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二国間交流事業 共同研究報告書
(様式4-1) 二国間交流事業 共同研究報告書 平成 25年 4月 3日 独立行政法人日本学術振興会理事長 殿 共同研究代表者所属・部局 京都大学大学院人間・環境学研究科 (ふりがな) たむら るい 職・氏 名 教授・田村 類 1. 事 業 名 相手国( ロシア )との共同研究 振興会対応機関( RFBR ) 高温で強い磁気的相互作用を示す新規有機ニトロキシドラジカル液晶性化合物の開発 2. 研 究 課 題 名 3. 全 採 用 期 間 平成23年 4月 1日 ~ 平成25年 3月31日 ( 2年 0ヶ月) 4. 経 費 総 額 (1)本事業により執行した研究経費総額 5,000,000円 初年度経費 2,500,000円、 2年度経費 2,500,000円、 (2)本事業経費以外の国内における研究経費総額 3年度経費 0円 円 5.研究組織 (1)日本側参加者(代表者は除く) 氏 名 所 属・職 名 下野 智史 京都大学大学院人間・環境学研究科・技術職員 鈴木 克明 京都大学大学院人間・環境学研究科・ポスドク研究員 大西 啓太 京都大学・大学院人間・環境学研究科大学院生(MC2) 高岡 昭平 京都大学・大学院人間・環境学研究科大学院生(MC1) (2)相手国側研究代表者 ロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク有機化学研究所・教授・ 所属・職名・氏名 Grigor’ev, Igor A. (グリゴレフ, イゴール A.) (3)相手国参加者(代表者は除く) 氏 名 所 属・職 名 Mazhukin, Dmitrii G. ロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク有機化 (マズーキン,ドミトリイ G.) 学研究所・准教授 Lomanovich, Alyona V. ロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク有機化 (ロマノビッチ,アリオナ V.) 学研究所・大学院生 Mostovich, Eugeny A. ロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク有機化 (モストビッチ,ユーゲニ A.) 学研究所・ジュニア研究員 Zaitseva, Elena V. ロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク有機化 (ザアイツエバ,エレナ V.) 学研究所・大学院生 -1- 6.研究実績概要(全期間を通じた研究の目的・研究計画の実施状況・成果等の概要を簡潔に記載してください。) 研究の目的:共同研究代表者は、それまで合成が困難と考えられていた、棒状液晶性分子のコア中 に常磁性成分をもつ一群のキラル純有機ニトロキシドラジカル液晶物質の合成に世界で初めて成 功し、それらが優れた耐熱性(150°C まで)・耐酸素性・光安定性を示し、広い温度範囲(25〜 150°C)でキラルまたはアキラルの様々な棒状液晶相(ネマチック相やスメクチック相)を選択 的に示すことを 2004 年に報告した(Angew. Chem. Int. Ed., 2004, 43, 3677; J. Mater. Chem., 2008, 18, 2872 に総説) 。さらに、合成したモノラジカル化合物が高温の液晶状態の時にのみ、低磁場中で強 い強磁性的相互作用(平均スピン・スピン交換相互作用定数: J > 0)を発現するという驚くべき事 実を発見し(J. Mater. Chem., 2008, 18, 2950: J. Am. Chem. Soc., 2010, 132, 9746)、この現象を「正の磁 気液晶効果(Magneto-LC Effects) 」と命名した(J. Mater. Chem., 2012, 22, )。同時に、電子スピ ン共鳴法を用いる実験により、このユニークな磁性発現のメカニズムを提唱した。本共同研究では、 これらの結果を踏まえ、様々な分子構造をもつ新規純有機ラジカル液晶物質を合成し、それらの液 晶相の超構造(superstructure)と磁気的相互作用の相関関係を系統的に検討することにより、将来 新しい低磁場応答性の省エネルギー型ソフトマテリアルを開発するために必要な、純有機ラジカル 液晶物質の合成と性質に関する有機化学的基礎研究を行うことを目的とした。 研究計画の実施状況:研究の実施にあたっては、ニトロキシドラジカルの合成研究に伝統と定評の あるロシア科学アカデミー・シベリア支部ノボシビルスク有機化学研究所の Grigor’ev 教授グルー プとの二国間共同研究により、様々なニトロキシド骨格をコア中に含む有機モノラジカルやビラジ カル液晶物質を合成し、その液晶状態での磁気的相互作用を系統的に検討した。本研究には、日本 とロシアの若手研究者(研究組織参照)が参加した。物質合成・物性測定と相互の研究発表と討論 を通じて、独創的研究とはいかなるものか、そして国際共同研究はどのように推進すべきかを、彼 らに理解してもらうことも本研究の目的の一つである。 研究成果:2年間の研究により、日本チームが合成を担当したビラジカル骨格を有する化合物 (S,S,S,S)-1と trans-2 が液晶相を示すことを発見した。(S,S,S,S)-1については、その液晶相の同 定と液晶状態での磁気物性に関する測定が終了した。その結果、液晶相中で非常に強い「正の磁気 液晶効果」が発現することを明らかにすることができた、現在、この研究に関する論文を作成中で ある。一方、trans-2 の合成は困難を極めたが、ついに合成に成功し、これがデイスコチック相を 示すことが明らかとなった。今後、trans-2 の詳細な液晶相の同定と液晶状態での磁気物性測定を 行う予定である。 O O Me Me O O N N O O Me O Me O O OC16H33 (S,S,S,S)-1 O C16H33O C16H33O C16H33O C16H33O H N Me O O N N O Me t rans-2 OC16H33 O OC16H33 N H OC16H33 -2-