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内陸フロンティア振興

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内陸フロンティア振興
静
岡
県
議
会
内陸フロンティア振興特別委員会
報
告
平成 25 年2月 21 日
書
1
調査の概要
当委員会は、「新東名高速道路を活用した内陸部の地域振興に関する事項」を付
託調査事項として、平成 24 年5月 17 日に設置され、別表1「委員会の活動状況」
に示すとおり、これまで6回にわたり委員会を開催してきた。
この間、執行部に対し、「内陸のフロンティア」を拓く取組について、全体構想
や総合特区、各部局の取組の説明を求め、現時点での施策等について調査を行うと
ともに、当面取り組むべき課題について指摘した。
また、県内の状況を把握することが重要であるため、
「清水区の原・新丹谷地区」
、
「駿河湾沼津サービスエリア」、
「富士市役所」、
「森町役場」、
「奥浜名湖観光協会」、
「磐田市役所」において調査を行った。さらに、先進地視察として「糸島農業協同
組合/JA糸島産直市場伊都菜彩」、
「大分大山町農業協同組合/木の花ガルテン」、
「イオンアグリ創造(株)大分九重農場」、
「佐賀県庁」、
「グリーン・ロジスティク
ス・パーク鳥栖/日本生協連鳥栖冷凍流通センター」、
「鳥栖北部丘陵新都市/佐賀
県立九州シンクロトロン光研究センター」において、交通の利便性を生かした事業
や企業誘致の取組などについて調査を行った。
さらに、一般財団法人静岡経済研究所、静岡県農業協同組合中央会、清水農業協
同組合、一般社団法人静岡県建設コンサルタンツ協会の方々を参考人として招致し、
新東名高速道路及び周辺地域の活用や地域振興などについて意見を聴取した。
2
委員会の運営方針
第1回委員会において、次の2点を運営方針として決定した。
・執行機関に対する調査に偏ることなく、委員討議や参考人の意見聴取、先進事例
視察等を積極的に実施する。
・調査結果は、委員会の提言等として報告書にまとめ速やかに議長に提出する。ま
た、直近の本会議で報告書を議場配付し、委員長報告を行う。
3
調査の観点
当委員会は、付託事項の調査に当たり、『東日本大震災以降、防災・減災に対応
した国土利用が強く求められる中、新東名高速道路の開通により、本県は災害に強
い安全で安心な地域として発展の可能性が高まっている。このため、新東名高速道
路を活用した内陸部の振興など、安全・安心で魅力ある新時代の県土づくりについ
て調査する。県では、「内陸のフロンティア」を拓く取組を推進していくこととし
ており、今年度は基本となる全体構想の策定や総合特区の申請などが予定されてい
る中で、それらの進捗状況等を注視しつつ、調査を進めていく。』こととし、以下
を調査の観点とした。
・新東名高速道路の開通を契機とした内陸部の新たな地域づくりのための方策
・沿岸部から内陸部への移転に伴う空間を活用するなど、災害に強い都市機能や住
民生活の満足度を高める地域づくりのための方策
・交通ネットワークの充実や地域資源を活用した都市と農山村との交流促進など、
内陸部と沿岸部の地域連携を強化するための方策
-1-
4
本県における取組の状況
当委員会では、執行部から事業の取組状況等の説明を受けるとともに、質疑を行
った。委員会において執行部から説明のあった本県の取組のうち、主なものを掲げ
る。
※第3回委員会開催時(8月6日)における執行部説明による。
《総括、全体構想、総合特区等》
(1) 企画広報部
【背景及び県内の動き】
・東日本大震災や平成 24 年3月の南海トラフ巨大地震の津波推計高の公表により、
地震・津波災害に対する県民の不安が高まっており、防災・減災の取組は一刻の猶
予も許さない状況である。
・こうした中、本県では、4月 14 日に新東名が開通し、地震や津波などの災害発生
時には沿岸域を通る東名の代替路、緊急輸送路として機能する。さらにSA・PA
には防災用のヘリポートが整備されており、空からの支援も可能となる「命の道」
としての役割も担っていく。
・地震・津波災害に備えた県内の動きとして、住民、企業の間には、沿岸域から内陸
部へ移転する動きが見られる一方で、地域を守るため、主体的かつ積極的な取組が
行われてきている。
【位置付け】
・平成 23 年に、命を守る危機管理を第一の柱に掲げた総合計画「“ふじのくに”のグ
ランドデザイン」を策定、直後に東日本大震災が起こり、我々の想定を超えた津波
災害への備えについて、早急な見直しが必要となった。
・昨年9月には、直ちに「津波対策アクションプラン」を取りまとめ、短期的な対応
に着手し、今後は南海トラフ巨大地震も想定に置き、中長期的な視点も踏まえた安
全・安心で魅力ある地域づくりが課題となっていることから、「内陸のフロンティ
ア」を拓く取組として構想を策定し、取り組んでいきたい。
【全体構想】
・基本理念として、「安全・安心で魅力ある県土“ふじのくに”の実現」を掲げ、想
定される災害を未然に防ぐ新しい国土利用や、地域発の自立する地域づくり、美し
く品格のある地域づくりの推進を図っていく。
・実現に向けて、内陸部のイノベーション、都市部のリノベーション、多層的な地域
連携軸の形成の以下の3つの戦略を一体的に推進していく。
・内陸部では、新東名の開通効果などを生かしつつ、新しい産業の集積、エネルギー
の地産地消、豊かな自然と共生する新たなライフスタイルの創造など、個性と魅力
を備えた文化力の高い地域づくりを展開していく。
・都市部では、防災対策、ハード・ソフトを合わせた取組を重点的に進めていくが、
中長期的な視点に立ち、蓄積された機能、利便性を維持しながら、これまで困難で
あった街路の拡幅や緑地の充実などにも取り組み、水と緑にあふれた都市空間の形
成、災害に強い地域づくりを推進していく。
・多層的な地域連携軸の形成では、内陸部と沿岸域の都市部とを結ぶ交通・情報ネッ
-2-
トワークの整備により、内陸部と沿岸域の都市部が連携・補完し、相互に活発な社
会活動が営まれるような多層的な地域連携軸の形成に努めていく。
・具体的には、それぞれの戦略のもとに4つの基本目標として、防災・減災機能の充
実・強化、地域資源を活用した新しい産業創出・集積、新しいライフスタイルの実
現の場の創出、暮らしを支える基盤の整備を柱立てし、それぞれの柱ごとに施策の
方法や具体的な取組を明らかにしていく。
【総合特区の提案】
・乱開発のない、防災・減災に寄与する多自然と共生する地域づくりを目標に、規制
の特例措置について、以下の3つの視点で規制の特例措置を提案していきたい。
1 事前復興の考えに立ち、東日本大震災の被災地に適用されている規制の特例措
置のうち、予防的に活用可能な項目を適用。
2 非常時の防災拠点化のための特例措置としての、特殊車両通行許可制度の要件
緩和などの物流に関する規制緩和。
3 農業関連施設の立地要件緩和など、市町による地域資源を活用した主体的な地
域づくりのための規制緩和。
・これらの規制の特例措置を活用して、3つの政策課題、防災・減災機能の充実・強
化、地域資源を活用した新しい産業の創出・集積、新しいライフスタイルの実現の
場の創出に取り組んでいく。
【今後のスケジュール】
・構想は9月末策定を目途に作業を進めており、総合特区については、平成 24 年7
月に指定申請に必要とされる地域協議会を、提案いただいた 10 市町、民間団体や
金融機関と立ち上げた。9月末までに内閣府に指定申請を行っていく。
【富士の国の新しい国土軸】
・本取組の目標実現により、やがては静岡県から始まる新しい暮らし、新しい日本の
形が、日本全体にとっての新しい国土軸、富士の国の新しい国土軸となるように取
り組んでいきたい。
《各部局の取組》
(1) 企画広報部
・一極集中依存型から分散自立型のエネルギー体系への転換によるエネルギーの地産
地消を目指す。日照環境に恵まれた本県の特性を生かし、太陽光発電の導入を加速
する。
(2) くらし・環境部
・自然との触れ合いなどを大切にした真に豊かさを実感できる、「住んでよし」の理
想郷の実現に向け、生活と自然が調和する家・庭一体の住まいづくりを進めており、
定期借地権制度普及に努め、定期借地に対する不安払拭や県民の理解促進を図って
いく。
・花と緑を積極的に取り入れていくことが人々の暮らしの満足度を高めることになる
ことから、関係団体、県民等との連携を強化し、花と緑にあふれた魅力あるまちづ
くりを推進していく。
-3-
(3) 文化・観光部
・新東名等を活用した観光誘客として、誘客キャンペーンの実施や観光情報誌「まる
ごと静岡ドライブガイド」を発行している。
・農山村と都市との交流等については、滞在型グリーン・ツーリズムの促進に向け、
宿泊拠点となる農林漁家民宿の開業を支援するとともに、移住・定住の促進に向け、
推進会議により取組機運の醸成を図っている。
・歴史的に価値ある鉄道施設の魅力が損なわれないよう、保全や文化財建造物の周辺
環境整備に対して支援を行うことで、訪ねてみたい昭和の鉄道遺産のある貴重な景
観を保全し、地域活性化や観光交流人口の拡大につなげていく。
(4) 健康福祉部
・新東名のSA・PAに設置されたヘリポートをドクターヘリの離着陸ポイント等と
して活用し、救急医療体制の充実を図るとともに、災害時の医療救護体制の確保に
努めていく。また、内陸部にまちづくりが進むことにより必要となる新たな福祉需
要に対しては、初めから「ふじのくに型福祉サービス」が提供できるよう推進して
いく。
(5) 経済産業部
・SA・PAを活用し、多彩で高品質な農林水産物のPRや販売や産地周辺を散策す
るモデルルートの提案等により、産地情報の発信や農ビジネスの拡大を図っていく。
・IC周辺において、成長分野、物流関係等の企業誘致を促進し、新たな産業集積を
図るため、工業用地開発の検討を行う市町の産業集積計画を支援していく。また、
食品、環境関連等の成長産業分野の企業に対する補助率等を引上げ、流通加工等を
行う高度な物流施設を補助対象とする企業立地補助制度の改正を行った。
(6) 交通基盤部
