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ま え が き
ま え が き 本書は,電気電子系,情報系,建築系,機械系などの大学生が音響工学を初 めて学習する際のテキストブックとして使えるよう,音響工学の基礎的な原 理,現象について平易かつ体系的に述べた。また一方で,音響工学に関わる技 術者,研究者が日々の仕事で直面する技術的課題を解決する際に紐解くことが 社 できるよう,専門性,実用性,および新規性も兼ね備えた内容とした。 本書の構成は次のようにした。まず第 1 章「音波とは何か」では,音波の定 義を示し,音波の物理的な振舞いと,その記述方法について述べた。 ロ ナ 第 2 章「聴覚器官」では,おもに生理学的な見地からヒトの聴覚器官を概観 した。ヒトの聴覚末梢器官を,外耳(耳介,外耳道,鼓膜),中耳(耳小骨) および内耳(蝸牛,前庭,三半規管)に分け,それぞれの部位の機能について 述べた。 第 3 章「音の知覚」では,音の大きさ,高さ,音色,方向,距離,広がりな コ どの要素感覚を取り上げて,その知覚現象を詳しく述べた。さらに,それぞれ の要素感覚を引き起こす,あるいは対応する音の物理量について概説した。 第 4 章「室内音響」では,壁などの境界面による音の反射や吸音について説 明した後,それらが繰り返されることによって形成される残響について述べ た。また,室内における音声の明瞭度や音楽の広がり感などの評価指標につい て解説し,設計時点でそれらを予測するための手法を紹介した。加えて,騒音 の評価方法および遮音方法について述べた。 第 5 章「電気音響」では,電気音響機器およびそのシステムについて概説し た。まず,代表的な電気音響機器であるマイクロホンおよびスピーカについ て,その動作原理や特徴を詳しく述べた。加えて,ホールや劇場で用いられて いるディジタル音響機器を概説した。さらに,臨場感の高い音場を再生する 3 ii ま え が き 次元音響再生システムを紹介した。 第 6 章「音のディジタル処理」では,音響工学を理解し,その知識を活用す るうえで必要となるディジタル信号処理の基礎を概説した。また,学習に役立 つサンプルプログラムを掲載した。 なお,各章末には,本書で基礎を学んだ後,より高いレベルに進む読者のた めに, 「さらに理解を深めるための書籍」を掲載した。ぜひ,これらの書籍も 読み進めてほしい。 本書を執筆するにあたって,多くの書籍および論文を参考にした。巻末の 「参考図書・引用論文」に記して,音響工学に関わる諸先輩に敬意を表したい。 社 (株) 小野測器,ブリュエル・ケアー・ジャパン,およびヤマハ(株)には,音響 機器の写真を提供いただいた。また,千葉工業大学の石井要次君,三橋茂一君 をはじめとする学生諸君からも多くの協力を得た。本書の刊行にご協力いただ ロ ナ いた方々に心より感謝する。 本書が,音響工学に関心のある学生諸君の学習に,あるいは音響工学に関わ る技術者・研究者の実務に役立つことが,著者の真の希望である。執筆には細 心の注意を払ったが,もとより浅学非才の身,お気づきの点については,ご指 導,ご叱正いただければ幸いである。 コ 2011 年初秋 横浜にて 飯 田 一 博 目 次 1 . 音 波 と は 何 か 1 . 1 音 の 分 類 1 1 1 . 1 . 2 複 合 音 2 1 . 2 音 波 の 基 礎 1 . 2 . 1 音 の 伝 搬 ロ ナ 1 . 2 . 2 音 速 社 1 . 1 . 1 純 音 1 . 2 . 3 音響インピーダンス密度 1 . 3 音圧と音の強さ 3 3 5 7 7 1 . 3 . 1 音 圧 7 1 . 3 . 2 音 の 強 さ 8 1 . 3 . 3 音 の レ ベ ル 8 10 1 . 3 . 5 スペクトルレベルとオクターブバンドレベル 10 コ 1 . 3 . 4 音圧レベルの加算と減算 1 . 4 球 面 波 12 1 . 5 平 面 波 13 1 . 