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商人組合
10.6.28 商人の意義 商法総則・商行為 立法主義としての 商人(法)主義:「商人」を確定し、その者がした 営業上の行為は「商行為」とする 商行為(法)主義:「商行為」を確定し、その商行 為を業とする者を「商人」とする 折衷主義:商行為法主義をやや修正し、特定の 種類の行為は常に商行為(=絶対的商行為)と し、他の行為は営業としてなされる場合のみ商 行為(=営業的商行為)とした上、これらの行為 をする者を「商人」とする 商人 1 商人の意義 2 日本商法・会社法の規整方法 ↓ 後2者は、経済の発展に伴って生ずる新たな種 類の営業を捉えられないため、商人(法)主義の 方が優れていると考えられる 会社以外について 基本的商行為(=絶対的商行為+営業的商行 為)を営業としてする者を「商人」(=固有の商 人)(商4Ⅰ) ↓ 原始産業従事者が「商人」に含まれないなどの 問題あり ↓ 擬制商人=店舗販売業者+鉱業者(同Ⅱ) 3 日本商法・会社法の規整方法 会社について その事業としてする行為およびその事業のため にする行為は商行為(会5) cf.商事会社と民事会社 「商人」がした行為=附属的商行為(商503) ↑ 商行為法主義に、商人法主義的な要素が多分 に含まれるという意味で、わが国商法は(商行 為法主義と商人法主義の)折衷主義を採用して 5 いる 4 日本商法・会社法の規整方法 規定上、擬制商人がその営業のためにする行 為は附属的商行為として商行為であるが、営業 としてする行為は商行為ではないことになる ↓ 後者も商行為に関する商法の規定が類推適用 されなければならない(多数説) 会社については営業のためにする行為も営業と してする行為も商行為 6 1 10.6.28 一方的商行為と双方的商行為 商人の意義(まとめ) 一方的商行為:当事者の一方にとってのみ商行 為であるもの ex.小売業者(例えばスーパー)と消費者の間の 取引 固有の商人=「自己の名をもって商行為をする ことを業とする者」(商4Ⅰ) 会社は固有の商人(ただし商法の規定の一部 は適用なし→会社法の類似規定が適用される) 双方的商行為:当事者の双方にとって商行為で ある場合 ex.卸売業者やメーカーと小売業者の間の取引 「自己の名をもって」=法律上、その行為から生 ずる権利義務の帰属主体となること ≠「自己の計算において」 7 商人の意義(まとめ) 8 商人の意義 「商行為」=商法501条・502条および若干の 特別法の規定により商行為とされる行為ならび に会社法5条により商行為とされる行為のうち 会社がその事業としてする行為 「業とする」=営利の目的をもって同種の行為を 反復継続して行うこと ※医師・弁護士・芸術家など自由職業人は「商人」 か 原則:「営利目的」を有していない以上、営業で はない ↓もっとも 医師が病院を経営して患者を入院・宿泊させる 行為については「営業」と解する見解も ↓とはいえ 商法上、商行為をしていなければ商人ではなく、 いずれにせよ商人とは言えない 9 10 商人の意義 商人資格の得喪 擬制商人(商4Ⅱ) ・店舗その他これに類似する設備によって物品 を販売することを業とする者 ・鉱業を営む者 自然人→商法4条の要件を満たせば商人となる 私生活の部分については、商人であっても民 法が適用される 小商人(商7、商施規3) 商人のうち、営業の用に供する財産について 最終営業年度の貸借対照表に計上した額が50 万円以下である者 11 法人→会社以外の法人については、商人資格 自体が認められるかという点も問題となる 12 2 10.6.28 法人の商人資格 法人の商人資格 公法人:その行う事業が商行為に該当し、かつ 営利目的をもって行われる場合には、その限り で国または地方公共団体も商人となる ex.