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オフィス環境における状況別電力可視化のための UHF帯RFIDを用いた

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オフィス環境における状況別電力可視化のための UHF帯RFIDを用いた
DEIM Forum 2015 C3-3
オフィス環境における状況別電力可視化のための
UHF 帯 RFID を用いた状況推定
西本 直樹†
高橋 慶多†
北島
大††
本藤 祐樹†††
富井 尚志†††
† 横浜国立大学大学院環境情報学府情報メディア環境学専攻 〒 240–8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-7
†† 横浜国立大学理工学部数物・電子情報系学科 〒 240–8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-5
††† 横浜国立大学大学院環境情報研究院 〒 240–8501 横浜市保土ヶ谷区常盤台 79-7
E-mail: †{nishimoto-naoki-tz,takahashi-keita-yr,kitajima-masaru-vj}@ynu.jp, ††{hondo,tommy}@ynu.ac.jp
あらまし
現在社会的に電力削減要求が高まっており,オフィスなどの業務部門においても効果的な電力削減が求め
られている.オフィスにおける業務内容は,デスクワークのような個人作業と,突発的に起こる相談や大人数で行う
会議といった共同作業に分けられる.個人作業時における電化製品の消費電力は適切に仕事に使用されているといえ
る.一方,共同作業時における個人利用の電化製品の消費電力は仕事に使用されない無駄な電力といえる.本研究で
は UHF 帯 RFID を用いて,個人作業と共同作業を区別できるシステムを提案する.リーダを着用したユーザが他の
ユーザのタグを認識することで,リーダを持つユーザの状況を取得する.これと電化製品の電力ログを紐付けること
で,無駄に使われた電力量を算出することが可能となる.また,実際に妥当性の検証を行う.
キーワード
ウェアラブル端末, エネルギーマネジメント, データベース, ユビキタス環境, 電力使用状況推定
1. は じ め に
地球温暖化への懸念や東日本大震災による電力の供給不足を
中かを手動で記録し,状況として SEE-Con に組み合わせたと
ころ,無視できない量の共同作業中の無駄な電力があることが
わかった.
きっかけに,社会的に電力削減要求が高まっている.国内エネル
また,人間の行動認識については,スマートフォンに搭載
ギー消費の中でも業務部門は約 5 分の 1 を占めており,ここ 30
されている GPS や加速度センサを用いた方法が提案されてい
年で約 2.8 倍に増加している.さらに業務部門のエネルギー消費
る [4].しかし,これらの方法は個人の行動推定に特化してお
の約 4 分の 1 を事業所・ビル・学校が占めており,これらの分野
り,人物間の状況推定に適用するのは難しい.そこで屋内の位
における電力削減が必要である [1].このような分野における電
置推定方法の 1 つとして,リーダ-タグ間の通信距離が数 m あ
力削減対策として,節電内容を示した節電マニュアルや,電力管
る UHF 帯 RFID を用いた方法が提案されている [5].
理システム(Building Energy Management System:BEMS)
の導入などが行われている.
本研究では,UHF 帯 RFID を用いて個人作業中か共同作業
中かを判別するシステムを提案する.このシステムはオフィス
しかし,こうした分野において電力使用は生産性に直結して
において 1 人がリーダを持ち他の人がタグを持つことで,リー
おり,闇雲に電力削減を行うことは好ましくない.したがって
ダを持った人が個人作業中なのか共同作業中かを判別すること
「使用していない PC をスリープにする」といった,生産性を
ができるものである.個人作業中か共同作業中かを自動で記録
落とさずに人・モノ・環境の状況に応じた節電を行う必要があ
できるようにすることで,無駄な電力量がどれくらいあるのか
るが,前述した節電マニュアルや BEMS はそのような状況の
を容易に導出することが可能になる.また,このシステムの実
違いを考慮できていないのが現状である.
装を行い,推定精度の検証を行う.
そこで我々は先行研究として,電力使用時の人・モノ・環境
の状態を状況として定義し,タイムラインデータとして蓄積さ
2. 研 究 背 景
れた電化製品の電力ログにタグ付けをすることで,状況をキー
2. 1 省エネに関する研究
とした検索が可能なデータベースを構築した.そして,電力使
現在,電力削減に関する取り組みが盛んに行われている.
用時の状況と組み合わせて消費電力を可視化するシステムを実
装し,SEE-Con と名付けた [2].
横浜市・豊田市・けいはんな・北九州の 4 都市では,スマー
トシティの実現に向けて産官学が一体となって評価実験を行っ
さて,オフィスにおける業務内容は大まかに,デスクワーク
ている [6].業務部門における代表的な電力削減として BEMS
のような個人作業と,突発的に起こる相談や大人数で行う会議
が挙げられる.BEMS による電力データの取得・分析を行うこ
といった共同作業に分けられる [3].個人作業中における個人利
とで適切な電力削減方法を提示するサービスを多くの企業が提
用の電化製品の消費電力は適切に仕事に使用されているといえ
供している [7].また,BEMS との連携を想定した消費電力の
るが,共同作業中における個人利用の電化製品の消費電力は仕
可視化に関する研究として,松山ら [8] は,電力ネットワーク
事に使用されない無駄な電力といえる.個人作業中か共同作業
と情報ネットワークの統合による「エネルギーの情報化」を提
ユビキタス環境
唱し,地域単位での電力網における電力マネジメントの重要性
電力ログの取得環境
を述べている.江崎ら [9] は東京グリーン ICT プロジェクトを
立ち上げ,電力使用状況の可視化に関する実験を行い,30%以
RFID・NFC
上の効果を上げている.
