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第 7 章 「独立行政 法 人 工 業 所 有 権 情 報 ・ 研 修 館 」 に お け る 各 種 支 援 事 業 第7章 「独立行政法人工業所有権情報・ 研修館」における各種支援事業 独立行政法人工業所有権情報・研修館(以下「情報・研修館」という。)は、2001年4月に独 立行政法人化し、2004年10月に「情報普及業務」及び「人材育成業務」が新たに追加され、名 称を「独立行政法人工業所有権総合情報館」から「独立行政法人工業所有権情報・研修館」と改称 し、新たなスタートをきった。 情報・研修館では、産業財産権制度を支える「情報」及び「人」という基盤と、これらが活用さ れる「環境」の整備・強化を目的に、特許庁と連携しつつ、公報等閲覧、相談、特許流通促進、情 報普及、研修、人材育成といった各種事業を実施している。 1.組織(http://www.ncipi.go.jp/) 役職員総数 81名(非常勤監事2名を除く) 理事長、理事、監事 総務部(業務の総合調整等) 閲覧部(特許公報等の閲覧、審査資料の収集・閲覧) 流通部(特許等の流通促進) 情報普及部(特許電子図書館等の産業財産権情報提供サービス) 相談部(産業財産権に関する相談) 研修部(特許庁審査官等に対する研修) 人材育成部(サーチャー、弁理士、中小企業等に対する研修) 人材開発統括監 【工業所有権情報・研修館シンボルマーク】 2.公報閲覧事業(http://www.ncipi.go.jp/data/koho/index.html) 特 許 庁 庁 舎2階 の 公 報 閲 覧 室 で は、 約140台 の 専 用線による閲覧用機器等を設置し、「特許電子図書館 (IPDL) 」、CD/DVD-ROM公報等の閲覧サービスを無 料で行っている。 また、全国8か所(札幌、仙台、名古屋、大阪、広 島、高松、福岡、那覇)の地方閲覧室においても同様の 閲覧用機器を設置し、閲覧等のサービスを行っている。 2004年度の利用者は約7.2万人である。 128 【公報閲覧室】 特許庁の審査・審判で利用される各種技術文献(図書 等)を広く国内外から収集し、特許庁の審査・審判資料 として提供している。 また、収集した各種技術文献は一般の利用者にも閲覧 サービスを行っている。 第 4 部 特許庁の取組 3.審査審判資料の提供事業(http://www.ncipi.go.jp/data/sinsa/index.html) 【技術文献資料】 4.特許流通促進事業(http://www.ryutu.ncipi.go.jp/index.html) 開放意思のある特許(開放特許)を企業間及び大学・公的試験研究機関と企業の間において円 滑に移転させることにより、中小・ベンチャー企業の新規事業の創出や新製品開発を活発化させ るため、特許流通促進に向けた各種事業を実施している。 第 1章 (1)人材活用等による特許流通の促進 ①特許流通アドバイザー 企業や大学・公的研究機関等が 掘と、中小・ベンチャー企業等の 技術導入に対するニーズを把握 第1段階:普及・啓発 第 2章 保有する開放可能な特許技術の発 いかに多くの企業からの信頼を獲得するかがポイント ・企業訪問(特許流通促進事業の説明) ・特許に関する知識の普及・啓発(各種相談等) ・特許活用に対する意識改革(成功事例の提示等) 第2段階:ニーズ・シーズ収集 企業の事業内容や企業保有の技術に対する的確な評価がポイント を目的として、知的財産権や技術 第 3章 し、両者のマッチングを図ること ・企業訪問(企業の事業内容、保有技術の理解) ・企業の技術導入ニーズ、提供可能な技術シーズの収集 ・ニーズに対応する技術シーズを特許情報により調査 ・他のアドバイザーや機関等との情報交換 第3段階:具体的な提案 最適な相手企業を見つけて、 マッチングするワザがポイント 有する専門人材である特許流通ア ・ニーズ側、 シーズ側企業双方への訪問 (案件紹介) ・ビジネスプランの作成アドバイス ・製品開発等へのアドバイス ・各種支援施策の紹介(事業化支援施策等) ドバイザーを、都道府県・TLO 等からの要請により派遣している 第4段階:成約に向けた支援 さまざま経験に基づく交渉能力、契約知識と アフターケア (経営支援) がポイント。 成約 ・契約に向けたアドバイス ・他機関と連携した資金調達支援、研究開発支援 地域中小企業における技術移転や特許情報の活用を普及・促進を目的として、特許契約の ポイントや最近の注目トピックの紹介を含むセミナーを全国各地で開催している。 特許技術などのシーズを保有する企業が、特許技術の内容やビジネスプランを提示し、参 第 7章 ③特許ビジネス市 第 6章 ②特許流通促進セミナー 第 5章 (2005年4月現在106名) 。 