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⑤ 土壌から感染 - JOMF:一般財団法人 海外邦人医療基金
監修: 慶應義塾大学 名誉教授 南里清一郎 海外邦人医療基金 Japan Overseas Medical Fund 2017年2月改訂版 はじめに 一般財団法人海外邦人医療基金 発展途上国(以下、途上国)は感染源となる病原体が多いので、世界で最も衛生水準の高い 国の一つである日本から行く場合、種々の感染症の問題があります。予防接種により予防可能 な感染症に関しては、積極的に予防すべきと考えます。しかし、予防接種のない感染症は沢山 あります。そのような場合には、感染経路を熟知し、感染症を予防することが大切です。本冊 子は、感染症を感染経路別にまとめました。赴任地での感染症予防の一助となれば幸いです。 一般財団法人 海外邦人医療基金(Japan Overseas Medical Fund) 目 次 1984年に外務省、厚生労働省(旧厚生省、労働省)の指導のもと、純民間の財 ○はじめに 1.感染症とは………………………………………………… 2 2.感染症と感染経路(途上国を中心に)…………………… 3 ① 飲食物、汚れた手などから感染(経口感染)………… 3 ② 人から感染(空気感染、飛沫感染、接触感染)……… 5 ③ 動物から感染…………………………………………… 7 ④ 昆虫から感染…………………………………………… 8 ⑤ 土壌から感染…………………………………………… 9 ⑥ 動物製品・食品から感染……………………………… 9 ⑦ 川や海の水から感染…………………………………… 9 ⑧ 性行為から感染………………………………………… 10 ⑨ 医療行為から感染……………………………………… 10 3.注意すべき感染症と予防法……………………………… 11 ① コレラ…………………………………………………… 11 ② 細菌性赤痢……………………………………………… 11 ③ 腸チフス・パラチフス………………………………… 12 ④ A 型肝炎………………………………………………… 12 ⑤ E 型肝炎…………………………………………………… 13 ⑥ BSE… …………………………………………………… 14 ⑦ SARS……………………………………………………… 15 ⑧ 髄膜炎菌性髄膜炎……………………………………… 16 ⑨ 新型インフルエンザ…………………………………… 16 ⑩ 鳥インフルエンザ……………………………………… 17 ⑪ 狂犬病…………………………………………………… 18 ⑫ 黄熱……………………………………………………… 19 ⑬ マラリア………………………………………………… 19 ⑭ 日本脳炎………………………………………………… 20 ⑮ デング熱………………………………………………… 21 ⑯ ウエストナイル熱……………………………………… 21 ⑰ ジカウイルス感染症(ジカ熱)………………………… 22 ⑱ B 型肝炎………………………………………………… 22 ⑲ AIDS… …………………………………………………… 24 ⑳ C 型肝炎………………………………………………… 25 エボラ出血熱(エボラウイルス病)…………………… 25 中東呼吸器症候群(MERS)…………………………… 26 4.その他の主な感染症……………………………………… 28 ○おわりに の委託を受け、海外巡回健康相談事業を展開。また、翌1985年には、シンガポー 団法人として設立された。同年から労働福祉事業団(現在 労働者健康福祉機構) ル日本人会診療所を設立し、邦人医師第1号の派遣を行った。1986年にはマニラ 日本人会診療所、90年ジャカルタ日本人医療相談室、97年大連市中心医院医療 相談室を開設。海外在留邦人の医療不安解消を目的に、 「 (海外での)診療所や医 療相談室の開設・運営援助」 「海外医療情報の収集・提供サービス」 「海外在留邦 人に対する巡回健康診断の実施」 「各種セミナー開催」 「海外医療従事者の日本研 修」「海外巡回健康相談」 「 (企業・健保組合との健康診断委託契約に基づく)海外 委託健康診断の実施」 「国内外の医療機関との交流促進」などの事業を行なってい る。 2013年4月1日より一般財団法人に移行した。 〒105-0003 東京都港区西新橋2−4−2 西新橋安田ユニオンビル1階 TEL:03-3593-1001 FAX:03-3502-1229 URL ● http://www.jomf.or.jp/ 1 MEMO 感染症とは 病原体によって引き起こされる病気を感染症といいます。病原体には、小さいほうから、 ウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチア、細菌、スピロヘータ、真菌、原虫、 寄生虫などがあります。感染症のなかで、流行性に他に伝染する病気を、特に、伝染病とよ ぶことがあります。日本においては、ウイルスや細菌による感染症が重要ですが、途上国に おいては、すべての病原体が問題となります。感染症の予防で重要なことは、感染源対策、 感染経路対策、個人対策です。途上国においては、感染源となるものは多く、この対策は容 易ではありませんので感染経路対策が重要となります。個人対策で最も重要なことは、予防 接種による特定の病気に対する抵抗力(特異的免疫)をつけることです。また、色々な病気 に対して、抵抗力をつける(非特異的免疫)という意味では、十分な栄養を取る必要があり ます。日本においては、栄養過剰による肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が問題 ですが、途上国においては、栄養不足による免疫力の低下による感染症が問題です。よって 途上国においては、栄養過剰気味である方が、栄養素不足に陥らないと考えられます。しか し、それが習慣とならないように注意する必要があり、栄養過剰の分を運動により消費する のが理想です。 2 感染症と感染経路(途上国を中心に) ① MEMO 飲食物、汚れた手などから感染(経口感染) コレラ、ポリオ、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、腸チフス、パラチフス、A 型肝炎、 E 型肝炎、病原大腸菌による下痢症、食中毒、回虫症、ジアルジア症、BSE など 経口感染は、感染症の60%を占めており、この経路を遮断すれば、感染症にかかる危険性 を60%以上減らせる、ということになります。経口感染の予防は、病原体が感染している可 能性のある水や食品を摂取しないことです。飲料水は原則として煮沸(5分以上沸騰)しま す。たとえ水道水でも汚染している可能性があるので煮沸します。 食物は、火のとおったものを調理後できるだけ早く食べることです。食べ残したものを時 間をおいてまた食べることはやめましょう。生ものはなるべく食べないのが望ましいのです が、私たち日本人は、刺身やすしなど、どうしても生ものが食べたくなるようです。生魚を 食べる場合は、信頼できるレストランで食べるか、家庭で新鮮な魚を調理するようにしてく ださい。ゆで卵のゆで時間は7分以上としましょう。 また、調理器具を清潔に維持しましょう。まな板、包丁は一日の調理が終わったら、熱湯 をかけ、一晩乾燥させます。さらに、まな板は1カ月に1回くらい直射日光に1時間ほどさ らして、紫外線消毒します。 調理の前には手を洗いましょう。特に、調理を手伝ってもらうお手伝いさんたちにも手洗 いをするように注意してください。 ビタミン摂取のために生野菜を摂取する必要があると考えている人もいますが、加熱によ るビタミンの破壊は、ビタミン C で50%程度であり、その他は、あまり問題となりません。 ビタミンは生野菜からでなく、新鮮な果物から取る方が安全です。熱帯地方では、暑さによ る体の代謝は亢進しており、また、感染症予防のために摂取する食品に気を使う必要がある ので、総合ビタミン薬を服用するのも一方法です。 細菌性食中毒について 食中毒には菌そのものが悪さをする「感染型」と、菌の作る毒素が悪さをする「毒素 型」があります。 感染型の代表がサルモネラ、腸炎ビブリオなどで、毒素型の代表がボツリヌス菌、黄 色ブドウ球菌、大腸菌 O-157などです。 おわりに 感染症予防においては、予防接種を過信することなく、感染経路を遮断することです。 経口感染の予防は食物に火を通し、安全な水を選び、トイレの後は手洗いをすることです。 空気感染・飛沫感染・接触感染の予防は、手洗い、うがい、マスク着用はある程度意味が あります。蚊の吸血による感染症には重要なものがあり、その予防は大切です。性行為感 染症の予防は、節度ある行動が最も重要ですが、コンドームの使用はある程度意味があり ます。医療行為からの感染予防のためには、使い捨ての注射器・注射針を赴任地によって は日本から準備していく必要があります。日本では、発熱した場合、まず、風邪と考えま すが、途上国ではマラリア、デング熱、腸チフスなどを念頭に置く必要があります。下痢 をした場合は、その原因として種々の細菌や原虫、寄生虫を考える必要があります。 2002年から2003年にかけ、SARSという新しい感染症 (新興感染症) が、あっという間 に世界に広がり、多くの人が命を落しました。2009年には新型インフルエンザ A(H1N 1)が、これも、あっという間に世界に広がりました。1999年には、本来、アフリカの病 気であるウエストナイル熱(再興感染症)がニューヨークで流行し、あっという間に全米 に広がりました。2012年12月にはアフリカのコンゴ民主共和国とウガンダでエボラ出血 病原大腸菌について 大腸菌は人や動物の腸内、土壌などに広く存在しており病原性のないものが多いので すが、一部の大腸菌は食中毒の原因菌として下痢などを引き起こし、病原大腸菌と呼ば れています。 病原性を持った大腸菌は次の5つです。 ・毒素原性大腸菌(ETEC) ・病原血清型大腸菌(EPEC) ・組織侵入性大腸菌(EIEC) ・腸管凝集性大腸菌(EAggEC) ・腸管出血性大腸菌(EHEC) この内、毒素原性大腸菌(ETEC)は旅行者下痢症のなかで最も高頻度に見られ、腸管 出血性大腸菌(EHEC)は重症化することがあるので注意が必要です。 