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Allegory of Prudence

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Allegory of Prudence
ルネッサンスの象徴を読み解く
第4回
ブロンズィーノ「ウェヌス女神の勝利」(続)と
ティツィアーノ「賢明」
鈴木繁夫
ブロンズィーノ
「ウェヌス女神の勝利」
(1546年)
パノフスキー説は正しいか?
「髪をかきむしる人間の姿」
リーパの<嫉妬>は、この絵の<嫉妬>とは違
いすぎる。
パノフスキー説は正しいか?
• 「少女の姿」:
– リーパの三つの概念を合体させたとは考えにくい。
• 少女と人間は何を表しているのか。
• また仮面の人物は何を表しているのか。
ジョルジョ・ヴァザーリの説明
「ブロンズィーノは独特の美しさをもった絵を描き、その絵はフラ
ンスにいたフランス王に送られた。絵には裸のウェヌス女神
と女神にキスをするクピドが描かれていた。<満足>は<楽
しさ>とともに一方の側に、他方の側には<欺瞞>、<嫉妬
>、そしてその他の、愛に関わる感情が描かれていた。」
(『芸術家列伝』)
ヴァザーリの説明はこの絵の説明ではない。
フランス王にこの絵が送られた形跡は不明。
メッセージ:
「愛には大きな快楽と
ともに、危険と空しさ
が伴う」?
ブロンズィーノ
「ウェヌス女神の勝利」
(1546年)
少女は売春婦
• 「よその女の唇は蜜を
滴らせ、その口は油
よりも滑らかだ。だが
やがて、苦よもぎより
も苦くなり、両刃の剣
のように鋭くなる。彼
女の足は死へ下って
行き、一歩一歩と、陰
府に達する。」(箴言5
章3-5節)
男は梅毒患者
• 顔に疱瘡
• 歯の抜け落ち
• 異様な指の関節
仮面の人物は<忘却>
• 後頭部が黒
• <時の翁>
が真実を明
かそうとして
いる
• 忘却が、愛
の醜さを隠そ
うとしている
ウェヌ スとアモルの近親相姦
• メッセージ
「梅毒への警告」
新・韜晦趣味
1. 真実はどこかに必ずあると信じる。
2. 真実に至る順延・循環は豊かさ
3. 迂回・順延を楽しむ→反復強制(タナトス願望)
順延と
循環
真実はどこ
かにある
真実の断
片とわかる
探すことは
よいこと
真実発見
スコトマ・暗転 scotoma
• ある視野の部分が崩れてしまい、像が本来
の姿と異なって見える現象(心理学用語:本来の意味)
• 一度、契機づけられた視覚像に捕らわれ、他
の可能性としてある視覚像を受け入れない心
的特性
シジュポス運動
<推測を促し続ける
何か>
価値・驚異
ティツィアーノ 「シジュポス」( 1548-1549年)
1. 三つの顔はどう
違うか?
2. 三つの頭部の下
にある動物は何
か
3. 頭頂にある文字
は何か
ティツィアーノ
「賢明」
1565-1570年
文字・人顔・獣顔
1. EX PRAETERITO
老年 オオカミ
2. PRAESENS PRUDENTER AGIT
壮年 ライオン
3. NE FUTURA[M] ACTIONEM DETURPET 若年 犬
• パターン化:人間の三時代
• 文字の意味:
– 過去[の経験]から
– 現在はより賢明にふるまう
– 現在が未来の行為を汚すことのないように。
セラピス神と三頭像
• マクロビウス『サトゥルナリア』 5世紀
• 「 エジプト人はセラピス神像に三つの頭のある動物を付け
た。中央の一番大きな頭はライオンで、右の頭は、優しい
顔をして喜ばせようとする犬、そして左の頭はむさぼり喰ら
う狼になっている。そして蛇がとぐろを巻いてこれら動物を
結びつける。蛇は首を後ろにして、蛇をなだめようとするセ
ラピス神の右手に向く。
• さてライオンの頭は現在をあらわす。過去と未来の間に
あって、現在の振る舞いによって熱烈かつ真摯だからであ
る。過去は狼の頭があらわしている。過去のことがらにつ
いての記憶をむさぼり喰らい、持っていってしまうからだ。
喜ばせようとしている犬の頭は、未来の結果をあらわして
いる。未来がもたらす希望は、不確かとはいえ、楽しい光
景を提供してくれるからだ。
1. 三つの顔はどう
違うか?
