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第 11 回国際生理人類学会議に参加して

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第 11 回国際生理人類学会議に参加して
【海外レポート】
第 11 回国際生理人類学会議に参加して
前田亜紀子
群馬大学教育学部
国 際 生 理 人 類 学 連 合 ( IAPA, International
Association of Physiological Anthropology)は、日本
生理人類学会を中心とし、これに世界各国の関連
学会が加わった組織である。これまで、およそ2
年に1度、国際会議が開催されている。
かつて私は、第2回大会(1994 年、独、キール
大学)、第3回大会(1996 年、奈良女子大学)、
第4回大会(1998 年、クロアチア、ザグレブ大学)
に参加した。なお第4回大会の印象記として、本
誌に拙文を掲載していただいた。
それから 15 年を
経て、この夏、標題の第 11 回大会に参加したので
あるが、再び記す機会をいただいた。あらかじめ
お断りしておくが、観光案内になってしまうかも
知れない。
会期は 2013 年8月7日~11 日であった。会場
のバンフセンターは、カナダ北西部、アルバータ
州のバンフ国立公園内にある。カナダには計 15
のユネスコ世界遺産があるが、アルバータ州はそ
の内の5つを占め、バンフ国立公園もその一つで
ある。国際会議が開催されない限り、バンフへ来
ることなどないだろうから、私にとっては願って
もない機会であった。
成田を夕刻に発つカルガリーへの直行便に乗
った。
ここは 1988 年の冬季オリンピック開催地で
ある。航空機がカナダ上空にさしかかると、氷河
が削りとった荒々しい地形に目を奪われた。正午
前に到着。
空港からは多数の連絡バスが出ている。
車窓の景色に見とれている内に、約2時間で会場
のバンフセンターに着いた。
ここは宿泊所も兼ねている。荷をほどき、服を
着替え、登録を済ませておくことにした。すると、
会議長である Douglas Crews 先生がひとりで受付
に座っておられた。先生は第7回大会(2004 年、
オハイオ州立大学)をお世話されたので、今回は
2度目の会議長として、わざわざカナダまで出か
けてきて下さったわけである。秘書や助手などを
伴わないのは先生の流儀であるかも知れないが、
少々気の毒な気がした。
国際会議はウェルカムレセプションから始ま
る。この会議の最大の魅力は、日本人が多いこと
であり、話題に事欠かず、食事もお酒もおいしく
いただくことができる。御家族同伴の参加者がい
つもより多いとのことであったが、観光地での開
催という効果によるものであろう。
バンフは標高約 1,300m の高級スキーリゾート
地である。8月は日中の気温は 25℃程になるが、
空気が乾燥しており、絶好の避暑地となる。サル
ファー山はこの街のシンボルであり、ゴンドラに
乗って展望台に行くことができる。山頂駅の先に
は遊歩道が整備してあって、その辺り全体が展望
施設となっている。至るところリスがいて愛らし
い仕草で和ませてくれる。遊歩道を数分ほど登る
と頂上に着く。そこにはかつて宇宙線を観測した
という小屋が再現してあった。
ゴンドラの麓駅から徒歩で少し下ると、温泉施
設がある。浴槽は浅いプールのようであり、水着
を身に付けた多くの老若男女が浸っている姿を見
ることができる。私も一度は経験しておきたいと
思ったが、ガイドブックが勧めるままにスーツケ
ースに放り込んできた水着は、結局のところ出番
がなかった。
街の中を流れるボウ川は、カナディアンロッキ
ーのボウ氷河を源流とし、マリリン・モンロー主
演の映画『帰らざる河』の舞台として有名である。
今回の会議は、たゆたうボウ川の流れのごと
く、ゆったりとプログラムが組まれていた。そこ
で昼食時の長い休憩時間を利用してボウ川に下
り、その水に手を浸してみた。
会議には信州大学の三野先生も参加しておら
れ、8日の内に見事に口頭発表を終えてしまわれ
たのでうらやましかった。私の出番は9日の午前
であった。はじめ「ポスター発表希望」としてエ
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ントリーしたのであるが、Crews 先生からオーラ
ルに変更してよいかというメールが届き、「諾」
と回答してしまったのである。
私は修士の学生であった頃から透湿性防水素
材による雨具について研究している。
今大会では、
そうした衣類を着用した状況で、風だけ、あるい
は風と雨を同時に与えたときの体温調節機能につ
いて報告することにした。
苦手な英語で発表するのはとても緊張する。そ
うした私をみかねて、群馬大学大学院生の瀬戸辰
徳さん(海外経験が長く、英語の達人である)は
懇切なるレッスンをして下さった。彼の発声によ
る 20 分に及ぶ録音を繰り返し聴いて発表に臨ん
だのである。彼には心から感謝している。
笑いを取ろうということになり、途中にジョー
クを入れておいたら、果たして Crews 先生が笑っ
て下さったので少し安堵した。そして最後のスラ
イドにおいて、「あなたがバンフ国立公園をトレ
ッキングされる際、透湿性防水素材の雨衣は最適
なアイテムとなるでしょう」と結んだ。
国際会議の最後はエクスカーションである。私
たち一行はバス2台に分乗し、
湖探訪に出発した。
途中、色々な野生動物に出会い、その都度バスは
停車し、見物させてくれる。そうやってゆったり
2時間ほどかけてモレーン湖に着いた。ここの水
はターコイズブルーである。氷河が溶ける際、微
細な土砂が混ざり、その色になるらしい。滞在時
間 20 分で次なるルイーズ湖へ移動した。
こちらは
エメラルドグリーンに輝いていた。
たちまち会期は過ぎ、冷涼なバンフから猛暑の
日本に戻って来た。時差と暑さが複合したためで
あろうか、体調は直ぐには回復しなかった。それ
でも、この時期にしか出来ない実験を計画してい
たからにはやる他ない。つまりTシャツ短パン姿
のまま、雨具なし状態で、横殴りの雨に身体を曝
すという過酷な実験を、実践女子大にお邪魔して
行ったのであった。
次の第 12 回の国際会議は、2015 年の秋、千葉
大の勝浦先生が会議長をお務めになり、幕張で開
催されるという。国際会議で発表する度に、自分
の英語力のなさを痛感する。次回大会に向け、あ
と2年間、研究に邁進しつつ、語学学習に励まね
ばと思っている。
サルファー山からバンフ市街を望む
参加者全員で記念撮影
ルイーズ湖にて
<連絡先>
〒371-8510 群馬県前橋市荒牧町4-2
群馬大学教育学部 前田亜紀子
電話&FAX:027-220-7344
E-mail: [email protected]
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