また,エネルギー消費の積算値を削減するという従来の省
たルールに基づいて,消費電力の積算値と瞬間値の両方を削
BEMS
消費電力ログ
状況ログ
エネ以外に,ピーク時の最大値を低減するかという省エネに
も注目が集まっている.加藤ら [10] は利用者が事前に設定し
スマートタップ
ウェアラブル端末
SEE-Con Database
Web Viewer
節電行動割当
減するための電力制御システムについての研究を行っている.
貢献量算出
Action Plan
Tokuda ら [11] はユーザの節電意識を向上させるために電力可
視化システムである「Peak Cutter」の提案・実装を行い,電
状況別消費電力可視化
力量を 10%,ピーク時の電力を 29%削減することに成功して
いる.Alam ら [12] はユーザの好みとエネルギー価格を考慮し
オフィスユーザ
図 1 SEE-Con の全体像
て最適な電化製品の操作時間をユーザに提示するシステムを提
案した.
さらに,運輸部門における省エネ実現の媒体として電気自
に基づいた評価は行っていない.
2. 3 先 行 研 究
動車(EV)が存在する.EV は移動としての役割のほかに
電力の使用状況は,その時の人・モノ・環境ごとに異なり,生
バッテリーとしての役割を持ち,非走行時にバッテリーに充
産性を低下させずに電力削減を行うには,使用状況に応じた適
電した電力を,電力網(Grid:V2G)や家(Home:V2H),ビ
切な電力削減行動をする必要がある.例えば,消し忘れの多い
ル(Building:V2G)に提供する V2X という技術が注目されて
電化製品であれば使用方法を改善し,瞬間消費電力が大きい電
いる.Kempton ら [13] は V2G をアメリカ電力市場に投入し
化製品であればより省電力の電化製品に置き換えを行うといっ
た際にどの程度の効果と利益が得られるのかの検証を行った.
た方法が考えられる.しかし,既存の電力削減対策や従来研究
Jansen ら [14] は既存の電力網に V2G を投入した際に V2G が
は電力量のみを可視化したものであり,また建物単位やフロア
果たす役割について論じた.太田ら [15] は EV を家庭の電力網
単位などのマクロな範囲を対象としているため,ミクロな単位
に接続することで,再生可能エネルギーのような不安定な電源
での電化製品の使用状況を知ることができないという問題点が
の補助として活用できることを検証した.Tushar ら [16] は自
ある.
然エネルギー発電施設も含めた電力網において,EV の充放電
そこで我々は先行研究として,電化製品の消費電力ログと,
スケジューリングによって発電所からの供給電力量を少なくす
人・モノ・環境の状況ログをそれぞれ蓄積し,検索時に統合
るシミュレーションを行った.また,日産自動車が LEAF to
できるシステムを考案した.図 1 にシステムの全体像を示す.
Home [17] として,V2H の製品化を行った.
消費電力ログは「いつ(When),どの電化製品を(What),
2. 2 行動推定に関する研究
どれほどの電力量で使用したか(How)」,状況ログは「いつ
行動認識技術そのものは決して新しい技術ではないが,加速
(When),誰が(Who),どこで(Where),どのようなことを
度センサの小型化・低価格化により,装着型センサを用いた研
していたか(Why)」
(5W1H)を表し,これらを組合せること
究が行われるようになった [18].上坂ら [19] はスマートフォン
により電力使用時の状況を振り返ることができる.さらに,こ
を用いて歩数,歩幅,進行方向を推定する手法を提案し,歩数
れらのログを組み合わせて可視化することで「状況に基づく適
推定の評価実験において 99%を超える精度を確認した.西尾
切な消費電力診断」,
「意思決定のための定量的な改善提案」と
ら [4] は個人特化の行動認識や行動予測を目指しており,スマー
いった,節電に関する有用な情報を提示できるシステムを設計・
トフォンを用いて屋外での行動認識と移動支援手法を提案した.
実装し,SEE-Con(a visualizing System for Electric Energy
しかし,これらスマートフォンを用いた行動認識は歩行や屋
Consumption with Context)と名付けた [2].