2. 三つの頭部の下
にある動物は何
か
3. 頭頂にある文字
は何か
ティツィアーノ
「賢明」
1565-1570年
16世紀の
神話復活
カルターリ
『古代神の像』
1609年
(初版1556年
図絵入り1571年版)
ルネッサンス神話学
• 神話の蒐集→神的叡智の発見
隠れた神の
叡智
好奇心
ギリシア・
ローマ
エジプト
ジラルディ 『異教神の歴史』
1548年
カルターリ『古代神の[仮説付き]像』
1556年
ルネッサンス神話学の特徴(1)
• 抜粋蒐集
– テキスト(ギリシア語・ラ
テン語)から神々別に該
当箇所を抜き出す。
– 範囲は古代ギリシアか
ら初代教父(5世紀頃)
ルネッサンス神話学の特徴(2)
• 蒐集提示
– コメント、私
感を交えな
い羅列
博物館の
前身
ルネッサンス神話学の特徴(3)
• 蒐集量が膨大
– 印刷術の影響
• 配列が時系列と階層別
– カタログ志向
– 項目別索引
●16世紀神話事典と
■17世紀シンボル事典と 違いは
チェーザレ・リーパ 1560- 1622
美徳・悪徳・観念
人物像:姿、衣服の色、持物
理由付け解説
アルファベット順配列
初版 1593年
第二版 図絵入り 1603年
●16世紀神話事典と
■17世紀シンボル事典との違いは
• 共通点
– 蒐集癖→散発的
• 相違点
– 限定
– 静態
– 非教条
– 退行
マニエリスムス
外延
動態
教条
普遍
バロック
• ティツィアーノ 「ウェヌス女神とアド-ニス」1560年
• ルーベンス 「ウェヌス女神とアド-ニス」1630年代
• ティツィアーノ 「ダナエ」 1544-45年
• ジェンティレスキ「ダナエ」 1621年
• 三面 trifons
• ただし年齢は同じ
• 作者未詳
「賢明」
15世紀末
文字・人顔・獣顔
1. EX PRAETERITO
老年 オオカミ
2. PRAESENS PRUDENTER AGIT
壮年 ライオン
3. NE FUTURA[M] ACTIONEM DETURPET 若年 犬
1. 過去の<記憶>
2. 現在の<知性>
3. 未来への<洞察>
<賢明>にかかわる
ウァレリアーノ
『聖顕図像文字』
1557年
ウァレリアーノ『聖顕図像文字』
<賢明>
「現在を精査するだけでなく、過去と未
来を、まるで鏡の中にあるかのよう考
察する」。
リーパ『図像事典』
• ウァレリアーノからの
引用
聖顕図
•ウァレリアー
像文字
ノ
神話
事典
•カルターリ
図像
事典
•リーパ
三つの顔はどう
違うか?
老人:ティツィアーノ
中年:息子オラツィオ
青年:従弟ウェチェリ
オ
画家の引退声明
ティツィアーノ
「賢明」
1565-1570年
1. ティツィアーノと動物の配
列は同じか?
2. 蛇が三頭に巻き付いてい
るのはなぜか?
3.蛇の頭をつかんでいる手
は、誰のものか?
ヨハンネス・エック
『ペテロの至高権:ルターへの反論」
1519年
1. ティツィアーノと動物の配
列は同じか?
2. 蛇が三頭に巻き付いてい
るのはなぜか?
3.蛇の頭をつかんでいる手
は、誰のものか?