第 4章 移転に関する豊富な知識・経験を 加者から当該技術についてライセンスや共同研究、資金提供等の各種提携の申し出を募る市 を開催している。 129 第 7 章 「独立行政 法 人 工 業 所 有 権 情 報 ・ 研 修 館 」 に お け る 各 種 支 援 事 業 (2)開放特許情報等の提供 ①特許流通データベース、アイデアデータベース 活用可能な開放特許を産業界や地域の企業に円滑に流通させ実用化を推進していくため、 企業や大学・公的研究機関等が保有する開放特許をデータベース化し、インターネットを通 じて公開している。「ライセンス情報(譲渡含む) 」及び「ニーズ情報(導入希望情報) 」の データ登録が誰にでもできるオープンなシステムになっているほか、特許電子図書館(IPDL) とのリンクにより関連する特許情報を見ることや、企業のホームページとのリンクにより企 業情報を見ることもできる。 特許流通データベースへの「ライセンス情報」の登録件数は事業開始当初の1997年から 増加し、2005年4月現在で約58,000件となっている。 また、特許流通データベースのライセンス情報を対象に「その特許の可能性(何ができるか、 どこで使えるか)」についてやさしく解説し、権利者の想定分野に縛られない用途展開を提 案することで、事業構築のヒントを提供する「アイデアデータベース」を公開し、2005年 4月現在の登録件数は14,000件となっている。 ②開放特許活用例集 特許流通データベースに登録されている開放特許の中から、事業化の可能性が高いと思わ れる案件に製品イメージ等を加えたビジネスアイデア集、「開放特許活用例集」を作成して いる。冊子による配布のほか、情報・研修館のホームページ上でも公開している。 掲載された特許技術に関して特許提供者と連絡を取りたい場合には、特許提供者に直接コ ンタクトを取るか、特許流通アドバイザーを通じて連絡を取ることができる。 <開放特許活用例集に掲載された特許技術> 1998年度:100件、1999年度:200件、2000年度:150件、2001年度:200件、 2002年度:213件、2003年度:206件、2004年度:209件 ③特許流通支援チャート 中小企業が、特に、異業種分野からの技術導入を図る際の参考となるように、特許情報か らみた技術の解説書(パテントマップ) 、 「特許流通支援チャート」を作成している(2004 年度までに88テーマ作成) 。 特許流通支援チャートは、技術テーマごとに過去10年間の特許情報を分析し、技術の成 熟度、技術開発課題に対する解決手段の動向等を分かりやすく解説したもので、研究開発の 方向性策定、異業種分野への進出や新たな事業展開の検討に際して、さらには当該技術分野 の技術シーズや特許保有企業の発掘等に活用可能である。 情報・研修館のホームページにおいて無料で公開しているほか、2002年度版からはCDROMによる無償頒布も実施している。 ④特許情報活用支援アドバイザー 特許情報活用による地域産業の活性化策を支援するため、特許情報活用の専門家である特 許情報活用支援アドバイザーを全国の都道府県に派遣している(2005年4月現在52名)。 特許情報検索の方法の指導や、その活用に関する相談に応じるとともに、講習会の開催を行 130 (3)特許流通を行う人材育成 ①知的財産権取引業者データベース 知的財産権取引ビジネスを振興するため、知的財産取引をしたい方とそれらの取引を仲介 する事業者の方の出会いの場を提供することを目的としたデータベースを作成している。 第 4 部 特許庁の取組 う等、特許情報に関する様々な要望に応じている。 ②国際特許流通セミナー 我が国の知的財産権取引に係わる事業者の業務スキルの向上や、人的ネットワーク構築の ため、海外の大学、企業、自治体等で特許流通・技術移転に携わっている専門家を招へいし、 我が国の第一線で活躍している方々との合同ディスカッションやワークショップを開催して いる。 ③知的財産権取引業育成支援研修 不足している我が国の知的財産取引に携わる人材育成を目的として、基礎研修、実務研修、 第 1章 実務者養成研修を開催している。 <2004年度実績> ・基礎研修 9回(2日間開催) 受講者 633名 第 2章 ・実務者研修 3回(12日間開催) 受講者 237名 ・実務者養成研修 3回(14日間開催) 受講者 60名 ザーによる成約件数は累計5,461件、経済的インパクトは累計1,578億円に達している。 