6 波 動 方 程 式 14 1 . 6 . 1 波動方程式導出の準備 14 1 . 6 . 2 波動方程式の導出 16 1 . 6 . 3 速度ポテンシャルを用いた表現 17 1 . 6 . 4 平面波の波動方程式の一般解 19 1 . 7 電気・機械・音響系の対応関係 19 1 . 8 インパルス応答と伝達関数 22 次 iv 目 さらに理解を深めるための書籍 22 2 . 聴 覚 器 官 2 . 1 外 耳 の 機 能 24 2 . 1 . 1 耳 介 24 2 . 1 . 2 外 耳 道 25 2 . 2 中 耳 の 機 能 25 2 . 3 内 耳 の 機 能 27 27 2 . 3 . 2 基 底 膜 28 2 . 3 . 3 有 毛 細 胞 29 2 . 4 聴 覚 の 伝 導 路 2 . 5 聴覚器官の信号処理モデル ロ ナ さらに理解を深めるための書籍 社 2 . 3 . 1 蝸 牛 30 32 33 3 . 音 の 知 覚 34 3 . 2 音の大きさの知覚 36 3 . 2 . 1 ラ ウ ド ネ ス 36 3 . 2 . 2 両耳ラウドネス 38 コ 3 . 1 Weber Fechner の法則 3 . 3 マ ス キ ン グ 39 3 . 3 . 1 同時マスキング 39 3 . 3 . 2 臨 界 帯 域 41 3 . 3 . 3 継時マスキング 43 3 . 4 音の高さの知覚 43 3 . 4 . 1 ピ ッ チ 感 覚 43 3 . 4 . 2 メ ル 尺 度 44 3 . 4 . 3 ピッチの弁別閾 44 3 . 4 . 4 ミッシングファンダメンタル 45 目 3 . 4 . 5 音 律 次 v 46 3 . 5 音 色 の 知 覚 48 3 . 6 音の方向の知覚 48 48 3 . 6 . 2 水平面および正中面の頭部伝達関数 49 3 . 6 . 3 頭部伝達関数と方向知覚 51 3 . 6 . 4 頭部伝達関数の個人差と個人適応 53 3 . 6 . 5 左右方向の知覚 54 3 . 6 . 6 前後・上下方向の知覚 57 3 . 6 . 7 方向知覚の弁別限 64 3 . 6 . 8 第 1 波面の法則 64 3 . 7 音の距離の知覚 3 . 7 . 1 音源距離と音像距離 社 3 . 6 . 1 頭部伝達関数の定義 3 . 7 . 2 距離知覚に影響を及ぼす物理的要因 ロ ナ 3 . 8 音の広がりの知覚 67 67 68 70 3 . 8 . 1 広がり感の定義 70 3 . 8 . 2 みかけの音源の幅に影響を及ぼす物理的要因 71 3 . 9 音 声 の 知 覚 73 73 3 . 9 . 2 母 音 の 調 音 74 3 . 9 . 3 子 音 の 調 音 75 コ 3 . 9 . 1 発 声 の 仕 組 み さらに理解を深めるための書籍 76 4 . 室 内 音 響 4 . 1 音の反射・吸収・透過 77 4 . 2 音 の 屈 折 79 4 . 3 残 響 80 4 . 3 . 1 拡 散 音 場 80 4 . 3 . 2 拡散音場における音エネルギーの成長と減衰 82 4 . 3 . 3 残 響 時 間 83 次 vi 目 4 . 3 . 4 Sabine の残響理論 84 4 . 3 . 5 Eyring の残響理論 85 4 . 3 . 6 残響時間の測定法 87 4 . 4 室内音響評価指標 88 4 . 4 . 1 音 量 感 88 4 . 4 . 2 明 瞭 度 89 4 . 4 . 3 残 響 感 91 4 . 4 . 4 みかけの音源の幅 92 4 . 4 . 5 暗 騒 音 95 4 . 5 室内音響の予測手法 97 社 4 . 5 . 1 音場のコンピュータシミュレーション 4 . 5 . 2 縮 尺 模 型 実 験 4 . 5 . 3 音 場 の 可 聴 化 4 . 6 騒 音 の 評 価 ロ ナ 4 . 6 . 1 騒 音 の 分 類 97 99 100 100 100 101 4 . 