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[データ編] 欧州連合 (European Union: EU)
[データ編] 2015年6月1日改訂 ヨーロッパ旗:12の金色の星を円形に配置した青地の旗。12という数は、キリスト教に由来する もので「完全」と「全体」を意味し、円形は諸国民の団結を象徴する。背景の青は五大陸のうち でヨーロッパを象徴する色。ヨーロッパ評議会(CE)が1955年に制定、1986年以来ECの公式紋 章。 ヨーロッパ歌:『歓喜の歌』(Ode auf der Freude:ベートーベン第九交響曲よりヘルベルト・フ ォン・カラヤンが編曲)1972年制定。 ヨーロッパの日:5月5日と5月9日の両説がある。前者は1950年5月5日にヨーロッパ評議会憲章が 調印されたことに因み、後者は1951年5月9日にシューマン・プランが宣言されたことに因む。 欧州連合 (European Union: EU) 加盟国:28 カ国 原加盟国:フランス、西独(現ドイツ)、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク 1973年(第一次拡大):英国、アイルランド、デンマーク 1981年(第二次拡大):ギリシャ 1986年(第三次拡大):スペイン、ポルトガル 1995年(第四次拡大):オーストリア、スウェーデン、フィンランド 2004年(第五次拡大):エストニア、ラトヴィア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロヴァ キア、ハンガリー、スロヴェニア、マルタ、キプロス 2007年(第六次拡大):ブルガリア、ルーマニア 2013年(第七次拡大):クロアチア 総人口:5億0566万人(2013) GDP:12兆8890億ユーロ(2012) 公用語:24 主要条約:欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)設立条約 (1951年4月18日調印、2002年7月23日失効) ローマ条約(1957年3月25日調印、1958年1月1日発効)=EEC/EAEC 併合条約(1965年4月8日調印、1967年7月1日発効) 単一欧州議定書(1986年2月17/28日調印、1987年7月1日発効) マーストリヒト条約(1992年2月7日調印、1993年11月1日発効) アムステルダム条約(1997年6月18日採択、1999年5月1日発効) ニース条約(2000年12月11日採択、2003年2月1日発効) 欧州憲法条約(2004 年 10 月 29 日にローマで調印→死文化) リスボン改革条約(2007 年 12 月 13 日調印、2009 年 12 月 1 日発効) [機構] ◆ヨーロッパ理事会(European Council:「EUサミット」)TEU 15条 年2回以上議長国において開催。前半(3月・6月)・後半(10月・12月)の各議長国下に2回 ずつ計4回開催されるのが通例。(ユーロ危機が尖鋭化した状況では、ほぼ毎月のように臨時サ ミットが開かれた。)EUの最高意思決定機関であり、「連合に対し発展に必要な推進力を与え、 その政策の一般的指針を定める」機能を果たす。1969年以来、非公式の首脳会談の形で開かれて いたものが、1974年に公式の機関化。 元来は、EUの発展に向けた大所高所から政治的方向性を決定する役割を期待される場であっ たが、最近では多くの「政治決着」を要する具体的問題を扱うようになり、意思決定のルーティ ーンに組み込まれた。 1 ◆閣僚理事会(Council of Ministers:ブリュッセル)TEU16条~ 加盟国の担当相で構成される意思決定機関。全会一致が原則であり、単純多数決の議題もある が、多くの事項は特定多数決(QMV)で議決。現在(EU28)の全票数は352票である。(各国の 票数については7頁の末尾の付表参照。)QMVのためには (1) 260票(73.9%相当)、(2) 欧州委員 会の提案については過半数の国、そうでない場合には3分の2以上の国の賛成、(3) 賛成国の人 口比が全体の62%以上、の全ての要件を必要とする三重多数決制となっている。 アムステルダム条約により欧州共通外交安全保障上級代表(兼事務総長)というポストが理事 会の「顔」として新設され、前NATO事務総長のソラナ(Javier Solana:スペイン出身)が就任し た。現在では、リスボン条約により欧州対外行動庁(EEAS)に上級代表の拠点は移った形とな っている。ブリュッセル・ルクセンブルクに事務局(約2400人)。4・6・10月の理事会はルクセ ンブルク、その他の月はブリュッセル、さらに各議長国で開催される非公式理事会もある。 通常の案件は、閣僚理事会内の作業グループによる準備を経て、まず常駐代表委員会 (COREPER)で討議され、A・B項に選別される。合意が得られた案件(A項議題)は、ほぼ そのまま閣僚理事会で採択され、異論の出た案件(B項議題)について閣僚理事会でさらに審議 を重ねる。 