一般に良く知られている O-157は腸管出血性大腸菌の一つです。 熱が流行しました。また、2014年2月から、ギニア、シエラレオネ、リベリアを中心に最 旅行者下痢症について 大規模のエボラ出血熱の発生があり、2016年4月に WHO は西アフリカにおける流行は、 熱帯地方途上国旅行者の約30%が下痢をするといわれていますが、このような下痢の もはや、国際的な懸念に対する公衆衛生上の緊急事態ではないことを宣言しました。しか ことを旅行者下痢症と呼んでいます。長期滞在となれば、この下痢が重大な問題となり し、 2016年4月にリベリアで新たなエボラ出血熱患者が確認されています。2015年には、 ます。 ブラジルを中心に中南米、カリブ海でジカウイルス感染症の流行が発生し、日本でも、す 旅行者下痢症の原因病原体は、毒素原性大腸菌が最も多く、その他の病原大腸菌、赤 でに輸入症例を認めています。医学の進歩により新興感染症が発見され、交通の発達によ 痢菌、カンピロバクター、ビブリオ、サルモネラ、コレラ菌などの細菌とランブル鞭毛 りその拡大はあっという間に起こり、また、思いがけない所で再興感染症が流行します。 虫、赤痢アメーバ、クリプトスポリジウムなどの原虫とロタウイルスです。 感染経路を正しく理解し行動すれば、どんな感染症に対しても立ち向うことができます。 小児の下痢の治療において最も重要なことは、いかに脱水症をコントロールするかに 途上国からの帰国時には、血液(マラリアなど)、便(一般虫卵、アメーバ赤痢、ランブル あります。最も安全で有効な方法は、輸液(点滴)ですが、途上国では、安全に輸液で 鞭毛虫など)などの検査をし、赴任地で流行していた感染症のチェックをすることが望ま きるかどうかに不安があります。経口的な方法としては、WHO の推奨する ORS(oral れます。 rehydration solution)があります。これは、食塩3.0g、重曹2.5g、塩化カリ1.5g、ブ ドウ糖20g(または砂糖40g)を1,000ml の水で溶かし使用します。市販のスポーツ飲 料であるポカリスエット粉末1袋76g を1,200ml(普通に使用する場合1,000ml に溶か す)で溶かすと*、ORS とほぼ同じものができます。その他、ソリタ T 顆粒3号、OS- 1(オーエスワン)、アクアライトなどを医師、薬剤師に使い方の指導を受け、準備して おくと有用です。 また、原因病原体によっては抗菌薬が有効なものもあります。成人の場合途上国にお ける下痢のためにあらかじめ用意していた抗菌薬を服用するとかなり効果があるといわ れています。小児の場合薬の副作用などを含め、難しい問題もありますが、使い慣れた 抗菌薬を1日位服用し様子をみるのも一つの方法です。 一番問題なのは、脱水症なので経口補水液によりうまくコントロールできれば急場は しのげるということになります。下痢を止める薬は、素人が使う場合、色々な問題があ りますから、ビオフェルミンなどの整腸薬を使用するのが安全です。 ところで、脱水症を見分ける目安としては、乳・幼児の場合、経口水分摂取量500ml 以下黄信号、300ml以下赤信号、下痢の回数(非常に量の少ないのは除く) 5回以上黄信 号、10回以上赤信号、1日の排尿回数3回以下黄信号、1回以下赤信号です。下痢に加 え嘔吐を伴う場合は、経口水分摂取量が減り、より脱水には要注意であり、嘔吐3回以 上黄信号、5回以上赤信号です。 また、血便や激しい腹痛を伴う時は、早期に医療機関で受診することが勧められます。 一般的な下痢・嘔吐の対処法としては、できるだけ安静にし、水分中心に温めた牛乳や お茶を飲ませます。だんだんよくなれば、お粥やうどんのような消化のいい脂肪分の少 ないものを与えます。外国ではBRAT(バナナ、米、りんごおろし、トースト)を与え ることが多いようです。 * 海老沢功:旅行医学-海外渡航者の健康管理と診療- P53,日本医事新報社,2003 食中毒の予防は経口感染の予防につながります 1.食品汚染の防止 1)食品を保存する場合は容器に入れたり、ラップをしましょう。 2)まな板などの調理器具や手はよく洗いましょう。 2.食品中での細菌増殖防止(菌数が一定量をこえると食中毒をおこします) 1)調理した食品は、早めに食べましょう。 2)食品を保存する場合は必ず冷蔵庫に入れましょう。 3.食品中の細菌の殺菌 1)食品は中心まで確実に加熱しましょう。 ② 人から感染(空気感染、飛沫感染、接触感染) かぜ症候群(普通感冒)、インフルエンザ、ジフテリア、百日咳、麻疹、風疹、 おたふくかぜ、水痘、結核、SARS、マーズ、エボラ出血熱など 空気(飛沫核) ・飛沫感染の予防は、日本とほぼ同じです。外出から帰ったら、手洗い、う がいをしましょう。途上国では、日本に比べ結核患者は圧倒的に多いので注意が必要です。 感染症の情報収集におすすめのサイト 外務省・在外公館医務官情報 http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html 外務省・海外安全ホームページ // 感染症(新型インフルエンザ等)関連情報 http://www.anzen.mofa.go.jp/kaian_search/ WHO(世界保健機関) http://www.who.int/ CDC(米国疾病予防管理センター) http://www.cdc.gov/ 国立感染症研究所(NIID) http://www.nih.go.jp/niid/ja/ 「感染症疫学センター」 (IDSC)のページでは、最新の予防接種スケジュールや「海外感染 症情報」 、 「人獣共通感染症」等各種感染症情報を見ることができます。 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター トラベルクリニック http://www.travelclinic.ncgm.go.jp/ 国立国際医療研究センター内のトラベルクリニック。感染症や予防接種、健康診断など海 外渡航にあたっての健康管理に関する情報を提供。 FORTH http://www.forth.go.jp/ 厚生労働省検疫所による海外渡航者向けの情報提供。 横浜市衛生研究所 横浜市感染症情報センター 疾患別情報 各国の予防接種 http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/eiken/idsc/disease/ 国別予防接種情報。 世界の様子(国別生活情報) http://www.jica.go.jp/regions/seikatsu/ 国際協力機構(JICA)のサイト。食生活、衣料、住宅、教育、治安、緊急時の心得、出入 国及び帰国手続き等、途上国への赴任者にとって生活面における様々なカテゴリーの情報 が充実しています。 日本渡航医学会 http://www.jstah.umin.jp/ トラベルクリニック情報のコーナーに国内の予防接種機関が掲載されています。 (注)上記の URL および掲載情報は管理者の都合で変更される場合がありますのでご了承く ださい。 身近に結核の人がいると、感染することがあります。お手伝いさんや運転手さんの結核検診、 特に胸部 X 線撮影を1年に1回程度は行うようにしましょう。 性器クラミジア感染症 Genitalchlamydialinfection 飛沫感染と空気感染(飛沫核感染)について 病原体 クラミジア・トラコマティス 飛沫感染: [インフルエンザ・おたふくかぜ・風疹など] 分布 世界的に分布 キャリア(保菌者・保有者)の咳やくしゃみ、会話などをした時に発生する飛沫(細 感染経路 性行為感染など かい水滴) に含まれている細菌やウイルスを鼻や口から吸い込むことにより感染します。 潜伏期間 1~3週 症状 排尿痛とかゆみ、尿道口の膿の出現、発赤、浮腫など 予防法 コンドーム使用 治療法 抗菌薬 備考 致死率:0% この飛沫の大きさは5ミクロン以上で、飛距離は大体1メートルぐらいです。 空気感染: [結核、麻疹、水痘] キャリアの排出する飛沫核に付着している菌やウイルスを鼻や口から吸い込むことに より感染します。 この飛沫核の大きさは1~5ミクロンの微細な粒子で乾燥しており、軽いので、長時 間空中を漂い、部屋から部屋へと移動することもあり得ます。 性器ヘルペスウイルス感染症 病原体 単純ヘルペスウイルス(1、2型) 分布 世界的に分布 感染経路 性行為感染、母子感染 潜伏期間 2~10日 症状 痛みを伴う水疱・潰瘍、ただれ、発熱 予防法 コンドーム使用(性行為感染) 治療法 抗ウイルス薬 Herpessimplexvirusinfection 飛沫感染・接触感染の予防 ・手洗い 手洗いは、日常生活で最も基本的な感染予防法。 手洗い方法 ①流水で洗い流す。 ②石鹸を泡立てる。 ③手のひら→手の甲→指先→親指→指間→手首の順で擦り合わせる。指先は反対側 の手のひらに立てるように擦り合わせる、親指は包み込むようにして洗う、手首 【参考資料】 1)IDSC(感染症情報センター)ホームページ:http://idsc.nih.go.jp/index-j.html 2)FORTH(厚生労働省検疫所)ホームページ:http://www.forth.go.jp/ 3)AAP:Red Book 30th Edition,2015 4)WHO:INTERNATIONAL TRAVEL AND HEALTH,2015 5)CDC:Yellow Book 2016 6)Dupont Steffen:Textbook of Travel Medicine and Health second edition,2001 は全周を洗うようにひねり洗いする。10秒以上かけて洗う。 ④流水でしっかりすすぎ、石鹸成分を洗い流す。 ⑤しっかり乾燥させる(ペーパータオルで拭く、エアドライヤーで乾かす)。 ・マスク 市販の不織布マスクと医療用のサージカルマスクは同程度の性能で、咳やくしゃみで 飛散する飛沫(粒子径5μm以上)を十分捕捉できます。 マスク着用により飛沫の吸入は軽減されますが、飛沫粒子は落下速度が速いので、医 療機関内や看病あるいは混んだ閉鎖空間(電車、バス、狭い部屋など)で浴びせられる 場合など、飛沫感染の機会は限られています。 3時間で無意識に目・口唇・鼻孔に何回触れるか調べた米国の研究では、平均で47回 と報告されており、手にウイルスが付着した場合、接触感染が成立する機会は非常に多 いと想像されます。 ・うがい 効果的なうがいとして、以下のようにして3回繰り返す方法があります。 (1回目)食べかすや有機物を取る目的で、水道水を口に含んで強くうがいをする。 (2回目)上を向いて、のどの奥まで水道水が届くように、15秒間うがいをする。 (3回目)2度目と同じように、水道水がのどの奥まで充分届くように、15秒間うが いをする。 ③ ⑦ 川や海の水から感染する病気 住血吸虫症 動物から感染 狂犬病、ペスト、ラッサ熱、オーム病、ネコひっかき病、鳥インフルエンザ、レ プトスピラ症など ペット類はなるべく飼わないほうがよいのですが、犬を飼う場合は、規定の予防接種をき Schistosomiasis 病原体 日本住血吸虫、メコン住血吸虫、マンソン住血吸虫、ビルハルツ住血吸虫など 分布 世界的に分布 感染経路 接触感染(経皮感染) 潜伏期間 4~6週 症状 発熱、嘔気、腹痛、下痢、貧血、頻尿、血尿など 予防法 流行地では淡水での水泳、水浴を控える(特に河川や湖沼) 治療法 抗寄生虫薬 備考 致死率:10% ちんと行う、口移しに餌を与えることは避けるなどの注意が必要です。 もし、狂犬病の疑いのある犬に咬まれたら、事前に予防接種を受けていなければ直ちに、 狂犬病免疫グロブリンと狂犬病ワクチンを接種してください。事前に予防接種を受けていれ ば狂犬病ワクチンを追加して下さい。遅れると生命に関わることがあります。また、咬まれ た場所が頭部に近いほど、潜伏期間が短くなります。また、犬に咬まれた時は破傷風トキソ イドの予防接種も必要です。 コラム WHO が定めた基準 狂犬病又はその疑いのある飼育動物や野 生動物との接触、又は観察不能な動物と 処置方法 の接触の状況 ⑧ 性行為から感染する病気 梅毒 Syphilis 病原体 梅毒トレポネーマ 分布 世界的に分布 感染経路 性行為感染、血液感染、母子感染 潜伏期間 3週 症状 潰瘍、微熱、倦怠感、リンパ節腫脹、発疹など 予防法 コンドーム使用 治療法 抗菌薬 備考 致死率:国・地域など医療環境により大きく異なる カテゴリー1(危険性なし) 動物に触れたり、餌を与えた。 処置必要なし 動物に傷のない皮膚をなめられた。 カテゴリー2(低い危険性) 動物に直接皮膚をかじられた。 出血を伴わない引っ掻き傷やすり傷がで きた。 カテゴリー3(高い危険性) 1か所以上の咬傷や引っ掻き傷ができた。 動物に粘膜をなめられた。 動物に傷のある皮膚をなめられた。 コウモリとの接触。 淋菌感染症 Gonorrhea 病原体 淋菌 ただちにワクチン接種を開始するが、10 分布 世界的に分布 日間動物が健康であるか、剖検して狂犬 感染経路 性行為感染 病が否定された場合は中止する 潜伏期間 2~9日 症状 排尿痛、頻尿、下腹部痛、関節痛、直腸痛、腸出血、痔、膿便、血便、下痢、 咽頭痛、発熱 クチンを開始するが、10日間動物が健康 予防法 コンドーム使用 であるか、剖検して狂犬病が否定された 治療法 抗菌薬 場合は中止する 備考 致死率:0% ただちに抗狂犬病ガンマグロブリンとワ ⑥ ④ 動物製品・食品から感染する病気 炭疽 Anthrax 昆虫から感染 黄熱、マラリア、日本脳炎、デング熱、ウエストナイル熱、シャーガス病、チ 病原体 炭疽菌 分布 世界的に分布 感染経路 感染動物やその骨、皮革との接触感染 昆虫による咬傷 芽胞による空気感染、経口感染 熱帯・亜熱帯には昆虫に刺されて感染する特有な病気があります。特に、マラリア、日本 潜伏期間 1~7日間 うにする工夫が大切になります。 症状 皮膚炭疽:にきび様の初期病変の後、無痛性で非化膿性の悪性膿胞の出現 腸炭疽:嘔気、嘔吐、吐血、血便、腹水の貯留(腸管感染) 、咽頭炎、嚥下障害、 発熱、頸部のリンパ節炎(口咽頭部感染) 肺炭疽:インフルエンザのような症状の後、頭痛、筋肉痛、悪寒、胸部の軽度 の疼痛の発生、突然の呼吸困難、チアノーゼ、昏睡を伴う失見当識(重 症) 日本脳炎、デング熱などを媒介する蚊のボウフラは、たまり水にわくので、家の周囲のど 予防法 予防接種(米国など) 治療法 抗菌薬 備考 致死率:国・地域など医療環境により大きく異なる クングニア熱、ジカウイルス感染症など 脳炎、デング熱、チクングニア熱などは蚊によって媒介されます。そこで蚊に刺されないよ ぶさらいをし、空き缶、椰子殻、古タイヤなど、水がたまりやすいものを除去することで、 蚊の発生を抑えることができます。 マラリアを媒介するハマダラ蚊のボウフラは、酸素の多いきれいな水でしか育たないので、 通常都会にはいません。地方に行ったとき、池、潅漑用水、川などにホテイアオイ(金魚鉢 に浮かべる水草)がたくさん浮いていれば、そこはハマダラ蚊の生息に格好の場所なので、 マラリアに注意しなくてはなりません。ハマダラ蚊は夜間にしか吸血行動をとらないので、 夜間の外出をできるだけ避けること、どうしても外出しなくてはならないときには、虫よけ の薬を顔、腕などの露出部に塗布することが大切です。虫よけの薬の効果は3時間程度(海 外には長時間効果のあるものがある。日本でも認可・販売予定。)が目安になります。 ボツリヌス中毒 Botulism 宿泊先では網戸のはいった部屋に殺虫剤を噴霧し、さらに蚊帳を併用して寝るようにしま 病原体 ボツリヌス菌 しょう。蚊取り線香で蚊がすべて死ぬわけではありません。また、電気蚊取りでは、夜間の 分布 世界的に分布 停電には対処できません。蚊に刺されて感染するウエストナイル熱は、アメリカなど先進国 感染経路 経口感染 潜伏期間 12~36時間 症状 神経麻痺症状(複視、発語障害、呼吸困難、嘔気、嘔吐) 予防法 “いずし”などを食するときは、よく衛生管理されたものを選ぶ 治療法 抗毒素、対症療法 備考 致死率:20% でも問題になっています。それに、ブラジルから中南米を中心にジカウイルス感染症が問題 になっています。 コラム マラリアの薬 マラリアの薬には予防薬(予)と治療薬(治)があります。マラリアの予防で最も重 要なことは、ハマダラ蚊に刺されないことです。マラリアの治療で最も重要なことは、 早期診断と適切な薬による治療です。日本での予防薬・治療薬は僅かですが、外国に は色々な種類の薬があります。マラリアの薬は副作用の強いものが多いので渡航先に 合った予防薬・治療薬に関しては専門医に相談しましょう。 ○アトバコン・プログアニル(マラロン配合錠Ⓡ:GSK)(治)(予) ○メフロキン(メファキン「ヒサミツ」Ⓡ 錠:久光)(治)(予) ○キニーネ(塩酸キニーネ「ホエイ」Ⓡ:マイラン)(治) 熱帯病治療薬研究班保有(国内未承認) ○アーテメーター・ルメファントリン配合錠(治) ○グルコン酸キニーネ注射薬(治) ダニ媒介性脳炎 ○アーテスネート座薬(治) 病原体 ダニ媒介性脳炎ウイルス ○リン酸クロロキン錠(治) 分布 スカンジナビア、中央・東ヨーロッパ、旧ソ連 ○塩酸プリマキン錠(治) 2016年3月承認・未販売 感染経路 マダニの刺咬、一部経口感染(乳製品など)、まれに、輸血・母乳 海外では、その他使用される薬剤があります。 潜伏期間 2~28日(通常8日) 症状 発熱、頭痛、嘔気、嘔吐、倦怠感 予防法 予防接種(輸入ワクチン)、流行地域での防ダニ対策 汚染乳・乳製品(乳牛・羊・山羊)に注意 治療法 対症療法 備考 致死率:1%(成人) ⑤ 土壌から感染 破傷風、鉤虫症など 種々の細菌で土は汚染されていますが、それらの菌の一種である破傷風菌は酸素を嫌うた め、汚染された深い傷に感染したり、中耳炎に二次感染したりします。新生児破傷風といっ ⑤ Tick-borneencephalitis 土壌から感染する病気 て、分娩場所が不潔な場合、へその緒から破傷風菌が侵入して、赤ちゃんの生命にかかわる 破傷風 こともあります。破傷風トキソイドの予防接種が大切ですが、接種していない場合は、抗破 病原体 破傷風菌 傷風免疫グロブリンを投与することになります。 分布 世界的に分布 感染経路 土壌中の破傷風菌が傷口などから体内に侵入し感染する 潜伏期間 3日~3週間(通常4~7日) 症状 口唇や手足のしびれ、口を開けにくい、首筋が張る、全身の痙攣 予防法 予防接種 裸足での川や海での遊び、ころんだ時、動物にかまれた時などのけがに注意し、 けがをした時はまず水で傷口を洗い消毒し、早めに医師に相談すること 治療法 抗破傷風ヒト免疫グロブリン、抗菌薬 備考 致死率:30-40%(新生児では70-80%) また、土から感染する寄生虫も多く、鉤虫(十二指腸虫)がその代表です。鉤虫は健康な 皮膚からも侵入し、胃や、十二指腸の粘膜に寄生して吸血するため、貧血になってしまう病 気です。裸足になるのを避けることが予防になります。 ⑥ 動物製品・食品から感染 炭疽菌による肺炎(創傷・飛沫・経口感染)、ボツリヌス菌による食中毒(経口感染) など 生ハムや蜂蜜などから感染するボツリヌス菌毒素による食中毒は、経口感染する病気と同 じ対策が必要になります。また、炭疽菌という菌は本来は家畜の肺炎を起こす菌なのですが、 動物の体外に出ると、乾燥に強い形に変化して、いつまでも感染力が持続するという菌です。 充分に処理していない毛皮製品などから感染するので、注意しなくてはなりません。 ⑦ 川や海の水から感染 コレラ(経口感染)、住血吸虫症(経皮感染)など Tetanus 鉤虫症 HookwormInfections 病原体 鉤虫(十二指腸虫) 分布 世界中の熱帯、亜熱帯地域 感染経路 経口感染、経皮感染 潜伏期間 4~12週 症状 皮膚炎、咽頭掻痒感、咳嗽発作、腹痛、貧血など 予防法 野菜を加熱する・生野菜をよく洗う(経口感染)、靴をはく(経皮感染) 治療法 抗寄生虫薬 備考 致死率:国・地域など医療環境により大きく異なる 寄生虫は、ふつう淡水にいることが多く、海水にいることはごくまれです。塩分に強いコ レプトスピラ症(ワイル病) Leptospirosis 病原体 スピロヘータ(Leptospirainterrogans) 分布 全世界に分布 感染経路 保菌動物からの経皮感染、経口感染 潜伏期間 3~14日間 症状 軽症型:感冒様症状 重症型:黄疸、出血、腎不全(ワイル病) 予防法 ネズミ、イヌなどの保菌動物の尿中に菌が排泄され、それに汚染された水や土 壌に注意する 治療法 抗菌薬 備考 重症型 致死率5~40% レラ菌や腸炎ビブリオなどの細菌は海水中で生きています。 いくら水がきれいに見えても、よく知らない池、沼、湖、川などで泳ぐと寄生虫が感染す る可能性があります。