6 . 3 騒 音 の 測 定 104 4 . 6 . 4 騒音計の周波数補正回路 105 4 . 6 . 5 騒音計の時間重み特性 106 4 . 6 . 6 騒 音 の 評 価 量 106 4 . 6 . 7 騒音の環境基準 107 コ 4 . 6 . 2 騒 音 の 伝 搬 4 . 7 遮 音 108 4 . 7 . 1 遮音に関する質量則 108 4 . 7 . 2 コインシデンス効果 109 さらに理解を深めるための書籍 110 5 . 電 気 音 響 5 . 1 マ イ ク ロ ホ ン 111 5 . 1 . 1 動電型マイクロホン 111 5 . 1 . 2 静電型マイクロホン 113 5 . 1 . 3 マイクロホンの感度 115 目 次 vii 5 . 1 . 4 マイクロホンの指向性 115 5 . 1 . 5 マイクロホンアレイ 116 5 . 1 . 6 ダミーヘッドマイクロホン 117 5 . 2 ス ピ ー カ 117 5 . 2 . 1 動電直接放射型スピーカ 118 5 . 2 . 2 エンクロージャの影響 120 5 . 2 . 3 ホーン型スピーカ 122 5 . 2 . 4 ラインアレイスピーカ 124 5 . 3 ホールの電気音響システム 124 5 . 4 臨場感再生システム 127 127 5 . 4 . 2 2 個のスピーカによる 3 次元音響再生 136 さらに理解を深めるための書籍 社 5 . 4 . 1 ヘッドホンによる 3 次元音響再生 142 ロ ナ 6 . 音のディジタル処理 6 . 1 標本化・量子化 143 6 . 2 音源信号の作成 145 145 6 . 2 . 2 ホワイトノイズの作成 146 6 . 2 . 3 swept-sine 信号の作成 147 コ 6 . 2 . 1 純 音 の 作 成 6 . 3 フ ー リ エ 変 換 149 6 . 3 . 1 離散フーリエ変換 149 6 . 3 . 2 高速フーリエ変換 150 6 . 4 畳 込 み 積 分 154 6 . 4 . 1 時間軸上での処理 154 6 . 4 . 2 周波数軸上での処理 159 6 . 4 . 3 オーバーラップ加算法 161 6 . 5 時 間 窓 163 6 . 5 . 1 矩 形 窓 163 6 . 5 . 2 ハ ニ ン グ 窓 164 次 viii 目 6 . 5 . 3 ハ ミ ン グ 窓 164 6 . 5 . 4 ブラックマン窓 165 6 . 5 . 5 ブラックマン ハリス窓 165 6 . 6 サンプリング周波数変換 169 6 . 6 . 1 ダウンサンプリング 169 6 . 6 . 2 アップサンプリング 171 6 . 6 . 3 サンプリング変換 173 さらに理解を深めるための書籍 174 1 頭部伝達関数データベースの URL 2 建築材料の吸音率 3 建築材料の透過損失 4 残 響 時 間 ロ ナ 5 騒音計の周波数重み特性 社 付 表 175 175 183 187 188 189 索 引 194 コ 参考図書・引用論文 1 . 音波とは何か 音には 2 種類の定義がある。その 1 つは「弾性体を伝搬する振動」,すなわ ち音波である。そしてもう 1 つは「音波により引き起こされる聴覚的感覚」で 社 あり,これは,いうまでもなく知覚的な定義である。第 1 章では,音波の物理 的な振舞いと,その記述方法について詳しく述べる。 ロ ナ 1 . 1 音 の 分 類 音波(sound wave)を物理的に記述する前に,まず音を類別してみよう。 われわれが普段接している様々な音は以下のように分類できる。 コ 1 . 1 . 1 純 音 純音(pure tone)とは,ただ 1 つの周波数の正弦波からなる音である。し 振 幅 振 幅 たがって,その時間波形は図 1 . 1( a )のように表される。また,周波数の関 時間 周期 T〔s〕 ( a ) 時間波形 f=1 / T 周波数 ( b ) 振幅スペクトル 図 1 . 