外向けのものであり,屋内の一部屋における行動認識には向い
SEE-Con における可視化例の 1 つとして NEEDAS(Normal-
ていない.そのため,屋内の位置推定手法については超音波や
ized Electric Energy Distribution per Appliance and State:
RFID などを用いた手法が検討されている.白石ら [5] はユー
単位時間に正規化された電化製品・状態ごとの電力量分布)を
ザが 1 つの UHF 帯 RFID リーダを持ち,天井に等間隔に貼り
提案した [21].図 2 にその例を示す.このグラフは横軸に瞬間
付けられたタグの読取りパターンからユーザの位置を推定する
電力,縦軸に単位時間あたりの電力量をとっており,面積が電
システムを提案した.また,行動推定を節電に用いた研究とし
化製品のそれぞれの状態における単位時間あたりの電力量を示
て,Milenkovic ら [20] は赤外線センサやコンセント単位の電力
している.単位時間あたりの電力量に正規化することで,期間
計が設置されているビルにおいてオフィスユーザの行動モデル
の違う電力量分布でも比較することが可能になっている.図 2
を作成し,実験により数日間の行動パターンを生成した.彼ら
の場合,青色の在室中の状態では 150W 付近での消費頻度が高
はこの行動パターンを用いて 1 年間同様に過ごした場合の最適
く,橙色の不在の状態では 10W 付近の待機電力や 100W 付近
な照明・空調の電力量をシミュレーションしているが,実環境
合計 0.602 Wh/min
1月あたり26.0 kWh
0.025
「不在」時の
電力量
0.020
m0.015
/
h
W
[
「在室」時の
電力量
量
力
電0.010
費
消
月あたり
月あたり
1
3.0 kWh
1
23.0 kWh
仕事に使われなかった
無駄な電力量
仕事に使用された
有効な電力量
]
in
0.071 Wh/min
0.531 Wh/min
0.005
0.000
ディスプレイのみ
消えている
6 2 9 5 2 9 5 2 8 5 2 8 5 1 8 5 1 8 4 1 8 4 1 7 4 1 7 4 0 7
0 7 3 0 6 3 0 6 3 9 6 3 9 6 2 9 0
1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8
1 2 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8 9 9 1 1
2
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 9
2 9
瞬間電力
使用率が高い
CPU
図4
図 2 あるユーザの作業用 PC の NEEDAS
~
消費電力
電力量
)
[W]
あるユーザの作業用 PC を「在室」と「不在」で分けた NEEDAS
共同作業中の無駄に使用されている作業用PC
2014/11/17 11/22 tommylab
Total: 150.0kWh, V2B
: 6.1kWh
(
4
100
90
3.5
80
3
70
]
h 2.5
W
k
[
60
量力 2
電費
消1.5
50
[%]
40
30
1
20
0.5
0
電力会社
電力使用率
V2B
消費電力量
電力使用率
10
0
0
8
11
14
1
0
2
3
0
8
11
14
1
0
2
6
0
8
11
14
1
0
2
9
0
8
11
14
1
0
2
2
1
8
11
14
1
0
2
5
1
8
11
14
1
0
2
8
1
8
11
14
1
0
2
1
2
8
11
14
1
0
2
0
0
9
11
14
1
0
2
3
0
9
11
14
1
0
2
6
0
9
11
14
1
0
2
9
0
9
11
14
1
0
2
2
1
9
11
14
1
0
2
5
1
9
11
14
1
0
2
8
1
9
11
14
1
0
2
1
2
9
11
14
1
0
2
0
0
0
21
14
1
0
2
3
0
0
21
14
1
0
2
6
0
0
21
14
1
0
2
9
0
0
21
14
1
0
2
2
1
0
21
14
1
0
2
5
1
0
21
14
1
0
2
8
1
0
21
14
1
0
2
1
2
0
21
14
1
0
2
0
0
1
21
14
1
0
2
3
0
1
21
14
1
0
2
6
0
1
21
14
1
0
2
9
0
1
21
14
1
0
2
2
1
1
21
14
1
0
2
5
1
1
21
14
1
0
2
8
1
1
21
14
1
0
2
1
2
1
21
14
1
0
2
0
0
2
21
14
1
0
2
0
図 3 平日 4 日間の V2B 実証実験
図5
の消費頻度が高いことを表している.これを用いることで「不
在時に PC をスリープにすると 100W 付近の橙色の無駄な電力
量がなくなる」といった分析が可能になる.
また,我々は EV を用いた V2B の実証実験も行っている.図
3 は日産 LEAF to Home(EVPS:EV パワーステーション)[17]
を用いて,オフィスのサーバの電力を EV のバッテリーの余剰
電力でまかなっている様子を示している.黄色の部分は EVPS
に表示される供給電力量,黄色と青色の部分の総量がオフィス
全体の電力量を表している.EV は通勤および別の研究 [22] で
使用しており,11 時から 17 時まで帰宅に必要な電力を残して
可能な限り給電を行っている.図を見てわかるように,日に
よって給電量やオフィス内の電力のピークの時間は異なってお
り,V2X における給電スケジューリングが必要性がわかる.
2. 4 問 題 設 定
図 2 では「在室」,
「不在」という 2 状態のみの電力量分布を
表しているが,一般的にオフィスユーザの状態はこの 2 状態だ
けでは表せない.田中ら [3] によれば,オフィスユーザの状態
は電子的なペーパーワークやプログラム開発などの個人作業,
必要に応じて業務に関連した質問や相談などの疎な共同作業,
さらに会議や打ち合わせなど密な共同作業に分けられる.そこ
共同作業中の例
きない無駄な電力量が存在することがわかった.
そこで,あるユーザ 1 人において個人作業中か共同作業中か
を自動で推定できるようにすることで,無駄な電力量がどれく
らいあるのかが容易にわかるシステムを提案する.具体的には,
SEE-Con における状況ログに,あるユーザが個人作業中か共同
作業中かというデータを蓄積する.NEEDAS にその情報を反
映することで,単位時間あたりの共同作業による無駄な電力量
がわかるようになる.無駄な電力量がわかれば,効果が大きい
節電であるかどうかをユーザに伝えることで意識改善につなげ
ることができる.また,無駄な電力であると瞬時に認識するこ
とで自動的に電化製品の電源を OFF にするといったアプロー
チが可能になる.さらに,V2X における給電スケジューリング
では供給される側が電力をどのように使用するのかを知る必要
があるため,細かく取得した状況データはオフィスにおける給
電スケジューリングを行う際のパラメータとして活用できる.
本研究では,個人作業中か共同作業中かを判別するシステム
を設計・実装し,その精度の検証を行う.