大阪市交通局 私法人 ・営利法人=会社=商人 ・非営利法人(次のスライド) • 非営利法人 ・「一般社団法人および一般社団法人に関する 法律(一般法人法)」の適用だけを受ける一般的 中間法人 ・公益社団法人及び公益財団法人の認定等に 関する法律(公益法人法)により公益認定を受 けた公益法人 ・特別法の適用だけを受ける特別中間法人 13 14 法人の商人資格 法人の商人資格 一般的中間法人、公益法人 利益を獲得することを目的として対外的事業活 動を行う場合には、その限りで商人資格を取得 特別法の適用のみを受ける特別な中間法人 ・保険相互会社 社員相互の保険を目的とするものであって営 利を目的とするものではない ↓ 商人性は否定 特別法の適用のみを受ける特別な中間法人 =具体的には各種協同組合、保険相互会社 ・協同組合は構成員の相互扶助または共通利 益の促進・擁護を目的とする ↓ 商人性は否定される 15 法人の商人資格 もっとも、協同組合等の資産運用行為には営利 目的を認めるのが通説 16 商人資格の得喪 公庫・特殊銀行等の特殊法人 公共的性格が強いとは言え、その性質上収支 相償うことを目標とすることになる ↓ 営利目的が認められ、その事業内容が基本的 商行為に該当する場合には「商人」となる 時効や法定利率、債務保証の連帯性などにつ き、商人資格の有無によって異なる規定が適用 される以上、商人資格の得喪時期が重要な意 味をもつ 会社→設立と清算終了により得喪時期が明確 独立行政法人 基本的に営利目的は認められない 17 18 3 10.6.28 商人資格の得喪 商人資格の得喪 自然人および会社以外の法人 →抽象的には、商法4条の定める営業を開始した ときから商人となり、その終了により商人でなく なる ↓しかし 具体的にどの時点から営業を開始したといえ るのかについては開業準備行為の附属的商行 為性をめぐって見解がわかれている ◎開業準備行為が、「商人が」営業としてなす附 属的商行為(商503条)といえるか →開業準備行為により「営業とする意思」が実現さ れれば、そのときに商人資格が取得されるとい う結論については一致 ↓ 何をもって「営業とする意思」と解するのか 19 20 商人資格の得喪 商人資格の得喪 (1)表白行為説:営業の意思を、口頭ないし配付物 などにより外部に発表すること (2)営業意思主観的実現説:営業の意思を、行為 者自身が実現していること (3)営業意思客観的認識説:準備行為により営業 意思を主観的に実現しただけでは足りず、その 意思が相手方はもとよりそれ以外の者にも客観 的に認識可能でなければならない (3) 上記修正説:準備行為それ自体から営業意思 が認識可能でなければならない (4)相対説ないし段階説: ・営業意思の主観的実現→相手方はその附属 的商行為性を主張可 ・営業意思が特定の相手方に認識されたかさ れうべきであった場合→行為者もその附属的商 行為性を主張可 ・商人であることが一般に認識可能となった段 階→その者の行為について附属的商行為の推 定が生じる(商503Ⅱ) 22 21 商人資格の得喪 商人資格の得喪 この問題の難しいところは・・・ 開業準備の段階ではある行為が営業の準備の ためか否か外形上明確ではない 借入行為は商事性を認めるか否かによって相手 方に有利になることもあれば不利になることもあ り、一律に商人資格を認めることが必ずしも妥当 ではない 判例(最判昭和47・2・24民集26巻1号172頁) 客観的認識説に立ちつつも、相手方が開業準備 行為であるという事情を知悉しているときは、金 銭借入行為も附属的商行為となる、とする 23 百選3事件では、認定事実のもとで、本件契約は 営業の準備行為であり、特定の営業を開始する 目的でその準備行為をなした者は、その行為に より営業を開始する意思を実現したものでこれに より商人資格を取得すると判断している 24 4 10.6.28 営業能力 未成年者の営業能力 商人資格を有するということと、自ら営業活動を 行うことによって権利を取得し義務を負担するこ と(=営業能力)とは別問題 ↓ 行為能力に関する民法の一般原則によって判断 一種または数種の営業を法定代理人より許可さ れた未成年者 →その営業については完全な行為能力を有する (民6Ⅰ)ただし、登記が必要(商5、商登6Ⅱ・3 5-39) 