1 純音の時間波形と振幅スペクトル 2 1 . 音 波 と は 何 か 数として表すと,図( b )のように f = 1 / T となる周波数 f においてのみ成 分を有する。純音の身近な例としては,音叉の発する音があげられる。 1 . 1 . 2 複 合 音 純音以外の音,つまり周波数の異なる複数の純音で構成された音を複合音 (complex tone)という。複合音を構成する周波数のうち,最も低い周波数成 分を基音(fundamental tone) ,基音以外の周波数成分を上音(over tone)と いう。 複合音のうち,楽器の音や歌声などを楽音(musical sound)とよぶ。楽音 社 は,図 1 . 2 に示すように,上音の周波数が基音の周波数(基本周波数)の整 数倍になっている。このような上音を倍音(harmonics)とよぶ。 周波数 図 1 . 2 楽音の振幅スペクトル コ 基音 ロ ナ 振 幅 倍音 一方,複合音のうち,周波数や音圧が不規則に変動する音を雑音(noise) という。図 1 . 3 に雑音の一例として,街の雑踏の振幅スペクトルを示す。楽 音と異なり,連続的なスペクトル構造をもっている。また,雑音のうち周波数 全域にわたって振幅が等しいものをホワイトノイズ(white noise)という(図 1 . 4) 。 このように,雑音は物理的に定義された音であるが,騒音(noise:英語表 記では雑音と同じである)は,その定義が雑音とはまったく異なるので注意が 必要である。騒音とは,聴き手にとって望ましくない音のことである。いかに 美しい音楽であっても,聴き手にとって勉強や研究の妨げになる音と受け取ら れれば,それは騒音である。 振 幅 振 幅 1 . 2 音 波 の 基 礎 3 周波数 周波数 図 1 . 3 街の雑踏の振幅スペクト ルの一例 図 1 . 4 ホワイトノイズの振幅 スペクトル 社 1 . 2 音 波 の 基 礎 音波は,弾性体の媒質を伝わる振動である。弾性体とは,力を加えたときの 形や大きさの歪が,力を緩めると元に戻る性質をもった物質である。まず,音 ロ ナ 波が空気,水,鉄などの弾性体媒質を伝搬する様子をみてみよう。 1 . 2 . 1 音 の 伝 搬 音波は,空気などの媒質の微小な部分(媒質粒子)が振動し,その振動が隣 接する媒質粒子に次々に伝わることによって媒質中を伝搬する。媒質粒子は, コ それが存在する位置のごく近傍で振動しているだけで,媒質粒子そのものが移 動して音波を伝搬しているわけではない。音波が伝搬している空間を音場 (sound field)という。 一 般 に, 媒 質 粒 子 の 振 動 方 向 と 波 動 の 伝 搬 方 向 が 同 じ も の を 縦 波 (longitudinal wave) ,媒質粒子の振動方向と波動の伝搬方向が直交するものを 横波(transverse wave)という。音波は気体あるいは液体では縦波で伝搬し, 固体では縦波と横波の両方で伝搬する。液体の表面(水面)では横波が進行す るが,これは水面では表面張力が働くためであって,液体中(水中)では縦波 で伝搬する。固体には横ずれを元に戻す性質,すなわち剛性(ずり弾性)があ るため,横波が生じる。 密 疎 密 疎 p0 密 位置 x〔m〕 波長 m〔m〕 ( a ) ある時間における音圧と位置の関係 音圧 p〔Pa〕 音圧 p〔Pa〕 4 1 . 音 波 と は 何 か 密 疎 密 疎 密 p0 時間 t〔s〕 周期 T〔s〕 ( b ) ある位置における音圧と時間の関係 図 1 . 5 音波の伝搬 縦波には,ある時間についてみると,媒質粒子が互いに近づいて密度が高く なる点(密)と互いに離れて密度が低くなる点(疎)が存在する〔図 1 . 5 (a) 〕 。また,ある点についてみると,密になる時間と疎になる時間が繰り返 社 される〔図( b ) 〕 。このような縦波は疎密波(dilatational wave)ともよばれ る。