1. 反転している。
マクロビウスとは左右逆。
2. 蛇は<時>
3. 神の手
ヨハンネス・エック
『ペテロの至高権:ルターへの反論」
1519年
<時>と<賢明>を
つなぐもの
蛇
ボールドゥング
「賢明」
1529年
Macrobius Sat. 1.20.13-15.
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13 Eidem Aegypto adiacens civitas, quae conditorem Alexandrum Macedonem gloriatur, Sarapin atque Isin cultu
paene attonitae venerationis observat. Omnem tamen illam venerationem soli se sub illius nomine testatur
inpendere, vel dum calathum capiti eius infigunt, vel dum simulachro signum tricipitis animantis adiungunt quod
exprimit medio eodemque maximo capite leonis effigiem: 14 dextra parte caput canis exoritur, mansueta specie
blandientis: pars vero laeva cervicis rapacis lupi capite finitur, easque formas animalium draco conectit volumine
suo, capite redeunte ad dei dexteram qua conpescitur monstrum. 15 Ergo leonis capite monstratur praesens
tempus, quia conditio eius inter praeteritum futurumque actu praesenti valida fervensque est: sed et praeteritum
tempus lupi capite signatur, quod memoria rerum transactarum rapitur et aufertur: item canis blandientis effigies
futuri temporis designat eventum, de quo nobis spes, licet incerta, p190blanditur: tempora autem cui nisi proprio
famularentur auctori? cuius vertex insignitus calatho et altitudinem sideris monstrat et potentiam capacitatis
ostendit, quia in eum omnia terrena redeunt, dum inmisso calore rapiuntur. 16 Accipe nunc quod de sole vel
Sarapi pronuntietur oraculo. Nam Sarapis, quem Aegyptii deum maximum prodiderunt, oratus a Nicocreonte
Cypriorum rege, quis deorum haberetur, his versibus sollicitam religionem regis instruxit:
17Εἰμὶ θεὸσ τοιόςδε μαθεῖν, οἷόν κ᾽ ἐγὼ εἴπω·
οὐράνιοσ κόςμοσ κεφαλὴ, γαςτὴρ δὲ θάλαςςα,
γαῖα δζ μοι πόδεσ εἰςὶ, τὰ δ᾽ ουἄτ᾽ ἐν αἰθζρι κεῖται,
ὄμμα τε τηλαυγὲσ λαμπρὸν φάοσ ἠελίοιο.
18 Ex his apparet Sarapis et solis unam et individuam esse naturam. Isis iuncta religione celebratur, quae est vel
terra vel natura rerum subiacens soli. Hinc est quod continuatis uberibus corpus deae omne densetur, quia vel
terrae vel rerum naturae altu nutritur universitas
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The Allegory of Prudence (c. 1565-1570) is an oil painting by the Italian master
Titian. It is in the National Gallery, London.
The picture portrays three human heads, facing different directions, hanging over
three animal heads, depicting (from left) a wolf, a lion and a dog. The three human
heads represent an allegory of the "Three Ages of Man" (youth, maturity, old age),
like in the famous enigma of the Sphynx and as later described by Aristotle.
The humans are thought to be portraits of Titian, his son Orazio, and a young
cousin, Marco Vecellio, who, like Orazio, lived and worked with Titian.[1] Titian also
painted a late self-portrait in 1567, from which the comparison is made. The other
faces also occur in other Titian paintings of the period.
It is the only painting by Titian to contain a motto: EX PRAETERITO/PRAESENS
PRUDENTER AGIT/NE FUTURA ACTIONẼ DETURPET ("From [the experience of] the
past, the present acts prudently, lest it spoil future actions").
The painting is connected by Erwin Panofsky, in a famous exposition, with Titian's
success in 1569 in transferring his senseria, a valuable "broker's patent" granted
him by the Signoria, to his son. Titian is therefore the past, Orazio the present, and
in the absence of a grandson, Marco is the future.[2]
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