【特許流通促進事業の経済的インパクトと事業経費】 (件) 6,000 1,800 億円 5,461 5,000 累 計 経済的インパクト 1,500 億円 4,080 4,000 1,175 億円 1,200 億円 第 6章 3,000 900 億円 2,701 2,000 600 億円 1,478 1,223 1,379 H9 H10 H11 H12 258 億円 300 億円 588 33 億円 142 億円 58 億円 15 億円 H13 H14 H15 H16 0 億円 96 億円 134 億円 173 億円 214 億円 1997-1999 1997-2000 1997-2001 1997-2002 1997-2003 1997-2004 第 7章 6 6 179 43 49 130 409 462 億円 1,381 890 1,000 1,578 億円 事業費 第 5章 各年度 0 第 4章 【特許流通アドバイザー技術移転成約件数の推移(累計)】 第 3章 これらの総合的な特許流通促進事業の効果として、2004年度までの特許流通アドバイ 131 第 7 章 「独立行政 法 人 工 業 所 有 権 情 報 ・ 研 修 館 」 に お け る 各 種 支 援 事 業 5.情報普及事業(http://www.ncipi.go.jp/info/index.html) 重複する研究開発の防止、既存技術を活用した研究開発の推進、権利侵害の防止等を図る上で重 要である産業財産権情報を様々な形で提供するとともに、その普及のための事業を展開している。 (1)整理標準化データの提供 特許庁で生成される審査経過情報等の各種情報をSGML形式のデータに整理標準化し、マー ジナルコストで提供している(特許、実用新案のデータについては、情報の加工等に優れている XML形式で提供) 。また、紙媒体で発行された公報のイメージデータを収録している総合資料電 子データファイル等も提供している。 このような整理標準化データを元に、企業等における社内データベースの構築や民間の特許情 報提供事業者による個別ニーズに則した、多様な高付加価値サービスの提供が行われている。 (2)特許電子図書館1 (IPDL:Industrial Property Digital Library)サービスの提供 インターネットを利用して産業財産 権情報を検索・閲覧できる「特許電子 図書館」サービスを無料で提供してい る。特許電子図書館では、明治以来発 行されている5,400万件の特許・実 用新案・意匠・商標の公報類や、審査・ 登録・審判に関する審査経過等の関連 情報が閲覧可能となっている。 また、2005年3月には、特許・実 用新案公報のテキストデータ一括表示 機能や、経過情報検索への侵害訴訟情 報、分割出願情報の追加を行うなど、 【特許電子図書館トップページ】 定期的にユーザーの利便性向上やサー ビスの拡充を図っている。 これらの情報は、インターネットによる提供に加え、情報・研修館、同館地方閲覧室及び各都 道府県(一部を除く)の知的所有権センター等の閲覧施設に専用端末を設置し、専用線による一 層の高速かつ高精細・大画面によるサービスを提供している。 特許電子図書館の利用状況は、サービス開始直後の1999年4月において約100万件であっ た月間検索回数が、その後提供サービスの充実に伴い利用者が急増し、現在では毎月約500万 件に達している。 1 特許電子図書館トップページ http://www.ipdl.ncipi.go.jp/homepg.ipdl 132 初心者向け検索 意匠検索 外国文献検索 経過情報検索 特許・実用新案検索 商標検索 審判検索 その他 (万回) 537 503 496 500 476 396 400 第 4 部 特許庁の取組 【特許電子図書館月間検索回数の推移】 417 326 290 300 186 200 100 0 180 162 92 1999年 4月 97 10月 2000年 4月 10月 2001年 4月 10月 2002年 4月 10月 2003年 4月 10月 2004年 4月 10月 2005年 3月 三極特許庁(日本国特許庁・米国特許商標庁・欧州特許庁)協力及び二国間特許庁(中国国家 第 2章 知識産権局、韓国特許庁等)での合意に基づいて産業財産権情報のデータ交換を行っている。 第 1章 (3)他国特許庁との産業財産権情報の交換及びその情報の活用 ①外国の特許庁・国際機関への提供 国際機関に提供している。 高度かつ広範囲な技術内容を網羅している米国特許明細書、米国公開特許明細書、欧州公 第 4章 ②和文抄録データの作成・提供 第 3章 三極及び二国間特許庁の合意に基づき、日本国の産業財産権情報を加工し、外国の特許庁・ 開特許明細書の和文抄録データを作成し、特許庁の審査資料として提供している。また、特 第 5章 許電子図書館等を介して一般にも広く提供している。 公開特許公報の英文による抄録データを作成し、特許協力条約(PCT)に基づく国際出 願の先行技術調査の最小限資料として各国特許庁へCD−ROMで提供している。 