密になる場合は媒質の圧力が高くなり,疎になる場合は低くなる。 空気中を伝搬する音は,大気圧 p0 を基準として圧力が高くなったり低く ロ ナ なったりする。この圧力の変化分を音圧(sound pressure)といい,媒質粒子 の運動速度を粒子速度(particle velocity)という。図 1 . 5 に示す正弦波では, 音圧 p は時間 t および位置 x において式(1 . 1)のように表される。 ( ) p=P cos ~ t− x =P cos (~t−kx) c (1 . 1) コ こ こ で,P〔Pa〕 は 音 圧 の 最 大 振 幅 で,~ (t−x / c) や(~t−kx) を 位 相 (phase)という。 ~ と周波数(frequency) ~〔rad / s〕は角周波数(angular frequency)であり, f〔Hz〕には次の関係がある。 ~=2r f (1 . 2) さらに,f と周期(period)T〔s〕には式(1 . 3)の関係がある。 f= 1 T (1 . 3) c〔m / s〕 は 音 速(sound speed) で あ り,k〔rad / m〕 は 波 長 定 数(wave number)とよばれ 1 . 2 音 波 の 基 礎 5 k= ~ = c 2r m (1 . 4) である。ここで,m〔m〕は波長(wave length)である。これらの間には式 (1 . 5)の関係がある。 (1 . 5) c= f m また,式(1 . 1)は正弦波の音圧の瞬時値を表しており,このままでは 1 つ の値に定まらない。そこで,式(1 . 6)で定義する実効値,すなわち 変動す る瞬時値の 2 乗平均の平方根 により音圧の大きさを表すこととする。粒子速 度の大きさについても同様である。 ロ ナ 1 . 2 . 2 音 速 0 . 707 P 社 P 1 T }2 dt= { P cos (~t−kx) 2 T 0 (1 . 6) 音速は媒質によって異なる。空気の音速に比べて,水の音速は 4 ∼ 5 倍,鉄 の音速は 15 ∼ 20 倍である。このような媒質中の音の伝搬速度は,媒質の弾性 率と密度で決まる。媒質が気体および液体の場合,伝搬速度は体積弾性率 l, 密度 t を用いた式(1 . 7)で求められる。 l t コ c= (1 . 7) ここで,気体の場合は,定圧比熱と定積比熱の比熱比 c と大気圧 p0 を用いて 式(1 . 8)のように表される。 c= cp0 t (1 . 8) また,R を気体定数,T を気体のケルビン温度,M を気体の平均分子量とし て c= cRT M (1 . 9) とも表される。これより,気体中を伝搬する速度は温度によって変化すること 6 1 . 音 波 と は 何 か がわかる。空気の場合,温度 t〔℃〕と音速 c の関係は式(1 . 10)で表される。 c=331 . 5+ 1+ t 273 331 . 5+0 . 61 t (1 . 10) 気温 15 ℃での音速は約 340 m / s となり,この値を空気の音速の代表値とし て使う場合が多い。 媒質が固体の場合の音速は,縦波では式(1 . 11) ,横波では式(1 . 12)で求め られる。 l+ (3 / 4) G t (1 . 11) c= G t (1 . 12) 社 c= ここで,G は剛性率(ずり弾性率)である。ただし,弦などのような波長に比 c= ロ ナ べて十分に細い固体の場合は,縦波の音速は式(1 . 13)になる。 E t (1 . 13) ここで,E はヤング率である。 表 1 . 1 に様々な媒質の密度,音速および特性インピーダンスを示す。気体 コ に比べて,液体,固体の音速が大きいことがわかる。また,固体では,縦波の 表 1 . 1 様々な媒質の密度,音速および特性インピーダンス 媒 質 密度 t〔kg / m3〕 空気(20 ℃) 1 . 205 ヘリウム(0 ℃) 0 . 