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Title Author(s) Citation Issue Date URL Visualization techniques for large-scale and complex volume date( Abstract_要旨 ) Kun, Zhao Kyoto University (京都大学) 2015-05-25 http://dx.doi.org/10.14989/doctor.k19186 Right Type Textversion Thesis or Dissertation ETD Kyoto University 京都大学 論文題目 博士( 工 学) 氏名 趙 堃 Visualization techniques for large-scale and complex volume data(大規模・複雑 ボリュームデータのための可視化技術) (論文内容の要旨) ビッグデータ時代において、人間のまわりにはデータが氾濫している。可視化は、膨 大 な 量 の デ ー タ の 洪 水 か ら 抜 け だ す た め の 一 条 の 明 か り と い っ た 役 割 を 果 た す 。さ ら に 、 適切に設計された可視化は、データを情報に変換する上での重要性が認識されている。 最近では、可視化の対象となるデータが大規模となり、効率的な可視化が困難になっている。例 え ば 、複雑高度化した問題の解決に必要とされるシミュレーション技術は、高精度・高分解能化されて いく傾向があり、結果としてそのシミュレーション結果は大規模・複雑化する。また、CT/MRI 装置、 センサなど高性能計測器からも大規模データが生成される。 大規模データ自体はスカラーだけでなく、速度を表すベクトルや応力を表すテンソルとなることも ある。また、データは単一変数だけでなく、多変数(例えば、温度、速度、塩分濃度など)を含む場 合がある。さらに、時間とともに変化していく、いわゆる時系列データの場合もある。し か し 、 こ の よ う な 大規模・複雑データ向けの可視化には、十分な技術が開 発 さ れ て い な か っ た 。 本論文は、効率的な可視化を行うため、可視化技術は、データ圧縮、データ解析と画像化 という3つのプロセスから構成されると考え、それぞれのプロセスにおいて、大規模・複雑 データ向けに効率の良い処理を実現する技術を提案する。そして、提案手法を燃焼、海洋、 流体、血流の数値シミュレーションから得られた大規模ボリュームデータに適用し、有用性 を示している。本論文は、以下の8章から構成されている。 第1章では、研究背景について述べ、科学研究分野における 大規模・複雑データ向け可視化 技術の重要性について説明している。そして、最後に、本論文の構成について述べている。 第2章では、提案手法を理解するために必要な、可視化対象となるボリュームデータとそ の可視化技術について述べている。可視化技術としては、提案手法の要素技術であるボリュ ームレンダリングについて説明している。 第 3 章 で は 、提案手法の位置づけを明確にするため、ボリュームデータ向け可視化技術に ついて、データ圧縮、データ解析と画像化の観点で、従来手法について説明している。 第 4 章 で は 、 データ圧縮プロセスにあたって、本論文が提案する時系列大規模ボリュームデータ 向けの圧縮法について述べている。大規模データを処理するための主な課題の一つはデータサイズの 大きさであるため、データ圧縮は、可視化効率化のために有効な手段となる。データ圧縮法では、高 圧縮率を提供することに加えて、低コストでの解凍処理を提供することが求められている。この課題 を解決するために、本研究では、時空間におけるデータ類似性を用いて、大規模時系列ボリュームデ ータ向け圧縮法を開発した。大 規 模 時 系 列 燃 焼 デ ー タ を 異 な る 圧 縮 パ ラ メ ー タ で 、 圧 縮 と 解 凍処理を実施し、圧縮結果の誤差並びに画像化結果に関する評価実験を行うことにより、 本研究で提案した圧縮手法の有効性を実証することができた。 