特許庁庁舎2階に相談窓口を常設し、産業財産権取得の 第 7章 6.産業財産権相談事業(http://www.ncipi.go.jp/qanda/index.html) 第 6章 ③公開特許公報英文抄録(PAJ)の作成・提供 ための出願手続など産業財産権に関する一般的な相談に応 じている。また、窓口での相談業務のみならず、電話、電 子メール又は文書でも受け付けている。2004年度の相談 件数は、電話、電子メール、文書を含めて約6.1万件である。 【相談ブース】 133 第 7 章 「独立行政 法 人 工 業 所 有 権 情 報 ・ 研 修 館 」 に お け る 各 種 支 援 事 業 7.人材育成事業(http://www.ncipi.go.jp/jinzai/index.html) 知的財産業務を支える人材の育成を図り、特許庁における審査・審判の迅速化や企業等におけ る知的財産戦略の構築、適切な権利保護及びその活用等に貢献するための研修を提供している。 (1)特許庁職員に対する研修事業 ①審査・審判系職員研修、事務系職員研修 特許庁が定めた研修の基本方針及び計画等に基づき、審査・審判系職員研修として審査官 コース研修、任期付職員(特許審査官補)初任研修、審判官コース研修等を実施している。 また事務系職員研修として審判書記官研修、産業財産権専門官研修等を実施している。 ②任期付審査官の研修 2004年度から5年にわたり、毎年100名程度の任期付審査官補を採用して、2年間で審 査官昇任への能力を取得するために必要な、法律知識・実務能力等の修得を目的とした研修 を実施している。また、審査・審判実務の経験者を含む外部人材を講師とした特別講座を開 設している。 ③専門能力向上のための研修 特許庁職員の総合的な能力向上のため、国際化への対応能力向上、情報化への対応能力強 化、行政ニーズ変化への感応度向上、法的専門能力向上等を目的とした各種研修を実施して いる。 (2)特許庁職員以外の者に対する研修事業 ①調査業務実施者育成研修 登録調査機関の調査業務実施者(サーチャー)になるために必要な法定研修(工業所有権 に関する手続等の特例に関する法律第37条に規定)を実施している。 精度の高い先行技術調査を行う調査業務実施者の着実な育成は、特許審査迅速化を実現す るためにきわめて重要である。このため、本研修は調査業務実施者として必要な基礎的能力 の修得支援を目的として、特許法等の講義やサーチ端末を用いた検索実務の演習など調査業 務に必要な知識を網羅した内容となっている。 調査業務実施者育成研修 調査業務実施者 (サーチャー) 座学 先行技術調査に必 要な法令、審査基 準に関する講義 134 筆 記 試 験 第 一 検索演習 サーチ端末を用い た検索実務の演習 筆 記 試 験 第 二 グループ討議 検索情報や進歩 性判断等につい て討論 面 接 評 価 第 一 検索報告書 の作成 研修申請区分の 案件の検索報告 書を作成 面 接 評 価 第 二 修 了 登 録 調 査 機 関 弁理士等の知財専門人材においては、高度化・複雑化する企業や大学の研究開発成果を適 切に保護するために、特許制度や審査基準の正確な理解が求められている。また、取得した 権利の活用の場においても権利の適切な運用や権利範囲の正確な判断には特許制度や審査基 準の深い理解が欠かせない。このため、知財専門人材の実務能力の向上を目的として、弁理 士・企業知財部員等を対象とした審査基準等に関する討論型の研修を実施している。 第 4 部 特許庁の取組 ②知財専門人材に対する研修 ③中小・ベンチャー企業に対する研修 中小・ベンチャー企業には、知的財産は単なる知識ではなく攻撃防御のための経営手段と して積極的に活用することが求められている。このため、中小・ベンチャー企業の特許侵害 事件への対応力強化と知財マインドの向上を目的として、特許侵害警告に関する実践的な研 修を実施している。 ④政府・行政機関職員向け研修 知的財産を地域の活性化に役立てるという新たな動きをバックアップするため、地方公共 いる。 知財関連人材の研修機会の拡充と内容の充実のため、いつでもどこでも効率よく自己研鑽 第 2章 ⑤情報通信技術を活用した人材育成(IP・eラーニング) 第 1章 団体の職員等を対象として、知的財産の基礎的知識の修得支援を目的とした研修を実施して を図る手段として注目を集めつつあるeラーニングによる人材育成を実施している。 第 3章 ⑥民間との連携強化 知財人材の育成に関する相互協力の推進と官民の役割分担を明確化するため、定期的に民 第 4章 間の人材育成主要団体と知財人材育成連絡会議を開催している。 第 5章 第 6章 【討論型の研修】 第 7章 【サーチ端末を用いた検索実務の演習】 135