対象とた「連携者の状況把握シート」の作成
で行った検査結果を積極的に入手していると回答した割合:
を行う予定。
44.0%。6.検査の理解度(理解できると回答した割合)
:1)
274
P2-4-01
乳幼児健診、子育て支援への取り組み−大川子育て支援研究会の活動−
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科1)、
専門学校 柳川リハビリテーション学院 言語聴覚学科2)、
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 作業療法学科3)、大川市子育て支援センター 4)、大川子育て支援研究会5)
検討している。3歳未満の午前グループは親子の関わりを、
病の早期発見・早期療育、子育て支援に大きな役割を果た
3歳以上の午後グループは子ども同士の関わりを重視した
している。しかし、各自治体の事情により関わる専門家の
集団遊びを設定している。【結果】親子教室の登録児数は
種類、人数はさまざまであり、体制の地域間格差が大きい
2013年度午前39名(男児22名)午後21名(男児14名)
、
ことが現状である。そこで、我々は子育て支援に積極的に
2014年度午前23名(男児12名)午後25名(男児19名)で、
関わることを目的に2011年に言語聴覚士、作業療法士、
我々の健診参加以前の年度に比べ増加した。新規入室の経
保育士からなる「大川子育て支援研究会」を結成し、様々
緯は乳幼児健診からのフォローが2013年度午前33名中14
な活動を行った。1年半の活動により2013年度からは乳幼
名(42.4%)
、午後14名中8名(57.1%)
、2014年度午前
14名中10名(71.4%)
、午後15名中10人(66.7%)と増
支援の取り組みについて、2年間の変遷を追って報告する。
えてきた。個別相談の種別はいずれの年度も発達の遅れが
【活動内容】乳幼児健診では、待合時間に遊びを通して親
子を観察し、複数のスタッフによる情報の共有に留意してい
半数近くを占めた。3歳以上では多動が2013年度23.8%、
2014年度32.0%占めた。
る。必要に応じて相談に乗り、親子教室への参加を促して
【まとめ】乳幼児健診から親子教室への支援は充実してき
いる。親子教室では個別相談と小集団での親子遊びを実施
た。親子支援の拡充には、地域と連携した体制作りの必要
し、半年ごとに継続、移行、終了(療育、訓練などへ)を
性が示唆された。
言語聴覚士による地域療育支援 〜地域のニーズと支援の現状〜
矢吹裕哉、三浦道繁、細川悦子
岩手県立療育センター 相談支援部
発達相談の場において言語聴覚士に求めていることは何で
機会として設けられている発達相談において、言語聴覚士
あろうか。果たして言語聴覚士が提供すべきと思っている
はことばの発達状況並びにコミュニケーション能力の発達状
役割と同じなのであろうか。今回この疑問について母子担
況を評価するとともに、保護者とのアセスメントから家庭状
当保健師を対象に調査を行った。【方法】対象は、岩手県
況に合った助言をすることで子育て支援の一翼を担う立場
内全33市町村の母子保健を担当している現場保健師とし、
にあるという思いから、これまで地域の療育支援事業に携
質問紙を配布した。質問内容は、(1)事業開始前(年度初め)
の関係者ミーティングについて、(2)相談対象児の情報交換
れば、周囲が何となく気になることから勧められてきたケー
について、(3)相談頻度について、(4)相談方法について、(5)
ス、子ども自身の発達の問題というよりは保護者の子育て
カンファレンス内容について、(6)相談記録(相談結果の内
上の不安を訴えてくるといったケース等多岐に渡ってきてお
容)について、(7)相談後のフォローについて、選択及び自
り、言語聴覚士自身もことばの発達上の問題以外に、生活
由記載で回答をお願いした。【結果及び考察】生活環境及
や発達全般に渡った子育て支援としての対応を求められて
び家庭や保護者の変化、対象となる相談内容の変化、健診
いる。そこには、発達を問題視されるよりは、ことばの問題
