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自己点検・評価報告書 - 鹿児島県立短期大学

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自己点検・評価報告書 - 鹿児島県立短期大学
自己点検・評価報告書
2010年3月
鹿児島県立短期大学
目次
序章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第1章 理念・目的・教育目標
i
・・・・・・・・・・・・・
1
(a) 理念・目的・教育目標
・・・・・・・・・・・・
2
(b) 目的・教育目標の検証
・・・・・・・・・・・・
6
・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
・・・・・・・・・・・・・・・・
8
第2章 教育研究組織
(a) 教育研究組織
第3章 学科の教育内容・方法
・・・・・・・・・・・・・
11
1.教育内容等
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12
(a) 教育課程
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
12
(b) 履修科目の区分
・・・・・・・・・・・・・・・
(c) 臨床実習・学外実習等
(d) キャリア教育
45
・・・・・・・・・・・・
51
・・・・・・・・・・・・・・・・
54
(e) インターンシップ,ボランティア
・・・・・・・
55
(f) 国家試験
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
(g) 資格取得
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
・・・・・・・・・・・・・・・・
63
(h) 高・大の接続
(i) 授業形態と単位の関係
・・・・・・・・・・・・
69
(j) 単位互換,単位の認定
・・・・・・・・・・・・
71
(k) 社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮 ・・・
72
(l) 生涯学習への対応
・・・・・・・・・・・・・・
73
・・・・・・・・・・・・・・・・・
74
2.教育方法等
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
76
(a) 履修指導
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
76
(m) 正課外教育
(b) 授業形態と授業方法の関係
(c) 授業運営と成績評価
・・・・・・・・・・
82
・・・・・・・・・・・・・
85
(d) 教育改善への組織的な取り組み
・・・・・・・・
88
・・・・・・・・・・・・・・・
89
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
94
(e) 教育効果の測定
3.国際交流
(a) 国際交流の推進
4.学位授与
・・・・・・・・・・・・・・・
94
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
96
(a) 学位授与に関する基準および手続き
第4章 学生の受け入れ
・・・・・・
96
・・・・・・・・・・・・・・・・
97
1.学生の受け入れ方針および受け入れ方法
(a) 入学者受け入れ方針等
(b) 入学者選抜の仕組み
・・・・・
98
・・・・・・・・・・・・
98
・・・・・・・・・・・・・
100
(c) 学生募集方法・入学者選抜方法
・・・・・・・・
101
(d) 入学者選抜における高・大の連携
・・・・・・・
106
2.学生収容定員と在籍学生数の適正化
・・・・・・・
107
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
107
(b) 退学者
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
108
第5章 学生生活
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
111
(a) 定員管理
(a) 心身の健康保持への支援
・・・・・・・・・・・
112
・・・・・・・・・・・・・・・・
115
・・・・・・・・・・・・・・・・・
118
(b) 進路選択支援
(c) 経済的支援
(d) 課外活動への支援
・・・・・・・・・・・・・・
119
第6章 研究活動と研究環境
・・・・・・・・・・・・・・
123
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
124
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
124
1.研究活動
(a) 研究活動
(b) 教育研究組織単位間の研究上の連携
2.研究環境
・・・・・・
125
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
127
(a) 経常的な研究条件の整備
・・・・・・・・・・・
127
(b) 研究上の成果の公表,発信,受信等
・・・・・・
131
(c) 競争的な研究環境創出のための措置
・・・・・・
131
・・・・・・・・・
132
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
133
(d) 倫理面からの研究条件の整備
第7章 社会貢献
(a) 社会への貢献
・・・・・・・・・・・・・・・・
(b) 自治体や企業との連携
134
・・・・・・・・・・・・
136
第8章 教員組織
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
139
1.教員組織
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
140
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
140
(a) 教員組織
(b) 教育研究支援職員等
・・・・・・・・・・・・・
2.教員の任免,昇任等と身分保障
・・・・・・・・・
144
145
(a) 教員の募集・任免・資格・昇格に対する
基準・手続き
・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.教員の教育研究活動の評価
・・・・・・・・・・・
146
・・・・・・・・・・・・・
146
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
147
(a) 教育研究活動の評価
第9章 事務組織
145
(a) 事務組織の整備
・・・・・・・・・・・・・・・
148
(b) 事務組織の役割
・・・・・・・・・・・・・・・
150
(c) 事務組織と教学組織との関係
(d) 事務組織と設置者との関係
・・・・・・・・・
151
・・・・・・・・・・
153
(e) 事務組織の機能強化のための取り組み
第 10 章
施設・設備等
・・・・・
155
・・・・・・・・・・・・・・・・・
159
(a) 施設・設備等の整備
・・・・・・・・・・・・・
160
・・・・・・・・・・・
162
・・・・・・・・・・・・・・・・
163
・・・・・・・・・・・・・・・
164
(b) キャンパス・アメニティ
(c) 利用上の配慮
(d) 組織・管理体制
第 11 章
図書館および図書・電子媒体等
・・・・・・・・・
167
・・・・・・・・・・・・・
168
・・・・・・・・・・・・・・・
172
(a) 図書,図書館の整備
(b) 専門職員の配置
(c) 学術情報へのアクセス
・・・・・・・・・・・・
173
・・・・・・・・・・・・・・
174
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
175
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
176
(d) 図書館の地域開放
第 12 章
管理運営
(a) 教授会
(b) 学長,学科長,三役の役割と選任手続き
(c) 教学組織と設置者との関係
(d) 意思決定
・・・・・・・・・・
180
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
181
(e) 管理運営への学外有識者の関与
第 13 章
財務
・・・・・・・・
181
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
183
(a) 教育研究と財政
(b) 外部資金等
・・・・・・・・・・・・・・・
184
・・・・・・・・・・・・・・・・・
187
(c) 予算の配分と執行
(d) 財務監査
第 14 章
・・・・・ 177
・・・・・・・・・・・・・・
188
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
189
・・・・・・・・・・・・・・・・
191
・・・・・・・・・・・・・・・
192
自己点検・評価
(a) 自己点検・評価
(b) 自己点検・評価と改善・改革システムの連結
(c) 自己点検・評価に対する学外者による検証
・・
193
・・・
193
(d) 短期大学に対する指摘事項および勧告等への対応
第 15 章
・
194
・・・・・・・・・・・・・・
195
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
196
情報公開・説明責任
(a) 財政公開
(b) 自己点検・評価
(c) 個人情報保護
終章
・・・・・・・・・・・・・・・
196
・・・・・・・・・・・・・・・・
197
序
章
(本学における自己評価の意義と自己点検・評価との経緯)
Ⅰ
鹿児島県立短期大学は新制大学発足の翌年,即ち 1950(昭和 25)年に鹿児島県立大学の
短期大学部として開学し,2009(平成 21)年4月1日で 59 年を迎えたことになる。この間,
鹿児島の地域に根をおろした南九州唯一の公立の高等教育機関として,小規模大学ながら,
1万3千人を超す卒業生を送り出し「ケンタン」(県短)と愛称され,多くの関係者の支援
のもとで発展し今日に至っている。
本学の前身をたどっていくと,1922(大正 11)年,県立第一高等女学校の3年課程の専
攻科として,第一部家事科定員 20 名,第二部裁縫科 20 名で発足したのが始まりであったの
で,そこから繋げば,今日まで 98 年の歴史に至る。この間,1941(昭和 16)年からの太平
洋戦争においては,女子学生は強制的に勤務動員の奉仕をさせられ,鹿児島大空襲では校舎
等を焼失するなど,終戦から3ヶ月後の 11 月に,ようやく授業が再開されるに至っている。
終戦2年後の 1947(昭和 22)年 3 月 31 日に,まず,鹿児島県立女子専門学校の3年課程
の4専攻科(国文科,英文科,保健科,被服科からなる定員それぞれ 30 名)として発足し
た。この県立女子専門学校は,1950(昭和 25)年に戦後の新制の高等教育機関として,鹿
児島県立大学短期大学部として発足した。なお,1958(昭和 33)年 4 月 1 日に本学は鹿児
島県立大学短期大学部を「鹿児島県立短期大学」に名称変更を行って来た。1960(昭和 30)
年 3 月 31 日に第二部電気科を廃止し,1977(昭和 52)年に家政科(50)を食物栄養専攻(25)
と被服専攻(25)に専攻分離し,1978(昭和 53)年には文科(60)を国文専攻(30)と英文専
攻(30)に専攻分離し,1982(昭和 57)年には第一部商経科の入学定員の変更(30→50)
を行って来ている。更にその後,1989(平成元年)には,商経科(50→75),家政科食物栄養
専攻(25→30),被服専攻(25→30)において入学定員の変更を行ってきている。また,夜
間の第二部については,戦前からすでに先の裁縫科が 1927(昭和2)年に設置されており,
第二部商経科は本学設置の翌 1951(昭和 26)年に設置されたものである。
なお,今日では時代の変遷により,短大は一般的に女性の社会進出機関化している傾向に
なっているが,本学では,第二部を含め,男子学生にとっても県内有数の地域社会に貢献す
る教育機関でもあり,現在でも男女共学の制度を崩してはいない。
現在の本学の学科体制は,1995(平成7)年4月1日付けで再編されたものである。即ち,
文学科(日本語日本文学専攻,英語英文学専攻,いずれも定員 30 名),生活科学科(食物栄
養専攻,生活科学専攻,いずれも定員 30 名),商経学科(経済専攻 定員 35 名,経営情報専
攻 定員 40 名),第二部商経学科(定員 60 名)の総計4学科6専攻から構成されている。小
規模ではあるが,学科編成上からは,公私立を越えて,人文・社会・自然にわたる学問の性
格を異にした総合的な短期大学として制度上もユニークな存在である。
Ⅱ
こうした長い歴史の流れのなかで,ことに 1991(平成3)年の短期大学設置基準の大
i
綱化以降の全国的な教育改革の動きの中で,本学においての自己点検・評価は,既に平成一
桁時代,他の公立短期大学よりも先駆けて,自主的に自己点検・評価の活動を実施し,その
結果から改善策を生み出すという,今日で言えば,評価と改革とを結びつけた教育実践を今
日まで継続して行ってきているので,以下においては,点検・評価と改革・改善との双方の
経緯を描写する。
まず,本学では,先の短期大学基準の改訂直後の 1991~1993(平成3~5)年までの2
年間分の点検・評価を行い,併せて外部評価をもいち早く取り入れ,第1回目の自己点検・
評価報告書(『鹿児島県立短期大学の教育と研究―現状と課題』)を公表してきた。この報告
書作成とほぼ並行した形において,設置者の配慮もあって,1992(平成4)年に,他の公立
短期大学に先駆けて,今日までにも継続している「魅力ある短大づくり」事業が立ち上げら
れ,これと関わった形において,1995(平成7)年に教育研究の組織改革として,先に掲げ
たような今日に繋がる学科の再編を行ってきたことになる(以下,平成7年度改革で表記す
る)。
この報告書公刊後,本学の個性的大学づくりの検討を目的に大学改革委員会が新たに学内
に設置され,翌 1996(平成8)年に『本学の中・長期的な改革課題について』とした答申
を出してきた。この時,本学の教育理念のなかに「地域に根ざした教育」が挿入されること
になった。
平成7年度改革は,制度的には,設置基準の大綱化のもとで,「個性的な大学づくり」の
名のもとに,
学科の再編を行ってきたわけだが,
この改革で,
教員組織は学科に分属となり,
カリキュラムも大幅に再編され,後の章で取り上げることになるが,教養教育の在り方がそ
の後,問われてくるものとなった。
さて,本学における第2回目の自己評価は,1993(平成5)年から 1995(平成7)年ま
での3年間を締めくくるものとして行われ,ここでは全国的な動きに遅れることなく,学生
による授業評価が商経学科において行われたが,いまだ評価基準等,全学レベルでの統一し
た取り組みには至っていなかった。それが可能になったのはかなり先で,2007(平成 19)
年においてであった。
第3回目の自己評価は 1996(平成 8)年―1997(平成9)年に行われたが,この時は財源
難で印刷費計上が不可能であったこともあり,既に,一般的にも見られるようになってきて
いた分厚い報告書も印刷されることなく終った。しかし,学生による授業評価は授業のあり
方を検討する拠り所となっていることが分かったこともあり,これについてのみ教員の研究
費を拠出して印刷された。これがその後の学科ごとでの授業評価の試行とともに,FDへと
繋がる基礎となった。
第4回の自己評価は 1998(平成 10)年,1999(平成 11)年において行われ,2002(平成
14)年にその報告書が公刊された。ここでは,教員が関係している教育研究活動についてど
ういう目的,理念で行い,その結果についての考察を行うという視点からの評価がなされて
いる。
ii
いずれにせよ,平成7年度改革から,2002(平成 14)年の報告書刊行までのおよそ7年
間をかけて,
学科を中心とした組織体制とそれを基盤としたカリキュラ改革とを継続して構
築してきたと言える。教育改革との関係で見ると,この間に,魅力ある短大づくりの個性化
を目ざして,たとえば,少人数教育,オーラルコミュニケーションの重視,総合的科目の導
入,外国語ではそれぞれを母国語とする外国人教員による教育やLL教室の充実,情報教育
ではコンピュータ・リテラシー,会計処理,プロミラミングをはじめとした実社会で役立つ
科目等の開設,そして,学内LAN等の設置が,点検・評価による教育環境改革の成果とし
て生み出されるものとなった。さらには,平成一桁時代の後半からは,企業インターンシッ
プ,ボランティア活動,外国(ハワイ,中国,インドネシア)3大学との国際交流協定によ
る異文化体験,単位互換制等,学生の教育交流が進み,特に今日では国際交流は鹿児島とい
うローカルな地域と外国とを結ぶ拠点とすべくカリキュラム上での創意工夫を異文化体験,
異文化コミュニケーションのもとで進められている(これらの具体は第3章で取り上げる)。
なお,平成7年度改革までは,将来構想(名称は多様)関係の組織において改革が進めら
れてきていた(それを集約したのが,先の 1996(平成8)年の本学の大学改革委員会答申
『本学の中・長期的な改革課題』報告書)。それ以降,改革含みの将来構想の内容に関して
は,学科・専攻単位の組織の確立と総務運営委員会をはじめとした各種委員会が確立したこ
とにより,具体的・個別的に検討されてきた経緯となっている。
さて,先の第4回目の『自己点検・評価報告書』
(2000(平成 12)年度)から,3年後の
2003(平成 15)年度までは,平成7年度改革が定着化してきた時代と言えるが,翌 2004(平
成 16)年から 2005(平成 17)年間を主として対象に,第5回目の自己評価が堀田前学長の
もとで進められてきた。この時の成果は,学長の体調不振も重なり急遽,学長自らが最終的
に集約されたわけだが(認証評価が制度化されたのが平成 16 年),後にこの報告書は『自己
点検・評価』
(資料)(平成 18 年度)として位置づけられ,次の第6回の自己評価に吸収さ
れるものとなった(吸収という点では,それまでの報告書とは異なり,第5回と第6回とは
回数で言えば,一つにまとめられるが,次の第6回は 2006(平成 18)年改革を立ち上げた
という点で,第5回とは識別される)。
教育改革という点では,この第5回目の評価は,
「資料」としての位置づけではあったが,
2008(平成 20)年に,現学長のもとで,各学科(学科長)において,内容的に,短期(単
年度)の改革とやや中期(2~3年)にかけての改革とに識別,吟味して改革事項を整理し,
その後,組織化された新しい委員会で検討のための「資料」としてきたことにおいては,評
価と改革とは繋がっていたのである。
さて,2006(平成 18)年の現学長の着任と同時に開始されたのが,第6回目の自己評価
委員会の新しい組織で,この委員会では,先の『自己点検・評価』(資料)(平成 18 年度)
の見直しを,
新たに教授会決定となった大学基準協会の認証評価基準の「枠組み」
において,
先の『報告書』(資料)を構成し直すということを試みた。こうして作成されたのが『2004
―2005 年度
自己点検・評価報告書』(中間報告)である。ここで,「中間報告」としたの
iii
は,2年後の 2008(平成 20)年度の認証評価を目ざしていたところ,設置者側からの財政
理由からの依頼で急遽,今一度,自己評価を新たに,行わざるを得なくなり,それに向けて
の『報告書』という意味で「中間的な位置づけ」を余儀なくされたからである。
そして,この「中間報告」を次の1年間かけて自己点検・評価委員会で再整理したのが『自
己点検・評価報告書』(2008 年3月)である。ただ,この『報告書』は,先の「中間報告」
を受けて,その延長線上において,しかも認証評価への申請・提出が 2009(平成 21)年度
末に延期になったことで,調整を行うことなくまとめたこともあり,今回の『自己点検・報
告書』(2009 年 10 月)の「基礎的なデータ」としての位置づけとなっているものである。
なお,
「中間報告」後の 2008(平成 20)年に,自己点検・評価委員会と将来構想委員会との
統合・合併により,まとめられたのが本『報告書』であるが,委員会の名称こそは変わった
が,認証評価に向けての自己点検・評価という点では,同じ第6回目の継続した取り組みで
ある。これまで,4年間,第6回目の自己点検・評価の最終版が本報告書である。
さて,本学に於ける自己点検・評価の「意義」に関しては,その経緯と共に,既述のよう
に,それが改革・改善と抱き合わせとして位置づけてきていることに意義があるが,この点
は,平成 18 年度改革から始まる一連の本学教育改革とも連動している。
平成 10 年代半ば以降(本学の自己評価で言えば,第5回・第6回)においては,本学を
めぐる教育環境も激変して今日に至っている。とり分けても,鹿児島という地域におけるグ
ローバル化の進行,厳しい少子化,そして女子学生の四年制大学化志向,高学歴社会と生涯
学習社会への変動等による本学第二部(夜間)への社会人入学の量・質双方における変動,
財政難による教育活動,研究費等の削減のなかで,自律的な教育・経営を確保していくため
に,逆にそこに,認証評価を活用するという前向きの発想のもとに,(1)特に教養教育の再
建を中心にした 1995(平成7)年度以降のカリキュラムの再検討と,(2)時代の激変に対応
した戦略的で効率的な,しかも開かれた協働的な,運営組織の見直し,そのために,自己点
検・評価委員会とそれに対応した将来構想委員会との統合・合併のもとに点検・評価を意味
づけてきた。ことに,後者の組織改革においては,本学として,地域や関連の諸大学や設置
者である行政等との外部環境に対しても,開かれた協働の関係構築が発揮できるような組織
の改革にも取り組む必要があるとの観点から管理・運営の改革とカリキュラム(特に教養教
育)の改革とを車の両輪として,平成 18 年以来,3 度に及ぶ自己点検・報告書の作成を通
して今日まで行ってきた。
整理すれば,本報告書における点検・評価の期間の範囲は,広義には 2004(平成 16)年-
2009(平成 21)年の5年間,狭義には平成 18 年度から始まった改革以降,直接的な対象期間
という点では,2006(平成 18)年から,現在,2009(平成 21)年 5 月 1 日までの3年1カ
月の期間におよぶ。ただ,カリキュラムのうち,教養教育改革については,後述のように一
定の成果は上げられたが,抜本的な改革には至っていないので,専門教育と抱き合わせての,
さらなる「点検・評価」
(平成 23 年度)を前提とした改革が必要で,そのためには 2010(平
成 22)年度中の改革をみた教養教育の点検・評価が必須である。
iv
この間,全学レベルでの評価と改革とをセットにして,本学では短期高等教育機関として
の教育研究の質の保証に継続的に努めてきた。2010(平成 22)年に本学は創立 60 周年を迎
えるが,新たに踏み出すにあたり,大学基準協会における認証評価を受けることを決議した。
それに当たっては,こうした改革への継続的な努力が大学基準協会の基準を活用することに
おいて,本学の理念・目的・教育目標の達成状況について改めて自律的に検証し,その認証・
保障がなされることを通して,短期大学としての存続の意味を再確認し,本学としての使
命・目的を果たそうとするものである。
v
vi
第1章
理念・目的・教育目標
1
(a) 理念・目的・教育目標
【現状の説明】
本学では,2006(平成 18)年度改革において,新たに教育理念を見直し,合わせて,理
念に対応した各学科の目的と専攻の教育目標(以下,目標と略す場合もある)とを制定して,
これを学則に明記してきたところである(平成 20 年 4 月 1 日施行)。その内容は以下のとお
りである。
①「鹿児島県立短期大学(以下「本学」という。)は,深く専門の学芸を教授研究すると
ともに,豊かな教養と職業又は実際生活に必要な能力を有する人材を育成し,もって,地
域社会の発展に寄与することを目的とする」(第1条)。
②「本学では,教養教育と専門教育の有機的連携を図り,社会情勢の変化に的確に対応
するために必要な課題探求・解決能力を育成すること及び社会の形成に主体的に参画する
ために必要な豊かな人間性をかん養することを基本に,教育研究を行う」(第3条の2)。
本学では,上の①は,鹿児島県立短期大学の設置及び管理に関する条例に定められた短期
大学としての一般的な設置目的であり,②は,
本学としての教育研究上の固有な目的であり,
この双方を合体・統合させた内容を教育「理念」として位置づけてきている。即ち,①は,
学校教育法第 108 条および短期大学設置基準第5条第2項の「教育課程の編成方針」の内容
に則っており,②はそれを達成するために必要な教育研究上の目的を制定したものであるが,
本学では,この2つを合わせて,理念としている。
上の教育理念を具現化するために,短期大学設置基準の第2条の2「短期大学は,学科又
は専攻課程ごとに,人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め,公
表するものとする」に則って,学則に明記したのが,以下の各学科(4学科)および各専攻
(6専攻)の目的・目標である。学科・専攻の目的・目標はこれまでは,理念と関わって学
則に明記されることがなかったが,2008(平成 20)年度の学則改正において,理念・目的・
目標とを連関づけて明記したものである。
本学は,1950(昭和 25)年の設置で,2009(平成 21)年4月1日で既に 59 年と半世紀以
上の歴史を歩んできている。そこで,ここに至る間,これまでの教育理念の経緯を簡明に記
すと共に,何故,平成 18 年度改革で理念を再検討する必要性が出てきたのかを説明する。
2
各学科専攻課程の目的・教育目標
課
程
第一部
(昼間課程)
学科および専攻課程
文学科
(目的)
日本語日本文学専攻
(目標)
英語英文学専攻
(目標)
生活科学科
(目的)
食物栄養専攻
(目標)
生活科学専攻
(目標)
商経学科
(目的)
経済専攻
(目標)
経営情報専攻
(目標)
第二部
(夜間課程)
商経学科
(目的)
目的および教育目標
文学,言語及び文化を学ぶことを通して,豊かな文
学的感性,柔軟な思考力,的確な表現力を有し,多様
化した社会で活躍できる人材を育成すること。
日本語及び日本文学の理論を学び作品を読むこと
を通して,日本語に関する知識と表現力,日本文学を
広くかつ深く解釈し鑑賞する能力を有し,多様化した
地域社会で活躍できる人材を育成すること。
英米文学,英語学及び英語圏文化を学ぶことを通し
て,英語運用能力と豊かな教養を有し,多様化した国
際社会に対応できる人材を育成すること。
衣・食・住を中心とする生活全般を対象とした実践
的な専門知識と技能の習得を通して,柔軟な思考力及
び判断力を有し,地域社会に貢献できる人材を育成す
ること。
食物及び食生活についての幅広い科学的知識と専
門的知識の習得を通して,健康の維持増進のための実
践的能力を有し,地域社会に貢献できる人材を育成す
ること。
衣及び住を身近な環境として位置づけ,自然環境及
び社会環境を視野に入れながら,生活全般にかかわる
基礎知識の習得を通して,生活にかかわる事象に科学
的に対応する能力を有し,地域社会に貢献できる人材
を育成すること。
広く世界,日本,地域の経済・社会と企業の構造
と運動を研究し,情報処理の技法習得を通して,柔軟
な思考力と企画力を有し,地域に貢献できる人材を育
成すること。
経済・社会の理論を学び,地域社会及び産業の分析
を通して,地域の課題を発見する能力,課題解決の意
欲と能力を有し,地域経済の発展に寄与できる人材を
育成すること。
経営及び組織の理論を学び,会計・情報処理の技能
習得を通して,ビジネスを企画・管理する意欲と能力
を有し,地域産業の発展に寄与できる人材を育成する
こと。
広く世界,日本,地域の経済・社会と企業の構造と
運動を研究し,情報処理の技法習得を通して,柔軟な
思考力と企画力,そして豊かな人間関係の構築力を有
し,地域活性化のために活躍できる人材を育成するこ
と。
本学設置時点での教育理念を 1995(平成7)年の学科再編時において,45 年ぶりに再検
討した際に,先の教育理念(学則第1条)の文言に「地域社会の発展」を挿入し,「鹿児島
県立短期大学は,深く専門の学芸を教授研究するとともに,豊かな教養と,職業又は実際生
活において必要な人材を育成し,もって地域社会の発展に寄与することを目的とする」とな
った。平成 18 年度改革において,学長の交代を機に更に吟味しなおし,学則第3条の2の
理念(前頁②)を明文化した。
3
改訂の理由については,基本的には,
 短期大学設置基準の改正(2007(平成 19)年7月 31 日,第2条の2)への対応
 2002(平成 14)年度の自己評価報告でも教育理念について継続的な検討が必要とされなが
ら,その後の本学をめぐる教育環境の急速な変動(学生構成の多様性,少子化の促進,
地域社会の変貌,学科中心主義によるカリキュラム編成の硬直性等)にも関わらず,再
吟味されなかったこと
 教育活動重視の視点からは,育成すべき人材の資質能力の認識を大学として共有化する
こと
である。
こうした点での教育理念の見直しは,時期的にも適切であったと言える。
2002(平成 14)年度の教育理念の検討に際しては,
「深く専門の学芸を教授研究すると共に,
豊かな教養と職業又は実際生活に必要な能力を有する人材を育成」し,公立大学の使命とし
ての「地域社会の発展に寄与する」とした。
2008(平成 20)年度の再検討において,理念達成のためには,どのような「資質・能力」
をもった「人材」の育成を期したらよいのか検討し,これまでの本学に於ける教育実践を踏
まえて,「課題探求・解決能力の育成」をコンセプトとして挿入した。この「課題探求・解
決能力の育成」は「社会の形成に主体的に参画するために必要な豊かな人間性をかん養する」
ことにおいて達成されるという位置関係にある。
先の教育理念の②はそのことを教養教育と専門教育とのカリキュラムの有機的統合にお
いて位置づけ,達成させることを意図したものである。
また,ここで,学則に新たに加えることになった「課題探求・解決能力」とは,短期大学
設置基準第5条第2項のうちの「教育課程の編成方針」で言う「幅広く深い教養及び総合的
な判断力を培い,豊かな人間性を涵養するよう適切に配慮しなければならない」としている
「幅広く深い教養及び総合的な判断力」という,資質能力を内包した概念である。この能力
は極めて多義ではあるが,これからの社会が高度化,多様化が一層激しくなり,かつ,国際
化と地域化とが同時並行的に共存しながら進んでいく地域社会のなかで,自律的個人として,
豊かな人間性を発揮しながら,自らの課題を的確に逞しく探求し,解決に挑んでいくことの
できる能力のことである。
また,4学科(第二部商経学科含め)6専攻ともに,平成 18 度教育改革の際に再検討し
た教育理念・目的・教育目標を明確にした。
新しい教育理念に基づいての教育目的・目標の周知方法については,本学の学生,受験生,
県民への周知は大学案内(参考資料),学生便覧,学生募集要項やホームページ等で行って
きている。
教職員にはこれまで,教員集会やFD(Faculty Development: 教員の授業内容や教育方
法などの改善・向上を目的とした組織的な取り組み)活動,教職員向けの「学長室だより」
によって,初等・中等教育レベルでの課題探求・解決能力と大学教育における課題探求・解
4
決能力との相違などを説明し,理解をすすめている。
在学生に対しては,入学式,卒業式等での学長告辞,新入生オリエンテーションやゼミ
でも説明している。保護者向けの「振興会報」においても説明している。
学外に対しては,県高等学校校長との「教育懇話会」や高等学校進路指導担当教諭を対
象にした「入試連絡会議」においても,学長,学生部長,学科長から,教育理念,学科の
教育目的,目標について紹介している。また,最近は,県内高等学校の PTA 会誌において
も学長が教育理念を解説する機会は多い。
高校生,受験生に対しては,県内のすべての高校に大学案内を配布するとともに,本学の
教職員が訪問する際には,本学の教育目標や特色等を進路指導担当に説明し,受験生への周
知を依頼している。オープンキャンパスでも本学の理念・目的・目標を周知している。また,
受験関連の業者が開催する大学進学ガイダンスでも本学教職員が出向き,説明している。
【点検・評価】
本学の教育理念の内容のうち,制度上の理念である「深く専門の学芸を教授研究するとと
もに,豊かな教養と職業又は実際生活に必要な能力を有する人材を育成し,もって,地域社
会の発展に寄与することを目的とする」の部分は,学校教育法における短期大学の目的に沿
ったもので,学則上でも適切に定めてきており,設立以来一貫して,職業や実際生活におい
て活躍する有為な人材の育成に努めている。
理念実現の「妥当性」という点では,特に本学では,1995(平成 7)年度の学科再編以来,
一貫して,文学科(2専攻)・生活科学科(2専攻),商経学科(2専攻)・第二部商経学科
の教育組織を,今日でも変えることなく維持してきている。
この点では,
小規模大学ながら,
人文(文学科),自然(生活科学科)
,社会(商経学科)の3つの学問領域にわたって,先の
①の制度上の理念と②の本学独自の理念の双方を合わせて確保している。さらに,理念の実
現のために,学科・専攻の目的・目標に沿って,総合的にも豊かなカリキュラムを編成して
きている。その関係性の態様については,教養教育と関わって,第3章で取り上げる。
また,短期大学は一般に,厳しい入学・就職状況下にあるが,本学では,これまでに入学
段階でも学生定員を殆ど割ることなく,さらに卒業生の県内就職率も高く,その多くが地域
の中堅リーダーとして活躍している。四年制大学への編入学生も多く,海外の大学への編入
学生もほぼ毎年,輩出している(第3章参照)
。
従って,今日の激変する社会状況においても,県短への「入口」と,
「出口」の部分から
は,
「地域社会に貢献する県短(ケンタン)」という愛称で県民からは馴染まれ,その存在意
義を現段階でも失うことなく,維持してきている。このような良好な卒業時の状況をもとに
しても,「職業又は実際生活に必要な能力」が育成され,より一層「社会の形成に主体的に
参画するために必要な豊かな人間性をかん養する」ことを基本においての課題探求・解決能
力を育成する本学の理念・目的・教育目標は,およそ実現しているものと評価されよう。
本学関係者に向けた周知の取り組みとしては概ね適切に行われている。しかしながら,県
5
民一般に対しては,若干不足している。
【将来の改善策】
理念・目的・教育目標については,適切であり,今後もこれに基づき,本学の運営を行っ
ていく。さらに社会の状況変化を踏まえて,理念・目的・教育目標の検討を継続する。また,
ホームページの充実やメディアを利用した広報活動を通じて,さらなる周知を図っていく。
(b)目的・教育目標の検証
【現状の説明】
平成 18 年度改革では,平成7年度改革で明文化した教育理念・目的・目標の検証を行い,
見直しを行った。さらに,2008(平成 20)年度の委員会再編で新たに組織された自己評価・
将来構想委員会は,現状の教育システムの適切性を検証するだけでなく,その理念・目的・
教育目標の適切性の検証も所掌事項としている。2008(平成 20)年度に制定した,鹿児島
県立短期大学教育研究等点検・評価規程では,2年ごとに理念・目的・教育目標を含む自己
点検を行うこととしている。
【点検・評価】
従来,自己点検評価において行ってきた理念・目的・教育目標の見直しについては,2008
(平成 20)年度に自己評価・将来構想委員会の組織化と関連規程の整備によりシステム化
された。しかし教育理念に連関した目的・目標の点検・評価を実施するにおいては,日常レ
ベルでの慣行や観察,対話,印象に基づいたものであり,理念・目的・目標の妥当性・連関
性の評価基準について数量的に明確にしていない。
【将来の改善策】
2008(平成 20)年度に組織化された委員会と関連規程の有効性を検証していく。そのた
めに,
「評価基準」をできるだけ早期に開発して,2011(平成 23)年の自己点検・評価におい
て使えるものとする。
6
第2章
教育研究組織
7
(a) 教育研究組織
【現状の説明】
本学の理念・目的に基づいて,本学には第一部に3学科6専攻,第二部に1学科が設置さ
れている(基礎データ 1 参照)。また,本学の附属研究機関として地域研究所(第 6 章「研
究活動と研究環境」参照)が設置されている。
・教育組織
第一部
日本語日本文学専攻
文学科
英語英文学専攻
食物栄養専攻
生活科学科
生活科学専攻
経済専攻
商経学科
経営情報専攻
第二部
第二部商経学科
・研究組織
地域研究所
・附属図書館
附属図書館
本学が理念として掲げる公立大学の使命である「地域社会への貢献」を目的に,地域の
多様なニーズに対応する人材育成のため,本学は,広く,人文,自然,社会の3分野から,
文学科,生活科学科,商経学科の3学科を設置している。また,第二部商経学科を設置し,
8
南九州唯一の夜間高等教育機関として,勤労学生の勉学要求に応えている。
文学科は,多様化した地域社会および国際社会で活躍できる人材育成を目標に,文学と
語学を教育研究の対象としている。このなかで日本文学・中国文学の作品鑑賞と日本語の
考察を中心とした「日本語日本文学専攻」を設置し,英米文学の作品鑑賞,言語理論の修
得,英語圏文化の知識を背景として英語運用能力を高める「英語英文学専攻」を設置して
いる。
生活科学科は,人間の生活にかかわる社会的・自然的事象を教授研究するものとしてお
り,特に食生活と健康に関する領域を教育研究対象とするものと,生活を物理的社会的に
支える領域を教育研究対象とするものに大別し,それぞれを「食物栄養専攻」と「生活科
学専攻」として配置している。
商経学科は,魅力に満ちた元気な地域社会づくりに貢献できる人材育成を目標に,経済
学・商学その他関連領域を教育研究対象としている。そのなかでも経済・社会の理論を中
心に「経済専攻」を設置,経営・組織の理論と情報の分析を中心に「経営情報専攻」を設
置している。
第二部商経学科は,第一部商経学科の両専攻の教育内容を有する学科である。入学者の
多様な学修志向を実現できるよう専攻を設置していない。
表2-1
教育組織と学生定員
(2009 年 5 月 1 日現在)
課 程 学 科 専 攻 課 程
専任教員
(現員)
学生定員
入学定員
収容定員
第一部(昼間課程)
文学科
生活科学科
商経学科
日本語日本文学専攻
教授2准教授3
30 人
60 人
英語英文学専攻
教授2准教授3助教1
30 人
60 人
食物栄養専攻
教授2准教授2助教4
30 人
60 人
生活科学専攻
教授4准教授2助教2
30 人
60 人
経済専攻
教授3准教授2
35 人
70 人
経営情報専攻
教授2准教授3講師1
40 人
80 人
教授2准教授2講師1
60 人
180 人
第二部(夜間課程)
商経学科
本学では附属機関である地域研究所が設置されている。本研究所は,県立短期大学の教
育組織の編成をベースに,自然,人文,社会の3分野の教員によって構成され,鹿児島の
地域が抱える課題を学際的に研究し,学生や地域への成果還元を行う組織として位置付け
られている(第 6 章参照)。
その他,個別の研究分野ごとの研究機関は設置されていない。
教育研究を支援する施設として附属図書館が設置されている(第 11 章参照)。
9
【点検・評価】
本学は短大設置基準を超える専任教員を有している。短期大学設置基準別表第一が定め
る「学科の種類に応じた専任教員数」では,文学科8名(本学 10 名),生活科学科9名(同
11 人),第一部商経学科8人(同 11 人),第二部商経学科4人(同4人)である。
小規模短期大学としては多彩な学問領域を持ち,少人数教育による学生に目が届く教育
が行われている。本学の課程を経た学生は,様々な進路先から高い評価を得ている。特に
就職後,比較的短期のうちに企業や団体内で信頼されるスタッフとして責任ある部署をま
かされ,後輩の指導を行うなどの立場に立つ学生を多数輩出している。それは,単純な技
能取得だけではない基礎的な能力,すなわち,問題を発見し,解決する能力,気配りや目
配りといったコミュニケーション能力,郷土を愛しその発展に貢献したいと願う情熱など
が育成され,本学の教育成果が,鹿児島県内において高い評価を得ていることを示すもの
と評価できる。
教育目標を達成する上で,学科・専攻は概ね適切に組織されている。
鹿児島の地域が抱える諸問題を学際的に研究し,地域に還元する組織として,地域研究
所の設置は,本学理念からみて適切である。
教育研究を支える組織として,附属図書館が適切に設置されている。
【将来の改善策】
現在の組織は適切であると判断されるが,鹿児島県における少子化の影響や,受験生の
四年制大学志向,栄養士養成制度や教員養成制度をめぐる変化,夜間課程に対する社会ニ
ーズの変容に対応するべく,随時検討を行う。
地域研究所の設置は適切であると判断され,今後も地域社会への還元に向け充実に努め
る。
附属図書館の設置は適切であると判断される。引き続き充実に努める。
10
第3章
学科の教育内容・方法
目標
本学の教育理念は第一章に記したように,「深く専門の学芸を教授研究するとともに,豊
かな教養と職業又は実際生活に必要な能力を有する人材を育成し,もって,地域社会の発
展に寄与することを目的とする」「教養教育と専門教育の有機的連携を図り,社会の変化に
対応するために必要な課題探求・解決能力を育成するとともに,社会の形成に主体的に参
画するために必要な豊かな人間性を涵養することを基本に,教育研究を行う」である。こ
れに基づいて,各学科は,それぞれが掲げる教育目標を実現できるような教育課程を構築
していなければならない。特に,「課題探求・解決能力」が実現できるような,教養教育,
専門教育のカリキュラム作成が必要である。
同時に,教育理念・教育目標を実現するにはそれらの教育課程が学生にわかりやすく体
系化されていることも大切である。
これに加えて,文学科や生活科学科においては,教職課程や栄養士養成課程など資格取
得に関わる科目履修の方法がわかりやすく説明されていることが必要である。
11
1.教育内容等
(a)教育課程
(a)-1 県立短大全体
はじめに現在の中留武昭学長の就任以降のカリキュラム改革について,教養教育の再建
を中心にした全学科共通の共通教育と各学科の専門教育との基本方針を概括する。
【現状の説明】
本学は鹿児島県立の短期大学として,南九州の短期高等教育機関の「砦」として更なる
発展を自らに期している。そのためには「職業や実際生活において必要な能力を育成する」
(実学)ことを目的にしたその「能力」を全学レベルにおいて,明らかにする必要性があ
る。その能力を組織として育成し,地域社会に更なる貢献をしていくことが公立大学とし
ての本学の教育の固有性(特色)でもある。その取り組みのうち,理念の具体化における
手続き過程を説明する。
本学における人間力を基盤にした「課題探求・解決能力」は,第1章に述べたように,
総合的な力量であるが,それは①本学の教育組織が文学・生活科学・商経という小規模な
がら,総合的な学問の性格を担保しており,こうした能力をカリキュラム(教育課程)とし
て組み込むことが組織的にも可能である。②本学入学生は,県内高校出身者が多いことも
あり,高校との学習歴に十分な配慮をする必要がある。この場合,その学習歴の連続した
共通基盤としても課題探求・解決能力の開発を通しての地域社会へ貢献している(この点
では,教育政策レベルでも 1998(平成 10)年以降,初等・中等教育の学習指導要領におけ
る「生きる力」の属性としての「知の習得と活用」が,また,大学レベルでは,1991(平
成 3)年の大学審答申や教養教育答申『グローバル化時代の教養教育』においても課題探求
が教養教育の中心課題として打ち出されている)。本学では,初等・中等教育との資質・能
力の発達の連続性にも考慮して,大学としては,初等・中等教育で培われてきている課題
探求・解決能力のさらなる創造的な総仕上げの可能性を期して,教育理念の属性としてこ
れを位置づけることにした。
そこで,この「課題探求・解決能力」を含めた本学の教育を,「連関性」をキーワードに
説明すれば,以下の2点にまとめられよう。
一つには,まず,本学全体の教育理念と各学科・専攻の目的・目標との明確な関連づけ(連
関性)である。具体的には,学科レベルの教育目的のキー概念にまで絞り込んで見ると,文
学科における「柔軟な思考力,的確な表現力」
,生活学科・商経学科における「柔軟な思考
力,判断力」などは,明らかに課題探求・解決能力の属性であり,更に,3学科ともそう
した能力を地域社会の発展に寄与する(生かす)ことを共通の課題として明記しており,
内容としても適切な連関性を保持している。
二つには,こうした新たな理念の具現化には,主として教育活動としてのカリキュラム
の見直しが必須であり,この点に関して,以下の視点からの見直しを将来構想委員会とカ
リキュラム編成委員会とを平成 18 年度改革の 2006(平成 18)年 6 月に立ち上げ,双方を
12
車の両輪として検討してきたことである。その際には,教育理念の実現のために大学全体
のカリキュラム編成の基本方針,教養教育,専門教育における同じく基本方針をそれぞれ
に立てて,これまでのカリキュラムの見直しを全面的に図ることにした。
そのカリキュラム編成の基本方針は以下のとおりである。
1.教育理念の実現に向けた大学全体のカリキュラム編成の基本方針
①
グローバル化とローカル化とを融合できるカリキュラム(国際的視野を持ちなが
ら,地域として貢献できるカリキュラム)
②
多様化した学生に対して,課題探求・解決的な知的好奇心を喚起できるようなカ
リキュラム
③
自分の知識や生き方を国際社会や地域社会と関わって考えていくことができるよ
うなカリキュラム
④
教養教育と専門教育との間においてクロスできるような学際的な共通性のあるカ
リキュラム
⑤
社会体験(ボランティア)やインターンシップ等,体験,観察等を盛り込むこと
ができるカリキュラム
⑥
地域と密着し生涯学習へのコミットメントを深めたカリキュラム
2.教養教育のカリキュラム開発の基本方針
①
人文,社会,自然の事象を明確にしたバランスあるカリキュラム
②
地域における文化と世界の多様な文化との相互理解を促進してくれるようなカリキ
ユラム(グローバルとローカル性のあるカリキュラム)
③
高いコミュニケーション能力のスキルを確保したカリキュラム
④
高い情報リテラシー(IT)の向上をスキルとして確保したカリキュラム
⑤
現代の課題探求・解決に根ざした学際的なカリキュラム
⑥
科学時代に相応しく,科学的なものの見方,考え方を批判的に判断することができる
カリキュラム
⑦
外国語の運用能力を強化することのできるカリキュラム
⑧
健康な精神と丈夫な体力をはぐくむことができるカリキュラム
3.専門教育のカリキュラム開発の基本方針
①
地域社会に貢献することを目指したカリキュラム
② 幅広い実践的な専門的知識・技能が育まれるカリキュラム
③ 急激な社会変化に対応した新しい専門的知識が確保されたカリキュラム
④ 各学科における専門の基礎を明確にしたカリキュラム
⑤ 専門教育の視点からも専門につながっている教養教育のカリキュラム
⑥ 専攻間をクロスした学際的なカリキュラム
13
こうして,本学の教育内容が教育理念に合致したものとなっているかは,基本方針に照
らすことによってその連関性を確認できるようになった。
専門教育の教育内容,カリキュラムについては学科ごとに後述するが,ここではまず,