3. 個人・共同作業判別方法の設計
で個人作業中か共同作業中かを手動で記録し,これを状況ログ
として SEE-Con に組み合わせた.図 5 のように共同作業中の
ユーザの作業用 PC の電力量を無駄なものとみなして,
「在室」
を「個人作業」「共同作業」の状態に分けた NEEDAS を生成
したところ,図 4 は図 6 のように「在室」状態の中にも無視で
本章では,あるユーザが個人作業中か共同作業中かどうかを
UHF 帯 RFID を用いて自動で判別するシステムの設計につい
て述べる.
×××××○○××○○○×××××
××○○○○○○×××××××××
月あたり
0.025
1
4.5 kWh
0.02
正解データによる
無駄な電力量
]
in
m
/ 0.015
h
W
[
量
力
電0.01
費
消
0.105 Wh/min
図8
×××××○○××○○○×××××
××○○○○○○×××××××××
0.005
0
反応系列
0 7 3 0 6 3 0 6 3 9 6 3 9 6 2 9 6 2 9 5 2 9 5 2 8 5 2 8 5 1 8 5 1 8 4 1 8 4 1 7 4 1 7 4 0 7
1 2 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
瞬間電力
[W]
図 6 図 4 の「在室」を「個人作業」と「共同作業」に分けた NEEDAS
䝴䞊䝄
䝴䞊䝄
䝴䞊䝄
閾値
:推定
:正解
共同作業
図9
䝴䞊䝄
᳨▱⠊ᅖ
䝴䞊䝄
図 7 共同作業の検知例
共同作業 共同作業
共同作業
個人作業
個人作業
排他分割による推定
リング間隔である.
次に,この反応系列から個人作業中であるか,または共同作
業中であるかを判別する方法を図 9 に示す.ある時刻 tj から
ある時刻 tj+1 までの時間を T とし,この時間のタグの検知回
3. 1 概
要
数 Ntj を次のように表す.
UHF 帯 RFID のリーダ-タグ間の通信距離は数 m である.共
同作業中に,あるユーザがリーダを所持し,他のユーザがタグ
を所持した状態で向い合っていればリーダがタグを検出するこ
とができる.図 7 にリーダを所持したユーザ uR のリーダが,
Ntj =
n
∑
c(xi , tj )
i=1
c(xi , tj ) = count(xi , tj → tj+1 )
ユーザ u1 ,u2 の所持したタグ x1 ,x2 を検知している様子を示
count(xi , tj → tj+1 ) は tj から tj+1 におけるタグ xi の検知回
す.しかし,白石ら [5] も言及しているように,UHF 帯 RFID
数を表す.それぞれのタグの読み取り回数の和がある閾値 s 以
は水や金属の影響を受けたり,マルチパス成分によって電波が
上であれば tj から tj+1 において共同作業中であるとみなし,s
弱め合ったり強め合ったりするため,実装環境の状況によって
未満であれば個人作業中であるとみなす.図 9 では T がτの 4
読取り範囲が変化する問題がある.本研究ではこのような本来
倍となっており,t1 から t5 までの推定を行っている.この推
読み取れるタグが読み取れなかったり,距離が遠くて読み取れ
定手法を「排他分割による推定手法」と名付けた.しかし,こ
ないタグを読み取ったりすることをふまえて状況推定アルゴリ
の推定方法では,図 9 にも示しているように,実際の共同作業
ズムの設計を行った.
時間とズレが生じてしまう.
3. 2 個人・共同作業の判別アルゴリズム
まず前提として,オフィスにおける全てのユーザに UHF 帯
そこで,時間間隔 T を固定したままτずつずらして反応回
数を確認していくスライディングウィンドウの手法を用いて実
RFID のタグが貼られた名札を配布する.タグ X = {x1 , x2 , …
際の共同作業時間とのズレをできるだけ減らす方法を提案する
, xn } とユーザ U = {u1 , u2 , …, un } は 1 対 1 対応でデータベー
(図 10).読み取り回数の確認範囲(ウィンドウ幅)を T とし
スに登録されており,ユーザはオフィスにいる間は必ずこの名
て,時刻 tj の前後に T /2 ずつタグの読み取り回数 Ntj を走査
札を身につける.また,個人作業中であるか共同作業中かであ
していく.閾値 s は排他分割による推定と同様に行う.Ntj = s
るかを推定したいユーザ uR は,名札ではなく UHF 帯 RFID
から Ntj+1 > s に変化した時点を共同作業の開始時点とし,次
リーダを体の前面に身につける.UHF 帯 RFID リーダには指
に読み取り回数が s 以下となった時点を終了時点とする.図 10
向性があり,向い合って相談するということを想定しているた
では t2 を共同作業開始時間,t13 を終了時間としてその間を共
め,リーダを着けたユーザ uR の前方に対する読取り範囲を大
同作業,それ以外を個人作業と推定している.
きくする.図 8 は,この状態で仕事をしたときのリーダの反応
系列の一例である.ユーザ u1 と u2 に対応したタグ x1 と x2
4. 個人・共同作業判別方法の実装
の反応系列を示しており,
「○」がタグを検知したことを表し,
本章では 3 章の設計を基に,個人・共同作業判別方法の実装
「×」はタグを検知しなかったことを表す.τはリーダのポー
について述べる.