また、珊瑚礁などのきれいな海であっても、周囲に人家が密集してい る場所には、生活用水が流れ込み、コレラ菌などで海水が汚染されているので注意しましょ う。 ⑧ 性行為から感染 梅毒、淋病、クラミジア、ヘルペス、B 型肝炎、AIDS など この病気に対する対策は不潔な性行為をしないことに尽きるのですが、なかなか性行為感 染症が撲滅できないことからもわかるように、人間の本能行動を抑えるのは難しいようです。 ④ せめて、性行為にはコンドームを使うなどの配慮が必要です。 昆虫・蚊から感染する病気 シャーガス病 病原体 クルーズトリパノソーマ 分布 中南米を中心に全世界に分布 感染経路 サシガメの媒介 潜伏期間 1~2週間 症状 眼瞼浮腫、リンパ節腫脹、心不全 予防法 流行地域での防虫対策、血液スクリーニング(輸血、臓器移植) 治療法 抗寄生虫薬 備考 致死率:20~50% チクングニア熱 Chagas ⑨ 医療行為から感染 梅毒、AIDS、B 型肝炎、C 型肝炎、マラリア、ブルセラ症、シャーガス病など 輸血が問題であり、急に輸血を要する交通事故をはじめ外傷には、十分注意が必要であり、 大出血をきたす可能性のある胃潰瘍などの病気には十分注意する必要があります。また、予 防接種などに使用する注射器が、使いすての安全なものかどうか医療を受ける場合、チェッ クする必要があります。 Chikungunyafever 病原体 チクングニアウイルス 分布 アフリカ・アジア・中南米の途上国を中心に全世界に分布 感染経路 経皮感染(蚊から感染) 潜伏期間 2~12日(通常7日) 症状 発熱、関節痛、発疹、頭痛、リンパ節腫瘍、出血傾向 予防法 媒介蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)に刺されないようにする 治療法 対症療法、出血傾向を呈する場合もあり、鎮痛解熱薬としてはアセトアミノフ ェンを使用 備考 一般的には軽症、高齢者では重症化することあり 3 ラッサ熱 注意すべき感染症と予防法 ① 病原体 ラッサウイルス 分布 西アフリカ 感染経路 1次感染:マストミス(ネズミ)の排泄物の接触感染 2次感染:感染者の血液・体液の接触感染、飛沫感染 潜伏期間 7~18日 症状 発熱(高熱)、咳、下痢、腹痛、筋肉痛、顔面のむくみ、出血(重症) 予防法 患者、感染者との接触をさける 治療法 抗ウイルス薬 備考 致死率:治療により1%、無治療の場合は15~30% (経口感染) コレラ Cholera 東南アジアに多いエルトール型の場合は下痢の程度も軽く、脱水状態に陥ることも比較的 少ないことが知られています。 一方、インド以西、アフリカ、南米のコレラは古典型といって、多くが重篤で下痢症状が 激しく、しばしば脱水状態になります。1992年には、新型コレラ(ベンガル型コレラ)が発 Lassafever 生しました。 臨床症状: オウム病・クラミジア肺炎 下痢で発症します。米のとぎ汁状、無臭の水様の激しい下痢です。下痢に遅れて嘔吐が起 病原体 オウム病(Chlamydiapsittaci )クラミジア肺炎(Chlamydophilapneumoniae ) こることがあります。発熱がないのが特徴です。激しい下痢のためしばしば脱水状態 (乏尿、 分布 世界的に分布 眼球陥没、朦朧状態)に陥り、コレラ様顔貌と呼ばれる消耗しきった顔つきになります。 感染経路 オウム病(トリからヒトへの飛沫感染、接触感染) クラミジア肺炎(ヒトからヒトへの飛沫感染) コレラ菌。古典型とエルトール型、それにベンガル型があります。 潜伏期間 オウム病:7~14日、肺炎クラミジア:3~4週 感染経路: 症状 オウム病:咳、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、高熱、嘔吐などのかぜ症状、 意識障害、発疹、心内膜炎、心筋炎、髄膜脳炎など 肺炎クラミジア:微熱、咳、咽頭痛 数時間~5日(通常1~3日) 予防法 オウム病:感染鳥類との接触をさける 予防法・治療: 治療法 抗菌薬 日本製のワクチンはありませんが、輸入ワクチンである欧米の経口不活化ワクチンは、有 備考 致死率:数% 病原体: コレラ患者の排泄物に汚染された水、食べ物を介した経口感染です。 潜伏期間: Psittacosis,Chlamydialpneumonia 効率が高いと報告されています。このワクチンは、旅行者下痢症の毒素原性大腸菌にも有効 です。 手洗いを習慣づけましょう。生水は飲まないようにしましょう。火の通ったものを調理後 ネコひっかき病 Cat-ScratchDisease すぐに食べるように心がけましょう。胃酸度の低い人(胃切除者、制酸薬服用者)は感染の 病原体 Bartonellahenselae 危険が高くなります。 分布 世界的に分布 患者の排泄物に汚染される可能性があるので人家の密集する海岸や河川では泳がないよう 感染経路 ネコ・イヌによるひっかき・咬傷 にしましょう。 潜伏期間 7~12日 治療は抗菌薬、それに、下痢が始まったら、なるべく早くから経口補水液をたくさん飲む 症状 皮膚の局所反応、リンパ節腫脹、発熱、倦怠感、食欲不振、頭痛、関節痛、筋 肉痛、腹痛 予防法 ネコ・イヌに注意 治療法 対処療法、抗菌薬 備考 致死率:0% ように心がけましょう。 ② 細菌性赤痢 (経口感染) Bacillarydysentery(Shigellosis) 臨床症状: 下痢で発症し、血便となります。排便後も“しぶりばら”が続き、1~2日の発熱を伴い 水痘 Varicella(Chickenpox) 病原体 水痘・帯状疱疹ウイルス 分布 世界的に分布 感染経路 空気感染、飛沫感染、接触感染 潜伏期間 10~21日(通常14~16日) 症状 発熱、発疹、倦怠感 予防法 予防接種 治療法 抗ウイルス薬、対症療法 備考 致死率:国・地域など医療環境により大きく異なる 成人では重症化することが多い ます。激しい下痢のため、時に脱水状態に陥ることがあります。 病原体: 赤痢菌。志賀菌、フレキシネル菌、ボイド菌、ソンネ菌があります。 感染経路: 赤痢患者の排泄物に汚染された水、食べ物を介した経口感染です。 潜伏期間: 1~7日(通常2~4日) 予防法・治療: 手洗いを習慣づけましょう。生水は飲まないようにし、火の通ったものを調理後すぐに食 べるように心がけましょう。 治療は抗菌薬、それに、下痢が始まったら、なるべく早くから経口補水液をたくさん飲む ように心がけましょう。 結核 Tuberculosis 病原体 結核菌 分布 世界的に分布(アジア、アフリカの途上国) ③ 感染経路 空気感染 臨床症状: 潜伏期間 数カ月~数10年 症状 倦怠感、咳、痰、微熱、寝汗、血痰、胸痛、息切れ 予防法 予防接種、化学予防(抗結核薬) 治療法 抗結核薬 備考 致死率:多剤耐性結核菌の場合重症化 腸チフス・パラチフス (経口感染) Typhoidfever・Paratyphoidfever 全身倦怠感、食欲不振、頭痛などがあり、熱は段々高くなり、病後7日目頃からは高熱が 続きます。熱のわりには脈拍は少なく(比較的徐脈)、ばら疹といわれる発疹や、脾腫が認め られます。細菌感染にもかかわらず、白血球は減少します。治っても胆道系の長期保菌者と なることがあります。 病原体: チフス菌。腸チフスより症状の軽いパラチフスはパラチフス A 菌。 感染経路: ③ 汚染された水、食べ物を介した経口感染です。 動物から感染する病気 ペスト 潜伏期間: Plague 病原体 ペスト菌 分布 世界的に分布(アフリカ、アジア、南アメリアの途上国) 感染経路 腺ペスト:感染ノミの刺咬、肺ペスト:飛沫感染 潜伏期間 腺ペスト:2~6日、肺ペスト:1~6日 症状 高熱、頭痛、食欲不振、嘔吐、筋肉痛、リンパ節腫脹 予防法 抗菌薬(肺ペスト濃厚接触者) 治療法 抗菌薬 備考 致死率:5~15% 3日~2カ月(通常1~2週) 予防法・治療: 予防接種(輸入ワクチン)を受けましょう。手洗いを習慣づけましょう。生水は飲まない ようにしましょう。火の通ったものを調理後すぐに食べるよう心がけましょう。 治療は抗菌薬です。 ④ A 型肝炎 (経口感染) HepatitisA 臨床症状: A型肝炎ウイルスに感染しても、症状が出ないでそのまま治癒してしまう場合もあります (不顕性感染) 。典型的には、2~6週間の潜伏期の後、風邪症状が出現し、さらに、黄疸、 発熱、全身倦怠感、悪心、嘔吐が出現します(急性肝炎)。黄疸がひどくなると白目の部分が 黄色くなったり、尿の色が濃くなります。急性肝炎は多くの場合通常1~2カ月で治癒しま す。成人では1%位に致死的な肝炎(劇症肝炎)に進行することもあります。慢性肝炎にな ることはほとんどありません。 病原体: A 型肝炎ウイルス。ピコルナウイルスの仲間です。100℃5分間の加熱処理によって病原性 がなくなります。全世界に分布していますが、特に環境衛生が不良な地域や施設内に生息し ています。東南アジア諸国などの途上国では常在感染症になっています。 感染経路: 経口感染(糞口感染)です。このウイルスは一度人間の体内に入ると糞便に排泄されます。 その排泄物に汚染された食物、飲料水を生で摂取することで感染します。 潜伏期間: 風疹 Rubella 病原体 風疹ウイルス 分布 世界的に分布 感染経路 飛沫感染、接触感染 潜伏期間 14~21日 症状 発疹、頸部・耳介後部リンパ節腫脹、発熱、関節痛 予防法 予防接種 治療法 対症療法 備考 致死率:1%以下 妊婦の風疹罹患により先天性風疹症候群児の出生 ウイルスに感染しても、2~6週間(平均4週間)は症状が出ません。この期間が潜伏期 です。しかし、症状が無くとも感染して2週間位するとウイルスは糞便中に排泄され始め、 他人への感染源になります。 おたふくかぜ(流行性耳下腺炎) 予防法・治療: 病原体 ムンプスウイルス 予防接種を行います。予防接種を完全なものにするために、6カ月かけて3回の接種を受 分布 世界的に分布 ける必要があります。一般的な注意としては、流行地で生ものや生水を摂取しないことです。 感染経路 飛沫感染、接触感染 潜伏期間 12~25日(通常16~18日) 症状 耳下腺腫脹・疼痛、発熱、頭痛、食欲不振 予防法 予防接種 治療法 対症療法 備考 致死率:1%以下 合併症:髄膜炎、睾丸炎、聴覚障害など 特に、 飲料水は一度煮沸しましょう。