178 5 水(23 ∼ 27 ℃) 1 . 00×103 鉄(縦波) 7 . 86×103 鉄(弦の縦波) 7 . 86×103 鉄(横波) 7 . 86×103 コンクリート(縦波) 2 . 00×103∼2 . 60×103 ゴム(縦波) 0 . 97×103 ゴム(弦の縦波) 0 . 97×103 ゴム(横波) 0 . 97×103 音速 c〔m / s〕 特性インピーダンス tc〔Ns / m3〕 343 . 5 970 1 500 5 950 5 120 3 240 4 250∼5 250 1 500 210 120 415 173 1 . 50×106 46 . 4×106 40 . 2×106 25 . 3×106 8 . 50×106∼13 . 7×106 1 . 46×106 0 . 204×106 0 . 116×106 索 引 あ お 171 オクターブ数 11 25 音に包まれた感じ 70 100 音の空気吸収 い 8 音の強さ 4 音の強さのレベル 9 位 相 4 1 オクターブバンドレベル 音 圧 11 音圧透過係数 79 31 音圧反射係数 79 1 次聴覚野 29 音圧レベル 9 位置説 32 音響インテンシティ 8 一致モデル 129 音響インピーダンス 7 因果律 22 音響インピーダンス密度 7 インパルス 22 音響エネルギー密度 8 インパルス応答 87 音響パワーレベル 9 インパルス応答積分法 29 音 叉 2 インパルス発火 7 音 節 74 インピーダンス 26 音節明瞭度 89 インピーダンス変換 98 音線法 う 74 音 素 45 音 像 34 ヴァーチャルピッチ 66 63 —の分離の割合 うなずき 67 15 音像距離 運動の第 2 法則 4 16, 20 音 速 運動方程式 1 音 波 え 3 音 場 65 音 律 46 エコー 65 エコー検知限 か エコーディスターバンス 66 24 10 外 耳 エネルギー加算 24 125 外耳道 エフェクタ 25 144 外耳道共振 エリアシング 31 外側毛体核 エレクトレットコンデンサ 63 115 回 転 マイクロホン 29 120 蓋 膜 エンクロージャ 29 外有毛細胞 20 回路方程式 コ ロ ナ 社 アップサンプリング 鐙 骨 31 下 丘 25, 27 蝸 牛 30 蝸牛神経核 2 楽 音 80 拡散音場 53, 61 学 習 4 角周波数 115 拡 声 63 かしげ 100 可聴化 116 カーディオイド特性 115 感 度 ガンマトーンフィルタ群 32 き 2 基 音 機械インピーダンス 112, 118 19 機械振動系 幾何音響シミュレーション 97 89 聴き取りくにさ 27 基底膜 25 砧 骨 2 基本周波数 43 逆行マスキング 102 逆 2 乗則 150 逆フーリエ変換 78 吸音率 84 吸音力 77 吸 収 12 球面波 30 橋 99 境界要素法 19, 119 共振周波数 46 協和音程 97 虚音源 97 虚 像 索 97 13 く 空間インパルス応答 空気の減衰係数 矩形窓 屈曲波 屈折角 グラフィックイコライザ 48 104 163 109 79 127 け 継時マスキング 39 こ 74 子 音 24 耳 介 90 時間重心 163 時間窓 99 時間領域有限差分法 24 耳甲介 115 指向性 25 耳小骨 5 実効値 113, 120 質量制御 21 質量成分 109 質量則 29 シナプス結合 37 尺度構成法 4 周 期 4 周波数 29 周波数選択性 105 周波数補正回路 99 受音領域 99 縮尺模型 1 純 音 43 順行マスキング 5 瞬時値 37 順序尺度 46 純正音程 47 純正律 31 上オリーブ外側核 31 上オリーブ内側核 30 上オリーブ複合体 2 上 音 47 小全音 92 初期減衰時間 初期側方エネルギー率 72, 92 28 進行波 29 進行波説 111, 118 振動板 コ ロ ナ コインシデンス限界周波数 