×××××○○××○○○×××××
××○○○○○○×××××××××
h,&ᖏZ&/䝸䞊䝎
h,&ᖏZ&/䝍䜾௜䛾ྡᮐ
:推定
:正解
共同作業
共同作業
図 10
個人作業
個人作業
スライディングウィンドウによる推定
4. 1 実 装 機 器
まず,オフィス内に各ユーザがいるかどうかを記録するため
に,FeliCa カードを用いた入退室ログ記録システムを作成し
た.これは各ユーザ個人の Suica や Pasmo などの IC カードを
登録することができ,オフィスに入室するときにリーダにかざ
すだけで入退室管理ができる.ある時点で退室状態のユーザに
対応している UHF 帯 RFID タグは,UHF 帯 RFID リーダが
反応しても,作業推定時には反応がなかったものとして扱う.
図 11 UHF 帯 RFID リーダとタグ付の名札
Date
2014-11-13 16:23:04.000
2014-11-13 16:24:29.000
2014-11-13 16:24:30.000
2014-11-13 16:24:33.000
2014-11-13 16:24:37.000
2014-11-13 16:29:19.000
2014-11-13 16:29:23.000
2014-11-13 16:30:15.000
2014-11-13 16:30:20.000
2014-11-13 16:31:00.000
2014-11-13 16:33:22.000
2014-11-13 16:33:26.000
2014-11-13 16:33:41.000
2014-11-13 16:33:45.000
2014-11-13 16:34:30.000
入退室管理システム及び提案システムの実装に用いたリーダ・
図 12 UHF 帯 RFID リーダの反応履歴
タグは以下の通りである.
•
FeliCa カードリーダ:SONY 社製 PaSoRi RC-S380
•
UHF 帯 RFID リーダ:Welcat 社製 XIT-261-G(25 段
階の出力調整可能)
•
UHF 帯 RFID タグ:UPM 社製 SC3001601-UHF-R100
次に,各パラメータについて説明する.UHF 帯 RFID リー
ダの電波発信については,金子ら [23] の UHF 帯 RFID による
物品位置情報推定において,電波に強弱をつけて読取り範囲に
幅をもたせることで細かい位置推定を可能にしたことを参考に,
強中弱の 3 段階を 1 秒おきに発信するように設定した.これに
より状況推定の精度向上を期待しているが,本研究ではその効
果は未検証である.発信間隔については最短間隔を取っており,
電池の容量や必要な反応回数の最適化を行う必要がある.本研
究では推定時間間隔と閾値を変化させ,推定精度がどの程度変
わるかを検証する.
UHF 帯 RFID リーダやタグの付いた名札は図 11 のように
身につけており,オフィスにいる間,ユーザはこれを身につけ
たまま仕事を行った.また反応履歴をデータベースに挿入する
タイミングは,リーダの連続稼働時間を重視したため,オフィ
スから帰宅するためリーダを外す際に行った.
4. 2 実 験 環 境
本システムの実装を行った環境は広さ 164m2 の部屋で,情
報工学に関する研究活動を行うオフィス空間である.以下に実
験環境の概要を示す.
•
利用者数:13 名
•
電化製品数:44 個
•
各利用者が個人デスク(研究用の PC や付属機器)を
所有
UID
Power
000040000000000000000000
24
000060000000000000000000
24
000060000000000000000000
20
000060000000000000000000
24
000060000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000060000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
000040000000000000000000
24
•
週 2 回全体ミーティングが行われ,その際には利用者全
員が自分のデスクを離れる
4. 3 UHF 帯 RFID から得られるデータ
システムを実装した UHF 帯 RFID の反応履歴の一部を図 12
に示す.電波の発信時刻(Date)と UHF 帯 RFID タグの ID
(UID),UHF 帯 RFID リーダの電波出力(Power)を 1 タプ
ルとしたデータとなっている.Date 列の時刻の間隔が異なっ
ているが,これはプログラムによる処理に時間を費やすためで
ある.また,UID は事前にデータベースに登録されており,そ
れぞれユーザ 1 人に対応している.Power は前述したように,
16・20・24dBm の 3 段階の UHF 帯 RFID の電波発信出力を
表している.事前に行った読取り距離測定実験では,リーダの
正面方向に 16dBm で 60cm, 20dBm で 130m, 24dBm で 2 m
以上の範囲にあるタグを読み取ることができるという結果が得
られた.