での対応や保健師の立場の変化と発達相談の役割、それら
としての方が相談へ誘いやすい(受けやすい)ということは
に伴う言語聴覚士に求められる相談支援の役割について調
よく言われているところである。では、保健師や保護者が
査結果に考察を加え報告する。
275
ポスター演題2日目
わってきた。明らかなことばの問題を持っているケースもい
口頭演題2日目
【はじめに】1歳6か月児健診、3歳児健診の事後フォローの
ポスター演題1日目
P2-4-02
口頭演題1日目
児健診とその後の支援体制に我々が位置づけられた。親子
特別プログラム
【目的】乳幼児健診およびその後の支援体制は、障害や疾
日 程
安立多惠子 1,5)、山口浩明 2,5)、新川寿子 3,5)、日田勝子 3,5)、山口雅子 4,5)
P2-4-03
日 程
放課後等デイサービス事業所での教育・家庭連携を通して
〜教育・家庭連携からみる 言語聴覚士への期待〜
篠原里奈 1)、赤壁省吾 2)、福本 礼 2)
社会福祉法人みらい 放課後等デイサービス ジュニアクラブ1)、
医療法人栄寿会 天満病院 こどもリハビリテーション部2)
特別プログラム
【はじめに】H24年児童福祉法の一部改正に伴い障害児通
ケートを実施。【連携方法】保護者から「学校と連携を取っ
所支援として、学齢期の支援充実のため「放課後等デイサー
て欲しい」とニーズのあった児童の学校訪問(授業見学)の
ビス事業」が一元化された。 放課後等デイサービス事業
依頼、日程調整、学校訪問(支援学級在籍の児童であれば
とは、在学中の障害児に対して放課後や長期休暇中におい
支援級と通常学級の授業を見学)、学級担任との情報共有
て、生活能力向上のため本人の希望や障害特性を踏まえた
を行い、保護者に報告を行っており、その後も継続して電
訓練等を継続的に提供し、学校教育と連携(協働)による
話等にて連携を図っている。またケースに応じて学校関係
支援障害児の自立を促進するとともに、放課後等の居場所
者(学校長、特別支援コーディネーター、学級担任などの同
づくりを推進することがサービスの概要であり、筆者はST
席)と保護者、STとのケース会議なども行っている。【結果】
口頭演題1日目
の資格を持ち、児童発達支援管理者及び管理者として勤務
STはH2X年4月〜 H2X+1年3月の間、37回学校訪問を行っ
している。今回、当事業所において教育・家庭連携での取
た。(2回以上 学校訪問を行った児童は9名)学校訪問後、
り組みを行った発達障がいのある児童の保護者及び学級担
学校関係者から再度、電話等の連携があった児童は13名。
ポスター演題1日目
任へのアンケート調査を通じて、特別支援教育における連
学校訪問後、学校関係者が当事業所見学に来た児童は5名
携の在り方について考察し、今後、言語聴覚士に期待する
であった。なお、学校訪問の依頼を拒否された児童は3名
ことを検討した。【対象】H2X年4月〜 H2X+1年3月まで
いたが、後に学校訪問は可能となっている。保護者及び学
の一年間に教育・家庭連携としての学校訪問を行った21名
級担任に実施したアンケート調査の内容・結果及び考察に
の児童の保護者及び学級担任(支援学級/通常学級)にアン
ついては、発表にて報告を行う。
P2-5-01
失語症会話パートナーの活動状況−全国調査の報告 その1
安保直子 1,2)、小谷朋子 1,3)、小林久子 1,3)
NPO法人 言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会 和音1)、
法政大学大学院 人間社会研究科2)、首都医校3)
口頭演題2日目
【はじめに】失語症者への意思疎通支援については未だ障
主催で養成を実施しているところは5県(11%)であった。
害者施策の制度として確立していない。しかし、2013年施
一方「養成は行っていないが現在検討中または今後検討予
行の障害者総合支援法の中で、その支援の在り方が検討課
定」が8県、
「必要と考えているが体制不足」が24県あり、
題として明記され今後の進展が期待されている。
「失語症会