教養教育について詳述する。
上記のように教養教育カリキュラムの基本方針を明文化したあと,2007(平成 19)年2
月からは,ワーキンググループを立ち上げ本学の教養教育について基本方針に基づき検討
した。
ワーキンググループからは多くの提言がなされたが,それらを将来構想委員会(現 自己
評価・将来構想委員会)がとりまとめ,教務委員会で実現可能なカリキュラムの編成を行
うことになった。
その結果は以下の 4 点である。
1.できるだけ多くの専任教員(助教を含む)が教養科目を担当し,人文,社会,自然系
列の科目を充実させること
2.各学科の専門科目であった情報系の科目のうち,基礎的な内容の科目を「情報リテラ
シー」として教養科目に配置しなおすこと
3.導入教育的な科目を新たに開設すること
4.外国語科目のうち,中学・高校からの積み重ねの上にある英語について習熟度別・目
的別に編成を見直すこと
これらは,上記のカリキュラムの基本方針を踏まえた内容であると同時に,本学の教養
教育が専門教育のカリキュラムと関連することをねらってのものである。1.に関しては,
各学科の専門科目のうち,本学学生が修得することが望ましい基礎的な教養として,全学
的な教養科目に移せるものがあるかどうかを検討し,文学科日本語日本文学専攻の「日本
文化史」の内容を教養科目の「日本の歴史」に統合したほか,商経学科の「社会学」を教
養科目に移した。また,2.3.4.は,専門教育課程において必要となる情報教育,文
章表現力とディスカッション能力,英語運用能力の基礎的な部分を修得させることを目的
としている。
一方,教養教育は各学科で系列の担当を分担しているため,全学的な見地での検討が恒
常的には行われにくくなっていたため,教務委員会のもとに共通教養部会を編成し,一般
教養,外国語教育,情報教育,スポーツ・健康科目それぞれについて学科を越えて所掌で
きるようにした。
特に,外国語科目と新設の情報リテラシーについては外国語部会,情報教育部会におい
て綿密な討議が行われた。外国語では必修である英語Ⅰと英語Ⅱを習熟度別に編成し,1
年前期に集中して基礎的な英語力を修得できるようにし,英語Ⅲと英語Ⅳを応用的な内容
として目的別に内容を吟味した。また,非常勤講師も含んで,日本人教員と外国人教員の
役割を明確化した。これらの改革の趣旨は外国語部会を通じて非常勤講師にも周知した。
情報リテラシーも1年前期に集中して行うことを基本としたが,時間割編成の都合上,
14
学科によっては前期・後期に分散することもやむなしとした。修得すべき内容については
情報教育部会が大まかなガイドラインを作り,全学で統一した履修内容となるように配慮
している。
導入教育としての教養ゼミについては,検討の結果,開設せず,代わりに各学科・専攻
で専門基礎的な科目の中で日本語リテラシーを含んだ導入教育的な内容をとりいれること
になった。上述した専門教育課程の基礎となる日本語による文章表現力とディスカッショ
ン能力の修得のためには,教養課程との橋渡し的な役割を期待し,専門基礎的な科目に取
り入れる方が効果的であろうと判断したためである。
これらの改革は 2009(平成 21)年度から実施されたが,英語Ⅰ・Ⅱの習熟度別授業編成
だけは,試験的に 2008(平成 20)年度から前倒しで実施された。
ただし,第二部の教養科目については,第一部に比べて一週間の授業時間が少ないこと,
学内教員であっても第二部の科目を担当する場合は非常勤講師手当が発生することなどか
ら,容易に開設科目数を増やすことができず,上記の改革のうち情報リテラシーの開設と
外国語科目の内容の吟味のみの実施となり,1の人文・自然・社会系列の充実や4の習熟
度別クラス編成は実現していない。3の導入教育については後述のように,専門科目の基
礎演習として新設されることになった。
15
以上の過程を経た現在の教養科目は以下のとおりである。
表3-1 第一部教養科目
授業科目
授業
系列
の
単位数
必修
週時間
選択
方法
1年
教
2年
備考
職
前 後 前 後 必
期 期 期 期 修
人文
社会
自然
総合
文学の世界
講義
2
2
2
日本の歴史
講義
2
2
2
こころの科学
講義
2
芸術論
講義
2
2
2
日本国憲法
講義
2
2
2
法学概論
講義
2
2
2
社会学
講義
2
生活と経済
講義
2
キャリアデザイン
講義
2
-
数学の世界
講義
2
2
2
物理の世界
講義
2
2
2
生物の科学
講義
2
2
2
化学の世界
講義
2
食生活と健康
講義
2
2
2
現代人権論
講義
2
2
2
平和論
講義
2
2
2
環境問題
講義
2
2
2
鹿児島学
講義
2
2
2
社会活動
実習
企業研修
実習
2
2
16
2
2
-
2
-
2
★
○
2
2
2~4★
注1)
注2)
-
注3)
2
注3)
-
-
-
-
注2)
-
-
-
-
注2)
(つづき)
英語Ⅰ
演習
1
2
英語Ⅱ
演習
1
2
英語Ⅲ
演習
1
英語Ⅳ
演習
1
異文化コミュニケーション(英語) 実習
2
異文化コミュニケーション
実習
2
ドイツ語Ⅰ
演習
1
△
ドイツ語Ⅱ
演習
1
△
フランス語Ⅰ
演習
1
△
フランス語Ⅱ
演習
1
△
中国語Ⅰ
演習
1
△
中国語Ⅰ
演習
1
△
中国語Ⅱ
演習
1
△
中国語Ⅱ
演習
1
△
中国語Ⅲ
演習
1
中国語Ⅳ
演習
1
スポーツ・健康論
講義
1
生涯スポーツ実習Ⅰ
実習
1
生涯スポーツ実習Ⅱ
実習
1
情報リテラシーⅠ
演習
1
情報リテラシーⅡ
演習
1
情報リテラシーⅡ
演習
1
2
2
2
-
-
-
注4)
注4)
-
(中国語)
外国語
2
注5)
2
注5)
2
注6)
2
注6)
2
注3)
2
注7)
2
注3)
2
2
注3)
2
スポーツ・健康
2
注7)
注3)
注8)
2
2
情報
2
2
2
注9)
注10)
注 1)文学科を除く
注 2)商経学科を除く
注 3)生活科学科を除く
注 4)授業科目名は,英語英文学専攻は「英語」となる。
注 5)英語英文学専攻のみ
注 6)英語英文学専攻は 1 年次,生活科学科は 2 年次
注 7)生活科学科のみ
注 8)食物栄養専攻を除く(7.5 回)
注 9) 文学科,生活科学専攻
注 10) 食物栄養専攻,商経学科
総合の★印科目の修得単位数は,2 科目を合計して 4 単位を上限とする。
英語英文学専攻の学生は△印科目中2科目を選択必修。ただし,同一外国語に限る。
17
表3-2
第二部商経学科教養科目
系列
授業科目
授業 単位数
の
方法
必 選
週時間
1年
2年
3年
修 択 前
後 前 後
前
後
期
期 期 期
期
期
2
2
2
人間と文化
講義
2
日本の歴史
講義
2
日本文学
講義
2
2
2
2
郷土文学
講義
2
2
2
2
こころの科学
講義
2
2
2
2
比較文化
講義
2
2
2
2
アジア文化論
講義
2
2
2
2
日本国憲法
講義
2
2
2
2
数学の世界
講義
2
2
2
2
環境問題
講義
2
2
2
2
外国語科目 英語Ⅰ
演習
1
2
英語Ⅱ
演習
1
異文化コミュニケーション(英語)
演習
2
異文化コミュニケーション(中国語) 演習
2
中国語Ⅰ
演習
1
中国語Ⅱ
演習
1
教養一般
スポーツ・健 生涯スポーツ実習Ⅰ
康科目
情報科目
2
2
2
2
-
-
-
-
-
-
2
2
実習
1
2
生涯スポーツ実習Ⅱ
実習
1
情報リテラシーⅠ
演習
1
2
情報リテラシーⅡ
演習
1
2
2
【点検・評価】
本学の教育課程,内容全体は上述のとおり教育理念に対応したカリキュラム開発の基本
方針に基づいて組み立てられている。このことは逆に言えば,カリキュラムを通して理念・
目的・目標の実現やその点検・改善を図る方策でもあり,本学の長所といえる。
しかし,その具体的な実施はまだ始まったばかりであり,点検・評価についてはこれか
らというところである。
2009(平成 21)年度から始まった教養教育科目の改革については,現在遂行中であるた
め評価はできないが,上述したようにワーキンググループの提言を受けた内容となってい
る。外国語系列のうち英語については,昨年 2008(平成 20)年度から習熟度別編成を実施
18
しており,後に詳述するように,履修した1年生対象のアンケートによれば,学生からお
おむね肯定的に受けとめられている(表3-26 参照)。
しかしながら,外国語以外の科目については必ずしも部会が機能しているとは言えず,
従来とおり各学科に任せている状況である。
このため,外国語,スポーツ・健康科目以外の一般教養科目担当教員が定年や他大学等
への転出等で退職した場合,その科目の必要性が十分に審議されず,後任の教員が教養の
同一科目を担当できないことがあり,科目開設が困難になるおそれがある。
第一部の教養科目は,上記の【現状の説明】に既述したように,「学校教育法第 108 条」
および「短期大学設置基準第5条の2」に対応した内容になるよう,又,専門教育課程と
関連するよう配慮して改革を重ねてきたが,第二部の教養科目については,授業時間数や
非常勤講師手当の関係で十分な改革をしてきたとは言えず,第一部と比べてややアンバラ
ンスである。
【将来の改善策】
カリキュラム開発の基本方針を目安として,カリキュラムを通して理念・目的・目標の
実現やその点検・改善を図る方策は,今後もこれを「達成目標」の一つとして引き継いで
いく。
第一部の教養教育については,遂行中の 2009(平成 21)年度の改革について,2010(平
成 22)年度中に各部会を通じて実施状況を振り返り,必要な検討を行う。
第二部の教養教育について,商経学科を中心に現状を見直し,必要な部分は教務委員会
を通じて 2011(平成 23)年度を目処に改善する。
第一部,第二部ともに,以下に述べる各学科の専門カリキュラムの見直しに際して,許
容科目の位置づけに配慮する。特に,商経学科においては,2011(平成 23)年度末まで
に専門カリキュラムの改正が予定されているので,教養科目との関連を含めて見直す。
学科・専攻
(a)-2 文学科
【現状の説明】
文学科では,1995(平成7)年度の改組以来,2002(平成 14)年度から,教育目的(学
科)
・目標(専攻)と学生の要求により適応させるべくカリキュラムの見直しに着手し,2004
(平成 16)年度には日本語日本文学専攻が,2006(平成 18)年度には英語英文学専攻が一
応の完成に至った。
2009(平成 21)年度現在の専門科目は以下の一覧表のとおりである。
19
表3-3
文学科日本語日本文学専攻専門科目
週時間
専門
基礎
日本語学科目群
日本文学「古典」科目群
必修
日本文学概論
講義
2
言語学概論
講義
日本語学概論
講義
日本語教育概論
講義
日本語史
講義
日本文法論
講義
2
日本語学講義
講義
2
日本語学講読Ⅰ
演習
1
◇
日本語学講読Ⅱ
演習
1
◇
2
日本語学演習Ⅰ
演習
1
☆
2
日本語学演習Ⅱ
演習
1
◎
日本語学演習Ⅲ
演習
1
○
日本語学演習Ⅳ
演習
1
☆
日本語学演習Ⅴ
演習
1
◎
日本語学演習Ⅵ
演習
1
○
日本語表現法
講義
2
日本語表現法演
演習
1
対照言語学
講義
2
日本文学史・古典
講義
2
日本文学史・古典
講義
2
日本文学講義Ⅰ
講義
2
日本文学講読Ⅰ
演習
1
◇
2
日本文学講読Ⅱ
演習
1
◇
2
日本文学講読Ⅲ
演習
1
◇
日本文学講読Ⅳ
演習
1
◇
日本文学講読Ⅴ
演習
1
◇
日本文学演習Ⅰ
演習
1
☆
日本文学演習Ⅱ
演習
1
◎
日本文学演習Ⅲ
演習
1
○
授業科目
教職必修
系列
単位数
授業
の
方法
1年
選択
前期
2年
後期
前期
後期
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
○
2
2
2
2
2
20
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
(つづき)
日本文学「近代」科目群
日本文学史・近代
講義
2
日本文学史・近代
講義
2
日本文学講義Ⅱ
講義
2
日本文学講読Ⅵ
演習
1
◇
日本文学講読Ⅶ
演習
1
◇
2
日本文学講読Ⅷ
演習
1
◇
2
日本文学講読Ⅸ
演習
1
◇
2
日本文学講読Ⅹ
演習
1
◇
2
日本文学演習Ⅳ
演習
1
☆
日本文学演習Ⅴ
演習
1
◎
日本文学演習Ⅵ
演習
1
○
2
2
2
2
2
2
2
2
地域文学・中国文学科目群
講義
2
南九州の文学Ⅱ
講義
2
中国文学史Ⅰ
講義
2
中国文学史Ⅱ
講義
2
中国文学講読Ⅰ
演習
1
◇
中国文学講読Ⅱ
演習
1
◇
2
中国文学演習Ⅰ
演習
1
☆
2
中国文学演習Ⅱ
演習
1
◎
中国文学演習Ⅲ
演習
1
○
卒業
研究
演習
1
卒業研究Ⅱ
演習
1
2
2
南九州の文学Ⅰ
卒業研究Ⅰ
2
2
2
2
2
2
2
○
○
2
2
2
2
関連科目群
英文学史
講義
2
米文学史
講義
2
比較文化
講義
2
書道Ⅰ
演習
1
書道Ⅱ
演習
1
書道Ⅲ
演習
1
書道Ⅳ
演習
1
2
2
2
2
◇印科目中,7科目以上を選択必修
☆印,◎印,○印科目中,それぞれ1科目以上を選択必修
※関連科目群の中から2科目以上を選択必修
21
○
2
○
2
2
表3-4 文学科英語英文学専攻専門科目
週時間
専門
基礎
コミュニケーション科目群
英語学科目群
英米文学科目群
必修
スタディスキルズ
講義
1
言語学概論
講義
オーラルコミュニケーションⅠ
演習
2
オーラルコミュニケーションⅡ
演習
2
オーラルコミュニケーションⅢ
演習
1
オーラルコミュニケーションⅣ
演習
LL演習Ⅰ
演習
1
LL演習Ⅱ
演習
1
LL演習Ⅲ
演習
1
コミュニケーション概論
講義
2
ビジネス英語
演習
1
通訳入門
講義
2
英語学概論
講義
英文法
講義
2
英語史
講義
2
英語音声学
講義
2
英語表現法Ⅰ
演習
1
英語表現法Ⅱ
演習
1
英語表現法Ⅲ
演習
1
英語学演習Ⅰ
演習
1
☆
英語学演習Ⅱ
演習
1
☆
英文学概論
講義
2
英文学史
講義
2
米文学史
講義
2
英米文学講読Ⅰ
演習
1
◆
英米文学講読Ⅱ
演習
1
◆
英米文学講読Ⅲ
演習
1
◆
英米文学講読Ⅳ
演習
1
◆
英語講読
演習
1
◆
英米文学演習Ⅰ
演習
1
☆
英米文学演習Ⅱ
演習
1
☆
授業科目
教職必修
系列
単位数
授業
の
方法
選択
1年
前期
2年
後期
前期
後期
2
2
2
4
4
2
1
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
○
2
2
○
2
2
2
2
2
2
2
2
22
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
(つづき)
比較文化科目群
関連科目群
卒業研究
比較文学
講義
2
2
比較文化
講義
2
比較文化講読
演習
1
イギリス事情
講義
2
2
アメリカ事情
講義
2
2
ヨーロッパ事情
講義
2
比較文化演習Ⅰ
演習
1
☆
比較文化演習Ⅱ
演習
1
☆
日本語学概論
講義
2
日本語教育概論
講義
2
2
対照言語学
講義
2
2
日本文学史Ⅰ
講義
2
日本文学史Ⅱ
講義
2
2
英文文書処理
演習
1
2
国際経済論
講義
2
異文化体験
実習
2
卒業研究
演習
2
◆
2
○
2
2
2
2
2
2
2
2
2
-
2
-
-
-
2
☆印科目中2科目を選択必修
◆印科目中4科目以上を選択必修
また,2006(平成 18)年度,2007(平成 19)年度に本学の教育理念,学科の教育目標の
見直しと変更を行ったが,文学科のカリキュラムは変更後の教育目標にもほぼ対応するも
のとなっている。
文学科の教育課程の編成は「学校教育法第 108 条」および「短期大学設置基準第5条」
の規定に対して,以下のように対応している。
①深く専門の学芸を教授研究すること,については,日本語日本文学専攻では,学問の基
礎となる概論(日本文学・日本語学),文学史(日本文学・中国文学),日本語史を必修
科目とし,主に1年次(中国文学史は2年次,また,隔年交互に開講する古典と近代の
日本文学史のどちらかが2年次)で履修するように年次配当している。また,多くの講
読科目を選択必修科目とし,文献講読を重視して基礎から系統的に学べるカリキュラム
となっている。英語英文学専攻では,専門基礎科目に導入教育としてのスタディスキル
ズを配置し,各科目群にコミュニケーション概論,英語学概論,英文学概論を設けて,
幅広い専門的知識を提供できるカリキュラムとなっている。また言語理論面での支えと
23
なる英語学に関する講義,英米文学を多面的に理解するための文学史,講読,比較文化
の科目をそろえている。
②職業又は実際生活に必要な能力を育成すること,については,現代社会に欠くことので
きない情報処理関連の知識技能について,情報処理入門,日本語文書処理,英文文書処
理を開設し,学生全員がPCメールを使用できるよう指導してきた。このうち情報処理
入門と日本語文書処理は,2009(平成 21)年度から教養科目(情報)の「情報リテラシ
ーⅠ,Ⅱ」に名称を変更して,必修科目とした。日本語日本文学専攻では,日本語表現
法および日本語表現法演習や,日本語教育に関する諸科目において,日本語運用能力の
向上を図るほか,教養科目(外国語)の中国語について2年間で4単位履修できるよう
にし,中国語運用能力の向上を図っている。また,日本語教育に関する科目群も,国際
化社会に対応している。英語英文学専攻では,多様化した国際化社会に対応できるよう
に,英語運用能力の向上を図るべく,1年次に週2回オーラルコミュニケーション(Ⅰ:
前期,Ⅱ:後期)を必修とし,しかも習熟度別クラス(1クラス 11 名程度)に分けてい
る。また,ビジネス英語で文書様式の知識と通訳入門で通訳の専門的な基礎知識を提供
して急激な社会変化に対応したカリキュラムとなっている。英語運用能力の向上を図る
ために,オーラルコミュニケーション I, II, III, IV,ビジネス英語のほか,米文学史,
イギリス事情,アメリカ事情,英文文書処理の科目も外国人教員に担当させている。
③広く深い教養および総合的な判断力を培うこと,については,全学の共通教育科目にお
いて教養科目を設置し,人文,社会,自然,総合の4系列からまんべんなく履修するよ
うにしている。総合的な判断力を培うという点では,2年次に卒業研究を課し,卒業論
文を作成させている。これは学生自らが課題を探求し,その解決に向けて必要な情報を
収集・整理して論理的に結論を導き出すことを目標とし,本学の教育理念(第1章)と
結びつくものである。
④豊かな人間性を涵養すること,については,文学科の教育目的(第1章)に「文学,言
語,文化を学ぶことを通して,豊かな文学的感性,柔軟な思考力」を有する人材の育成
がある。多彩な講読,語学関連科目,比較文化科目等を履修することで,文化の多様性
を学び,豊かな人間性が涵養できる。とりわけ専攻間をクロスした学際的なカリキュラ
ムは人間性の涵養に役立つ。英語英文学専攻では,関連科目群のなかに,日本語日本文
学専攻の対照言語学,日本語学概論,日本文学史Ⅰ,日本文学史Ⅱ,日本語教育概論お
よび商経学科経済専攻の国際経済論を設けている。
【点検・評価】
現状の説明でも述べたように,文学科は全学的な専門カリキュラムの改正以前に,全面的
な専門カリキュラム改正を行い,それは,2006(平成 18)年度からの全学的な教育理念,
学科の教育目的の改正にも対応したものとなっている。
文学科の教育課程において,専攻の専門基礎科目,専門科目,関連科目をできる限り年次
24
別に配当し,基礎から専門へと系統的に学べるような態勢を取り,2年間の教育のまとめ
として卒業研究を置いているので,教育体系は教育目標の点で適切であると考える。
専門基礎科目群では,導入教育として両専攻でそれぞれ日本文学概論とスタディスキルズ
を設けた。両専攻は関連科目群で緩やかな結びつきを保っているが,かつてあった学科共
通科目(文学研究入門と言語研究入門)を無くした点は問題かもしれない。ただし学科共
通科目群の専門基礎科目群への再編において,
「言語学概論」を両専攻の専門基礎科目に配
置変更した点は学科共通の基礎科目の存続として評価できる。
日本語日本文学専攻においては,上述の改正によって日本語教育科目を充実させるととも
に,全専門科目をセメスター化している。
日本語教育科目の充実は,英語英文学専攻の理解を得て可能となった。これは,文学科に
所属していた2名の専任教員の退職(2003 年度と 2004 年度)に伴い,ポストの交換によっ
て,教養科目(中国語)と日本語日本文学専攻の専門科目(日本語教育)を担当できるよ
うに振り替えたことによる。この結果,日本語日本文学専攻では,日本語学・日本語教育
学・日本古典文学・日本近代文学・中国文学の5分野がほぼ同じ比重で並ぶこととなり,
専攻の教育内容が拡充されたと評価することができる。
日本語日本文学専攻では,演習(日本語学演習・日本文学演習・中国文学演習)のセメス
ター化に伴い,後期開講の演習を1・2年生合同の授業とした。クラス分けの方法など現
在も試行錯誤の状況ではあるが,2年生にリーダーシップの機運が生まれたり,授業内容
に深化が見られたりといった合同の効果も生まれてきている。
英語英文学専攻においては,2007(平成 19)年度からのカリキュラム改革の目玉として
オーラルコミュニケーションの充実(1年次,前期・後期週1回を週2回)と英語表現法
の充実(すべて必修として習熟度別に2クラス編成)を図り,また,専門に関する知識・
理論の獲得に加えて英語運用能力を向上させる目的で,多くの外国人教員を担当者に用い
たことにより,英語運用能力と表現能力の向上を望む学生のニーズに対応していると考え
る。また専門科目に英語運用能力を可能な限り第2言語のレベルまで養成する通訳入門を
新設したことは価値がある。2009(平成 21)年度,鹿児島青年会議所主催の「通訳ボラン
ティア」(7月 4 日~7月 11 日)が本学の社会活動の単位として認められると,英語英文
学専攻の1年生 33 名のうち 21 名(63.6%)が意欲的に参加している実情に見られるよう
に,今後多くの学生がボランティア通訳などに積極的に参加したいという意欲を持つよう
になることだろう。
そのほか,英米文学科目群と英語学科目群の講読について,通年6科目(半期で言えば,
12 コマ分)の講読科目うち,3科目以上を選択必修としていたが,セメスター化により半
期6科目(6コマ分)のうち,4科目以上を選択必修にしてスリム化を図ったうえで,科
目群の配置換えを行っている。これはオーラルコミュニケーション科目の充実を図り,学
生の英語運用能力の向上に応えるための対策の一環としてであり,学校教育法第 108 条の
②「職業又は実際生活に必要な能力を育成すること」に叶っているが,講読のスリム化に
25
はリーディング力の低下を招くおそれがあるという問題点も潜んでいる。
【将来の改善策】
学科の教育目的を専攻の充実によって達成できるかどうかが問題となる。関連科目での
緩やかな結びつきから,学科としての教育目的を達成する上では支障はないと考える。ま
た,必修の学科共通科目をなくしても,(選択科目の)言語学概論の存在によって,かろう
じて「学科に共通した」専門基礎科目と言えるだろう。ただし,学科共通科目を復活する
かどうかの問題は,両専攻の導入教育を軌道に乗せてからと考えており,2011(平成 23)
年度以降に意見を集約する。
日本語日本文学専攻においては,10 科目あった日本文学講読を9科目にスリム化したば
かりであり,2010(平成 22)年度以降その効果を検証する。
英語英文学専攻における英米文学科目群と英語学科目群の講読のスリム化は,学生の英語
運用能力の向上に応える対策として効果を持った反面,学生の英語を読む力(リーディン
グ力)の低下を招く要因にもなっているので,学生の英語を読む力を向上させるカリキュ
ラム上の対策が必要であるかどうかを 2011(平成 23)年度以降に意見を集約する。
また,英語英文学専攻では,「国際性」を重要視し,専攻間をクロスした学際的なカリキ
ュラムの点で,2010(平成 22)年度から商経学科経済専攻の開講科目「国際関係論」を関
連科目に加えることとしている。
(a)-3 生活科学科
【現状の説明】
生活科学科の前身は家政学であり, 1995(平成7)年改組にあたり学科名を家政学科から
生活科学科に改称し,食物栄養専攻と被服専攻の二つの専攻を発展的に継承して今日の食
物栄養専攻と生活科学専攻の二専攻としたものである。
その教育課程の枠組みは 1995(平成7)年度改組時に確立されたものを基盤とするもの
で,全学的に一般教育と専門教育とで構成されている。
生活科学科の教育課程の編成は「学校教育法第 108 条」および「短期大学設置基準第5
条」の規定に対して,以下のように対応している。
①深く専門の学芸を教授研究することについては,二専攻の専門教育がともに,1)人間
の生活に密接に関係する学問領域を対象とする事から「生活科学概論」を導入的科目,
「生
活経営学」,「人間関係論」,「社会福祉論」,「消費者問題」の4科目を生活学基礎科目
と位置づけて,
「学科共通科目群」とし,その上で,2)それぞれの専攻専門領域におけ
る専門科目群を開設して教育課程の全体像を構成している。
食物栄養専攻では専門基礎科目をできるだけ1年次に履修できるように,応用科目は
1年次後期から2年次に履修できるように配当し,系統的に学べるカリキュラムとして
いる。
26
生活科学専攻は生活科学専門領域の柱となる科目群のなかから「衣生活学」
「住生活学」
「生活化学」
「生活デザイン学」をそれぞれの演習科目とともに必修科目として初期に配
当し,そののち各専門領域を充実させる目的で選択科目群を開設し基礎から系統的に学
ぶこととし,いずれも「深く専門の学芸を教授研究する」ことを可能としている。
②職業又は実際生活に必要な能力を育成することについて,食物栄養専攻では職業資格で
ある栄養士の養成施設校として免許取得に必要な科目群を設定して構成し,さらに健康
を考える上で必要な科目群を加えてカリキュラムを編成している。こうした科目は直接
職業に必要な能力を育成するものであり,同時に実際生活においても必要とされる能力
である。
生活科学専攻は「衣生活学」
「住生活学」
「生活化学」
「生活デザイン学」を専攻の基本
領域とし,それぞれに必修科目を基礎とした講義科目と演習科目を揃えてまとまりのあ
る専門科目群を履修可能とし,これら以外にも生活科学領域で必要と考えられる専門科
目を関連科目として用意して「実際生活に必要な能力」の獲得を可能としている。加え
て,2000(平成12)年度からは,二級建築士・木造建築士の受験資格やインテリアプラ
ンナー登録取得のためのカリキュラムが設定されている。これらはまさに「職業又は実
際生活に必要な能力を育成する」ためのものである。
③幅広く深い教養および総合的な判断力を培うこと,については,全学の共通教育科目関
連科目群に教養科目を設置し,人文,社会,自然,総合の4系列からまんべんなく履修
できるようにしているほか,学科共通科目とそれぞれに設定された関連科目によって「幅
広い教養」を担保し,
「総合的な判断力を培う」という点では,生活科学専攻では二年次
に卒業研究を課して自ら課題を発見し,情報を収集整理し,結論を適切な方法で表現す
る,実践的で「総合的な判断力を培う」科目としている。食物栄養専攻では,2年次に
行われる2回の学外実習(学校,事業所,病院)において自ら課題を設定し,媒体を作
成して栄養指導等を実践し,実習終了後には成果発表を経験することを通して「総合的
判断力を培う」ことを目指している。
④豊かな人間性を涵養すること,については,生活科学科の教育目標に「衣・食・住を中
心とする生活全般を対象とした実践的な専門知識と技能の習得を通して,柔軟な思考力,
判断力」を有する人材の育成を目標として,教養科目,学科共通科目,多様な専門科目
を学ぶことと,卒業研究ゼミや実習の事前事後指導などの機会に専門的知識を超えた豊
かな人間性を涵養できるように努めている。
食物栄養専攻の教育課程(表3-5参照)
食物栄養専攻においては,学内・学外の実習を初め多くの実験・実習がカリキュラムに
組み込まれており,実践的な専門知識の習得を通して,本学の教育理念でもある「課題探
求・解決能力」を培う上では相応しい条件に恵まれている。
学科共通科目群(5科目)と専門科目群からなり,前者は食物栄養専攻が属する生活科
27
学科の教育理念を具体化するために生活科学専攻と共通して学ぶべき専門導入科目と生活
学基礎科目である。専門科目は,
「食物や食生活についての幅広い科学的知識と専門的知識
の習得を通して,健康の維持増進のための実践的能力を有し,地域社会に貢献できる人材
を育成する」ことを目的として「基礎科目」22科目「応用科目」15科目および「その他」
2科目の科目群に整理して開設している。さらに「基礎科目」と「応用科目」ではそれぞ
れ教領域と対象によって「食物に関する科目」10科目「消化・吸収・代謝に関する科目」
8科目「健康と運動に関する科目」4科目と「給食の管理に関する科目」4科目「栄養の
指導」6科目「臨床関連科目」4科目「栄養教諭関連科目」1科目を開設し,
「その他」と
して関連基礎科学2科目を開設している。
卒業には62単位が必要であり,その内教養科目の必修が17単位,専門必修科目が8科目
18単位,合計35単位なので不足分27単位以上を選択科目36科目57単位から修得すればいい
ので,開設科目数は充分である。なお,
「栄養士養成施設」として求められる6領域(社会
生活と健康,人体の構造と機能,食品と衛生,栄養と健康,栄養の指導,給食の運営)に
関連する科目は表3−5の栄養士必修科目として,教育課程表に明示し,また,学則に対応
する科目としてA〜Fに類別して同表に示している。
短期大学設置基準上も,「深く専門の学芸を教授研究」すること,「職業又は実際生活に
必要な能力を育成」することに留意した教育課程である。
28
表3-5
生活科学科
食物栄養専攻専門科目
学則対応※
生活科学概論
講義
2
生活経営学
講義
2
人間関係論
講義
2
社会福祉論
講義
2
2
消費者問題
講義
2
2
食品学Ⅰ
講義
2
食品学Ⅱ
講義
2
食品学実験
実験
1
4
○ C
食品衛生学
講義
2
2
○ C
食品衛生学実験
実験
1
食品加工学
講義
実習
2
調理学
講義
調理学実習Ⅰ
実習
1
調理学実習Ⅱ
実習
1
調理学実習Ⅲ
実習
1
栄養学総論
講義
栄養学各論
講義
2
2
○ D
栄養学実習
実習
1
4
○ D
解剖生理学
講義
2
解剖生理学実験
実験
1
4
○ B
生化学Ⅰ
講義
2
2
○ B
生化学Ⅱ
講義
2
生化学実験
実験
1
健康と運動
講義
健康管理概論
講義
2
2
公衆衛生学
講義
2
2
運動生理学
講義
2
2年
後期
前期
学科共通科目群
食物に関する科目
消化・吸収・代謝に関する科目
基礎科目
健康と運動に
関する科目
29
1年
後期
授業科目
前期
系列
選択
授業
の
方法
必修
栄養士必修
週時間
教職必修
単位数
2
2
2
2
○ A
2
○ C
2
2
2
○ C
4
○ C
2
C
2
○ F
4
○ F
4
○ F
4
○ F
2
○ D
2
○ B
2
○ B
4
2
2
○ B
○
○
2
A
○ B
(つづき)
給食の管理に
関する科目
栄養の指導
応用科目
臨床関連科目
栄養教諭
関連科目
その他
※
給食管理
講義
2
2
給食管理実習Ⅰ
実習
1
4
給食管理実習Ⅱ
実習
2
●
○ F
給食管理実習Ⅲ
実習
1
●
○ F
栄養教育論
講義
1
2
○ E
栄養指導論
講義
栄養指導論実習Ⅰ
実習
1
栄養指導論実習Ⅱ
実習
1
公衆栄養学
講義
2
栄養情報処理
実習
1
4
○ ○ E
臨床栄養学Ⅰ
講義
2
2
○ D
臨床栄養学Ⅱ
講義
2
2
○ D
臨床栄養学実習
実習
2
●
○ D
病理学
講義
1
学校栄養教育論
講義
2
有機化学概論
講義
2
2
生物概論
講義
2
2
4
2
○ F
4
○ F
2
○ E
4
○ E
4
○ E
2
○ E
2
2
B
○
学則上の科目群
A
社会生活と健康
B
人体の構造と機能
C
食品と衛生
D
栄養と健康
E
栄養の指導
F
給食の運営
生活科学専攻の教育課程(表3-6参照)
生活科学専攻では,学科共通科目群(5科目)のほか衣生活学科目群(7科目),住生活
学科目群(12 科目),生活化学科目群(3科目)
,生活デザイン科目群(5科目),関連科目
群(8科目)
,卒業研究(1科目)計 41 科目(計 70 単位)を開設している。その科目群ご
とに主科目講義1科目と演習科目1科目の計2科目を必修(学科共通科目群では1科目)
とすることで全領域にわたって履修し,2 年次には卒業研究を履修して総合力と更なる専門
領域について学修することを求めている。卒業に要する単位数は全学共通の 62 単位で,そ
のうち教養科目で最低 17 単位を必修とするため専門科目 70 単位から 45 単位を修得すれば
よいので開設科目数は充分である。そのうち専門必修は 18 単位,残り 27 単位以上を選択
的に履修する必要がある。
生活科学専攻では中学校教諭二種免許状(家庭)が取得できる。所定の科目(教科に関
30
する科目 10 単位,教職に関する科目 21 単位,教科または教職に関する科目4単位)を修
得する必要がある。
ほかに取得可能な資格として二級建築士・木造建築士受験資格(2年間の実務経験を要
す),インテリアプランナーの登録資格を得ることができる。表3-6に示す科目を履修し
単位を修得することで一定条件下で受験資格あるいは合格後の登録資格を得ることができ
る。必要単位数は前者で 21 単位,後者で 21 単位以上である。
講義
2
生活経営学
講義
2
人間関係論
講義
2
社会福祉論
講義
2
2
消費者問題
講義
2
2
衣生活学
講義
衣造形論
講義
2
繊維と染織
講義
2
衣生活学実習
実習
衣造形実習Ⅰ
実習
1
衣造形実習Ⅱ
実習
1
衣造形実習Ⅲ
実習
1
住生活学
講義
住居史
講義
2
住居・インテリア設計学
講義
2
設計製図Ⅰ
実習
設計製図Ⅱ
実習
1
住居構造学Ⅰ
講義
2
住居構造学Ⅱ
講義
住居環境学
1年
2年
後期
前期
後期
前期
授業科目
選択
必修
生活科学概論
系列
学科共通科目群
2
2
インテリア
プランナー
登録資格
週時間
教職必修
単位数
授業
の
方法
二級建築士
木造建築士
受験資格必修
表3-6 生活科学科 生活科学専攻専門科目
A
2
2
○
2
2
○
衣生活学科目群
2
2
1
3
2
3
○
3
3
2
住生活学科目群
○
A
○
A
○
B
○
B
○
B
2
○
B
2
2
○
講義
2
2
○
B
住居環境学演習
演習
1
2
○
B
建築材料学
講義
2
○
B
建築生産
講義
1
2
○
建築法規
講義
1
2
○
1
31
○
2
2
3
3
2
B
(つづく)
生活化学
科目群
生活デザイン科目群
関連科目群
卒業
研究
生活化学
講義
2
2
生活コロイド学
講義
生活化学実験
実験
1
3
生活デザイン学
講義
2
2
色彩学
講義
2
生活造形史
講義
2
デザイン実習Ⅰ
実習
デザイン実習Ⅱ
実習
1
CAD設計
講義
2
食物と栄養
講義
2
調理実習Ⅰ
実習
1
調理実習Ⅱ
実習
1
3
鹿児島の食文化
講義
2
2
環境生物学
講義
2
2
地球環境論
講義
2
2
保育学
講義
2
卒業研究
演習
2
1
4
2
○
A
2
A
2
A
3
A
3
2
○
2
B
○
3
○
2
○
2
6
(注)
1
インテリアプランナーの登録資格を得るには,A科目群の中から 7 単位以上を修得し
なければならない。(B科目群の 14 単位は全て必修科目である。)
2
教育心理学および教職演習(10
教員免許取得に係る教職に関する科目)を履修し修
得した単位も,学則第 26 条に規定する卒業要件単位に含めることができる。
3
在学中に教育職員の免許状を得ようとする学生は,家庭科教育法を履修し,修得した
単位も,学則第 26 条に規定する卒業要件単位に含めることができる。
【点検・評価】
生活科学科:
生活科学科の教育課程は学科の教育目的を具体化するもので,「(1)衣・
食・住を中心とする生活全般を対象とした実践的な専門知識と技能の習得」を年次・段階
的に深化する専門科目群の履修設定で,「(2)柔軟な思考力,判断力を有し,地域社会に貢
献できる人材を育成する」は,実験実習科目のまとめ・考察の実践,成果の発表や実社会
での学外実習体験などで担保している。
32
食物栄養専攻:専攻の教育目的は「(1)食物や食生活についての幅広い科学的知識と専門
的知識の習得を通して,(2)健康の維持増進のための実践的能力を有し,(3)地域社会に貢
献できる人材を育成する」であって,(1)は専門科目の「食物に関する科目」10 科目,「消
化・吸収・代謝に関する科目」8 科目などで,(2)は「健康と運動に関する科目」4 科目「栄
養の指導」に関する科目6科目「臨床関連科目」4科目など学外での実習を含む科目を設
置して「健康の維持増進のための実践的能力を有」することに対応している。(3)は学科の
科目以外に「社会活動(ボランティア活動を含む)
」の受講を推奨して対応している。また,
食物栄養専攻の教育課程は,学内・学外の実習等多くの実験・実習がカリキュラムに組み
込まれており,理論のみでなく実践することによってより深い専門知識の習得が可能とな
っている。「深く専門の学芸を教授研究」すること,「職業又は実際生活に必要な能力を育
成」することについて教育理念の具体化を達成している。
生活科学専攻:専攻の教育目的は「(1)衣および住を身近な環境として位置づけ,(2)自
然環境や社会環境を視野に入れながら,(3)生活全般にかかわる基礎知識の習得を通して,
生活に関わる事象に科学的に対応する能力を有し,(4)地域社会に貢献できる人材を育成す
る。」ことであって,(1)は「衣生活学科目群」に7科目,「住生活科目群」に 12 科目を設
置して「身近な環境として位置づけ」,(2)には「環境生物学」「地球環境論」「生活化学科
目群」3科目と「人間関係論」「社会福祉論」「消費者問題」の設置で「自然環境や社会環
境を視野に入れ」ることに対応し,(1) (2)対応科目のほかに「生活デザイン学科目群」5
科目と「関連科目群」に食生活科目3科目のほか「卒業研究」を履修することで(3)「生活
全般にかかわる基礎知識の習得を通して,生活に関わる事象に科学的に対応する能力を有」
することに対応し,(4)には学科の科目以外に「社会活動(ボランティア活動を含む)」の
受講を推奨して対応している。また,生活科学専攻は「衣生活学」「住生活学」「生活化学」
「生活デザイン学」を必修科目として1年次に履修し,それぞれの科目に関連し,専門性
を深化させるための選択科目を設け,二年次には卒業研究を置いて教育課程のまとめとし
ており基礎から系統的段階的に学ぶことができる。専攻の柱となる科目を中心に幅広い実
践的な知識の習得が可能で,専攻の教育目標は達成している。
以上のように,生活科学科の教育課程はその理念と目的の実現のために他の資格取得関
係の条件を取り込んだかたちで組織されており,妥当なものであると評価できる。
しかし,2007(平成 19)年度からの教養教育改革に引き続いて行われた専門教育改革で
指摘された問題点は以下のとおりである。
1)学科共通科目の受講実績が少なく,所定の目的に達していない。
2)教養教育のカリキュラム改訂や,20 年度の栄養教諭課程の導入,21 年度建築士法の改
正に伴う科目新設によって,両専攻ともにカリキュラムが過密化している。
3)食物栄養専攻では「給食管理実習」の集中講義が学生,教員ともに過大な負担をかけ
ており,臨床・学外実習の事前指導時間の確保と担当教員の負担偏在の改善が必要である。
33
1),2)については,将来改善するべき点として学科での共通認識がある。
3)については,それぞれ集中講義の解消と指導負担の分担化によってほぼ解消した。
【将来の改善策】
生活科学科2専攻に共通して開講する学科共通科目群(5科目)の履修区分は必修を1
科目,選択4科目としており,開設目的を充分に果たしているとは言い難い。必修科目を
1科目2単位から2科目4単位に改訂し,2010(平成 22)年度に実施する。
食物栄養専攻
2009(平成 21)年度から「栄養教諭」を導入によるカリキュラムの過密
化についてはその影響を 2010 年度に検証する(開設初年度であることによる)。
生活科学専攻
カリキュラムの過密化については,時間割編成方針の原則を変更し,そ
の上で並行開講可能な科目を検討し,2010(平成 22)年度に反映実施する。
(a)-4 第一部商経学科
【現状の説明】
商経学科は 2007(平成 19)年度に教育目標を改めて確定したが,それは 1995(平成7)
年度の学科改革(専攻分離を含む。
)以来,10 年を超える教育実践を吟味した上で,時代や
社会の変化(国際化や情報化の進展)に一段と適切に対応しようとするものであった。
第一部商経学科は経済専攻と経営情報専攻によって構成される。地域経済の発展に寄与
できる人材の育成を教育理念に掲げ,経済専攻は地域社会や産業の分析を通して,地域の
課題を発見し,解決する能力を持つ人材の育成を,経営情報専攻はビジネスを企画・管理
する能力を持ち,地域産業の発展に寄与できる人材の育成を目的としている。このことは
商経学科の教育目的であり,学則において教育研究上の目的やアドミッション・ポリシー
に示されている。
経済専攻,経営情報専攻ともに,卒業単位は 62 単位で,教養科目 17 単位以上,専門科
目(専攻専門)8単位以上の取得を卒業要件としている。専門科目(専攻専門)の8単位
は,必修である演習4科目(基礎演習,演習Ⅰ,演習Ⅱ,卒業研究)から構成される。
第一部商経学科の教育課程の編成は表3-7,3-8のとおりであるが,「学校教育法第
108条」および「短期大学設置基準第5条」の規定に対して,以下のように対応している。
①深く専門の学芸を教授研究すること,については,経済専攻・経営情報専攻ともに1年
次より2年間にわたり,半期ずつ基礎演習・演習Ⅰ・演習Ⅱ・卒業研究と連続して,ゼミ
ナール指導を徹底している。指導教員が少人数の学生それぞれに,個別の課題設定を励ま
し,その課題解決の能力を育む受講科目の選択も個別に指導する。こうして学生たちには
一段と整合的な授業選択が可能となる。
商経学科は専門科目として,2専攻に共通する「専門基礎科目」群と,専攻ごとの「専
攻専門科目」群を備える。経済専攻の「専攻専門科目」は,経済理論・国際環境・地域政
策の3分野の科目群から成る。経営情報専攻の「専攻専門科目」は,経営理論・情報分析・
34
情報活用の3分野の科目群から成る。
②職業又は実際生活に必要な能力を育成すること,については,第一部商経学科は職業生
活における必要な能力を養成する学科である。
第一部商経学科は,「企業研修」および「社会活動」を重要な科目として位置づけ,そ
うした実習・実技的な科目の履修(学外での体験学習)が学内での講義・演習系科目と連
動するようにしている。
「専門基礎科目」に並ぶ科目は,いずれも体験的な科目を意識し
ている。「専攻専門科目」は,さらに実用的な性格を帯びたものとなっている。
商経学科では,ゼミナールが専門の学芸の研究だけでなくキャリアデザインの場とな
っている点も重要である。卒業後にどういう職業につきたいのか,それを常に意識させる
よう教員は心配りをしている。ゼミナールの卒業生と語る場面も設け,商経学科で学んだ
ことが将来どのように活かされるか,それが具体的に理解できるようにする。
③幅広く深い教養および総合的な判断力を培うこと,については,全学の共通教育科目関
連科目群において教養科目を設置し,人文,社会,自然,総合の4系列からまんべんなく
履修するようにしているほか,商経学科の専門基礎科目においても基礎理論と情報基礎の
2分野で,さまざまな科目を開設している。
④豊かな人間性を涵養すること,については,ゼミナールという親密な空間での教員や同
じゼミ仲間との交流をつうじて,ともに生きる喜びと,ともに学ぶ楽しみを知り,いわゆ
る人間力の育成を促す。また,商経学科独自の「異文化体験」という科目を履修すること
で,文化の多様性を学び,豊かな人間性が涵養できるようなカリキュラムとなっている。
ついで,科目の系統性について述べる。
専門科目は,2専攻共通の専門基礎科目と,専攻ごとの専攻専門科目から構成されてい
る。専門基礎科目は,経済・社会への理解を深めることができる様々な分野の基礎的な理
論を学ぶ科目から成る「基礎理論」と,情報処理技能習得の基礎を学ぶ科目から成る「情
報基礎」の2分野で構成されている。
専攻専門科目は,両専攻で内容が同じである演習・実習科目の他に,経済専攻は,経済
や社会の理論を学ぶ科目から成る「経済理論」
,世界の中で思考できるよう,国際的な視野
を養成する科目から成る「国際環境」,地域の課題を発見し,解決する能力を養成する科目
から成る「地域政策」の3分野で構成されている。経営情報専攻は,経営や組織の理論を
学ぶ科目から成る「経営理論」,ビジネスを企画・管理する力を養成する科目から成る「情
報分析」,より高い情報処理技能の習得を目指す科目から成る「情報活用」の3分野で構成
されている。
演習・実習科目では,演習4科目(基礎演習,演習Ⅰ,演習Ⅱ,卒業研究)は必修で,
学生は入学から卒業まで常にゼミナールに所属することとなる。また,実習科目は,キャ
リア教育の重要な一環である「企業研修」と「社会活動」
,海外で文化の多様性を学ぶ「異
文化体験」から成る。
35
表3-7
第一部商経学科
経済専攻専門科目の一覧
1年
2年
後期
前期
後期
前期
授業
の
方法
選択
授業科目
必修
系列
週時間
毎年開講
単位数
隔年
21
22
年
年
基礎理論
専門基礎科目
情報基礎
情報社会論
講義
2
2
2
○
現代社会論
講義
2
2
2
○
社会哲学
講義
2
2
2
○
経済学
講義
2
文化と社会
講義
2
2
2
○
経済情報論
講義
2
2
2
○
消費者問題
講義
2
2
2
○
行政法
講義
2
2
2
○
経済政策
講義
2
社会政策
講義
2
2
2
○
社会思想
講義
2
2
2
○
民法
講義
2
2
2
○
商法
講義
2
2
2
○
産業心理学
講義
2
2
2
○
簿記論Ⅰ
講義
2
2
2
○
経営学総論
講義
2
2
2
○
情報科学概論
講義
2
2
文書作成実習
実習
1
2
統計学
講義
2
2
応用文書処理
実習
1
PCデータ活用
講義
2
PCデータ活用実習
実習
1
2
○
PCアプリケーション実習
実習
1
2
○
36
2
2
2
2
2
○
○
○
2
2
2
○
○
○
○
(つづき)
経済理論
国際環境
専攻専門科目
地域政策
演習・実習
日本経済論
講義
2
財政学
講義
2
2
2
農業経済論
講義
2
2
2
金融論
講義
2
経済学史
講義
2
経済学特講Ⅰ
講義
2
2
2
経済学特講Ⅱ
講義
2
2
2
法学特講
講義
2
2
2
○
簿記論Ⅱ
講義
2
2
2
○
国際経済論
講義
2
国際立地論
講義
2
2
2
アジア経済論
講義
2
2
2
外国貿易論
講義
2
2
2
国際関係論
講義
2
比較文化
講義
2
アジア事情
講義
2
ヨーロッパ事情
講義
2
国際経済特講
講義
2
地域経済論
講義
2
地域産業政策
講義
2
2
2
地域史
講義
2
2
2
地方自治論
講義
2
地方財政論
講義
2
高齢者福祉
講義
2
非営利組織論
講義
2
2
2
労働法
講義
2
2
2
○
地域研究特講
講義
2
2
2
○
地方自治法
講義
2
2
2
○
基礎演習
演習
2
演習Ⅰ
演習
2
演習Ⅱ
演習
2
卒業研究
演習
2
社会活動
実習
2~4
-
-
企業研修
実習
2
-
異文化体験
実習
2~4
-
37
2
2
2
○
2
2
2
2
2
○
○
○
○
2
2
○
○
2
2
○
○
○
○
○
2
○
2
○
2
2
2
○
2
2
2
○
○
○
○
2
2
2
○
2
○
2
○
2
○
○
2
○
2
○
2
○
-
-
○
-
-
-
○
-
-
-
○
表3-8 第一部商経学科 経営情報専攻専門科目の一覧
1年
2年
後期
前期
後期
前期
授業
の
方法
選択
授業科目
必修
系列
週時間
毎年開講
単位数
隔年
21
22
年
年
基礎理論
専門基礎科目
情報基礎
情報社会論
講義