4. 4 反応履歴からの状況推定
図 12 の反応履歴から,3 章における図 8 の反応系列に変換
したものを図 13 に示す.これを基に,排他分割・スライディン
グウィンドウそれぞれの推定を行った結果は図 14 および図 15
のようになる.図 14 の排他分割による推定手法では,推定間
隔 T = 1[min],閾値 s = 1 の場合,1 分ごとにタグが 1 枚でも
読み取られていれば共同作業,1 枚も読み取っていない場合は
個人作業と推定している.また,図 15 のスライディングウィ
ンドウによる推定手法では,ウィンドウ幅 T = 1[min],閾値
s = 1 の場合,前後 30 秒以内にタグが読み取られていない 16
時 23 分 35 秒から 59 秒までは個人作業,24 分 0 秒から共同作
Date
2014-11-13 16:23:04.000
2014-11-13 16:24:29.000
2014-11-13 16:24:30.000
2014-11-13 16:24:33.000
2014-11-13 16:24:37.000
2014-11-13 16:29:19.000
2014-11-13 16:29:23.000
2014-11-13 16:30:15.000
2014-11-13 16:30:20.000
2014-11-13 16:31:00.000
2014-11-13 16:33:22.000
2014-11-13 16:33:26.000
2014-11-13 16:33:41.000
2014-11-13 16:33:45.000
2014-11-13 16:34:30.000
図 13
UID
MemberID
000040000000000000000000
9
000060000000000000000000
11
000060000000000000000000
11
000060000000000000000000
11
000060000000000000000000
11
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
000060000000000000000000
11
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
000040000000000000000000
9
反応履歴とユーザの対応付け
Date
2014-11-13 16:23
2014-11-13 16:24
2014-11-13 16:25
2014-11-13 16:26
2014-11-13 16:27
2014-11-13 16:28
2014-11-13 16:29
2014-11-13 16:30
2014-11-13 16:31
2014-11-13 16:32
2014-11-13 16:33
2014-11-13 16:34
閾値
図 14
排他分割による推定例
開始時点
2014-11-13 16:23:35
2014-11-13 16:24:00
2014-11-13 16:25:08
2014-11-13 16:28:50
2014-11-13 16:31:31
2014-11-13 16:32:53
排他分割による推定
共同作業
共同作業
個人作業
個人作業
個人作業
個人作業
共同作業
共同作業
共同作業
個人作業
共同作業
共同作業
閾値
スライディングウィンドウによる推定
個人作業
共同作業
個人作業
共同作業
個人作業
共同作業
図 15 スライディングウィンドウによる推定例
業と推定している.両者の違いとしては 1 分毎に正解データと
比較していく場合,16 時 25 分が排他分割では個人作業,スラ
イディングウィンドウでは共同作業と推定される.
4. 5 正解データの取得
提案手法の精度検証を行うため,リーダを着けたユーザが個
人作業を行っているか,誰かと共同作業を行っているかを手動
で記録した.内容は主に開始時間や終了時間,誰と共同作業を
行ったか,席から離れて何をやっていたかなどを,SEE-Con
データベースの状況ログの粒度に合わせて 1 分粒度で記録した.
5. 評価と考察
本章では実装したシステムを用いて生活し,排他分割・スラ
イディングウィンドウによる推定から共同作業の推定精度の
検証および考察を行う.また,それぞれ最も良い推定精度で
あった T および s の場合の NEEDAS を導出し,正解データの
NEEDAS との比較を行う.
適合率・再現率
1
0.9
0.8
0.7
0.6
率合0.5
適0.4
右側から
0.3
0.2
0.1
0
0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
再現率
0.6
0.7
0.8
0.9
1
スライディングウィンドウ T=1[min] スライディングウィンドウ T=2[min]
スライディングウィンドウ T=0.5[min] 排他分割 T=1[min]
図 16
推定手法の適合率・再現率
5. 1 推定精度の検証
2014 年 10 月 21 日から同年 12 月 3 日までの平日 30 日間の
反応履歴から,排他分割およびスライディングウィンドウの幅
T ,閾値 s を変更し,個人作業か共同作業かを推定したデータ
を SEE-Con データベースに蓄積した.正解データの粒度に合
わせ,1 分毎に個人作業中か共同作業中かの推定精度を適合率
と再現率を用いて評価した.それぞれの計算式を以下に示す.
適合率 =
共同作業と正しく推定できた時間 [min]
共同作業と推定した時間 [min]
再現率 =
共同作業と正しく推定できた時間 [min]
正解データの共同作業時間 [min]
時間間隔 T と閾値 s を変化させた場合の適合率・再現率を
図 16 に示す.なお,実験期間中の正解データの共同作業時間
は 4807[min] であった.
適合率
排他分割においては推定間隔 T を 1[min] 以上にした場合
でも適合率に大きな変化は見られなかったが,スライディング
ウィンドウにおいてはウィンドウ幅 T を大きくすると適合率は
下がった.適合率の誤差は過検出が原因であり,ウィンドウ幅
を大きくすると共同作業と推定する割合が増えるが,誤って推
定することの方が大きいということを表している.
また過検出の要因は閾値 s が少ない場合は,リーダを持った
ユーザがタグを持ったユーザとすれ違っただけでもその時間を
共同作業とみなしてしまうためであり,残りの 1 割の誤差は
リーダを持ったユーザの個人作業時に他のユーザが近くで会話
をしていたことが原因であった.これを取り除くには別のセン
サを使って,例えば各ユーザがどこにいるのかを推定したり,
マイクを使って会話をしているかを推定したりする必要がある.
0.025
月あたり
1
3.2 kWh
0.02
排他分割推定による
無駄な電力量
]
in
m0.015
/
h
W
[
量
力
電0.01
費
消
0.073 Wh/min
0.005
0
0.025
月あたり
1
4.5 kWh
0.02
排他分割推定による
無駄な電力量
]
in
m
/ 0.015
h
W
k
[
量
力
電 0.01
費
消
0.104 Wh/min
0.005
0
0 7 3 0 6 3 0 6 3 9 6 3 9 6 2 9 6 2 9 5 2 9 5 2 8 5 2 8 5 1 8 5 1 8 4 1 8 4 1 7 4 1 7 4 0 7
1 2 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
瞬間電力
[W]
個人作業 共同作業 不在
図 17
瞬間電力
推定間隔
閾値
排他分割による推定手法から導出した NEEDAS
0 7 3 0 6 3 0 6 3 9 6 3 9 6 2 9 6 2 9 5 2 9 5 2 8 5 2 8 5 1 8 5 1 8 4 1 8 4 1 7 4 1 7 4 0 7
1 2 2 3 4 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9 0 1 1 2 3 3 4 5 5 6 7 7 8 9 9
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2
[W]
個人作業 共同作業 不在
図 18
ウィンドウ幅
閾値
ス ラ イ ディン グ ウィン ド ウ に よ る 推 定 手 法 か ら 導 出 し た
NEEDAS
再現率
再現率に関しては排他分割・スライディングウィンドウとも
少なからず効果が上がる可視化ができるようになったことを示
に閾値 s = 1 の場合でも 0.6 程度であり,実際に起きた共同作
した.これにより相談・ミーティングなどの前に,こまめに作業
業時間の半分程度しか推定できなかった.また,ウィンドウ幅
用 PC を消した場合どの程度の電力量が減るのかを NEEDAS
を T = 1 から T = 2 に大きくすると再現率は 0.1 ほど上昇し
を用いてで判断することができるようになった.