また、大使級会合である COREPER の他にも、各国の高級官僚による会合が閣僚理事会での立 法過程を補佐するようになってきている。こうした会合には農業特別委員会、133 条委員会(域 外諸国との通商協定に関する委員会)、通貨委員会、教育委員会、共通外交安保政策(CFSP) における政治委員会などがある。作業言語は、英語および仏語。(ドイツから独語を作業言語に 加えよという要求が強まっている。) ◆欧州委員会(European Commission:所在地ブリュッセル)TEU17条~ 27名の委員(Commissioner:各国1名)は加盟国政府の合意により5年の任期で任命。各委員 はそれぞれDG単位の担当分野を持つ。欧州委員会の閣議では多数決制。 事務局(約24000人)は主に政策分野別に33の総局(Directorate-General:略称 DG)および部局 に分かれる。[欧州委員会の組織図については別表参照]。作業言語は、英語および仏語。 歴代委員長(カッコ内の国名は出身国) 1958-67 ヴァルター・ハルシュタイン(Walter Hallstein :西ドイツ) 1967-70 ジャン・レイ(Jean Rey:ベルギー) 1970-72 フランコ・マリア・マルファッティ(Franco Maria Malfatti:イタリア) 1972-73 シッコー・マンスホルト(Sicco Mansholt:オランダ) 1973-77 フランソワ・ザビエル・オルトリー(Francois Xabiel Ortoli:フランス) 1977-81 ロイ・ジェンキンス(Roy Jenkins:英国) 1981-85 ガストン・トルン(Gaston Thorn:ルクセンブルク) 1985-95 ジャック・ドロール(Jacques Delors:フランス) 1995-99 ジャック・サンテール(Jacques Santers:ルクセンブルク) 1999-2004 ロマーノ・プローディ(Romano Prodi:イタリア) 2004-2014 ジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso:ポルトガル) 2014ジャン=クロード・ユンカー(Jean-Claude Juncker:ルクセンブルク) ◆欧州議会(European Parliament)TEU14条~ 所在地はブリュッセル・ルクセンブルク・ストラスブールの3つ。 当初は、「共同総会」という名称であり、CEの議員総会のメンバーと多くが重なっていたこ ともあって、各国議会での互選による代表派遣の形をとった。1962年の自らの名称に関する決議 採択以降「議会」と称されるようになった。(その後も1999年まで、ストラスブールでのヨーロ ッパ議会の会合はCEの議場を間借りして行っていた。) 1976年9月に理事会が「欧州議会直接選挙法」を制定。これに基づき、1979年に初めての直接 選挙。2014年5月に28カ国で第8回選挙が行われた。但し、各国国政選挙に比べて投票率は総じて 低いままである。 現在の議員定数751、任期5年。解散規定はない。議席配分は国別人口比を基本に決定。(各国 2 の議席数については7頁の末尾の付表参照。) 議会勢力は、社会民主進歩同盟グループ(S&D;長らく欧州社会主義グループPSEとして活動) と欧州人民党グループ(PPE)が左右の二大勢力で、これにリベラル、環境保護派、欧州懐疑派 などが少数派として存在する大陸型ヨーロッパの政党システム。ただし、欧州議会では議題に応 じて、地域連合や超党派グループなどの会派を超えた連合が組まれることが日常的である。 現在の勢力分布(2014年5月選挙;2015年6月時点)は、欧州人民党グループ(PPE-DE)218、 社会民主進歩同盟グループ (S&D) 190、欧州保守改革グループ (ECR) 73、欧州自由民主同盟グル ープ(ALDE)70、欧州統一左派・北方緑の左派同盟グループ(GUE/NGL)54、緑グループ・欧 州自由連盟(Greens-EFA)50、自由と民主主義のヨーロッパ (EFD) 46、無所属(NI)51。 欧州議会のそもそもの権限は、事実上、諮問および協力に限られていた。その後、1970年代の 予算条約、1975年の理事会との間での調停手続きの導入、1987年の単一欧州議定書(SEA)での 協力手続の導入、1992年のマーストリヒト条約での共同決定手続の導入、1999年のアムステルダ ム条約および2004年のニース条約における共同決定手続の大幅拡大、と次第に権限を強化させて きた。また、1999年はじめの欧州委員会に対する譴責(不信任)動議が最終的にサンテール欧州 委員会を辞職に追い込んだように、政治的監督権限も重要になりつつある。 ◆欧州司法裁判所(European Court of Justice:制度はフランスの行政訴訟制度に源を持っている ので、「法院」と訳すべきともいわれる)TEU19条~ 所在地ルクセンブルク。28人の判事(各加盟国1名)と8人の法務官(Avocat Général)。任期6 年。任期3年の長官を判事が互選。1989年以降、個人(法人)による提訴などを扱う第一審裁判 所が設置され、増大する裁判所の負担が軽減されている。 ◆その他の下部機関 欧州対外活動庁/経済社会評議会・地域委員会・会計検査院/欧州投資銀行・欧州投資基金・ 欧州中央銀行・欧州構造基金など。 欧州評議会(Council of Europe: CE)***欧州会議、欧州審議会とも訳される*** 1949年8月に欧州評議会憲章(同年5月5日調印)に基づき発足。本部ストラスブール。加盟国 47カ国(2013年6月現在)。公用語は英仏の二カ国語。特に文化政策の領域で加盟国間の協力促 進に努めているほか、人権の分野での役割も大きい。 [機構] ◆閣僚委員会(Committee of Ministers) 欧州評議会の最高意思決定機関。加盟国外相で構成され、年1回会合(2003年までは年2回の開 催)。この下で大使級の常駐代表が毎月会合を開く。加盟国によって承認された場合などの特定 のケース以外は、全会一致で加盟国政府に対して勧告を行う権限と、協定の提案を行うのみ。 ◆議員総会(Parliamentary Assembly) 各国2-18人の代議員が、加盟国の議会から政党比に応じて選出される。議員定数318人(2013年6 月現在)。会期は年4回で、閣僚委員会への諮問が主たる機能。下部に10の委員会を持つ。 ◆自治体・地域会議(CLRAE) 1994年に設立された議員総会と同数の代議員から成る会議。地域および自治体の二院制。 ◆事務局 総会により5年任期で任命される事務総長のもとに約2100人の職員。下部機関として、欧州ユー スセンターなどがある。 ◆欧州人権裁判所(European Court of Human Rights) 1950年に採択された欧州人権条約の遵守のために設立された機関。個人もしくは加盟国の人権侵 害の提訴に基づき、従来は下部に設置された欧州人権委員会が事前審理にあたり、その結果人権 侵害にあたるとされた場合には、人権裁判所(欧州評議会の加盟国数と同数の判事)による審理 に付託されるか、もしくは、閣僚委員会での審議に付されていた。1998年11月に第11議定書が発 効したことに伴い、改組され裁判所に一本化された。 3 北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty Organization: NATO) 1949年4月4日調印の北大西洋条約に基づいて発足。原加盟国は米国・カナダと西欧10カ国の12 カ国、1952年にギリシャ、トルコ、1955年に西独(現ドイツ)、1982年にスペイン、1999年にポ ーランド、チェコ、ハンガリーが加盟し、さらに2004年3月に中東欧7カ国が正式加盟、2009年に アルバニア、クロアチアが加盟し現在28カ国。(フランスは1966年に軍事機構を脱退したが、 1990年代後半になって全面復帰。)本部ブリュッセル。 [機構] ◆運営(Civil)機構 最高意思決定機関として北大西洋理事会(North Atlantic Council: NAC)があり、これと並列に防 衛計画委員会(Defence Planning Committee: DPC)と核兵器計画委員会(Nuclear Planning Group: NPG)が置かれる。NAC には首脳・外相レベルの年2回の会合(NATO サミットもしくは NATO 外相会談)と、NATO 大使レベルで週1回開かれる常駐代表会議がある。DPC と NPG は、 通常合同で開かれ、防衛相レベルで年2回(NATO 防衛相会談)。この3つの機関のもとに、事 務総長と事務局(約 1200 人)と、政治委員会他、20 余の委員会が置かれている。 ◆軍事(Military)機構 加盟国の制服組トップで構成される軍事委員会(Military Committee: MC)が最高権威で、この下 に 欧 州 連 合 軍 ( Allied Command Europe: ACE ) と 大 西 洋 連 合 軍 ( Allied Command Atlantic: ACLANT)が置かれる。ACE の最高司令部 (Supreme Headquarters for Allied Powers in Europe: SHAPE)はベルギーのモンス近郊にあり、最高司令官(The Supreme Allied Commanders, Europe: SACEUR)も通例米国の将校が任命される。 西欧同盟(Western European Union: WEU) 1948年のブリュッセル条約を基に、1954年10月のパリ諸条約で結成、1995年10月に発足。原加 盟国は英国、フランス、西独(現ドイツ)、イタリア、ベネルクス三国の7カ国。1989年にスペ イン・ポルトガル、1992年にギリシャが加盟。本部ブリュッセル。 長らく事実上の休眠状態にあり、東西冷戦終結後に欧州独自の安全保障機構の核となる期待か ら再浮上。その後、EUのアムステルダム条約発効によって1999年11月にソラナCFSP上級代表が WEU事務総長を兼任し、さらにニース条約によってWEUはEUの共通外交安全保障政策(CFSP) の一部として「編入」された。WEU存続の最大の理由であった自動参戦義務を含む同盟条項(5 条)もリスボン条約に引き継がれ、その結果2010年3月31日にブリュッセル条約はその効力が停 止され、西欧同盟の活動は2011年6月30日に正式に終了した。 