2
2
2
○
現代社会論
講義
2
2
2
○
社会哲学
講義
2
2
2
○
経済学
講義
2
文化と社会
講義
2
2
2
○
経済情報論
講義
2
2
2
○
消費者問題
講義
2
2
2
○
行政法
講義
2
2
2
○
経済政策
講義
2
社会政策
講義
2
2
2
○
社会思想
講義
2
2
2
○
民法
講義
2
2
2
○
商法
講義
2
2
2
○
産業心理学
講義
2
2
2
○
簿記論Ⅰ
講義
2
2
2
○
経営学総論
講義
2
2
2
○
情報科学概論
講義
2
2
文書作成実習
実習
1
2
統計学
講義
2
2
応用文書処理
実習
1
PCデータ活用
講義
2
PCデータ活用実習
実習
1
2
○
PCアプリケーション実習
実習
1
2
○
38
2
2
2
2
2
○
○
○
2
2
2
○
○
○
○
(つづき)
経営理論
情報分析
専攻専門科目
情報活用
演習・実習
簿記論Ⅱ
講義
2
経営管理論
講義
2
2
2
経営組織論
講義
2
2
2
労務管理論
講義
2
2
2
管理会計論
講義
2
2
2
原価計算
講義
2
2
2
国際経営論
講義
2
2
2
経営学特講Ⅰ
講義
2
経営学特講Ⅱ
講義
2
2
2
情報管理論
講義
2
2
2
比較経営論
講義
2
2
2
経営分析
講義
2
企業行動科学
講義
2
2
2
経営戦略論
講義
2
2
2
○
企業論
講義
2
2
2
○
ヒューマンリレーションズ
講義
2
2
2
○
財務会計論
講義
2
マーケティング論
講義
2
経営工学
講義
2
コンピュータ会計
実習
1
応用データ活用
実習
1
プログラミング
実習
1
情報システム論
講義
2
経営数学
講義
2
2
2
情報論特講
講義
2
2
2
基礎演習
演習
2
演習Ⅰ
演習
2
演習Ⅱ
演習
2
卒業研究
演習
2
社会活動
実習
2~4
-
-
企業研修
実習
2
-
異文化体験
実習
2~4
-
39
2
2
2
○
○
2
2
○
○
○
○
○
○
○
○
○
2
2
○
2
2
2
○
○
2
○
2
2
○
2
○
2
○
2
2
○
2
○
○
○
2
○
2
○
2
○
2
○
-
-
○
-
-
-
○
-
-
-
○
【点検・評価】
第一部商経学科の現在の教育課程は,経済専攻,経営情報専攻ともに,本学・本学科の
教育理念,両専攻の教育目的に合致しており,専門基礎科目・専攻専門科目の分野構成,
分野内の科目構成も合理的であると考えられる。また,広範な経済や社会に関する理論を
学べ,幅広い教養を培うことができる専門基礎科目,そしてそれぞれの専攻でさらに深く
専門について学べる専攻専門科目の構成や,コミュニケーション能力を高め,豊かな人間
性を涵養する場であるとともに,卒業論文を作成する過程を通して総合的な判断力を養い,
自ら課題を発見し,必要な情報を収集整理し,論理的に導き出した結論を適切な方法で表
現する実践的な能力を身につけさせる場となっているゼミナールが充実していることは,
学校教育法第 108 条,短期大学設置基準第5条にも,十分な配慮がなされている内容と適
切なものと評価できる。
【将来の改善策】
学科の教育理念目標に対応するためのカリキュラム改革と言うことでは,現時点におい
て,具体的に予定にあがっているものはないが,経済状況等の社会の変化に対応して改革
方向を検討することは重要であるので,2011(平成 23)年度以後の改革プランを 2009 年後
期から 2010 年前期にかけて検討する予定である。
(a)-5 第二部商経学科
【現状の説明】
第二部商経学科は南九州唯一の夜間課程の短期大学である。開学当初の正規雇用の勤労
学生を対象とした教育的な意義は,高卒者の正規採用・正規雇用の減少により薄まってい
るが,新規高卒者のとりわけ低所得者層の子弟に対する勤労と大学での学習を両立させる
学習機会の提供という夜間課程の役割はますます重要になっている。
事実,保護者から自立し,自活して学習を続ける学生が増加傾向にある。授業料の安さ
は第二部の制度的な特徴であり,学習を継続する上で大きな利便性を提供している。
教育目的としては,ことに広く世界,日本,地域の経済・社会と企業の構造と運動を研
究し,情報処理の技法習得を通して,柔軟な思考力と企画力,そして豊かな人間関係の構
築力を有し,地域活性化のために活躍できる人材の育成を教育理念に掲げている。このこ
とは第二部商経学科の教育理念であり,学則において教育研究上の目的やアドミッショ
ン・ポリシーに示されている。
卒業単位は 62 単位で,教養科目 14 単位以上,専門科目(専門応用)8単位以上の取得
を卒業要件としている。専門科目(専攻専門)の8単位は,必修である演習4科目(基礎
演習,演習Ⅰ,演習Ⅱ,卒業研究)から構成される。
第二部商経学科の教育課程の編成は表3-9のとおりであるが,「学校教育法第108条」
40
および「短期大学設置基準第5条」の規定に対して,以下のように対応している。
①深く専門の学芸を教授研究すること,については,入学から卒業まで,基礎演習・演習
Ⅰ・演習Ⅱ・卒業研究とゼミナール指導を徹底している。指導教員が少人数の学生それぞ
れに,個別の課題設定を励まし,その課題解決の能力を育む受講科目の選択も個別に指導
する。こうして学生たちには一段と整合的な授業選択が可能となる。
②職業又は実際生活に必要な能力を育成すること,については,第二部商経学科は職業生
活における必要な能力を養成する学科である。経済,経営,地域,国際,情報といった職
業生活全般にわたる内容を網羅したカリキュラムとなっている。
商経学科では,ゼミナールが専門の学芸の研究だけでなくキャリアデザインの場とな
っている点も重要である。卒業後にどういう職業につきたいのか,それを常に意識させ
るよう教員は心配りをしている。
③幅広く深い教養および総合的な判断力を培うこと,については,教養科目を設置し,語
学,スポーツを含め,幅広く履修するようにしているほか,専門基礎科目においても基礎
理論と情報基礎の2分野で,さまざまな科目を開設している。
④豊かな人間性を涵養すること,については,ゼミナールという親密な空間での教員や同
じゼミ仲間との交流を通じて,ともに生きる喜びと,ともに学ぶ楽しみを知り,いわゆる
人間力の育成を促す。また,商経学科独自の「異文化体験」という科目を履修することで,
文化の多様性を学び,豊かな人間性が涵養できるようなカリキュラムとなっている。
科目の系統性について述べる。専門科目は,専門基礎科目と専門応用科目から構成され
ている。専門基礎科目は,(1)基礎理論と(2)情報基礎に分かれ,専門応用科目は(1)経済理
論,(2)地域と国際,(3)経営理論,(4)情報分析・活用,(5)演習・実習である。
第一部商経学科とほぼ同様の科目を履修できることに加え,第一部でのみ開設されてい
る科目に関しては 12 単位まで履修することができる。したがって,第一部の経済専攻と経
営情報専攻の両専攻の内容が学習できる。
演習・実習科目では,演習4科目(基礎演習,演習Ⅰ,演習Ⅱ,卒業研究)は必修で,
学生は入学から卒業までの大部分をゼミナールに所属することとなる。カリキュラムの関
係で,1年後期と2年前期には演習がないが,基礎演習でのつながりがほぼ継続している。
少人数によって構成されるゼミであり,2008 年度の1ゼミあたりの平均学生数は,6.5 人
である。最大でも 11 人である。また,実習科目は,キャリア教育の重要な一環である「企
業研修」と「社会活動」
,海外で文化の多様性を学ぶ「異文化体験」から成る。
41
表3-9 第二部商経学科開設科目一覧
単位数
授業
の
方法
選択
授業科目
必修
系列
週時間
1年
2年
毎
3年
年
前
後
前
後
前
後
開
期
期
期
期
期
期
講
2
22
年
年
基礎理論
専門基礎科目
情報基礎
経済理論
専門応用科目
講義
2
現代社会論
講義
2
2
2
2
○
社会哲学
講義
2
2
2
2
○
経済学
講義
2
2
2
2
社会学
講義
2
2
2
2
文化と社会
講義
2
2
2
2
経済情報論
講義
2
2
2
2
行政法
講義
2
経済政策
講義
2
社会政策
講義
2
2
2
2
○
社会思想
講義
2
2
2
2
○
民法
講義
2
2
2
2
○
商法
講義
2
2
2
2
○
産業心理学
講義
2
2
2
2
○
簿記論Ⅰ
講義
2
2
2
2
○
経営学総論
講義
2
2
2
2
○
情報科学概論
講義
2
2
文書作成実習
実習
1
2
統計学
講義
2
2
応用文書処理
実習
1
2
PCデータ活用
講義
2
2
PCデータ活用実習
実習
1
2
○
PCアプリケーション実習
実習
1
2
○
日本経済論
講義
2
財政学
講義
2
2
2
2
農業経済論
講義
2
2
2
2
金融論
講義
2
経済学史
講義
2
2
2
2
○
経済学特講
講義
2
2
2
2
○
2
2
21
情報社会論
42
2
隔年
2
2
○
○
○
2
2
○
○
○
2
2
2
○
○
○
2
2
2
2
○
○
○
2
2
2
2
2
○
2
○
○
○
(つづき)
地域と国際
専門応用科目
経営理論
国際経済論
講義
2
国際立地論
講義
2
2
2
2
アジア経済論
講義
2
2
2
2
外国貿易論
講義
2
2
2
2
国際関係論
講義
2
アジア事情
講義
2
ヨーロッパ事情
講義
2
2
2
2
地域経済論
講義
2
2
2
2
地域産業政策
講義
2
2
2
2
地域史
講義
2
2
2
2
地方自治論
講義
2
地方財政論
講義
2
高齢者福祉
講義
2
非営利組織論
講義
2
2
2
2
労働法
講義
2
2
2
2
国際経済特講
講義
2
2
2
2
地域研究特講
講義
2
地方自治法
講義
2
2
2
2
○
簿記論Ⅱ
講義
2
2
2
2
○
経営管理論
講義
2
2
2
2
経営組織論
講義
2
2
2
2
労務管理論
講義
2
2
2
2
管理会計論
講義
2
2
2
2
原価計算
講義
2
2
2
2
国際経営論
講義
2
2
2
2
経営学特講
講義
2
2
2
2
43
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
2
○
○
○
○
2
○
○
○
○
○
2
2
2
2
○
○
2
○
2
2
○
2
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
(つづき)
情報分析・活用
専門応用科目
演習・実習
情報管理論
講義
2
2
2
2
比較経営論
講義
2
2
2
2
経営分析
講義
2
企業行動科学
講義
2
2
2
2
経営戦略論
講義
2
2
2
2
○
企業論
講義
2
2
2
2
○
経営工学
講義
2
コンピュータ会計
実習
1
2
2
2
応用データ活用
実習
1
2
2
2
プログラミング
実習
1
情報システム論
講義
2
財務会計論
講義
2
2
2
2
情報論特講
講義
2
2
2
2
マーケティング論
講義
2
基礎演習
演習
2
演習Ⅰ
演習
2
演習Ⅱ
演習
2
卒業研究
演習
2
社会活動
実習
2~4
-
-
-
-
企業研修
実習
2
-
-
-
異文化体験
実習
2~4
-
-
-
2
2
2
○
○
2
2
2
○
2
2
2
○
2
2
2
○
○
○
2
2
○
○
○
○
2
2
○
○
2
○
2
○
2
○
-
-
○
-
-
-
○
-
-
-
○
【点検・評価】
第二部商経学科の現在の教育課程は,本学・本学科の教育目的に合致しており,専門基
礎科目・専門応用科目の分野構成から見て,合理的であると考えられる。また,広範な経
済や社会に関する理論を学べ,幅広い教養を培うことができる専門基礎科目,そしてさら
に深く専門について学べる専攻応用科目の構成や,コミュニケーション能力を高め,豊か
な人間性を涵養する場であるとともに,卒業論文を作成する過程を通して総合的な判断力
を養い,自ら課題を発見し,必要な情報を収集整理し,論理的に導き出した結論を適切な
方法で表現する実践的な能力を身につけさせる場となっているゼミナールが充実している
ことは,学校教育法第 108 条,短期大学設置基準第5条にも,十分な配慮がなされている
内容と評価できる。
【将来の改善策】
学科の教育理念目標に対応するためのカリキュラム改革と言うことでは,現時点におい
44
て,具体的に予定にあがっているものはない。しかし,第一部のカリキュラム改革にあわ
せて,改革方向を検討することは重要であるので,2011(平成 23)年度以後の改革プラン
を 2009 年後期から 2010 年前期にかけて検討する予定である。
(b) 履修科目の区分
(b)-1 文学科
【現状の説明】
短期大学の卒業所要単位は 62 単位であり,そのための最低履修単位の内訳は,日本語日
本文学専攻では教養科目 17 単位,専門科目 32 単位であり,英語英文学専攻では教養科目
15 単位,専門科目 33 単位である。日本語日本文学専攻での,卒業所要単位から最低履修単
位を引いた不足分の 13 単位は教養科目と専門科目でカバーすることになる。英語英文学専
攻での不足分の 14 単位も同様である(表3-10)。
表3-10 卒業のための最低履修単位表
教養科目
専攻\区分
人文・自然・ 外国語 スポーツ
社会・総合
健康科目
日本語日本文学
8
4
3
英語英文学
8
2
3
専門
科目
不足
合計
情報
2
2
32
33
13
14
62
62
文学科の専門科目に関しては,日本語日本文学専攻では 58 科目,英語英文学専攻では 48
科目がある。このうち,日本語日本文学専攻における必修科目は 11 科目(20 単位),選択
必修科目は 31 科目(12 単位)であり,英語英文学専攻おける必修科目は 16 科目(24 単位),
選択必修科目は 14 科目(9単位)である。
必修科目は,卒業研究のほか,両専攻の科目群の中核をなす概論科目および文学史等であ
る。演習と講読科目は選択必修とし,卒業研究につながる系統だった教育ができるよう配
慮している。
英語英文学専攻の必修科目数が多いのは,専攻の教育の根幹に英語運用能力の向上を据
えているため,授業の方法が演習形態であるが,コミュニケーション科目群の「オーラル
コミュニケーションⅠ,Ⅱ,Ⅲ」,「LL演習Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」および英語学科目群の「英語表
現法Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ」を必修としていることによる。
選択必修科目に関して,日本語日本文学専攻では,演習と講読について科目群を横断し
て最低履修科目数を指定し,幅広い履修を義務づけている。特に講読科目については,文
献を直接読むことを重視するという専攻の教育目標に基づき,日本語学,古代から近代ま
で各時代の日本文学,中国文学の中から,多様な作品,文献を読むことができるように配
慮している。
教養科目のうち,文学科はスポーツ・健康科目および情報が必修である。日本語日本文
45
学専攻は外国語の英語Ⅰ(1単位)と英語Ⅱ(1単位)が必修で,英語英文学専攻はドイ
ツ語Ⅰ,Ⅱ,フランス語Ⅰ,Ⅱ,中国語Ⅰ,Ⅱから1言語2科目(2単位)が選択必修と
なっている。
【点検・評価】
卒業所要単位のうち,不足分は学生自らの判断で自由に教養科目もしくは専門科目を選
択できるシステムなので妥当なものであると考える。また専門科目が半分以上を占めるこ
とについては適切であると考える。
日本語日本文学専攻においては,専門科目のうち,それぞれの科目群の中核となる概論科
目と文学史・語史を必修とし,それ以外を選択にするという原則がほぼ守られており,必
修科目(11 科目)と選択科目(16 科目)の科目数配分のバランスは良いと考える。ただし,
選択必修の方法にわかりづらいところがあり,年次配当のバランスも含めて検討の余地が
ある。
英語英文学専攻においては,専門科目のうち,それぞれの科目群の中核となる概論科目と
文学史を必修とし,比較文化科目群と関連科目群の講義科目を選択にすることで,必修科
目(16 科目)と選択科目(18 科目)が約半分ずつとなっており,科目数配分のバランスは
良いと考える。ただし,科目群ごとに見れば,必修科目と選択科目のバランスが悪いとこ
ろもある。例えば,コミュニケーション科目群には必修が 10 科目中7科目もあるのに対し
て,比較文化科目群には必修がない。バランスの悪さは見られるが,コミュニケーション
科目群は,英語英文学専攻の教育目標である「英米諸外国の文学・言語・文化を学ぶこと
を通して,国際語としての英語の運用能力を磨き,豊かな教養を備え,国際社会に対応で
きる人材の育成」の根幹をなす科目群である。専攻のすべての学生に対して,やり直しの
英語という観点から,バランスのとれた総合的な4技能,もしくは思考力,異文化コミュ
ニケーション能力も加えたより総合的な英語運用能力を養成する必要があるので,演習形
態であるが,すべて必修としている。このような理由で,科目群の必修科目の割合が多く
なっているが,妥当であり,量的配分について特に問題はないと考える。
【将来の改善策】
日本語日本文学専攻の講読科目については,2008(平成 20)年度末での担当教員の定年
退職に伴い, 2010(平成 22)年度から日本文学講読のうち中世文学の1科目を廃止する。
その他の科目については,2010(平成 22)年度に年次配当・開設学期を見直す方向で進め
ている。また,「関連科目群の中から2科目以上を選択必修」の条件も 2010(平成 22)年
度から廃止する。選択必修は,科目群横断の講読・演習だけとなることから,学生への説
明がこれまでよりわかりやすいものとなる。
英語英文学専攻においては,現在の配分で適切と思われるため,今後すぐに実施する改
善予定はない。
46
(b)-2 生活科学科
【現状の説明】
生活科学科の2専攻で開設する専門科目数は食物栄養専攻が 44 科目 75 単位,生活科学
専攻が 41 科目 70 単位で,食物栄養専攻が若干多い。卒業所要単位は 62 単位であり,教養
科目から食物栄養専攻 16 単位,生活科学専攻 17 単位の修得が求められるので不足分 46 か
45 単位を専門教育科目等から履修修得する必要がある。
専門教育科目の履修科目の区分では,2専攻に大きな差はない。
表3-11 専門科目の区分
専攻
必修科目数
単位数
選択科目数
単位数
食物栄養専攻
8科目
18 単位
36 科目
57 単位
生活科学専攻
9科目
18 単位
23 科目
52 単位
食物栄養専攻の必修科目の内訳は,上記「学科・専攻科の教育課程」に記したように,
学科の概要を学ぶ学科共通科目の「生活科学概論」を始めそれぞれの学問分野の基礎とな
る,食品学,栄養学,栄養指導,給食管理,健康と運動科目である。このほか,その他の
専門科目を選択科目としているが栄養士免許取得のために実質 38 科目が必修となっている
が,これらの科目については系統だった教育ができるよう配慮している。
生活科学専攻の必修科目の内訳は,学科共通科目の「生活科学概論」に加え,学問分野
の基礎となる「衣生活学」「住生活学」「生活化学」「生活デザイン学」の専攻の柱となる科
目を必修とし,その他に選択科目を配している。
ただ,両専攻とも通常の教育課程に加えて食物栄養専攻では栄養士課程必修科目 32 科目
54 単位(うち6科目 14 単位が卒業必修と重複)が必修指定されており,生活科学専攻では
教職課程で8科目(うち2科目4単位が卒業必修と重複する)が必修指定(以下,教職必
修)されている。
また,二級建築士・木造建築士受験資格を得るために計 13 科目 21 単位(うち2科目3
単位が卒業必修と重複)が必修指定(以下,建築士必修)となる。インテリアプランナー
登録資格では卒業必修の重複2科目4単位を含み 21 単位以上の修得が必要となる。2専攻
ともに,資格取得を専攻と学科の特徴としている現状から,これを直ちに過重と断定して
指摘はできない。
表3-12 資格取得に要する科目・単位数 ( )内は卒業必修との重複数
専攻
資格
科目数
単位数
食物栄養専攻
栄養士
32(6)科目
54(14)単位
生活科学専攻
教職
8(2)科目
15(4)単位
47
【点検・評価】
卒業所用単位数は 62 単位で,そのうち専門科目の必修は両専攻ともに 18 単位である。
教養科目の必修単位は 17-18 単位で合計すると 35-36 単位となり卒業所要単位を必修科目
と選択科目で半ばする。科目区分の比率は必修科目を基礎として選択科目によって学生の
適性・興味・モチベーションに応えることができるという意味で適切な配分であると言え
る。
ただし,食物栄養専攻ではほとんどすべての学生が栄養士免許を取得するために,必要
な単位数は 71 単位となり,専門教育の占める割合が高い。専門的な知識・技術を集中的に
習得できるという長所はあるが,反面,教養科目の占める割合が相対的に低くなっている。
しかしながら 2006(平成 18)年改革で,食物栄養専攻に属する教員が全学生を対象に,正
しい食生活について理解してもらおうと「食生活と健康」を教養科目として開設した。
専門科目では,1995(平成7)年改組以来学科の教育は学科共通科目,専攻専門科目,
関連科目に分類していたが,食物栄養専攻では 2006(平成 18)年に更に見直しを行い,学
科共通科目,専門基礎科目,応用科目,その他の科目に再編し,段階的な教育課程を明示
してわかりやすくした。また,栄養教諭課程の導入によるカリキュラムの過密状態を 2008
(平成 20)年度から「給食管理実習Ⅰ」の前後期それぞれ2コマずつ組み込むことで緩和
して改善した。
生活科学専攻では,教育研究領域の範囲が広く,またすべての科目を制限無く受講でき
るようにしていることからカリキュラムが過密な状態が続いており,これを解消しなけれ
ば専門教育をさらに深化させる事はむずかしい。
教養教育の位置づけについては学科・専攻の専門教育との関係での精緻な議論・検討は
深められていない。教養教育は全学的枠組みのもとで実施されているが,学科・専攻の専
門科目と教養科目の相互の関係は今後とも議論を継続すべきこととして存在している。
【将来の改善策】
生活科学科の専門教育科目の区分には専門必修科目が相対的に多くなる。資格取得の関
係でこれを劇的に変更する事は難しい。学生の勉学の実態に即して過重負担にならないよ
うに不断に努力する。
食物栄養専攻と生活科学専攻ではそれぞれにカリキュラムの過密状態解消についての方
策を検討し,2010(平成 22)年度までに実施する。
(b)-3 第一部商経学科
【現状の説明】
卒業所要単位 62 単位のうち,教養科目は 17 単位以上の取得が卒業要件である。具体的
には外国語が4単位で,うち英語の計2単位が必修,スポーツ健康科目が3単位で全て必
修(3科目),情報が2単位で全て必修(2科目),人文・社会・自然・総合の4分野のう
48
ち2分野以上から8単位(必修科目はなし)となっている。
表3-13 履修科目の区分の単位数
教養科目
専攻\区分
人文・自然・
専門科目
外国語
スポーツ健康
情報
専門基礎
専攻専門
社会・総合
経済専攻
8
4
3
2
0
8
経営情報専攻
8
4
3
2
0
8
上記の合計はいずれも 25 単位である。従って卒業所要単位数 62 単位には,37 単位足り
ないことになる。これを本学では「不足」と表現している。不足は,教養科目および専門
科目から自由に選択して「補う」ことになる。卒業所要単位における 60%,卒業所要単位
から教養科目分をのぞいた専門科目における 82%が「自由に補う」科目である。
不足分,すなわち選択科目については,時間割と履修指導においてコントロールしてい
る。同時間帯に基礎的な科目と応用的な科目を開講し,1 年次に履修する科目と2年次に履
修する科目を分けている。
また,「経済学」など一部の基礎的な科目は1年次に必ず履修するように指導を行ってい
る。
【点検・評価】
第一部商経学科では,
「演習科目」を必修とし,在学中常に履修することとなり,教育の
柱としているが,演習科目以外に専門科目に必修・選択必修科目がない現在の履修区分に
ついては,学科内にも議論がある。大きくは,ゼミナールでの学習やゼミナール指導教員
による履修指導を通して体系的な学習を確保し,学生は,そうした指導の下,各自のプラ
ンに合わせて自由に履修科目を決めることができる現在のあり方を評価する意見と,専門
科目の体系的な学習に資するよう必修・選択必修科目を設けるべきであるとする意見に分
けられる。
実際の学生による履修状況は,卒業単位における専門科目における「不足」分に関する
履修の割合については,平成 20 年度卒業生で以下のようになっている。
表3-14 不足分の履修状況(2008(平成 20)年度卒業生)
経済専攻
専門基礎
経営情報専攻
専攻専門
専門基礎
専攻専門
充当率
70.3%
48.6%
55.1%
48.4%
単位数
23.9
18.7
20.4
17.9
合計単位数
42.6
38.3
49
不足分の単位数 37 単位を超えて履修する学生が多いので,充当率は 100%を,単位数で
は 37 単位を越えることになる。
両専攻とも比較的「専門基礎科目」による充当が高い。専門基礎科目は,(1)基礎理論,
(2)情報基礎,の2分野に分けられるが,両専攻ともに開設科目は同じである。早計な結論
は下せないが,「専攻専門科目」は,「専門基礎科目」よりも履修されていないのである。
経済専攻で5単位の開きがある。2単位科目が多いので科目数で2~3科目である。
【将来の改善策】
当面は履修指導を徹底すると同時に,必修科目と選択科目の区分や科目の年次指定につ
いて,2011(平成 23)年度以後の改革プランを 2009(平成 21)年度後期から 2010(平成
22)年度前期にかけて検討する予定である。
(b)-4 第二部商経学科
【現状の説明】
卒業所要単位 62 単位のうち,教養科目は 14 単位以上の取得が卒業要件である。具体的
には外国語が2単位で,英語と中国語のどちらかの選択必修である。スポーツ健康科目が
3単位で全て必修(3科目),情報が2単位で全て必修(2科目),人文・社会・自然・総
合の4分野のうち2分野以上から8単位(必修科目はなし)となっている。
表3-15 履修科目の区分の単位数
教養科目
人文・社会・自然・総合
8
外国語
2
専門科目
スポーツ健康
情報
2
2
専門基礎
0
専攻専門
8
専門科目では,事実上演習4科目のみが必修であり,選択必修科目は設けていない。た
だし,専門基礎科目の「経済学」や「経営学総論」は履修するように指導している。必修
で強制するのはなく,自発的に履修するように促している。
【点検・評価】
第二部商経学科では,
「演習科目」を必修とし,教育の柱としているが,演習科目以外に
専門科目に必修・選択必修科目がない現在の履修区分については,学科内にも議論がある。
大きくは,ゼミナールでの学習やゼミナール指導教員による履修指導を通して体系的な学
習を確保し,学生は,そうした指導の下,各自のプランに合わせて自由に履修科目を決め
ることができる現在のあり方を評価する意見と,専門科目の体系的な学習に資するよう必
修・選択必修科目を設けるべきであるとする意見に分けられる。
実際の学生による履修状況は,卒業単位における専門科目の履修の割合について以下の
50
ようになっている。
表3-16 不足分の履修状況(2008(平成 20)年度卒業生)
専門基礎
専門応用
充当率
59.3%
47.0%
単位数
23.7
18.8
合計単位数
42.5
不足分の単位数 37 単位を超えて履修する学生が多いので,充当率は 100%を,単位数で
は 37 単位を越えることになる。
専門応用科目の履修割合が相対的に低いことは,実務的な内容を多く含み,実践的に役
立つという専門応用科目の科目開設趣旨からいっても十分でないことになり,今後一定の
履修指導等が必要である。
また,履修指導において1年次の履修を薦める科目についても,時間割編成のミス(必
修科目と同時間帯に開講)により,履修できない事態もあり,体系的な学習を妨げること
もおこっている。
【将来の改善策】
当面は履修指導を徹底する。特に時間割編成によって一定の体系を確保する。必修科目
と選択科目の区分や科目の年次指定について,2011(平成 23)年度以後の改革プランを 2009
年後期から 2010 年前期にかけて検討する予定である。
(c) 臨床実習・学外実習等
ここでは,学科横断的に行っている教育実習と生活科学科食物栄養専攻で栄養士養成施
設として行っている臨床実習・学外実習について述べる。
(c)-1 教育実習
【現状の説明】
文学科の日本語日本文学専攻では中学校教諭二種免許状(国語),英語英文学専攻では中
学校教諭二種免許状(英語)が,また,生活科学科の生活科学専攻では中学校教諭二種免
許状(家庭科)が取得できるため,鹿児島県立短期大学教職課程履修規程第8条の1に基
づき,教育実習を,原則として,3週間,当該学生の出身中学校で実施している。
また,2009(平成 21)年度からは栄養教諭二種免許状の課程も新設したので,鹿児島県
立短期大学教職課程履修規程第8条の2に基づき栄養教育実習を,原則として 1 週間実施
することになるが,実際に学生が実習を行うのは 2009(平成 21)年度入学生が2年生とな
る 2010(平成 22)年度以降である。
51
教育実習は,教員免許状を取得するための必修科目であり,単なる体験ではない。大学
における教職科目や専門科目の知識・理論などの学習を学校現場で適用,実践研究する「実
習」であり,生徒との応答関係を通した学習である。思春期にある中学生と現場で働く教
職員の先生方との交流を通じて,教員を目指す強い意志を培い,教員になるために必要な
生徒たちとの相互理解を実体験することを目的としている。
教育実習は鹿児島県内の三短期大学で協議会を構成し,県内中学校と教育実習実施につ
いて話し合いをしている。県立短大では教職課程担当教員2名と教務課の担当職員が協議
会に参加している。県外の中学校についても前述の担当者が調整している。
文学科では,教育実習生は 2006(平成 18)年度が 33 名,2007(平成 19)年度が 20 名,
2008(平成 20)年度が 21 名であった。生活科学科の生活科学専攻では 2006(平成 18)年
度が8名,2007(平成 19)年度が3名,2008(平成 20)年度が4名であった。
教育実習を行う2年生については,前期に「教職実習事前事後指導」の科目を開設し,
教職担当教員により綿密に指導している(9月,10 月期実習生に対しての事後指導は後期
となる)。
表3-17 最近5年間の教育実習生の状況
専攻
日本語日本文学専攻
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
32
20
12
6
2
35
9
5
3
1
40
11
7
3
1
30
13
6
7
0
33
11
2
9
0
32
10
6
4
0
33
8
35
3
34
4
8
3
4
0
0
0
区分
学生数
実習生数
県
鹿児島市内
内
鹿児島市外
県外
英語英文学専攻
生活科学専攻
県立短大では市内だけでなく,離島を含む市外であれ県外であれ,実習生がいるならば,
実習先を訪問して挨拶し,評価授業を見学して適切な助言・指導を行う態勢を取っている。
離島や県外の実習生も多数いるので,教育実習期間中は,教職課程担当教員の他,文学科,
生活科学科生活科学専攻教員も分担して各実習先を訪問し指導を行っている。
なお,実習後,文学科日本語日本文学専攻では,次年度の教育実習予定者(1年生)も
参加して「教育実習反省会」を開催している。
【点検・評価】
教育実習は,県内外の出身中学校で教師の仕事を体験しながら,その仕事に必要な知識
とスキルの体験を通して,課題探求・解決に必要な「知識を活用する」ことの意味を探る
実践であり,
「単なる体験ではない」ということになる。
教員が実習校を訪問した場合,「教育実習校訪問復命書」を提出しなければならない。教
52
員は実習生の評価授業を見学して,実習生の良い点・悪い点・気付いた点・改善点等を記
して,間接的に指導と助言を行う。また校長をはじめ,担当教諭との意見交換を通して,
当該年度の教育実習生の実情や教育実習生の受け入れに際しての要望等で注目すべきこと
を書き留める。教職課程担当教員は,この復命書の所見に目を通して,評価授業を見学で
きなかった実習生の実情を認識できるし,更にこの復命書が次年度以降の教職課程履修者
への適切な指導に生かせる効果もあるので,復命書の提出はうまく機能していると言える。
しかしながら,教育実習校への訪問については,旅費等の予算枠が定まっていないので,
全体的に実習生の人数が多い年度,離島や県外への実習者が多い年度は,訪問予算のやり
くりに苦慮している。
【将来の改善策】
県立短大の実習生を受け入れてもらえたすべての実習先への訪問は,離島を含む市外で
あれ県外であれ,今後も続ける方針である。実習校訪問に要する予算確保が難しいので,
実習生が多い場合, 2008(平成 20)年度に設置された教職部会において予算執行の工夫を
検討していく。
2010(平成 22)年度から実施される栄養教育実習については,今後の実施状況を見守る。
(c)-2 栄養士養成に関する実習
【現状の説明】
生活科学科食物栄養専攻は栄養士養成施設に指定されているので,臨床・学外実習とし
て「臨床栄養学実習」2週間(2単位)と学校・事業所での「給食管理実習Ⅱ」2週間(2
単位)を実施している。現場体験は栄養士業務を知り職業の重要性を認識する意味で必須
である。実習は実習生の出身地の施設で行うことが原則だが,事前に要望を聞き,栄養士・
管理栄養士養成施設校と協議して実習先を選定している。事前に学内担当者と実習先指導
者との間で実習計画を打ち合わせ実習に移る。期間中に教員が実習先を訪問し意見を交換
して実習指導に当たっている。実習後,実習の成果の報告をかねた発表会を学内で行って
いる。
【点検・評価】
臨床栄養学実習,給食管理実習は教育課程上重要なものであり,こうした実習を通して
学生にとって大きく視野を広げる機会を得ることができる。また,実際の現場で実習を経
験することによって,栄養士業務や栄養士という職業の重要性に対する意識が向上し,将
来のキャリア形成のために効果的である。
しかし,1)これらの科目を集中講義として実施するために事前指導の時間設定が困難
で時間外を使うことで,学生教員双方に負担がかかることがある。2)また,実習内容や
方法を実習先の指導者にゆだねるため,実習先によって指導内容に濃淡が生じるという問
53
題がある。
【将来の改善策】
1)事前指導等に要する時間の確保については,従来2年次前期後期にそれぞれ1週間の
集中講義で行っていた「給食管理実習Ⅰ」を2年次前期・後期それぞれ週2コマずつを組
み込むことで,2008(平成 20)年度に実施した。
2)実習先によって実習内容に濃淡が生じる問題は,学内の担当者を中心に専攻内で協議
し,できるかぎり統一的な実習内容にできるよう努める。
(d) キャリア教育
【現状の説明】
本学のキャリア教育には,教養の講義科目の「キャリアデザイン」
(1年次・2単位)と
実習科目(商経学科のみ専門科目)の「社会活動」(1,2次年・2~4単位)および「企
業研修」(1年次・2単位)とがある。
「キャリアデザイン」は一般教養の選択科目だが,事実上1年生の必修科目扱いで第一
部の1年生のほぼ全員が履修する。この科目の特徴として,①全体を4期に分けて,それ
ぞれ短期集中講義形式で行う。②学内の専任教員の他,学生の多くが希望する県内優良企
業の経営者,NPO主催者,人事担当者,本学OGなど,多彩な人材にそれぞれの立場か
ら講義をしてもらう。ということが挙げられる。入学してから短大生として様々な経験を
積む中で,成長に応じたキャリア観を形成させることが目的である。
「社会活動」
「企業研修」はいわゆるボランティア活動とインターンシップである。ただ
し,「社会活動」は単発的なボランティアではなく,自治体や各種団体が開催するイベント
や行事にスタッフとして原則として運営段階から参加することにしている。現在は鹿児島
青年会議所が主催している錦江湾遠泳大会や鹿児島 100 キロ徒歩の旅(2009(平成 21)年
度は試験期間と重なったため不参加)を中心に,事前事後研修を含めて 30 時間以上のボラ
ンティア活動で単位を伴う科目として認定している。「企業研修」は鹿児島県インターンシ
ップ推進連絡会が行っているインターンシップと,本学独自のインターンシップを合わせ
て事前事後指導を含め 30 時間以上のインターンシップで単位を伴う科目として認定してい
る。これら二つの実習科目は原則的に夏季休業期間中に行われる。
インターンシップやボランティア活動を単位化している大学,短大は多いが,本学では
1年生のほぼ全員が履修する「キャリアデザイン」と有機的に結びついており,キャリア
教育の一環を形成している。すなわち,夏休み前に「キャリアデザイン」第一期で県立短
大生をめぐる就職の状況や社会人としてのコミュニケーションのあり方を学んだ学生が,
実体験としての「社会活動」「企業研修」を受講し,その後,夏休み最後の「キャリアデザ
イン」第二期において県内の代表的な企業の経営者から働くことの意義を学ぶことによっ
て,実習での体験が卒業後のキャリア選択と結びつくことが期待される。その後,冬休み
54
前の第三期では本学からの応募者・採用者の多い企業の実際の人事担当者や本学OGから
具体的な話を聞き,進路イメージを具体化する。後期試験前後に行う第四期では,まとめ
の講義と学生課の就職担当職員による求職票の書き方など直接就職活動にかかわる手続き
の指導が行われ,実質的な就職活動がスタートする。
「企業研修」
「社会活動」は,実習期間中の実習日誌と実習後のレポートによって評価し,
「キャリアデザイン」は毎時間後のミニレポートと最後のレポートによって評価している。
2年次以降の個別の就職指導は卒業研究等のゼミを利用して行っている。
【点検・評価】
「キャリアデザイン」
「企業研修」
「社会活動」のいずれも,学生の満足度は高い。「企業
研修」「社会活動」も選択科目だが,説明会には年によって変動はあるが1年生の半数から
三分の二程度の学生が参加する。企業や主催者側の受け入れ人数に限りがあるため,希望
者全員が履修することはできないが,実習後のレポートを見ると殆どの学生が社会と自分
の関わりを見つめ直し,おおむね満足しているようである。
問題点としては,2005(平成 17)年度からはじまった「キャリアデザイン」は今年度で
5年目になり,そろそろ講師の人選や講義の内容を見直す時期に来ている。学生の就職状
況や鹿児島県内企業の採用動向の変化に対応するよう人選を考える必要がある。
また,日程だけは学年暦決定のため前年度のうちに決めているが,学生に内容を提示す
ることが直前になりがちで履修する学生にわかりにくい。
「キャリアデザイン」は履修した学生の満足度の高い科目だが,現在,夜間課程である
第二部では開設されていない。近年,第二部も勤労学生の比率が激減しており就職希望者
が多い。第二部のキャリア教育をいっそう充実させていく必要がある。
【将来の改善策】
全体的には学生の満足度は高いので現在の方向性を維持していく。
講師の人選,講義の内容については,教務委員会を中心にして,2011(平成 23)年度ま
でに検討する。内容についてはできるだけ具体的にシラバスに掲載できるようにする。
2010(平成 22)年度から第二部でも「キャリアデザイン」を開設できるよう,学則,規
定を改正する。
(e) インターンシップ,ボランティア
【現状の説明】
本学ではインターンシップ「企業研修」とボランティア「社会活動」を3学科共同で実
施しているが,これら2科目は,まず商経学科が学科専門科目として独自に行っていた。
その後,文学科と生活科学科では 2004(平成 16)年度から教養科目として開設したもので
ある。
55
「企業研修」「社会活動」は教務委員会が中心となって,「企業研修」の場合は鹿児島県
インターンシップ推進連絡会との調整・連絡を行う(事務窓口は教務課)。このほかに県立
短大の各学科が独自に開拓した独自分実習先もあるが,同様に取り扱う。「社会活動」も同
様に教務委員会と教務課が連絡・調整を行う。
「企業研修」
,「社会活動」ともに4月末に説
明会を開き,学生に内容や手続きを周知している。特に「社会活動」は主催者団体(現在
はそのほとんどが鹿児島青年会議所)に来学のうえ直接に内容を説明してもらっている。
それぞれの実習先は人数制限があるため希望者には志望理由書を提出させ,希望者多数
の場合にはそれを元に教務委員会が選考している。
実習先が決定した後に,学生には履歴書の他,保証人の署名入りの誓約書を提出させて
いる。学生への個別指導は,原則として学生の所属する学科の教員が当たり,成績評価も
同じ教員が行っている。ただし,同一実習先に複数学科の学生が参加する場合はいずれか
一方の学科の教員一人で何れの学科の学生にも対応する。
【点検・評価】
3学科での共同実施という形態は,他学科間の学生交流にも役立っており履修した学生
の刺激となっているが,文学科と生活科学科では教養科目に分類され,商経学科では学科
の専門科目に分類されているという状況には問題が多い。また,履修する学生が多いこと
は歓迎すべきだが,担当教員には実習前後の指導や複数学科にまたがる学生と実習先との
連絡調整,評価の方法等負担が大きい。
【将来の改善策】
「企業研修」
「社会活動」共に,全学で一括して取り組めるように 2011(平成 23)年を
目処に履修システムを再構築していく。
(f) 国家試験
(g) 資格取得
(g)-1 県立短大全体
【現状の説明】
本学には取得が卒業要件として義務づけられた資格はない。全学的な枠組みで取り組ん
でいるものには主に二つである。一つは,教育職員免許状(以下,教員免許)であり,も
う一つは,栄養士免許である。その他には各学科が取り組んでいる資格取得がある。
以下,「教員免許」,「栄養士免許」,
「その他の資格」に分けて述べる。
教員免許
教員免許は,文科省への申請により課程設置が認められるものであるが,学科専攻と免
許取得の課程認定の対応関係を示すと以下のようになる。
文学科
56
日本語日本文学専攻=中学校教諭二種免許状(国語)
英語英文学専攻
=中学校教諭二種免許状(英語)
生活科学科
生活科学専攻
=中学校教諭二種免許状(家庭)
食物栄養専攻
=栄養教諭二種免許状*2009(平成 21)年度より開始
本学の教職課程は教職担当の教員2名(それぞれ所属は生活科学科と商経学科)が中心
になって,教育職員免許法に規定する『教職に関する科目』『教科に関する科目』に基づい
たカリキュラムを編成している。教職課程に関する諸問題は,教務委員会の下に教職部会
を編成し審議している。教職部会のメンバーは教職担当の教員2名と学生部長,教職課程
を有する学科・専攻の代表各1名,有さない商経学科からの代表1名の計8名である。
教員免許に関する実績であるが学科ごとに見ていきたい。まず,文学科について見ると,
表3-18 のとおりである。
表3-18 文学科に関する教育職員免許状取得状況(過去 5 年間)
専攻
年度
2004 年度
2005 年度
2006 年度
2007 年度
2008 年度
日本語日本文学専攻
英語英文学専攻
(中学校国語二種免許状)
(中学校英語二種免許状)
学生数 取得者数(免許取得率) 学生数 取得者数(免許取得率)
33
12(36%)
39
22(56%)
32
15(49%)
30
13(43%)
32
19(59%)
30
11(37%)
35
10(29%)
33
10(30%)
40
11(28%)
32
10(31%)
年度によってばらつきは見られるが,毎年約3割以上の学生が教育職員免許状を取得し
ている。
次に生活科学科について見てみる。
表3-19 生活科学科に関する教育職員免許状取得状況(過去5年間)
専攻
年度
2004 年度
生活科学専攻
(中学校家庭二種免許状)
学生数 取得者数(免許取得率)
32
7(21%)
2005 年度
33
3(9%)
2006 年度
34
8(24%)
2007 年度
35
3(9%)
2008 年度
32
4(13%)
年度によってばらつきがあるが,1割程度が履修している。家庭は本学の歴史の中で,
57
旧高等女学校専攻科から発給された戦前の「裁縫」からつながる伝統的な免許である。
栄養士免許
生活科学科食物栄養専攻は,厚生労働大臣から栄養士養成施設として指定認可された施
設であるので,栄養士免許が取得できる。毎年ほぼ全員が取得している。
また,栄養士免許を取得して卒業した後,3年以上の実務経験を持つ者は,管理栄養士
国家試験を受験できる。過去5年間の本学卒業生の合格者数の推移は次表のとおりである。
表3-20 栄養士免許取得者数の推移
年
度
栄養士免許取得者数
2004(平成 16)年度
28(1)
2005(平成 17)年度
32(1)
2006(平成 18)年度
35
2007(平成 19)年度
31(1)
2008(平成 20)年度
31
(
)は未取得者数
表3-21 過去5年間の管理栄養士国家試験合格者 (単位:人)
年
度
合格者数
2004(平成 16)年度
8
2005(平成 17)年度
8
2006(平成 18)年度
4
2007(平成 19)年度
6
2008(平成 20)年度
8
2006(平成 18)年度の合格者数の減少は新制度による最初の国家試験であったことが影
響していると考えられる。合格者の把握は「全国栄養士養成施設協会」発行の月報によっ
ている。受験率・合格率は卒業生が対象であるために必ずしも十分ではない。
その他の資格
資格取得については学科の学習内容と緊密に結びついており,やはり学科ごとに区分さ
れている。
生活科学科では二級建築士・木造建築士の受験資格とインテリアプランナー登録資格は
同様の履修で得られる。これを履修する者は毎年 10 余名で,定員の半数程度であり,少な
いとは言えない。資格の取得者は7〜14 名程度である。二級建築士・木造建築士の受験資
格は卒業後2年の実務経験で得る事ができ, 2002(平成 14)年3月卒業の初年度生が,2006
58
(平成 18)年に2名,2007(平成 19)年に1名の計3名合格した。また,4年の実務経験
を経てインテリアプランナーの登録資格が得られるが,これは一級建築士以上の能力を求
められるもので,まだその合格実績はない。
過去5年間の二級建築士・木造建築士受験資格,インテリアプランナー登録資格取得者
は以下のとおりである。
表3-22
過去5年間の二級建築士・木造建築士受験資格,インテリアプランナー登録資
格取得者(単位:人)
二級建築士・木造建築士
インテリアプランナー
受験資格
登録資格
2004(平成 16)年度
12
12
2005(平成 17)年度
12
12
2006(平成 18)年度
10
10
2007(平成 19)年度
7
9
2008(平成 20)年度
12
14
年
度
食物栄養専攻,生活科学専攻ともに,卒業生のための国家試験対策講座等,具体的なリカ
レント教育は行っていない。
商経学科では幅広い職業生活に対応することを目的としているので,専門的な資格より,
簿記や情報処理を中心とした汎用的な資格取得を薦めている。就職に有利なだけでなく,
学習の短期的,中期的な目標となっている。
簿記検定に関しては,学生に日商簿記検定(3級および2級)に関する情報提供をして,
受験希望者に指導している。2008(平成 20)年度の実績は,3級では,受験者数は経済専
攻 18 名,経営情報専攻 26 名,合格者数は前者6名,後者9名,合格率は前者 33.3%,後
者 34.6%,2級では,受験者は経営情報専攻のみで4名,合格者数は1名,合格率は 25.0%
であった。授業科目としては主に「簿記論Ⅰ」
,「簿記論Ⅱ」が対応している。
情報系の資格に関しても,やはり日本商工会議所が行う日商PC検定(文書作成)と日
商PC検定(データ活用)を受けるよう促している。2008(平成 20)年度の結果は,日商
PC検定(文書作成)3級では,受験者数は経済専攻 42 名,経営情報専攻 35 名で,合格
者数は前者 39 名,後者 34 名,合格率は前者 92.9%,後者 97.1%,2級では,受験者数は
前者1名,後者5名,合格者数は前者0名,後者2名,合格率は前者0%,後者 40.0%で