たが,s = 1 でも 0.7 未満であった.どちらの手法であっても
今後課題としては以下のことが挙げられる.
共同作業時間の取りこぼしが多いという結果であった.
リーダをつけるユーザや実装環境を変更しての実験
この原因としては,実装環境においてユーザがタグの付い
今回の実験では,ある 1 人のユーザがリーダを使用し,他の
た名札を付け忘れていたこと,UHF 帯 RFID の電源をつけ忘
ユーザが名札をつけて生活したデータを用いて検証を行った.
れたり電池切れがあったことなど,システム自体が動いていな
ユーザの仕事内容により個人作業と共同作業の割合は人それぞ
かった時間が見受けられたことが挙げられる.電池切れに関し
れ異なり,また仕事環境によっては個人作業中でも他のユーザ
てはリーダの読取り間隔の調整をすることで改善が可能である.
のタグが常にリーダが読み取ってしまう可能性がある.そこで
また UHF 帯 RFID リーダの特性として,指向性が強く横方向
他のユーザがリーダを使用した場合や SEE-Con の実装環境を
の読取り範囲が狭いことも取りこぼしの原因であった.隣同士
外部のオフィス環境にした場合でも推定精度が同じようになる
に座っていてもタグを検知できない場合もあるため,超音波セ
かどうかを検証する必要がある.
ンサなどの他のセンサも組み合わせる必要がある.
5. 2 削減可能な電力量の推定
他のセンサを用いた状況獲得
2 章において,SEE-Con の消費電力ログと状況ログは 5W1H
図 16 において,排他分割・スライディングウィンドウそれ
で表され,これらを組み合わせることで振り返りを行うことが
ぞれ原点から最長の推定結果であった点について,NEEDAS
できると説明した.本研究は 5W1H の「誰が(Who)」と「ど
を導出した.排他分割による推定の NEEDAS を図 17 に,ス
のようなことをしていたのか(Why)」を主とした状況獲得を
ライディングウィンドウによる推定の NEEDAS を図 18 に示
行っているが,
「どこで(Where)」については他のセンサを使用
す.図 6 の正解データと比べると,正解データでは 1 月あたり
して取得する必要がある.屋内における位置推定に関しては多
4.5kWh の無駄な電力量があったが,図 17 の排他分割による推
くの先行研究があるが,現在 HF 帯 RFID や BLE(Bluetooth
定では 1ヶ月あたり 3.2kWh,図 18 のスライディングウィンド
Low Energy)を用いた推定を行い,有用な可視化手法を検証
ウによる推定では 4.5kWh の電力量が導出された.排他分割に
中である.
よる NEEDAS は正解データよりも低い電力量となったが,ど
V2B の給電スケジューリングへの適応
ちらのグラフでも形は正解データとほぼ同じであることがわか
SEE-Con では EV から電力を供給する V2B の実証実験を
る.特に 90∼100W,140W 付近の電力が,図 6 の正解データ
行っている.しかし,現在はある時刻のみ,可能な限り給電す
の NEEDAS と同様に無駄に使用されているということはわか
ることしかできていない.供給されるオフィス側での状況分類
るため,有用な分析ができる結果となった.
が増えるほど,いつ給電すればよいのかをスケジューリングす
6. まとめと今後の課題
本研究では,まずオフィスでの仕事内容を個人作業と共同作
業に分けることで,電化製品を使用していない共同作業時間
に電力の無駄使いが存在することを確認した.そこで UHF 帯
RFID リーダを用いて,個人作業か共同作業かを推定するシス
テムを提案し,これを電力可視化システムに適用することで,
ることができる.逆に,電力会社の電力使用率が高いときには
個人作業を止めて共同作業を行い,V2B により電力を補うと
いったオフィス内での行動改善を提示することも可能である.
これらの実証実験を行っていく.
謝
辞
本研究の一部は横浜国立大学大学院環境情報研究院共同研究
プロジェクトによる.また,一部については JSPS 科研費 (課
題番号 26330358) の支援も受けた.
文
献
[1] 経済産業省資源エネルギー庁,
“ 平成 25 年度エネルギーに関する
年次報告 (エネルギー白書) ”,http://www.enecho.meti.go.jp/
about/whitepaper/2014pdf/whitepaper2014pdf 2 1.pdf
(2015/01/05 アクセス)
[2] 藤原 国久, 高橋 慶多, 細澤 直人, 高橋 佳久, 西本 直樹, 富井
尚志, 本藤 祐樹, “電力使用時の多様な状況組み合わせが可能な
DB の構築と情報提示による評価”, DEIM Forum 2014 E1-1
[3] 田中 貴紘, 藤田 欣也, “オフィスワーカーの状況推定―割り
込み拒否度を中心に―”, 電子情報通信学会誌, Vol.95, No.5,
pp.457-460, 2012.
