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Ⅰ.天体観測は曽爾が最高!! Ⅱ.天体を観測するにあたって
Ⅰ.天体観測は曽爾が最高!! 月の暦(太陰暦、旧暦ともいう)を利用していた時代では、太陽の位置で時刻を、月の位置 や傾きで方位を知ったそうです。そのため、太陽や月の存在を重要視し、その動きにも大変 敏感でした。ところが、最近の生活様式の著しい変化とともに、私たちの周囲至る所に時計 や標識が設けられ、天体によって時刻や方位を知る必要がなくなりました。従って、生活の 中に、太陽や月・星といった天体を意識することが必要ではなくなってしまいました。 しかし、時間的・空間的な考え方を、天体の観察によってきたえることもおもしろいとは思 いませんか。特に、時計や標識のない野外での活動の中で、このようなことを考えるのはどう でしょう。 曽爾高原は周囲に特徴的な山々がたくさんあります。北には、倶留尊山・二本ボソ・亀山 がせまっていますが、東から南、西の方向は見事に開け、180度の大パノラマを見せてくれ ます。夜になると、周囲に光がないため空は暗く星座の観測には絶好の所です。 このような環境に恵まれた曽爾少年自然の家で、天体を手がかりとした方位の見つけ方、 時刻の読み取り方、天体運動のふしぎについて考えてみましょう。 Ⅱ.天体を観測するにあたって 曽爾高原での天体の学習のポイントは、昼と夜の活動を関連づけることです。たとえば、 昼間、方位磁針(シルバコンパス)を使ったオリエンテーリングなどをしますね。 この時、足元ばかりに目を向けるのではなく、この時の太陽の動きや、それぞれの方向に 見える、その先の高原の山々の形(シルエット)や建物などの全体的な位置関係をつかんで おきましょう。 夜になると星座が観察できます。太陽が沈んで暗くなっても、山々のシルエットは周囲の 星座の中に浮かんでみることができます。この時、昼間の目印にしていた特徴的な山々の シルエットと星座との位置関係から方位がわかるのです。 このあと、次のような事についてまとめてみます。 1.昼間の活動で、方位と地形の関係をとらえる。 ① 太陽の影から方位を知ろう。 ② 太陽の高さを調べよう。 ③ 太陽の通る位置を調べよう。 2 昼の活動で知った方位と天体との位置関係をとらえる。 ① 星座の位置から真北の方位を見つけよう。 ② 月の位置と形から方位を知ろう。 ③ 黄道12星座と時刻から方位を知ろう。 さあ、いっしょに考えてみましょう。 Ⅲ・昼の方位学習の具体例 ≪太陽などを頼りに方位を求めてみよう≫ Q1 初めての場所では東西南北の向きがわかりにくいですね。方位磁針や地図を使わずに、自 分がどちらを向いているかわかりますか。 A1 東西南北などの向きのことを「方位」といいます。ふだん「方角」とも言いますね。 磁針や地図がなくても、おおまかな方位なら太陽や他の天体から知ることができます。 昼12時ごろ、太陽が一番高く昇った時(南中した時)にできる影の向きがいつも「北」の方 位を示しています。その反対側が「南」の方位ということになります。また、「北」を向いたまま、 右手を真横(90°)にのばした方向が「東」左手を真横(90°)にのばした方向が「西」の方 位になります。 それぞれの「方位」に見える特徴のある建物や地形(山など)をおぼえておきましょう。 もう少しくわしく見てみましょう。 影の長さは季節によって変わります。しかし、影の長さは違っても12時頃にできる影の向き はいつも同じです。つまり、自分の足元から影の向きに引かれた線はいつも南北の方位を 表しているのです。この方向に引かれた南北の線が、地図にかかれている縦線(経線)とい うことになります。 次に、同じ場所に立ったまま、今度は両手を左右に上げましょう。この方向が東西の線とな ります。つまり、地図に描かれている横線(緯線)です。 この南北と東西の2本の線は、自分の足元で、必ず直角に交わっています。 簡単ですね。では、実際に曽爾高原に立ってあなたの足元に、この2本の線を引いてみま しょう。あなたの引いたその線は 縦線が東経136°( 136度10分) 横線が北緯 34°( 34度32分) となっているのですよ。 ≪太陽の高さを求めてみよう≫ Q2 Q1で太陽が一番高く昇った時がほぼ正午(12時)だといいましたね。