あった。日商PC検定(データ活用)3級では,受験者数は経済専攻7名,経営情報専攻
12 名で,合格者数は前者4名,後者 11 名,合格率は前者 57.1%,後者 91.7%であった(基
礎データ表3 参照)。
日商PC検定については,本学が試験会場に認定されているため,授業で使い慣れてい
る教室で受験できるだけでなく,受験日時も本学が自由に設定でき,学習進度に応じて,
59
随時試験を開催できる。授業科目としては文書作成分野が「情報リテラシーⅠ」
(1年前期),
「文書作成実習」(1年後期),データ活用分野が「PCデータ活用」(1年前期),
「PCデ
ータ活用実習」(1年後期)が対応している。
また,日商簿記検定試験についても,本学が試験会場に指定されることから,授業で使
い慣れた環境で受験が可能となっている。試験会場として指定されるのは,多くて年2回
であり,特に2月の試験に多い。
上記の日商資格については,学科の教員が受験の取りまとめも行っており,受験状況を
把握している。その他の資格について,学科として把握する態勢はないが,就職活動の求
職票において把握可能である。
第一部商経学科と同様に,第二部商経学科も幅広い職業生活に対応することを目的とし
ているので,専門的な資格より,簿記や情報処理を中心とした汎用的な資格取得を薦めて
いる。就職に有利なだけでなく,学習の短期的,中期的な目標となっている。2008(平成
20)年度の実績は表3-23 のとおりである。
表3-23 第二部商経学科の資格取得状況
国家試験・資格試験の名称
受験者数(A)
合格者数(B) 合格率(%)
(取得者数)
B/A*100
日本商工会議所簿記検定
2級
4
1
25.0
日本商工会議所簿記検定
3級
15
5
33.3
日商PC検定(文書作成)2級
1
0
0.0
日商PC検定(文書作成)3級
21
16
76.2
日商PC検定(データ活用)2級
1
0
0.0
日商PC検定(データ活用)3級
7
5
71.4
簿記検定に関しては,学生に日商簿記検定(3級および2級)を受けるよう促している。
授業科目としては主に「簿記論Ⅰ」
,「簿記論Ⅱ」が対応している。
日商PC検定については,本学が試験会場に認定されているため,授業で使い慣れてい
る教室で受験できるだけでなく,受験日時も本学が自由に設定でき,学習進度に応じて,
随時試験を開催できる。授業科目としては文書作成分野が「情報リテラシーⅠ」,「文書作
成実習」,データ活用分野が「PCデータ活用」,「PCデータ活用実習」が対応している。
【点検・評価】
教員免許
個々の免許取得状況,教員採用試験合格状況は学科別記述に譲るが,教育職員免許状取
得のための教職課程については,教職部会の設置によって教育内容・方法について全学的
に検討できるようになっている。このことによって,学科と教職担当教員との間で情報伝
60
達のシステムが確立できている。
文学科の教員免許状取得と教員採用試験受験実績については,直近5年間において,日
本語日本文学専攻では1次合格者を出していない。他方,英語英文学専攻では 2004(平成
16)年度に2名の1次合格者を出して,そのうち 1 名が教員になり,2006(平成 18)年度
に1名の1次合格者を出した(表3-24)。文学科では,1999(平成 11)年度以前は,毎年
のように,県立短大から2~3名の鹿児島県教員採用試験合格者を輩出していたが,教員
採用試験合格率は年々厳しさを増している。
表3-24 のような状況なので,教員志望の学生には四年制大学に編入して力量を身に付
けるか,もしくは,臨時的採用で教育経験を積んで再挑戦するように指導している。
表3-24 直近5年間の鹿児島県教員採用試験の結果(文学科)
日本語日本文学
専攻
英語英文学
2004
年度
2005
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
2004
年度
2005
年度
2006
年度
2007
年度
2008
年度
受験者数
1次合格者数
2次合格者数
6
0
0
8
0
0
9
0
0
8
0
0
11
0
0
11
2
1
3
0
0
9
1
0
10
0
0
10
0
0
教職就職数
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
年度
生活科学科生活科学専攻においても,過去 5 年間で 2004 年度に 1 次試験合格者 1 名を出
すのみである。こうした教員採用の状況が芳しくない現状が取得希望者数の低迷の原因の
一つであろう。しかし,入学時の志望動機を持った学生の数を考えると教員免許の取得者
数が過去 2 年で3名と4名は決して多いとは言えず,改善の方策が望まれる。
栄養士免許
食物栄養専攻では7~8割の学生が資格を活かして栄養士としての進路が確保されてお
り,一定の成果をあげていると言ってよい。
卒業後の管理栄養士国家試験については,2002(平成 14)年4月の栄養士法改正によっ
て「栄養士養成課程」と「管理栄養士養成課程」では大きく教育内容が異なっている。現
在もカリキュラムの中でできる範囲で「栄養士養成課程」では設定されていないが,「管理
栄養士養成課程」で行われている科目をカリキュラムに取り入れたり,また教育内容で工
夫を凝らしたりしているが国家試験に要求される内容全てを盛り込むことは困難である。
その他の資格
生活科学科生活科学専攻では,取得可能な資格を他の学科より卓越して持っていること
は生活科学科の優位的特色である。推薦入試の志望理由にこれらの資格が取れることを挙
げる受験生が多いことでこのことは証明される。
61
建築士受験資格の取得者はほぼ 10 名内外で推移している。建設関連の求人は毎年実績が
あるので取得者の増加を期待したい。二級建築士・木造建築士の合格実績を得たことは当
初の目的を達したと評価できる。ただ今後も継続的に合格者が続くことが望まれる。
商経学科では第一部,第二部とも評価は共通している。パソコン,簿記ともに就職に有
利と言われ,学外からも一定の評価を得られる商工会議所の検定試験の合格者が多いのが
特徴である。資格取得に関連する科目が主に1年次に配当されている。資格取得の時期も
就職活動に間にあうよう配慮している。日商簿記に関しては,年度末(2月受験)が一つ
の目安である。日商簿記検定については,日商PC検定に較べて受験者数,合格率ともに
やや低い。これは簿記会計に強い興味を持つと思われる職業系高校の出身者は入学前に取
得している場合も多く,在学中の受験者は入学後に勉強を始めたためと思われる。
第二部の固有の問題点としては,受験率が低い。そこで,今後受験率を上昇させる施策
が必要である。パソコン,簿記ともに就職に有利と言われ,学外からも一定の評価を得ら
れる商工会議所の検定試験の合格者が学内他学科と比べても多いのが特徴である。資格取
得に関連する科目が主に1・2年次に配当されている。資格取得の時期も就職活動に間に
あうよう配慮している。
【将来の改善策】
教員免許
教職課程では採用試験一次試験合格を目指して勉強会を開催しているので,文学科とし
て受験者への対応を行う。鹿児島県教員採用試験において,県が定める実用英語技能検定,
TOEFL,TOEIC の成績をクリアすれば,中・高等学校の英語受験者は,英語会話の実技試験
(1次試験の一部)が免除される。英語英文学専攻では,編入試験対策と同様に,学生が
希望すれば,リスニングとリーディングの強化で,教員全員が対応することを 2008(平成
20)年7月の定例専攻会議において確認している。
生活科学科生活科学専攻においては,教員免許取得者の低迷は教員採用をとりまく構造
的な問題が主因であろうが,資格の取得を希望する受験生は確実に存在するので,いま一
層の動機付けと勧誘策を検討する。
食物栄養専攻では 2009(平成 21)年度からの栄養教諭養成課程(栄養教諭二種免許状)
の新設により,カリキュラムが過密化することが考えられるが,この1〜2年間の時間割
編成上の問題を 2011(平成 23)年度までの実績を待って,学生の受講負担を考慮しながら
どのように解消できるかについて検討する。
また,教育職員免許取得に関する全学的な問題が発生した場合は,今後も教職部会を中
心に取り組んでいく。
栄養士免許
現行の栄養士養成課程は現在の状態でも十分評価できる。そこで卒業生に対しては管理
62
栄養士国家試験受験についての情報等のできる限りの援助をする必要があるが,組織的リ
カレント教育システム等の具体的計画は現在顕在化していない。
その他の資格
生活科学科生活専攻の建築士受験対策のリカレント授業を組織的に行うかどうか 2009
(平成 21)年度後期から検討する。
商経学科の日商簿記検定については授業担当者が中心になり,レベルに応じた指導(既
取得者には上級の資格,初級者には中級の資格)を継続して行っていく。2級レベルの講
義が無いことから,資格と関係する講義を見直すことも一つであろう。その際は,講義負
担数や業務バランス,非常勤講師の予算などを考慮する。
日商PC検定(文書作成分野)3級は9割近くの学生が在学中(ほとんどは1年次)に
取得しており合格率も 90%を越えているので,継続的に指導していく。同データ活用分野3
級は合格率は高いものの,受験者が 25%前後であり,対応する授業だけでなくゼミにおいて
も受験を薦めていく。また,日商PC検定2級やITパスポート試験など,上級の資格に
ついても,関連の授業科目やゼミを通して,薦めていく。
また第二部商経学科については,日商簿記検定については授業担当者が中心になり,レ
ベルに応じた指導(既取得者には上級の資格,初級者には中級の資格)を継続して行って
いく。PC関連の検定に関しては,2009(平成 21)年度より情報リテラシーが一般教養の
必修科目となったため,PC検定取得者が増加すると思われるが,授業担当者だけでなく,
ゼミなどを通して受験を推奨していく。
(h) 高・大の接続
(h)-1 県立短大全体
【現状の説明】
12 月中旬に決定する推薦入学に対しては短大生協と共催の形で,
「推薦入学者の集い」を
実施している。12 月の推薦入学者選考の合格者に案内ハガキを送り,返信ハガキに質問事
項を記入してもらうようにしているので,回収した質問事項に対しては学科,専攻で回答
している。それら質問の中には,入学前にどのような勉強をすればよいかという質問もあ
り,一般的な回答を行っているが,課題を呈示するなど特別な入学前教育は今のところ実
施していない。
入学者全体に対しては,入学式当日を含めて3日間をオリエンテーション期間としてい
る。初日は,学生課,教務課による,全新入生を対象とした大学生活に関するオリエンテ
ーションのほか,学科専攻別オリエンテーションを実施し,県立短期大学での2年間の教
育課程を説明し,新入生同士の自己紹介等を行っている。2日目は,前期受講登録を中心
に,履修の方法,教職課程の説明等を行い,3日目には図書館の利用ガイダンスと自治会
のオリエンテーションを行っている。
63
カリキュラム上の全学的な導入教育としては,2009(平成 21)年度から実施した日本人
教員が担当する英語Ⅰ(1年前期・必修)と外国人教員が担当する英語Ⅱ(1年前期・必
修)がある。国際化が進んだ現代社会において,英語を実社会で使う場面が一層多くなっ
ている。学生がしっかりした目的意識と明確な目標をもって英語を学習できるように,ク
ラスのレベルを初級と初・中級に分け,それぞれのクラスの到達目標を設定して,受講生
の英語力が伸びるような習熟度別クラス(1クラスは 20 名以内)とした(表3-25)。
初級と初・中級の習熟度別クラスは,日本語日本文学専攻と生活科学専攻,経済専攻と
経営情報専攻,食物栄養専攻の3グループからなる。クラス分けには,一般選抜個別学力
検査による入学者は大学入試センター試験の外国語(英語)の点数を利用し,推薦入学・
特別推薦入学・社会人入学による入学者は英検準2級レベルの問題集から作成したマーク
シート方式問題を英語オリエンテーションの際に解いてもらい,その点数を利用している。
教養ゼミについては,教養教育科目として位置づけようとする動きもあったが,現在の
ところ学科・専攻ごとに導入教育的な内容の科目を開設している。これについては学科別
に後述する。
表3-25 英語Ⅰ,英語Ⅱの習熟度別クラス分け
学期
1年
前期
クラス
担当者
英語I(必修)
日本人教員
英語 II(必修) 外国人教員
習熟度
(レベル)
初級
初・中級
初級
初・中級
クラス
数
10
10
到達目標
TOEIC 270~420 英検 3 級
TOEIC 420~500 英検準 2 級
TOEIC 270~420 英検 3 級
TOEIC 420~500 英検準 2 級
【点検・評価】
推薦入学合格者と一般入試合格者との入学後の成績を含めた違いについては,印象批評
的に語られてはいるものの,きちんと検証されてはいない。上記推薦入学者の集いでの質
問には入学前指導を希望する内容のものもあり,また,県下の高等学校の一部からも推薦
入学合格者に対する入学前指導を望む意見が出されているが,学力を補完するためという
よりも,大学センター試験受験者の手前,合格決定後も何らかの形で勉強を継続させたい
という意図のようである。
入学式後のオリエンテーションは特に支障なく行われてきており,高等学校までとは違
う履修システムや時間割の組み方についても,オリエンテーション時に職員や教員が丁寧
に説明している。また,昨年度からの英語の習熟度別クラス編成等,カリキュラム改正に
より,よりきめ細かい履修指導,オリエンテーションが必要となる可能性がある。
英語Ⅰ・Ⅱの習熟度別クラスを最大限に機能させるには帯時間に組むことが最も効果的
であるが, 20 クラス中 13 クラスを非常勤教員に頼っている実情と専攻の専門教育におけ
る時間割上の都合から,帯時間に組むことができなかった。しかしながら,オリエンテー
64
ションの際に新入生全員を対象として実施したアンケートによると,専攻を超えた習熟度
別クラス導入に6割以上が賛成しているので(表3-26)
,このシステムは上手く機能して
いくと考える。また,2008 年,2009 年4月に行った「英語学習に関するアンケート調査」
によると,2008(平成 20)年度の新入生は 211 名中 132 名(63%),2009(平成 21)年度
の新入生は 212 名中 131 名(63%)が高校時代に習熟度別クラスを経験したことがあると
回答している。従って,現時点で,習熟度別クラスの導入は学生には違和感はないと判断
している。クラス分けで問題となるのは,推薦入学・特別推薦入学・社会人入学による入
学者をどのクラスに入れるかである。英語Ⅰと英語Ⅱのクラスは連動しているので,クラ
ス分けを誤ると,学生が明確な目標をもって英語を学習できる機会を損なうことになるお
それがある。従って,クラスの決定に際しては,外国語部会に属する英語英文学専攻教員
6名の合意で行っている。
表3-26 習熟度別クラス導入に対する学生の反応(2009 年4月9日実施:回答率 100%)
大いに
まあまあ
どちらとも
あまり
反対
回答数
賛成
賛成
いえない
賛成しない
日本語日本文学
32 名
7
20
5
0
0
生活科学
30 名
7
15
7
1
0
食物栄養
32 名
5
14
8
5
0
経済
41 名
7
15
15
4
0
経営情報
44 名
8
19
14
3
0
合計
179 名
34(19%)
83(47%)
49(27%)
13(7%)
0(0%)
本学は学科・専攻の専門科目の場合,ほとんどすべての科目について少人数教育が実施
されており,1 年前期の段階で学生一人一人に目が行き届く教育が実施できている。また,
教養科目についても,英語や情報リテラシーについては必修科目を1年前期に集中させる
ように配慮している。これにより,1 年前期のカリキュラム全体が一種の導入教育的役割を
果たしているといえよう。現在,入学時に各学科専攻の専門教育に必要な学力が不足して
いる学生を対象としたいわゆる補習教育は実施していないが,今後,入学前の履修内容に
大きな差が生じることが考えられる。しかしそれについての対応策は検討されていない。
【将来の改善策】
推薦入学合格者に対する入学前指導については,2009(平成 21)年度中に教務委員会を
通じて各学科で実施の是非を検討し,必要との結論が出れば遅くとも 2011(平成 23)年度
入試の合格者を対象に実施する。
全学的な導入教育としての英語Ⅰ,英語Ⅱの習熟度別クラス分けは, 上記点検・評価にも
述べたように,好ましい教育的配慮であると考えるが,2009(平成 21)年度から実施した
ばかりなので,年度末にアンケートを実施して結果を分析し,問題点があれば「共通教養
部会」に属する外国語部会で検討して対処していく予定である。
65
学科・専攻
(h)-2 文学科
【現状の説明】
文学科においては,共通科目「文学研究入門」「言語研究入門」の廃止後,英語英文学専
攻では,2007(平成 19)年度からのカリキュラム改革で,専門基礎科目群を新たに設け,
導入教育のために「スタディスキルズ」(1年前期)を開設した。これは短大で「学ぶ」た
めに最低限必要な「聴く」「読む」
「調べる」「整理する」「まとめる」「表現する」「伝える」
「考える」という学問的技術を身に付けさせることを目的としている。日本語日本文学専
攻でも,専門分野への橋渡しとなるような基礎的能力を育成する目的で,2008(平成 20)
年度から「日本文学概論」を導入教育の科目と位置付けた。
また,英語英文学専攻では,オーラルコミュニケーションにおいて,1年次に週2回,
「オ
ーラルコミュニケーション」(Ⅰ:前期,Ⅱ:後期)を開設し,しかも習熟度別クラスで,
1クラス 11 名程度に3つに分けて,
外国人教員によるきめ細やかな指導体制を取っている。
英語表現法では,「英語表現法」(Ⅰ:1年前期,Ⅱ:1年後期,Ⅲ:2年前期)を必修と
し,習熟度別クラスで,1クラス 16 名程度に2つに分けて,外国人教員によるきめ細やか
な指導体制を取っている。とりわけ「オーラルコミュニケーションⅠ」と「英語表現法Ⅰ」
は入学時の学習状況にスムーズに適応できるようにするための対策である。
【点検・評価】
本学は学科・専攻の専門科目の場合,ほとんどすべての科目について少人数教育が実施
されており,1年前期の段階で学生一人一人に目が行き届く教育が実施できている。しか
しながら,英語英文学専攻では,一般選抜個別学力検査による入学者および推薦入学によ
る入学者において,英語運用能力における4技能(話す・聴く・書く・読む)のレベルの
差が見られる。
表3-27 英語英文学専攻入学者の実用英語技能検定取得状況
入学者数
準2級
2級
準2級と2級
取得
取得
両方を取得
左記以外
2008(平成 20)年度入学者
32
9(28%)
3( 9%)
15(47%)
5(16%)
2009(平成 21)年度入学者
33
16(48%)
5(15%)
7(21%)
5(15%)
レベルの差は,表3-27 のように,実用英語技能検定準2級さえも取得していない入学者
が 2008(平成 20)年度に5名(16%),2009(平成 21)年度に5名(15%)いることから
判断できよう。1(b)で示したように,コミュニケーション科目は,英語英文学専攻の教育
目標にある「国際社会に対応できる人材の育成」の根幹をなすものであり,総合的な英語
運用能力を養成する必要があるので,すべて必修としている。従って,英検準2級を取得
していないような学生でも学習にスムーズに適応できるようにした習熟度別クラス分けシ
66
ステムはうまく機能していると言える。
【将来の改善策】
英語英文学専攻における導入教育においては,前述のような状況から,現時点では特段
の問題は生じていないため,現状どおりでいく。
(h)-3 生活科学科
【現状の説明】
生活科学科は従来から学科共通科目に「生活科学概論」を開設し,これを必修科目とし
て全学科学生に履修を義務づけ,学科と専攻の専門教育の概要と今日的社会との関わりに
ついて理解できるよう教授してきた。2008(平成20)年度からはこれを高校教育から大学
教育への導入科目として重用視して位置づけした。
その他に食物栄養専攻では専門教育のために化学,生物が基礎知識として要求されるた
め,専門科目に「生物概論」と「有機化学概論」を開設して導入教育的意味合いのある基
礎科目と位置づけた。
【点検・評価】
上記科目の開設は導入教育として効果があると考えられるが,まだ検証されていない。
「生活科学概論」については現代生活と生活科学の状況とを見据えた教授内容の見直しが
顕在化している。
【将来の改善策】
導入教育のうち,「生活科学概論」について今日的な教授内容のあり方について検討し,
2010(平成22)年度に教授内容を(担当教員を含めて)改善する。他科目については実施
後間もないのでしばらく継続して実績評価の時期を待つ。
(h)-4 第一部商経学科
【現状の説明】
導入教育については,基礎演習(1年前期のゼミナール)において,指導教員が学生一
人一人の個性を把握しつつ,大学生活への円滑な移行を支援している。具体的には,ノー
トのとり方,レポートの書き方,スピーチの仕方などをはじめ,大学生としての「学び方」
の初歩を丁寧に指導している。
「情報リテラシー」や「PCアプリケーション実習」は基礎的な情報関連科目であり,
入学時のスキルには差がある。そのため,経済専攻と経営情報専攻を混在させた習熟度別
クラス編成を行っている。クラス編成については,入学時のアンケートを参考に行ってい
る。
67
【点検・評価】
導入教育としての基礎演習は,高校ではなじみのなかったゼミナールに慣れる上でも,
入学後の学習その他に関する疑問や悩み,不安に対して,ゼミナール担当教員が責任を持
って対応することになる点でも,うまく機能していると評価できる。
しかしながら,学科としてどのようなカリキュラムでどのような人材を育成するのかと
いう目標が観念的レベルに留まり,具体的な到達目標が設定されていないため,担当によ
って内容が大きく異なる。
基礎的な情報関連科目の習熟度別クラス編成は,入学前に一定のスキルをもった学生と
初心者を分けることで,それぞれに対応した授業が可能となっている。
【将来の改善策】
基礎演習の具体的な到達目標について,検討を行う。情報関連科目の習熟度別クラス編
成については,入学時点のスキル把握とともに継続的に行っていく。
(h)-5 第二部商経学科
【現状の説明】
導入教育については,2009(平成 21)年度より開設された基礎演習(1年前期のゼミナ
ール)において,指導教員が学生一人一人の個性を把握しつつ,大学生活への円滑な移行
を支援している。具体的には,ノートのとり方,レポートの書き方,スピーチの仕方など
をはじめ,大学生としての「学び方」の初歩を丁寧に指導している。基礎演習の開設につ
いては,以前より必要性が指摘されてきたが,費用,時間割編成,教員負担の面から実現
が困難であった。他科目の統廃合などにより,条件が整ったと同時に,全学的な導入教育
の見直しに伴い,開設となった。
情報関連授業も含め,習熟度別クラス編成は行われていない。
【点検・評価】
導入教育としての基礎演習は,第一部商経学科と同様の効果が期待できるが,導入間も
ないので,実際の効果は不明である。
情報関連のスキルについては,第一部商経学科以上に学生間の開きがある。しかし,3
年間に各自のペースで受講できるため,大きな問題とはなっていない。
【将来の改善策】
2009(平成 21)年度の基礎演習の導入効果について,継続的に検証を行っていく。具体
的な到達目標については,第一部商経学科と同様に議論を行っていく。
情報関連科目の習熟度別クラス編成については,入学時点のスキル把握を継続的に行い,
導入の必要性について検討を行う。
68
(i) 授業形態と単位の関係
(i)-1 県立短大全体
【現状の説明】
本学の授業科目は,講義科目,演習科目,実習科目に別れている。それぞれの単位数は
鹿児島県立短大学則第 23 条に定めるとおりである。講義科目は 15 時間の授業を以て1単
位としており,現在,半期 30 時間 2 単位を標準としている。演習科目は 30 時間を以て1
単位としており,半期 30 時間 1 単位を標準としている。実習科目は 45 時間の授業を以て
1単位としており,半期 45 時間1単位を標準としている。ただし,学長が別に定める科目
については,演習科目(商経学科の演習科目等)では 15 時間を以て1単位とし,実習科目
では 30 時間~45 時間までの範囲内で1単位としている。
【点検・評価】
本学の単位設定は,現状の説明に述べたとおり,短期大学設置基準に基づき,学則に定
められている。学科により状況は多少違うが,設定の手続きは適切でありそれについての
問題はない。単位の実質化の観点からの自宅学習の時間確保や単位認定の方法については
2(b)(c)に後述する。
【将来の改善策】
今後もバランスの取れた単位設定となるよう配慮しつつ,各学科の改善策が実施できる
よう,全学的に検討する。
学科・専攻
(i)-2 文学科
【現状の説明】
演習科目については,30 時間の授業をもって1単位とするが,文学科英語英文学専攻の
演習科目で半期(後期)30 時間の「卒業研究」は,鹿児島県立短期大学学則第 23 条第1項
第2号のただし書きに基づく特例により,2単位となっている。
【点検・評価】
短期大学設置基準第7条第3項の規定に基づくと,卒業研究の授業科目については,学
修等を考慮して単位数を定めることができる。英語英文学専攻の「卒業研究」は,基本的
には英語で作成させ,日本語での作成の場合でも 350 語程度の概要を英語で書かせている。
その上,2月初旬に1年生の前で卒業研究発表会を行っている。「卒業研究」は英語の作品
や文献を読ませ,インターネットで検索させ,時には英語で考えさせたりして,
「柔軟な思
考力,的確な表現力」の育成を目指すことを目標とし,専攻での学修における「課題探求・
解決能力」の集大成と位置付けているので,その学修の成果を評価して,演習科目である
69
が,2単位与えることは可能と考える。
【将来の改善策】
「卒業研究」における特例措置に関しては,何ら問題はないので,現状どおりで行く。
(i)-3 生活科学科
【現状の説明】
生活科学科の授業形態は,講義形式,演習形式,実験・実習および実技形式であって本
学の規程に従っている。単位数は講義では 15 時間をもって1単位(2 時間×15 回=30 時間
では2単位)
,演習では 30 時間をもって1単位(例外的に 15 時間1単位が可能)
,実習形
式は 45 時間で1単位(例外的に 30-45 時間1単位が可能)となっており,食物栄養専攻,
生活科学専攻ともにこの規程どおり授業計画を立て実施してきた。
【点検・評価】
近年,国の定める休日の変更(国民の休日,ハッピーマンデー等)により授業時間数の
確保が難しくなったが,週単位での開講日を移動させる等の工夫をして時間数を確保して
いる。ただし,評価・試験時間を除いた実時間の確保は困難になっている場合が多く,本
学では試験時間を含めた時間数を規程時間として認めているが,特に実習系講義について
は補講時間等をまとめて確保することが難しく 45 時間の実時間数確保が難しくなる局面が
発生してきた。
こうしたことから食物栄養専攻では,従来からの週3時間(1.5 コマ)×15 週の確保が
難しくなって来た事情に対応し,週4時間(2コマ)×12 週を実施することで栄養士養成
施設としての認定要件(実施要領)を満たすように変更して実施した。
【将来の改善策】
食物栄養専攻のように,認定要件の厳しい栄養士養成施設関連科目はその認定要件を満
たすように今後とも注意して授業計画・学年暦を作成する。
また,生活科学専攻においても学生の授業を受ける権利の公平性を担保する意味でも実
時間の確保に努める。
(i)-4 第一部商経学科・第二部商経学科
【現状の説明】
第一部商経学科には,講義・演習(ゼミナール)・実習の3つの授業形態が存在する。講
義と演習の授業では毎週2単位時間,すなわち 90 分の授業を1セメスター(半期)15 回で
2単位である。学内での実習(コンピュータ会計,応用データ活用,プログラミングなど)
では,毎週2単位時間,すなわち 90 分の授業を1セメスター(半期)15 回で1単位とする。
70
学外での実習(社会活動,企業研修,異文化体験)については,60 時間で2単位とする。
この 60 時間には学内で行われる事前事後指導が含まれている。
セメスター制の導入以来,通年の授業はない。
【点検・評価】
講義および実習の単位認定については,文科省の基準とおりであり,全く問題がない。
演習の2単位,という算出の仕方は一般的な基準とは異なるが,学内規程で認定され,こ
の規程は,専攻分離を申請したときの文科省の設置審から問題ないということとされてい
る。従って現状でも全く問題がない。
【将来の改善策】
現時点では,具体的に予定にあがっている改善策はないが,自宅学習の指針の提示,さら
にはそれの評価方法等の開発など 2010(平成 22)年度より着手したい。また,演習の 2 単
位という算出方法は,今後見直されるべき対象であると認識しているので,今後必要な検
討作業に着手する。
(j) 単位互換,単位の認定
【現状の説明】
鹿児島県内の四年制大学,短期大学および高専との間で授業交流(単位互換)協定を結
び,単位互換を実施している。他大学等の授業を履修したい学生は単位互換履修生の手続
きを行い,各学科がそれぞれの開設科目に読み替えられると認定した科目については本学
の卒業所要単位として,それ以外は自由選択科目として 30 単位を上限に認定する。
この単位数の上限は,本学入学前に他大学・短大等で取得した単位がある場合の認定上
限が 30 単位であることに合わせたものである。
単位認定法は,授業を提供している大学・短大等において出された素点に基づき,本学
の成績評価の基準に合わせ,教授会の議決を経て単位を認定している。
また,2006(平成 18)年度から単位互換の枠組みを利用した,南京農業大学との交換留
学制度が始まり,同年度は日本語日本文学専攻から3名,商経学科から 1 名が留学した。
その後も年間1ないし2名が留学している。
【点検・評価】
学生の興味関心に応じて広く科目を提供できるのみならず四年制大学への編入を目指し
ている学生にとっては,本学在学中に編入後に必要な単位を取得することも可能になる。
だが,大学間の距離が離れており交通の便もよくないところが多いので,時間割上履修で
きない科目が多く,単位互換制度を利用する学生も限られている。距離,交通の便の関係
で大学間の移動が困難なことは,単位互換科目の履修登録をした学生が途中で履修を放棄
71
する一因ともなっている。
また,本学の開設科目に読み替えられるかどうかは,単位互換履修生の申請を出す時点
である程度教員と相談してはいるものの,申請後にならないと読替えの検討ができず,せ
っかく修得した単位が卒業所要単位とならないことも多い。特に,現在もっとも受講者の
多い,コーディネート科目と呼ばれる各大学が単位互換制度のために開設する集中講義方
式の講義は,本学においてはほとんどが自由履修科目として認定されている。
【将来の改善策】
集中講義方式の互換科目を増やすなど,他大学で履修しやすい環境作りを各大学間で構
成している単位互換協議会で検討する。
また,学内においては,読替えられる科目が無くとも卒業所要単位に組み込めるような
規定について教務委員会を中心に 2011(平成 23)年度までに検討する。
(k) 社会人学生,外国人留学生等への教育上の配慮
【現状の説明】
本学では,商経学科が社会人入学制度を制定しているが,利用者は2,3年に一人いる
かどうかである。2008(平成 20)年度において,社会人学生が経済専攻に 1 名在籍するが,
通常のフルタイムの学生と同様であり,特段の就学上の配慮をしていない。ゼミナール指
導教員や当該学生が受講する講義の担当教員によれば,受講態度は非常に熱心であり,学
生生活の問題・困難を感じていないように思われる。
表3-28 過去3年間の社会人入学者数
社会人入学者数
2006 年度
2007 年度
2008 年度
0
0
1
外国人留学生については,本学には 1993(平成5)年度から外国人留学生規程を定めて
私費外国人留学生を受け入れているが,これまで商経学科以外の受け入れ実績はない。過
去3年間の私費外国人留学生の入学実績はゼロである。
一方,2006(平成 18)年度からいわゆる単位互換制度を利用して,交流協定校である南
京農業大学からの交換留学生を受け入れている。受け入れ学科についてはとくに規定はな
いが,これまでこの制度を利用したのは南京農業大学外国語学院日本語学科の学生ばかり
なので,もっぱら日本語日本文学専攻が受け入れてきた。2006(平成 18)年度前期に 1 名,
後期に2名の交換留学生を受け入れて以来,毎年3名から5名の交換留学生を受け入れて
いる。2009(平成 21)年度も5月現在で3名の学生が在学している。これら交換留学生につ
いては,国際交流委員会の交換留学等部会の依頼を受けて,専攻内で担当教員を決めて履
修時間割の作成など,教育指導に当たっているほか,他の教職員も個別に教務上,生活上
72
の相談に応じている。だが,現時点では社会人学生,外国人留学生等を対象とした特別な
教育課程編成上の配慮は考えていない。
【点検・評価】
社会人学生,外国人留学生,帰国生徒に対する特別教育のシステムはないが,各学科・
専攻の教員の努力によって現時点までは当該学生に対する教育は円滑に行われてきたとい
ってよいであろう。商経学科の場合,ゼミナールを通して,指導教員が学生一人一人の個
性を把握しつつ,円滑な学習を支援する学科の制度は,社会人学生,外国人留学生に対し
ても,有効に機能していると考えられる。
交換留学生の成績も,日本人学生と比べて遜色はない。
交換留学生の受け入れについては,現状では日本語日本文学専攻が担当しているが,南
農大側の希望によっては商経学科等に受け入れを依頼することも考えられる。
交換留学は大学間の学術教育交流の一環としての役割をも果たしている。(詳細は3.国
際交流の推進において後述)
【将来の改善策】
社会人学生については,今後とも商経学科全体のゼミナールを中心とした学習支援制度
が有効に機能していくように心がける。第二部商経学科にはさまざまな困難を抱えている
学生もいるので柔軟に対応する予定である。
交換留学生については,今後も交換留学等部会と当該学科・専攻で十分協議して円滑な
教育を行っていけるようにする。
(l) 生涯学習への対応
【現状の説明】
本学での生涯学習への対応としては,科目等履修生の制度があり,教務委員会が所掌し
ている。
科目等履修生の制度は,本学の学生以外の者で本学の授業科目の履修を希望する者に,
選考の上科目等履修生としての入学を許可するもので,本学学生と同じように試験または
学修の成果によって単位が与えられる。科目等履修生については,学則第 41 条に規定し,
鹿児島県立短期大学科目等履修生規程によって必要な事項を定めている。科目等履修生は,
半期ごとに募集し(前期分は3月,後期分は9月),志願者は必要書類と入学検定料を提出
しなくてはならない。その後科目担当者による書類選考を経て,入学が許可された場合は
受講料を納付し,当該授業科目を受講する。履修期間は開講日から閉講日までである。
原則として本学のすべての科目について履修を志願できるが,「教職に関する授業科目」
のうち「教育実習(実習事前事後指導を含む。)」については本学の卒業生以外は履修を志
願することはできない。科目等履修生の中には,毎年継続していずれかの科目を履修して
73
いる者,本学の卒業生で,教育職員免許状取得のために系統的に教職関連科目を履修して
いる者などがいる。
表3-29 過去3年間の科目等履修生の受け入れの延べ人数
2006年度
第一部
第二部
9
12
2007年度
3
2
2008年度
5
3
【点検・評価】
毎年一定数が本学の科目等履修生制度を利用しており,生涯学習のためのある程度の成
果を上げていると考えられる。しかしながら,本学の科目等履修生制度は,単位の取得を
前提としているため,入学検定料と受講料が必要である。受講料は正規学生の授業料から
算定されており,志願者の経済的な負担はやや大きい。教育職員免許状の取得など,資格
取得に関わる場合は単位取得が必要だが,自己啓発を目的とした志願者のなかには,必ず
しも単位取得を要しない者もあると考えられる。今後,生涯学習への対応を拡大するので
あれば,受講料の安いシステムを検討する必要があろう。
【将来の改善策】
通常授業の一般開放を拡大する可能性はあると考える。例えば,単位取得を前提とした
科目等履修生制度しかない現状を見直し,かつてあったような単位取得を伴わない(あい
たがって受講料も低廉な)聴講生制度を整備することによって,通常の授業を生涯学習と
結びつけていけないか,学科や,図書館・生涯学習委員会を通じて検討する。
(m) 正課外教育
【現状の説明】
就職関連のセミナー,公務員模試等については,学生課が中心となって行っている。第
5章「学生生活」(b)進路選択支援を参照のこと。
全学的な正課外教育は行っていないが,各学科専攻で独自に,資格取得や,教員採用試
験,編入学について対策や指導を行っている。
文学科では,教員採用試験,編入学等に対して各専攻で指導に取り組んでおり,入学時
の学科オリエンテーションで,編入学希望者は指導教員に相談するように助言している。
日本語日本文学専攻では,希望者に対して,教員採用試験受験者のための試験対策を行
っている。1次試験合格者がでた場合,2次試験対策として模擬授業の指導を教職担当教
員と連携して行っているが,ここ数年は1次試験合格者がいないので実施していない(表
3-24 参照)
。
英語英文学専攻では,編入や留学関係で TOEIC,TOEFL を受験しなければならない学生が
74
希望してきた場合,学生の指導教員が中心となって,その試験対策の勉強会を行っている。
四年制大学編入希望者に対しては,学生からの相談があれば,編入先の試験内容に応じ
て,試験対策のアドバイス,試験勉強の指導,面接対策等を行っている。
基本的には,各学生のゼミ(演習や卒業研究)の担当教員による個別対応だが,学生の
志望の状況については専攻ごとに情報を共有し,専攻として学生の希望に応じることがで
きるようにしている。ただし,その内容,学生の満足度については組織的に把握,検討し
ていない。
生活科学科では編入希望者に対しては,相談を受けた教員が個別に対応している。学科・
専攻での組織的対応はない。
第一部・第二部商経学科では,ともに教員の一部による大学編入対策,就職試験対策,
資格試験対策等の自主的な課外指導は存在するが,学科としては把握していない。
【点検・評価】
上述のように,正課外教育については,文学科以外は教員個人の努力に任されており,
組織的な取り組みはない。
文学科は,入学時から編入学希望の学生が多く,学科としても卒業後の進路として重視
しているため,専攻単位で状況を把握しており,その結果として,編入学に一定の効果を
あげている(基礎データ表6参照)
。
生活科学科・第一部・第二部商経学科では,教員の自主的活動に任せ,学科としての取
り組みは行っていないため,全体像はつかめないが,学生からの不満や要望は顕在化して
おらず,学科としては現状維持で問題ないと考えている。
いずれにしても,学生の希望に応じた個別対応が基本なので,その意味では学生一人一
人の必要に応じた指導ができていると言える。
ただし,資格取得関連,編入学・就職対策は,教員個人の自主的な取り組みも含め,担
当科目などにより特定の教員に偏る傾向がある。
【将来の改善策】
組織的な対応の必要性については,学科ごとに認識が異なるが,個別の対応で特に問題
はないと考えられている。しかしながら,個々の教員の取り組みの実態については必ずし
も把握されていないので,2011(平成 23)年度を目処に実態調査を行なう。
75
2.教育方法等
(a) 履修指導
(a)-1 県立短大全体
【現状の説明】
入学時の履修指導については,1(h)でも述べた入学時オリエンテーションで2日間
にわたって指導している。入学式当日の午後は教務課により学生便覧を使って履修手続き
全般について説明する。2日目には,午前中に語学や教職課程の履修方法についてのガイ
ダンスを行い,午後には学科・専攻ごとに,教務委員が中心となって履修説明をし,さま
ざまな相談に対応している。受講登録はこの時に行う。その後も,前後期の授業開始前に
学科・専攻ごとに教務委員を中心として履修指導・受講登録を行っている。在学生の受講
登録は前期は毎年4月1日に行い,後期はおおむね9月 20 日前後に行っている。
留年者や単位不足者に対しては,教員だけではなく教務課を通じて必要な手続きについ
て連絡を行い,確実に履修ができるようにしている。
また,科目等履修生については,生涯学習関係を所掌している教務課第二部専門員が窓
口となって授業開始日など履修に関する必要事項を連絡している。
受講登録は欠席者を除き,原則として受講登録日当日に済ませなければならない。ただ
し,授業開始後1週間は登録変更期間で学生は所定の手続きを経て変更届を提出すること
で,受講登録を変更することができる。
留年者数をみる場合,県立短大では第1年次から第2年次に,第二部においては加えて
第2年次から第3年次に進級する際の留年制度はない。卒業の際に卒業延期となった学生
が「留年者」として扱われ,翌年度は第一部においては第2年次,第二部においては第3
年次のままとなる。卒業延期者の中には,次年度の9月卒業となる者もおり,それも含め
て留年者として扱っている。詳細は学科ごとの記述に譲る。
オフィスアワーについては,従来,少人数教育が徹底しているとの理由で,全学的な制
度としては導入していなかったが,
「教員は学生からの質問等に対して確実に対応できる方
法を設定する」という目的で,2008(平成 20)年度から設けた。連絡可能なメールアドレ
スと面談可能な曜日・時間帯を各学科の教務委員で取りまとめ,一括して掲示,学生に周
知するという形で実施している。第二部においては,決まった時間帯に面談の時間をおく
と言うことは難しいが,事前に教員とメールでアポイントメントを取ったり,授業時間の
前後を利用したりするという形でオフィスアワーとして対応している。
【点検・評価】
履修指導に関しては,教務課と教務委員による連携がほぼうまくいっていると考えてい
る。
ただし,本学においては履修登録が学生による履修登録カードの記入から教務課による
集計まで,すべて手作業で行われているため,学生による登録ミスや転記ミスなど,正確
76
性において問題があり,集計の際の登録もれチェックも万全とは言えない。過去にも何件
かの登録もれによる卒業所要単位の不足問題が生じている。
オフィスアワーについては,定着度や活用の仕方が学科・専攻によって若干違っている
が,全体の傾向として,教員との連絡の取り方を明示することで,新入生や科目等履修生
なども教員と連絡を取りやすくなった。
【将来の改善策】
履修登録カードを使った手作業での履修登録を改め,履修登録等,教務システムの電算
化を 2011(平成 23)年度までに行い,履修指導の迅速化,正確化を図る。
オフィスアワーについては,いっそう活用できるように教務委員会を通じて今後も利用
度をチェックしていく。
学科・専攻
(a)-2 文学科
【現状の説明】
両専攻とも,1年生の入学時に担当教員を決め,担任制のような形で教育上,生活上の
相談に応じている。その後,日本語日本文学専攻では1年後期から,英語英文学専攻では
2年前期から演習(ゼミ)が始まるので,それ以降は指導教員が所属学生の教育,生活,
就職指導を行うことになる。
日本語日本文学専攻では,1年後期から演習を取り入れ,1・2年生合同の授業も取り
入れることで学習意欲を促進しようとしている。英語英文学専攻では,2007(平成 19)年
度から新設した「スタディスキルズ」において,資格等に関する年間目標および達成予定
日を書かせ,努力するように指導して学習意欲の促進を図っている。
過去3年間の留年者数は以下のとおりである。
表3-30 文学科における留年者数の推移
年度
日本語日本文学専攻
学生数 留年者数
留年率
英語英文学専攻
学生数 留年者数 留年率
2007(平成 19)年度
35
3
8.57
33
1
2008(平成 20)年度
40
0
0.00
32
0
2009(平成 21)年度
38
3
7.89
35
4
* 基礎データ表9参照 留年者には,9月卒業(予定)者も含む。
3.03
0.00
11.43
日本語日本文学専攻では, 2007(平成 19)年度,2009(平成 21)年度に留年者が3名
ずついる。2007(平成 19)年度の留年者は,2006(平成 18)年9月から1年間にわたって
協定校である南京農業大学に交換留学生として派遣されたことにより,卒業が1年おくれ
たことによる。2009(平成 21)年度の留年者については,2 名は 2007(平成 19)年度と同
77
様に南京農業大学への1年間の留学により,1名は教養科目の単位不足による。
英語英文学専攻では,2007(平成 19)年度に1名,2009(平成 21)年度に4名の留年者
がいる。2007(平成 19)年度の留年者は,専門科目のうち必修科目の1科目(2単位)の
単位不足による。2009(平成 21)年度の留年者については,1名は資格取得による休学の
ため,終業年限が2年に満たないことと単位不足,2名は専門科目のうち必修科目の1科
目(2単位)の単位不足,1名は「講読科目(表3-4の◆印参照)中4科目以上を選択
必修すること」という規程があったにもかかわらず,2009(平成 21)年3月時点で3科目
しか履修していない履修ミスによる。
留年者に対しては,教務課が卒業のために必要な履修指導を行っている。教育指導上の
配慮として,各専攻では,当該学生(とりわけ単位不足による学生)が意欲を失わずに卒
業に向けて勉学に励むことができるように,指導教員が個別にメール・電話等で連絡を取
って督励するよう心がけている。
【点検・評価】
2年間の専攻別履修指導において,4回のオリエンテーション(1年次4月,9月,2
年次4月,9月)を行っているが,選択必修の複雑さなど文学科特有の事情から,過去,
日本語日本文学専攻でも英語英文学専攻でも,卒業要件の条件にある「選択必修」の内容
を理解していない学生が,履修ミスにより留年する事態となっている。
学習意欲の促進のために,英語英文学専攻では,資格等に関する年間目標を設定させて
いる。2008(平成 20)年度末のアンケート調査によると,入学から翌年の1月までの約 10
ヶ月間で,実用英語技能検定を受験した者が3名(うち合格者3名)
,TOEIC を受験した者
が8名いる(うち 450~479 点取得が1名,550~529 点取得が2名,630 点以上取得が1名,
無回答が4名)。「スタディスキルズ」のなかでの目標設定は学生の学習意欲を促している
と考える。
留年者に対しては,教務課が受講登録に関して指導を行い,各専攻の指導教員および未
修得科目の担当教員は,学習方法,日常生活等に関して,メール・電話・研究室での直接
対応により,個別的相談にのって適切に対応していると言える。また,日本語日本文学専
攻においては,専門科目に隔年開講があるので,指導教員および教務委員は状況を把握し
て,必要があればその科目の特別開講を実施し,留年者が不利にならないように配慮して
いる。
南京農業大学に派遣される交換留学生は,卒業所要単位取得上,1年間卒業が遅れるた
め,留年者として扱われるが,これについては特に問題ない。
【将来の改善策】
履修指導には神経を使っているが,学生の履修ミスから留年を招いた。日本語日本文学
専攻で問題となっていた選択必修の条件については,2007(平成 19)年度入学生から「専
78
門科目の関連科目群から3科目以上を履修する」を2科目以上と改めて履修指導を徹底さ
せ,2010(平成 22)年度からは,関連科目群の科目数の削減に伴い,同様な履修ミスによ
る留年を防ぐため,この条件を撤廃する。他方,英語英文学専攻における 2009(平成 21)
年度の(4科目以上を選択必修とする)講読科目の履修ミスによる留年に関しては,二度
と起こらないように,履修指導を徹底させたところである。
2008(平成 20)年度から設けたばかりのオフィスアワー制度については,この制度が上
手く機能していくよう学科としても努力する。とりわけ専攻に関わる相談を受けた場合は,