第 5 章 で は 、デ ー タ 解 析 プ ロ セ ス に あ た っ て 、テ ン ソ ル デ ー タ 縮 退 面 の 可 視 化 に つ い て 述 べ て い る 。拡 散 テ ン ソ ル 場 の 超 流 線 は 、神 経 や 筋 肉 線 維 の よ う な 生 体 組 織 の 連 続 的 な 挙 動 を 可 視 化 す る た め の 重 要 な 技 術 で あ る 。し か し 、超 流 線 を 画 像 化 す る 際 、超 流 線 同 士 の 交 差 領 域 を 明 確 化 す る た め に 縮 退 点 の 抽 出 は 、重 要 な 問 題 で あ る と 認 識 さ れ て き た 。拡 散 テ ン ソ ル に お け る 縮 退 領 域 の 可 視 化 の 関 連 研 究 で は 、線 状 二 重 縮 退 点 の 存 在 を 考 慮 し て い 1 京都大学 博士( 工 学) 氏名 趙 堃 な か っ た 。こ れ を 踏 ま え 、本 研 究 で は 、縮 退 領 域 の 候 補 の う ち 線 状 二 重 縮 退 点 を 特 定 す る ことにより、三次元拡散テンソル場の縮退領域を抽出する手法を開発した。 第 6 章 で は 、 もうひとつのデータ解析プロセスとして、海洋シミュレーションデータを用いた三 次元の水塊分布の可視化技術について述べている。水塊の分布を可視化するために、複数の変数を含 む高解像度海洋シミュレーションデータを使用し、複数の変数から水塊の分布を抽出できる多変数可 視化システムを開発した。しかし、水 塊 の 定 義 は 、専 門 家 の 間 に お い て 、統 一 化 さ れ て お ら ず 、 水 塊 分 布 の 可 視 化 に お い て 問 題 と な っ て い た 。こ の 問 題 を 解 決 す る た め に 、そ れ ぞ れ の 定 義 を 主 張 す る 複 数 の 海 洋 専 門 家 が 直 接 操 作 を 行 え る 可 視 化 シ ス テ ム を 開 発 し た 。本 手 法 で は 、ア ン サ ン ブ ル 平 均 プ ロ セ ス を 実 装 す る こ と に よ り 、複 数 の 定 義 に 基 づ き 計 算 さ れ た レ ン ダ リ ン グ 結 果 の 平 均 画 像 を 求 め た 。さ ら に 信 頼 性 を 高 め る た め に 、シ ス テ ム に 投 票 方 式 を 実 装 し 、多 数 決 を ア ン サ ン ブ ル 平 均 計 算 に 適 用 し た 。提 案 シ ス テ ム の 応 用 例 と し て 、親 潮と津軽暖流の年次変動を動的に可視化した。また、水塊の分布に大きな影響を有する、 水 塊 混 合 現 象 の 可 視 化 に 成 功 し 、水 塊 分 布 の 効 率 の よ い 分 析 が 可 能 に な っ た と 海 洋 専 門 家 から高く評価された。 第 7 章 で は 、画 像 化 プ ロ セ ス に あ た っ て 、大 規 模 血 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン デ ー タ を 可 視 化 す る た め 、 大 規 模 ボ リ ュ ー ム デ ー タ 向 け 粒 子 ベ ー ス レ ン ダ リ ン グ ( PBR: particle-based rendering) 法 を 開 発 し た 。 血 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に お い て 、 研 究 者 が 赤 血 球 、 血 小 板 お よ び 血 管 壁 の 詳 細 な 位 置 情 報 を 確 認 す る た め に 、効 率 的 な 可 視 化 を 行 う 必 要 が あ る 。し か し 、こ の よ う な 大 規 模 デ ー タ で は 、通 常 の コ ン ピ ュ ー タ 上 で の 対 話 的 可 視 化 を 実 現 す る こ と は 困 難 で あ る 。さらに、赤血球ボリューム、血小板ボリュームおよび血管壁ポリゴンなどの異な るオブジェクトを同時に画像化する必要があり、融合可視化技術の必要性が浮き彫りになった。こ の 問 題 を 解 決 す る た め に 、オ ブ ジ ェ ク ト 空 間 PBR( O-PBR: object-space PBR)、画 像 空 間 PBR ( I-PBR: image-space PBR) と い う 二 種 類 の PBR 法 を 組 み 合 わ せ た 。 