法定代理人が未成年者に代わって営業を営む ことができ、親権者が代わって営業を行う場合に ついては公示不要(民824・825) 25 26 未成年者の営業能力 成年被後見人の営業能力 後見人が未成年者に代わって営業を行うには、 後見監督人がいる場合にはその同意が必要な ど煩雑 ↓ 公示必要(商6Ⅰ、商登6Ⅲ・40−42) 自ら完全な能力をもって営業を営むことはできな い ↓もっとも 後見人が代理する(民859)ことで商人となりう るが、未成年の場合同様登記必要(商6Ⅰ) 無限責任社員となることを許された未成年者 →社員たる資格に基づく行為については能力者と みなされる(会584) 成年被後見人も定款の別段の定めによって会 社の無限責任社員となりうるが、後見人が代理 することを要する 27 28 被保佐人の営業能力 被保佐人の営業能力 被保佐人は、個々の行為につき必要な場合は 被保佐人の同意を得て自ら営業を行うことが可 能(民13Ⅳ参照) ↓ 保佐人の同意をいちいち得るのは実際上困難で ある上、保佐人は法定代理人ではないから被保 佐人に代って営業を行うこともできない ↓ これでは営業行為に関して制限行為能力者の 中でも特に不利な地位に置かれてしまう ↓そこで 保佐人の同意を得て被保佐人が支配人を選任 し、自己に代って営業をさせる 民13Ⅱにより、家裁の審判と保佐人の同意に 基づき被保佐人が自ら営業を行う 民13Ⅱにより、家裁の審判と保佐人の同意に 基づき被保佐人が支配人を選任し、自己に代っ て営業をさせる のが妥当とする諸説あり ←いずれの説にも難点があり困難な問題 29 30 5 10.6.28 被保佐人・被補助人の営業能力 被保佐人が会社の無限責任社員となるには保 佐人の同意が必要(通説) 被補助人にも被保佐人と同様の困難な問題あり 営業の意義 商法上の「営業」には、主観的な営業活動(商5 条・7条・23条・502条など)と、客観的な営業上 の財産(商24条以下)を指す場合とがある 前者を主観的意義の「営業」、後者を客観的意 義の「営業」という 主観的意義の営業:客観的営業を基礎にした人 的要素の活動 客観的意義の営業:企業の物的要素の統一体 31 32 営業の自由とその限界 営業の自由とその限界 職業選択の自由は憲法の保障する人権の一つ ただし↓ 公共の福祉に反しない限度においてのみ認め られる ←公法上および私法上の様々な制限に服する制 限に違反した行為の私法上の効果は様々だが、 その行為が私法上無効となる場合には、業とし てその行為を行っても行為者は商人ではない 客観的理由に基づく制限 1)一般公益上の理由から行為自体が禁止されて いるかまたは公序良俗に反する行為 ex.わいせつ文書などの販売、アヘン煙の輸入・製 造・販売など 2)国家財政上の理由から国または国の指定した者 の独占事業とされているもの ex.信書の送達、たばこの製造、簡易生命保険など ←もっとも、この区分はかなり流動的 33 34 営業の自由とその限界 営業の自由とその限界 3)一般公安、保険衛生などの警察取締の理由から または事業の公共的性格(社会・経済政策的目 的)から、営業の開始に行政庁の許可が必要と されるもの ex.前者として風俗営業、飲食店営業、後者として 銀行業、証券業、保険業など 主観的理由に基づく制限 1)官紀粛正などの理由から公職にある者の営業 は制限される →行為の効果に影響はなく、本人が制裁を受ける のみ 2)支配人、取締役など受任的立場に立ち、その事 務を忠実に処理すべき者につき、一定の範囲で 本人もしくは会社に対する競業を禁止 公序良俗に反しない限り、当事者間の合意によ り制限することも可能 35 36 6 10.6.28 営業の自由とその限界 営業の態様に対する制限 営業の自由には営業活動の自由も含まれる が、不正競争は許されないし、不公正な取引方 法が認められるわけではない ↓ 自由は無秩序ではなく、商号や商標の保護は、 商人の自由な営業上の努力の基礎を形作るも のとして重要であり、単純に自由を制限している ものとはいえない(知的財産法上、独占禁止法 上の制限も同様) 37 7