また日常よく手を洗うなどの注意が必要です。しかし、 これらの注意のみでは完全な予防はできませんので、予防接種を受けることが重要です。 A型肝炎に一度感染した人は、不顕性感染であっても体内にA型肝炎に対する抗体ができ、 多くの場合、終生 A 型肝炎に対して防御力(抗体)を持ち続けることになります。このよう な人は A 型肝炎に対しては安全です。 この抗体の有無は医療機関で血液検査を行なうことで調べることができます。 治療は対症療法です。 ⑤ E 型肝炎 (経口感染) HepatitisE 手足口病 Mumps HFMD(Hand-foot-mouthdisease) 病原体 コクサッキーウイルス A16型、エンテロウイルス71型など 臨床症状: 分布 世界的に分布 A 型肝炎の臨床症状と似ています。E 型肝炎ウイルスに感染すると、潜伏期(15~50日) 感染経路 飛沫感染、接触感染、糞口感染 を経て食欲不振、全身倦怠感、発熱、悪心、嘔吐、黄疸、尿の濃染などの急性肝炎の症状が 潜伏期間 3~6日 現れます。食中毒と間違えられることもあります。慢性化することはほとんどありませんが、 症状 手・足の発疹、口内炎、発熱 致死的な劇症肝炎に移行する率が A 型肝炎より高く、致死率は1~2%とされています。特 予防法 手洗い、うがい、マスク、排泄物の適正処理 に妊婦では、致死率が高いとされています。 治療法 対症療法 備考 エンテロウイルス71型による場合、髄膜炎・脳炎を併発し重症化する 東南ア ジア、中国で時に流行する 病原体: E 型肝炎ウイルス。カルキウイルスの仲間です。 感染経路: 経口感染です。ウイルスに汚染された水、食品を摂取することで感染します。ブタ、イノ シシ、シカなどの肉や肝臓にウイルスが生息していて、それらを生で食べることで感染する ことも指摘されています。非衛生的な地域での発症が多く報告されており、インド、中国、 ジフテリア Diphtheria 病原体 ジフテリア菌 分布 世界的に分布(アジア、中東、ロシア、東ヨーロッパ、中南米など) 感染経路 咳などによる飛沫感染、器物を介する接触感染 潜伏期間 2~5日 症状 咽頭痛、発熱、咳、頭痛、倦怠感、嚥下痛、鼻閉、呼吸困難 予防法 予防接種 治療法 抗菌薬、抗毒素 備考 致死率:5~10% バングラディシュなどで数万人単位の大流行が起きたこともあります。日本では、従来その 地域に旅行した人における発症が専らでしたが、最近海外渡航歴のない人の発症も報告され ています。国内の野生動物にウイルスの生息が証明されています。先進国から帰国した人に おける発症が報告されており、先進国内にもウイルスが生息している可能性が指摘されてい ます。 潜伏期間: 15~50日 予防法・治療: 流行のピークは、中央アジアで秋、東南アジアでは雨期といわれています。特に大規模な 洪水が起こった後に大流行するようです。ウイルスに汚染された水や食物を介して感染する ため、生の食品、水、氷に注意する必要があります。日本では野生の鹿肉を食べて発症した 百日咳 Pertussis 病原体 百日咳菌 分布 世界的に分布 感染経路 百日咳患者の鼻咽頭や気道分泌物の飛沫感染、接触感染 潜伏期間 5~10日(平均7日) 症状 かぜ症状で始まるが、合併症がない限り熱はなく、次第に咳が強くなる しばしば嘔吐を伴う 予防法 予防接種 治療法 対症療法、抗菌薬、免疫グロブリン、ステロイド薬 備考 致死率:乳児では重症化 と考えられる例が報告されています。海外では、野生動物の料理を出す店を時々見かけます。 しかし、野生動物は E 型肝炎を含め、人獣共通感染症や食中毒の原因となる病原体を保有し ていることを常に念頭においておく必要があります。E 型肝炎に対する予防接種は開発段階 です。 治療は対症療法です。 ⑥ BSE (経口感染) BSE とは牛海綿状脳症(Bovine Spongiform Encephalopathy)を略したものです。脳が スポンジのようになって死亡する牛の病気で、末期に興奮状態がみられることから狂牛病と もいわれます。1985年英国で発見され、肉骨粉を配合した飼料を介して流行したプリオン病 と考えられています。人間にも以前からまれに(年間100万人に1人ぐらい)自然発症する孤 麻疹 Measles 発型クロイツフェルト・ヤコブ病(孤発型 CJD)などのプリオン病が知られていましたが、 病原体 麻疹ウイルス BSE が問題になったのは従来の型とは異なる CJD(変異型 CJD)が英国で見つかるようにな 分布 世界的に分布(但し、麻疹ワクチン接種率が高い地域での発症はまれ) り、これが BSE に由来すると考えられているためです。 感染経路 空気感染、接触感染 臨床症状: 潜伏期間 10~12日 孤発型CJDは平均的な発症年齢が60歳代で、発病から死亡までの期間が4、5カ月、痴呆 症状 カタル期:38度前後の発熱、咳、鼻汁、結膜充血、目やになど 発疹期:一時下降した熱が再び高くなり、耳介後部から発疹が現れ広がる 発疹消退期:色素沈着 が初発症状であるのに対し、変異型 CJD は20歳代が中心で、発病から死亡までの期間が14カ 月程度、 性格の変化、意欲の低下、しびれや痛みなどが初発症状であることが異なっています。 予防法 予防接種、γ-グロブリン で死亡します。 治療法 対症療法、合併症あれば抗菌薬 病原体: 備考 致死率:国・地域など医療環境により大きく異なる 異常プリオン(感染性たんぱく質) いずれも病状は改善することなく進行し、やがて無言、無動状態になり全身衰弱、肺炎など 感染経路: 変異型 CJD は BSE に感染した牛の内臓を食べることで感染型プリオンが体内に侵入す ると考えられています。このほかプリオン病としては、乾燥硬膜移植などで感染する医原性 プリオン病、食人習慣に伴うクールーなども知られています。体内に侵入した感染型プリオ ンは脳に至ると神経細胞内の正常型プリオンを原料に複製され、異常なプリオンが蓄積した 神経細胞が次々と破壊されて、次第に脳が空胞化してきます。 潜伏期間: プリオン病の潜伏期間は一般に数年から数十年と言われています。変異型 CJD の潜伏期 間は正確にはわかっていませんが、15年程度という説があります。 予防法: 肉骨粉を含む飼料が禁止されて以来、BSEの発生は減少してきていることに加え、現在日 本では生後21カ月以上の牛の全頭検査と特定危険部位(脳、脊髄、眼、回腸遠位部、頭蓋、 脊柱など)の使用が禁止されるなど、世界で最も厳しい危機管理が実施されているので変異 型 CJD が発生する可能性はきわめて低いと思われます。現在、検査方法など再検討されて います。海外の基準はこれより緩いものですが、18万頭以上のBSEが発生した英国でも変異 回虫症 Ascariasis 病原体 回虫 分布 世界的に分布(特に途上国) 感染経路 生野菜 潜伏期間 数日~数カ月 症状 腹痛、下痢、食欲不振・亢進、嘔吐、貧血、発熱、腸閉塞 予防法 手洗い 生野菜は流水でよく洗ってから摂取する 治療法 抗寄生虫薬 備考 致死率:1%以下 型 CJD は140名程度ですから、好んで危険を冒さない限り変異型 CJD に罹患する可能性は 孤発型 CJD を発症する確率より低いと考えられています。 ⑦ SARS (人から感染) 臨床症状: SARS(サーズ)とは重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome) を 略したものです。2002年11月頃に中国広東省に端を発し、香港、北京など中国の他の地域 にも拡大し、台湾、カナダ、シンガポール、ベトナムなど2003年夏までに世界中のいくつか の国にも広がった新型肺炎です。総患者数は8,442人で死亡者数は916人でした。 その症状は 38℃の発熱と咳、息切れ、呼吸困難など、いわゆる肺炎の症状で頭痛、悪寒・戦慄、食欲不 振、全身倦怠感、下痢、意識障害などをともない、10~20%の例で重症化し、 致死率は24歳 ② 人から感染する病気(空気感染、飛沫感染、接触感染) かぜ症候群(普通感冒) Commoncold 病原体 ライノウイルス、アデノウイルスなど 分布 世界的に分布 感染経路 飛沫感染、空気感染 潜伏期間 1~3日 症状 くしゃみ、鼻水、頭痛、倦怠感、喉の痛み、せき、発熱、下痢など 予防法 手洗い、マスク、うがい 治療法 対症療法 以下1%未満、25~44歳6%、45~64歳15%、65歳以上50%と高齢者ほど高く、平均で 15%程度です。 インフルエンザ(季節性) 病原体: 病原体 インフルエンザウイルス 分布 世界的に分布 感染経路 飛沫感染、接触感染 潜伏期間 1~3日 症状 発熱(高熱)、頭痛、筋肉痛、全身倦怠感、咽頭痛、咳 予防法 予防接種 手洗い、うがい、マスク、咳エチケットなど 治療法 抗ウイルス薬 備考 致死率:1%以下 SARS コロナウイルスと名付けられたコロナウイルスの一種。 感染経路: 咳などで飛び散った気道分泌物を吸引してうつる飛沫感染が中心ですが、他にも分泌物や 糞便に汚染された物に触れた手指をよく洗わずに口などに触れてうつる接触感染、経口感染 にも注意が必要です。空気感染の可能性も考えられています。 潜伏期間: 潜伏期間は2~7日、遅くとも10日以内には発症するといわれています。 予防法: 予防接種は研究段階です。感染を避けるためには“疑い例”を含む患者との不要な接触を Influenza 避けること、手で口や鼻を触れないようにすること、うがい・手洗いの励行などが重要とさ れています。睡眠、栄養、休養など日常生活の注意も大切です。現在、感染は沈静化した状 態ですが、野生動物(ハクビシンなど)からの感染が疑われていますので、危険な行動は避 腸炎ビブリオ食中毒 FoodpoisoningbyVibrioparahaemolytics 病原体 腸炎ビブリオ 分布 海水中 感染経路 暖かい海水中に広く分布しており、魚介類を生食 潜伏期間 12~24時間 症状 けたほうがよいでしょう。 ⑧ 髄膜炎菌性髄膜炎 (人から感染) Meningococcalmeningitis 髄膜炎には、細菌性、ウイルス性などがありますが、髄膜炎菌性髄膜炎は、髄膜炎菌によ る細菌性髄膜炎です。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の髄膜炎はウイルス性(無菌性)髄 下痢、腹痛、発熱 (症状は3~4日で自然軽快する) 膜炎です。 予防法 菌は4度以下では増殖しないので、魚介類は冷蔵保存のものを食べるか、加熱 したものを食べる 治療法 対症療法、抗菌薬 備考 致死率:数% 日本では、1970年以降発生数は減少し、近年では年間数10例の発生があります。世界中 どこでも流行しますが、アフリカの髄膜炎ベルト地帯(赤道から北緯20°間)、サウジアラビ ア(イスラムの巡礼時期)が問題となります。イスラムの巡礼時期にサウジアラビアへ入国 する時や米国で学生が寮生活をする場合に、予防接種(輸入ワクチン)を勧められます。 臨床症状: 発熱、頭痛、嘔吐、痙攣、意識障害、点状出血などが主な症状です。劇症型(Waterhouse- サルモネラ感染症 Salmonellosis(Salmonellainfection) Friderichsen症候群)では、ショック、多臓器不全となり死に至ることがあります。致死率 病原体 サルモネラ属菌 は10%程度ですが、思春期では25%程度と高くなります。また、10~20%程度、難聴など 分布 世界的に分布 の後遺症を認めることがあります。 感染経路 鶏肉関連食品からがもっとも多い 病原体: 潜伏期間 6~48時間(通常12時間) 髄膜炎菌(Neisseriameningitidis)です。13の血清型がありますが、頻度として高いの 症状 発熱、腹痛、嘔吐、下痢 は、A、B、C、Y、W-135群です。 予防法 手洗い 生野菜は流水でよく洗ってから摂取する 感染経路: 治療法 抗菌薬(健常成人の場合不要) が拡大することがあります。 備考 致死率:数% 潜伏期間: 患者や保菌者の鼻咽頭分泌物からの飛沫感染です。保育施設、学校の寮、軍隊などで感染 2~4日で、遅くとも10日以内には発症するといわれています。 ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症) 病原体 ランブル鞭毛虫 分布 世界的に分布(主に、熱帯・亜熱帯の農村部) 感染経路 食物、水 一部性行為感染 潜伏期間 1~4週(通常2~3週) 症状 下痢、鼓腸、腹満、上腹部痛、食欲不振 発熱はない 無症状の人も多い 予防法 手洗い 現地の水道水(主に、途上国)は飲まないようにする 治療法 抗寄生虫薬 備考 致死率:0.5% Giardiasis 予防法・治療: 予防接種です。日本では、A、C、Y、W-135群に対する4価ワクチンメナクトラ ®が 2015年5月から使用され始めました。海外では A、C 群に対する2価ワクチンなどがありま す。4価ワクチンが推奨されますが、年齢により、使用するワクチンが異なります。流行地 域への渡航者、無脾症、機能的無脾症患者などは予防接種が推奨されます。 家族内に患者が発生した場合には、抗菌薬による予防内服を行う場合があります。 一般的には飛沫感染予防を行います。 治療は抗菌薬です。 ⑨ 新型インフルエンザ (人から感染) PandemicInfluenza インフルエンザウイルスは内部たんぱく質の抗原性からA、B、C型に分類されますが、中 でも人に強い病原性と大流行を起こすのは A 型です。A 型ウイルスはさらに表面蛋白質のヘ マグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の抗原性から H1~H16、N1~N9を組 み合わせた亜型に分類されます。これまでに人に大流行したのはスペインかぜ(H1N1) 、 アジアかぜ(H2N2) 、香港かぜ(H3N2) 、ソ連かぜ(H1N1) 、パンデミック(H1N1) 2009などです。A型ウイルスは小さな抗原性の変異により毎年のように小流行を起こします が、数十年に1回、新しい亜型の登場によって世界的な規模の大流行(パンデミック)を引 き起こします。このような新型インフルエンザウイルスの発生は人のみならず豚や鳥のイン フルエンザウイルスが交雑して発生すると考えられていますが、人に特異的な免疫が存在し ないためパンデミックになります。 腸管出血性大腸菌(O-157など)感染症 EnterohemorrhagicE.coli(EHEC)infection 病原体 腸管出血性大腸菌 分布 世界的に分布 感染経路 菌は家畜の腸に棲んでおり、菌に汚染された食物(特に牛肉)、水からの感染 感染者からの感染もある 潜伏期間 2~9日(通常2~5日) 症状 臨床症状: 全身に感染が広がるような強毒性ウイルスの場合は多臓器不全に陥り死亡する可能性が高 下痢、血便 (子どもや高齢者では溶血性尿毒症症候群を合併し、重症化することがある) 予防法 ・挽肉やハンバーグは火の通ったものを食べる ・牛乳は殺菌処理済みであることを確認する フルエンザと同様の経過で回復しますが、小児や高齢者、基礎疾患(糖尿病、心・肺疾患、 治療法 対症療法、抗菌薬 腎疾患など)がある場合は重症化に注意が必要です。 備考 致死率:溶血性尿毒症症候群の場合約5% くなります。感染が呼吸器に限局するような弱毒性ウイルスの場合はほとんどが通常のイン 病原体: 新型インフルエンザウイルス 感染経路: カンピロバクター腸炎 通常のインフルエンザと同様に飛沫感染や接触感染が主な経路です。 潜伏期間: 通常のインフルエンザと同様に1~3日と考えられています。 予防法・治療: 予防接種の製造には時間がかかりますので、呼吸器ウイルス感染症の予防策、すなわち、 マスク(接触感染、飛沫感染の予防)、手洗い(接触感染の予防) 、流行期には無用な外出を 控えて雑踏や乾燥した閉鎖空間を避ける、食糧・日用品の備蓄(最低2週間分) 、保温、保 湿、うがい(粘膜の防御力維持)、過労や睡眠不足を避け、栄養をとって抵抗力を養うことが 重要と考えられています。治療は発症48時間以内に抗ウイルス薬(NA 阻害薬)の開始が効 果的と考えられています。 ⑩ 鳥インフルエンザ (動物から感染) Campylobacterenteritis 病原体 カンピロバクター 分布 世界中に広く分布(食物、飲料水、動物) 感染経路 菌は家畜の腸に棲んでおり、菌に汚染された食物より感染する 接触感染もある 潜伏期間 1~10日(通常3~5日) 症状 腹痛、発熱、下痢、血便 (症状は数日で自然軽快するが、血便が1週間以上続くこともある) 予防法 食肉(特に鶏肉)は完全に火の通ったものを食べる 治療法 対症療法、抗菌薬 備考 致死率:数% ギランバレー症候群の約30%が本菌による Avianinfluenza インフルエンザウイルスは、もともとは鴨などの野生水禽に常在するウイルスです。これ らの鳥にはほぼすべての亜型のインフルエンザウイルスが特に病原性も示さずに存在してい ます。そのような鳥インフルエンザウイルスは細胞表面の構造の違いから人の上気道(鼻や 咽頭など)には感染しにくいのですが、濃厚に接触していると感染することがあり、鳥イン フルエンザと呼ばれます。なお、家禽に感染すると大量死の原因になるウイルスを高病原性 鳥インフルエンザウイルスと呼びますが、必ずしも人に病原性が高いということではありま せん。 臨床症状: 通常のインフルエンザより重症で急激に肺炎が進行し呼吸不全になるほか、全身の諸臓器 に感染が広がり、脳炎、心筋炎、腎不全、肝不全など多臓器不全に陥って死亡率は50%を超 FoodpoisoningbyStaphylococcusaureus 黄色ブドウ球菌食中毒 病原体 黄色ブドウ球菌 分布 自然界に広く分布 感染経路 エンテロトキシン汚染食品(サンドイッチ、おにぎりなど) 、ヒトの皮膚(化膿 巣) 潜伏期間 1~6時間(平均3時間) 症状 嘔気、嘔吐、腹痛、下痢 予防法 食中毒の予防 治療法 対症療法 備考 致死率:1%以下 えています。現在、H5N1や H7N9型は死亡率が高く警戒対象になっていますが、H7N7 や H7N3型は結膜炎を起こすことが多く、全身症状は軽いといわれています。 病原体: 鳥インフルエンザウイルス 感染経路: 現在までの報告では病気の鳥と濃厚接触した場合(感染した鶏と暮らしているとか内臓や 排泄物に接触するなど)に限られており、鶏卵や鶏肉を食べて感染した報告はありません。 潜伏期間: 通常のインフルエンザと同様に1~3日と考えられています。 予防法・治療: 鳥インフルエンザに関しては、今のところ日常生活での感染の心配はありませんが、流行 地での鶏舎への立ち入りや生きた鶏を扱っているような市場への出入りは避けたほうがよい FoodpoisoningbyBacilluscereus セレウス菌食中毒 でしょう。人から人へ感染するような新型インフルエンザに変異する可能性を警戒し、ワク チンの開発が進んでいるほか、抗ウイルス薬(NA 阻害薬)も発症早期なら有効と考えられ 病原体 セレウス菌 分布 世界的に分布 感染経路 汚染食品 潜伏期間 嘔吐型:1~6時間、下痢型:8~16時間 症状 嘔気、嘔吐、下痢 予防法 食中毒の予防 治療法 対症療法 臨床症状: 備考 致死率:1%以下 イヌ、ネコ、スカンク、コヨーテ、キツネ、吸血コウモリなどに咬まれて感染します。咬 ています。 ⑪ 狂犬病 (動物から感染) Rabies 狂犬病が多い地区に渡航する場合は、あらかじめ狂犬病ワクチンを接種しておくとよいで しょう。輸入ワクチンや、海外でのワクチンスケジュールは日本と異なります。 まれた傷のあたりの知覚異常、疼痛で始まり、不安感、違和感、頭痛が出現し、発熱も伴い ます。 毒素原性大腸菌下痢症 DiarrheacausedbyEnterotoxigenicE.coli (ETEC) 進行すると、水を飲もうとすると嚥下筋がけいれんを起こすので恐水発作と呼ばれます。 病原体 毒素原性大腸菌 知覚過敏、運動麻痺、全身けいれん、呼吸麻痺をきたし、死亡にまで至ります。 分布 世界的に分布 病原体: 感染経路 汚染された水や生野菜 狂犬病ウイルス 潜伏期間 1~2日 感染経路: 症状 腹痛、下痢、嘔気、嘔吐、発熱 イヌ、ネコ、スカンク、コヨーテ、オオカミ、ジャッカル、マングース、アライグマ、キ 予防法 生水、生野菜は避けること、経口不活化コレラワクチン(輸入) 治療法 備考 対症療法 (アジア渡航による旅行者下痢症の50%を占める 症状は抗菌薬を使わなくとも通常数日で自然軽快する) 致死率:数% ツネ、吸血コウモリなどの媒介動物に咬まれて感染します。 潜伏期間: 2~8週間。咬まれた部位が頭部に近いほど、潜伏期間は短くなります。 予防法・治療: 治療としては、感染が疑われる動物に咬まれた場合、直ちに石鹸などを使って傷を洗い流 します。