専攻会議において教員が共有できるようにする。
学習意欲と学習成果を測る一つの尺度として,英語英文学専攻では,2008(平成 20)年
度から,英検と TOEIC の受験状況と結果に着目することとした。表3-27 にあるように毎
年入学時にアンケートを実施し,「スタディスキルズ」の第1回目の授業において学生に目
標を設定させ,再度年度末にアンケートを実施して,学習意欲のための目標設定と学習成
果を検証していく予定である。
留年者については,教務課と連携し,専攻会議において当該学生についての情報を共有
しながら,その配慮の具体化を検討し,指導教員と授業担当者とが連携を密にして,個別
の状況に即した適切な配慮を心がけていく。
(a)-3 生活科学科
【現状の説明】
生活科学科では前・後期の履修登録時に教務委員を中心にそれぞれ専攻ごとに履修指導
を行い,相談に応じている。
入学時から指導教員を割り当てて学生生活全般にわたる相談に応じている。生活科学専
攻では2年次から「卒業研究」を課しておりそれぞれの担当教員が指導教員となって学生
の日常的相談等に応じている。
食物栄養専攻では二年間を通して指導教員が,生活科学専攻では1年次には指導教員が,
2年次には卒業研究担当教員が指導と相談に当たっている。また,出席状況などの状況は
学科・専攻の教員間で情報交換している。
過去3年間の留年者数は以下のとおりである。
表3-31 生活科学科における留年者数の推移
食物栄養専攻
学生数 留年者数
留年率
生活科学専攻
学生数 留年者数 留年率
2007(平成 19)年度
33
1
3.03
35
1
2008(平成 20)年度
32
0
0.00
34
0
2009(平成 21)年度
33
1
3.03
32
0
* 基礎データ表9参照 留年者には,9月卒業(予定)者も含む。
79
2.86
0.00
0.00
【点検・評価】
卒業留年者は2名以内で推移しており,履修指導の成果は順当であるといってよい。履
修指導は効果があり,その方法について特に問題を指摘できない。
本学は少人数教育が大きな特徴であり教員と学生との距離は近いとされているが,オフ
ィスアワーの明示によって個別相談等がより容易になっている。
留年者に対しては指導教員,卒業研究指導教員のほか学科長あるいは専攻の世話役が指
導,相談を行っている。食物栄養専攻では2年次に学外実習があり,食物栄養専攻での実
習指導は教員全員が分担して当たる事でよりきめ細かく指導が行われることが期待できる。
【将来の改善策】
オフィスアワー制度の利用定着を含め,現状を継続していく。
(a)-4 第一部商経学科
【点検・評価】
日常的な履修指導はゼミナール担当教員が行っている。また,取得単位が著しく少なく,
留年が懸念される学生に関しては,教務委員が学科長とゼミナール担当教員に連絡し,ゼ
ミナール指導教員が指導にあたることとなっており,必要に応じて学科長がゼミナール指
導教員と当該学生の面談に同席することもある。
2009(平成 21)年度の留年者は経済専攻の1名のみである。
表3-32 第一部商経学科における留年者数の推移
学生数
経済専攻
留年者数
留年率
経営情報専攻
学生数 留年者数 留年率
2007(平成 19)年度
36
0
0.00
45
2
2008(平成 20)年度
54
1
1.85
51
2
2009(平成 21)年度
37
1
2.70
42
0
* 基礎データ表9参照 留年者には,9月卒業(予定)者も含む。
4.44
3.92
0.00
【点検・評価】
前述のオフィスアワー制度がどの程度活用できているか不明であるが,留年者は極めて
少なく,履修指導を含む学習支援に関して,履修登録時の教務委員の指導と日常的なゼミ
ナールでの指導は機能していると考えられる。ただし,ゼミナールでの指導について学科・
専攻の統一した方針がないため,所属するゼミナールによって指導内容が異なっている。
【将来の改善策】
教務委員,ゼミナール担当教員による履修指導を継続して行っていく。また,2010(平
成 22)年度以降,ゼミナールでの履修指導について,一定の方針を決定し,公平かつ効果
80
的な指導を行っていく。
(a)-5 第二部商経学科
【現状の説明】
履修指導の方法については,第一部商経学科とほぼ同様に行っている。
2008(平成 20)年度までは,1 年前期の基礎演習がなかったが,6名程度の教員が担任
(教員一人につき学生 10 名前後担当)となり,2年後期のゼミナール配属までの期間の指
導にあたっていた。2009(平成 21)年度からは,基礎演習の担当教員が引き続き2年前期
までの指導を行う。
多くの学生が仕事(正規雇用・非正規雇用を問わず)をしながら学んでいる夜間部の特
性として,休学者,留年者,退学者は多い。
表3-33 第二部商経学科における留年者数の推移
学生数
留年者数
留年率
2007(平成 19)年度
77
15
19.48
2008(平成 20)年度
72
10
13.89
2009(平成 21)年度
61
12
19.67
* 基礎データ表9参照 留年者には,9月卒業(予定)者も含む。
退学の理由としては,
「就学意欲の減退」,「進路変更」,
「業務多忙」が多い。
【点検・評価】
履修指導については,教務委員,ゼミナール担当教員の役割によって,機能していると
いえる。授業の前後などに教員が学生の相談に応じることは日常的に行われている。
就業形態や経済的理由により,夜間部に在籍する学生の事情を考えると,留年,退学が
一定数ある現状もやむをえないといえる。また,サークル活動を除き,平日2コマ授業と
いう限られた時間しか大学にいないことが多く,教員との関係や,学生同士のつながりが
比較的希薄になりやすい。そのため,サークルや自治会に所属していない学生は特に大学
への帰属意識が低下している可能性もある。2008(平成 20)年度までは新入生に対し,担
任を決めていたが,その活動は各教員の任意の活動にとどめられていた。2009(平成 21)
年度より,導入教育だけでなく履修を含めた学生生活全般の指導も意図し,1 年生必修の基
礎演習を導入したが,その効果は今後検証することになる。
【将来の改善策】
履修指導については,現在の取り組みを維持していくとともに,2009(平成 21)年度よ
り導入した基礎演習の効果を検証していく。また,奨学金の活用など,経済的な支援も行
い,退学率,休学率の低下に努める。
81
(b) 授業形態と授業方法の関係
学科・専攻
(b)-1 文学科
【現状の説明】
日本語日本文学専攻では,58 科目中講義科目が 22 科目(38%),演習科目が 36 科目(62%)
あり,演習科目の開設数が多い授業形態を取っている。とりわけ少人数教育を徹底する目
的で,「日本語及び日本文学の理論を学び作品を読むこと」を重視しているので,演習科目
の中では講読の科目(14 科目)が目立つ。授業方法に関しては,必修科目が多い講義科目
において,一斉講義(学年ごとでは 30 名余り,1・2年合同の場合は約 70 名)となるが,
毎回のテーマをできるだけ具体的に提示し,文学史では教科書を利用して全体の流れを理
解させるほか,作品を読むことを通して,立体的な授業となるように心がけている。
英語英文学専攻では,48 科目中講義科目が 22 科目(46%),演習科目が 25 科目(52%),
実習科目が1科目(2%)による授業形態を取っている。演習に関しては,「英語運用能力」
の涵養を重視しているため,スピーキング力とリスニング力の養成を重視するコミュニケ
ーション科目群(10 科目中8科目)および講読の科目を配する英米文学科目群(10 科目中
7科目)に多く見られる(表3-4を参照)。
授業方法に関しては,必修科目であるオーラルコミュニケーションⅠ,Ⅱ,Ⅲおよび英
語表現法Ⅰ,Ⅱ,Ⅲにおいて習熟度別クラス編成を行っている。現行の習熟度別クラス分
けは,学生の「英語運用能力」を高める教育的効果があると考え,2009(平成 19)年度か
ら完全実施したものである(これまでは同じ教員が同じ学生を次も担当する積み上げ方式
を一部採用していた)。クラスは半期ごとに見直し,専任の外国人教員が中心となって,3
名の外国人教員によるクラスのレベルの確認と学生のレベルの確認を行っている。また学
生の授業の理解度を高めるために,視聴覚教材,パワーポイント,プロジェクターを活用
できるLL教室やパソコン室の利用が増えている。
【点検・評価】
文学科は両専攻ともそれぞれの教育目標および県立短大の専門教育カリキュラム開発の
基本方針に応じた授業形態の配分がなされていると言える。とりわけ日本語日本文学専攻
では,演習科目の数を多くして少人数教育を徹底させ,学生の文献読解力を高めようとし
ている点は評価に値する。しかしながら演習科目が多く,専門科目だけで 58 科目もあるの
で,時間割の編成には注意を要する。英語英文学専攻では,オーラルコミュニケーション
Ⅰ,Ⅱにおいて1クラス 11 名程度に3つに分けて習熟度別の少人数教育に細分化したこと,
英語表現法Ⅰ,Ⅱ,Ⅲにおいて1クラス 16 名程度に2つに分けて習熟度別の少人数教育に
細分化したことは評価に値する。現行の習熟度別クラス分けは,教育効果上,好ましい方
法であると考えるが,担当教員でのクラス選択を希望する学生には配慮ができないという
デメリットもある。
82
【将来の改善策】
日本語日本文学専攻では,2009(平成 21)年度の状況をみて,全学的な専門科目の検討
に合わせて,2010(平成 22)年度に専門科目の年次指定の見直しを行おうと考えている。
英語英文学専攻では,2001(平成 13)年度の入学生からは外国人教員が担当する教養科
目の英語Ⅱ(旧カリキュラム:現行の英語Ⅲ,英語Ⅳ)を受講できるように改革し,2007
(平成 19)年度からはオーラルコミュニケーションⅠ,Ⅱを週2回に変更し,2008(平成
20)年度からはイギリス事情の担当者を外国人教員に変更したように,学生の要望等を反
映させて,学生の英語運用能力の向上を図る対策を取ってきた。専攻専門のカリキュラム
改革は 2007(平成 19)年度からスタートしたばかりであるので,現段階での改善は考えて
いない。
(b)-2 生活科学科
【現状の説明】
授業形態は講義,演習,実験・実習から構成されている。生活科学科では,基礎理論な
どの講義のほか,実験・実習を多く取り入れ,得られた知識や内容をよりよく理解できる
よう設定している。食物栄養専攻では全 44 科目中 14 科目(32%)が実験・実習科目,生
活科学専攻では 41 科目中 12 科目(29%)が実習・演習科目が占める。これは生活科学科
の際立った特徴である。
また,講義はそのほとんどが専攻ごとに行われるため,おのずと少人数教育となる。各
教員は講義では,授業アンケート結果などを参考に,一方向的な授業にならないよう映像
資料等を活用するなどの工夫を続けている。
【点検・評価】
前項で述べたように生活科学科の授業形態の特徴に実験・実習形式の講義が多い事をあ
げた。これらは,勿論それぞれの理論科目をいわゆる座学として持っており,そのより深
い理解のために設定されていることはいうまでもない。そのために講義と実験・実習科目
の円滑な連続・連携が求められている。また,学外実習なども多く,その効果的な実施と
成果のためにはこれら科目の事前・事後の充実した指導が求められている。生活科学科の
二専攻が持つ実験・実習科目や学外実習については講義間の連携,事前・事後指導ともに
問題なく実践されており,満足できる状態であると評価できる。
また,これら講義全般を学生による授業評価アンケートの結果を参考として,個別授業
の持続的改善を行っている。特に生活科学専攻では,授業評価アンケート結果にもとづく
授業改善の方法について教員会議を機に発表して改善に努めている点は今後も継続して行
ってゆく事が必要である。
83
【将来の改善策】
授業評価アンケート結果を効果的にフィードバックする方法については,全学的FD活
動での動きと連携させながら 2010(平成 22)年度に検討することになる。
(b)-3 第一部商経学科・第二部商経学科
【現状の説明】
ゼミナールの科目(1年前期の「基礎演習」,1年後期の「演習Ⅰ」,2年前期の「演習
Ⅱ」,2年後期の「卒業研究」)は演習科目,技能系科目(簿記・会計,情報処理)の一部
は実習科目であるが,他はすべて講義科目として配置されている。
ゼミナールは,その効果をあげるため,1教員あたり学生 10 名程度の上限を設けている。
基礎演習においては,既知の学生同士のみで固まらないように,出身高校に配慮した上で
ランダムに所属を決めている。演習Ⅰの配属については,演習の内容についての説明に基
づき,学生の希望により配属を決めている。ただし,学生数に上限があるため,かならず
しも第1希望のゼミに配属されるとは限らない。演習Ⅰから卒業研究までは基本的に所属
ゼミの変更は行われない。
技能系の実習科目は,その基礎となる講義科目の履修後に配置され,体系的な学習がで
きるようになっている。情報系の科目においては,習熟度別クラス編成を行っているもの
もある。ただし,時間割の関係で,第二部においては情報系の習熟度別クラス編成は行わ
れていない。また,2つのパソコン教室を使い,1名1台のパソコンによる実習を厳守し
ている。また,情報専門の技能をもった教務補助員1名が補助につき,教員とともに授業
中の学生に対応している。
授業形態や内容に即した授業方法については,各教員に任せられている。学生による授
業評価アンケートや 2008(平成 20)年度より始まった教員間の授業参観など全学的な取り
組み以外の検証は行われていない。視聴覚教材を利用した授業は,頻繁に行われ,教材を
ウェブ上に公開するなど,インターネットの活用も行っている教員もいる。
【点検・評価】
多くの講義科目と演習,実習科目の連携は機能しているといえる。特に教育の核となる
ゼミナールにおいては,配属方法に考慮している。1年後期より1年半の所属となること
は,親密な指導ができる反面,担当教員の個性が反映されるため,多面的な指導を妨げて
いる可能性もある。また,教員により担当学生数が異なり,担当学生が少数(0~2名)
となった場合の教育効果,教員負担について学科内部の議論が継続的に行われている。
情報系科目については習熟度別クラス編成など学習効果を高める配慮を行っている。第
二部においても,情報系の習熟度別クラス編成の必要性はあるが,授業コマ数(平日2コ
マ×5日)と非常勤講師手当など教員配置の問題により,実現が困難である。ただし,3
年間の在籍期間があるため,習熟度に応じた年次履修が可能であり,習熟度別クラス編成
84
が出来ない点を補っているといえる。
授業方法の改善については,個別教員の自己努力にとどまっており,検証は不十分とい
える。
【将来の改善策】
ゼミナール活動を核とした履修形態は継続していく。ただし,所属学生数については,
教育効果を中心に検討し,2010(平成 22)年度以降,上限と下限の設定方法を明確にする。
情報系科目の工夫された授業方法についても継続していく。
授業方法の改善については,授業評価アンケートの活用など,学科独自のFD活動を検
討していく。
(c) 授業運営と成績評価
(c)-1 県立短大全体
【現状の説明】
本学では履修科目登録の上限(いわゆるキャップ制)は設定していない。文学科,生活
科学科では,多くの開設科目は受講年次指定がある。したがって,自から1年間の履修科
目数には制限が加えられることになる。また,教職課程や栄養士養成課程では,免許取得
のために必要な単位数が多く,特に教職課程では卒業所要単位の他に「教職に関する科目」
を履修しなくてはならない。
一方,商経学科では演習,卒業研究以外の科目ではカリキュラムの年次配当がほとんど
ない。
成績評価区分は,100 点満点で 80 点以上が優,70 点以上 80 点未満が良,60 点以上 70 点
未満が可,60 点未満が不可となっている。評価法,基準は各教員に一任しており,科目ご
とにシラバスに評価の方法をパーセンテージも含めて明記している。
【点検・評価】
学生の学習の段階に応じた科目配当にしているが,その適切性について総合的に検討し
たことはない。
かつて文科省の大学審議会において議論されたように,単位制の趣旨を生かそうとすれ
ば,一日 8 時間の学習で,最大年間 36 単位以上取得できない。現状では厳密な適用は困難
だが,程度の問題として年間履修単位制限,いわゆるキャップ制の導入を検討する必要が
あろう。
しかし,文学科や生活科学科のように,教職課程や栄養士養成課程で免許取得のために
卒業所要単位以上の単位を取得しなければならない場合,一律に履修科目登録の上限を設
定することはかなり困難である。2008(平成 20)年に,九州内の公立大学・短大に照会し
た結果も,履修科目登録の上限設定ではなく受講年次の指定によって学生の体系的な履修
85
を促進している大学・短大の方が主流であった。ただし,商経学科の場合,履修科目単位
数の上限が無いうえに,受講年次の指定もないため,1 年次で卒業所要単位のほとんどを取
得したり,学生の時間割の都合で応用的科目のあとに基礎的な科目を履修したりする学生
も一定の割合で存在し,体系的な履修と学習成果の促進という点では不十分である。ただ
し,特定の領域(例えば,情報系科目や語学系科目,簿記・会計系科目)では,シラバス
上で履修条件が付されている場合もある。
一方において教員の問題として例えば講義科目の一授業時間の授業に対して,その3倍
の時間に及ぶ予習・復習を必要とする授業を行えているかどうか,またそうした自宅学習
の指針をきちんと提示しているかどうかが,まずもって検証されるべきであろう。
【将来の改善策】
各学科・専攻によって,状況がかなり違うが,単位の実質化の観点から十分な予習・復
習の時間を確保するように努め,必要に応じて自宅学習の課題を提示する。また,今後も,
学生がバランスよく科目登録をするように,オリエンテーションでの履修指導を図ってい
く。FD活動などを通じてよりいっそう適切な授業運営がなされるように学科間の情報交
換を続けていく。
学科・専攻
(c)-2 文学科
【現状の説明】
各科目の成績評価の方法については,担当教員に一任されている。教員は,到達目標の
達成度と授業の理解度を測るために,筆記試験やレポート等から判断することをシラバス
に明記し,前もって受講生に周知を図っている。
【点検・評価】
1科目・1教員・1クラスの授業については,学生に成績評価基準を知らせているので,
公平性と適切性を保っていると言えるが,シラバスを見ると,同一科目(必修)で複数の
教員が担当し複数のクラスがある授業には問題点があるように見える。英語英文学専攻で
は,習熟度別クラス編成を行っているオーラルコミュニケーションⅠ,Ⅱ,Ⅲ,英語表現
法Ⅰ,Ⅱ,Ⅲが該当する。この理由は,同じ科目であるのに,成績評価の方法が異なって
いるからである。学生は自ら選択するのでなく,習熟度を考慮されて機械的に振り分けら
れる。従って,適切性の観点から言えば,同一科目(必修)の場合は,成績評価の方法が
同じであることが望ましい。
【将来の改善策】
クラス分けは,前期・後期の授業が開始される前(4月初旬と9月下旬)に,専任の外
86
国人教員が中心となって,3名の外国人教員によるクラスのレベルの確認と学生のレベル
の確認を行っているが,前年度の 12 月に締め切られるシラバスに関しては,これまで各担
当教員に任されていた。上記の点は,教務課からシラバス作成が依頼される前に,専攻会
議で議題として取り上げ,担当者間で調整できるようにすれば,専攻だけで処理できる問
題である。2010(平成 22)年度のシラバスから成績評価の方法を統一できるように努力し
たい。
(c)-3 生活科学科
【現状の説明】
成績評価区分は履修規程に明記されているが,評価法は教員に一任されており,学科・
専攻で基準等について議論していない。成績評価は教員各人が期末テスト,レポート,授
業時間中に行う小テストなどで判断しており,学科・専攻で特に定めた基準はない。また,
科目ごとの評価法についてはシラバスに明記し学生には周知している。
【点検・評価】
生活科学科では二専攻ともにそれぞれの科目を学科・専攻の目標にそって年次配当して
いる。食物栄養専攻では2年前期に各2週間ずつ学外実習(「給食管理実習Ⅱ」,
「臨床栄養
学実習」)があるために必要な科目を履修しておくことが要求されるので1年次の前・後期,
2年次の前期に受講する科目が多くなり学生の負担も大きくなっている。
教育の質を確保するための公平で適切な成績評価基準と成績評価法の運用については,
学科・専攻での検証は行われてはおらず各教員に一任されている。
【将来の改善策】
授業運営については,食物栄養専攻では 2006(平成 18)年度にカリキュラムの改正を行
ったところではあるが,2009(平成 21)年度の栄養教諭二種免許状課程の新設によってさ
らに時間割の過密さがますことになるため,2009(平成 21)年度までにはカリキュラムを
再検討してできるだけ負担軽減ができるように検討していく。成績評価についてはFD活
動の検討課題として指摘する。
(c)-4 第一部商経学科・第二部商経学科
【現状の説明】
一部の科目についてはシラバスにおいて既取得科目などの履修条件を提示し,年次指定
を行っている。情報系の科目については科目登録時に履修モデルを提示している。成績評
価基準については,短大全体で行っている取り組みのみで,学科独自のものはない。
87
【点検・評価】
短大全体でも記述されているが,年次指定がほとんどないため,1年次に集中的に単位
を取得し,2年次の取得授業が少なくなるというアンバランスが生じる学生が多い。分野
によっては応用的科目と基礎的科目の履修順序が逆になりえるのは問題である。
【将来の改善策】
まずは 2010(平成 22)年度のシラバスにおいて,応用的科目の履修条件を明確にする。
また,情報系科目以外でも履修モデルを作成し,学生に提示する。
(d) 教育改善への組織的な取り組み
(d)-1 県立短大全体
【現状の説明】
FD委員会が各学期の終わりに授業改善のためのアンケートを実施し,その結果につい
ては集計し授業改善の材料にしているが,結果の学外への公表はしていない。2007(平成
19)年度前期から,それまで,学科ごとに行われていた授業改善アンケートについてマー
クシート方式による全学共通の授業改善アンケートに変更し,結果を集計した。ただしそ
の検討については各学科において行うこととした。
2006(平成 18)年度後期から,全学FDが始まったが,当初は参加は任意であり,テー
マとしては,高大連携について高校側から講師を招いて実践例を聞くなどの講演活動や,
教員同士の自由な意見交換などであった。2008(平成 20)年から,学長を委員長とし,地
域研究所長と各学科長を委員とするFD委員会が正式に発足し,授業改善アンケート,講
演会,授業参観等授業改善のためのさまざまな取り組みを所掌することになった。2008(平
成 20)年度後期には初めて教員同士の授業参観を行ったが,相互評価にまでは至っていな
い。
シラバスの作成は,教務課と教務委員が中心となって取りまとめと編集を行っている。
項目は授業のテーマ,スケジュール,評価方法などである。いわゆる平成7年度改革以来,
各学科とも専門科目の開設数が増えたため,シラバスは学科ごとに冊子化されることにな
った。しかし,他学科の科目を教養科目として履修できる開放科目制度が始まってからは,
他学科のシラバスも一緒にないと不便であるという声が挙がるようになった。そこで 2006
(平成 18)年度に,教務委員会でシラバスの様式について再検討し,全体を一冊にまとめ,
学生がシラバスを利用する際の利便性を図った。また,2009(平成 21)年度からは,テー
マだけではなく到達目標の記載も義務づけるほか,成績評価の方法には配点または評価方
法の割合を記載するようにして学生の主体的な履修選択に資するようにしている。
【点検・評価】
現在のFDは,FD委員会が発足し学長の下,全学的・組織的に取り組む体制ができて
88
いる。ただし,メンバーが管理職ばかりなので実際に作業を行うには忙しすぎるきらいが
ある。
学生による授業改善アンケートは実施時期が授業終了時なので,当該授業そのものの改
善には利用できない。公表について,必要性は合意できているが,その方法,媒体につい
て学科の意見がまとまっていない。
FDでは 2008(平成 20)年度の教員相互の授業参観は,他学科の教員の授業も参観でき
るものであったので,よい刺激を受けたという肯定的な意見が多かった。しかし,相互評
価には至っておらず,その方法も検討されていない。
特に,着任して5年以内の新任教員に対する教育指導法の支援の取り組みは全くなされ
ていない。
学生による授業評価,FDのいずれも,義務化されてはいるが,教員の自主性に任せつ
つ,極端な強制にならない全員参加の方法が必要であろう。
シラバスに関しては学生の授業アンケートによれば,選択科目の履修の際にはある程度
利用しているようだが,必修科目についてはほとんど参考にしていない。また,履修登録
時以外での利用もほとんどない。
【将来の改善策】
FD委員会を中心に 2011(平成 23)年度を目処に以下について実施の是非を検討する。
・授業改善アンケート実施時期の検討(中間アンケートが必要と思われる)
・相互評価も含む,実際の授業に基づいた情報の共有,問題点の解決法の蓄積
・若手教員向けの研修の実施
ただし,FDが自主的なものになるように気をつけなければならない。
シラバスの活用についてはWEB上での作成,閲覧,履修登録等ができるようなシステ
ム作りに向け予算を要求する。
(e) 教育効果の測定
(e)-1 県立短大全体
【現状の説明】
2007(平成 19)年度から,学生満足度調査を行い,主に卒業年次生が本学の教育に対し
てどのように感じているかを調査している。アンケート結果はFD委員会で集計している
が,それに基づく全学的な改善策等の検討は行われていない。また,学生の単位取得状況
については学科・専攻ごとに情報を共有している。
【点検・評価】
学生満足度調査は全学的にきちんと分析・検討すれば,教育上の効果,目標達成度を測
定するための有効な手段となりうるが,現状ではやりっ放しに近いところがある。
89
また,卒業後の進路追跡調査も,ほとんどできていない。卒業生の状況把握は,本人が
離職,再就職について,学生課や在学中の指導教員に相談する場合以外はわかっていない
状態である。
【将来の改善策】
学生満足度調査の分析・検討についてはFD委員会または学生委員会において行う。
卒業後の進路調査については経費等の面で困難な部分も多いが,何年かに一度の割合で
でも行えるようにする。
学科・専攻
(e)-2 文学科
【現状の説明】
文学科では,2年間の教育効果を測定する目安として,卒業研究と進路決定の状況を使
っている。英語英文学専攻ではそれらの他に英語に関する資格取得の状況も加えている。
文学科では短大での学習のなかで興味・関心のある分野において課題を設定させ,指導
教員の指導を受けて,卒業論文を作成させ,最後に口頭発表をさせる「卒業研究」を課し
ている。卒業研究は文学科の教育目的である「文学,言語,文化を学ぶことを通して,豊
かな文学的感性,柔軟な思考力,的確な表現力」を有しているかどうかを測定するものと
位置付けている。
英語英文学専攻の目的の一つは,学生の英語運用能力の養成にある。専攻では,2008(平
成 20)年度入学生から,英語技能検定2級と準1級の受験状況と合格者状況および TOEIC
の受験状況と取得点の状況(入学前の状況,約1年後の状況,卒業時点での状況)を調査
して,教育目標の到達度を数値化して検証することにしている。
就職・進学などの進路状況に関する情報は,教授会で報告されている。(基礎データ表6
参照)
かつては教員と公務員が文学科の最大の就職先であったが,近年,その割合は急激に低
下し,鹿児島県教員採用試験に合格する学生はほとんどいなくなった(表3-19 を参照)。
また公務員も市町村合併や定数削減の影響で採用数が激減している。このような状況下で,
日本語日本文学専攻では,臨時採用的教員(2003 年度1名,2006 年度1名,2008 年度 1 名)
として就職しているほか,県内民間企業への就職の割合が増加している。他方,四年制大
学編入希望者も年々増加し,2006(平成 18)年度には,2003(平成 15)年度に続き,9名
が四年制大学へ編入している。英語英文学専攻では,私立高校の補助教員(2003 年度1名)
や私立中学校の教員(2004 年度1名)として就職しているほか,民間企業のなかでは英語
を生かせるような職業(空港でのグランドスタッフ,案内係)に就職する者(2006 年度1
名,2007 年度3名,2008 年度6名)もいる。他方,2005(平成 17)年度以外は,協定校の
ウィスコンシン州立大学に毎年1名~2名留学している。
90
【点検・評価】
文学科では,毎年2月初旬,専攻別に1・2年生全員が参加して,卒業研究発表会を行
っている。日本語日本文学専攻では,教員全員が学生の卒業論文を前もって読み,事前に
要旨集の配布を受け,4分程度の口頭発表後に質疑応答を行うので,当該年度の卒業生の
教育上の目標達成度を測定でき,英語英文学専攻では,ハンドアウト(配布資料)とパワ
ーポイントを利用して,1人5分間で研究の動機・目的,考察内容,まとめを簡潔に語ら
せるので,教員全員は発表者1人1人のプレゼンテーション力と課題探求・解決能力を観
察でき,当該年度の卒業生の教育上の目標達成度を測定できる点で,発表会は上手く機能
していると言える。
英語英文学専攻における英語技能検定と TOEIC を利用した目標達成度については,現時
点では,2008(平成 20)年度入学生の入学前の状況と約1年後の状況,2009(平成 21)年
度入学生の入学前の状況に関するデータを収集したばかりである。2008(平成 20)年度入
学生が卒業する 2010 年3月に3回目のアンケートを取って分析すれば,短大での学習と効
果の関係をある程度数値化で検証できることになる。専攻の教員が協力して毎年アンケー
トを実施し,軌道に乗せることができれば,この数値化の検証は上手く機能していくと思
われる。
進路状況の関する情報については,どの程度の学生が学科・専攻の特色を生かした職場
に就職しているかを測定できるので,高等学校長との教育懇話会および高等学校進路指導
教諭との入試連絡会における説明で一定の評価を得ていると考える。とりわけ英語英文学
専攻への入学者は,空港関係への就職に憧れをもつ者と四年制大学への夢が破れて入学し
てくる者,所謂不本意入学者が多いので,彼らに英語を生かせるような職業(空港でのグ
ランドスタッフ,案内係,客室乗務員)への就職状況および四年制国公立大学への編入状
況を発信できる点で,進路状況の関する情報は有益であると考えている。
【将来の改善策】
英語技能検定と TOEIC を利用した目標達成度による教育効果の検証に関しては,英語英
文学専攻は乗り出したばかりであるので,すぐに改善はしない。2010(平成 22)年度4月
には専攻会議で情報を共有して,2008(平成 20)年度入学生の2年間の学習成果を検証し
たい。
(e)-3 生活科学科
【現状の説明】
生活科学科では,卒業時点でそれぞれ希望する進路決定(就職,進学)ができているこ
とで,学科・専攻の目的の達成度,教育効果を測定する目安にしている。また,食物栄養
専攻では栄養士の養成を行っており,資格取得が教育効果を測定する指標としている。
91
表3—34
栄養士としての就職状況
栄養士
栄養士/就職者数(%)
2004(平成 16)年度
22
85
2005(平成 17)年度
24
96
2006(平成 18)年度
25
96
2007(平成 19)年度
16
62
2008(平成 20)年度
17
77
【点検・評価】
生活科学科では毎年ほぼ全員が卒業時には進路決定(就職,進学)ができていることか
ら,人材育成の目的は達成せられている。
食物栄養専攻では,毎年ほぼ全員が栄養士の資格を取得しており,同時に,就職を希望
する学生の約8割が栄養士として就職している。食物栄養専攻が掲げた「健康の維持増進
のための実践的能力を有し,地域社会に貢献できる人材の育成」を目指すという専攻の目
的は十分に達成されている。
生活科学専攻では,専門の教育を活かした就職が達成されているとはいいがたい。住居・
建築関係の会社への就職は少しずつ増えてきているが,「衣生活」「生活化学」「デザイン」
関連の会社への就職は少なく専攻の専門を十分活かしているとは言いがたい。中学校教員
の正式採用はほとんどない。
【将来の改善策】
専門教育の成果を活かした就職先の開拓に努めていく必要がある。学科専攻の教育内
容・就職先等の紹介等の情報発信をホームページ開発等を含めて 2010(平成 22)年度を目
処に実施する。
(e)-4 第一部商経学科
【現状の説明】
商経学科の教育効果の測定の目安としては,卒業後の進路が挙げられる(基礎データ表
6)。また,卒業研究において,全員が卒業論文を執筆し,担当教員が在学中の学習成果を
評価している。卒業論文の要旨は学生論集(商経学会編集)としてまとめられている。資
格取得の項で触れられているように,簿記や情報系の資格取得も教育効果測定とされる。
特に日商PC検定は8割以上の学生が受験し,合格率も 90%を越える(2008(平成 20)年
度)など,学習の目標として機能している。
他に教育上の効果,目標達成度を学科として測定する取り組みはなされていない。
【点検・評価】
卒業生の進路としては,多業種,他職種についているのが特徴であり,社会科学全般の
92
学習と技能取得が反映されているといえる。情報関連を中心とした資格取得も学習目標と
就職活動の両面で意義が高い。卒業論文は在学中の学習効果の目安とはなるが,担当教員
の指導に左右され,明確な測定指標とはいえない。
【将来の改善策】
教育効果や目標達成度については,短大全体のみならず,学科としても把握していく必
要がある。進路調査,卒業論文,資格取得といった周辺情報を活用すると同時に,卒業生
に対する追跡調査を 2010(平成 22)年度より検討を開始し,3 年をめどに調査結果報告
まで持って行きたい。
(e)-5 第二部商経学科
【現状の説明】
卒業後の進路を除き,基本的な状況は第一部商経学科と同様である。卒業後の就職希望
者は増加しており,就職率も 50%を越えている(2008(平成 20)年度)
。
卒業論文については第一部と同様,在学中の学習をまとめる機会となっている。また,
資格についても,日商簿記検定,日商PC検定を中心に取得を薦めている。2008(平成 20)
年度は簿記検定3級に5名合格(15 名受験),PC検定文書作成分野3級に 16 名合格(21
名受験)するなど,成果を上げている。
【点検・評価】
基本的な状況は第一部商経学科と同様だが,卒業生の進路については,勤労学生を対象
とした設置当初の目的から重視されていなかった。しかしながら,学生の若年化と有職者
率の低下により,第一部と同様,進路についても教育効果が問われる状況になっている。
資格取得については,合格率は高いが,受験者そのものがまだ少ない。
【将来の改善策】
教育効果や目標達成度については,短大全体のみならず,学科としても把握していく必
要がある。特に資格取得については,担当教員が,積極的な受験を促していく。
進路調査,卒業論文,資格取得といった周辺情報を活用すると同時に,卒業生に対する
追跡調査なども検討を行う。
93
3.国際交流
(a) 国際交流の推進
【現状の説明】
国際交流については,従来は地域研究所が担当していたが,2008(平成 20)年度からは
地域研究所長の下,国際交流委員会が所掌することになった。国際交流全体の明文化され
た基本方針は未制定である。
海外の大学との学生交流協定は,1992(平成4)年にインドネシアのパジャジャラン大
学日本語学科と研究教育交流協定を締結し,1996(平成8)年に米国ハワイ大学コミュニ
ティカレッジスと,2003(平成 15)年には中国の南京農業大学国際教育学院とそれぞれ研
究教育交流協定を結んでいる。
このうち,パジャジャラン大学との関係では,協定締結当初は,教員間の研究交流があ
り,文学科が客員研究員を受け入れたことがあるが,近年は教員を派遣するような交流事
業はない。
学生の研修は,1999(平成 11)年度から商経学科の専門科目「異文化体験」として始ま
り,毎年 10 名前後の学生が参加している。後に文学科英語英文学専攻も専攻の専門科目と
して位置づけた。ただし,2009(平成 21)年度まで実際に参加した英語英文学専攻の学生
はいない。
ハワイ大学コミュニティカレッジス,南京農業大学国際教育学院には,協定に基づき毎
年語学研修のための学生を派遣している。時期は夏休み後半,期間はおおむね2週間で,
正規の授業科目「異文化コミュニケーション」として位置づけられ,学生に生きた語学実
践の場を提供している。カピオラニ・コミュニティカレッジでの英語研修は英語英文学専
攻の1年生を中心に商経学科生活科学科の学生も含めて毎年 30~40 人が参加し,南京農業
大学での中国語研修は日本語日本文学専攻の1年生を中心に商経学科の学生も含めて毎年
10 人前後が参加している。なお,英語英文学専攻には 2008(平成 20)年度まで中国語の科
目がなかったため,中国語研修には参加できなかった。
また,南京農業大学からは 2005(平成 17)年7月に2週間にわたり日本語・日本文化研
修の学生を受け入れ,日本語日本文学専攻の学生を中心として学生同士の交流が図られた。
この経験は,同年8月下旬からの本学学生の南京農業大学での語学研修にも生かされ,大
学間,学生間の交流が促進された。南京農業大学とは,2005(平成 17)年には交換留学協
定を締結し,県立短大からは 2006(平成 18)年度後期以降,文学科日本語日本文学専攻と
商経学科の学生を派遣し,南京農業大学からは 2006(平成 18)年度以降,毎年3~5名を
本学日本語日本文学専攻に受け入れている。
このほか,国際交流協定ではないが,米国のウィスコンシン州立大学リバーフォールズ
校とは推薦編入協定を結んでおり,ほぼ毎年,英語英文学専攻の卒業生を中心に同校の3
年次に編入している。すでに推薦編入者はのべ 20 人を超え,卒業後米国で活躍している学
生もいる。
94
また,ドイツのベルリン工科経済大学とも交流協定,推薦編入協定を結んでいる。本学
からの編入実績はまだないが, 2009(平成 21)年4月には,ベルリン工科経済大学から3
人の教授を迎え,学内で講演会が開催された。広く一般に公開された講演会であったが,
商経学科を中心に学生の聴講もあった。
【点検・評価】
上述のように,学生にとって国際交流協定は,単なる語学研修だけでなく,協定校の学
生との交流を通じて真の異文化理解,異文化交流を体験するまたとない機会である。海外
研修に参加できなかった学生も,交換留学生との交流を通じて,異文化交流の機会を得て
いる。
中国からの交換留学生は日本語日本文学専攻以外の学生には余り関係がないと思われが
ちだが,サークル活動や県大祭に参加したりして,他学科専攻の学生とも交流を深めてい
る。2006(平成 18)年度後期の場合,中国語に興味を持った英語英文学専攻の学生と交換
留学生の間で,相互に英語と中国語を教え合う自主講座を開くなどした。自主講座の開催
はその後行われていないが,学生自治会のおはら祭り前夜祭参加にも加わり,鹿児島の文
化に触れるなど,学生間の自主的な交流活動が盛んである。これら交換留学生との交流を
通じて,留学生も日本人学生も,相互の異文化理解のための課題を発見し解決に取り組ん
でおり,その教育効果は計り知れない。
2008(平成 20)年度はハワイ研修については大きな変化はなかったが,中国研修は日本
で起こった中国製冷凍餃子の中毒事件や,中国での鳥インフルエンザ発生のニュースの影
響か,参加者が大きく減少し,5名のみであった。インドネシア研修については,テロ事
件の発生など安全面で大きな危惧があったためにやむを得ず研修を中止した。2009(平成
21)年度は,インドネシア研修を再開したが,参加者は4名と少ない。中国研修も参加者
は伸び悩み,5名であった。
それぞれ2名の引率教員のうち1名は単位認定者として英語担当教員,中国語担当教員
が当たっているが,そのため,一部教員に負担が偏っているという問題点がある。加えて,
最近の鹿児島県の財政難の影響で,引率教員の出張旅費の減額が行われ,引率者決定がい
っそう難しくなってきている。
【将来の改善策】
引率教員の出張旅費の確保と,単位認定者以外の引率教員決定のシステム整備を早急に
行い,一部の教員のみに負担が偏らないようにする。
国際交流委員会を中心に,交流による効果と負担や費用を考慮し,継続や拡充(協定校
から本学へのショートステイなど)の可能性を検討する。
95
4.学位授与
(a) 学位授与に関する基準および手続き
【現状の説明】
鹿児島県立短期大学の学位授与に関する基準は,「鹿児島県立短期大学学則」第6章「卒
業の要件等」の第 26 条から第 28 条に規定されている。すなわち,学則別表第1,第2に
定める所定の単位 62 単位を修得の上,第一部では修業年限である2年以上,第二部では修
業年限である3年以上在学することが必要である。
上記の基準で,3月の教授会で卒業判定を行い,卒業が認定される。
卒業が認定された者は卒業式で学長から卒業証書と共に文学科では短期大学士(文学),
生活科学科では短期大学士(生活科学),第一部・第二部商経学科では短期大学士(商経学)
の学位記が授与される。
休学,単位不足等の理由で在学期間が半年以上延びた者については,9月末卒業も可能
である。この場合は,本学では9月教授会を行っていないため,10 月教授会で卒業判定を
行い,9月末にさかのぼっての卒業としている。
【点検・評価】
本学の学位授与基準および手続きは,短期大学設置基準の定めるところに基づき,本学
学則で規定されており現状で特に問題は無いと考える。
【将来の改善策】
今後も設置基準等の変更に注意し,適切に学位授与が行えるようにしていく。
96
第4章
学生の受け入れ
目標
県立短大の教育理念,各学科・専攻の教育目標を達成するには,学生の受け入れ段階で
適切な入学者選抜を行う必要がある。
そのためには学科間の連携を取りつつ,全学的な組織で入学者選抜に取り組まなければ
ならない。
入学選抜において,特に配慮しなければならないことは以下の4点である。
①
県立短大の教育理念,各学科・専攻の教育目標に沿ったわかりやすいアドミッション・
ポリシーを作成し周知する。
② 公平で透明性の高い入学者選抜方法とする。
③ 入学者が,中等教育から短大での高等教育へスムーズに移行できるよう,高校との連
携も含め,適切に配慮する。
④
教育効果を上げるため,学生収容定員と在籍学生数の適正化を図る。
97
1.学生の受け入れ方針および受け入れ方法
(a) 入学者受け入れ方針等
【現状の説明】
本学の各学科・専攻の入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー)は,基本的に
は,各学科会議で原案や修正案が作られ,それを基に入試委員会で検討し決定している。
各学科・専攻は,入学者選抜方法や教育課程を検討・実施する母体でもあるので,アドミ
ッション・ポリシーの原案や修正案を作る際には,時々の状況を踏まえながら,入学者選
抜方法や教育課程との関連付けも行っている。
2006(平成 18)年 12 月に本学の教育理念・目標の一部改正を行い「課題探求・問題解決能
力の育成」を本学の教育理念として新たにかかげた。それを受けて各学科・専攻でも教育
目標を見直すとともに,入学者受け入れ方針も以下のように改正された。
文学科
〔日本語日本文学専攻〕
1
日本語の歴史的変遷や方言など言語に興味・関心のある人
2
日本の古典文学や近・現代文学に興味・関心のある人
3
中国の文学や中国語に興味・関心のある人
4
日本語教育を通した国際交流活動に興味・関心のある人
5
これまでの努力と経験を生かして,日本語や日本文学の勉学をがんばろうと思ってい
る人
〔英語英文学専攻〕
1
英語の運用能力を高めたい人
2
英米文学,英語学,英語圏文化の学習に興味・関心のある人
3
国際交流にかかわる活動に,英語力を生かして積極的に参加したい人
4
本学の編入学協定制度を通して,海外の大学に留学したい人
5
中学校教諭二種免許状(英語)を取得して,英語にかかわる仕事につこうと考えてい
る人
生活科学科
〔食物栄養専攻〕
1
食生活や健康と運動に関して幅広い関心を持つ人
2
「食生活を科学する」ということに興味を持ち,自ら学習し追求する意欲のある人
3
楽しい食事を創造するための調理や食品加工に興味・関心のある人
4
将来栄養士として人々の健康づくり,栄養改善に貢献しようという意欲のある人
98
〔生活科学専攻〕
1
身の回りにある「モノ」の成り立ちやデザインに興味があり,実践的に学びたい人
2
衣生活や住生活の,歴史や現在のあり方に興味・関心のある人
3
くらしと環境問題など,生活環境に関心のある人
4
消費者問題,福祉,人間関係など,人を取り巻く社会的な環境に興味・関心のある人
5
中学校教諭二種免許状(家庭)や住居・デザイン関連の資格取得に関心のある人
第一部商経学科
〔経済専攻〕
1
地域社会で生起する社会的な動向に興味や関心をもつ人
2
日々世界的規模で変動する経済現象を理論的に裏付けながら理解しようとする人
3
経済活動をはじめとするさまざまな社会参加の形態に関心をもつ人
〔経営情報専攻〕
1
IT活用の技能習得を目指す人
2
会計処理の技能を習得しようとする人
3
企業の活動をその実際的な形から理解しようとする人
第二部商経学科
1
地域社会で生起する社会的な動向に興味や関心をもつ人
2
会計処理とIT活用の技能習得を目指す人
3
働きながら社会に触れ,体験したことを大学で理論的に再確認してみようとする人
決定された受け入れ方針は,アドミッション・ポリシーとして『大学案内』『募集要項』
やホームページ上に掲載されている。
受け入れ方針は,毎年3月から4月にかけての『大学案内』の作成時に各学科・専攻で
ある程度点検され,6月,7月の『学生募集要項』作成時に正式に入試委員会で検討され
ている。
【点検・評価】
2008(平成 20)年度の本学の教育理念,学科の教育目標の改正と同時に,各学科・専攻
のアドミッション・ポリシーをそれら教育理念・教育目標に沿った形に見直しを行った結
果,教育理念・目標にいっそう対応した学生の受け入れが可能となった。
また,各学科・専攻が主体となって入学者受け入れ方針を作ることで,学科・専攻の教
育方針や実際の教育内容を反映しやすくなっている。
一方,各学科・専攻で作った入学者受け入れ方針修正案をオーソライズする手続きは6
月,7月だが,実際には前年度の3月に大学案内の編集が始まり,4月末には原稿ができ
99
あがるため,大学案内に記載したアドミッション・ポリシーと大きく変更することは時期
的に不可能である。
また,2009(平成 21)年3月 31 日付で文部科学省高等教育局大学振興課長から「平成
23 年度大学入学者選抜実施要領の変更予定について」との通知が出されているため,それ
に合わせて入学者受け入れ方針を明確化する必要がある。
【将来の改善策】
2011(平成 23)年度の,入学者受け入れ方針の大幅な変更を機に,毎年の入学者受け入
れ方針の見直しの時期を,大学案内編集に間に合うように変更する。
各学科・専攻の教育方針や教育内容をわかりやすさ,全体の統一性といった面で引き続
き入試委員会で検討を続けたい。
(b) 入学者選抜の仕組み
【現状の説明】
本学の入学者選抜は主として第一部推薦入学選考,第二部特別推薦入学選考,大学セン
ター試験併用の一般入学者選抜試験からなる。そのほかに商経学科社会人入学者選考,第
二部有職者特別入学,私費外国人留学生選考試験があり,それぞれ若干名を選考している。
これら全ての入学者選抜は学生部長が入試統括者となり,その下で作業が行われる。
入学者選抜に当たっては,当該年度の学科・専攻別,選抜別募集人員,各選抜の出願期
間,試験日および合格発表日を定める「入学者選抜要項概要」,選抜ごとに対象者,出願書
類等,学力検査または選考方法の内容等を定めた「各選抜の概要」各選抜の当日の具体的
な実施方法を定めた「実施要項」と各種申し合わせ事項を教授会で承認,決定し公正で円