・新東名高速道路については、利活用を推進するため、推進会議を設立し、平成 24
年2月に利活用プランを取りまとめた。
・新東名周辺は、計画的な土地利用を図ることにより、地域の活性化が期待されるの
で、市町の意向を十分に踏まえ、都市計画や農地に関する制度の運用に関し、可能
な限り柔軟に対応していく。また、市街化調整区域内の物流施設立地基準について、
高速道路のICから5㎞以内に緩和する見直しに取り組んでおり、パブリックコメ
ントが済み次第、改正する予定である。
(7) 危機管理部
・富士山静岡空港は、県の中心部に位置し、陸・海・空の要衝にあり、緊急物資の中
継・分配機能、広域支援部隊のベースキャンプ機能などを有する基幹的広域防災拠
点に最適な場所である。中部地方で候補地を検討している段階であり、中部地方整
備局に位置付けてもらえるよう要請している。
(8) 企業局
・新たな工業用地の開発に取り組む市町に対し、構想段階から支援を行う。基本調査
を行う場合には1か所当たり 250 万円を上限に、また、その調査結果を受けて、企
業の進出内定を踏まえた詳細調査を行う場合には1か所当たり 2,500 万円を上限に、
調査費の1/2を助成する。詳細調査実施後は、進出企業、市町、企業局の三者で
-4-
基本協定を締結し、用地造成事業に移行していく。
(9) 教育委員会事務局
・県内に数多く点在する有形、無形の文化財を一つの文化資源ととらえ、その伝統に
培われた地域文化の継承と地域の活性化につながる観光資源の創出という観点か
らも地域文化継承の取組を継続していく。
※第4回委員会開催時(10 月9日)における執行部説明による。
・9月に、基本方針や目標達成のための戦略を明らかにする全体構想の総論を取りま
とめた。また、9月 28 日に総合特区の指定申請を内閣府へ提出した。これらの全
体の枠組みづくりと並行し、防災・減災対策を最優先とし、具体的な取組を速やか
に実施している。
・推進体制については、全体構想の取りまとめは、県と市町の企画政策会議を中心と
し、各地域政策局にワンストップの相談窓口、チームフロンティアも設け、市町と
の連携を密にする中で構想の基本方針を共有し、県と市町で連携した取組推進のた
め協議を進めている。また、総合特区の申請は、関係市町や団体、企業等により構
成する地域協議会を設置し、庁内では知事を本部長とする全庁を挙げた推進会議を
開催し、推進を図っている。
・今後のスケジュールについて、全体構想は、今後広く県民や企業から意見を伺い、
本特別委員会からの提言や意見も踏まえつつ、構想の位置付けに向けた取組の推進
を図るため、来年度予算への反映に努め、数値目標も設けながら、最終的にはそれ
らを全体構想の各論として取りまとめていく。また、総合特区については平成 25
年1月ごろの指定が想定されるが、指定後速やかに支援措置が受けられるよう関係
機関との調整を図っていく。
【全体構想(総論)
】
〔第1章 基本方針〕
・基本理念では、有事に備えるとの視点に立ち、本取組が有する国家的使命について
明確にし、新東名高速道路の開通の意味、防災・減災のために「内陸のフロンティ
ア」を拓くことの意味、目指す姿「安全・安心で魅力ある“ふじのくに”の実現」
を描き、全体構想の策定の意義を記載した。
・防災・減災機能の充実など4つの基本目標と、内陸部のイノベーション、都市部の
リノベーション、多層的な地域連携軸の形成の3つの戦略を一体的に進めていく。
・取組の視点は、取組の推進を通じて念頭に置く制度の活用や、整備、進め方等を記
載している。多様な主体との協働による地域づくりを進める中で、県及び市町の行
政が方向性を示し、地域住民や企業が活動しやすい環境整備を進め、調整役を担う。
制度等の活用と整備では、国の制度活用として総合特区を具体例として挙げたほか、
「内陸のフロンティア」を拓く取組全体では、総合特区のみならずさまざまな制度
利用、あるいは制度整備の提案をすることとしている。また、民間資金の活用の視
点を明記したほか、県の将来像に向けたメッセージとして雇用創出の視点を加えた。
・構想は県内の高速交通インフラがおおむね整備される平成 39 年までを念頭に置い
ている。ただし、安全安心な県土づくりに必要な防災・減災対策については最優先
-5-
で取り組んでいく。
〔第2章 目標達成のための戦略〕
・戦略1、内陸部のイノベーションでは、命の道としての新東名高速道路等の活用な
どの危機管理体制の強化のほか、食と農ビジネスの創出支援による6次産業化、県
産品のブランド化の推進、成長分野や物流関連の企業立地の促進、分散自立型エネ
ルギーシステムの推進によるエネルギーの地産地消、農山村と都市との交流などを
掲げている。
・戦略2、都市部のリノベーションでは、河川、海岸等における地震津波対策を最優
先で実施し、災害に強い地域基盤を整備する。また、農地集積や耕作放棄地の再生
利用の促進、工場跡地を活用した農業施設の設置や農地造成、水と緑と土を大切に
する魅力ある都市空間の形成などを掲げ、こうした施策の展開により、防災機能を
充実させた緑あふれる沿岸都市部を形成していく。
・戦略3、多層的な地域連携軸の形成では、富士山静岡空港への基幹的広域防災拠点
の整備、食の都づくりの展開による県内農産物の情報発信、ドクターヘリ等による
救急搬送体制の充実、高規格幹線道路を結ぶ幹線道路の整備、陸海空の物流ネット
ワークの充実などを掲げており、こうした施策の展開により、内陸部と沿岸域の都
市部を結ぶ地域連携軸の形成を図り、地域全体の均衡ある発展を目指していく。
・第2章に記載してある各施策は、市町の意見を踏まえ庁内関係部局と施策を整理し
体系化したものである。今後、平成 25 年度当初予算編成作業の中で新しい施策を
加え、充実させていく。
〔第3章 「内陸のフロンティア」を拓く取組を先導する地域づくり〕
・総合特区制度の活用のほか、住民や企業の発議による取組として、浜松市における
一条工務店グループの寄附に基づく防潮堤建設の動き、沼津市内浦重須地区の住民
の自主的な高台移転の勉強会の開催、民間企業による津波避難タワー等の建設を挙
げた。
【総合特区の申請】
・取組を先導する地域づくりを進めるため、国の総合特区制度を活用し、規制緩和な
どにより有事における防災・減災機能を備えた新しい地域成長モデルの創出を図っ
ていく。
・総合特区の目標は、全体構想で掲げた「安全・安心で魅力ある“ふじのくに”の実
現」を、また政策課題には構想の4つの基本目標を掲げ、解決策には構想第2章に
記載の施策群の中から関連施策を掲げた。
・総合特区提案の考え方は、目標の「安全・安心で魅力ある“ふじのくに”の実現」
を目指し、有事に備え防災・減災機能の充実、強化を行うため、地域資源も集中し
ていくことで、平時においては地域の資源を生かした魅力ある自立した地域を形成
いくことである。
・具体的には、内陸部は地域資源と広域化幹線道路の機能を最大限に活用し、有事と
平時の機能を確保した災害に強く魅力ある地域づくりを三島市や富士市、藤枝市な
ど7地域で実施、都市部は企業の域内移転と跡地利用により減災と産業転換を両立
する地域づくりを吉田町や袋井市など3地域において実施、多層的な連携軸の形成
-6-
では、県全域で広域物流拠点創出により物流ネットワークの充実を図る取組を進め
る。これら 11 地域における政策課題の解決を図るため、土地利用規制に関する国
との一括事前協議制度の創出などの規制の特例措置のほか、税制、財政、金融の支
援措置など、33 項目の提案をした。
5 現地調査(県内)
(1) 原・新丹谷地区
(静岡市清水区)
【「大都市圏交流農ビジネス創出エリア」をコンセプトとして新たなサービスを提
供する事業の創出や、テーマパーク的な農業団地の創造、次世代型市民農園の設
置など、農村振興策の方向性について】
・清水区の原地区、新丹谷地区など7地区では、県営畑地帯総合整備事業として土地
改良が実施されている。現在、3地区の農地 130ha 分が終わっており、残りの4地
区についても平成 23 年度末で8割が終わっている。
・土地の交換をする際、非農用地を生み出し、土地を売却して整備の負担金に充てて
いるほか、新東名の残土を受け入れ、埋立てに使いその上を造成し、コスト削減に
努めている。
・交通が整備されたことを絶好の機会ととらえ、平成 23 年2月には、JA・県・市
により、「原・新丹谷グリーンニューディール検討会」を設置し、地域のPRや調
査を行い、新たな農業の展開を目指している。
・耕作放棄地となっていたところもあったが、基盤整備により農地が再生され、明る
い展望が開けた。整備が行われたことで、新規就農者も増えている。平坦なので足
への負担が少なく、高齢者にとっても作業が楽である。
・花を植栽し、新東名の開通時には一面の花でおもてなしをした。新東名の利用者と
の交流の最初の架け橋になれたと考えている。良い景観ができたので、ふじのくに
美しく品格のある邑を目指して取組を進めている。
・平成 23 年 12 月には県主催のモニターツアーに協力し、東京の会員制貸農園の会員
を招き、都市部に住む方の生の声を聴取した。本地域の農産物の認知度が低いこと
を確認し、広報の大切さを感じた。このほか、地元高校生の農業体験、アグリウォ
ーキングを実施している。
(2) 駿河湾沼津サービスエリア
(沼津市)
【新東名高速道路開通後の状況及びサービスエリアにおける店舗の出店状況】
・新東名高速道路は4月に静岡県内の御殿場 JCT から三ケ日 JCT まで開通した(全長
162 ㎞の同時開通は日本の高速道路で史上最長)。神奈川県側(御殿場~海老名)は
平成 32 年度、愛知県側(浜松~豊田東)は平成 26 年度の完成を予定している。
・山間部を通過しているため、構造物の比率が高い(東名約 20%、新東名約 60%)。
従来の高速道路と比べて急カーブや急坂が少ないほか、安全走行のための最新シス
テムを導入しており、これまで以上に安全・安心・快適でエコ運転が可能である。
・開通から1か月半の交通量は、東名・新東名合計で前年比2割増、東名は同4割減
である。平日は東名、休日は新東名の利用が多い。また、10km 以上の渋滞回数は