[4] 西尾 信彦, “実世界に広がる装着型センサを用いた行動センシン
グとその応用:3. 人間行動センシングから認識自動化を目指し
て”, 情報処理, Vol.54, pp.574–577, 2013.
[5] 白石 剛大, 小室 信喜, 上田 裕巳, 河西 宏之, 坪井 利憲, “UHF
帯パッシブ型 RFID を用いる屋内位置推定アルゴリズムの提案”,
電子情報通信学会論文誌 B, Vol.J95-B, No.10, pp.1302-1312,
2012.
[6] 新エネルギー導入促進協議会, “Japan Smart City Portal”,
http://jscp.nepc.or.jp/(2015/01/05 アクセス)
[7] 東 京 都 環 境 局, “オ フィス ビ ル の 省 エ ネ・節 電 を 考 え る
∼ 節 電 の 先 の ス マ ー ト エ ネ ル ギ ー シ ティへ ∼”, http://
www.kankyo.metro.tokyo.jp/climate/large scale/cap and trade/
meeting/cat7846(2015/01/05 アクセス)
[8] 松山 隆司, “エネルギーの情報化とは―背景,目的,基本アイディ
ア,実現手法―”, 情報処理, Vol.51, No.8, pp.926–933, 2010.
[9] 江崎 浩, 落合 秀也, “東大グリーン ICT プロジェクト”, 電子情
報通信学会論文誌, Vol.J94-B, No.10, pp.1225–1231, 2011.
[10] 加藤 丈和, 湯浅 健史, 松山 隆司, “オンデマンド型電力制御シス
テム”, 情報処理学会論文誌, Vol.54, No.3, pp.1185–1198, 2013
[11] Keisuke Tokuda, Shinsuke Matsumoto and Masahide Nakamura, “Implementing a Mobile Application for Spontaneous
Peak Shaving of Home Electricity”, In Sixth International
Workshop on Selected Topics in Mobile and Wireless Computing (STWiMob2013), pp.284-289, 2013.
[12] Muhammad Raisul Alam, Marc St-Hilaire, and Thomas
Kunz, “Cost Optimization via Rescheduling in Smart Grids
− A Linear Programming Approach”, Smart Energy Grid
Engineering (SEGE), 2013 IEEE International Conference
on pp.1-6, 2013.
[13] W. Kempton, J.Tomic,“ Vehicle-to-grid power fundamentals: Calculating capacity and net revenue ”, Jounal of
Power Sources, Vol.144, Issue.1, pp.268–279, 2005.
[14] B. Jansen, C. Binding, O. Sundstrom, D. Gantenbein,
“Architecture and Communication of an Electric Vehicle
Virtual Power Plant”, 1st IEEE International Conference
on Smart Grid Communication(SmartGridComm2010),
pp.149–154, 2010
[15] 太田 豊, 谷口 治人, 中島 達人, K. M. Liyanage, 馬場 旬平, 横
山 明彦, “ユビキタスパワーネットワークにおけるスマートスト
レージの提案 -電気自動車の自律分散型 Vehicle-to-Grid-”, 電
気学会論文誌 B(電力・エネルギー部門誌), Vol.130, No.11,
pp.989–994, 2010.
[16] M. H. K. Tushar, C. Assi, M. Maier, M. F. Uddin, “Smart
Microgrids:Optimal Joint Scheduling for Electric Vehicles
and Home Appliances”, IEEE Trans. Smart Grid, Vol.5,
No.1, pp.239-250, 2014
[17] 日産 LEAF to Home, http://ev.nissan.co.jp/LEAFTOHOME/
(2015/01/05 アクセス)
[18] 河口 信夫, “未来社会をプロデュースする ICT : 5. 大規模デー
タベースと装着型センサで人間行動を理解する-次世代の快適・
健康システムの実現を目指して-”, 情報処理, Vol.52, No.1,
pp.32–36, 2011.
[19] 上坂 大輔, 村松 茂樹, “実世界に広がる装着型センサを用いた
行動センシングとその応用:2. スマートフォンを用いた歩行者
デッドレコニング -センサで人の位置が分かる仕組み-”, 情報処
理, Vol.54, pp.570-573, 2013
[20] Marija Milenkovic, Oliver Amft, “An opportunistic activitysensing approach to save energy in office buildings”, Proceedings of the fourth international conference on Future
energy systems(ACM e-Energy ’13), pp.247-258, 2013.
[21] 高橋 慶多, 細澤 直人, 西本 直樹, 富井 尚志, “電力使用時の多様
な状況組み合わせが可能な DB を用いた状況別電力量の置き換
え効果の提示”, WebDB Forum 2014, B-6, 2014.
[22] Takashi Tomii, Shintaro Hagimoto, Naoki Fueda, Toru
Deguchi, Makoto Idenawa, Takuya Hayashi, “ Long-Term
Experiment of the ECOLOG Database Capability of Estimating V2X Effect Replacing with EVs ”, 20th ITS World
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[23] 金子 祥貴, 藤原 国久, 富井 尚志, “UHF 帯 RFID を用いたセ
ンサログに基づく物品位置情報推定手法”, DEIM Forum 2012
C6-3
Fly UP