滑な選抜ができるようにしている。
入学者選抜の概要は,入試委員会で検討,提案し,教授会で審議・決定している。入試
委員会は,3学科の代表各2名と学生部長の7名で構成されている。入試委員会では,毎年
4月に前年度の入学者選抜要項およびそれに付随する実施要項,申し合わせ事項,時間割
案を各学科に持ち帰り,変更・改善点がないかを検討する。各学科の入試委員は,学科で
検討された入学者選抜要項等を5月入試委員会に伝える。入試委員会は各学科から提出さ
れた案をもとに,全学的な統一に配慮しつつ当年度の本学の入学者選抜試験として妥当な
原案をまとめ,それを学科会議に返す。このような各学科会議と入試委員会の審議を経てま
とめられたものが,6月から7月にかけて入試委員会から教授会に提案される。遅くとも
7月の教授会で当年度の入学者選抜要項概要等は承認され,それらに基づいて9月までに
学生募集要項を作成する。
一方,4月中には各作業部会の構成員が学科・専攻ごとに選出される。主な作業部会は
入試問題作成に携わる出題・採点者部会,入試問題の校正作業に従事する校正部会である。
推薦・社会人入学の場合はこれらとは別に学科ごとに推薦・社会人等入学選考委員会委員
100
が選出される。
校正部会は前年度の反省を基に当年度の入試問題作成方針と作成のポイントを決定する。
学生部長は出題者全体会議を招集し,校正部会の決定した入試問題作成方針に基づいて,
その年の入試問題作成を開始する。
なお,私費外国人留学生選考試験を除く入学者選抜試験の当日は入試本部が設置され,
学長を本部長,学生部長を統括責任者として入試当日の情報の集中化と不測の事態への迅
速にして適切な対応を図っている。私費留学生選抜試験は,受験者が極めて少数で,志望
する学科・専攻も限られているため,入試本部は設置せず,当該学科・専攻で実施してい
る。
【点検・評価】
入学者選抜試験実施体制については,各学科会議でも入試委員会でも相当の時間をかけ
て検討している。選抜試験の準備作業も,出題者の全体会議を開いて意思の統一を図り,入
試問題の校正も各学科から選出された6人の委員で行うなど,公正さと透明性の確保には
大学として最大限に留意して実施している。
一方,本学の第一部一般選抜は大学入試センター試験を併用しているため,受験生はセ
ンター試験の実施方法に慣れている。本学でもセンター試験導入時にセンター試験実施要
領に倣って,試験当日の実施要領を作成したが,会場や試験時間割などの条件の違いから
センター試験実施要領と異なるところもある。これに対して,一昨年,2007(平成 19)年,
昨年 2008(平成 20)年と受験者がセンター試験との違いにとまどう場面が見受けられ,試
験の円滑な実施に支障を来たす恐れが出るようになっている。
また,本学の入学者選抜試験はそれぞれの経緯で導入されたために,選抜の実施体制な
ども互いに異なるところがあった。このため,入試委員会では,その全体をまとめ,統一
を図るべく 2006(平成 18)年度から 2007(平成 19)年度にかけて,入学者選考規程の作
成に着手したが,他の学内諸規定との整合性を取ることに手間取り,現在保留状態になっ
ている。
【将来の改善策】
公正さと透明性の確保には最大限に留意しているが,気の緩みなどの問題が生じないよ
う引き続き体制の点検を行って行きたい。2009(平成 21)年度中に試験実施要領を点検し,
大学センター試験実施要領と合わせられる部分については合わせていく。
また,現在保留状態になっている入学者選考規程を,遅くとも 2011(平成 23)年度まで
には完成させる。
(c) 学生募集方法・入学者選抜方法
【現状の説明】
101
学生募集の周知の方法は以下のとおりである。
①『大学案内』・『学生募集要項』を作成する。
②ホームページに掲載する。
③大学見学会(オープンキャンパス)を開催する。
④鹿児島県内の高等学校進路指導担当者との入試連絡会を開催する。
⑤鹿児島県内の高等学校長との教育懇話会を開催する。
⑥民間の大学ガイダンスに参加する。
⑦高等学校への出張講義,高等学校からの短大訪問を利用する。
⑧高校訪問(現在は商経学科のみ)を行う。
⑨その他各種広報活動を行う。
特に第二部は,大学案内の外に第二部独自のリーフレットを作成し,商経学科教員が,鹿
児島市を中心に高校生の動向を得やすい高等学校を訪問して配布・説明し,周知を図って
いる。
学生募集の方法は,毎年の受験志望者数によって各学科会議や入試委員会で検討されて
いる。
入学者選抜方法は,以下のとおりである。(入学定員,志願者数,合格者数については基
礎データ表8を参照のこと。)
〔一般選抜試験〕
本学の一般選抜試験は,第一部では大学入試センター試験と本学独自の試験を総合して,
第二部では本学独自の試験のみで行われている。
第一部では大学入試センター試験が3教科3科目 600 点,これに本学独自の総合問題 200
点を総合するかたちで行われている。大学入試センター試験を利用したのは,本学の教員
では課することの難しい科目を試験科目として設定するためである。各学科・専攻が課し
ている教科目は下のとおりである。
<文学科>
日本語日本文学専攻
国語,地理歴史・公民から1科目,英語(リスニングは含まない。
)
英語英文学専攻
国語,地理歴史・公民から1科目,英語(リスニングを含む。
)
<生活科学科>
食物栄養専攻
国語,数学・理科から1科目,英語(リスニングを含む。
)
生活科学専攻
国語,数学・理科から1科目,英語(リスニングを含む。
)
102
<商経学科>
経済専攻
国語,地理歴史・公民・数学から1科目,英語(リスニングを含まない。
)
・ドイツ語・フ
ランス語・中国語・韓国語から1科目
経営情報専攻
国語,地理歴史・公民・数学から1科目,英語(リスニングを含まない。
)
・ドイツ語・フ
ランス語・中国語・韓国語から1科目
また,本学独自の試験は記述式中心の総合問題で,マークシート方式となっている大学
入試センター試験の弱点を補うよう工夫している。なお,第二部ではこの総合問題の成績
のみで選考が行われる。
この一般選抜試験では高等学校における学習の達成と本学各学科・専攻での学習の適性
を評価することになっている。従って,これが本学の入試制度の中心的な位置を占める。
募集人員は,第一部では入学定員の3分の2で文学科・生活科学科の4専攻がそれぞれ
20 名,商経学科の2専攻がそれぞれ 25 名となっている(商経学科については学科全体の入
学定員の3分の2となる)。第二部は,入学定員の半分で 30 名である。
〔推薦入学試験〕
本学の定めた基準により鹿児島県内の高等学校長が責任をもって推薦する者を受け入れ
る制度である。これには,本学の学科・専攻の教育内容に近い学科で学習している実業系
高等学校の生徒への配慮も含まれている。提出書類・小論文等・面接によって総合的に評
価される。この推薦入学試験は第一部で行われる。募集人員は,入学定員の3分1で,文
学科・生活科学科の4専攻と商経学科の経済専攻がそれぞれ 10 名,商経学科の経営情報専
攻が 15 名となっている(商経学科についての割合は一般選抜と同様)。
〔特別推薦入学試験〕
第二部の推薦入学制度である。推薦者は,本人を含む適切な人としている。出来るだけ
多様な学生を得たいとのことで,選考は,小論文・面接・提出書類によって行われる。募
集人員は,入学定員の半分の 30 名である。
〔社会人入学試験〕
本学第一部で学ぶ意欲をもつ社会人を一般選抜試験とは異なる入学試験によって受け入
れ,社会人に大学教育の門戸を開くもので,商経学科のみが導入している。社会人の範囲
は 22 歳以上の者であれば就業の有無を問わない。選考は,小論文・面接・提出書類によっ
て行われる。募集人員は,2専攻とも若干名である。
103
〔第二部有職者特別入学〕
2009(平成 21)年度入試から新たに設けられた選抜方法である。本学第二部を,その本
来的な目的である勤労者のための高等教育の場として広く門戸を開くことを目的としてい
る。有職者,就職内定者,過去に職に就いた者を対象に,書類(志望理由書・履歴書)と
面接の結果を総合判定の上,合格者を決定する。選考時期は,新年度の勤務状況がある程
度判明する三月上旬で,募集人員は若干名である。
〔私費外国人留学生選考試験〕
私費外国人留学生に門戸を開くことを目的としている。本学の定めた資格をもつ志願者
に小論文,面接等を課して,総合的に評価する。私費外国人留学生選考試験は,上記入学
試験とは別な日に行われる。
基礎学力は,一般選抜試験では主に大学入試センター試験によって,推薦入学試験では
調査書の評点によって評価している。学習意欲は,推薦入学試験・特別推薦入学試験・社
会人入学試験・私費外国人入学試験で重視され,面接や志望理由書などで評価している。
適性は,一般選抜試験では主に総合問題で,推薦入学試験・特別推薦入学試験・社会人入学
試験・私費外国人入学試験では小論文・面接・志望理由書などで評価している。
入学者選抜方法も毎年各学科会議や入試委員会で十分かどうか検討されている。一般選
抜試験を始めとする各試験の募集人員,試験科目の配点,合格者の得点状況等は,募集要項
やホームページに掲載しているほか,県内の高等学校の進路指導の教諭への説明会などで
も公表している。
本学の入学試験成績の開示制度は以下のとおりである。
開示の請求は,受験者本人に限っている。開示期間は5月から6月にかけての2ヶ月で
ある。請求の方法には,窓口での請求と郵送による請求の2つがある。開示内容は試験成
績と調査書である(ただし調査書については郵送での請求による開示はできない)。試験成
績は,個々の科目の得点と総合得点,それに総合得点による順位である。調査書は,「指導
上参考となる諸事項」および「備考」欄の記載を除いて開示している。
【点検・評価】
本学は県立の短期大学であり,教育理念にも地域への貢献をうたっている。そのため,
特に県内高校の進学希望者に正確な情報を伝えることができるように配慮しているが,県
外からの入学希望者,また特に第二部においては勤労者,社会人の入学希望者にも正確に
情報が伝わるよう,ホームページを利用した情報提供にも力を入れている。
①の大学案内の作成は,学内の広報部会が中心となって企画制作し,6月の進路指導担
当者との入試連絡会議で配付できるようにしている。その他オープンキャンパス,出張講
義などさまざまな場面で配付するものなので,本学の入学者選抜概要はもちろん,学科の
104
特色や教育内容がよくわかるように工夫している。編集作業はすべて学内教員が行ってい
るためその負担は大きい。また,県予算は印刷費を削減する方向にあるため,必要部数が
作成できるか不安がある。
②のホームページ掲載は,教授会で当年度の入学者選抜要項概要が承認されるとすぐに
載せるようにしている。県外からの受験希望者これを見て問い合わせたり募集要項の請求
をしたりすることも多い。
③のオープンキャンパスは,例年8月上旬,前期試験終了直後に開催している。県内の
高校の協力を得てあらかじめ参加希望者に申し込んでもらっているが,毎年当日参加の生
徒も多く,全体で 400 人以上が参加し盛況である。
④,⑤は下記の高大連携で詳述するが,公立私立合わせて 50 以上の県内高校の参加があ
り,高校側と直接入試に関する情報交換ができる貴重な機会となっている。
⑥⑦⑧も近年,年ごとに依頼が増えており,できるだけ多くの教員に出かけていっても
らうようにしている。特に,民間の大学ガイダンスは年ごとに開催件数が増えており,本
学へのブース参加依頼も増加している。2007(平成 19)年度までは基本的に教務課職員が
参加し,教員はせいぜい入試委員長が出かける程度であったが,学科の教育内容などの質
問が増えているため,2008(平成 20)年度からは各学科の教員にもできる限り参加するよ
う呼びかけている。これも高校側の本学入学への関心の高さを表している。
本学の入試選抜方法は,第一部においては一般選抜に大学入試センター試験を導入して
いるが,センター試験を受験しない生徒(たとえば専門高校の生徒)に対しては学習意欲
や高校でのさまざまな活動を評価して選抜する推薦選抜で対応し,さまざまな適性をもつ
生徒を広く受け入れている。また,商経学科だけではあるが社会人入学の制度も幅広い人
材を受け入れる制度となっている。
第二部では,学校推薦だけではなく,自己推薦や会社や家族の推薦も可能とする第二部
特別推薦の制度により,より幅広い人材を受け入れている。
第一部では一般選抜試験,推薦入学試験で一定の受験生が集まり,入学者も入学定員を
満たしてきた。
しかし,2004(平成 16)年度一般選抜からの大学入試センター試験の導入以来,受験生は
漸減している。現在は短大全体で見ればまだ実質倍率2倍以上を維持しているが,これか
らも高等学校を卒業する生徒数が年を追って減少するので,楽観はできない。特に第二部
は,近年商経学科教員の高等学校訪問が奏功して,受験生が徐々に増えてきていたが,
2007(平成 19)年度入学試験で思いがけず定員割れを起こしてしまった。
この状況を打開するための一案として新たに設けられたのが有職者特別入学の制度であ
る。この制度は,勤労者のための高等教育機関としての第二部の存在意義を生かしたもの
でもある。
また 2009(平成 21)年度一般入学者選抜では生活科学専攻の入学者がわずか1名ではあ
るが定員に不足してしまった。生活科学科では,推薦入学の募集人員や各校あたりの推薦
105
人員の見直しに取り組んでいる。
入学試験の成績開示請求は毎年 20 件前後だが,8割以上は本学の学生からの請求である。
【将来の改善策】
大学案内については,今後も現在の水準で必要部数を作成できるように予算を確保する。
ホームページの掲載,オープンキャンパスについても現在の水準を維持していく。
入試連絡会議,教育懇話会も高校側と協議しながら,今後も続けていく。
大学ガイダンスへの参加依頼は年ごとに増加しており,教職員の負担も大きくなってい
るが,本学への関心の表れでもあるので,第二部を中心に教員もできる限り同席して,情
報を提供していくようにする。
出張講義,短大訪問者に対するミニ講義も情報提供の機会として活用していく。
受験者の減少対策としては,2008(平成 20)年度から発足した入試情勢検討部会による
入試の分析を利用しながら,高校訪問も積極的に行い,選抜方法の改善を検討する。特に,
推薦入学の募集人員,各校あたりの推薦人員については 2009(平成 21)年度中に結論が出
せるように努力する。
(d) 入学者選抜における高・大の連携
【現状の説明】
本学第一部の推薦入学選考では,県内の高等学校を対象としている。ただし,指定校推
薦制度は実施していない。
本学では,上述したように鹿児島県内の高等学校の校長との教育懇話会,進路指導教諭
との入試連絡会議を毎年1回開いている。高等学校長との教育懇話会においては,本学の
教育の全体が話題として取り上げられるが,その中で入学試験についての質疑応答が行わ
れ,本学も入試情報の提供を行っている。進路指導教諭との入試連絡会議では,その年度
の入学試験についての質疑応答を行っている。推薦入学についての高等学校からの要望も
この時にあり,推薦入学で入学した学生についての高等学校からの質問などもこの時に出
される。
高等学校で開かれる進路説明会にも可能な限り教職員を派遣して,高校生に入試情報を
提供し,高等学校との連携を図っている。高校からの出張講義の依頼にも可能な限り応え
て,県立短大の教育内容について高校生に具体的に伝えている。また,8月に開いている
本学の大学見学会や随時に受け入れている高等学校のキャンパス訪問時にも入試情報を提
供している。
また,特筆すべき連携事業としては,県内五短期大学と県内の高等学校の進路指導連絡
協議会の共催で年1回開いている「鹿児島県短期大学の教育シンポジウム」がある。これ
は,毎年テーマを決めて,各短期大学から学生代表による短大で学んできたことの体験発
表と,各短期大学の教員と高校側の教員代表によるシンポジウムとで構成されている。高
106
校生や高校教諭に短大での学びについて知ってもらい,四年制大学や専門学校とも違う短
期大学の独自性をアピールするとともに,高等学校からは短期大学に要望することを質問
してもらう,入試に関する情報交換の場となっている。開催は五短期大学が1年ごとの持
ち回りで行い,事務局は高校側に置いている。2009(平成 21)年度は本学が当番校となっ
て8月 11 日に開催された。
第一部の推薦入学は現在募集人員を上回る応募者がある。
【点検・評価】
教育懇話会・入試連絡会議ともに多くの高等学校長・進路指導教諭が出席している。大
学見学会に参加する高校生,随時にキャンパス訪問をする高校生も少なくない。これらの
点から見ると,本学と県内の高等学校との連携は今のところ良好である。推薦入学試験を
受ける生徒の提出書類なども混乱なく出されるようになっている。
ただし,高等学校訪問を始めている第二部商経学科からは,入試連絡会議では高校生の
志望の変化などを十分に聞き出せていないのではないかという指摘もある。
【将来の改善策】
鹿児島県内の高等学校との連携は今のところ良好であるが,より効果的な関係のありよ
うについて今後も入試委員会等で模索していく。
2.学生収容定員と在籍学生数の適正化
(a) 定員管理
【現状の説明】
入学試験における合格者の歩留まりや学生の異動(休学,復学,留年,退学等)により,
入学者が入学定員を若干上下する場合がある。合格者の歩留まりについては,一般選抜試
験において各学科・専攻とも定員の 1.1 倍の確保を目標に正合格者を発表している。正合
格者の入学辞退がこれを上回った場合には,3月 31 日まで定員の 1.1 倍まで追加合格者を
出している。4月1日以降は,辞退者が出ても,追加合格の手続きをしない。これまでの
ところ,入学式で入学者が本学全体の収容定員を割ったことはない。
2009(平成 21)年度5月現在の状況は基礎データ表9のとおりである。
2008(平成 20)年度入試においては一般選抜での商経学科の志願者数が激増し,入学者数
も予想以上に多くなった。逆に,2009(平成 21)年度入試においては,文学科日本語日本文
学専攻の志願者数が 2006(平成 14)年以来最多となり,商経学科の志願者数が減少した。
その結果,本学全体の入学者数は入学定員のほぼ 1.1 倍以内におさまった。ただし,生活
科学科生活科学専攻では1名ではあるが定員を充足できなかった(再入学の学生が1名あ
ったため,在籍者数では定員を充足している。)。一方,第二部の定員割れには歯止めがか
かった。
107
【点検・評価】
これまでのところ,どの学科・専攻でも入学式時点では入学者がほぼ定員を充足してい
る。一方,本学では特に文学科で四年制大学合格を理由とする入学辞退者が多いので,定
員よりもかなり多めに合格者を出している。そのため,予測よりも辞退者が少ないと,収
容定員の1割を超える入学者が出てしまうことがある。本学は小規模な短大で入学定員も
各専攻で 30 人から 45 人と少ないので,入学予定者数よりも2,3人入学者が多ければ,
簡単に定員の 1.2~1.3 倍の入学者数となってしまう。
【将来の改善策】
年度により入学者数が増減して不安定であることについては,推薦入学の定員を増やす
ことで,確実に見込める入学者数の割合を増やし,間接的に一般選抜試験の合格者の辞退
者数の年度ごとの増減の影響を少なくできないか,検討する。
なお,食物栄養専攻については,指定栄養士養成施設として,定員を遵守する。
これとは別に,18 歳人口の減少に伴う,将来的な定員確保の困難への対応を入試委員会
だけでなく,自己評価・将来構想委員会等で協議する。
(b)退学者
【現状の説明】
過去3年分の退学者数については基礎データ表 11 を参照のこと。
近年の各学科・専攻ごとの退学者数と退学率は,第一部では,2006(平成 18)年度に2名
の退学者があったが,2007(平成 19)年度は8名,2008(平成 20)年度は5名と年によって増
減がある。第二部では,この3年間,毎年 10 名前後の退学者が出ている。第一部では,文
学科がこの3年間の合計が9名と最も多い。しかし文学科の退学者数の中には,入学手続
きをしたものの,実際は入学しなかった者も含んでおり,たとえば 2007(平成 19)年の文
学科の退学者4人のうち半数以上がそれである。
それに対して第二部では,休学したまま復学せずに退学する者の割合が多い。
第一部第二部を合わせた総在学者数に対する退学者数の割合は過去3年間で最も多い
2007(平成 19)年度でも,3%程度であり,概ね2%前後で推移している。
退学は,所定の様式の退学願に保証人連署の上必要事項を記入して教務課に届けること
になっている。その際,必ずゼミ担当などの指導教員が本人と直接面談して退学の意志を
確認しなくてはならない。事情があって本人が来学できない場合は電話による確認で面談
に代えることもあるが,ともかく本人と直接話すことが原則である。指導教員は本人の意
志を確認し退学願の理由に納得すれば,退学願いを認め,退学願に押印する。本人の退学
の意志,理由が曖昧な場合は,休学してもう一度考え直すように指導する。本人に勉学の
意志がありながら,経済的な理由,職場環境の悪化などを理由とする場合も,いったん休
学して教職員と一緒に対策を考えることもある。退学の承認は,教授会で行われる。
108
【点検・評価】
第一部は四年制大学への入学などの進路変更が殆どであり,ある程度はやむを得ない。
第二部の場合は,転勤・就職など職場の環境によるものが多いが,a.入学後の人間関係形
成の不十分さによる学内での孤立感と就学意欲の減退,b.長時間労働や貧困から来る修学
意欲の喪失と見られる例もあり,何らかの対策が望まれる。特に,最近は世界的な景気悪
化,雇用の不安定から経済的な理由で勉学の継続を断念する学生が出てきている。
【将来の改善策】
就学意欲の減退,学内での孤立感については,指導教員が対応するだけでなく,学生相
談室や保健室の利用を勧める。
第一部学生については,a.現在全額免除しかない授業料免除を一部半額免除にして対象
者を拡大する,b.奨学金獲得の強化,c.これを機動的に運用する仕組みを模索することな
どが考えられる。
第二部学生については,a.2009(平成 21)年度から導入された1年前期の基礎演習が新
入学時のキャンパスへの定着にどの程度効果があったかを商経学科を中心に検証し,必要
があれば改善する,b.第一部と同じく授業料減免の対象の拡大,c.学費免除や奨学金を機
動的に運用する仕組みを検討することなどが考えられる。
特に,授業料減免制度の改善については,設置者の県と協議し,遅くとも 2010(平成 22)
年度中に結論を出す。
109
110
第5章
学生生活
目標
① 学生の本分である学習・研究を行う前提となる,心身ともに健康で短大への帰属意識
ある充実した学生生活を確立できるようにする。
② 学生が短大での学びを生かし,就職,編入学など希望する進路に進めるようにする。
③ 学生が安心して短大での勉学を継続できるようにする。
111
(a) 心身の健康保持への支援
【現状の説明】
本学では学生の心身の健康保持・増進および安全・衛生に配慮する組織として,学生部
長のもと,保健室・学生相談室を設けている。また,学生委員会と学生課の主催で,学生
の健康な心身保持のために,講演会も開催されている。
保健室と学生相談室は連携して相互の情報交換を行い,必要に応じて学生部や学生部長
に報告している。
保健室は,学生および教職員に対する健康診断,保健指導,相談(心の病を含む。)など
の健康保持・増進業務を担っている。保健室には,現在,昼間勤務の教務補助員(養護教
諭資格)が配置されている。勤務時間は9時 30 分から 12 時および 13 時から 17 時である。
職員定員・配置などの事情から,第二部の授業時間である 18 時以降の保健室は担当者不在
状態である。
年間を通じての定期的な業務としては,学生課と共に例年4月に定期健康診断を実施し,
学生個人の健康をチェックしている。要検査,定期管理が必要な学生が出た場合には,学
外の診療所や病院を紹介したりして対処している。また,月に2回,校医(現在は心療内
科医)による健康相談を開催し,希望者については,診察や指導を行っている。
日常の業務としては,上記健康診断の事後処理および健康相談,身体測定,怪我や病気
の応急手当や静養といったことがある。大学や学生自治会の行事には,不測の事態に備え,
救急箱を貸し出したり,救護体制を敷いたりしている。精密な検査が必要と見られる場合
は,病院などを紹介するとともに,保護者などへの連絡も行っている。
学生・教職員の保健室使用状況については,保健室担当職員が個人情報をはずした形で
概要を保健室利用日誌に記入し,学生部長,学生課に報告している。
保健室での相談件数は基礎データ表 12 に示すとおりである。
また,上記の学生を対象とした講演会の講師は,現在保健室勤務の職員が務めている。
学生相談室は,学生の精神衛生,健康,学業,経済,就職,家庭,人生などに関する個
人相談に応じ,助言・指導を行うことを業務としている。学生相談は,学生相談室もしく
は心理学研究室で実施され,事務は学生課が所管している。現在,室長は,心理学指導教
員が務めている。室長は,常置の相談員の役を務めると共に,保健室で受けた心身の健康
相談の報告を受け,承認や指示を与えるという役割も担っている。
相談を希望する学生は,所定の場所に常置してある相談申込書に必要事項を記入して,
相談ポストに投函することになっている。常置の相談員である室長が他の教職員が対応し
た方が適当と判断する場合は,学長の委嘱によって,相談事案への専門の教職員が相談員
となり,相談申し込みの学生と面接し,助言・指導を行うことになっている。
学生相談室長は,年に2回(前期・後期),学生相談室での相談状況を,月ごとの延べ人
数と「学業」
「対人関係」など抽象化した相談内容の形で学生部長に報告している。
112
相談件数は年によって変動はあるが延べ数で年間 30 件から 60 件の相談を受けている。
留年は,本学では学年制を強く取っていないために,卒業年次の遅れ(卒業延期)とい
う形で現れる。具体的な数字については,第3章の2.教育方法(a)履修指導の項に各
学科・専攻別に載せている。
留年者や成績不振者の指導は,基本的にゼミ担当教員などその学生の指導教員が当たっ
ている。学科・専攻で話題になって,支援方法が議論され,学科長や教務委員・学生委員
が助言することもある。本人が希望すれば,学生相談室長が対応することもあるが,本人
からの希望はそれ程多くなく,指導教員などの助言で学生相談室を利用することが殆どで
ある。第二部の場合,教務課の第二部専門員が当たることもある。
セクシュアル・ハラスメントの予防および紛争解決のために,教授会はこのことに関す
る規程を定め,学長直属の機関として人権委員会を設置している。人権委員会は,教授会
で選出された男女2人ずつの委員で構成される。
委員会は,予防のための啓発を行う一方,学生等のために相談窓口を設置している。学
生等からの相談・苦情は人権委員が受け付ける。相談・苦情が寄せられた場合,人権委員
会は直ちに相談員を決定する。その相談員の1人は,相談・苦情を提起した者と同性の人
権委員,他の1人は人権委員会が委嘱する女性カウンセラーとなっている。
アカデミック・ハラスメント等については,現在,人権委員会が規程等を作成しようと
しているところである。
その他の人権問題,特に学生間の問題については,学生相談室の相談ポストや人権委員
会の相談窓口に寄せられる可能性があるが,こちらは必要があれば学生委員会を経て教授
会で審議されることになる。
セクシュアル・ハラスメント関係規程や学生相談ポストなどは『学生便覧』に記載し,
入学時のオリエンテーションで説明して,周知を図っている。セクシュアル・ハラスメン
トについては,ポスター・パンフレットも作成して,注意を喚起している。
学生生活に関する満足度アンケートは,2007(平成 19)年度前期末に第一部2年生,第二
部3年生を対象に初めて実施した。アンケートの項目は,学生部長と学生委員長が原案を
作成し,自己評価委員会でそれを検討して決定した。その後,2008(平成 20)年度は後期
にFD委員会が主体となって実施している。
113
表5-1 2007(平成 19)年度学生生活に関する満足度アンケート (5点満点)
学科
教員
職員
情報
国際
キャ
専攻
外国語 教養
専攻
対応
対応
科目
異文化
リア
日文
3.72
3.47
3.47
3.03
3.31
3.28
3.47
3.50
英文
3.96
3.59
3.67
3.52
3.81
3.56
3.93
3.81
食栄
4.10
3.40
3.47
3.20
3.03
3.53
3.33
3.33
生活
4.58
4.45
4.09
3.79
3.30
3.64
3.39
3.94
経済
4.35
4.18
3.76
4.18
3.68
3.82
4.00
4.06
経情
4.30
4.09
3.33
3.97
3.42
3.52
3.55
3.42
第二部
4.39
4.49
4.61
4.28
3.58
3.40
3.39
3.80
全体
専攻
日文
英文
食栄
生活
経済
経情
第二部
全体
4.20
教育施設
3.16
3.67
3.23
3.64
3.65
3.21
3.73
3.47
3.95
福利施設
3.16
3.52
3.17
3.41
3.53
3.12
3.49
3.34
3.77
3.71
進路支援
3.58
3.59
3.47
3.94
4.03
3.79
3.73
3.73
3.45
課外活動
3.06
3.19
3.40
3.70
3.65
3.39
3.41
3.40
3.53
3.58
3.70
教育施設
福利施設
進路支援
課外活動
大学満足
3.83
3.68
3.26
4.24
3.75
3.79
3.69
3.76
3.92
3.71
3.39
4.24
3.79
3.81
3.60
3.78
3.97
3.89
3.81
4.38
4.30
4.02
3.62
4.01
3.75
3.86
3.74
4.24
3.91
3.83
3.60
3.84
4.78
4.39
4.48
4.85
4.64
4.69
4.57
4.64
114
3.44
3.70
3.63
4.42
4.12
3.88
4.07
3.90
大学満足
3.72
4.00
4.10
4.67
4.38
4.36
4.51
4.25
表5-2 2008(平成 20)年度学生生活に関する満足度アンケート (5点満点)
学科
教員
職員
情報
国際
キャ
専攻
外国語 教養
専攻
対応
対応
科目
異文化
リア
日文
4.58
4.39
3.89
3.61
3.81
3.72
3.89
4.17
英文
4.57
4.29
4.14
3.79
4.07
3.96
4.11
3.86
食栄
4.45
4.10
4.26
3.74
3.16
3.65
3.77
3.94
生活
4.82
4.56
4.59
4.18
3.97
4.09
4.41
4.47
経済
4.57
4.51
4.43
4.28
3.91
4.02
3.74
4.04
経情
4.52
4.35
4.10
4.00
3.81
3.90
3.75
4.10
第二部
4.36
4.26
4.45
3.86
3.33
3.38
3.69
3.90
全体
4.55
4.36
4.28
3.95
3.73
3.82
3.88
4.07
専攻
日文
英文
食栄
生活
経済
経情
第二部
全体
専門
専門
4.44
4.32
4.00
4.76
4.21
4.19
3.88
4.24
本学では学生自治会が年に2回総会を行い,学生の大学に対する要望をまとめてきた。
それらの要望は学生課を通して教授会との窓口である二者連絡協議会で協議され,教授会
に伝えられていた。二者連絡協議会は教授会側と学生自治会側と同数の委員を以て構成し,
大学の自治の原則に基づき対等な立場で意見を交換する場である。二者連絡協議会につい
ての規程は学生自治会と協議の上,制定し,『学生便覧』に掲載されている。ただし,開催
は年1回となっていたが,近年は開催されていない。
【点検・評価】
学生相談室や保健室は,第一部については,現在の体制で可能な限り活動し,問題なく
機能している。第二部に対しては,特に保健室勤務者が非常勤の教務補助員(養護教諭資
格)なので,第二部担当の一般職員が対応するしかないという状況にある。これについて
は,保健室勤務の教務補助員が中心となって,事故や急病の際の緊急対応マニュアルを作
成し,担当者不在の場合にも迅速に学生を保護できるようにした。学生相談室は,室長が
教員兼任であるため,相談者と相談日時を打ち合わせて適切に対応している。
本学の学生相談室や保健室は,心理学指導教員と教務補助員が緊密に連絡を取り合い,
校医とも連絡を取って,非常に少ないスタッフで,最大限の力が発揮できるよう運営され
ている。また,相談内容については担当者以外に流出しないよう,個人情報の確保に十分
配慮した体制をとっているのが特徴である。
現在の人権委員会は,対象がセクシュアル・ハラスメントに限られている。アカデミッ
ク・ハラスメント等については,人権委員会が規程案等を作成し,2009(平成 21)年度中
に教授会決定する予定である。
学生生活満足度アンケートは,2007(平成 19)年度に初めて実施し,集計はしたものの,
まとまった分析・報告は行っていないのでたので,その有効性を含めて活用法などを分析
する必要がある。
【将来の改善策】
保健室と学生相談室の連携体制を維持する。
夜間の保健室体制を整備する。現在設置者の財政状況が厳しく,人員増は勿論のこと,
施設の改善もなかなか難しいという状況にあるが,学生生活満足度アンケートなどを活用
して調査を重ねながら,設置者とも折衝し,いくらかずつでも改善を図って行きたい。
(b) 進路選択支援
【現状の把握】
学生の進路選択に関わる支援は,学生委員会と学生課が連携して行っている。
学生委員会は,学生の進路支援の方法を検討する他,企業への学校推薦選考,推薦編入
学の選考にも当たり,学生の進路状況を各学科に報告する任務も負っている。各学科に伝
115
えられた学生の進路状況は,指導教員が把握して,学生を支援することになっている。
学生課は,学生の進路状況を常時把握して,新たな支援方法を学生委員会に提案するほ
か,同課職員は学内推薦選考部会員も務め,マナー指導,面接指導・履歴書添削・個別面
談などの具体的指導にも当たっている。
学生相談室には,学生の進路選択に資するため,企業から寄せられたパンフレット,『鹿
児島県企業年鑑』や公務員・教員採用試験関係の資料,四年制大学への編入学に関する資
料,専門学校の受験資料などが置かれていて,学生によく利用されている。
進路選択支援のうち,カリキュラムに位置づけられた授業科目については第3章で詳述
した。
授業以外の第一部の学生への就職支援のスケジュールは,ほぼ次のようになっている。
表5-3
就職支援のスケジュール
時 期
一
年
次
11月
説明会・模擬試験等
備
考
公務員・教員受験説明会
編入学受験説明会
2月
就職活動説明会
先輩からのアドバイス
就職のしおり配布・求職票記入
キャリアデザイン第4期分
進路状況保護者説明会
3月
学内企業ガイダンス
4月
第1回公務員模試
企業の担当者から生の声を聞く
面接対策セミナー
第1回個別面談
二
5月
進路選択の指導・助言
第2回公務員模試
教員採用模試
年
次
7月
第2回個別面談
未内定者対象
第3回公務員模試
第3回個別面談
未内定者対象
10月
第4回個別面談
未内定者対象
12月
第5回個別面談
未内定者対象
1月
ビジネスマナー講座
専門講師から社会人としての マ
ナーを学ぶ
これらの説明会,模擬試験以外に,2年次の4月から(場合によっては1年次2,3月
から),学生課職員による,マナー指導(お辞儀や挨拶の指導),面接指導(模擬面接を通
じて態度や言葉遣いを指導),履歴書添削など,就職試験,編入学試験に必要な基本的な指
導を,学生の申し込みに応じて随時行っている。また,ゼミの指導教員も随時学生からの
116
相談に応じている。
学生は,学生課や指導教員の支援を受けながら,就職試験に臨んで行く。
第二部は社会人のキャリア・アップの機関として長く機能して来ていたが,近年は社会
人の割合が激減し,第一部と同じく高校新卒者の入学が8割を超えるようになった。昼間
働いている者も,期限付きの職やアルバイトの学生が目立つようになった。このため,商
経学科に第二部の就職対策の教員を配置し,学生課職員が週に3回は 19 時過ぎまで残り,
できる限り第一部と同様の支援体制を整えるようにしている。
本学作成の『就職のしおり』は,準備編,活動編,資料編の三つの編からなり,最新の情報
を盛り込んだ進路案内書となっている。
編入学希望の学生への支援は,前記公務員・教員受験説明会に次いで,学生課で実績等
を中心にした説明会を開催している。その後は,指導教員が主に進路支援に当たっている。
試験前になると,学生課が希望に応じて一般的な面接指導を行っている。
就職・編入等の進路データは,毎月学生課で,「求人件数および求人数」・「専攻別就職先
等」・「地区別就職先」・「その他進学等の内訳」の4項に整理され,学生委員会や教授会に
報告されている。
【点検・評価】
1年次の前期末試験期間から夏季集中講義期間,冬休み直前,後期試験期間と年4回,
集中講義式で実施される「キャリアデザイン」,主に夏季休業中に実施される「企業研修」・
「社会活動」
,1年後期に入ると間もなく始まる学生課の就職指導という流れで,計画的に
学生の進路支援が行われているので,学生は混乱なく就職活動などに入っていると考えて
いる。
進路状況については,学生課が毎月の教授会で状況の報告を欠かすことなく行っている
ので,状況がよくつかめ,教員・事務職員がかなり積極的なきめ細かな指導をしているこ
ともあって,学生も自分の進路に関してまじめな取り組みをしている。こうした学内での
丁寧な取り組みと,これまでの本学の長い歴史の中で培われて来た卒業生に対する地域の
信頼感から高い就職率を維持して来ていると考えられる。なお,卒業生の就職先の 90%は
県内企業であり,編入学先も国公立大学が多い。
ただし,2008(平成 20)年後半からの世界的不況による影響で,県内企業の求人数が激
減しており,2009(平成 21)年度はこれまでにない就職難になるおそれがある。
第二部学生の就職状況は決して良くなかったが,上述した進路支援のための工夫・努力
が奏功して 2009(平成 21)年3月卒業の第二部学生は,就職希望者の 82%が就職すること
ができた。しかしながら,第一部学生にくらべると,まだまだ学生の就職意識が低く,そ
れをいかにして高めるかも一つの課題である。
また,短期大学であるということから男子学生向けの求人が少なく,こちらの進路支援
もなかなか効果が上がっていない。
117
【将来の改善策】
就職促進については,個別企業や業界団体等への働きかけなどを検討する。特に男子学
生の就職先開拓が急務である。また,第二部の就職希望学生の存在を企業や業界団体にア
ピールしていく。
第二部にも第一部と同様の「キャリアデザイン」を 2010(平成 22)年度から開設する。
編入への指導については,希望者の増大に対応して適切なあり方を検討する必要がある。
(c) 経済的支援
【現状の説明】
奨学金制度としては,日本学生支援機構によるものの他,公益法人等によるもの,県内
の市町村によるものなどがある。本学独自の奨学金制度は設定されていない。現在の各種
奨学金受給状況は基礎データ表 13 に示すとおりである。奨学金制度については,『学生便
覧』に記載している他,4月に特に日本学生支援機構の奨学金について学生課が説明会を
開いて,学生への周知を図っている。奨学生の推薦選考は,学生委員会で行っている。現
在のところ,奨学金の貸与を希望する学生のほぼ全員が推薦されている。
本学独自の経済的支援として,県の授業料徴収条例に基づく授業料減免の制度がある。
この制度は,生活保護法に規定する被保護世帯に属する者,経済的理由により授業料の納
入が著しく困難である者,天災その他不慮の災害を受け,授業料の納入が著しく困難にな
った者の授業料を減免する制度である。減免という表現になっているが,全額免除という
形で実施されている。範囲は,在学生の 100 分の5の範囲内でとなっている。また,減免
の期間は当該学期限りとなっている。この授業料減免の制度については,入学式後のオリ
エンテーションで学生・保護者に対して学生課が説明を行っている。そして,授業料の減
免を希望する学生は4月 15 日までに申請することになっている。減免の優先順位は,内規
によって,生活保護法第 10 条に規定する保護世帯,住民税が家族全員非課税である世帯,
住民税が均等割である世帯で母子・父子世帯等,その他となっている。なお,授業料減免
は,私費外国人留学生も対象としている。授業料減免者の決定も,授業料減免選考委員会
で慎重に審議して行われる。
学生と教職員が出資・運営する自主的相互組織の生活協同組合が大学会館内に売店と食
堂を設けている。これは,学生生活に必要なものを市販より廉価に供給しようと設立され
たもので,別組織ではあるが,学生への福利厚生,経済的支援の一環と位置づけている。
学生の多くがアルバイトを行っているが,本学に寄せられたアルバイトの情報は,学生
課が「アルバイト受付簿」に記載して,学生に縦覧させている。ただし,学生委員会で学
生のアルバイトとしては不適切と判断されたものについては記載していない。
【点検・評価】
2002(平成 14)年度までは授業料減免申請者は,在学生の 100 分5の枠内に収まっていた
118
が,2003 (平成 15)年度からはその枠を超えるようになった。また,天災その他の不慮の災
害を受け,授業料の納入が突然出来なくなった学生への対応が出来ない状況にあった。こ
のため,これまで1年ごとであった授業料減免申請を 2007(平成 19)年度から半期ごとに行
うこととした。
このことによって,後期分には学生の家庭のより新しい経済状況が反映され,また,集
中豪雨被害などにも対応出来るのではないかと考えている。
しかしながら経済状況,雇用状況の悪化のため,2009(平成 21)年度は授業料免除申請
者が前年度よりも更に増え,従来の授業料減免制度では困窮した学生すべてに応じられな
くなってきている。
【将来の改善策】
a.授業料減免枠を拡大し,授業料免除総額は現状の範囲内としつつ全額免除と半額免除
の二段階に分け,より多くの学生が減免制度を利用できるようにする。b.奨学金獲得の強
化。これらのうち,a.については,設置者と協議し,早ければ 2010(平成 22)年度前期か
ら,遅くとも 2011(平成 23)年度には実施できるようにする。
(d) 課外活動への支援
【現状の把握】
本学には,第一部の学生自治会と第二部の学生自治会があり,ほぼ全ての学生が加入し
ている。また,自治会役員が多いのも特徴である。第一部は 35 人,第二部は 14 人の役員
が自ら立候補して役員となっている。2つの自治会共に決議機関として総会,代議員会,
執行委員会,サークル部長会,クラス委員会を置いている。
総会は,年2回,5月と 12 月に開催されている。12 月には執行委員の改選が行われてい
る。執行委員が替わった時は,その都度学生課に報告することになっている。
第一部自治会と第二部自治会は協力して様々な行事を自主的に企画・運営し,活発な活
動が行われている。
まず4月には「新入生交換会」を県北部の薩摩川内少年自然の家で1泊2日の日程で行
っている。新入生の参加費はすべて自治会予算から出されている。2009(平成 21)年度は
150 人の新入生が参加し,レクリエーションや夕食のカレー作りを楽しみ,交流を深めた。
自治会活動の中心は何といっても 11 月に行われる本学の学園祭である
「県大祭」である。
体育館での仮装パーティーを行う前夜祭に始まり,ソフトボールやバレーボールを楽しむ
体育祭。さらに,専攻ごとに舞台発表を行う文化祭。フィナーレを飾るのは,芸能人や文
化人をメインゲストに迎え,バンド演奏やダンスその他,ゼミやサークルの模擬店が多数
出店する「学内開放」,この日は書道部や茶道部などの文化系サークルが活動発表を行った
り,第二部自治会による独自の第二部オープンキャンパスを開催したりするなど,学術発
表の場にもなっている。自治会役員は,この県大祭の準備のために毎日話し合いを重ね,
119
本番の裏方として祭りを支え成功に導くために自主的に活動している。
上記の自治会活動を支えるための学生関係の施設としては,サークル棟,大学会館,体
育館,運動場がある。
サークル棟は 22 室があり,第一部自治会,第二部自治会関係の部屋や自治会各部の部室
として活用されている。部屋の使用は,単年度ごとの更新である。サークル棟の運用の総
括責任者は学生部長となっている。サークル棟の使用については,『学生便覧』にその要領
が記載されていて,毎年度この要領に沿って運用されている。
大学会館は,学生自治会関係では,茶道部などの活動や会議室として活用されている。
大学会館の運用の総括責任者も学生部長となっている。運営については,運営委員会があ
るが,規程などが定まっているので,これに沿って運用されている。
体育館は,館内に演劇・合唱などに使用される演壇部とスポーツ部が使用しているフロ
アーを備えている他,サークル棟側の外に5つの部室とシャワー室を付置している。自治
会関係の体育館の使用は,自治会が使用許可申請をして行われている。体育館は,授業・
自治会活動・その他の団体の活動があるので,体育準備室の助手が使用時間の調整をして,
学生部長が許可している。
運動場には,グランドとテニスコートがあり,第二部の学生の課外活動などのために夜
間照明施設が付いている。
自治会のサークルには,顧問が付いている。顧問には本学教員が就き,職員,非常勤講
師などが指導にあたっている。
自治会活動への財政的支援は,本学在学生の保護者の組織である振興会と主に卒業生の
組織である同窓会によってなされている。振興会からの助成は,インターカレッジ参加・
サークル活動・県大祭に対してなされ,県大祭に対しては同窓会からも助成もある。自治
会の財政運営は,健全に行われている。
学生自治会と教授会とは,「学生自治活動についての申し合わせ」を取り結んでいて,こ
れに即して学生の自治活動が行われている。また,意見を交換し,相互の問題を協議する
機関として二者連絡協議会を設置している。
近年は,教務・予算関係の議題が多いが,予算関係の議題は,県の財政状況が厳しいた
めに解決が難しくなっている。開催は年1回であったが,ここ2年ほどは協議会を開催す
る程の議題がないということで,開催されていない。
【現状の分析・評価】
第一部・第二部の自治会ともに学生課と緊密に連絡を取り合っている。しかし,大学側
は,学生自治会の自発性を促して,基本的に見守る姿勢を取り続けている。他大学では,
教職員が指導して行っている新入生歓迎行事である「新入生交換会」も,完全な学生主催
で行われている。また,
「県大祭」についても学生自治会の創意工夫で行われている。学生
たちは自主的に毎年の課題を探求し自ら解決のための活動を行っているのである。これは,
120
毎年の学生自治会役員が,確実に次期役員に引き継ぎを行っている結果であり,学生同士
の課題探求・解決活動の実践の結果と言える。ただ,行事の日程の調整,外部との交渉な
ど学生自治会が困難な事態を抱えていると判断される場合は,学生部長や学生委員会を通
して,大学が適切な支援を行っている。
顧問によるサークル活動への支援は,顧問の熱意によって大きな差がある。また,他の
短期大学と同様に,本学のサークル活動も盛んという状況にはない。2007(平成 19)年度,
2008(平成 20)年度に行なった学生満足度アンケートにおいて,県立短大に入学したこと
の満足度については 5 段階評価で回答者全体の平均がそれぞれ 4.25,4.64 であるのに比し
て,課外活動の項の評価が 3.40,3.84 とそれ程高くないのは,その状況をよく反映してい
る(表5-1,5-2参照)。しかし,近年の学生のアルバイト状況や授業時間割の過密化
(第3章1(i)授業形態と単位の関係,2(c)授業運営と成績評価,等を参照),教職
員の時間的余裕の減少などから,現状ではこのようなところであろう。
【改善方策の検討】
学生の自主性を尊重しつつ,学生の意見を短大運営に反映できるよう,二者連絡協議会