-7-
66 回から5回と約9割減少した。4月に東名で交通事故が発生して長時間の通行止
めになった際も、新東名への迂回により渋滞は発生しなかった。
・東日本大震災で高速道路施設が応援部隊の前線基地として機能したことを踏まえ、
ヘリポートの設置、自家発電・井戸の構築、防災備品の備蓄など、災害時の防災拠
点の機能を備えている。また、東名高速道路では法面を周辺住民の緊急避難場所と
して使用できるようにしている。遠州森町PAで急病人が発生した際もドクターヘ
リが出動し、迅速かつ適切な医療措置ができた。
・県内の7つのネオパーサは、各施設異なるデザインコンセプトでサービスを提供し
ている。累計入場者数は約 830 万人で、1 日平均では休日 27 万人、平日 12 万人。
新東名SA巡りなど新たな観光ツアーが生まれている。GW期間中の観光入込客数
は大幅に増加し、他県ナンバーの車も多く見られたという話を聞いている。
・駿河湾沼津SAは「リゾートマインド」をコンセプトとしている。上下線とも新東
名で海を見渡せる唯一のエリアであることを生かし、観光客がゆったりと過ごせる
空間で上質なサービスを提供している。入館者数はGW中に上下合わせて1日 13
万人という日もあったが、現在は平日で 1.8 万人、休日で 3.6 万人となっている(海
老名SAと同規模)。
・1階のフードコートで一番人気の店舗では、売上げが当初目標の9倍となり、GW
には 100 人以上の列ができた。また、土産物だけでなく鮮魚や野菜などを販売して
いる店舗もある。地元スーパーより安いマグロや、地元農家との契約栽培の野菜を
販売しており、普段使いで利用している地元客も多い。一方で、シャワーや休憩施
設などを用意したドライバーズスポットの利用率がなかなか上がっていない。
・2階はレストランとキャラクターカフェがあるほか、パウダーコーナーなどがある
プレミアムトイレも好評で、SA利用者の約半数が2階に来場し、予想以上に多い。
・休日の臨時出店による地場産品の販売を地元商工団体と検討しており、お盆を目処
に始めたいと考えている。
・駐車場「ぷらっとパーク」を設置し、一般道からのアクセスを可能としている。オ
ープンから1か月までは大渋滞となり、2時間待ちということもあった。駐車場を
約 120 台まで拡幅し、現在は平日・休日含めて渋滞なしで入れる状況。看板が少な
いという声があったので、増設、大型看板の設置を予定している。
・ドッグラン・ドッグカフェは地元の利用者が多く、高速道路利用者は1~2割程度。
ペットショップの売上は予想通りだが、カフェは若干苦戦と聞いている。
(3) 新富士IC周辺地域
(富士市)
【富士市の物流団地造成の取組及び「富士山フロント工業団地」の活用状況】
〔富士市の物流団地造成の取組〕
・「第二東名IC周辺地区土地区画整理事業」により、流通業務地の形成、住環境確
保などのための基盤整備を行い、流通業務機能が効果的に配置された新市街地の形
成に寄与することを目的として開発を行っている。
・開発する土地は新富士IC周辺の 45ha であり、当初は 72ha で計画されていたが、
事業の早期実施の必要性、同意率の問題から変更となった。
-8-
・市街地から東名、新東名までの距離が近く、縦に西富士道路が走っており、交通の
利便性が良い。西富士道路と新東名の交差するところに新富士ICが造られた。
・当初は組合を設立して事業を施行する予定だったが、組合では区画整理をなかなか
決められないこと、企業誘致の必要性があることを理由に、平成 17 年に富士市が
施行主体となった。
・平成 18 年に都市計画及び事業計画が決定されて、事業を開始した。事業期間は、
当初は平成 27 年度までの 10 年間だったが、進捗・移転状況を考えて、平成 32 年
度までの 15 年間に延伸している。
・全国レベルの企業の誘致には四角い3万㎡程度の事業用地が必要だが、ICの近く
でこの規模の土地はなかなかないので、道路をL字型に変更して対応した。
・土地利用は、流通業務地(トラックターミナルや倉庫等)、住宅地(2.7ha に集約)、
公益施設地(県工業技術センター、斎場、インキュベートセンター等)などを計画し
ている。住宅地のすみ分けは、平成8年2月に発足した住民組織「第二東名IC周
辺を考える会」とまちづくりを検討した際に考えられた。
〔「富士山フロント工業団地」の活用状況〕
・富士山フロント工業団地は、市内9社と富士市が設立した目的会社(富士総合開発
株式会社))により開発された、全 17 区画(総面積 43ha、販売面積 36ha)の工業
団地である。平成 21 年 9 月に完成した。
・土地が欲しい企業はすぐにでも欲しいため、リスクはあっても造成後に販売するレ
ディメイド方式とした。リスク回避のため、企業の進出意向を調査している。平成
19 年に着工した当時、17 区画中 15 区画で契約が成立していたが、引渡し前にリー
マンショックが発生して、機械、輸送機械、自動車産業用機械の企業が軒並みキャ
ンセルした。リーマンショックがなければ、通常は完売した物件である。当初は5
年で完売を目指していたが、10 年以内と変更した。現在は、9区画が引渡し済みで、
販売・予約済の土地は区画数で 53%、面積で 46%である。
・販売済9区画の業種内訳は、食品が3社、金属加工2社、紙加工1社、プラスチッ
ク1社、木材加工(住宅用建材)1社2区画。面積が一番大きいのは木材加工の2
区画合計 22,000 坪。企業の所在地別内訳は、富士市5社、沼津市1社、県外2社。
・富士山の伏流水に恵まれているため、食品製造業の進出が多い(弁当2社、豆腐1
社)。安定的・継続的な操業が見込めて雇用も発生するので、今後も食品、医薬品
産業の誘致を進めていきたい。
・販売価格は 96,000 円/坪前後である。10 万円を超えると買い手が付かないというコ
ンセプトで開発した。インフラが整備されているうえ、地価 15 万円程度の市街地
より 1.5 倍の土地が買える。
・企業側の進出理由は、大動脈の東名高速道路があること、大消費地である東京・神
奈川から 100 ㎞強であることなど、交通アクセスが優れていることが挙げられる。
新東名ICまでのアクセス道路 1.5km を平成 24 年度から建設中で、平成 29 年完成
予定であり、完成すると所要時間は5分となる。また、標高は平均 250m、地盤は岩
盤・溶岩で強度があり、進出用地の設定条件をクリアしている。大震災以降は高台
への避難に関する問い合わせがある。
-9-
・製造業の団地として開発したが、物流団地の完成があと数年かかることから、3ha
以上の区画の用地には物流関係の企業も進出できるよう用途変更を行ったところ、
2社から照会があり、予約に至った。
(4) 森町役場
(森町)
【新東名高速道路を活かした地域づくりへの取組】
・町内観光スポットを回って、とうもろこし、クラウンメロンなどの地域特産品が当
たるスタンプラリーを実施している。全 10 箇所のうち5箇所以上を回ることが応
募条件だが、10 箇所全てを巡った方もいる。
・遠州森町PAで、緊急雇用対策事業で臨時職員を雇用して、茶、とうもろこしなど
の地域特産品をPRしている。PRをした時点ですぐに高速道路を下りてもらえる
ということにはならないので、次に来てもらうためのPRである。
・観光客から「道路が分かりにくい」「どこに行ったらいいのか」という声があった
ため、案内看板の新設・修正や、パンフレットの新規作成・増刷を行った。
・遠州森町PAの面積は、上り線は 92,000 ㎡、下り線 66,000 ㎡とSA並みの広さと
なっている。大規模災害への備え、地域生活レベルの向上、救急医療支援、地域産
業活性化、観光資源活用などが期待される。平成 24 年の防災訓練では、ヘリポー
トでは搬送訓練が行われる。また、土地が広いため、中遠エリアの備蓄基地として
活用してはどうかと考えている。
・当初NEXCO中日本からは、上りPAには浜松SAが近いのでトイレと自動販売
機だけ置きたいという話があったが、現在、商業施設の売上げは見込みの 1.7 倍と
盛況であり、浜松SAに入れない方の休憩地となっている。
・NEXCO中日本からの要請に応えて、上りにはとろろ汁を扱っている袋井市のレ
ストランが出店している。地場産品も取り扱っており、現在もレタスやとうもろこ
しを使った商品開発に町と一緒に取り組んでいる。
・遠州森町PAにスマートICを設置中で、平成 26 年3月末に供用開始を予定して
いる。上り・下りでアクセス道路を共用できるため、町に移管された大規模農道を
橘円田線として整備し、主要道路である県道掛川天竜線まで誘導する。
・観光交流客数が前年対比 1.5 倍である。ゴールデンウィークは小國神社、アクティ
森の人気が高く、アクティ森は駐車場まで3、4時間待ちという状態になった。調
査したところ、1位は浜松、2位が静岡であった。新東名の開通で静岡は1時間圏
内になったことが大きく、名古屋、東京からも相当増えている。
・とうもろこしの人気が高く、遠方からのお客も多い。人気があるところは1日で
2,000 人が来ており、生産を2割増やしたが追いつかない。流通経路を経れば経る
ほどマージンがかかるが、生産者が直接売ればゼロであり、付加価値が大きくなる。
・森町は津波が来ないし、原発 30 ㎞圏外でもある。新東名・天浜線もあって交通の
利便性も高い。企業からは拡張したい、進出したいという相談があり、移りたい企
業が立地できるよう土地利用上の準備をしている。IC周辺の農振除外をどうした
らできるのか、それまで企業に待ってもらえるのかというところが課題である。従
前のように大規模な面積で大きな組立てをするではなく、ある程度付加価値の高い
- 10 -
ものを作る企業に日本に残ってもらうためには、自然環境が良くて、従業員が働き
やすくて通勤に困らないということが条件になるのではないか。
(5) 奥浜名湖観光協会
(浜松市北区)
【新東名高速道路開通による地域の観光施設の状況】
・「奥浜名湖」を統一的な名称として、歴史文化や伝統芸能、自然などを一体的にP
Rする必要があることなどから、奥浜名湖観光協会が設立された。もともと旧引佐