欧州安全保障協力機構(Organization for Security and Cooperation in Europe: OSCE) 欧州のデタント(緊張緩和)と相互安全保障のために1975年7月に東西35カ国の首脳が参加し てヘルシンキで開催された欧州安全保障協力会議(CSCE)はヘルシンキ宣言として、①軍事・ 安全保障面、②経済協力、③人権分野、の三つの「バスケット」での東西対話を打ち出し、その フォローアップのための会議(「再検討会議」とも称される)の連続体として事実上恒久的な枠 組みとなった。1990年のパリ憲章によって常設機構化し、1991年にはプラハに事務局を設置 (1993年にウイーンに移転)。1992年に国連憲章第8章に規定される地域的安全保障機構である ことを宣言。1995年1月にはOSCEに名称を変更した。加盟国は欧州諸国に米加、旧ソ連諸国を加 え57カ国。(2012年11月にモンゴルが加盟したのが最後。)本部ウィーン。 [機構] ◆首脳会議・再検討会議 首脳会議は原則として2年に1回。CSCE の時代には首脳会議の準備のために長期に及ぶ再検討 会議が開催されていたが、OSCE の常設機構化に伴い従来の再検討会議の機能は、毎週ウィーン で開催される大使級(常駐代表)の常設理事会が果たすようになっている。 ◆閣僚理事会 首脳会議の開催されない年につき、年1回程度開催される外相会議。首脳会議の代行的機能。原 4 則として議長国(毎年交代)で開催。 ◆OSCE 議員会議 1991 年のマドリッド宣言に基づき設置。現在、加盟国議会代表 320 名で構成され、年次総会の他、 分野別の常設委員会等の各種会合を開催。 ◆下部機関 議長国議長(外相)の下に、事務総長(約 200 人の職員を擁する事務局)、民主制度・人権事務 所(ワルシャワ)・メディアの自由に関する OSCE 代表(ウィーン)・少数民族高等弁務官(ハ ーグ)等の機関。他に調停仲裁委員会(ジュネーヴ)等の関連機関。 2014 年 6 月現在、17 の現地活動(ミッション等)を南東欧、コーカサス、中央アジアで展開中。 ***ヨーロッパ統合のネットワークに関連する機関を網羅的に紹介することはできないが、ここ で挙げた以外に特に重要と思われる機関名を記す。これらの機関はEUとは別機関であることに 留意。 [公的機関] 経済協力開発機構(OECD) 欧州復興開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development: EBRD) 欧州特許局(European Patent Office: EPO) 欧州運輸大臣会議 (European Conference of Ministers for Transport: ECMT) 欧州郵政・テレコミュニケーション会議(Conference Européenne Poste Tele-communication: CEPT) 欧州大学院大学(European University Institute: EUI) 欧州宇宙機関(European Space Agency: ESA) 欧州合同素粒子原子核研究機構(Centre Europeenne Recherche Nuclaire: CERN) [民間組織] EUの三大圧力団体と称されてきたものとして、欧州共同体産業連盟(Union des Industries de la Communauté Européenne: UNICE)、欧州労働組合総連合(European Trade Union Confederation: ETUC)、EU農業団体委員会(COPA)、がある。 近年では、欧州消費者団体連合(Bureau européen des unions des consommateurs: BEUC)や、環 境分野での(E)NGOにもEUの政策決定において重要な役割を果たすものが少なくない。 5 [付表]リスボン条約での規定数(過渡規定に関する議定書など) 国名 ドイツ フランス 英国 イタリア スペイン ポーランド ルーマニア オランダ ギリシャ チェコ ベルギー ハンガリー ポルトガル スウェーデン オーストリア ブルガリア スロヴァキア デンマーク フィンランド リトアニア クロアチア アイルランド ラトヴィア スロヴェニア エストニア キプロス ルクセンブルグ マルタ 理事会票数 29 29 29 29 27 27 14 13 12 12 12 12 12 10 10 10 7 7 7 7 7 7 4 4 4 4 4 3 欧州議会議席数 96 74 73 73 54 51 32 26 21 21 21 21 21 20 18 17 13 13 13 11 11 11 8 8 6 6 6 6 EU―28 352 751 ※欧州議会議席数に関するリスボン条約の規定は、(1) 750名を超えない(議長を除く)、(2)一加 盟国に対して6議席を最低限度として逓減的比例配分とする、(3)いかなる加盟国も96議席を超え て配分されない、と定められている。 6