を再開する。2010(平成 22)年度には開催できるよう,自治会側と調整する。
121
122
第6章
研究活動と研究環境
目標
教員は社会に寄与する研究を行い,質の高い教育へと反映するため,個人はもとより組
織的な活動を活性化することが必要である。短期大学の教員は学内外を問わず,競争と共
同により,研究成果をあげ,その成果を積極的に外部公表していかねばならない。特に本
学の公立短大という立場からは地域への貢献を考慮したものでなければならない。研究活
動を活性化するために,研究予算をはじめとした研究環境の整備が必要である。すなわち,
設置者だけなく外部からの資金調達を行い,それを効果的に活用する体制の整備が重要で
ある。予算面だけでなく,研究時間の確保,研究室・実験室の確保,学術雑誌発刊による
研究成果発表と多面的な取り組みが重要である。
123
1.研究活動
(a) 研究活動
【現状の説明】
教員の研究活動は年度末に本学地域研究所が発刊する雑誌「くろしお」の巻末に社会的
活動とともに記載されている。雑誌「くろしお」は学内はもとより,県内外の関連機関 150
カ所に配布され研究活動の公表を行っている。ただし,研究業績の質の検証については,
採用人事および昇任人事において選考委員会が行う場合を除き,組織的な取り組みは行わ
れていない。2008(平成 20)年度に全学的な組織として研究支援部会を設置したが,実質
的な活動は行われていない。
2004(平成 16)年4月から 2009(平成 21)年4月までの教員一人あたりの業績数(著書,
論文,学会発表等,その他の合計)は平均 10.7 件である(表6-1)
。つまり何らかの研
究成果を年平均約2件公表していることになる。
表6-1 教員1人あたりの研究活動の数(2004~2008 年度)
専攻\種別
著書
論文
学会発表等
その他
計
日本語日本文学
1.6
4.6
2.6
0.0
8.8
英語英文学
0.5
4.0
1.7
0.2
6.3
食物栄養
2.4
4.8
9.1
1.8
18.0
生活科学
1.1
4.3
3.1
0.3
8.8
経済
2.8
2.8
1.6
1.8
9.0
経営情報
1.3
4.2
5.7
0.2
11.3
第二部商経
1.2
7.2
1.0
0.6
10.0
全体
1.6
4.5
3.9
0.7
10.7
このほかに,生活科学科生活科学専攻でデザイン関連の教員が印刷物等のデザインを行
っており,3回の個展を開催している。
文学科教員(転出)が 2005(平成 17)年度に日本中国学会賞を,また,商経学科教員が
2007(平成 19)年度に東南アジア史学会賞をそれぞれ受賞している。
本学教員はそれぞれが関連する学会に所属しているが,通常の会員以外に役職等の活動
も行っている。
【点検・評価】
本学は文学科(主に人文科学系),生活科学科(主に自然科学系),商経学科(主に社会
科学系)と異なる分野から構成されており,さらに小規模の短期大学のため,同じ学科内
でも分野が重なることはあまりない。そのため,教員の研究活動も一概に比較はできない
が,その数だけを見ると学科・専攻によってばらつきがある。平均すると一人あたり年間
124
2点以上の研究成果を公表していることは評価できる(表6-1)。
2004(平成 16)年度から 2008(平成 20)年度までの5年間で研究成果発表が5件以下,
つまり年平均1件以下の教員は8名である。このうち2名は教員歴そのものが短期(1年
未満)である。他6名は教員歴が 10 年以上であり,研究成果は少ないといえる。一方で5
年間の研究成果発表が 15 件以上,つまり年平均3件以上の教員は7名であり,特に活発に
研究活動を行っている。
職位別に見ると,教授 7.9 件(17 名),准教授 13.5 件(17 名),講師 6.5 件(2名),助
教 11.7 件(7名)である。教授のみ配置される役割(管理職,教員選考委員など)により,
研究時間の確保が困難な場合もあるが,本来は研究面においても上位の職位に活発な活動
がされるべきである。
本学地域研究所発行の雑誌「くろしお」により,研究活動の公表を内外に行っているた
め,教員相互の研究活動の確認につながっている。しかしながら,「くろしお」は教員の自
己申告にもとづいて一覧のみが記載されているため,研究内容の詳細は把握できない。
【将来の改善策】
まずは,各教員が大学の研究者としての自覚をもち,研究活動を継続的に行っていく。
研究活動が活発でない教員に対しては,隣接する分野の教員が共同研究への参加等を促す。
さらに 2010(平成 22)年度より,研究支援部会が支援活動を行うための具体的な方策を打
ち出す。また,研究活動の活性化と研究予算確保の両面から,科学研究費補助金をはじめ
とした研究助成への応募の義務化について,全学運営委員会が検討を行う。
(b) 教育研究組織単位間の研究上の連携
【現状の説明】
本学に設置されている地域研究所は,地域に根ざし,地域に貢献するための研究組織で
あり,本学の全教員が研究員となっている。地域研究所の研究活動は

総合プロジェクト:学内外の研究者が学際的に交流しながら,特定の地域を対象に,
数年間の期間を設定し,地域の社会・文化を総合的に研究するプロジェクト

共同プロジェクト:1~3年の期間で学内外の研究者が共同し,専門的な地域研究を
行うプロジェクト

個人プロジェクト:教員の専門性を生かし,地域の研究を行う個人プロジェクト
の3種類がある。総合プロジェクト,共同プロジェクトは所属学科によらず,学内外の研
究者が連携する研究活動である(表6-2)。
また,本学は海外の4大学と姉妹校提携を締結しており,教育面のみならず研究面での
交流も行っている。インドネシアのパジャジャラン大学に2名,アメリカのハワイ大学に
1名の本学教員が1年間の海外研修を行っている。ドイツのベルリン工科経済大学では例
年,1~2名の教員が短期の研究活動を行うだけでなく,先方から研修者を招き,本学で
125
講演会を開催するなど,盛んな研究交流がなされている。中国の南京農業大学は学生の研
修が中心であるが,教員間の交流も行われている。
組織的に研究組織単位間の連携を図る取り組みは地域研究所と海外大学の姉妹校提携で
あり,その他学内外の研究組織との連携は学会活動など教員個人にゆだねられている。一
部の教員は前項に列記したとおり,役職等の重責を担っている。
公立短大の公平性という立場(教員が公務員)から,特定の民間組織の利益につながる
ような研究活動は制限される。
表6-2
地域研究所総合プロジェクト,共同プロジェクト
(2004(平成 16)年から 2009(平成 21)年実施分)
研究テーマ
研究年度
奄美群島の総合調査研究(総合プロジェクト) 2002-2006
共同研究者(所属専攻)
食物栄養5名
生活科学2名
経済3名
経営情報2名
学外4名
鹿児島における大学生の生活状態と文化に関
2003-2004
する調査
食物栄養1名
生活科学1名
鹿児島における『コミュニケーション能力を
2005-2006
高める』プログラム開発の試み
食物栄養1名
学外1名
鹿児島における茶産業の研究
2005
食物栄養1名
第二部商経1名
鹿児島の観光を考える
2006-2008
経営情報1名
学外1名
ITを用いた夜間部高等教育機関におけるキ
2007
経営情報2名
2007
経営情報1名
ャリア教育
自然科学分野におけるコンピュータ活用教育
の提案
生活科学専攻1名
高大連携:地域との連携による authentic な
2008-2009
国際交流を目指して
英語英文学2名
学外1名
石碑が語る鹿児島の記憶
2008-2009
日本語日本文学4名
中国からのショートステイ受入れに関する基
2008
日本語日本文学2名
2009-2010
食物栄養1名
礎調査
県内自治体の文化行政における地元芸術家と
の協議の可能性を探る
学外1名
126
【点検・評価】
地域研究所の諸活動は学内外の研究者を地域研究の視点で結びつける役割を果たしてお
り,毎年2~3件の総合プロジェクト,共同プロジェクトを行っている。公立短大として
研究を通した地域貢献を行っているといえる。しかし大学全体の取り組みとしての総合プ
ロジェクトは 2007(平成 19)年度以降行われておらず,短期,小規模のプロジェクト研究
が主となっている。また,地域研究所の活動である以上,いずれのプロジェクトも地域研
究の枠を超えた連携の取り組みとはなっていない。
海外の姉妹校との連携は姉妹校の支援が得られるため,個人で行う研究に比べ,海外で
の研究活動の充実につながる。ただし,研究内容や予算の問題により,関わる教員が限ら
れてしまうのが問題である。
各教員が行っている学外組織との連携の詳細は組織として把握できていない。
【将来の改善策】
地域研究所の諸活動は今後も継続的に行い,活性化させていく。特に 2010(平成 22)年
度以降,地域研究・生涯学習委員会が中心となり,総合プロジェクトの実施を行っていく。
さらに地域研究や姉妹校との関係によらない,幅広い研究機会を組織的に増やしていくこ
とも必要である。そのためには特定の民間組織のみの利益とならないよう,一定の公平性
を考慮しながら,学外組織との積極的な連携を深めていくことが必要である。これまで,
教員個人にゆだねられていた外部連携を各教員が積極的に組織間連携へと発展させていく
ことが,相互利益へとつなげられる。まずは 2009(平成 21)年度以降,「くろしお」に記
載する研究活動の一部として外部連携の状況を明記するようにし,学外組織との連携を組
織的に把握していく。
さらに全学運営委員会が中心となり,研究助成の応募を義務化させることで,学内外の
研究者と連携を活性化させていく。
2.研究環境
(a) 経常的な研究条件の整備
【現状の説明】
研究費は個人研究費と共同研究費に分けられる。
教員の個人研究費は全額,設置者(鹿児島県)の予算による単年度予算である。教授,
准教授,専任講師は専門の内容により実験系Ⅰ,実験系Ⅱ,実験系Ⅲ,非実験系の4種の
系列に分類され,助教を含めた5種類の系列に定められた比率に基づき,研究費の配分が
行われる(表6-3)。
研究費は鹿児島県の予算の一部であるため,地方自治法施行規則に基づき,旅費,消耗
品費,器具費,図書費,役務費,使用料の費目に分類される。
127
表6-3 2009(平成 21)年度の個人研究費
系列
比率
教員数
予算額
(旅費*除く) 日文
実験系Ⅰ
1.000
391,014 円
実験系Ⅱ
0.927
362,500 円
実験系Ⅲ
0.882
345,000 円
非実験系
0.775
303,000 円
助教
0.389
152,000 円
英文
食栄
生活
5**
4
1
5
経情
二部
2
1
4
計
11
1
4
1
経済
2
4
2
2
8
1
2
3
16
2
7
* 旅費は全教員一律 67,500 円
** 1名は未充足教員分(2009(平成 21)年度5月現在)
費目については,各教員が前年度の予算要求で比率の要求を行うが,研究費全体の費目
ごとの予算が決まっているため,要求とは異なった配分になる。器具費と図書費間の流用
を除き,配分後の変更はできない。
教員が一定期間,学外において研究に専念するための制度として海外留学(概ね1年間),
国内留学(概ね6ヶ月間)がある(それぞれ年1名)。ただし,鹿児島県財政の危機的な状
況により,県職員の海外研修が休止されたことに伴い,2007(平成 19)年度より,本学の
海外留学も休止している。国内留学については 40 万円の旅費が予算化されている。海外学
会発表に関わる旅費の補助制度(年間3名程度)もあるが,海外留学と同様に 2007(平成
19)年度から休止している。
共同の研究費としては,地域研究所の活動予算がある。報償費,旅費についてはプロジ
ェクト研究の実施内容に応じて配分され,その他の予算については地域研究・生涯学習委
員会が中心となり執行を行っている(表6-4)。
表6-4 2009(平成 21)年度の地域研究所活動予算
費目
内容
予算
報償費
資料解析および研究協力謝金
24,000 円
旅費
プロジェクト研究調査旅費
508,000 円
消耗品費
雑誌購入,文具他事務経費
100,000 円
印刷製本費
研究年報,くろしお,叢書の発刊経費
378,000 円
通信費
学術交換雑誌送料等
備品購入費
関連図書購入
160,000 円
計
1,200,000 円
30,000 円
「魅力ある短大づくり事業」において学科共通の教育研究機器の予算(2009(平成 21)
年度は 40.8 万円)があるが,主に教育目的の機器等整備に利用されている(2009(平成 21)
128
年度は教務補助員用パソコン,言語学図書,包丁まな板殺菌庫を購入)。教育および研究を
目的とした図書館図書の購入費として 281.8 万円の予算もあり,学科や専攻の共通図書と
して利用されている。また,学術雑誌(鹿児島県立短期大学紀要,人文,商経論叢)発刊
の印刷製本費として 77.9 万円が予算化されている。
学内の施設はいずれも古いものの,すべての教員に什器,書架,冷暖房設備が整備され
た個人研究室(平均約 24 ㎡)がある。学内LANはすべての研究室に設置され,学術情報
ネットワークを介してインターネット接続が可能である。また,インターネットの利用増
加に伴い,帯域が不足してきたため 2008(平成 20)年度より民間プロバイダ接続による高
速回線を追加した。
生活科学科が利用する実験室は整備されているものの,機器は不足,老朽化している。
研究そのものを支援するスタッフは外部資金による臨時的雇用(アルバイト)を除き,配
置されていない。
教員は教育に関わる時間(授業準備,授業,学生指導など),大学諸業務(委員会,部会,
入試作業など)の合間に研究を行っている。授業時間は教授,准教授,講師の週平均は 10.6
時間(1授業時間は 45 分),助教は 2.1 時間(実習等の補助を除いた時間)である。諸業
務に関わる時間の詳細は不明である。学生指導についてはオフィスアワー(学生対応の時
間)を設けており,研究時間の確保を行っている。その他に研究時間確保の組織的取り組
みは行われていない。
研修機会については,前述のとおり,国内留学(半年間)
,海外留学(1 年間)の制度が
あるが,海外留学については予算の問題により 2007(平成 19)年度から休止している。そ
の他,予算を伴わない研修については,他の業務に支障がでない限り,認められている。
【点検・評価】
近年,設置者の財政難による予算削減措置によって,本学予算も大きく削減されてきて
いる。そのため,研究費は全体的に不足している。特に旅費については,関東方面1回の
出張分程度しかないため,旅費の一部放棄(教員の自己負担)や旅費を伴わない研修とし
て研究活動を行うことが一般化している。また,海外留学・海外学会発表予算の休止は研
究活動の大きな妨げとなっている。地方自治法により費目間の流用ができないことも問題
である。例えば,年度途中で消耗品費が不足する場合,器具費などの予算に余裕があって
も,流用できず,柔軟な研究活動の妨げになっている。同様に地方自治法により,単年度
予算であることも,研究の自由度を狭めている。
研究費の配分方法については,助教の比率がきわめて低い。これは 2008(平成 20)年度
に助教制度を導入した際,従来の助手と同じ研究費配分比率を維持したためである。助手
と違い,授業も行う助教は研究面においても活発な活動が要求されるので,研究費増は必
須の課題である。
教育に関わる予算として学生実験実習費(消耗品費,備品費)もあるが,受講生が多い
129
授業では印刷費がかかるなど,十分な予算ではない場合があり,個人研究費の一部を授業
に利用することも多い。
地域研究を行う共通の研究費として,地域研究所活動予算は活用されている。この旅費
については比較的,不足することが少ないが,研究のバックボーンとなる雑誌,図書購入
経費については不足することが多い。これら地域研究所の活動を支援するために 2009(平
成 21)年度に学内において任意団体として地域研究学会が発足した。
地域研究の枠組みを超えた共同研究費については,「魅力ある短大づくり事業」による教
育研究機器予算や図書館図書購入費があるが,これらも県財政の悪化の影響で近年大幅に
削減されており,研究活動の活性化には不足している。
建物の老朽化はあるものの研究室の環境は,ネットワーク環境を含め基本的には整って
いる。予算の不足により,高額な機器の整備は困難である。多くの大学で配置されている
技術職員は不在であり,図書館職員も人員不足のため,研究の支援まで手が回らない。こ
れらは教員同士の相互協力で補っている。
授業担当の時間は平均的な大学教員と同じレベルにあるといえるが,諸業務については
小規模短大のため,時間をとられることが多く,教員間の格差も大きい。結果として研究
時間は不足しがちである。また,留学による研究専念は,学位取得や著書執筆など研究成
果につながっているため,海外研修の休止による機会損失は大きい。
【将来の改善策】
設置者である鹿児島県に対し,引き続き研究活動に必要な予算確保を訴える一方で,限
られた予算の有効利用と外部資金の導入を積極的に進めていく。費目間流用や年度を跨い
だ予算執行など,予算増を伴わない研究費利用についても引き続き設置者と協議を行って
いく。有効利用については,一部で行われているプール制(個人研究費の一部を拠出し,
不足している箇所に再配分する制度)を 2010(平成 22)年度以降,全学的に行っていく。
助教の研究費不足については,これも職位変更に伴う研究費の増額を設置者に訴えていく
一方で,2010(平成 22)年度以降に配分比率の修正を行っていく。
共通の研究費である地域研究所活動予算については,地域研究・生涯学習委員会が中心
となり,本学の特色でもある地域研究所のプロジェクト研究を積極的に行っていくと同時
に,研究成果の公表(論文発表や地域への還元)を義務づける。図書購入予算の不足につ
いては,インターネットの活用など,代替手法により研究の質を落とさないようにする。
耐震対策など,老朽化した施設は予算に応じて随時改修を行っていく。高額な機器整備
については,科学研究費など外部資金調達を積極的に行っていく。情報系など必要な技術
職員については,設置者に対して人員配置の要求を続けていく一方で,FD活動などによ
り教員個々のスキルをあげ,教員相互の協力体制を拡充していく。
教員の役割として教育の時間の削減は困難であるが,諸業務の合理化により,研究時間
の確保を行っていく。2008(平成 20)年度に委員会再編を行ったが,これら業務の点検,
130
改善を自己評価・将来構想委員会が 2010(平成 22)年度から行い,業務の効率化と教員間
格差の是正をすすめていく。
国内留学制度の継続的利用を行うと同時に,海外留学予算の復活を設置者に対して継続
的に訴えていく。
(b) 研究上の成果の公表,発信,受信等
【現状の説明】
本学では「鹿児島県立短期大学紀要 自然科学編」,「同 人文・社会科学編」,「地域研究
所 研究年報」,「人文(人文学会論集)」,「商経論叢」の学術雑誌を発刊している。いずれ
の雑誌も関係機関との交換雑誌であり,多くの学術雑誌の受け入れを行っている。
【点検・評価】
小規模の短大ではあるが,学術雑誌の発刊は多いといえる。発刊時期がずれているため,
執筆しやすいといえる。しかし発刊作業の多くを教員が担っているため,時間,労力とも
に負担となっている。
【将来の改善策】
国際学会や全国学会の学会誌への発表も重要だが,発表のしやすさや執筆から発刊まで
短期間であることなど,学内発刊の学術雑誌もいっそう活用していく。そのためにも継続
的に発刊を行うとともに,各雑誌の編集組織が作業の合理化や外部委託などを進めていく。
(c) 競争的な研究環境創出のための措置
【現状の説明】
文部科学省の科学研究費補助金(以下「科研費」という)については 2004(平成 16)年
度から 2008(平成 20)年度までの間,44 件の申請を行い9件が採択されている。
表6-5
年度
科研費の申請と採択状況
2004
2005
2006
2007
2008
合計
平均
申請数
7
9
8
11
9
44
8.8
採択数
1
3
2
2
1
9
1.8
採択率
14.3%
33.3%
25.0%
18.2%
11.1%
20.5%
(全国)
24.8%
24.0%
23.5%
24.3%
22.7%
23.9%
科研費以外には農林水産省の「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」
(2007-2009
年度)が 1 件採択されている。また,2008(平成 20)年度からは鹿児島県内全大学・短大
等の共同申請である戦略的大学連携事業(文部科学省)が採択されている。
131
科研費申請を活発化させるため,申請者には個人研究費の増額(5万円)を行っている。
【点検・評価】
科研費の採択率は国立大などを含めた全国平均をやや下回るレベルであり,短大として
は健闘しているといえる。ただし,申請数(平均 8.8 件)は教員(44 名)の 2 割にすぎず,
活発とはいえない。研究費の増額だけでは学内配分を変えるだけで,申請活性化の有効な
手段となっていない。
【将来の改善策】
基本的には各教員が科研費など外部資金の申請を増やしていく。組織的には全学運営委
員会が個人研究費の増額制度を維持すると同時に,採択率向上に関する情報収集を行って
いく。さらに全学運営委員会が外部資金応募の義務化について検討を行う。
(d) 倫理面からの研究条件の整備
【現状の説明,点検・評価】
本学では倫理面の考慮が必要な研究・実験は行われていない。
【将来の改善策】
今後,倫理面の考慮が必要な研究・実験が行われる場合には,ただちに当該学科・教員
が中心となり先行事例を調査し,審議機関や規制システムの整備が必要である。
132
第7章
社会貢献
目標
教育研究成果の社会への還元は高等教育機関の果たすべき使命である。地域はもとより,
広く社会に貢献するために社会との連携と交流に努めていく。研究成果等の情報発信に努
めるほか,地域社会のニーズに配慮した公開講座や講演会など生涯学習の機会を提供して
いく。また教育研究の拡充を図るために,学外の教育研究機関,自治体,企業・団体との
連携を図り,積極的に社会との交流を促進していく。
133
(a) 社会への貢献
【現状の説明】
本学の社会貢献は 2007(平成 19)年度までは,生涯学習委員会が中心に担ってきた。2006
(平成 18)年度より検討を開始し,2008(平成 20)年度に実施した委員会再編により,地
域研究を担う委員会と合併し,地域研究・生涯学習委員会がその任務を引き継ぐことにな
った。
生涯学習のメインである公開講座は教員の専門性を生かしつつ,特定のテーマを設定し,
開催されている。テーマの内容に応じ,土曜日に5回~10 回連続で行っている(表7-1)。
表7-1
年度
2004
テーマ
(参加者数)
グ ロ ー バ ル 化と 世
界の多様性
(全8回)
(63 名)
2005
パ ソ コ ン を 使っ た
実用中国語講座
(全8回)
講演者
岡村俊彦
常松典子
疋田京子
船津潤
長谷部剛
三浦克人
朝日吉太郎
金谷義弘
岸田未来
斉藤悦則
長谷部剛
(23 名)
2006
デ ッ サ ン と コラ ー
ジュ(全5回)
(22 名)
丸山容爾
2007
鹿 児 島 を デ ザイ ン
する(全8回)
金谷義弘
臼谷健一
福田忠弘
疋田京子
船津潤
岡村俊彦
野村俊郎
山本敬生
橋口晋作
(23 名)
2008
文学の魅力,ことば
の魅力,文化の魅力
(全 10 回)
(87 名)
公開講座開催状況
木戸裕子
轟義昭
望月正道
建石始
松山哲也
久木田美枝子
F. アダメック
土肥克己
題目
ハワイ
トンガ
インドネシア
スリランカ
中国
韓 国
ドイツ
ポーランド
スウェーデン
フランス
Windows パソコンで中国語を扱うには?①,②
中国語の web ニュースを翻訳してみる①,②
中国語の文書を作成する
中国語の電子メールを送受信する①,②
中国語の衛星 TV を視聴する
石膏デッサン①,②
コラージュ
年賀状のデザイン①,②
観光と鹿児島
環境会計-お金で捉える環境問題・環境保全-
NPO・NGO の役割と可能性
鹿児島とジェンダー
鹿児島県の財政について
鹿児島の職場環境をデザインする
サトウキビで車が走る-エタノールの不思議-
ポスト市町村合併のまちづくり
天璋院篤姫と広大院茂姫,その時代
薩南学派(朱子学)について
源氏物語を読む
映像作品から親しむイギリス文学と文化
日本語と歌詞
日本語の仕組みを探る面白さ
英語と鹿児島弁
脳科学と英語教育
ヘンリー・デビット・ソローの意識と概念
中国文学の裁判もの
134
また,附属図書館が主催している金曜講演会は,図書館の開放(県民利用)を目的とし
ているが,こちらも特定のテーマを決め,毎年3週連続で金曜の夕方に開催されている(表
7-2)。
表7-2
テーマ
年度
2004
附属図書館金曜講演会の開催状況
題目
(参加者数)
鹿児島と中国
鹿児島と江蘇省
中国帰国児童生徒に対する日本語教育を考える
2005
(39 名)
薩摩時代の中国語
お茶と鹿児島
中国茶の歴史と日本への伝来
日本茶を味わい,鹿児島茶を知る
2006
(68 名)
香りで味わう中国茶と鹿児島茶
危ない社会を生きる
ことばが危ない
食生活が危ない
2007
(42 名)
食べ物が危ない
~を読む
財務諸表を読む
憲法を読む
2008
(39 名)
白書を読む
鹿児島の映画文化
映画を制作する:プロデューサーの仕事
「チェスト!」作成秘話:フィルムコミッション活動
(36 名)
かごしまの映画環境:コミュニティシネマって何?
通常の授業を学外者が受講できる科目等履修生の制度も活用されている。(詳細は第3
章)。
自治会主催の学園祭と本学生協と大学共催の夏祭りは地域住民に開かれた催しとして定
着している。グランドやテニスコートは教育に支障のない限り,近隣高校や地域住民の利
用を認めており,教室が公的試験の試験会場となることもある。本学は鹿児島市の災害避
難場所にも指定されている。
【点検・評価】
本学の公開講座は内容や施設の関係で定員を設けざるを得ないことが多いが,いずれも
ほぼ満席となり,実施後のアンケートも非常に好評である。金曜講演会を含め,教員の専
門性を学内にとどめず,わかりやすく社会に還元させている。2007(平成 19)年度までは
両講座とも秋に開催していたが,受講のしやすさと教員負担の分散のため,2008(平成 20)
年度より公開講座を春から夏にかけて開催することにした。いずれも内容的にバラエティ
135
に富んでおり,マンネリ化していない。基礎知識があるとは限らない受講生を相手に短期
で行う公開講座は教員のスキルアップにもつながり,通常の授業にもプラスになっている。
ただし,事前の広報活動はポスターやホームページで行っているものの,やや不足してお
り受講生の半数が過去の受講生である。
科目等履修生の制度も継続的に利用されており,公開講座や金曜講演会を含め,本学学
生以外への教育機会提供は充実しているといえる。
大学祭や夏祭りなど,教職員と学生が一体となり地域との交流を行っていることは,評
価できる。施設の開放も含め,地域に開かれた短大の役割を果たしている。
【将来の改善策】
地域研究・生涯学習委員会と附属図書館が協力し,公開講座と金曜講演会を継続的に行
っていく。社会のニーズを踏まえテーマを選定していく一方,マスコミを利用して広報を
活発化させていく。これら活動に必要な予算的措置が継続されるよう,設置者に対して訴
え続けていく。
(b) 自治体や企業等との連携
【現状の説明】
本学では,社会活動,企業研修(いずれも授業科目)を通じて自治体や企業等との交流
を早くから図ってきた。社会活動は自治体,社会団体,病院などを対象に,イベント協力,
環境保全,介護,消費者保護などを通じて地域社会とふれあい,地域社会のかかえる問題
点や地域社会へのかかわりを学ぶことを目的としている。企業研修は,鹿児島県のインタ
ーンシップ制度や独自に開発した民間企業との連携で,企業活動を体験し,企業の観察と
職業意識の形成等を目的としている(詳細は第3章)。他にも通常授業の非常勤講師として,
自治体,企業の人材を活用している。
高等学校との教育上の連携は,本学教員が高校で講義を行う出張講義と本学に高校生を
受け入れて講義を行うミニ講義がある。いずれも 30 を超えるメニューを用意し,県内高校
に利用されている(表7-3)。
表7-3
出張講義,ミニ講義の実施状況(講義数)
年度
2004
2005
2006
2007
2008
出張講義
9
17
23
22
20
ミニ講義
4
4
4
8
10
2006(平成 18)年度より近隣の伊敷公民館からの講師依頼を組織的に受けている。これ
は高齢者を対象とした「生き生きシニア大学」の一環であり,毎年9~10 名の教員を講師
として派遣している。
136
本学の国際交流は地域への貢献も始めている。2008(平成 20)年度には近隣の玉江小学
校の依頼により,本学に留学中の中国人留学生が5年生のクラスを数回訪れ,異文化交流
を行っている。さらに不定期ではあるが,鹿屋市のアジア・太平洋農村研修村(KAPIC)の
依頼により,各国から研修中の学生と本学学生の交流を本学にて行っている。
県内の大学・短大とは幅広い単位互換制度を持ち,さらに,2008(平成 20)年度からは
本学を含む県内全大学が共同で「鹿児島はひとつのキャンパス」(文部科学省の戦略的大学
連携支援事業)という事業で地域リーダー養成の連携を行っている。
各教員も個別に学外教育研究機関,自治体等との連携を行っている。2004(平成 16)年
度から 2008(平成 20)年度までの間に,講演会等にて合計 61 回の講演(学内講演会,伊
敷公民館講座を除く。)を行い,外部団体の委員・理事は 47 種類を数える。
【点検・評価】
教育活動の一環(社会活動,企業研修)に組み込まれるなど,学外との教育研究上の連
携はとれている。社会貢献と教育活動が有機的に連携することで,両面にメリットがある
が,コーディネーターとして教職員の負担は少なくない。
教員の専門性を生かした社会貢献活動も活発で,地域のシンクタンクとしての役割を担
っている。ただし,設置者である鹿児島県(県庁)との連携はあまり見られない。
【将来の改善策】
社会活動や企業研修は今後も継続していく。ただし,社会貢献,教育効果と教職員の負
担を考慮し,一定の選別(貢献度,教育効果が低い研修先の削減など)も 2009(平成 21)
年度以降,教務委員会が中心となり行っていく。
出張講義,ミニ講義は社会貢献だけでなく,高校生に対する本学の紹介の意味合いもあ
り,ミスマッチのない入学生確保のためにも地域研究・生涯学習委員会が中心となり実施
回数を増やしていく。具体的には 2010(平成 22)年度以降,各教員が1科目以上担当する
ことを義務づけるなど,講義メニューを増やすと同時に,大学見学会や高等学校との連絡
会において広く広報を行う。
社会貢献を含めた国際交流は本学の特色の一つでもあり,国際交流委員会を中心に活動
範囲を広げていく。
教員個別の社会貢献活動も継続的に行っていく。特に鹿児島県との取り組みを事務局や
全学運営委員会が中心となり,検討を始める。
137
138
第8章
教員組織
目標
①
本学の理念・目的・教育目標に相応しい教員組織を形成する。
②
教員の任免,昇格等の透明性,公平性,公正性を継続する。
③
教員の研究活動の状況を踏まえ,いっそうの改善を行う。
139
1.教員組織
(a) 教員組織
【現状の説明】
本学の教員数は全学科とも短期大学設置基準を満たしている。本学の教員定数は,学長
1名,教授21名,准教授・講師16名,助教・助手7名,総数45名となっており(基礎デー
タ表22),短期大学設置基準で必要とされる専任教員数34名を満たしている(本学では,
助教は助手業務を担当する教員として位置付けられている。)。現在の在職教員数は,学
長1名,教授17名,准教授17名,講師2名,助教7名である。
生活科学科食物栄養専攻は厚生労働省が定める指定栄養士養成施設であり,厚生労働省
が定める本施設に必要とされる要件である栄養士法施行規則第9条および別表第1に基づ
き,教員定員が配置されている。現在,教員の退職に伴う欠員については,採用人事が行
われている。本学では,別表第1に掲げる教育内容を担当する専任の助手3人は,栄養士
養成に関係する講義を担当しない3人の助教が担当し,厚生労働省の基準を満たしている。
文学科は,「文学,言語,文化を学ぶことを通して,豊かな文学的感性,柔軟な思考力,
的確な表現力を有し,多様化した社会で活躍できる人材を育成する」ことを目的とし,以
上の目的の達成に向けて,日本語日本文学専攻,英語英文学専攻の2専攻を設けている。
専任教員は教授4名,准教授6名,助教1名で,すべて文学科に属している。
日本語日本文学専攻の教育目標は,
「日本語および日本文学の理論を学び作品を読むこと
を通して,日本語に関する知識と表現力,日本文学を広く且つ深く解釈し鑑賞する能力を
有し,多様化した地域社会で活躍できる人材を育成する」ことで,その目標に合わせて,
日本語学(1名),日本文学(2名),中国文学(1名), 日本語教育(1名)を配置して
いる。
英語英文学専攻の教育目標は,
「英米文学,英語学,英語圏文化を学ぶことを通して,英
語運用能力と豊かな教養を有し,多様化した国際社会に対応できる人材を育成する」こと
で,その目標に合わせて,英語学(2名),英文学(1名),比較文学(1名),アメリカ文
化および英語教育(1名),英語教育(助教1名),その他の専任的非常勤講師として,外
国人講師1名を配置している。
生活科学科は,
「衣・食・住を中心とする生活全般を対象とした実践的な専門知識と技能
の習得を通して,柔軟な思考力,判断力を有し,地域社会に貢献できる人材を育成する」
ことを目的にし,以上の目的の達成に向けて,食物栄養専攻,生活科学専攻の2専攻を設
けている。専任教員は,教授6名,准教授4名,助教6名で,すべて生活科学科に属して
いる。
食物栄養専攻の教育目標は,
「食物や食生活についての幅広い科学的知識と専門的知識の
習得を通して,健康の維持増進のための実践的能力を有し,地域社会に貢献できる人材を
育成する」ことで,その目標に合わせて,スポーツ健康論(1名),栄養学(1名),食品
学(1名),栄養教育論(1名),調理学(1名),生涯スポーツ実習(助教1名),化学の
140
世界(助教1名),給食管理実習(助教1名),生化学実験(助教1名)を配置している。
生活科学専攻の教育目標は,
「衣および住を身近な環境として位置づけ,自然環境や社会
環境を視野に入れながら,生活全般にかかわる基礎知識の習得を通して,生活に関わる事
象に科学的に対応する能力を有し,地域社会に貢献できる人材を育成する」ことで,衣生
活学(1名),生活デザイン学(1名),住生活学(1名),生活化学(1名),消費者問題
および英語(1名),心理学(1名),被服学繊維と染織(助教1名),インテリア設計学(助
教1名)を配置している。
商経学科(第一部)は,
「広く世界,日本,地域の経済・社会と企業の構造と運動を研究
し,情報処理の技法習得を通して,柔軟な思考力と企画力を有し,地域に貢献できる人材
を育成する」ことを目的にしている。鹿児島県立短期大学処務規程に基づき第一部商経学
科と第二部商経学科とは,一つの学科として見なされており,第一部と第二部の教育目標
は同じものである。
以上の目的の達成に向けて,第一部商経学科は,経済専攻,経営情報専攻の2専攻を設
けている。第一部の商経学科に属する専任教員は,教授5名,准教授5名,講師 1 名であ
る。上記の措置により,第二部に配属されている教員とともに教育にあたっている。経済
専攻の教育目標は,
「経済・社会の理論を学び,地域社会や産業の分析を通して,地域の課
題を発見する能力,課題解決の意欲と能力を有し,地域経済の発展に寄与できる人材を育
成する」ことで,その目標に合わせて,社会思想(1名),経済学(1名),地域経済(1
名),地方財政(1名),国際関係(1名)を配置している。
経営情報専攻の教育目標は,
「経営や組織の理論を学び,会計・情報処理の技能習得を通
して,ビジネスを企画・管理する意欲と能力を有し,地域産業の発展に寄与できる人材を
育成する」ことで,その目標に合わせて,経営学(1名),経営管理(1名),労務管理(1
名),産業心理学(1名)
,経営工学(1名),簿記論(1名)を配置している。
鹿児島県立短期大学処務規程に基づき第一部商経学科と第二部商経学科とは,一つの学科
として見なされており,第一部と第二部の教育目標は同じものである。第二部商経学科に
属する専任教員は,教授2名,准教授2名,講師1名,すべて商経学科および第二部商経
学科に属している。目標に合わせて,第二部商経学科では,国際経済(1名),地方行政(1
名),民法(1名),会計学(1名)が配置され,また,教職(1名)を配置している。上
記の措置により第一部の教員とともに教育にあたっている。
また,教職課程は,文科省の教職課程認定基準で定めた教育組織の基準に適合している。
本学の教員1人あたりの学生数は,文学科で 12.5 人,生活科学科で 7.9 人,第一部商経
学科で 14.7 人,第二部商経学科で 36 人である(基礎データ表 20)。学科の開設授業科目
における授業担当教員の専兼比率(基礎データ表2)が示すように,専門科目のうち,専
任が担当している割合は,日本語日本文学専攻で 81.7%,英語英文学専攻で 76.9%,食物
栄養専攻で 71.1%,生活科学専攻で 69.1%,経済専攻で 73.4%,経営情報専攻で 76.4%,
第二部商経学科で 77.0%であり,専攻によって6~8割の範囲でバラつきがある。
141
また,教養科目の専任担当の割合は,日本語日本文学専攻で 57.6%,英語英文学専攻で
58.9%,食物栄養専攻で 60.3%,生活科学専攻で 60.3%,経済専攻で 58.5%,経営情報専
攻で 58.5%,第二部商経学科で 57.5%である。本学教員の年齢構成は,60 歳代が2%,50
歳代が 33%,40 歳代が 30%,30 歳代が 33%,20 歳代が5%となっている(基礎データ表
22)。全学的にみるとバランスがとれているようであるが,学科,専攻別にみると,年齢の
配置や職位の配置にアンバランスな情況も生じている。本学教員の各職位に占める女性の
比率をみると,学長0%,教授 24%,准教授 35%,講師0%,助教 71%,全体で 34.9%
である(表8−1)。
表8−1 学科別・職位別,男女教員数(学長を除く。)
学
科
授
准 教 授
文学科日本語日本文学専攻
2(2)
3(0)
文 学 科 英 語 英 文 学 専 攻
2(1)
3(1)
1(1)
6(3)
生活科学科食物栄養専攻
2(0)
2(2)
4(3)
8(5)
生活科学科生活科学専攻
4(1)
2(1)
2(1)
8(3)
商 経 学 科 経 済 専 攻
3(0)
2(0)
商 経 学 科 経 営 情 報 専 攻
2(0)
3(1)
1(0)
6(1)
第
2(0)
2(1)
1(0)
5(1)
17(4)
17(6)
2(0)
二
部
商
計
(
別
経
学
科
教
講
2009 年5月 1 日現在
師
助
教
計
5(2)
5(0)
7(5)
43(15)
)内はその人数内の女性の人数
本学は社会人の受け入れの制限を行っていない。現在,5名が社会人の実務経験後に本
学に就任している。また,本学では外国人に対する制限も行っていない。外国人教員の昇
任についても制限はない。ただし,外国人専任教員は3年ごとの任期付き任用制度をとっ
ている。現在,外国人専任教員は1名任用されており,アメリカ文化および英語教育を担
当している。公立の大学における外国人教員の任用等に関する特別措置法を遵守している。
本学のすべての主要授業科目は教授もしくは准教授が担当している。教員間の連絡調整
については,各学科は,月一回の定例学科会議を開き,学科内での教育行政について連絡
を行っている。専攻ごとに専門性がかなり異なる文学科・生活科学科では,専攻会議が開
催されている。日常的な教務事項については,学科長,教務委員が対応し,その内容は学
科会議に報告され,審議されている。学科を越える調整に関連しては,各学科から選出さ
れた教務委員による会議で調整が行われている。共通教養科目については共通教養部会が
作られ,また,教職課程については教職部会が設けられて,全学的な立場からの運営を行
っている。非常勤講師との連絡については,学科が個別に対応している。
142
【点検・評価】
本学は短期大学設置基準および厚生労働省の定める指定栄養士養成施設としての基準を
満たしている。ただし,食物栄養専攻の教員の欠員については,適切な人事により早急に
解決する必要がある。
学科・専攻の教職員の数は,各学科・各専攻で掲げる教育目標を遂行するために確保さ
れたものであり,各学科に必要な専任教員は確保されている。
学生と教員の比率をみると,本学は少人数教育で学生に密着した教育が行われているこ
とは評価できる。商経学科は第一部,第二部とも,教員1名あたりの学生数は多いが,実
際は両者の教員が両方の学生にあたっているため,少人数教育が行われているといえる(実
質は第一部10.1人,第二部11.3人)。授業のみならず,勉学や進路指導などにおいて,少
人数教育は大きな役割を果たしている。
教養科目は専任教員の担当比率が若干低く,改善が必要である。専門科目については,
現状の比率は適切である。
教員の年齢構成のバランスをみると,40代,30代の教員を中心とする比較的若い教員組
織であるが,バランスが悪いとは思われない。しかし,以下のような問題点が存在する。
近年,ベテランの退職により教員の平均年齢が全学的に大幅に若返ったため教育・研究・
学内運営上の経験者が少なくなっている。若手教員の中には,他大学の経験などを知った
者との間に大きなギャップがあることに改めて認識したという意見もあり,今後,他大学
の情況を知る機会をつくることが大切である。女性教員の採用・昇任については,男性教
員と全く同様に扱っている。したがって,現システムの下で女性教員の比率が男性教員よ
りも少ないのは,わが国の研究環境を反映していると考えられる。女性教員比率をあげる
方策については,現在検討されていない。社会人の任用に関しては,実務経験を重視する
科目において,適切に採用し,配置が行われている。しかしながら,社会人としての経験
と高等教育機関についての違いを認識するのに時間がかかることや,学内行政について未
経験であるために,職場への適応に問題が生じることがある。外国人教員の任用に関して
は,英語母語話者としての採用であり,適切に配置されている。
すべての学科において主要な授業科目への専任の配置は適切に行われている。
学科内の専任教員間の連絡調整は適切である。学科間の連絡は教務委員会を中心に行っ
ているが,十分とはいえない。非常勤講師に対しては本学の理念・教育目的についての理
解を促し,課題や到達点その他の問題について協議するような配慮が必要であるが,連絡
が教員個人に任されており,組織的な体制がとれていないので改善が必要である。
【将来の改善策】
指定栄養士施養成設としての基準の充足のための欠員教員対策としては,後任人事を行
っており,2010(平成22)年度に解消される。
教員組織とスタッフの配置については,特に問題がないので,現状を維持する。
143
少人数教育の利点を生かすため,当面,教員あたりの学生数を維持する。
専任・兼任の割合については,2007(平成 19)年度からの教養改革により,教養改革の
専兼比率は一定の改善をみたが,2010(平成 22)年度は,専門改革を通じて,教養教育を
含めたカリキュラム全体を検討する予定であり,専任教員の教養科目の担当や科目の見直
しを進める。
教員の若返りを踏まえ,教育力量を組織的に高めるため,FD委員会を通じた授業改善
の取り組みを活性化する。女性教員の採用・昇任については,引き続き公正な人事を行う
とともに,女性教員の比率向上については,2011 年(平成 23)年度までに対応を検討する。
社会人・外国人教員の任用は引き続き,適切に行う。さらに,任用後の研修など職場へ
の適応を全学的に支援する。
主要な科目については引き続き専任教員が担当する。
学科間の連絡については,教務委員会と学科会議の連携を密にする。また,非常勤講師
への連絡体制については,教務委員会が中心となり,組織的な連絡体制を構築する。
(b) 教育研究支援職員等
【現状の説明】
本学では実験・実習を伴う教育等に関連して,以下の教育研究支援職員等が配置されて
いる。
なお,本学では 2008(平成 20)年度以降,助教は助手業務を担当する教員として位置付
けられている。この改正に伴い,2008(平成 20)年度には,前年の昇任人事を通じて,こ
れまで7名であった助手全員が助教に昇任して,従来の助手業務に含まれる実験・実習に
関連する科目の補助に加えて,1単位以上の授業を担当するようになった。なお,食物栄
養専攻の助教3名は,栄養士法施行規則上の助手として位置づけられ,栄養士養成に関す
る科目以外の科目を担当している。
①実験・実習を伴う教育
・人体の構造と機能
助教1名
・栄養指導
助教1名
・給食の管理
助教1名
・食品と衛生
教務補助員1名
・衣生活学
助教1名
・住生活学
助教1名
・生活化学
教務補助員1名
②外国語教育
・英語教育(LL演習)
助教1名
③スポーツ健康
・生涯スポーツ実習
助教1名
144
④情報関連教育
・情報関連実習科目ごとに非常勤職員1名
ティーチング・アシスタント(TA)およびリサーチ・アシスタント(RA)の制度は
ない。
上記の助教,教務補助員,非常勤職員は,学科会議で業務の枠組みを検討の上,担当教
員の指示のもと,補助業務を行っている。
【点検・評価】
実験実習を伴う教育,外国語教育,情報処理関連教育においては随時見直しが行われて
おり,助教等が概ね適切に配置されている。栄養士法施行規則上の助手としての配置も適
切である。
教育支援職員と担当教員は授業中だけでなく,事前事後にも綿密な打ち合わせを行って
いるため,教育の質の向上に寄与している。
【将来の改善策】
実験実習を伴う教育,外国語教育,情報処理関連教育において教育支援職員等の配置の
問題はないが,その適切性については随時見直しを行っていく。
担当教員との連携・協力についても現在の体制を維持していく。
2.教員の任免,昇任等と身分保障
(a) 教員の募集・任免・資格・昇格に対する基準・手続き
【現状の説明】
専任教員については,鹿児島県立短期大学教員選考規程と同細則に基づいて募集および
採用選考,昇任選考が行われ,鹿児島県知事が任免を行っている。新規採用は公募制とな
っており,募集にあたっては,研究者人材データベース(JREC-IN)と本学ホームページに掲
載し,公表している。人事案件については学科が発議し,人事委員会が審議した後,教授
会に提起される。教授会により選出される選考委員会は,選考規程に定める基準に基づき
選考を行う。選考委員会の選考の後,人事委員会が選考結果を審査し,教授会に提案し,
採用の可否が決められる。採用に必要な賛成得票数は,投票数の3分の2以上である。
非常勤講師の採用人事の場合は鹿児島県立短期大学教員選考規程に基づいて採用選考を
行っている。
また,任期制については外国人教員を除き,行っていない。
専任教員の身分は鹿児島県職員として,地方公務員法および教育公務員特例法により定
められており,その待遇は鹿児島県の関係条例に規定されている。
145
【点検・評価】
人事は全学的に掌握・審査されており,透明性が高い公平・公正な手続きが行われてい
る。しかし,次のような課題がある。
・全学的な人事政策が明確でなく,人事の発議が学科主導になっており,教職課程,教養
科目に関する学科を越えた合意形成の場がない。
・選考にあたり,選考委員会の中で主に業績評価を行う主査にかかる責任と負担が重い。
・昇任人事については,選考基準の指標が研究業績のみとなっており,教育面,学内行政
面を含めた総合的な評価が困難となっている。
【将来の改善策】
全学的な人事政策の策定については2009(平成21)年度に人事委員会規程の改正を行い,
策定手続きを明確にする。主査の責任超過については,選考委員会全体で補えるよう,規
程の改改正を人事委員会で検討する。昇任選考については,総合的な評価が可能な選考基
準を人事委員会で検討する。
3.教員の教育研究活動の評価
(a) 教育研究活動の評価