郡3町で年間 180 万人から 200 万人の観光交流人口がある。震災の影響などで減少
していたが、誘客につなげていきたいと考えている。
・旧引佐郡3町の名所である「湖北五山」のPRにも力を入れており、新東名開通と
ともに徐々に効果も出ている。
・竜ヶ岩洞は、新東名開通後は浜松いなさICが設置されてアクセスが向上し、4月
からの入場者数は前年を上回った。全般的には新東名を利用して来る観光客が増え
ていると思われ、開通後は豊橋、静岡以東のナンバーの車が増え、逆に名古屋ナン
バーの車は減った。また、三遠南信道路の区間が伸びた効果もあると思う。道路が
延伸すれば交流人口がさらに増えるのではないかと期待している。
・浜松いなさICから約 10 分のレストランもアクセスが向上したことで、来客は毎
月 10~15%伸びている。予約客は関東からが増えたが、中京圏は減っている。
・観光客のリピーター率は 60%である。お寺に代表される四季の変化や歴史を見るた
め、地域内、中京・関東圏から観光客が訪れる。投資して集客するのはリスクが大
きいので、湖北五山のようにいかに既存の資源を組み合わせて情報発信をするのか
が重要と考える。ばらばらの点で活動するのではなく、線、面として活動していき
たい。周辺の舘山寺や浜名湖中心部、天竜といった広域観光としての連携も必要だ
ろう。また、地域でのおもてなし、いわゆる地域力も高めていかなければいけない。
・浜松市内には、予定も含めると新東名・東名合わせて7か所のIC、スマートIC
がある。そのIC間のアクセス・流通を生かせば周辺地域の開発にもつながると思
う。新東名周辺の主要道路は東名との関連性・連携がなく、整備の目途も立ってい
ないようで、非常にもったいないという思いがある。主要道路の関連性を高めてい
けば、企業立地や災害時の対応など、地域の活性化にも高い効果があると思う。主
要道路の整備促進や土地利用の緩和などを考えてもらいたい。また、おもてなしの
ため、IC周辺に案内板や標識をもっと取り付けられるように考えてもらいたい。
(6) 磐田市役所
(磐田市)
【産業政策の取組状況】
・平成 17 年度以降、市内での企業立地件数は 60 件である。遠州豊田PA近くに工業
団地を造成したため、平成 19 年度が 19 件、20 年度が 13 件となっている。市内の
工業団地で現在売れ残っているのは、リーマンショックの影響でキャンセルとなっ
た福田の1区画だけである。
・新産業創出に関する取組では、EV産業の成長促進支援を目的として、コンバート
EV車の社会実証実験、電動バイクのモニター、インフラ整備などを行っている。
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また、中小企業を対象として設立された「磐田新産業創出協議会」が、地域資源を
活用した新たなサービスや新商品の開発を推進している。今後はスポーツ産業推進
事業、メガソーラーなどの新エネルギー産業の誘致を検討している。
・下野部工業団地は、開発面積約 49ha、工場用地約 23ha で、愛知県の企業が用地を
取得して平成 26 年度中の造成を目指している。開発はリーマンショック等による
経済状況悪化のため一時休止していたが、景気が上向いたことや、東日本大震災の
影響で沿岸部から内陸部への移転、進出が予想されることから、開発を再開した。
平成 21 年度に市と企業で「企業誘致に関する協定」を締結している。工事費用は
全て企業が出すが、市街化編入にかかる経費は市が出し、国等との協議は市が行う。
・新東名を活用した産業振興策として、新東名へのスマートIC設置を目指している。
周辺には大手企業が集積しており、新たな産業集積を図っていきたい。
・新平山工業団地南側の開発について可能性調査を行っており、市北部エリアに新た
な産業集積の拠点を検討している。
6 先進地調査(県外)
(1) 糸島農業協同組合/JA糸島産直市場伊都菜彩 (福岡県糸島市)
【交通の利便性を活かした事業の取組】
・糸島市は福岡県の最西端に位置する人口約 10 万人の市である。東西にJR、国道
202 号線と西九州自動車道が通っており、西九州自動車道沿線は福岡市のベットタ
ウンとなっている。
・干拓、殖産、耕地整理がされた中で農業が行われており、生産品目は多岐にわたっ
ている。園芸品目に力を入れ、採算性の高いものに誘導しており、JA糸島の合計
販売額は平成 23 年度に 100 億円を超えた。
・交通の利便性を利用した地域農業振興の取組として、平成 19 年に産直市場「伊都
菜彩」をオープンした。敷地面積は約2ha で、組合員の水田を買い上げて建設した。
建物面積は 2,440 ㎡、施設面積は 1,300 ㎡。
・開業の背景として、組合員数と収入の減少や大量流通、大量販売だけでは対応でき
なくなってきたことがあった。また、組合員に対して、「高齢化する農家組合員や
女性の担い手が活躍できる場」、
「中間流通コストを可能な限り削減し、農業所得の
向上を図る場」など、5つの場づくりの役割を持っているほか、JA糸島のファン
づくりの場としての役割もある。
・会員数は約 1,400 名で、JA糸島かJF(漁協)糸島の組合員であることが資格で
ある。1日当たりの出荷者は 650 名~700 名、地場産品率は年間で 97%である。基
本的には、組合員には売れるものを作ってもらっているが、夏場の果実など例外的
にこちらからお願いして出荷してもらっているものもある。あらゆる食材を調達で
きることが強みであると考えている。
・手数料は売上高の農産物が 15%、加工品・工芸品が 20%であり、手数料で全ての
運営を賄っている。手数料とは別に 0.3%の運営費(残留農薬検査など)がかかる。
・来店客数(レジ通過者数)は、平成 23 年度は約 127 万人であった。利用者は3割
が市内、7割が市外である。自動車で1時間が商圏であり、福岡市全域が入る。特
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に都市高速道路の開通により福岡市南部からのアクセスが良いことや、糸島地区が
地元マスコミに取り上げられることも大きい。
・平成 23 年度の売上金額は税込で約 35 億円と、開店以来右肩上がりである。ポイン
ト制により還元を図り、リピート客を呼び込んでいる。販売高ベースの商品構成は、
農産物が 42%、加工品 23%、畜産物 12%、鮮魚類 17%となっている。
・個人の売上は、肉類で 5,000 万円の方が最高である。農産物(野菜や花卉)では 2,000
万円以上の方が 10 数名、1,000 万円以上の方が 50 名程度いる。
・現在の糸島市は、企業誘致を行って税収や雇用を伸ばすところと、農業振興を行う
ところをすみ分けして、両方を促進していくようにしていると思う。
・POSシステムで商品管理と代金清算を行っている。会員には、「売上情報」、「来
期(次期)に向けた情報、いつ、どの時期に、どのようなものが売れたのか」、
「代
金清算」をメールで行っている。
(2) 大分大山町農業協同組合/木の花ガルテン (大分県日田市)
【都市との交流拠点づくりや交通の利便性を活かした取組】
・大山町は、平成 23 年度末総戸数 1,000 戸、人口 3,244 人の地域である。JA大山
町は昭和 30 年代から、収益性の高い梅・栗を植えるなど、農家経済の立て直しを
行ってきた。昭和 50 年代からは安全、安心な農産物の栽培のため、キノコ栽培の
工場から出るオガクズを有機肥料に変えて、続けて使用している。
・農産物の種類が多く、市場向けの生産分だけで 150~160 品目ある。
・木の花ガルテンは農産物の産直市場であり、大山町の本店以外にも、大分県・福岡
県に合計8店舗ある。リーマンショックの影響で売上げが一時減少していたが、23
年度は増加して 15.5 億円となっている。第1号(大山本店)を開店した当時は直
販施設がなかったので、組合員等からは不安視する声があった。
・農産物出荷の際の手数料は、奨励金を差し引くと約 20%である。JA大山町として
は、店舗のテナント料、運送代金を引くとほとんど赤字に近い。レストランなど利
益率の高い事業で補填しているのが実情である。
・どこの企業と組むのか、高速道路を利用して集荷から店舗までどのくらいの時間が
かかるかを出店時の判断基準としている。周りの意見も聞きながら、自分で車を運
転してルートを検討した。
・各店舗にトラックを1台配車している。どの店舗に配送する際も、割引時間が終了
する直前に高速道路に入り、10 時 10~15 分に店舗に到着するようにしている。農
産物は基本的には朝、前日であれば温度が下がる日が落ちてから収穫する。
・オーガニックレストランを大山町本店のほかに福岡市、大分市に1店ずつ3店舗有
している。開店の際は様々な意見があったが、地元の人たちが作ってきたものであ
れば、プロの料理人にも負けず、ここでしか食べることができないものになると考
え、郷土料理中心のバイキングレストランとした。運営は農協が行っているが、調
理は地元農家の 65 歳以上の女性が担当している。メニュー(60~70 品)は任せて
おり、その日の出荷農産物で決まるので、どんなメニューが並ぶかはその日になら
ないと分からないことが、成功の秘訣ではないかと考えている。
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・人件費や野菜の皮むきなどで出た産業廃棄物の処理費などのコストは大山町が最も
安いため、大山町本店で3店舗分の野菜の皮むき等を一括して行い、残渣は農協の
工場で堆肥としている。
・後継者は少ないが、最近は他地域から農業者として移ってくる人がいる。年金受給
者が農業で 200~300 万円の収入を得て暮らそうと思えば、素人でも比較的簡単に
実現する仕組みはある。
・この地域は現在、直販所の激戦区であり、直販所事業だけでは今後不安があるため、
次の展開として「五馬媛(いつまひめ)の里」を計画している。自己資金で山を購
入し、手作りの農業テーマパークづくりを目指している。
(3) イオンアグリ創造(株)大分九重農場 (大分県九重町)