必要と考えていないところはなかった。体制不足の内容とし
話パートナー (以下会話パートナー )」
(失語症についての正
ては、選択肢複数回答で「人材」がもっとも多く(62.5%)
、
しい知識と会話技術を学び、失語症の人とのコミュニケー
次いで「時間」(41.6% )、
「資金」(37.5% )の順であった。
ポスター演題2日目
ションを支援する人のこと)が支援者となり得ると考えられ
【考察】養成の必要性はあるとの認識をもちながらも、実
るが、その養成実態や活動実践、支援効果については十分
施できる体制にない地域が多いことが明らかとなった。体
に把握されていない。そこで、全国での養成について実態
制不足の主な理由である人材の問題に関しては、STの勤務
調査を実施したので報告する。【方法】全国47都道府県の
状況の他に、機能改善に焦点が当たりがちで、
「参加」や「活
言語聴覚士会(以下県士会)に、1)会話パートナーの養成
動」への視点を持ちにくいことも要因の一つと推測される。
を行なっているか 2)行っていない場合はその理由 3)一般
会話パートナー養成団体としては、失語症者の地域生活を
市民向けの失語症の啓発講座を行っているか 4)県士会以
支援する会話パートナーの活動状況を把握し周知すること、
外でも県内で養成をしているところがあるかについてアン
広く普及できる養成方法についてさらに検討することが必要
ケート調査を実施した。実施期間は2014年4月〜 6月。
【結
と考える。
果】44都道府県から回答を得た(回収率93.6%)
。県士会
276
P2-5-02
失語症会話パートナーの活動状況−全国調査の報告 その2
NPO法人 言語障害者の社会参加を支援するパートナーの会 和音1)、首都医校2)
【はじめに】
「失語症会話パートナー(以後会話パートナー)
」
活動に広げようと努力している様子が見られた。実際には
は失語症者の意思疎通支援の代表的な方法の一つである。
活動場所の拡充にはつながっていない。2)87%は講座で
本NPOでは2000年より会話パートナーの養成を開始した。
学んだことを活かしたと答えた。また40%は複数の場所で
活動していた。3)災害時支援や訪問支援など活動の広が
模で調査を行い、2009年には「第1回全国失語症会話パー
りを目指したいという意見や、もっと自分たちの活動を知っ
トナーのつどい」を開催したが、それ以降の変化を把握し
てもらいたいという意見が多かった。1)〜 3)を通じて近
ていなかった。そこで2014年9月に第2回のつどいを開催
隣での勉強の機会を望むなど、会話パートナー自身の資質
すると同時に3種のアンケート調査を実施し、会話パート
の向上に対する高い意欲もうかがわれた。【まとめと考察】
ナーの活動状況について把握する機会を得たので報告する。
全国的には2006年調査と比較して確実に普及している。課
【方法】1) 会話パートナー養成団体15団体を対象に活動
題としては、活動先の拡充、資質の向上への取組み、言語
聴覚士や失語症当事者への周知が挙げられる。まずは全国
2)本NPOの養成講座修了者300名を対象に活動状況につ
の会話パートナーや養成団体が連携し、経験を共有するこ
いて郵送にて調査した(同年7 〜 8月)
。3)つどい参加者
とが必要と考える。さらに各地域において言語聴覚士がよ
79名を対象につどいの感想および活動への意見などを調査
り積極的に活動場所の創出や会話パートナー養成を開始す
した(同年9月)
。【結果】1)全体的には、支援する小グルー
ることが望まれる。
プの数が増えており、さらに活動の範囲を個別支援や啓発
邨松美都樹、高橋淳子、山本 徹
医療法人社団永生会 介護サービス スマイル永生
の身辺介助や活動の助言をする様子が増え、利用目的が他
開しているが、失語症者は言語機能上の問題により、参加・
利用者との交流へと変化が見られた。第3期:スタッフから
活動が制限され社会復帰に困難を抱えることが多く、利用
具体的に介助や助言等の役割を依頼すると、喜んで引き受
が長期化しやすい傾向にある。今回、失語症者である利用