O-PBR 法 は 高 い レ ン ダ リ ン グ ス ピ ー ド で 大 規 模 ボ リ ュ ー ム デ ー タ を 取 り 扱 う こ と が で き る が 、拡 大 す る と き の 画 質 が 十 分 で は な い と い う 欠 点 が あ る 。 一 方 、 I-PBR 法 は 、 高 品 質 の レ ン ダ リ ン グ を 提 供 で き る が 、レ ン ダ リ ン グ 可 能 な デ ー タ サ イ ズ の 制 限 が あ る 。そ こ で 、血 流 デ ー タ を 効 率 よ く 可 視 化 す る た め に 、提 案 シ ス テ ム で は 、視 錐 台 内 の デ ー タ サ イ ズ と 計 算 機 資 源 に 基 づ い て 、O-PBR と I-PBR と を 適 応 的 に 切 り 替 え る 。そ の 結 果 、対話的な画像化速度と良好な画質を 維持しながら、大規模血流データの効率的融合可視化を実現することができた。 第 8 章 で は 、結 論 と し て 、各 章 で 得 ら れ た 成 果 を 要 約 し 、残 さ れ た 今 後 の 課 題 に つ い て 述べている。 2 氏 名 趙 堃 (論文審査の結果の要旨) 本論文は、ボリュームデータの大規模・複雑化に対する可視化技術に関する問題を解 決するための新しい処理アルゴリズムに関する研究の成果を取りまとめたものであり、 得られた主な成果は次のとおりである。 1. 従 来 手 法 で は 、 大 規 模 時 系 列 ボ リ ュ ー ム デ ー タ 可 視 化 向 け に 、 効 率 と 品 質 の バ ラ ンスのとれた圧縮手法が提案されていなかった。この課題を解決するために、本 研究では、時空間におけるデータ類似性を用いたボリュームデータ向け圧縮法を 開発した。 2. 従 来 手 法 で は 、 テ ン ソ ル デ ー タ に お け る 縮 退 点 を 探 索 す る 場 合 、 そ の 特 徴 に 関 す る情報を提供してこなかったため、縮退点で超流線が交差するかどうかの判断を 困難にしていた。この問題を解決するために、縮退点が線状または面状かを特定 するための指標を提案した。 3. 従 来 手 法 で は 、 海 洋 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン デ ー タ か ら 水 塊 を 抽 出 す る 際 、 水 塊 の 定 義 が 研 究 者 の 主 観 に 委 ね ら れ て お り 、水 塊 分 布 の 可 視 化 に お い て 問 題 と な っ て い た 。 この問題を解決するために、それぞれの定義を主張する研究者が直接操作可能な 水塊可視化システムを開発した。本手法では、アンサンブル平均プロセスを実装 することにより、複数の定義に基づき計算されたレンダリング結果の平均画像を 求めた。 4. 従 来 手 法 で は 、 大 規 模 血 流 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン デ ー タ を 可 視 化 す る 際 に 、 複 数 の オ ブジェクト描画に対する詳細度制御を実現する方法が提案されておらず、一枚の 可視化画像を計算するうえで、数分程度の時間が必要とされていた。この問題を 解決するために、本研究では、粒子レンダリング法に基づいた可視化技術を開発 し、対話的描画速度を実現することができた。 以上の研究成果は、大規模・複雑ボリュームデータを可視化する上で生じる問題に対 して、新しい処理アルゴリズムを用いた問題解決についての新しい知見を与えたもので あって、学術的・産業的な貢献は大きいと評価され、本論文は、学術上、実際上寄与す るところが少なくない。よって、本論文は博士(工学)の学位論文として価値あるもの と 認 め る 。 ま た 、 平 成 27 年 4 月 21 日 、 論 文 内 容 と そ れ に 関 連 し た 事 項 に つ い て 試 問 を 行 っ た 結 果 、 申請者が博士後期課程学位取得基準を満たしていることを確認し、合 格 と 認 め た 。 3