【農場運営事業に関する取組】
・イオンアグリ創造は、高齢化による後継者不足、耕作面積の減少、企業の農業参入
障壁の緩和などを背景に農業に参入したイオンの 100%出資子会社である。8箇所の
直営農場の運営と、優良なプロ農家への生産委託を主要事業としている。売上高は
現在約 20 億円、2020 年には 1,000 億円を目指して拡大を続けている。
・直営農場の農地面積は最低 10ha を考えている。大分九重農場は現在使用中の農地
が5ha で、最終的には 30ha まで拡大していきたい。
・農場長の平均年齢は 20 代後半と若いが、パートの方は年齢制限がないので、地域
の雇用にもつながっている。牛久農場には 80 代の方が勤めている。
・イオンが販売する農産物はいつでも価値が高いとお客様に評価してもらえるように
なること、地域社会に貢献することをビジョンとしている。
・適切な農場管理と食の安全安心・環境保全を確保するため、グローバル GAP(Good
Agricultural Practice=適正農業規範)に則った運営を目指し、全直営農場での
取得を目指している。GAP を守った安心・安全な作物の栽培を目指しており、生産
過程の記録、出荷時のコンテナ使用等のルールをつくっている。関東地区の全農場
は取得しており、当農場でも今秋中の取得を目指している。生産委託を行っている
農家にも3年以内の取得をお願いしている。
・直営農場は発展途上であり、品質・数量・価格の面で、安定供給に関してはまだ課
題がある。
・出荷は、週別、サイズ別に計画を立て事前にイオンのバイヤーと相談している。午
前に収穫し、午後に物流拠点に届き、翌朝に店舗に並ぶことを理想としている。収
穫予定日から店に着く日を逆算し、鮮度を上げるようにしている。
・農場近くのイオン店舗への納品を終えて空になったトラックが農場へ行って野菜を
積み込んで、イオンの物流拠点まで戻ってもらうことで、運賃・資材を合わせてお
およそ1ケースあたり 50 円削減している。
・生産した野菜はイオングループの会社に販売され、その先で委託先が加工し、イオ
ンに出荷され、プライベートブランド「トップバリュ」として販売されている。低
価格で仕入れた商品をグループに供給し、生産コストを明確にすることで、加工原
料のコストを下げている。
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・物流拠点では野菜のカットまで行うことで、早朝からのカット野菜の販売を可能と
している。店内での加工を極力減らすようにしている。
(4) 佐賀県庁 (佐賀県佐賀市)
【企業誘致の取組】
・平成 23~26 年度で企業進出件数 60 件、新規地元雇用者数 3,600 人、新産業集積エ
リアへの大規模立地2件を目標としている。成長分野産業や内需型産業の誘致、新
産業集積エリアへの誘致のほか、立地企業の安定操業(撤退防止)対策を行ってい
る。近年の県内進出企業の特徴として、物流業やコールセンターが多い。
・企業誘致では民間人材を活用していて、企業とのネットワークを持っている方を高
待遇で雇用している。評価は誘致件数だけでは難しいので、訪問実績のチェック等
を行い、勤務評価が良ければ雇用期間に制限を設けていない。
・新産業集積エリアは 20ha 以上の開発を条件としており、以前は県単独で開発して
いたが、平成 19 年度から県・市共同で開発している。開発地は地域間のバランス
を考慮して決めているが、市町が申請して県が承認する形をとっており、申請には
全地権者の同意が必要である。現在2か所を分譲中、3か所を開発中で、分割では
なく一企業への分譲である。農政局との協議には2年程度かかる。担当に週1回は
行くよう指示しており、県の農地担当部署にも入ってもらっている。
・新産業集積エリア以外の開発は市町が実施し、県が支援している。一定規模の開発
であれば農政局との協議に県も加わるし、県への手続きがある場合は全て、企業立
地課が関係課との間に入ってフォローする。
・県の特徴ある取組として、リース方式のオフィスビル整備があり、大規模コールセ
ンター(雇用 500~700 人)の誘致を実現した。また、1ha あたり 100 円でのリー
ス制度を導入したところ、工業団地の立地率が 57%から 85%に伸びた。
・県の誘致担当職員が異動後も企業との窓口を継続し、進出後も企業が安心して相談
できるようフォローする「企業永続支援員(パーマネントスタッフ)制度」も行っ
ている。
・佐賀県は地震の発生率が全国一低く、南海トラフ巨大地震の被害想定では佐賀県が
九州で唯一被害なしということもPRしている。
【東部地域のまちづくりへの取組】
・広域的な観点から地域づくりの将来像を検討し、円滑な広域調整を目的として、県
内5地域で「地域マスタープラン」を策定している。これは都市計画法の「都市計
画区域マスタープラン」の上位に位置付けられる、県独自の取組である。
・県全体で人口減少が続く中、東部地域は内陸型工業・物流関連の企業立地が進み、
人口が増えており、今後も伸び続ける見込みである。生活圏は鳥栖市を中心として、
県外の久留米市なども含めて形成されているほか、佐賀市や福岡市とも結びつきが
強い。広域交通基盤に非常に恵まれており、鉄道・道路の結節点であるほか、空港
や港にも近い交通の要衝である。
・東部地域マスタープランは「インタークロスシティ」をコンセプトとして、具体的
な将来像として「九州の流通を担う国内有数の内陸交通拠点の形成」を掲げている。
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地域のポテンシャルを生かし、付加価値の高い新たな産業創出・集積に向け、産学
官連携による研究開発の推進を目指している。地域整備の基本方針としては、交通
の要衝である立地ポテンシャルを生かした産業、研究・開発等の活力ある地域づく
りなどを挙げている。
・生活面では鳥栖駅・新鳥栖駅の周辺地区を拠点性が高いエリアとして考え、産業面
では久留米市や小郡市も含めた地域一体を新産業創造エリアとしており、特に新鳥
栖駅周辺はビジネス支援産業、ライフサポート産業等に関連するオフィスの立地を
促進し、優良農地が広がる南部地域は環境に調和した産業集積を目指している。
(5) グリーン・ロジスティクス・パーク鳥栖/日本生協連鳥栖冷凍流通センター(佐賀県鳥栖市)
【物流拠点への進出の企業状況及び流通センターの事業内容】
〔グリーン・ロジスティクス・パーク鳥栖〕
・鳥栖IC近くに位置する物流団地である。九州地域の物流拠点として、食品、医薬
品、電化製品など様々な業種の物流センターが立地している。
・旧運輸省の「物流ネットワークシティ構想」第1号整備地区として承認されたが、
もともとこの地区は優良農地だったため、農政局との協議に非常に時間がかかり、
都市計画の基本計画が決定するまでに9年間かかった。
・流通業務市街地の整備に関する法律に基づき、農地転用の協議は、都市計画事業と
して行った。市街化区域への編入は、流通業務団地地区としての都市計画の決定手
続の中で進めた。製造業は立地できないが、簡単な作業は可能である。
・土地の単価が安く、企業からの要望が非常に強かったため、予定より1年前倒しで
公募を開始した。合計 36 社が立地しており、分譲率は 97.5%である。残り1区画も
話がまとまる見込みである。
・自社で土地購入・建物建設まで行う企業以外に、最近では土地を借りてセンターを
建てるノンアセット型の企業が多い。
・立地企業のニーズを把握して、団地内には共有スペースのトラック待機所(52 台分)
を設置している。また、ATM機能付のコンビニを誘致している。
〔日本生協連鳥栖冷凍流通センター〕
・株式会社シーエックスカーゴは、日本生活協同組合連合会 100%出資の子会社で、生
協商品にほぼ特化して全国で物流事業を行っており、日本生協連鳥栖冷凍流通セン
ターを運営している。
・鳥栖冷凍流通センターは、平成 22 年に稼動した九州エリア生協の冷凍食品の物流
拠点である。在庫、店舗通過、宅配事業セットの3つの機能があり、共同活用によ
る配送費の削減、庫内運用の効率化によるコスト削減や、商品調達から集品・支所
配送まで温度管理を徹底したコールドチェーン物流の確立をねらいとしている。
・在庫センターでは冷凍での管理が必要な商品を保管し、店舗通過センターでは各メ
ーカーから納品された商品を仕分し、九州の店舗に出荷している。宅配事業セット
センターでは個人組合員別の仕分・出荷を行っており、月間で約 470 万点の商品を
出荷している。マイナス 20 度以下の冷凍環境下の仕分けラインにより品温管理を
向上させているほか、機械化により仕分けのミスを極力減らしており、誤集品率は
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100 万分の1桁台である。
(6) 鳥栖北部丘陵新都市/佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター(佐賀県鳥栖市)
【研究開発型企業を対象とした産業拠点にあるセンターの事業内容】
・鳥栖北部丘陵新都市は、鳥栖IC近くに立地する、研究開発型企業を対象とした産
業拠点である。工業用地のほか、周辺には住宅用地が整備されており、九州最大級
のアウトレットモール「鳥栖プレミアム・アウトレット」もある。
・鳥栖北部丘陵新都市内に立地している「九州シンクロトロン光研究センター」は、
地域産業の高度化と新産業の創出を目指して応用研究を行う県の研究機関である。
・シンクロトロン光は、医療用のX線の 1,000 倍以上の明るさで、レーザーのような
鋭い指向性があり、光の広がりが非常に小さいため、素材、電池、農林水産など幅
広い分野において分析・解析や加工・照射の技術開発に利用されている。
・センターは産業利用を主目的としており、シンクロトロン光を用いた原子・分子レ
ベルの分析や微細加工の技術の研究開発拠点として、太陽電池材料、触媒材料、農
水産物の分析・加工法などを提供し、イノベーションの創出に貢献している。