けた。自身の活動よりも他利用者のための活動を行う事の
者をボランティアへ移行することで社会的役割の獲得を目
方が多くなった。第4期:通所リハビリサービスの利用終了
指す試みを行ったため報告する。【ケース】73歳右利き男
とボランティアとしての参加を提案すると、本人、妻共に同
性。200X年に脳梗塞(左前頭葉〜頭頂葉)発症。運動麻
意。最終利用日に自主的に決意表明を行うなど、意欲的で
あった。第5期:ボランティアとして以前と同頻度で通所リ
機能低下は認めない。X+3年より失語症に特化した通所リ
ハビリに参加。自身で役割を考える機会も増加し、利用者
ハビリ利用開始。開始時の本人の希望は「コミュニケーショ
ンが上手くとれるようになりたい」妻の希望は「少しずつ社
の送迎や身辺介助、活動の支援、実習生との交流等を行う。
【考察】本ケースでは、通所リハビリの失語症者コミュニティ
会復帰してボランティアができるくらいになって欲しい」で
の中で、介護保険利用者からサービス提供側のボランティ
あった。【経過】第1期:元々の趣味であった書道を実施。
アとして社会的役割を獲得していくことができた。今後、通
自主的に活動できていたが、他利用者との関わりは少なかっ
所リハビリでは利用者を卒業し社会的役割をもって生活でき
た。 第2期:自身の活動と同時に他利用者に対し、更衣等
るよう、様々な支援を進めていく必要があると考える。
277
ポスター演題2日目
痺は認めず、中等度ブローカ失語を認める。明らかな認知
口頭演題2日目
【はじめに】当施設では失語症に特化した通所リハビリを展
ポスター演題1日目
失語症利用者をボランティアへ移行することで社会的役割の獲得を目指す
通所リハビリテーションの試み
口頭演題1日目
内容と課題について郵送にて調査した(2014年7 〜 8月)
。
P2-5-03
特別プログラム
全国への普及や活動の状況については、2006年に全国規
日 程
小谷朋子 1,2)、安保直子 1)、小林久子 1,2)
P2-5-04
日 程
在宅失語症者における訪問リハビリテーションでの言語聴覚療法の有効性
について
萑部明美、太田有香、青木良早
医療法人社団三喜会 鶴巻温泉病院
【目的】当院訪問リハビリテーションで言語聴覚療法を実施
会の承諾を得た後、利用者・家族に担当者より研究の趣旨
した在宅失語症者5症例に対する効果を、言語機能面と家
を説明し、同意を得た。【結果】SLTAの結果は、症例1は
特別プログラム
族の介護負担感の変化より検証すること。【方法】対象は、
30点から37点、症例2は59点から75点、症例3は189点
平 成25年4月から平 成26年5月までに当 院 訪 問リハビリ
から200点、症例4は67点から79点、症例5は143点から
テーションで言語聴覚療法を実施した利用者5名とした。収
152点と、全例で得点の増加を認めた。COM‐Bの結果は、
集データは、年齢、性別、疾患名、発症日、言語聴覚士に
症例1は28点から20点、症例2は35点から36点、症例3は
口頭演題1日目
よる訪問リハビリテーション開始日、介護度、標準失語症検
15点から20点、症例4は34点から18点、症例5は29点か
査(SLTA)
、主介護者の年齢、主介護者の性別、コミュニ
ら30点と、2症例で得点の減少を認め、3症例で得点の増
ケーション関連介護負担尺度(COM‐B)とした。SLTAは
加を認めた。
【結論】全例でSLTAの得点が増加したことより、
満点が230点で、点数が高いほど言語機能が高いことを示
訪問リハビリテーションでの言語聴覚療法は、言語機能を
す。COM‐Bは、先行研究(小林、2011)を参考に、全
回復させ得る有効な介入方法のひとつであると考える。一
30項目のうち言語症状に関連すると考えた9つの質問項目
方で、言語機能の向上により介護負担感が軽減する症例と
を抽出した。 満点は45点で、得点が高いほど介護負担感
増大する症例が混在する結果となった。言語機能の向上は
が高いことを示す。訪問リハビリテーション開始時と開始後
介護負担感の増減に関連がある可能性はあるが、他の要因
6か月の時点のSLTAとCOM‐Bの結果を、診療録より後方