予防接種を受けていない場合は、狂犬病免疫グロブリン投与と、細胞培養不活性化 ワクチンを咬まれた日(0日)、3日、7日、14日、30日、90日の6回接種します。予防接種 を3回受けている場合は、3回終了後6か月以内であれば0日、3日の2回、それ以上であ 4 れば0日、3日、7日、14日、30日、90日の6回ワクチンを接種します。 ⑫ 黄熱 その他の主な感染症 (蚊から感染) Yellowfever 臨床症状: 悪寒を伴う高熱で発症します。このとき顔面が充血し、頭痛があります。熱は2峰性で、 一度解熱したあと再び上昇します。徐脈(脈がゆっくりとなる) 、尿量の減少、吐血および皮 膚粘膜の出血などが起き、遅れて黄疸を伴うこともあります。きわめて軽症のものから、急 激に発症して死に至るものまであります。 ① 飲食物、汚れた手などから感染する病気(経口感染) ポリオ(急性灰白髄炎) Polio(Poliomyelitis) 病原体 ポリオウイルス(1,2,3型) 分布 パキスタン、アフガニスタンなど 感染経路 感染者の便、または咽頭分泌液から 接触・飛沫感染もある 潜伏期間 3~21日 症状 発熱、倦怠感、頭痛などかぜと似た症状で始まる 軽症の場合は胃腸症状で終わることもあるが、重症例では手足の弛緩性の麻痺 が生じる 予防法 予防接種 衛生環境の整備、上下水道の完備 蚊に刺されないように気をつけましょう。 治療法 対症療法 治療は対症療法です。 備考 致死率:麻痺型ポリオを発症すると、小児2~5%、成人15~30% 感染者の90~95%は不顕性感染 病原体: 黄熱ウイルス 感染経路: 都市部ではネッタイシマ蚊(都市型黄熱)、密林や森林地帯ではヘマゴガス(ジャングル黄 熱)という蚊の吸血により媒介されます。 潜伏期間: 3~6日 予防法・治療: アフリカ中部や、南米に渡航する場合は予防接種を行いましょう。 ⑬ マラリア (蚊から感染) Malaria 臨床症状: アメーバ赤痢 悪寒戦慄を伴い、数時間持続する高熱と解熱が繰り返されます。 病原体 赤痢アメーバ原虫 病原体: 分布 熱帯、亜熱帯地方に広く分布 赤血球に寄生するマラリア原虫です。診断には、血液塗抹標本で原虫を証明します。最近 感染経路 赤痢アメーバに汚染された飲食物 一部性行為感染 日熱マラリア、四日熱マラリア、卵型マラリアなどの種類があります。 潜伏期間 数日~数カ月(通常1~4週) 感染経路: 症状 下痢、腹痛、粘血便、肝膿瘍 ハマダラ蚊の吸血により媒介されます。 予防法 経口感染・性行為感染の予防 潜伏期間: 治療法 では血液中の抗原検出による迅速検査が行われています。マラリアには熱帯熱マラリア、三 熱帯熱マラリア:9~14日 三日熱マラリア:12~17日 四日熱マラリア:18~40日 卵型マラリア:16~18日 備考 Amebicdysentery(Amoebiasis) 抗寄生虫薬 (治療が遅れると生命を落とす危険性がある) 致死率:数% 予防法・治療: マラリア流行地かどうかを確認します。 ハマダラ蚊に刺されないように注意しましょう。そのためには夜間の外出を慎み、睡眠す る部屋には殺虫スプレーを噴霧し、蚊帳を使用します。また、住居はマンションであればで 潜伏期間: きるだけ高層階(10m以上)に住み、部屋は出来るだけ涼しく(20~25℃)します。外出の 2~15日です。感染しても無症状や軽症の場合もあります。 際は肌が露出しないような服装を心がけましょう。 予防法・治療: しかし現実には、蚊にさされないことは不可能であるため、予防薬を内服する方法があり 中東のヒトコブラクダとの接触や未殺菌のラクダ乳の摂取は避けましょう。ヒトからヒト ます。しかし、熱帯熱マラリアには、一般の予防薬に耐性(抵抗性)のものが多く、特殊な への感染は、飛沫感染、接触感染なので、その予防を行いましょう。感染した場合は、他者 予防薬が必要なこともあります。WHOはマラリア流行地域をA、B、Cの地帯に分類し、そ への感染予防のために咳エチケットを行いましょう。 の地域に合った薬を服用することを推奨しています。しかし、予防内服は、長期に亘ること 治療は対症療法です。 が多く、その副作用も問題になります。都市部などで、比較的感染のチャンスが低く、発熱 などの症状が出た場合に、速やかに診断、治療ができる医療機関があれば、必ずしも予防内 服の必要はないという考えもあります。しかしながら、感染のチャンスの多い、農村部など では、やはり、予防内服の必要があり、その際にはできるかぎり副作用のチェックが必要で す。 マラリアの予防に関しては、旅行者(外国人)と現地の人に対するのと異なる点があるの で、日本人のことがわかる日本人医師(医務官、JICA専門家など)や、現地の信頼できる旅 行者(外国人)をみなれた医師に相談するしかないのが現状です。 治療は抗マラリア薬です。 ⑭ 日本脳炎 (蚊から感染) Japaneseencephalitis 臨床症状: 突然の高熱、頭痛、嘔吐で発症します。3~5病日に意識障害、けいれん、異常行動が出 現し、筋緊張が亢進します。7~10日間高熱が続きます。7病日頃、死亡の可能性が高まり ます。 病原体: 日本脳炎ウイルス 感染経路: コガタアカイエ蚊の吸血により媒介されます。 潜伏期間: 7~10日 予防法・治療: アジアに特有な脳炎です。 したがって、その地域に赴任する人は予防接種を行いましょう。日本では、2009年6月か ら新しいワクチン(細胞培養日本脳炎ワクチン)の接種が開始されています。2016年4月か ら、北海道でも定期接種となります。 蚊に刺されないように気をつけましょう。 治療は対症療法です。 ⑮ (蚊から感染) デング熱 Denguefever 臨床症状: 5~8日間高熱が続き、解熱後発疹が出ます。頭痛、筋肉痛、関節痛があり、全身倦怠感 が強いのが特徴です。肝機能障害を合併することがあります。出血傾向(紫斑、血尿、黒色 便等)や血圧低下を伴うものをデング出血熱といいます。デング出血熱の発症には、不明な 点も多いのですが、小児やデング熱に2回目にかかると発症しやすいといわれています。 病原体: ネッタイシマ蚊・ヒトスジシマ蚊の吸血により媒介されます。ネッタイシマ蚊はヒトの居 住地域に多くみられ、夜明け、日没前、日中に吸血します。ヒトスジシマ蚊は日本にも生息 しています。 発病すると、発熱、頭痛、筋肉痛、咽頭痛などの後に、嘔吐、下痢、発疹などの症状が認 められます。進行すると出血傾向が認められ、粘膜、消化管など全身から出血して死亡しま す。致死率は50~90%です。現在のところ、エボラウイルスに有効な抗ウイルス薬(現在開 発中)はなく、治療は対症療法です。 病原体: オオコウモリが自然宿主である可能性が強く、このオオコウモリからヒトやサルに感染し ます。ヒトからヒトへの感染は、発病者の血液、分泌物、吐物、排泄物などに接触、または、 それらに汚染された物に接触することで感染します。飛沫感染、空気感染することはありま せん。 潜伏期間: 潜伏期間: 2~15日、多くは1週間程度です。 2~21日(通常7日)です。潜伏期間中に感染力はありませんので、潜伏期間の人から航 予防法・治療: 空機内などでうつることはありません。 海外では、予防接種が行われています。 予防法・治療: 多くは雨期に流行します。 予防接種、予防薬はありません。オオコウモリ、サルなどに接触しない、また、その肉を 蚊に刺されないようにしましょう。 食べたりしない。発病者の血液、分泌物、吐物、排泄物、また、それらに汚染された物に接 蚊の繁殖を防ぐような手立てが必要です。 触しない。接触感染の予防として、手洗い、汚染された物のアルコール消毒などです。 流行地は、アジア、中東、アフリカ、中南米、オセアニア地域です。 治療は対症療法です。血小板輸血に関しては、血小板数2万以下が一つの目安となります。 治療は対症療法です。 (蚊から感染) WestNilefever 1937年アフリカのウガンダ West Nile 地方の熱病患者が、 この病名の由来です。 従来、 アフ リカ、ヨーロッパ、西アジアでの患者発生の報告はありましたが、 1999年、ニューヨーク市 周辺での流行が報告され、あっという間に全米に広がり、その後、カナダ、メキシコ、カリ ブ海諸国、ロシア、韓国など世界に広がっています。 臨床症状: 感染しても多くの人は無症状か軽い感冒症状ですが、感染者の1%位(主に高齢者)は、 高熱、頭痛、筋肉痛、背部痛、発疹などの後に、激しい頭痛、意識障害、痙攣などの症状を 伴う脳炎となり死亡することもあります。 病原体: ウエストナイルウイルス 感染経路: 野鳥の体内で増えたウイルスが蚊(イエカ、ヤブカ)を介して人に感染します。ヒトから 臨床症状: 感染経路: 感染経路: ⑯ なエボラ出血熱患者が確認されています。 エボラウイルス デングウイルス1、2、3、4の、4型があります。 ウエストナイル熱 公衆衛生上の緊急事態ではないことを宣言しました。しかし、2016年4月にリベリアで新た (人から感染) 中東呼吸器症候群(MERS)MiddleEastrespiratorysyndrome 2012年、中東に旅行歴のある重症肺炎患者がロンドンで発見され、その後、中東を中心に 発病者が確認されています。 臨床症状: 発症すると、発熱、咳、呼吸困難など肺炎症状に加え、下痢などの消化器症状もあります。 高齢者や基礎疾患(糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全など)のある人では、重症化することが あります。 病原体: MERS(マーズ)コロナウイルス 感染経路: 中東のヒトコブラクダが感染源動物の可能性が高いと考えられています。ヒトからヒトへ の感染の場合は、飛沫感染、接触感染ですが、インフルエンザ程の感染力はないと考えられ ています。 海外では感染者は極めて多く、危険な性行為を避けましょう。また、医療行為、特に輸血 ヒトに感染することはありません。 を受けるときに注意が必要です。医療が必要なとき、日本、あるいは周辺の先進国に移送で 潜伏期間: きるかどうかの確認をし、 可能ならば、 日本、 あるいは先進国で医療を受けるようにしましょう。 2~6日 治療は抗ウイルス薬などです。 予防法・治療: ⑳ C 型肝炎 (性行為・医療行為から感染) HepatitisC 臨床症状: 予防接種はありません。