・シンクロトロン光を光源装置で発生させて、利用に当たってはビームラインで必要
な波長分を取り出す。6本の県有ビームラインを設置し、団体や企業が利用してい
る。また、大学や企業などの外部機関によるビームラインも設置されている。
7 参考人の意見
(1) 一般財団法人静岡経済研究所 専務理事 中嶋 壽志 氏
【新東名の活用と地域振興】
〔新東名を見る7つの視点1-総合インフラとしての新東名〕
・新東名は単なる道路インフラではなく、観光、産業、物流、工業、安全のインフラ
でもあり、総合インフラとしての機能を発揮している。例えば、新東名は地形上の
制約で非常に構造物が多いため、橋やトンネルには非常に高度な技術が使われてい
る。ライトアップなどにより地域のランドマークにすれば、人を呼び込むインフラ
にもなり得る。
・ネオパーサ7施設の最初の3か月の利用客は 1,300 万人と、県内最大級の商業施設
をも上回る規模であった。NEXCO中日本は、SA、PAを単なる休憩施設では
なくて、利用者の目的地となって収益を上げられる施設としていると思われ、高速
道路でつながれた1つの擬似的なショッピングセンターといえる。工業でも同じよ
うに新東名沿線上で比較的狭い土地でも分散して工場を立地させ、道路でつなぐこ
とによってより大きな擬似的な工場、生産体制を築くようなことも考えられる。
・新東名ではICだけではなく、SA、PAも地域との接点になり得る。スマートI
Cを導入していない施設でも、「ぷらっとパーク」から高速道路を使わずに施設に
入れるようになっている。また、コンビニが近くにないような山間地域を通ってい
るので、地域の住民にとっても重要な接点である。
〔新東名を見る7つの視点2-再認識すべき現東名の価値〕
・新東名開通後3か月で、新東名・現東名で発生した渋滞は計5回であり、現東名1
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本のときだった同時期の 71 回よりも激減している。また、内訳は新東名4回、現
東名1回であり、現東名のほうが渋滞の少ない道路になった。企業立地の観点でも
う一度見ると、現東名の優位性が増していると見ることができるのではないか。
〔新東名を見る7つの視点3-定時性の確保〕
・現東名のみのときは、年間 2,500 回も渋滞が発生していたため、定時性を確保でき
なかったが、新東名開通後は、県内に限っては渋滞がほぼゼロに近い状態になって
いて、定時性が確保される道路のネットワークを持つことができた。
・NEXCO中日本がSA、PAを各地に展開しているように、各地の小さな敷地に
工場を分散立地させて、道路でつなぐことにより、1つの大きな工場として擬似的
に捉えて生産体制を築くといった、定時性の確保を利用したアイデアもある。
〔新東名を見る7つの視点4-スタートダッシュは新サービスを生かせ〕
・「まるごと静岡ドライブプラン」の利用はあまりなかったが、現東名・新東名の総
通行量は、現東名だけのときに比べて 14%ほど増えており、非常にうまく利用され
たと言える。
〔新東名を見る7つの視点5-新東名はまだ発展途上〕
・2年後には愛知県側、その先には神奈川県側が開通するし、南北交通でも中部横断
自動車道、三遠南信自動車道がつながるため、静岡県の交通網はさらに大きな効果
を発揮できるようになると思われる。特に中部横断自動車道が完成すると、南北で
は新潟県までつながるだけでなく、首都高速道路を通らないで北関東とも直結でき
るため、非常に意味のある交通網になると思われる。
〔新東名を見る7つの視点6-物流拠点としての価値上昇〕
・国内での工場立地が厳しい情勢の中、物流産業はある意味内需型であるうえ、物流
は企業にとっても収益を生む重要な要素である。物流センターが造られて、新規雇
用が 1,000 人生まれた事例もある。また、土地効率は製造業よりも良い。
・現在の物流拠点は基本的に集約が進んでいる。今までは都市単位で物流センターや
営業所が置かれていたが、200km 圏程度をカバーする物流センターに集約されてい
る。静岡県に 200~300km 圏をカバーする大規模物流センターが整備されれば、関
東・中京・関西・北陸辺りまで、国内総生産の7割を占める地域をカバーすること
ができ、静岡県は日本の物流のハブ機能を果たす可能性がある。
・物流基地を集積させていくことで、港での輸入製品の荷揚げなど、県内の港湾や空
港の利用にもつながってくる。
〔新東名を見る7つの視点7-新東名は「諸刃の剣」
〕
・新東名は交通のネットワークなので、メリットでもあればデメリットにもなる。2
年先に愛知県側が開通するまでに先手を打つのが非常に重要で、新たなチャレンジ
が起こることで地域の活力となり、中山間地の活性化につながるのではと考える。
〔新東名の開通効果〕
・アンケート結果によると、渋滞や通行止め等を気にせず安心して出掛けられるよう
になった、災害時の輸送路や防災拠点が確保され安心感が増した、運転時の疲労感
が少なく出掛けやすくなった、といったことについて回答が多かった。
・また、整備効果として特に大きいのが走行時間短縮効果で、移動速度が上がったこ
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とによる便益は 146 億円と試算された。
〔提案1 上限速度の引き上げ〕
・新東名の制限速度を時速 120km にすることで、時間短縮効果の便益は 275 億円と現
在の2倍以上になる。
・引き上げには費用がかからないほか、日本初の制限速度 100km 以上の道路として話
題性も非常に大きいし、スピードが上がることによる経済効果もある。
〔提案2 SA、PAの周辺開発〕
・開通3か月で 1,300 万人という大勢の利用者向けにビジネスをしないのはもったい
ない。そのためには、利用客をSA、PAから外へ出さないといけない。
・利用客を車ごとSA、PAの外に出すのはなかなか難しいので、当面はSA、PA
から歩いていける範囲を活用したビジネスモデルを、民間がもっと考える必要があ
る。今まではあまり注目されなかった資源をうまく活用して、まずは徒歩圏、さら
にその先へと誘引していけば、結果として中山間地域の活性化にもつながる。
〔提案3 象徴となる物流センターの誘致〕
・物流は今後非常に期待できる分野なので、象徴となる物流センターをトップセール
スで誘致することが必要である。輸入品を扱う物流センターが立地すれば、清水港
や御前崎港を使うことにもつながる。静岡県に立地するメリットを前面に押し出す
戦略が必要である。
〔提案4 中山間地域の振興〕
・新東名開通により、中山間地域は初めて高速交通網と非常に近いところで接続でき
るようになり、新しいビジネスを生む苗床のような機能を果たしていく必要がある。
・沿岸部と内陸部が共存できるよう新しいビジネスモデルを考えていかないといけな
い。グリーン・ツーリズムを例に挙げると、静岡県では都市部からのお客が多いが、
新東名開通で首都圏からより短時間で来られるようになったのは大きなメリット
である。中山間地域での農家宿泊や農作業体験だけではなくて、平野部や沿岸部の
施設への観光なども組み合わせて、地域を回遊してもらう方法を考えていく必要が
ある。
(2) 静岡県農業協同組合中央会及び清水農業協同組合
静岡県農業協同組合中央会 専務理事 杉山 克明 氏
【JAグループの地域振興(中山間地)に対する考え方】
・内陸フロンティア構想の認識がまだ不十分で、何を捉えて「内陸のフロンティア」
というのか、よく分からないというのが実態である。イメージが先行しているよう
であり、その方向性がわからないというのが率直な感想である。
・各市町から総合特区の申請が出されているが、中山間地の優良農地が特区により安
易に農業以外の利用に供することにならないか心配をしている。中山間地域の経済
性、効率性は当然であるが、それ以外に国土の保全、文化の継承といったものを十
分踏まえた開発をしていただきたい。
・そういう意味では、現在、県が進めている「ふじのくに美しく品格のある邑づくり」
は、地域自らが主体的に魅力ある地域づくりに取り組んでおり、中山間地域の振興
- 19 -
の範になると評価している。
・安易な農地転用が行われることを大変心配している。構想を進めるに当たっては、
地域住民の意思を最優先で尊重していただきたい。そして、地域が元気になる、地
域の活性化につながるような振興についてぜひ議論してもらいたい。
・JAグループも、地域の農業振興につながり、地域の皆様が前向きに取り組んでい
けるものであれば、地域の一員として積極的に取り組み、関与していきたい。
清水農業協同組合 常務理事 望月 潔 氏
【JAしみずの取組事例】
・地域の農業振興を使命とし、農は国の基という強い信念をもって事業に取り組んで
いる。平成24年11月にJAするが路と合併し、組合員総数2万4600人となった。
・農産物販売高は、かつて100億円を超えたこともあったが現在は42億円である。主
要農産物は、販売高の高い順にミカン、お茶、イチゴ、枝豆、トマト、バラである。
・管内で農地の大規模基盤整備を推進し、400haを造成中である。
〔原・新丹谷グリーンニューディール検討会〕
・平成23年2月に設立され、原土地改良区、新丹谷土地改良区、JAしみず、静岡市、
静岡県中部農林事務所を構成員としている。
・新東名を活用した産地強化・消費拡大・交流促進・雇用創出をねらいとして、大規
模経営に取り組む元気な担い手の育成、地域資源を活用した新たな農業展開を検討
してきた。
〔庵原オレンジフロンティア推進協議会〕
・前述の検討会を進めていく中で、新東名開通を契機に平成24年7月に設置した。
「地
域の皆で地域の将来を考え、構想をつくろう」を主旨として、農産物・農業・近隣
の海産物、風景、新東名、歴史などの地域資源を使って地域を活性化していく。
・構成員は前述検討会のメンバーに加え、JAしみず庵原地域運営委員会、庵原地区
連合自治会、庵原身近なまちづくりフォーラム、庵原管内の二本松土地改良区、吉
原土地改良区、尾羽土地改良区である。
・平成24年から25年にかけては将来構想、事業計画を策定し、平成27年から段階的に