も関係していると考えられる。長期的に経過をみていく必
視的に調査した。本研究は、当院臨床研究倫理審査小委員
要がある。
ポスター演題1日目
P2-6-01
哺乳期に経口摂取中断を余儀なくされた先天性心疾患児に対する
哺乳・経口再開支援の経験
住友亜佐子 1)、小松 岳 1)、仲宗根幸子 1)、雪本千恵 2)、阪本浩一 1)、大津雅秀 1)
兵庫県立こども病院 耳鼻咽喉科1)、兵庫県立こども病院 循環器内科2)
口頭演題2日目
【はじめに】哺乳期に経口摂取が中断された先天性心疾患
動が確認できることも増えた。<2期:月齢7〜9>離乳食(液
児に対し、経口再開を目指してST介入した症例を経験し
体)を開始。咽頭内へ流れ込んだ液体はタイミングよく嚥
たので報告する。【症例】在胎38週3日2490gにて出生。
下可能であったが、舌尖を挙上しスプーンの挿入を拒むこ
Ap8/8。出生直後よりチアノーゼ認め、精査加療目的に同
とが多かった。<3期:月齢9〜11>ペースト食開始。スプー
ポスター演題2日目
日当院搬送。心エコーにて完全大血管転位症(3型)と診断
ン挿入時の舌尖挙上持続し、ペーストは拒否が続いた。捕
される。日齢11日にシャント術施行、日齢45日に自宅退院。
食動作の改善は見られず、口腔底に落し込むと舌を前後に
体重増加に伴いSPO2低下したため月齢4か月半時に追加
動かして咽頭へ送り込み嚥下するが、送り込み動作時に口
シャント施行も、術後高肺血流性ショックにて蘇生措置及び
唇より前方へ流出することが多く効率的とは言えなかった。
6日間のECMO管理を要した。月齢6か月時、排痰および
摂取量そのものは増加し、自宅退院された。【考察】乳幼
長期的にみて経口摂取目的に処方される。【ST経過】<1期:
児期に長期経管栄養を余儀なくされた児では本来得られる
月齢6〜7>排痰及び唾液嚥下練習中心。咽頭内ゴロ著明。
べき哺乳・摂食機能の学習ができずに経口摂取に難渋する
吸啜極めて弱く、嚥下惹起は稀であった為、側臥位にて呼
ケースがある。また、本症例のように心肺機能が著しく低
吸介助し唾液は指や綿棒で掻き出した。綿棒を用いて吸啜
下しており、誤嚥性肺炎は致命的である児に対しては特に
を促した後、
自発的嚥下を待った。1期前半は状態安定せず、
慎重に経口再開を進めていく必要がある。若干の文献的考
頻脈や熱発により訓練できないことも多かったが後半は比
察を加えて報告する。
較的状態が安定し唾液嚥下時のムセは軽減、明確な嚥下運
278
P2-6-02
気管喉頭分離術により在宅復帰が可能になった重度の精神発達遅滞例
一般社団法人 巨樹の会 明生リハビリテーション病院
嘉賀啓介
医療法人社団 幸隆会 多摩丘陵病院 診療技術部 言語聴覚療法科
下間接訓練のみの実施としPT・OTによる離床訓練、CV
腔 内 の 細 菌・誤 嚥・宿 主 の 抵 抗 力 の3つに分 類して い
での栄養管理よる栄養状態の改善を待ち、嚥下直接訓
る。 今回低栄養・ADLの低下により誤嚥性肺炎を繰り返
練を開始する計画とした。 介入3ヶ月目で体重は36kg、
していた症例に対し、栄養状態・ADLの改善を考慮し介
BMI12,9、Alb2,8。車椅子乗車も可能となった。栄養状態、
ADLの向上が見られた為昼のみソフト食にて経口摂取開始。
段階的に3食経口摂取とした。5ヶ月目の再VF検査では、
えて報告する。【 症例 】入院前は自立した生活を送って
初回時同様に不顕性誤嚥が認められたが、発熱やCRPの上
いた80代男性。 多発性大腸ポリープ切除のため前院入
昇は無く、体重39kg、BMI13,9、Alb3,1と改善し、車椅
院。 一時敗血症の為人工呼吸管理、CVによる栄養管理
子乗車も数時間可能となったため軟菜・軟飯食と食形態の
となる。 状態は安定し経口摂取となるが両下肢壊疽とな
変更を図った。【考察】誤嚥性肺炎発症には多くの因子が
り左下肢切除のため当院入院。 入院後3度肺炎を繰り返
関わる。特に栄養状態・ADLが重要であるとする先行研究
しST処 方 と な る。ST介 入 時ADLはBI 5点。BMI12、 体
