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神鉄タクシー事件 原告 P1∼P3(いずれも個人タクシーを経営する個人

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神鉄タクシー事件 原告 P1∼P3(いずれも個人タクシーを経営する個人
神鉄タクシー事件
原告 P1∼P3(いずれも個人タクシーを経営する個人)
被告 神鉄タクシー(神戸電鉄の100%子会社)
神鉄タクシーが北鈴蘭台駅タクシー乗り場でP1・P3の乗り入れを妨害し
たのを機に、鈴蘭台駅・北鈴蘭台駅各タクシー乗り場での同種行為の差止め
を請求した(他に損害賠償請求もしている)
神戸地判(差止請求棄却)
4 争点3(独禁法24条に基づく差止請求権の成否)について
(1)告示14項該当性
ア 競争関係
告示14項所定の「競争関係」は,独禁法2条4項に定義されてい
るところ,原告らの営業区域はいずれも神戸市を含んでいる上,原告
P1及び原告P3は,いずれも鈴蘭台駅前及び北鈴蘭台駅前を含む神
戸市北区に営業所を持ち,原告P2は神戸市北区に隣接する神戸市西
区に営業所を持つタクシー事業者であり,被告は神戸市北区を営業区
域としていることからすれば,原告らと被告の状態は「二以上の事業
者がその通常の事業活動の範囲内において,かつ,当該事業活動の施
設又は態様に重要な変更を加えることなく」「同一の需要者に同種…
の…役務を供給する」「行為をし,又はすることができる状態」(同
4項)に当たるものと認められ,原告らと被告との間には競争関係が
認められる。
被告は,原告らが,被告のタクシー乗り場に押しかけて意図的に競
争関係を作り出したものといえるなどと主張するが,本件各タクシー
待機場所は,被告専用のものではなく,原告らも利用することが可能
であることは前記説示のとおりであって本来競争者間の自由競争の下
におかれるべき場所である。換言すれば,原告らは,本件各タクシー
待機場所が事実上被告専用のものとされてきたことから自由に乗り入
れられず,普段は他の待機場所を利用していたにすぎないともいえる
のであるから,被告の主張には理由がない。
イ 取引妨害
(略)
ウ 公正競争阻害性について
(略)
エ まとめ
以上によれば,被告の行為は告示14項に該当すると認められ,被
告には独禁法19条違反行為(以下「本件独禁法違反行為」という。)
があったと認められる。
(2)差止請求権の成否
本件独禁法違反行為を理由として,原告らに独禁法24条に基づく差
止請求権が認められるためには,原告らに本件独禁法違反行為によって
「著しい損害」が生じ,又は生じるおそれがあると認められる必要があ
る。
同条にいう著しい損害とは,一般に差止請求を認容するには損害賠償
請求を認容する場合よりも高度の違法性を要するとされていることを踏
まえつつ,不正競争防止法等他の法律に基づく差止請求権との均衡や過
度に厳格な要件を課した場合は差止請求の制度の利用価値が減殺される
ことにも留意しつつ定められたものであって,例えば,当該事業者が市
場から排除されるおそれがある場合や新規参入が阻止されている場合等
独占禁止法違反行為によって回復し難い損害が生ずる場合や,金銭賠償
では救済として不十分な場合等がこの要件に該当するものと解される。
しかしながら,原告らの営業区域には,鈴蘭台駅及び北鈴蘭台駅のほ
かにもタクシーの客待ちに適した待機場所があることがうかわわれ,原
告らは,本件各タクシー待機場所に乗り入れていない現状においても,
日々の売上が一定程度あり、長期に渡りタクシー営業を営んできたこと
はこれまで認定,説示したとおりである。したがって,原告らに本件独
禁法違反行為によって,回復し難い損害が生じるとか,金銭賠償による
救済では不十分であるとまでは認められず,他に差止請求権を生じさせ
るような「著しい損害」が生じ,又は生じるおそれがあると認めるに足
りる証拠はない。
(3)したがって,原告らに独禁法24条に基づく差止請求権は認められな
い。
大阪高判(差止請求認容)
2 原告らと被告との間に競争関係があるか(争点(1)ア)について
(1)一般指定14項にいう「競争関係」は,自己と他の事業者との間に,
その通常の事業活動の範囲内において,かつ,当該事業活動の施設又は
態様に重要な変更を加えることなく同一の需要者に同種又は類似の商品
又は役務を供給し,又は供給することができるという関係が成り立つこ
とをいう(独禁法2条4項1号)。