実施していく。
〔ミカンオーナー事業〕
・都市農村交流事業として、清水ミカンのブランド化と新たな農業展開を目的とした
ミカンオーナー事業を始めた。JAしみずが事務局となり、ミカン農家12戸でスタ
ートした。好評で、100組の予定に対して110組の応募があり、締切り前に完売した。
申込み者の内訳は、静岡市内49組、静岡市外の県内47組、県外14組である。
〔清水庵原地区での総合特区への取組〕
・地域資源を活用した新しい産業の創出・集積では、6次産業化、県産品のブランド
化、ふじのくにの食の都づくりを、新しいライフスタイルの実現の場の創出では、
エネルギーの有効利用、地域資源を生かした交流の促進を中心に取り組んでいく。
・平成29年には、中部横断自動車道が完成予定で新清水JCTにつながるほか、東名
高速道路ICのアクセス道路として清水富士宮線も整備され、中部横断道へつなが
- 20 -
る。こうしたインフラ整備を活用して、中山間地及び管内の農業振興につなげてい
きたい。
・JA拠点施設を設置して事業を展開していくほか、道の駅の誘致を検討している。
また、県の果樹研究センターも移転してくるので活用していく。
〔庵原地域における構想のスケジュール〕
・平成24年から平成29年までの構想である。
・次世代型市民農園開設事業では、トイレが都市農村交流の必需施設であると考え、
設置に向け取り組んでいく。ミカンオーナー事業は、平成24年の実施内容を検証し、
規模を拡大していく。将来的には他事業との連携、宿泊機能にも発展していけばと
考えている。
・交流拠点施設開設事業では、可能であれば道の駅の開設につなげていきたい。JA
拠点施設の場所は決定しており、管内の農産物を宣伝、販売していく。日本平が見
える眺望の良い場所なので、ミカン以外の農産物でも、オーナー事業や体験農業に
つなげていきたい。
・総合特区関係では、農業振興をするために、様々な特例措置・支援措置を活用した
総合特区の展開ができればと取組をしている。
〔主な今後の課題等〕
・ここの農地は、区画整理をして、長い年月をかけて基盤整備を行っているので、農
地は農地として活用するということで事業をしてほしい。第2次、第3次産業にも
良い影響を与えると考える。
・各種の土地利用規制がある複雑な地域なので、農地法、農振法、都市計画法等の柔
軟な運用ができればと考えている。
・平成29年には中部横断自動車道が開通する予定なので、スピード感をもって事業を
実施していきたい。
(3) 一般社団法人静岡県建設コンサルタンツ協会 副会長 藤山 義修 氏 ほか
【新東名等のIC・SA・PA周辺の土地利用】
・「内陸のフロンティア」を拓く取組については、新時代の安全・安心で魅力ある地
域づくりを実現するために、取組の推進に期待をしている。目標を達成するための
一つである新東名高速道路IC、SAやPA周辺での新しい産業の推進のためには、
将来ビジョンのもと、開発的な土地利用がポイントであると考えている。
〔IC周辺の開発的な土地利用の実績〕
※遠州豊田PA周辺土地区画整理事業
・交通インフラ(スマートIC)を有効に利用した土地利用、土地開発ができた。
・都市計画関連と農地利用関連の調整事項が多く、時間がかかることが予想されたた
め、関係部署が一同に集まって調整し、実質的なワンストップサービスにより、事
業の円滑化を図ることができた。企業誘致については、土地情報を発信するだけで
はなく、積極的にコンペを実施し、進出企業を特定した。
※焼津市の八楠土地区画整理事業
・国道150号バイパス、東名高速道路の取付道路の4車線化、環状線的機能を有する
- 21 -
主要幹線道路の整備に伴う交通渋滞の緩和、隣接する2つの地区の土地区画整理事
業の完成による交通ネットワーク化が図られた。防災面では、河川改修や地区東部
の低い部分のかさ上げを行った後は、浸水被害は発生していない。市の適切な土地
利用のために定めている特別業務地区に指定され、地区を住宅・商業・近隣商業・
工業の4つに分け、適切な土地利用を誘導している。
・土地区画整理事業では、地権者の将来計画に対する共通認識と合意形成が必要であ
り、開発者の努力が求められる。
※新富士裾野工業団地整備事業
・交通の利便性、豊かな自然、水が豊富という恵まれた立地環境を生かして、新たな
産業拠点をつくろうと工業団地が造成された。
・レディメイド方式。いわゆる分譲型で、4つの区画を造って企業立地を図った。
・4区画全てで企業立地が行われ、4つの事業所の従業員数は600人を超え、そのう
ち地元雇用が約50人、将来的には800人以上という計画である。地域の知名度アッ
プや従業員の増加により、地域経済の活性化が図られたという効果があった。
・裾野市、県企業局で事業を行った。都市計画法の改正前で面積の一定要件もなかっ
たので、開発行為許可権者との開発協議により造成が可能であった。また、企業局
による公共事業であるため、農地転用の許可が不要であった。
〔内陸部の土地利用に関する課題〕
・新たな企業誘致を進めて、地域を活性化していくことが大きなポイントである。内
陸部は農地、森林が多く、市街化調整区域となっていて、既存の土地利用を保全す
る位置付けであるため、開発しようとしても、法改正等により難しい状況となって
いる。
・都市計画法の改正(開発許可制度に係る部分は平成19年11月施行)により、市街化
調整区域での大規模な開発を許可できる基準が廃止され、5ha以上の面的な開発は
実質的にできなくなっている。それに加えて、平成21年の農業振興地域に関する法
律、農地法の改正により、農地を保全する傾向が強くなった。大規模集団農地や農
業事業で投資された農地は、農用地区域の除外や農地転用ができなくなっている。
・既存の東名高速道路は開通以来、日本の高度成長期を支える都市の基軸として発展
し、周辺は市街化区域として都市が発展した。新東名開通後は、新東名のIC、S
A、PA周辺を、ビジョンに基づき活性化していくことになると思われる。
・こうした中、大規模開発を可能とする手法は二つある。一つは市街化区域への編入
で、手続は難しいが、都市計画法上の調整を行い、編入後に土地区画整理事業等で
大規模開発を行う手法である。もう一つは、市街化調整区域のまま開発を行う方法
である。しかし、実質的には、市街化区域に設定しない限り、大規模で面的な開発
ができない状況なので、「内陸のフロンティア」を拓く取組で内陸部を開発する場
合は、市街化区域に編入していくことが考えられる。
〔市街化区域への編入のポイント〕
・前提としては、上位計画の位置付けがあること、農業、林業サイドとの調整が図ら
れる地域であること、地権者や地域住民が開発に対し、意欲があり合意が取れるこ
と、保全、防災的な面で調整が取れるといったことがある。
- 22 -
・条件としては、検討する区域は50ha以上で、条件を満たせば20haを目途として設定
できること、事業着手が確実な事業(進出企業が決まっているなど)であること、
地権者の全員が合意していること、近隣市町や関連機関との調整が済んでいること、
上位計画に位置付けされ、行政方針が明確化されていることが挙げられる。
・調整事項としては、農業調整が一番大きな課題であり、農振除外、農地転用など農
業事業との関わりの調整、下流河川への影響などの治水協議、廃棄物や公害問題な
どの環境協議、保安林、民有林があれば林業調整が必要である。
・さまざまな法規制の中で調整をしながら事業を進めていくことから、多くの時間を
費やし、結果として調整がつかなくて先に進まないといった状況もある。
・調整の際は、都市計画法、農振法、国土法と各種法律の中で調整があり、都市計画
法の調整結果をもとに、国土法や農振法でも調整するといった横断的な調整をしな
ければならないため時間がかかる。また、県決定、国同意なので、県の中でも横断
的に対応していくことで進めやすくなる。手続のスケジュールは大体1年ぐらいか
かる。
・調整をクリアするためには、事業の確実性として、進出企業、規模、スケジュール
といったものが明確であることに加え、事業者だけではなく、県・市町の後押しが
重要である。
〔浜松市の未来創造「新・ものづくり」特区での協議結果等〕
・浜松市では、
「市街化調整区域における農業と工業のバランスある土地利用の実現」
という目指す特区の姿の中で、土地利用の規制に関する提案事項を「農業振興に資
する施設の農用地区域の除外要件の拡大」、
「市の土地政策に合った農用地区域の除
外」など5項目を申請した。内閣府の見解が出て、土地利用規制に関する国との一
括協議の場を持つことは調整されたが、規制自体の緩和には至っていない。
・平成23年12月に国の特区の指定を受け、平成24年7月に規制の協議が、同年10月に
財政上の協議が終了している。今後、協議を取りまとめて特区の整備計画をつくっ
た中で、認定を受けて事業開始となるが、協議は引き続き行っていくようである。
〔「内陸のフロンティア」を拓く取組を推進するための提案〕
・事業を推進するためには、関係機関が事業の確実性のもと、スピード感をもって進
めることが重要である。
・提案の一つ目は、事業の確実性を高めるため、企業を誘致するための情報発信に努
めることである。事業の確実性は開発の許可を取る上での一つの要件にもなり、場
合によっては、申請の際に企業進出の具体的な内容まで求められることもある。こ
れは、事業者単独では難しいので、県・市町が協力して優良企業誘致のために情報
発信に努めることも重要であり、そのためには、企業訪問、起業家の育成、シティ
プロモーション、各種の優遇措置といったものを充実させることが重要である。
・二つ目は、事業の速効性を高めるため、ワンストップサービス体制を整備すること
である。都市計画法、農地法など複数の許可手続が必要になってきた場合、行政が
一括で扱えば、事業の迅速化も図れ、一連の手続がスムーズになり、業務の効率化
も図られる。プロジェクト室などを設けることによって、相互に関連する法制の手
続や技術的対応を横断的に進められ、行政側のワンストップサービスが可能となる。
- 23 -
8
提
言
以上の調査結果を踏まえ、当委員会として次のとおり提言する。