は多くある。今回の症例においても不顕性誤嚥が認められ
重33kgで入院時より体重減少率20%、ALB1,9と低栄養
る中、栄養状態・ADLの改善により誤嚥性肺炎を再発する
状 態であった。VFでは食 物・水 分 共に咽 頭 残 留、 嚥 下
ことなく3食経口摂取が可能になったと考えられる。
中・後の不顕性誤嚥が認められた。【経過】介入初期は嚥
279
ポスター演題2日目
入したところ不顕性誤嚥を起こしながらも肺炎を起こすこ
となく3食経口摂取が可能となったため若干の考察を加
口頭演題2日目
【 はじめに】Langmoreらは誤 嚥 性 肺 炎 の 発 生 機 序を口
ポスター演題1日目
繰り返す誤嚥性肺炎患者に対して栄養状態・ADLの向上を考慮し介入した
一症例
口頭演題1日目
P2-6-03
復唾液嚥下テストは指示理解困難。水飲みテスト1点。嚥
下造影検査では、舌による食塊送り込み困難、喉頭感覚低
下、嚥下協調運動困難が認められた。また不顕性誤嚥が観
察された。
[介入方法]
直接的嚥下訓練は不顕性誤嚥の危険性が高く、間接的嚥下
訓練にて嚥下機能の向上を図った。冷感刺激、味覚刺激、
頸部挙上訓練を中心に実施した。リハビリ開始時は拒否反
応が強くみられたが、リハビリに慣れてくると拒否反応は減
少した。嚥下筋筋力向上困難のため3食経口可能な嚥下機
能の改善には至らなかった。家族の希望である作業所の通
所には経口摂取が必須であった。このため気管喉頭分離術
が施行され、食事形態を調整した経口摂取が可能となり唾
液誤嚥も無くなった。
[結語]
重度の精神発達遅滞のため嚥下訓練が困難であったが、気
管喉頭分離術により誤嚥の危険無く経口摂取が可能となり
胃瘻併用にて在宅復帰が可能になった。
特別プログラム
[はじめに]
ウォルフ・ヒルシュホーン症候群の青年が脳梗塞を併発し重
度の嚥下困難を呈したが、重度の精神発達遅滞の為嚥下訓
練が困難であった。気管喉頭分離術により在宅復帰が可能
になったので報告する。
[症例報告]
32歳男性。遺伝子群の欠損により生じるウォルフ・ヒルシュ
ホーン症候群のため重度の精神発達遅滞を来たし、コミュ
ニケーションは困難であった。呼吸不全に対して6歳時気管
切開術が施行された。食事は自力で摂取していたがむせ込
みや気切部からの食塊の吹き出しがみられていた。平成25
年9月に脳血栓となり近医に入院した。嚥下障害が増悪し経
鼻経管栄養となり同年10月に胃瘻が造設された。
家族は週5回の作業所通所の再開を希望していた。作業所
側からは介助量の増加や食形態の調整は可能であるが経口
摂取不可能の場合は通所困難と判断された。
[初回評価]
安静時気切部から頻回に唾液の吹き出しが認められた。反
日 程
豊田登起子、田中健太
P2-7-01
パーキンソン病2例に対する音声治療の効果-VHIの検討から-
日 程
福井恵子、安立多惠子、深浦順一
国際医療福祉大学 福岡保健医療学部 言語聴覚学科
【はじめに】発声障害の重症度が同程度であるにも関わら
練は声量増大訓練と趣味である歌唱を主に実施した。X年
ず、音声障害の自覚度評価であるVoice Handicap Index
の評価ではYahr stage5。G3R1B1A3S0、声量は著しく
(VHI)の得点に差が生じたパーキンソン病(PD)患者2
特別プログラム
例について検討したので報告する。
低下し、MPT15秒、発話明瞭度3、VHI81点で4年前と比
し重症化を認めた。本人が好きな歌唱場面ではX-4年の訓
【 症 例1】70歳 代、 男 性。X-9年 にPDと 診 断。X-4年
練開始当初と比較しても明らかな症状の変化はないが、そ
より言 語 聴 覚 療 法を開 始した。 開 始 時はYahr stage3。
の他の訓練や会話の場面では声量が著しく低下し、発話明
G3R1B3A2S0、声量は低下し、MPT2秒、発話明瞭度3、
瞭度も悪化した。また、近年では全身状態の悪化や環境変
VHI83点で、他者との交流機会が少なくなったと訴えた。
化の影響もあり、訓練中に不安や苛立ちを訴えることが多
訓練では声量増大訓練、声域拡大訓練を主に実施した。X