109 109 コインシデンス効果 コインシデンス周波数 109 3 剛 性 10 合成音圧レベル 57 合成音像 6 剛性率 151 高速フーリエ変換 27 鼓室階 28 鼓室窓 53 個人差 53 個人適応 24 鼓 膜 27 コルチ器 118 コーン 57 コーン状の混同 コンデンサマイクロホン 113 コンプレッサ / リミッタ 126 し さ 8 最小可聴音圧 37 最小可聴値 8 最大可聴音圧 163 サイドローブ 2 雑 音 83 残響時間 144 サンプリング周波数 144 サンプリング定理 1/3 オクターブバンドレベル 11 スペクトルレベル ずり弾性率 す 10 6 せ 絶対不応期 線音源 先行音効果 前後誤判定 前庭階 前庭窓 32 102 65 57 27, 28 25, 28 そ 騒 音 騒音計 騒音レベル 双指向性 双指向性マイクロホン 速度ポテンシャル 疎密波 ソ ン 社 虚像法 距離減衰 引 195 2 104 106 113 116 18 4 38 た 111 ダイアフラム 11 帯 域 29 帯域フィルタ群 65 第 1 波面の法則 7 体積速度 5 体積弾性率 47 大全音 ダイナミックマイクロホン 111 169 ダウンサンプリング 22, 100, 154 畳込み積分 3 縦 波 ダミーヘッド 93, 117, 127 単一指向性マイクロホン 116 74 単 語 89 単語了解度 114 弾性制御 21 弾性成分 3 弾性体 88 単発騒音暴露レベル 107 79 ストレングス スネルの法則 ち スペクトラルキュー 25, 58, 61, 132 遅延和アレイ法 48 力係数 スペクトル分布 116 118 引 中央階 中 耳 調 音 調音位置 聴覚中枢 聴神経線維 丁度可知差 27 25 74 74 29 29 35 つ 槌 骨 25 て と 112 21 82 126 27 9 101 22 ナイキスト周波数 内側膝状体 内有毛細胞 音 色 ノイズ遮断法 ノッチ ノッチ周波数 144 31 29 48 87 50 58 は 2 倍 音 48 倍音構造 45 倍音列 3 媒質粒子 75 破擦音 66 ハース効果 5 波 長 4 波長定数 121 バッフル板 波動音響シミュレーション 97 14 波動方程式 164 ハニング窓 164 ハミング窓 12 波 面 パラメトリックイコライザ 127 パラメトリック頭部伝達関数 58 75 破裂音 77 反 射 79 反射角 32 半波整流 75 半母音 ロ ナ 抵抗制御 抵抗成分 定常状態 ディレイマシン てこの原理 デシベル 点音源 伝達関数 な行 コ 77 透 過 19 等価回路 84 透過吸音面積 41 等価矩形帯域幅 106 等価騒音レベル 78, 109 透過損失 78 透過率 39 同時マスキング 118 動電型スピーカ 106 動特性回路 等パーセントディスター 66 バンス曲線 頭部インパルス応答 49, 100 25, 48 頭部伝達関数 頭部伝達関数データベース 134 頭部モーションセンサ 135 36 等ラウドネス曲線 7 特性インピーダンス 31 トノトピシティ トランスオーラルシステム 51, 136 124 トーンゾイレ 2 複合音 29 不動毛 ブラックマン⊖ハリス窓 165 165 ブラックマン窓 149 フーリエ変換 22 フーリエ変換対 89 文章了解度 へ 25 閉 管 82, 84 平均吸音率 85 平均自由行路 47 平均律 13 平面波 9 ベ ル 20 ヘルムホルツの共鳴器 ベロシティマイクロホン 113 14 変位量 35 弁別閾 社 196 索 ひ 鼻 音 ピッチ 標本化 比例尺度 ピンクノイズ ふ フォルマント フォルマント周波数 ほ 111, 118 ボイスコイル 74 母 音 62 方向決定帯域 64 方向知覚の弁別限 2, 146 ホワイトノイズ 123 ホーン型スピーカ ま マイクロホンアレイ 曲げ波 摩擦音 マスカ マスキング 116 109 75 39 39 み 75 43 143 37 146 70, 92 みかけの音源の幅 ミキシングコンソール 125 ミッシングファンダメンタル 45 5 密 度 む 74 無指向性マイクロホン 74 無声音 115 76 索 ラインアレイスピーカ ラウドネス 163 ラウドネスレベル 29 乱入射質量則 44 め メインローブ メスバウエル法 メル尺度 り や行 リアルヘッド 離散フーリエ変換 リバーブレータ リファレンス情報 粒子速度 量子化 両耳間距離 両耳間差キュー 27 両耳間差情報 ヤング率 有限要素法 有声音 要素感覚 横 波 6 99 75 34, 132 3 ライスネル膜 ♢ A B Bark 尺度 BEM BSPL clarity concha C 特性 C値 70, 92 fast 105 FDTD FEC FEM 41 FFT 99 fossa 38, 71, 94 G D definition Deutlichkeit DFT DICC Dirac のデルタ関数 D値 E EDT ERBN 番号 Eyring の残響式 NC の推奨値 NFD F, G H 90 HRIR 60 HRTF 105 90 IACCE ICC 90 ILD 90 ITD 150 93 22 LE 90 LEV LF コ C ♢ ロ ナ ASW A 特性 54, 55 両耳間時間差 72, 93 両耳間相関度 95 —の弁別限 72 両耳間相互相関関数 54, 56 両耳間レベル差 55 両耳入力信号の包絡線 93 両耳マスキング 39 150 両耳ラウドネス 38, 71 126 臨界帯域 41 60 れ 4 8 144 レベル 15 56 連続の式 132 54 124 36 37 109 社 ら 引 197 91 43 MTF 87 NC 曲線 I 106 P, R 99 131 PDR 99 RASTI 151 S 60 88 Sabine の残響式 scapha SD 49 slow 25, 48 STI swept-sine 信号 94 72, 93 54 54 L 96 54 131 91 87 60 54 106 91 147 T 78 90 TL ts W, Z 35 Weber-Fechner の法則 93 Weber の法則 35, 95 70 Weber 比 95 72, 92 Z 特性 106 M, N 91 96 ―― 著 者 略 歴 ―― 2007 年 神戸大学工学部環境計画学科卒業 神戸大学大学院工学研究科博士前期課程修了(環境科学専攻) 松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)勤務 神戸大学大学院工学研究科博士後期課程修了(環境科学専攻) 博士(工学) 千葉工業大学教授 現在に至る 社 1984 年 1986 年 1986 年 1993 年 ロ ナ 音響工学基礎論 Fundamentals of Engineering Acoustics Ⓒ Kazuhiro Iida 2012 ★ 2012 年 3 月 21 日 初版第 1 刷発行 著 者 発 行 者 コ 検印省略 印 刷 所 いい だ かず ひろ 飯 田 一 博 株式会社 コロナ社 代 表 者 牛来真也 萩原印刷株式会社 112⊖0011 東京都文京区千石 4⊖46⊖10 発行所 株式会社 コ ロ ナ 社 CORONA PUBLISHING CO., LTD. Tokyo Japan 振替 00140⊖8⊖14844・電話(03)3941⊖3131(代) (新宅) (製本:愛千製本所) ISBN 978⊖4⊖339⊖00830⊖2 Printed in Japan 本書のコピー,スキャン,デジタル化等の 無断複製・転載は著作権法上での例外を除 き禁じられております。購入者以外の第三 者による本書の電子データ化及び電子書籍 化は,いかなる場合も認めておりません。 落丁・乱丁本はお取替えいたします