ところで、この時の影 の長さ(太陽の高さ)は、一年を通じてどのようになるのでしょう。 注)正確には場所によって太陽が南中する時刻がちがいます。 A2 この時(南中)の太陽の位置(高さ)と地平線と の角度を「南中高度」といいます。 同じ時刻(12時)でも、夏と冬では地面にできる自分の影の長さが長い時と短い時がありま すね。夏の影は短く、冬の影は長いことに気がついていますか。これは、部屋の中に差しこ む光の長さが季節によって違うのと同じことです。夏は窓ぎわまで、冬は部屋の奥まで光が 差しこみますね。言い換えると、夏は太陽の南中高度が高く、冬の南中高度は低いというこ とになります。 もっと深く知りたい人に ちょっと難しいですが読んで下さい。 南中高度についてもう少しくわしく説明しましょう。 実は、一年中この高度は変わっているのです。その原因は、地球の北極・南極を結ぶ線 (地軸といいます)が、太陽の通り道(公転面といいます)と直角に交わらず、23. 4°傾いて いるからなのです。 地球が春分・秋分の位置(B・D)にある時、太陽は赤道の真上を通ります。夏至の位置(A) にある時は、赤道より上(北半球)のある地点の真上を、冬至の位置(C)にある時は、赤道よ り下(南半球)のある地点の真上を通ります。 つまり、夏至の日は北緯23. 4°の地点、冬至の日は南緯23. 4°の地点の真上を照らすこ とになるのです。 では曽爾の季節による太陽の高さ(南中高度)を見てみましょう。 曽爾は北緯34°のところにありますから、下の図のように 春分・秋分の日の南中高度は 90°− 34°= 56° となります。 夏至の日は、太陽の位置が春分・秋分の日より23. 4°南にあるので 90°− 34°+ 23. 4°= 79. 4°となります。 冬至の日は、太陽の位置が春分・秋分の日より23. 4°北にあるので 90°− 34°− 23. 4°= 32. 6°となります。 こんな計算もたまにはおもしろいでしょう。 頭の体操になりました?? ≪昼と夜の長さを考えましょう≫ Q3 太陽の南中高度が季節によって変わることはわかりましたね。では、季節によって昼と夜 の時間はどう変わるのでしょう。 A3 皆さんは、夏は昼の時間が長く、冬は夜の時間が長いことは知っていますね。では、日の 出・日の入りの位置が毎日少しずつずれていることに気づいていますか。これも、地軸が傾 いていることが原因なんですよ。 もし地軸が傾いていなければ、太陽の通り道は一年中同じ。ということは、気候もー年中同 じ、四季もないということになります。 春分・秋分の日の太陽は、観測地点の真東から昇り、真西に沈みます。しかし夏至の日の 太陽はこれより北にずれ、冬至の日の太陽はこれより南にずれて、それぞれ昇り、沈みます。 1日24時間は1年中同じです。図のように、春分・秋分の日はちょうど球を真っ二つに切っ たところですから−と…は同じ長さですから、昼と夜が12時間ずつですね。 夏至の日は−が長く、冬至の日は…が長くなっています。つまり、夏は昼が長く、冬は夜 が長いということを表しています。 地軸の傾きが春分・秋分の南中高度と夏至・冬至の南中高度の差に現れていることに注 意しましょう。 では、曽爾の日の出・日の入りを観察してみましょう。 つどいの広場や事務室の玄関から見る東の空には、建物や亀山がせまっているため、太 陽の昇ってくる位置がはっきりしません。でも、南から西の空は大変ひらけています。また、 特徴ある山々も多くありますから、太陽の沈む様子が手に取るように見られます。夕方のひ ととき、西の空をながめてみましょう。 一年を通じて、自然の家から見る日没の位置は次の図のようになります。 注)このシルエットは自然の家事務室の前からのものです。観測地点が変わ れば多少見える位置が変わってきます。 [ 参考] 曽爾の日の出、日の入りの時刻はおおよそ次のとおりです。 1999年 日の出の時刻 日の入りの時刻 春分( 3月21日) 午前6:00 午後6:08 夏至( 6月22日) 午前4:43 午後7:13 秋分( 9月23日) 午前5:44 午後5:53 冬至( 12月22日) 午前6:59 午後4:49 発行年月 平成11年5月 執筆者 中森 輝夫 参考文献 中学校教科書「理科2分野上」 新興出版者 啓林館(平成5年度用) 「野外観察の手引」 (昭和63年) 堺市立科学教育研究所 豊原 稔 「天文年鑑」 誠文堂新光社(平成9年)