くなった。
口頭演題1日目
年 の 評 価 ではYahr stage4。G3R1B3A2S0、MPT5秒、
【考察】2例を比較すると、発声機能面に差がないにも関わ
発話明瞭度3、VHI65点となった。評価結果に大きな変化
らず、VHIでは明らかな差が生じた。症例1では社会参加機
はないが、訓練中は有響成分産生頻度が増加した。また、
会の増加が、症例2では全身状態の悪化や環境変化がVHI
カラオケや他者との会話を楽しむ機会が増えた。
の得点に影響したと考えられる。PDの発声障害に対しては、
【 症 例2】80歳 代、 女 性。X-11年にPDと診 断。X-4年
病期が進行し十分な訓練効果が得られなくなっても、機能
より言語聴覚療法を開始した。 開始時は、Yahr stage3。
維持やQOLの観点から、訓練を継続することは意義あるも
G2R1B0A2S0、声量は低下し、MPT17秒、発話明瞭度は2、
のと考えられた。
VHI23点だったが、店番や電話応対の困難さを訴えた。訓
ポスター演題1日目
P2-7-02
両側小脳・延髄梗塞例への介入〜食道発声獲得に向けての関わり方〜
佐々木類 1)、冨山陽介 2)
宮城厚生協会 泉病院 リハビリテーション科1)、宮城厚生協会 坂総合病院 リハビリテーション科2)
口頭演題2日目
【はじめに】誤嚥防止術は誤嚥を防ぐための最後の切り札で
病日に手術目的にて転院。第182病日に誤嚥防止術(喉頭
ある。今回、両側小脳・延髄梗塞による重度嚥下障害例に
中央部切除術、永久気管口術施術)施術。第207病日に当
対し、誤嚥防止術後に食道発声法の獲得を目標に介入した。
院転院。嚥下機能面での問題は解消。第224病日から音声
入院中から喉頭摘出者の会(以下「立声会」)へ参加し、退
障害の改善の為に電気式人工喉頭での訓練開始。第233
院後も立声会での訓練を継続している症例について報告す
病日に立声会への見学訓練を実施。第257病日で杖歩行自
る。【症例】50代男性。現病歴:X月17日歩行障害にて近
立にて自宅退院。その後、月に1回(4日間)の発声教室へ通
隣病院を受診、頭部MRIで小脳梗塞を認め加療の為入院。
われる。【考察】重度嚥下障害での長期入院、音声喪失は、
ポスター演題2日目
第4病日に呼吸不全から意識障害を来し、気管内挿管・人
身体的及び精神的要因を含めた患者のQOLに大きく影響す
工呼吸管理と切開を施術。第33病日に当科へ転科。
【経過】
る。実際に患者と共に立声会へ行き、当事者の方々と触れ
第34病日よりST介入開始。コミュニケーションは口話+ジェ
合い、実際の訓練方法を見学する事により、入院期間中に
スチャー +筆談にて可能。栄養ルートは経鼻経管にて。第
出来る訓練方法の再確認が出来た。社会資源の乏しい地域
42病日に初回のVE・VF実施。 第60病日でPEGを増設。
へ退院する方に対して入院中に退院後の環境調整をする事
第72病日に2回目のVF実施、バルーン訓練の実施困難。
は重要である。本症例のように復職が目標であり、外来で
第87病日に3回目のVF実施、バルーン訓練実施可能と確
の訓練が難しい症例に対して、入院中からST同席での喉頭
認。 第100病日に嘔吐誤嚥後の誤嚥性肺炎発症。 第130
摘出者の会への訪問等の援助を実施する事は重要と考えら
病日に4回目のVF実施、誤嚥防止術が必要と判断。第178
れた。
280
P2-7-03
周術期喉頭摘出患者の術後生活に対する不安‐患者会における傾向の分析‐
東京医科大学 八王子医療センター リハビリテーション部
めて参加したのは84名であった。患者様は概ね術前から術
ケーションの習得は必須である。また、
「声が出せない」
「永
後1か月以内に初めて会に参加される。全質問数は113で
久気管孔による呼吸」という術後の生活をイメージするの
あった。内容は術後の発声について38、退院後の生活58
が患者様にとって困難なことが多く、術後の生活に対する
の2点で全体の89%をしめた。他は制度や治療について等
不安は大きい。そして喉頭摘出者から直接話を聞く機会は
があった。<考察>無喉頭発声の選択に悩む事が多く、実