(2)前認定のとおり,平成22年度における鈴蘭台駅の年間乗車人員は約
378万人,北鈴蘭台駅の年間乗車人員は約245万人に及んでいると
ころ,両駅の乗車人員は若干減少傾向にある(甲C6)ものの,その後
も同程度の降車人員があるほか,両駅周辺を訪れる者も一定数存在する
ことが推認できる。また,前認定のとおり,原告らの調査期間中,鈴蘭
台駅前タクシー待機場所において平均して1.9分に1回,北鈴蘭台駅
前タクシー待機場所において平均して4.7分に1回の割合で,それぞ
れタクシーに乗車する者があったことに照らしても,両駅付近からタク
シーを利用しようとする者は少なくないことが推認できる。また,鈴蘭
台駅や北鈴蘭台駅のような大都市近郊の鉄道駅で降車した者や,駅周辺
を訪れた者がタクシーを利用しようとする場合に,近隣の他の駅等に移
動した上でタクシーに乗車することは想定し難く,このことは,運賃等
に多少の差があったとしても変わりはないと考えられる。
そして,前認定のとおり,鈴蘭台駅及び北鈴蘭台駅付近には,本件各
タクシー待機場所のほかには,客待ちのためにタクシーが待機するのに
適した場所はなく,両駅からの降車客などの両駅付近でタクシーを利用
しようとする者は,通常,本件各タクシー待機場所においてタクシーに
乗車することになるから,本件各タクシー待機場所におけるタクシー利
用者が上記の「同一の需要者」に当たる。
さらに,原告らは鈴蘭台駅周辺及び北鈴蘭台駅周辺で事業活動を行う
ために必要な法令上の許可を得ているほか,一人一車制個人タクシー事
業者は,許可を受けた営業区域内であればどこでも同一の車両で,利用
者を発見して乗車させ,その者を目的地に運搬して運賃を収受するとい
う同一の態様で事業活動を行うものであって,前認定の原告らの事業拠
点の所在地からすると,原告らが本件各タクシー待機場所で乗客を得よ
うとすることは不合理とはいえない。そうすると,原告らが本件各タク
シー待機場所で乗客を得ようとすることは,原告らの通常の事業活動の
範囲内において,当該事業活動の施設又は態様に重要な変更を加えるこ
となく同一の需要者に被告の供給する役務と同種の役務を供給しようと
することであるから,原告らと被告との間には,一般指定14項にいう
「競争関係」があるといえる。
・
・
・
4 被告の行為によって原告らに著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあ
るといえるか(争点(1)ウ)について
前認定及び判示のとおり,原告らは,被告の妨害行為(不公正な取引方
法)によって,本件各タクシー待機場所において乗客を得るという利益を
侵害され,又は侵害されるおそれがあるところ,原告らが,被告に対して,
本件各タクシー待機場所における前認定のような被告の妨害行為(独禁法
19条違反行為)の差止めを求めることができるのは,その妨害行為によっ
て原告らに著しい損害(独禁法24条)を生じ,又は生じるおそれがある
ことを要する。
そして,被告は,前判示のとおり,平成23年4月から同年5月までの
延べ4日間,一般指定14項にいう不当な取引妨害によって,競争関係に
ある事業者である原告P1及び原告P3から,北鈴蘭台駅前タクシー待機
場所においてタクシー利用者と旅客自動車運送契約を締結する機会をほぼ
完全に奪ったものであり,今後も本件各タクシー待機場所において,同様
の行為をして原告らからタクシー利用者と旅客自動車運送契約を締結する
機会をほぼ完全に奪うことが予想されるのであって,これは,公正かつ自
由な競争を促進するという独禁法の目的ないし理念を真っ向から否定する
ものといい得る。また,その手段としても,待機場所に進入しようとした
原告側タクシーの前に立ちはだからせたり,その前に被告タクシーを割り
込ませて待機場所への進入や,待機場所内で先頭車両となることを妨害し,
先頭車両となった原告側タクシーの扉の横に座り込ませたり,その前に立
ちはだからせたりして,原告側タクシーが利用者を乗せて発進することを
妨害するという物理的な実力を組織的に用いるというものであるから,こ
のような損害の内容,程度,独禁法違反行為の態様等を総合勘案すると,
原告らが被告の独禁法19条違反行為によって利益を侵害され,侵害され
るおそれがあることによって生じる損害は著しいものというべきである。
したがって,原告らの独禁法24条に基づく差止請求は,不当な取引妨
害に当たる主文第2,3項の行為の差止めを求める限度で理由がある。
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