蚊に刺されないようにすることです。具体的には、露出している 皮膚への虫除け薬を使用し、戸外へ出る時は、できるだけ長袖、長ズボンを身につけること です。蚊の活動期(夕方から夜明けまで)は、屋外へ出ることを避けましょう。 治療は対症療法です。 C 型肝炎ウイルスに感染すると、潜伏期(2週間から6カ月)を経て、 食欲不振、 全身倦怠 ⑰ 肝硬変、肝がんへと移行していくので注意が必要です。肝硬変、肝がんになると、腹水、黄 ジカウイルスは、1947年にウガンダのジカ森林(Zika forest)のアカゲザルからみつか 疸、消化管の静脈瘤からの出血、脳症、感染症などの種々の合併症が起こり、時に致命的で りました。2015年にブラジルを中心に中南米、カリブ海で流行が発生しました。日本への最 す。日本における肝がんの原因の60~80%が C 型肝炎ウイルス感染によるものです。 初の輸入症例は、2013年にフランス領ポリネシアからです。 病原体: 臨床症状: C 型肝炎ウイルス。フラビウイルスの仲間です。大きく分けて通常6種類のジェノタイプ 発熱、発疹、関節痛、結膜充血、頭痛、筋肉痛、後眼窩痛、下痢、腹痛、嘔吐などがあり に分類されますが、個々のウイルスで小さな違いがあり、感染して体内に入ってからも小さ ます。不顕性感染率は80%程度で、健康成人では、比較的軽症です。妊婦が感染すると胎児 な変化を起こすため、実際には無数の種類があります。 が感染し小頭症児が出生する可能性があります(ブラジルでの報告)。 感染経路: 病原体: C 型肝炎ウイルスを含む血液や血液製剤を輸血することで感染しますが、消毒不十分な医 ジカウイルス。フラビウイルス科フラビウイルス属のウイルスでデング熱のウイルスと同 療器具や薬物の回し打ちに使用した注射針から感染することもあります。頻度は低いとされ じ科です。 ますが、性行為感染、母子感染の可能性もあります。 感染経路: 潜伏期間: ネッタイシマ蚊・ヒトスジシマ蚊の吸血により媒介されます。ヒトスジシマ蚊は日本にも 2週間から6カ月とばらつきがあります。 生息しています。また、精液からジカウイルスが検出されていますので、性行為からの感染 予防法・治療: もあります。 C 型肝炎に対するワクチンはまだ開発されていないので、一般的な注意のみが感染予防と 潜伏期間: なります。B 型肝炎と同様に、医療行為、輸血を受ける際の注意が必要です。輸血される血液 3~12日、多くは1週間程度です。 や血液製剤の安全性、医療機器消毒の徹底の見地から、できる限り先進国で医療を受けるこ 予防法・治療: とが推奨されます。不特定な相手との性行為、血液の付着したカミソリ、歯ブラシ、タオル 蚊に刺されないようにしましょう。具体的には、長袖、長ズボンの着用、昆虫忌避薬(DEET 等を使用しないことが重要です。 を含むものが好ましい)を使用します。妊婦はジカ熱流行地への渡航を控えましょう。性行 治療は抗ウイルス薬・インターフェロンなどです。 為により、男性から女性への感染の可能性があります。WHO では、流行地から帰国した人 (人から感染) エボラ出血熱(エボラウイルス病)Ebolahemorrhagicfever(Ebolavirusdisease) ジカウイルス感染症(ジカ熱) Zikavirusinfection は、帰国後少なくとも6カ月間、より安全な性行動をとるか、性行為の自粛を検討するよう 勧告しています。治療は対症療法です。 (性行為・医療行為から感染) す。その後、中央アフリカを中心に、時々発生しています。 ⑱ 2014年2月から、ギニア、シエラレオネ、リベリアを中心に最大規模の流行が発生しまし 臨床症状: た。2016年4月 WHO は西アフリカにおけるエボラ流行は、もはや国際的な懸念に対する B型肝炎ウイルスに感染しても、症状が軽いか全くないうちに治癒してしまう不顕性感染 1976年アフリカのコンゴ(旧ザイール)のエボラ川地方の熱病患者がこの病名の由来で (蚊・性行為から感染) 例や劇症肝炎になる例などもあります。慢性肝炎は、多くの場合目立った症状もないまま、 感、 悪心、嘔吐、黄疸などの症状が出現しほとんどは慢性肝炎となります。不顕性感染で治る B 型肝炎 HepatitisB 例もありますが、多くの場合はA型肝炎と同様に、急性肝炎の形をとります。B型肝炎ウイ くことが推奨されます。 ルスに感染すると、2~3カ月して、黄疸、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐などの症状 B 型肝炎に一度感染すると、急性肝炎、慢性肝炎、不顕性感染を問わず、体内に B 型肝炎 が出現します。時に腹痛、関節痛、皮膚炎などの症状が出ることもあります。黄疸がひどく に対する抗体ができ、例外を除き、終生B型肝炎に対して防御力を獲得することになります。 なると尿の色が濃くなります。多くの場合、その後数カ月経過すると肝機能も正常化し、治 このような人はワクチンの必要がありません。またキャリアの人はワクチンによる抗体獲得 癒します。しかし、致死的な劇症肝炎に移行することもあります。また、感染しても症状が ができないので、キャリアの人にもワクチン接種は行いません。この抗体の有無、キャリア あまり出ず、しかし治癒もせず、無自覚のままに進行する慢性肝炎になる例もあります。慢 (抗原の有無)であるかどうかは医療機関で血液検査を行なうことで調べることができます。 性肝炎は健康診断の肝機能検査で見つかることもあります。また、慢性肝炎の活動性が急に 一般的な注意としては、不特定な相手との性行為を避けることが重要です。性行為による 高まり、急性肝炎のような症状が現れる(急性増悪)ことで見つかることもあります。慢性 感染を防ぐためにはコンドームを使用することが推奨されます。感染血液の付着した医療器 肝炎の場合は、肝硬変や肝がんに進行することもあるので注意が必要です。また、まだ免疫 具、カミソリ、歯ブラシ、タオル等から感染することもあるのでそれらに触れないようにし 機能が十分に成熟していない乳幼児や免疫機能不全の成人がB型肝炎ウイルスに感染した場 ましょう。 合、ウイルスを攻撃できないため、キャリアという状態になります。大部分のキャリアは自 医療行為、輸血を受ける際の感染も問題になります。途上国で医療を受けることになった 覚症状が無く、肝機能検査も正常です。しかし、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと移行する例 場合、周辺の先進国または日本への移送ができるかどうか確認をし、できる限り先進国で医 もあります。B型肝炎のキャリアは、他人への感染源になりますが、免疫状態が変化して(セ 療を受けるように心がけることが重要です。先進国では安全に輸血ができるように、輸血す ロコンバージョン)、感染力や活動性の極めて少ないウイルスのみを体内に持ち続けるように る血液製剤がウイルスで汚染されていないかどうかのスクリーニング検査が行われますが、 なる例もあり、その場合、感染源になる危険性は減ります。 途上国ではその検査が行われていないところが多いと推察されます。 病原体: 治療は急性肝炎は、対症療法、慢性肝炎は、インターフェロン・核酸アナログ製剤などで B 型肝炎ウイルス。ヘパドナウイルス属の仲間です。近年、ウイルスの遺伝子配列から、 す。 ジェノタイプ(genotype)というA-Hの8種類へ分類されています。欧米では type A、 (性行為・医療行為から感染) Bは、ほとんどが急性肝炎を起こして治癒するのに対し、type Aは慢性肝炎になる例が多い ⑲ とされます。しかし、国際交流が増えたためと思いますが、日本でも近年、欧米型のtype A AIDS(エイズ)とは後天性免疫不全症候群(Acquired Immunodeficiency Syndrome)を のB型肝炎ウイルスによる肝炎が増えています。type A の場合、約10%が慢性化します。 略したものです。 100℃で10分間の加熱、塩素、ホルマリンなどで病原性がなくなります。 ヒト免疫不全ウイルス(HIV:Human immunodeficiency virus)は主に免疫を担当する T 感染経路: リンパ球に感染して増殖します。感染した T リンパ球は次々と破壊されて減少し、やがて免 B型肝炎ウイルスを含む血液、精液、膣分泌液などを介して感染します。感染経路は輸血、 疫力が低下して健康な人は罹らないような病気になります。 医療行為、性行為などです。また B 型肝炎ウイルスキャリアの母親から生まれてくる子ども 臨床症状: は出産の際に血液を浴びて感染してしまいます(母子感染) 。その子どもはワクチンなど適切 感染初期は多くの場合、無症状ですが、倦怠感や発熱、下痢などをみとめることがありま な処置を受けないと、B 型肝炎ウイルスキャリアになってしまいます。日本では1985年から す。発症前になるとリンパ節腫脹や持続する発熱、下痢、体重減少などエイズ関連症候群と B 型肝炎母子感染予防対策が行われています。B 型肝炎ウイルスキャリアの方が海外で出産 よばれる諸症状がみられます。発症すると、免疫力の低下のために日和見感染や悪性腫瘍を を予定される場合は、滞在先に専門医がいるかどうかを確認し、もし対応ができない場合は 合併します。脳症など神経症状が現れることもあります。 日本を含めた対応可能な国で出産することが推奨されます。 病原体: 潜伏期間: ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2) ウイルスに感染しても、1~3カ月は症状が出ません。この間が潜伏期です。 感染経路: 予防法・治療: 血液、精液、膣分泌液にウイルスが含まれるため、輸血や、血液製剤を介する場合などの 予防接種を行ないます。予防接種を完全なものにするために、6カ月かけて3回の接種を 医療行為、性行為、母子感染、麻薬などの注射の回しうちなどによって感染します。 受ける必要があります。抗体を持っていない人が B 型肝炎ウイルスに感染した可能性がある 潜伏期間: 場合は、免疫グロブリン製剤の投与を受けることで、肝炎の発症を防ぐことができますが、 数年~10数年 非常に高価な製剤であるため使用には制限があります。よって、事前にワクチンを受けてお 予防法・治療: 日本では type C、type B が多く分布していることが知られています。type C および type AIDS