乏しい。当センターではそのような患者様の支援の場とし
際の発声を見てもらう事が有効であった。当センターでは
てH21.4より月に1回「オオルリの会」を開催している。会
侵襲なく短期間で習得が可能なELをまず入院中に勧める事
では無喉頭発声を習得したボランティアの方に無喉頭発声
で、コミュニケーションの負担が少ない状態で、食道発声
や実際の生活の様子をアドバイスしてもらう。H26年度は
やシャント術などを時間をかけて検討できる様に働きかけて
いる。また、永久気管孔があっても社会に十分に参加可能
者様からの質問を受ける時間がある。患者様からの質問に
な形で日常生活を送れる事を、ボランティアの方の話を通
対応する事が如何に不安の軽減に貢献するかを報告したい。
して患者様は実感する事ができる。復職、食事については
<方法>会の議事録より患者からの質問を抽出し、分類す
術前とほぼ変わらない生活をできる事も多いが、働けなく
る事で傾向を検討した。<結果>H21 〜 H26年度の喉頭
なるのでは、食べられなくなるのではといった不安を持つ事
摘出術後のリハ件数は138件。そのうちオオルリの会に初
がありそれを解消する良い機会になっていると考える。
ひよこ倶楽部(市川市STによる地域勉強会)の取り組み
〜顔が見える連携を目指して〜
伊原寛子 1)、田中真弓 2)、三橋美由紀 2)、小林 恵 3)、地主千尋 3)、長良梨沙 3)、木村知希 4)、
冨田喜代美 5)、中村智代子 5)、平尾健太 6)、山崎勇太 6)、日下智子 7)、小嶋知幸 8)
281
ポスター演題2日目
【はじめに】市川STの会ひよこ倶楽部(以下、
ひよこ倶楽部) 重な機会となっている。症例検討以外には勉強会4回、伝
は、千葉県市川市近隣施設在勤の言語聴覚士(以下ST) 達講習会10回、外部講師による講義2回、学会発表予演会
3回を開催した。(2)施設間連携として、施設紹介を9回行
の団体で、
「顔が見える連携」を念頭に、2008年8月に発
い、各施設の特徴を理解することで有効かつ円滑な連携を
足された。(1)STの資質向上(2)施設間連携(3)地域への貢
目指した。また、シームレスな連携を図るため、紹介症例
献を目的とし、月1回の頻度で活動を行ってきた。発足から
カンファンレスや情報交換を適宜行っている。(3)地域への
6年が経過し、その活動内容から地域勉強会の在り方につ
貢献活動として、発足1年目に市川市内で言語聴覚療法が
いて検討したので報告する。【活動内容・実績】2008年8
受けられる施設の一覧(通称「STマップ」
)を作成し、市役
月発足以降、定例会や勉強会は6年間で計65回開催された。
所、地域包括支援センターなどへ配布し広報活動を行った。
ここ数年の参加者数は年々増加している。(1)STの資質向
上の1つとして症例検討を行ってきた。その内訳は領域別に 【今後の課題・展望】地域STの連携の場として組織率の向
上を目指す。また、STマップの更新と地域での新人(ひよこ)
失語症59例、嚥下障害10例、高次脳機能障害7例、構音
教育を充実させていく。
障害5例であった。症例検討は、知識や技術の習得にとど
まらず、各ステージで求められるSTの役割を再考できる貴
口頭演題2日目
医療法人社団 鼎会 三和病院 リハビリテーション課1)、
医療法人社団 嵐川 大野中央病院 リハビリテーション科2)、
化学療法研究会 化学療法研究所附属病院 リハビリテーション室3)、
介護老人保健施設 グレースケア市川 リハビリテーション課4)、
東京歯科大学市川総合病院 リハビリテーション科5)、らいおんハートクリニック行徳駅前6)、
らいおんハート温泉ことばのデイサービス行徳7)、市川高次脳機能障害相談室8)
ポスター演題1日目
P2-8-01
口頭演題1日目
13名のボランティアの方に協力頂いている。会の最後に患
特別プログラム
<はじめに>喉頭摘出による音声喪失に対し代替コミュニ
日 程
新美拓穂、佐藤麻衣子、左田野智子
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