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学会大賞 (2015年)

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学会大賞 (2015年)
第2回環境芸術学会賞 大賞
森ビル株式会社
森ビル株式会社の環境芸術によるエリアブランディング
授与対象事業の概要
美 術 館、21_ 21 DESIGN SIGHT、 国
トである。協賛社であるブラジル資源
森ビル株式会社の一連の環境芸術に
立新美術館、六本木商店街、その他六
大手「ヴァーレ」は、近隣の愛宕グリー
よるエリアブランディングを授与対象と
本木地区の協力施設や公共スペースな
ンヒルズに日本支社を構え、今回は自国
する。下記の4つの環境芸術関連事業
ど、商業施設や文化施設を舞台に、現
を代表するアーティストの作品が、自社
を主たる対象とした。
代アート、デザイン、音楽、映像、パ
と同じエリアのシンボルとして設置され
フォーマンス等の多様な作品を街なかに
ることに賛同し協賛に至った。
1.六本木ヒルズ パブリックアート&
デザイン事業(2002年−2013年)
をつくり出すことを目的としている。そ
六本木ヒルズを東京の文化の中心地
れは生活の中でアートを楽しむという新
点在させ、
非日常的な“一夜限りの体験”
にしようというアイデアの一環としてス
タートした
「六本木ヒルズパブリックアー
ト&デザインプロジェクト」
。 敷地内の
各所に 20 人以上の世界的アーティスト
やデザイナーに作品を依 頼。
「文化都
心」というテーマに相応しい大規模な
計画が街全体に展開されている。アー
トとデザインの境界を越えた美しく機能
的な作品が、創造的な文化都心の景観
しいライフスタイルを提案するものであ
を形づくっている。六本木ヒルズのパブ
ると同時に、アートと街を一体化させる
リックエリアには、森美術館監修による
ことによって文化的なイメージを向上さ
4 作品が、また、テレビ朝日敷地内に
せ、
結果として六本木のエリアブランディ
は建物の設計を担当した槇文彦氏が選
ングに大きく寄与している。
定した 3 作品が設置されている。
3.アークヒルズ仙石山森タワー
パブリックアート事業(2012年)
4.虎ノ門ヒルズ
パブリックアート事業(2014年)
虎ノ門ヒルズのオーバル広場に設置
アークヒルズ仙石山森タワー設置され
された作品は、ジャウメ・プレンサの大
た《無限》と名付けられたパブリック
型彫刻作品「ルーツ」。作品の大きさは
アート作品は、ブラジルを代表するアー
約 10m、膝を抱えて座る人間をかたどっ
ティスト、トミエ・オオタケによる新作
た巨大な作品である。ジャウメ・プレン
で、このエリアの絶えることない発展
サはスペイン・バルセロナ生まれのアー
や成長の願いを無限遠の記号に込めた
ティスト。思索的・哲学的な立体作品を
もの。アークヒルズ仙石山森タワーでは
数多く制作し、スペインを代表する作家
2.六本木アートナイト事業
(2009年−2015年)
この作品を含め 3 名の作家による作品
として世界的に知られている。
「ルーツ」
10 点をレジデンス部分のエントランス
は 8 つの言語(日本語、中国語、アラ
「六本木アートナイト」は、生活の中
やビューラウンジなど 7 箇所に設置す
ビア語、ヘブライ語、ラテン語、ギリシャ
でアートを楽しむという新しいライフス
る他、MAM POP-UP プロジェクトの一
語、ヒンディー語、ロシア語)の文字
タイルの提案と、大都市東京における
環として、工事中の店舗 1 区画でも期
を用いて巨大な人型を成形。
「世界の多
街づくりの先駆的なモデル創出を目的
間限定で作品を紹介している。
《無限》
様性」を表現し、
「多様な文化の違い
に 2009 年より開催している一夜限り
は、全国でも珍しい、企業とのコラボ
を越えて、人々が平和的に共存すること」
のアートイベントである。六本木ヒルズ、
レーションによって、エリアのブランディ
をメッセージとして投げかけている。虎
森美術館、東京ミッドタウン、サントリー
ングのために制作されたパブリックアー
ノ門ヒルズを運営する森ビル株式会社は
「虎ノ門ヒルズをルーツ(起点)として世
を有するものといえる。芸術の在り方が
界の人々が共存する街づくりを進めてい
“モノ”から“コト”へ 変化してきたこと
きたい」とパブリックアート設置の狙い
と符合するように、現代の都市環境に
を語る。同施設には、サン・クァク、内
具体的に表象してきた事業であり活動
海聖史、ジャン・ワン、神谷徹、小高重光、
であるといえる。
永田哲也の作品も展示されており、東
森ビル株式会社は、2003 年の「六
京が「世界一の都市」を目指すための
本木ヒルズ」の街開きに合わせたパブ
カルチャー発信地として、アートで街を
リックアート&デザイン事業を契機に、
活性化させることを目指している。
その後の「アークヒルズ仙石山森タワー」
「虎ノ門ヒルズ」の開発においては森
美術館が監修となるかたちで、海外作
家や国内作家を登用して積極的にパブ
リックアートを設置している。また、開
発後も継続的に環境芸術にかかわる取
組みを続けている。なかでも森ビル株
式会社や森美術館が主体となり 2009
年から継続している「六本木アートナイ
選定理由
ト事業」は、六本木ヒルズ、森美術館、
1960 年代に始まり 1980 年代に全
東京ミッドタウン、サントリー美術館、
国に波及拡大した日本のパブリックアー
21_ 21 DESIGN SIGHT、国立新美術
ト関連事業は、1990 年初頭に全盛期
館、六本木商店街、その他六本木地
を迎えた後、急速に縮小し 2000 年代
区の協力施設や公共スペースを会場に、
に入るとほぼ終焉したといってもよい状
アート・デザイン・音楽・映像・パフォー
況になった。そして 2000 年代以降の
マンスなどを含む多様な作品を点在さ
都市空間は、テンポラリーでソフトな性
せながら六本木地域の文化的なイメー
質をもつ、いわゆるアートプロジェクト
ジの向上をめざす取組みであり、環境
の舞台と移り変わってきた。
芸術による「エリアブランディング」の
このような状況下にあって、森ビル株
プロジェクトであると評価される。これ
式会社は 2000 年代以降、活発にパ
はパブリックアートでは難しい同時代的
ブリックアートを含めた環境芸術関連事
な情報発信をアートプロジェクトによっ
業を展開してきた。それは、従前の地
て補完するものといえ、結果としてアー
方自治体が牽引してきた 1990 年以前
トを用いた「エリアブランディング」に体
のパブリックアート事業の目的とは異な
系性を構築するという成果を付加したと
り、アートを通じた文化発信活動により
もいえよう。
街に魅力を創出し、同時に街の価値を
以上のような観点から、森ビル株式
高めようとする「エリアブランディング」
会社による 2000 年以降のパブリック
の考えに基づく展開といえる。都市空
アートを含めた環境芸術関連事業の実
間の一定のエリアにそれまでになかった
績は、環境芸術の発展と前進に大きく
「意味」や「価値」を創造しようとする、
寄与するものであり、環境芸術学会は
それらの事業および継続的な活動は、
この功績に対し学会大賞を授与するこ
環境芸術の発展にとっても大きな意義
ととした。
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