県は、平成 23 年の東日本大震災以降、防災や減災に対応した国土利用が強く求め
られる中、新東名高速道路の開通を契機として、「安全・安心で魅力ある“ふじのく
に”の実現」を目指す「内陸のフロンティア」を拓く取組を推進している。
南海トラフ巨大地震の被害想定では、県内の被害は東日本大震災をはるかに上回る
規模になるとされている。また、東名高速道路や東海道新幹線など、県内沿岸部の交
通インフラが分断された場合は、日本経済は壊滅的な打撃を受ける。
こうした状況の中、昨年4月に県内間を開通した新東名高速道路は、津波のおそれ
のない内陸高台部を通る高速道路であり、東名や主要幹線道路の代替路・緊急輸送路
の役割を担うことが期待されている。
「内陸のフロンティア」を拓く取組は、大規模災害への備えを喫緊の課題として、
防災・減災機能を充実・強化させることを第一の目標として進められている。昨年9
月には全体構想(総論)を取りまとめるとともに、国へ総合特区の指定申請を行った。
全体構想の明確な位置付けや各論の取りまとめがされていない段階ではあるが、現
状を踏まえ、提言とした。
提言1
(1)
事業の進め方
総合計画との整合性及び予算措置
県は静岡県総合計画として「富国有徳の理想郷“ふじのくに”のグランドデザ
イン」を策定している。
『「内陸のフロンティア」を拓く取組(以下「構想」とい
う。)』は重要なテーマであり、総合計画に、より明確に位置付ける必要がある。
また、人口が減少し高齢化が進んだ現状や現在の経済状況では、大幅な税収の
増加が見込めない中、計画的な予算配分とするなどにより財源を確保し、実効性
のある構想とすべきである。
(2)
取組姿勢
構想は、防災・減災機能の充実・強化を基本目標の一つとしており、危機管理
体制の強化、災害に強い地域基盤の整備などを掲げている。
大規模災害から一人でも多くの県民の生命・財産を守るために、これらの防
災・減災対策は重要で待ったなしであり、最優先で取り組むべきである。一方で、
構想はイメージが先行しており、その方向性や内容が県民や市町、各種団体等に
十分に浸透しているとはいえない。
構想実現には、県民等の理解や意欲が不可欠であるので、十分な分かりやすい
説明と周知を図っていくべきであり、その地域をどのようにしていくのかという
ことについては、地域住民の意向が尊重されるべきである。
構想が県民等に理解された上で、県を挙げて、県民一丸となって取り組むこと
が重要である。
- 24 -
(3)
市町等の動向の把握
構想については、市町や地域間の理解や取組状況に温度差があるのが現状であ
る。各地域の計画は市町や地域が主体となって提起されるものであるので、県が
構想全体の進捗状況などについて情報提供を行うことが重要であり、その地域の
動向を把握すべきである。
また、各地域での構想実現に向けては、県と市町が一体となって取り組む必要
があり、県が支援をしていくべきである。
提言2
(1)
新東名高速道路やその周辺の利活用
物流関連などの企業誘致
新東名高速道路が開通し、東名高速道路等とのネットワーク化が図られ、交通
の利便性や定時性が向上した。新東名高速道路の開通から東西に延伸されていく
までの間は、本県の優位性が明らかであり、今を好機と捉え、県と市町が協力し
て企業誘致のためにスピード感を持って、シティプロモーションなどの情報発信
を行い、各種優遇制度を充実させるべきである。
特に、物流関連の施設については集約される傾向にあり、交通の利便性が向上
した静岡県は広域をカバーすることが可能となり得るため、物流の拠点としての
価値が高まった。静岡県に物流基地を集積させていくことにより、静岡県が物流
のハブ機能を果たすことになり、結果として駿河湾港や静岡空港を使うことにも
つながっていく可能性があるので、トップセールスなどにより、物流の拠点とな
る企業を誘致すべきである。
(2)
交通の利便性と道路整備
企業立地の条件などでは、交通の利便性が求められている。また、交通のネッ
トワーク化は新たな観光ルートの開発や交流人口の増加につながる。
既存の高規格幹線道路や幹線道路へのアクセス道路を整備し、ネットワーク化
を図るべきであり、交通網に合わせた適切な道路標識や観光地への案内看板を設
置すべきである。
また、今後、予定されている中部横断自動車道、三遠南信自動車道や伊豆縦貫
自動車道などの高規格幹線道路の開通による更なる交通の利便性の向上が期待
されており、早期完成を関係機関に働きかけることが重要であり、アクセス道路
の整備を推進すべきである。
さらに、新東名高速道路の制限速度は現在 100 ㎞であるが、制限速度を 120
㎞に引き上げることで、走行時間短縮等による経済効果が見込めるため、関係機
関に働きかけるべきである。
- 25 -
なお、土地の利活用に当たっては、その用途については地域関係者の意向を尊重す
るとともに、乱開発とならないよう適切な集中と選択を図ることが必要である。
提言3
総合特区への取組
構想を先導する地域づくりを進めるため、防災・減災機能を備えた新しい地域成
長モデルの創出を図っていく必要がある。
総合特区に指定された地域には、速やかに事業に取り掛かることができるよう、
また、安全・安心で魅力ある地域づくりにおける先進的なモデル地域となるよう、
規制緩和等に適切な支援と対応をすべきである。
特に、土地利用に関する法規制は、都市計画法、農業振興地域の整備に関する法
律、国土計画法など複数の法令にわたるため、相互に関連する法規制に対する調整
などを横断的に進める必要がある。また、税制・財政上等の支援措置にも対応する
必要がある。
部局横断的な事項の対応を一括で扱うことにより、事業の迅速化を図ることがで
き、一連の手続がスムーズになり業務の効率化も図られるため、プロジェクト室を
設けるなどワンストップでできる体制とすべきである。
提言4
(1)
地域振興策
中山間地域の振興
新東名高速道路が開通し、首都圏から中山間地域へは以前より短時間で行ける
というメリットが生まれ、SA・PAには多くの利用者が訪れている。
高速道路利用者を地元に誘引することで地域の活性化につながることから、中
山間地域の特色を生かした農業などの体験と沿岸部、平野部の観光を組み合わせ、
地域を回遊してもらうなどの新たな方策を考えていくことが重要である。
また、地域自らが主体的に魅力ある地域づくりに取り組むことは、中山間地域
振興の範になるので、推進すべきである。
(2)
沿岸部、都市部への施策
南海トラフ巨大地震などが懸念される中、河川や海岸などにおける地震・津波
対策を最優先で実施し、災害に強い地域づくりを進めていくべきである。
- 26 -
(3)
農地の保全
中山間地域には優良農地が多くあるので、安易に農業以外の利用に供するとい
うことがないよう、土地の利活用に当たっては、当該地域関係者と十分に協議す
ることが重要である。中山間地域の経済性や効率性を考えるとともに、環境への
配慮や国土の保全、文化の継承などを踏まえた開発を考えていくべきである。
また、構想を進めるに当たっては、地域住民の意思を尊重し、地域の活性化に
つながる振興方策とすべきである。
- 27 -
資
料
編
別表1
委員会の活動状況
回数
開催日
審査・調査の概要
第1回
24.5.17
・委員協議(調査運営方針、年間スケジュール等)
第2回
24.6.5
・委員協議(調査内容の検討)
1
原・新丹谷地区
・農村振興策の方向性について
県内視察
24.6.21
2
駿河湾沼津サービスエリア
・新東名開通後の状況、サービスエリアの店舗出店状況
3
新富士IC周辺地域
・富士市の物流団地造成、富士山フロント工業団地の活用状況
第3回
24.8.6
・調査事項に関する関係部局からの説明と質疑応答
1
森町役場
・新東名高速道路を活かした地域づくり
県内視察
24.8.31
2
奥浜名湖観光協会
・新東名高速道路開通による地域の観光施設の状況
3
磐田市役所
・産業政策の取組状況
1
糸島農業協同組合/JA糸島産直市場伊都菜彩
・交通の利便性を活かした事業
2
大分大山町農業協同組合/木の花ガルテン
・都市との交流拠点づくりや交通の利便性を活かした事業
3
県外視察
24.9.3~5
イオンアグリ創造(株)大分九重農場
・農場運営事業に関する取組
4
佐賀県庁
・企業誘致及び東部地域のまちづくり
5
グリーン・ロジスティクス・パーク鳥栖/日本生協連鳥栖冷凍流通センター
・物流拠点への企業進出状況、拠点内流通センターの事業
6
鳥栖北部丘陵新都市/佐賀県立九州シンクロトロン光研究センター
・研究開発型企業を対象とした産業拠点の事業
・ 調査事項に関する関係部局からの説明と質疑応答
第4回
24.10.9
・ 参考人招致
○一般財団法人静岡経済研究所
・新東名の活用と地域振興
- 28 -
専務理事
中嶋壽志氏
・参考人招致
○静岡県農業協同組合中央会
専務理事
杉山克明氏、農政営農部副部長
和田康氏
・JAグループの地域振興(中山間地)に対する考え方
○清水農業協同組合
常務理事
第5回
24.11.28
望月潔氏
新規事業準備室長
北條貢氏
・JAしみずの取組事例
○一般社団法人静岡県建設コンサルタンツ協会
副会長 藤山義修氏、 技術研究部会長代理 吉野通範氏
渡辺尚司氏、上村秀人氏、大石勝男氏、鈴木正之氏、
芹澤秀樹氏
・新東名等のIC・SA・PA周辺の土地利用
・委員討議
第6回
25.1.10
・報告書作成に向けた委員討議
- 29 -
別表2
内陸フロンティア振興特別委員会名簿
職
名
委
員
名
芳 久 仁
所
属
委 員 長
林
副委員長
中
沢
公
彦
自民改革会議
副委員長
落
合
愼
悟
自民改革会議
委
員
仁
科
喜世志
自民改革会議
委
員
天
野
一
自民改革会議
委
員
良
知
淳
行
自民改革会議
委
員
鈴
木
洋
佑
自民改革会議
委
員
髙
田
泰
久
民主党・ふじのくに県議団
委
員
大
池
幸
男
民主党・ふじのくに県議団
委
員
前
林
孝一良
委
員
中
澤
通
- 30 -
訓
民主党・ふじのくに県議団
公明党静岡県議団
富士の会
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