【現状の説明】
教育活動については,教員間による教育活動の査定・評価は行われていなかったが,2008
(平成20)年度から,FD活動の一環として,他の授業を参観する制度が取り入れられた。
これは,特定の期間に,教員が最低1回以上他の教員の授業を参観するという制度で,参
観を受ける教員はあらかじめ,参観可能な授業時間を指定し,そこに希望者が参加する制
度である。参観した教員は,「参加しましたカード」を当該授業教員に提出した。
学内外での研究活動,社会的活動については地域研究所発刊の雑誌「くろしお」で毎年
公表しているが,個別の評価は行っていない。
【点検・評価】
教員間による授業の参観は授業改善につながっている可能性はあるが,相互評価には至
っていない。優れた教育研究活動がある場合も,評価するシステムがないため相互研鑽に
つながっていない。
【将来の改善策】
教員間による授業参観において,相互評価を行うシステムの構築をFD委員会が検討す
る。優れた教育研究活動を全学で評価するシステムを全学運営委員会で検討する。
146
第9章
事務組織
目標
学生が充実した教育を受けられ,
教員が円滑かつ効果的な教育研究活動を行えるようサポ
ートする事務組織を目指し,組織のあり方を検証し改善する。
具体的な目標は,次のとおりである。
①
適切な人員配置および電算システムの導入による組織の適正化および事務の効率化に
より,事務組織の事務を,学内の現状や新たな業務等に関するニーズを的確に反映した
効果的なものとして執行する。
②
事務組織と教学組織をつなぐ役割を持つ委員会システムを,教学組織間だけではなく,
両組織のそれぞれの意向を調整する場としても見直すことにより,事務組織と教学組織
の相対的独立性を確保するとともに,両者の連携協力を強力なものとする。
③
設置者との間において中・長期的な課題をも協議する場を設けることを契機として,本
学の将来的な運営のあり方に関する学内論議を深める。
④
設置者による基本的な研修のほかに,他の大学等と連携しまたは本学独自にSD活動を
行うことにより,事務職員の大学職員としての意識と専門的能力を高める。
147
(a) 事務組織の整備
【現状の説明】
本学の事務組織は,表9-1に示すとおり事務局および学生部からなり,1人の教員と21
人(うち2人は非常勤職員)の事務職員が配置されている。
事務局には,事務局長の下に次長が置かれ,総務課と会計課が設置されている。総務課は
総務課長(次長兼務)以下6人(うち1人は運転技師)で,庶務一般,人事・服務,文書,
教授会・人事委員会など関係委員会の調整,授業料・入学料の徴収等の業務を所掌している。
会計課は課長以下3人で,歳入歳出予算,出納,施設・設備の維持管理等の業務を所掌して
いる。
学生部には,教授のうちから任命される学生部長の下に次長が置かれ,教務課と学生課が
設置されている。教務課は課長以下4人の職員と,第二部(夜間部)を担当する職員2人(1
人は非常勤職員)の計6人で,入学試験,教育課程,授業の実施等に関する事務や入試委員
会等の関連業務を所掌している。学生課は,学生課長(次長が兼務)以下4人の職員と学生
の保健業務の補助に従事する非常勤職員1人計5人で,学生の就職指導や厚生補導,学生委
員会等の業務を所掌している。
表9-1
事務組織と教学組織
(2009年5月1日現在)
組織の区分
事務局
事務組織
学生部
学科
教学組織
附属図書館
地域研究所
注
職員(人)
局長(1)
次長(1)
総務課(5)
(総務課長兼務) 会計課(3)
部長(1)
次長(1)
(教授兼任)
(学生課長兼務) 学生課(3+1)
学科長(3)
(教授兼任)
館長(1)
(教授兼任)
所長(1)
(教授兼任)
教務課(5+1)
-
(+3)
-
(3+1)
-
-
「+」の後の数値は教務補助員(非常勤職員)の人数。
本学の常勤の事務職員は,原則として,設置者である鹿児島県の知事部局一般職員の中か
ら人事異動により配置されることとなっており,教育現場未経験の者がほとんどで,本学に
おける2年から4年程度の勤務期間を経て他の鹿児島県の組織に転出するのが常態である。
鹿児島県への採用およびその後の昇任は,知事部局職員として地方公務員法および「職員の
任用に関する規則」(鹿児島県人事委員会規則)に基づき行われている。また,本学への職
員配置は,本学の事務執行状況および人事上の配慮事項等を勘案した事務組織からの要望を
148
参考にして,設置者が,県職員全体の中から適材適所を旨として行っている。
非常勤職員については,本学が公共職業安定所を通じて公募し,履歴書および面接により
業務への適性等を判断して採用している。
【点検・評価】
事務組織の規模と職員配置に関しては,事務局と学生部の中にそれぞれ2課を設置し,業
務の内容と量に応じ職員配置を行ってきており,事務組織の構成と運営は,基本的には本学
の運営を総合的に行い,教育研究を円滑にする上で適切なものであるといえる。
しかしながら,学生課に配置されている非常勤職員については,保健室において,養護教
諭の有資格者という専門的見地から,健康診断の企画調整のほか,健康相談,疾病の救急処
置など学生の健康保持増進の業務に当たっており,その勤務時間が午前9時30分から午後5
時までに設定されているため,午後6時から9時10分までを授業時間とする第二部(夜間部)
商経学科の学生への対応が困難という問題がある。
事務職員の任用手続きは法規に基づいており,基本的に適切である。常勤職員の本学への
配置に当たっては,設置者が,事務組織からの要望と年齢構成や男女比,適材適所等の観点
を総合的に勘案して定期的に人事異動を行っており,事務組織の活力や一定の事務水準が維
持されているといえる。また,非常勤職員の採用に当たっては,具体的な勤務内容や勤務時
間を明示して公募し,面接等を行うことにより,事務組織の円滑な業務執行にとって適切な
人材が確保されているといえる。
常勤の事務職員の在籍期間が概ね4年以内と短いことに関して,業務の熟練性,継続性等
への懸念もあるが,事務組織では,設置者に対し,これらの観点にも配慮した人事を要請し
てきており,本学の特色である高い就職率を維持するため,就職指導,就職開拓等に実績の
ある事務職員の比較的長期の配置という成果を得ている。
【将来の改善策】
現行の事務組織の体制を基本的に維持するとともに,第二部商経学科の学生の健康相談,
救急処置等に対応するための方策を,2010(平成22)年度から事務局と学生部が中心となっ
て検討することとする。
事務職員の任用手続きに関しては,
設置者である鹿児島県が採用した事務職員の中から本
学に配置されることは,本学が鹿児島県立である以上当然のことであり,これからも維持す
るとともに,具体的な事務職員の配置については,今後とも事務局から設置者に対し,本学
の事務の実態に応じ,業務の熟練性・継続性に関しても配慮を求めていく。
149
(b) 事務組織の役割
【現状の説明】
事務組織内の各部局は,次のような役割を担い,活動を行っている。
①
事務局は,本学における教育研究の円滑な実施を組織管理面や予算執行等の面で支える
役割を担っている。
総務課においては,給与や旅費支払い等の庶務一般,人事,入学式・卒業式等の儀式,
文書管理,授業料・入学の徴収,事務局・学生部・附属図書館の連絡調整等のほか,科学
研究費補助金や受託研究費等の外部資金,学生の保護者を会員とし本学における教育振興
の援助を目的とする「振興会」等に関する事務を所掌し,会計課においては,歳入歳出予
算,出納,研究費の支出管理,施設設備の維持管理等に関する事務を所掌している。
また,事務局長を教授会の幹事に充て,教授会の議題調整等を所掌する議事運営会議の
庶務を総務課が担当している。さらに,総務課は,教授会の下に置かれた全学運営委員会,
自己評価・将来構想委員会,地域研究・生涯学習委員会およびFD委員会の事務担当課と
して会議の日程調整および資料の調製等を行い,また,教員人事を所掌する人事委員会に
ついても同様の事務を行っている。
②
学生部は,本学における教育研究の円滑な実施を具体的な企画・運営面や学生支援等の
面で支える役割を担っている。
教務課においては,教育課程および授業の実施,入学試験,入退学等,試験・成績,各
種証明,各種免許等に関する事務を所掌し,学生課においては,学生の補導,福利厚生,
各種相談,奨学金,授業料減免,就職指導,健康診断・健康相談・救急措置等の保健衛生
等に関する事務を所掌している。
また,教務課は,教授会の下に置かれた入試委員会および教務委員会の事務担当課とし
て,学生課は,同じく学生委員会および国際交流委員会の事務担当課として,会議の日程
調整,資料の調製,議事録の作成等を行っている。
【点検・評価】
事務組織内各部局の事務職員の代表による毎月の業務打合せを行うこと等により,事務組
織内の連携が図られ,各部局の所掌する業務がほぼ円滑に実施されており,各部局はそれぞ
れの役割を果たしているといえる。
しかしながら,授業料を滞納し,また履修登録もしていない学生への対応が遅れるなど,
一部に事務局と学生部との連携不足がみられた。
【将来の改善策】
事務組織内部の意思統一を図り,
事務局と学生部が一体となった有機的な事務執行となる
よう,今後は,毎月1回の業務打合せのほか,全学的な重要事項を所掌する全学運営委員会
の開催後に,その審議結果の具体的実施方法の確認等を含んだ業務打合せを行う。
150
(c) 事務組織と教学組織との関係
【現状の説明】
教学組織としては,学科,専攻課程,附属図書館および地域研究所が置かれている。
学科としては,第一部(昼間部)に文学科,生活科学科および商経学科の3学科が,また,
第二部(夜間部)に商経学科が置かれ,さらに,第一部各学科には,専攻課程として,文学
科に日本語日本文学専攻および英語英文学専攻が,生活科学科に食物栄養専攻および生活科
学専攻が,商経学科に経済専攻および経営情報専攻が置かれている。
事務組織と教学組織が連携・協力の形態としては,直接的なものと間接的なものに分けら
れる。
直接的な連携の例として,次の事項等があげられる。
①
事務局において,同一学科の各教員に割り振られた教育研究費予算の一部を学科の意向
を受けて学科プール分として管理執行している。
②
附属図書館に係る図書の購入等の予算の執行については,事前手続きである執行伺いは
附属図書館が担当し,支払は事務局会計課で行っている。
③
事務局および学生部各課ならびに生活科学科食物栄養専攻が,2009(平成21)年度に栄
養士養成施設指導調査を受けるに当たり,他短期大学の調査,関係書類の整備,当日の応
対等に協働して当たった。
間接的な連携としては,表9-2に示すとおり,教授会の下部組織である委員会に学科選
出の委員が参画し,当該委員会の事務を事務組織各課が担当していることがあげられる。委
員会に委員が提出し審議された議案は,場合によっては修正され,当該委員会の議案として
学科選出委員を通じて学科会議に諮られ,委員会では,学科会議の審議結果を踏まえて審
議・決定されることが通例であり,これらの過程を通じて,事務組織では学科の意向を把握
しながら,当該委員会の決定事項に係る事務執行に当たっている。
特に,当該委員会のうち,本学の管理・運営等の重要事項を所掌する全学運営委員会およ
び自己評価・将来構想委員会には,事務局長および学生部長が委員として参画しており,両
委員会の委員である附属図書館長,地域研究所長および学科長との質疑応答等を通して,事
務組織および教学組織の間で,学内の重要事項に関する連携を図る仕組みとなっている。
なお,附属図書館に関する事項を所掌する図書館・情報システム委員会の事務は,附属図
書館の事務職員が,地域研究所に関する事項を所掌する地域研究・生涯学習委員会の事務は,
総務課が担当することにより,当該委員会での審議経過を把握しながら,決定事項に係る事
務執行に当たっている。
以上のとおり,事務組織と教学組織は,ほとんどの場合,学内行政組織である委員会の審
議決定の過程を介して連携・協力が図られるシステムとなっている。
151
表9-2 委員会および事務担当課
委員会名
所掌事項
(2009年5月1日現在)
委員長
大学の管理及び運営,
全学運営委員会
学則及び学内諸規程, 附属図書館長
危機管理,予算,広報
自己評価・将来
自己評価及び外部評
構想委員会
価,将来構想
委員会の構成
三役,学科長及び事務
局長
事務担当課
総務課
学長,三役,学科長,
学長
事務局長及び学長が
総務課
指名する者
委員長,学生部長及び
入試委員会
入試制度及び入試実
教授会による
各学科から2名(委員
施
選出
長が属する学科から
教務課
は1名)
学科及び専攻課程,教
育課程,学生の入学・
教務委員会
退学・転学等・休学・
留学及び卒業,学生の
委員長,学生部長及び
教授会による
各学科から2名(委員
選出
長が属する学科から
は1名)
成績
学生の厚生補導及び
学生委員会
就職,学生の賞罰,学
生自治会
国際交流委員会
国際研究交流及び国
際交流
図書館・情報シ
図書館,情報システ
ステム委員会
ム,学術雑誌編集
地域研究・生涯
地域研究,地域貢献,
学習委員会
研究支援
教授会による
委員長,学生部長及び
選出
各学科から1名
地域研究所長
附属図書館長
地域研究所長
教員及び教員組織の
FD委員会
教育研究力量向上支
教務課
学長
援
地域研究所長及び各
学科から1名
附属図書館長及び各
学科から1名
地域研究所長及び各
学科から1名
学長,地域研究所長及
び学科長
学生課
学生課
附属図書館
総務課
総務課
【点検・評価】
事務組織は,基本的に,直接,教学組織から指示を受けるのではなく,定期的にまたは臨
時に開催される委員会において教学組織の意向を踏まえて審議・決定された事項について事
務を執行しており,事務組織と教学組織は,独自性を保ちつつ連携・協力しているものとい
える。
しかしながら,事務職員が構成員とされていない委員会では事務組織からの意見を出しに
152
くい等の指摘があることは,事務組織と教学組織の連携を進める上で問題である。
【将来の改善策】
基本的に,
学内の行政組織である委員会を通した事務組織と教学組織の連携の仕組みを維
持するとともに,現在の委員会体制について,2010(平成22)年度から全学運営委員会を中
心に,構成員を含む組織面や所掌事項等の問題点を洗い出し,事務組織と教学組織の連携・
協力をより強化する観点を含め,体制の見直しを行う。特に,事務組織が本学の管理運営を
担う両輪の一つとして責任をもって委員会決定事項を執行するため,
委員会構成のありかた
も含め,調査,研究を行う。
(d) 事務組織と設置者との関係
【現状の説明】
本学の設置者は,鹿児島県であり,
その担当部局は総務部学事法制課である。事務組織は,
設置者と本学の運営に関し,次のような連携・協力関係を有している。
①
本学の予算は,設置者が作成する予算案に基づき議会が決定することとされている。事
務組織は学内からの要望を取りまとめて予算要求書を作成し設置者に提出してその必要
性を説明し,
設置者は要求内容の妥当性等の観点から査定した上で予算案を作成している。
②
本学の組織は,設置者が決定することとされている。設置者が毎年実施する翌年度の組
織改正・増減員要求の照会に対し,事務組織では,本学の運営上必要な人員増等の要求を
している。
③
本学の事務職員の人事異動は,設置者が決定することとされている。事務組織では,毎
年度,具体的な人員配置に関する要望を設置者に行っている。
④
本学の学則は,設置者が制定する鹿児島県規則の一つであり,また,本学における奨学
寄附金や受託研究等の外部資金導入のための要綱は,公立大学については,設置者がこれ
らの資金を受け入れてから大学に交付する制度とされているため,設置者が策定すること
になる。このため,本学が学則の改正や要綱の策定を必要とするときは,事務組織で作成
した素案を設置者に示し,協議調整した上で教授会等の学内行政組織に諮り,その承認を
受けて,設置者に学則改正や要綱策定等を依頼している。
⑤ 事務組織から設置者に働きかけ,2008(平成20)年度から,本学の学長,学生部長等の
教員代表および事務局長ならびに設置者の本学担当課である学事法制課課長との定期的
な協議の場を設け,教育研究費,施設設備の整備,授業料の減免など本学の運営に係る各
分野について,具体的な要望や意見交換を行っている。
【点検・評価】
事務組織は基本的に設置者との有機的で良好な関係を築き,本学の運営を円滑に進める上
で,重要な役割を果たし成果が上がっているといえるが,不十分な点が残っている。
153
①
予算については,事務組織において設置者への働きかけを工夫することにより,2009
(平成21)年度は次のような成果が得られた。
・ 2008(平成20)年度まで毎年削減されてきた教育研究費は,前年度と同額を維持でき
た。
・ 2008(平成20)年度に前年度から半減した国際学術交流費は,2007(平成19)年度と
同額に復元された。
・ 2008(平成20)年度に要求した耐震診断関係予算が認められた。
②
組織については,事務組織において附属図書館の勤務体制の問題点を明らかにして増員
要求をしたこともあり,鹿児島県の職員削減方針に基づき,2007(平成19)年度に1名削
減された附属図書館の事務職員について,2008(平成20)年度には人事上1名が配置され
3名体制が復活した。
③
人事異動については,概ね事務組織の要望に沿った適切な人員配置がされているが,一
部に本学事務へ適応できなかったこともある。
④
外部資金導入に関し,2006(平成18)年度の奨学寄附金導入のための要綱の策定につい
ては事務組織が作成した素案を基に設置者との調整も円滑にできたが,受託研究資金導入
のための要綱策定について,受け入れ体制を事前に整備したいという事務組織の意向に対
し,設置者の財政部局からは具体的な研究受託の話が出てから整備すべきとの意見が出て
おり,調整ができていないという問題がある。
⑤
設置者との定期的な協議の場が設定され,
本学の実態や問題意識等を設置者に認識して
もらうことができ,予算確保等の短期的課題の解決に役立っているが,中・長期的な本学
の運営のあり方に関して議論する場に至っていないという問題がある。
【将来の改善策】
設置者とのより有機的な協力関係を築くため,今後次のような対策を予定している。
①
予算,組織および人員配置について,設置者に本学の実情に応じた適切な措置を
講じてもらうため,毎年度,事務組織において,本学の実情を丁寧に説明し要求し
ていく。
②
鹿児島県財政が逼迫している状況にあって,外部資金の導入は,本学教育研究費
の確保の点から非常に重要であり,受託研究資金導入のための要綱策定について,
事務組織において作成した素案を基に,2009(平成21)年度から設置者と協議を行
っていく。
③
引き続き事務組織を含む本学代表と設置者側との定期的な協議の場を重ね,本学
の実情を理解してもらうよう努めるとともに,事務組織は,2010年(平成22)度中
を目途に,中・長期的な本学の運営のあり方についても協議できるよう設置者と調
整していく。
154
(e) 事務組織の機能強化のための取り組み
【現状の説明】
設置者である鹿児島県が,その職員の資質の向上を図るため,次のとおり職員研修を実施
しており,表9-3に示すとおり,本学の事務職員は鹿児島県職員として各研修を受講して
いる。
①
一般研修
新規採用職員研修,主査研修,管理監督者研修など,職位に応じて事務管理能力,部下
の指導力,行政管理能力等を高めるための研修である。
②
チャレンジ研修
業務遂行に必要な特定の知識,技能または一般教養を習得させ,事務処理能力を高める
ための研修である。2009(平成21)年度は,「折衝・交渉能力」など行政実務関係11講座,
「意思決定」など
行政管理関係5講座,「企画力・創造力開発」など政策形成関係5講
座,「グローバル化と経済」など法律・経済関係6講座が設けられている。鹿児島県職員
は,メニューの中から選択した講座を受講する。
③
人権同和問題研修
職員の人権意識を高めるための研修で,鹿児島県職員は,毎年受講することとされてい
る。
その他に,設置者は,会計事務職員研修など特定業務に関する研修,IT推進員情報研修
など各部署の特定の職員を対象とする研修等を実施している。
表9-3
県立短期大学事務職員の研修参加状況
研修の名称
2007(平成19)年度
2008(平成20)年度
2009(平成21)年度
管理監督者研修
0
1
2
チャレンジ研修
1
3
1
人権同和研修
23
23
全職員参加予定
会計事務職員研修
3
4
3
IT推進員情報研修
1
1
1
大学職員としての専門能力の向上に向けたSD(スタッフ・ディベロップメント)活動と
しては,毎年,全国公立短期大学協会主催の事務研修に1名参加しているほか,学内のFD
活動として実施される研修に事務職員が参加している。また,人事異動時の事務引継の際に,
前任者から業務遂行に必要なスキルは直接指導を受けることとなっており,併せて課制を敷
くことによってOJTが効率よく行われる仕組みとなっている。
事務組織の業務の効率化を図り組織全体の機能を高める観点からは,つぎのような方策を
実施している。
155
①
2007(平成19)年4月から,学長は,知事の承認を得て,学長の専決事項に属する事務
の一部を所属職員に専決させることができるよう本学処務規程を改正し,「職員の人事・
給与に関する事務」など事務局の所掌事務の多くを事務局長または事務局の主務課長に,
また,「教育課程及び授業の実施に関する事務」など学生部の所掌事務の多くを学生部長
または学生部の主務課長に専決させることとした。
②
予算の管理執行,旅行命令等については,設置者である鹿児島県が整備し県の組織全体
に普及している財務会計システムを利用している。
③
事務組織と教学組織または教員との間の連絡等には学内LANを活用し,また,設置者
との連絡等には設置者が整備した職員コミュニケーションシステムを活用している。
【点検・評価】
設置者が行う研修は,鹿児島県職員としての資質向上を目的とするものであるが,本学の
事務執行をするためにも役立つ能力の開発や知識の習得を含んでおり,事務組織の職員がこ
の研修を受講することは,事務組織全体の基本的な事務執行能力の水準の維持・改善に有効
であるといえる。
一方,大学職員としての専門的能力向上のためのSD活動については,全国公立短期大学
協会の事務研修や学内FD活動への参加が一部職員に限られ,大半の職員が,人事異動時の
事務引継の際に,前任者から担当事務の範囲で研修し,以後実務を通じて自ら研修すること
となっており,大学運営に関する組織的・体系的な研修が実施されていないため,事務組織
全体の専門性を高めるような改善には必ずしもつながっていないという問題がある。
事務組織の業務の効率化については,学長専決事項に係る事務の多くの部分を下位の職の
専決へと移動したことにより,起案,決裁,実施までの事務執行過程が迅速化されたといえ
る。
また,設置者が整備した財務会計システムおよび職員コミュニケーションシステムは信頼
性が高く,本学の日常業務にとって不可欠となっており,その活用により,本学業務の効率
化に大きな役割を果たしている。また,学内LANは,毎日の教学組織や教員とのコミュニ
ケーションの面で本学業務の効率化に不可欠なものといえる。
一方,受講登録,試験・成績管理,各種証明書発行など教務事務は,手作業,手入力で個
別に行われており,処理に時間がかかり非効率的なものとなっている。
【将来の改善策】
大学職員としての専門的能力の向上のためのSD活動については,前記の「大学地域コン
ソーシアム鹿児島」を中心に実施が検討されているFD・SDに係る合同研修の活用を図る
ほか,事務組織において,学内における研修の方法等について2010(平成22)年度から検討
する。
事務の専決システムおよび電算システムについては,当面現行のまま活用し,問題が生じ
156
た場合には,設置者に改善を要請するなどの措置をとる。
非効率となっている教務関係の一連の事務については,一元的に処理できる電算システム
を2011(平成23)年度からの導入を図る。
157
158
第 10 章
施設・設備等
目標
①
耐震診断を行った建物については,2013(平成25)年度を目標に耐震改修を行う。
②
施設や設備を良好な状態で保持するために,必要な改修や整備を行っていく。
③
バリアフリー化については,特に3号館へのエレベーターや身障者用トイレの設置に
について設置者の理解を得られるよう努める。
④
危機管理システムを適宜点検し,不測の事態が発生した場合にマニュアルに沿った迅
速で的確な対応が出来るよう,啓発や訓練を通して体制の確立を図る。
159
(a) 施設・設備等の整備
【現状の説明】
本学の校舎は,1950(昭和25)年鹿児島県立大学短期大学部として発足直後に旧陸軍用
地跡に移転したのが始まりで,県立大学他学部との同居で旧兵舎などを活用してのスター
トであった。その後他学部の国立移管などで校舎位置の変遷等を繰り返し,今日のエリア
(当時の用地の一部)に落ち着いている。校地面積44,653平方メートル,校舎等面積12,661
平方メートルを有している。
建物の整備状況は表10-1のとおりである。
表10-1
建物の整備状況
建築年
面積
増
増築年
改修等
面積
1号館
昭和36年
1,736 昭和63年
2号館
昭和37年
1,896 平成9年
3号館
昭和52年
2,512
図書館
昭和47年
体育館
昭和44年
1,682
平成12~14年
本館
昭和55年
1,266
平成13年, 19年
大学会館
昭和57年
606 平成10年
サークル棟
昭和58年
618
地域研究所
昭和60年
132
885 平成5年
備考
250 平成7年~9年
62 外壁の補修,内部
増築は特定給食実習室
増築はエレベーター,身障者トイレ
の改修等
547 改修済
平成 5年身障者トイレ
平成10年身障者トイレ
258 平成7~9年,12年
屋外のスポーツ施設としては,グラウンド(1周330m)およびテニスコート(4面)
が設置されている。
校舎および本館には,講義室(15室,パソコン教室・LL教室等を含む),演習室(5室),
実験室(15室),実習室(6室),パソコン自習室,研究室,就職相談室,保健室等が配置さ
れている。
また,授業で使用する液晶プロジェクターは3教室に設置され,1基の移動用プロジェ
クターが準備されている。
なお,第二部(夜間部)商経学科(3年制,定員各学年60名)を有することから,グラン
ドやキャンパスなどの夜間照明は整備されている。
教育用の情報関連機器(パソコン)の主な設置状況は表10-2のとおりである。
学内LANについては,パソコン室,第9講義室,第14講義室,研究室および事務室等
は接続されているが,全講義室へはまだ整備されていない。
160
表10-2
情報関連機器の整備状況
第1PC室 第2PC室
次回更新(平成)
PC一式(セット)
WS室
PC自習室
LL教室
住生活学演習室
H22年10月 H25年10月 H23年3月 H22年10月 H23年10月 H23年11月
51
53
21
10
46
18
また,無線LANについては,附属図書館視聴覚室と第9講義室に設置されているもの
については学生が自分のパソコンでもインターネット等が接続可能な状態にある。
ウェブサイトは,大学案内など学外への情報提供が中心であるが,休講情報や大学運営
に関する緊急通報など全学生への連絡網としても活用されている。
【点検・評価】
本学の校地面積および校舎面積は,短期大学設置基準を上回っているが,建築が1961(昭
和36)年~1977(昭和52)年と古く老朽化が進んでいる。建物の維持管理については,適時
外装や内装の塗装工事および補修工事等を行ってきており良好な状態を保持している。
2009(平成21)年度は附属図書館屋上の全面防水工事,各教室のブラインド(不具合なも
の100個程度)の交換および第3キュービクル(変電設備)の改修等を実施中である。
古い基準の建築物であるため,教室が狭い,また,机や椅子が小さく学生の体格にあっ
ていないなど学習に窮屈な面も否めない。また,校舎と校舎を結ぶ屋根のある渡り廊下が
整備されていないため天候の悪い雨の日など移動に不便な状況もある。冷暖房機器につい
ても,設置後20年以上経過しているものが多く効率が悪く故障もしがちである。
耐震診断については,9棟の建物の内,診断が必要なものは7棟あり,うち体育館につ
いては鹿児島市が災害時の避難場所に指定したこともあって,1999(平成11)年に耐震診
断を実施し,2002(平成14)年に改修を終えている。なお,2009(平成21)年度は1号館
の耐震設計,2号館,3号館および附属図書館の耐震診断を実施中である。
学内LANについては,2008(平成20)年度に高速回線(光)を導入した(一部を除く。)。
また,国立情報学研究所が運営する学術情報ネットワークについては,鹿児島大学を経由
しているが,接続している回線速度は遅い。
なお,電子メールについては全学生にメールアドレスを発行し,レポートの提出や教員
との通信等に利用されており,また求人情報サイトを利用した就職情報の収集や企業との
通信等にも活用されている。
【将来の改善策】
本学設置の経緯等から,施設の改築等については大学の本来あるべき姿を描き直した上
で総合的なキャンパスデザインの下,計画的に行うべきであるが,現段階では現校舎のま
まで少しずつでも学生や利用者の安全性,快適性を高めていく手立てを講じていくしかな
い。また,そのための予算措置等は設置者(鹿児島県)の判断で行われるので,必要性や効
161
果などを理解して貰うよう積極的に訴えていきたい。
耐震診断を行っていない大学会館および本館については,2010(平成22)年度に実施で
きるよう予算要求を行っていく。さらに耐震計画,実施設計,補強工事と順次計画を立て
予算獲得に努めることとする。また,冷暖房機器についても,計画的整備・更新やその他
の改修等も順次予算要求に計上し,予算獲得のチャンスを逃さないよう心掛けていく。
教育用のパソコンについては,現在の水準を維持することとし,異なる更新時期を活用
して陳腐化しないよう配慮していく。学内LANの全講義室への接続や無線LANの設置
については,建物の改修,機器の更新等の状況との関連性を勘案して検討する。
(b) キャンパス・アメニティ
【現状の説明】
本学は住宅や商業施設等が混在する街中にあるが,学内はきわめて静粛な環境にある。
円滑な通学に欠かせない駐輪場(単車置き場を含む。)や駐車場,学生の談笑や休憩,食
事等の場となる大学会館,あるいは第二部(夜間部)商経学科学生のためのキャンパス内
照明施設等も整備されている。また,全館禁煙として喫煙指定場所を屋外(4か所)に設
けているほか,空間は極力緑地として整備し,緑陰へのベンチ設置や散策スペースの配置
など,構内の美化や景観に配慮して適正な教育研究環境の確保を図っている。
正門入口付近には本学の要請により鹿児島銀行の現金自動預け払い機(ATM)が設置
されている。
【点検・評価】
本学の設立および整備は,第二次大戦後の復興期に,教育熱心で質実な県民性を反映し
学問の場をいち早く確保するために行われてきた経緯が見て取れ,学生が豊かな学生生活
を送り,学問や勉学に励むのにより適した静謐で心地よい構内の環境や施設,あるいは思
索に耽るに相応しい状況等について積極的にこれらの整備・達成を試みることは充分には
なされてきていない。
大学周辺に騒音の発生源がないことや構内に樹木が多いことなどから環境の静謐さは
確保されるが,バリアフリー化も含め施設の利便性や機能,デザイン,建物の配置,構内
のデザインなど今日的見地からの高水準のキャンパス・アメニティは達成し切れていない。
また緑地も,樹木等の繁茂・生育が著しく管理が追いつかない等憩いの場や癒しの空間と
しては今一つ満たされていない。しかし,学生定員に比して広い校地や校舎,併置されて
いるグラウンドやテニスコート,十分な駐車場など恵まれている点も多い。
【将来の改善策】
近代的な大学像,あるいは積極的なキャンパス・アメニティの実現は,将来において根
本的総合的に構想し直さなければ不可能であると判断される。
162
当面は,現在の施設や設備に適宜修繕や補修を加えながらこれをなるべく良好な状態で
保持管理し,技術的に可能ならば快適性を追求していくということとする。
(c) 利用上の配慮
【現状の説明】
1号館,2号館および3号館は横3列に配置され,校舎間の移動距離は短い。
2号館にはエレベーター,自動ドア,スロープおよび身体障害者用トイレが,体育館お
よび図書館にはスロープ,自動ドアおよび身体障害者用トイレが,3号館,本館および大
学会館にはスロープおよび自動ドアがそれぞれ設置されている。また,3号館(3階)は
洋式トイレの入口および中に補助手すりを設置し改善を行っている。1号館はスロープ,
自動ドアとも未設置である。サークル棟は特にそれらの設置予定はない。また,本館の入
り口のうち主な2か所に車椅子を置き,来館者の臨時の利用に備えている。構内は基本的
に平坦であり,極端な段差等はない。
駐輪場および駐車場は充分整えられている。
グラウンドはナイター設備があり,夜間の利用も行われている。テニスコートについて
も全天候型でナイター設備を備えている。
【点検・評価】
各棟を結ぶ渡り廊下の設置も必要と考えられるが,緊急性としての順位は低い。
3号館と本館は渡り廊下で結ばれており,学生が利用する学生部や保健室等への利便性
はよい。また,大学会館には生協店舗や食堂,和室談話室,集会室,大ホール,ロビーを
備えており学生に有効利用されている。1号館には食物栄養等に関する実験室や実習室が
集中して配置され利便性を高めている。エレベーターは2号館に,身障者用トイレは2号
館,図書館および体育館に設置されているが,4階建の3号館にはエレベーターおよび身
障者用トイレは設置されていない。
学生食堂については,昼食時間帯等利用者が多く座席数が不足する時もあるが,増築は
困難なため,とりあえず席数を増やし使用している状況にある。
【将来の改善策】
1号館は1961(昭和36)年,2号館は1962(昭和37)年建設と古く老朽化が進んでいる
が,立て替えは困難を要するため,現在の建物で耐震改修を行うとともに快適性や利便性
を考慮しながら随時建物や設備の維持補修を行っていく。
バリアフリー化については,特に3号館へのエレベーターや身障者用トイレの設置は大
きな予算を伴うことから財政逼迫の中ではあるが,耐震工事の完成時期を見極めながら設
置者の理解を得られるよう努力していくこととする。
163
(d) 組織・管理体制
【現状の説明】
施設・設備等の維持・管理は事務局の所管であり,学内清掃業務,ゴミ回収業務,エレ
ベーター保守点検業務,電話交換設備保守点検業務,電気設備保安業務,消防用設備点検
業務等については専門業者と委託契約を締結し常に良好な状態の維持に努めている。これ
らの契約は1年ごとに更新し,更新の際に内容の確認を行っている。
衛生,安全については,鹿児島県職員安全衛生管理規程に基づき本学には鹿児島県立短
期大学衛生委員会が設けられており,労働安全衛生法の趣旨に添うべく総括安全衛生管理
者(鹿児島県総務部長)の管理下で必要な措置が取られることとなっている。
防災については,鹿児島県立短期大学学内防火措置要綱を定め,各室各棟に火元責任者
を置くとともに危険物,劇薬等の表示と取扱者の明示を義務づけ,併せて全教職員,全学
生に対して火気や危険物の取扱いについての厳守事項を定めている。
学生および教職員ならびに学校施設に関する危機の発生に際しては,鹿児島県立短期大
学危機対策本部設置要綱を定め,本部長たる学長の下,危機対策班を3班設置し,分担事
務ごとに機動的に対応することとしている。また,火災(勤務時間内・外)など9種の災
害類型ごとに対応フローをまとめた危機管理事例対応マニュアル集を作成し教職員に配
布している。
防犯については学生の約9割が女性であること,第二部(夜間部)を有することなどか
ら,夜間照明はもとより,日常の安全,防犯等についても,専門業者と契約を締結し,夜
間および休日には常時警備員を配置し監視や安全の確保を図っている。
【点検・評価】
施設,設備の管理等については,学内の良好な環境を保持し,学生等の安全を確保する
ため特段の配慮を心掛けている。特に火災については各人の意識の持ち様が重要なので,
昼間部,夜間部別々に毎年防火訓練を行うとともに,火元責任者の自覚を促すほか防災関
連厳守事項の啓発を行うこととしている。
施設の衛生管理については,調理実習室等の害虫駆除,受水槽等の清掃など定期的に実
施することとしており適正と考える。
火災以外に係る危機管理については,責任体制やシステム作りは適正と考えられるが,
事例がないこともあって,システムどおり機能するかどうかについての検証が困難である。
なお,2009(平成21)年度には建物全体を監視している自動火災報知設備の火災受信機
(本館に設置)を取り替える予定であり,さらに迅速で安定的な監視ができることになる。
【将来の改善策】
これまでに火災等が生じた経験がなく,一同に危機意識が不足しがちであることから,
現在の危機管理システム等を適宜点検するとともに,不測の事態が発生した場合にはマニ
164
ュアルに沿った迅速で的確な対応が出来るよう,啓発や訓練を通して体制の確立を図る。
165
166
第 11 章
図書館および図書・電子媒体等
目標
学生自らが主体的に学習・研究を行うことを教育の柱とする高等教育機関において,研
究活動の対象となり手段となる文献,データ等の情報の収集と提供は,大学にとって欠く
ことのできない研究学習条件である。その意味で図書館は大学の心臓(the heart of the
university)である。本学がその教育理念に掲げる課題探求・解決能力の開発にとっても,
この環境は不可欠の前提である。また,以上の条件は単に施設的なものではなく,施設の
有効利用を促進する種々のサービス,図書館利用への意識の向上など総合的な運営の在り
方とも深く結びついている。そのために以下の目標を持つ。
①
本学附属図書館は,本学学生・教職員,地域住民の図書館利用を高めるためのサービ
スの向上に努める。
②
本学における学習・教育研究の発展を支援する。
③
必要な紙媒体,電子媒体その他の学術情報を,保存,整理し,広く本学内外の利用に
供する。
④
大学図書館間・地域公共図書館との連携を深め,図書情報・研究情報の相互連携を図
り,地域に貢献する。
167
(a) 図書,図書館の整備
【現状の説明】
蔵書図書は 12 万 8 千冊余であり,毎年約 2,000 冊~3,000 冊増加している。雑誌につい
ては,学術雑誌 1,635 誌を受け入れている。また,近年では視聴覚資料も徐々に増加して
おり,2008(平成 20)年度末においては,880 タイトルがそろっている。電子ジャーナル
は所蔵していない(基礎データ表 29)。
毎年の増加で図書館の蔵書収容能力は限界に達しつつある。大学附属図書館という性格
上,蔵書の新規購入は不可欠であり,新たな収容スペースを確保することが望まれる。近
年老朽化が目立つ建物自体の大幅な増改築が必要な時期に達している。蔵書の精選のため,
①短期的に内容の価値が無くなると判断される,コンピュータ関係の入門書や,就職関連
の書籍については,一定期間後廃棄可能な雑誌として購入している,②寄贈図書について
制限を設けている。
県費による図書の購入は,金額ベースでみると,表 11−1のとおりである。2006(平成
18)年度までは明確な図書選定の制度がなかったが,2007(平成 19)年度から 2009(平成
21)年度にかけて,図書選定の制度改革およびその改正を行い,特に,学生の勉学支援を
中心とする選書システムを導入し,また,シラバスに合わせた参考図書の購入,教員・学
生の推薦図書制度など,従来の体制を改めた。2009(平成 21)年度からは第一部,第二部
の学生自治会の協力を得て,学生図書委員を選出する体制をとり,学生の要求にそった蔵
書選定のシステムを加えた。これらの結果,学科図書の早期執行が可能になるとともに,
学科が必要とする書籍,学生が希望する書籍が蔵書されるように改善がなされた。
表 11-1 図書費(県費)の概要
学
科
文学科
生活科学科
専
2008(平成 20)年度決算,単位:円
攻
日
文
(856,470)
英
文
(960,990)
食
栄
(420,838)
生
活
(627,185)
図書費
1,817,460
1,048,023
商経学科(経済,経営情報,第二部商経)
1,070,916
図書館(全学共通)
2,066,515
その他(視聴覚教材用)
155,645
合計
6,158,559
168
表 11—2 分野別蔵書冊数
教養教育
専門教育
人文
41,973 冊
日文
3,517 冊
自然
19,447 冊
英文
2,119 冊
社会
26,250 冊
食栄
4,239 冊
860 冊
生活
3,468 冊
2,246 冊
商経
5,701 冊
外国語
体育
教職教育
教育
2,049 冊
寄贈図書
寄贈図書 11,576 冊
総計
128,445 冊
県費以外の予算として,鹿児島県立短期大学振興会の寄付を受けている。
表 11-3 鹿児島県立短期大学振興会の寄付金(図書ベース※,2008 年度)
科目
内容
図書購入費
226,214 円
雑誌購入費
246,445 円
計
472,659 円
※ 振興会からの寄附金のうち,47,250 円は,図書館広報紙『図書館だより』発行費に充
てている。
本学の図書館は,1972(昭和 47)年度に建設され,当時の延べ床面積は 885.68 ㎡であっ
た。その後 1992(平成4)年度に増築され,現在の延べ床面積は 1,432.78 ㎡である。1階
には閲覧室,書庫,事務室があり,2階には館長室,共同研究室,視聴覚室,第2閲覧室,
第2書庫,製本室がおかれている。
図書館蔵書全体が開架図書である。閉架書庫はないが,教員研究室,学科資料室,地域
研究所に一部の図書・資料が分置されている。レファレンス・ルームはないが,レファレ
ンス関連資料は閲覧室のそばに集中して配架されている。また,移動書架があり,雑誌類
を保管している。
検索用のパソコンが入り口ホール利用者端末として4台配備され,図書の検索ができる。
検索結果は印刷できる。書庫内にも検索用パソコンが1台置かれている。事務室内にコピ
ー機が1台配置されている。コピーカードによる管理が行われている。事務室内に,CD
の修復機がある。図書館情報システム,学内LANサーバが置かれている。製本室が配置
され,プリンタ,プロッタ,製本機などがそろっている。第2閲覧室では,ビデオ,DV
D鑑賞のための機器が6セット配置されている。視聴覚室では,OHP,ビデオ,プロジ
ェクター,CRT,音響設備が配置されている。また,館内に荷物置き用のロッカーを配
置している。第1閲覧室の座席数は 88 脚,第2閲覧室の座席数は 12 脚である。その他,
各階書庫の中に,机,椅子がそれぞれ 1 脚ずつある。
169
開館日数は年間 235 日である(2008(平成 20)年度実績)。図書館の開館日と開館時間は
以下のとおりである。休館日は,土日,祝休日,年末・年始,その他館長が必要と認めた
日とされている。
・授業期間中 月曜~金曜 9時~21 時 10 分
・休業期間中 月曜~金曜 9時~17 時 00 分
夜間の利用時間帯については,遅番の職員が対応している。第二部学生の利用可能性を
拡大することを目的に,2006(平成 18)年度に,図書館の利用時間を授業時間にあわせ,
従来の 21 時から 21 時 10 分に変更した。
所蔵図書の書誌情報はすべて電子化され,インターネットで学内・学外からのOPAC
(オーパック Online Public Access Catalog:オンラインによる電子的図書目録カード)に
よる図書検索が可能である。また,GeNii(ゲニー:国立情報学研究所(NII)の Nii 学
術総合検索システム)を通じた検索が可能である。
図書館の利用者数については,年ごとに違いがあるが,おおむね年間1万人程度であり,
1 日あたりに換算すると 40 人余りとなる(年間の開館日数は約 240 日)。近年の数値は低下
傾向を示しているが,ここ数年は下げ止まり情況である。だたし,利用者数の集計は,入
口に設置している数取器によっており,これは手動式(入館者自身が数取器を押す仕組み)
であるため,利用者数の正確な数値は上記の数字とは多少異なる。
貸出人数,貸出冊数については表 11-4のとおりである。2002(平成 14)年度をピーク
にして,下がり気味であった貸出人数,貸出冊数は,2005(平成 17)年までに低下したが,
2007(平成 19)年度以来,上昇しつつある。
表 11-4 図書の貸出の状況および視聴覚資料の利用状況
年度
図書貸出人数
図書貸出冊数
学生
学生
教職員
視聴覚資料の利用状況
教職員
人数
タイトル数
99
2,468
468
4,200
810
-
00
2,292
549
3,860
1,028
-
-
01
2,403
652
4,085
1,108
1,133
951
02
2,934
699
5,091
1,189
1,815
1,322
03
2,743
474
4,575
807
2,492
1,928
04
2,635
320
4,691
658
2,298
1,721
05
2,001
370
3,395
780
2,343
1,900
06
2,291
338
3,723
663
2,007
1,452
07
2,181
503
3,659
855
1,906
923
08
2,363
629
4,159
1,174
1,058
504
一方,視聴覚資料の利用については,表 11-4のとおり,2001(平成 13)年〜2003(平
170
成 15)年にかけて利用者が増加したものの,2005(平成 17)年度まではほぼ横ばいとなり,
その後大きく低下してきている。2008(平成 20)年の低下は,授業期間中に第2閲覧室に
雨漏りによる天井の一部崩落があり,1 月余り閉鎖されたのもその減少理由の一つである。
利用度を高めるため,年 1 回『図書館だより』を発行し,また,図書館内で各種情報提
供を行っている。入学時には,図書館オリエンテーションを実施し,図書館利用の手引き
を配布し説明している。また,勉学支援を目的に,2007(平成 19)年度から,論文作成セ
ミナーとして,図書館によるビデオ上映を行っている。
学生の便宜を図るために,これまで研究室に分置されて専門図書については,2007(平
成 19)年度に研究室内所蔵図書の貸出・返却窓口を図書館に一本化した。また,シラバス
に記載される参考図書とキャリア形成等に関連する図書のコーナーが設置されている。
学生の読書意欲を喚起することを目的に 2008(平成 20)年度から,教員による推薦図書
コーナーを作り,ホームページで掲載するようにした。2009(平成 21)年度には,推薦図
書をさらに身近にすることを目的として,推薦図書の配置場所に推薦コメントカードを添
付し,学生からの推薦図書も示すようにした。
現在,図書館は,学外利用者に対しては蔵書の閲覧のみを許可している。閲覧希望者に
は申請に基づいて特別閲覧票を発行している。利用者数は,2008(平成 20)年度は 476 人
であり,開館日平均で2名にしかすぎない。概ね日中の利用(432 人)となっている。
【点検・評価】
図書および資料は,蔵書量としては十分であるが,予算が限られているため,新規購入
図書について十分とは言えない。電子ジャーナルについても予算の問題があり,整備され
ていないが,現在は大きな問題とはなっていない。
所蔵スペースの不足は深刻な事態となりつつある。今後,図書館の増改築といった施設
改善の検討や,受け入れに際しての制限などの検討が必要である。
学科・専攻の特性に合わせた体系的な図書購入,特に学生の勉学支援を目的とした図書
購入の体制が整備されたことは評価すべきであり,今後この体制を継続することが大切で
あるが,このような計画にもかかわらず,従来からの蔵書の体系性の確保などについては,
まだ本格的な検討が行われていない。改めて書庫全体の検証と,蔵書計画を検討する必要
がある。予算については,各学科におおむねバランスよく配分されているといえる。ただ
し,このような予算の配分が図書等の「系統的な整備」に結びついているのかに関しては
検証が必要である。
施設の老朽化により毎年,修繕が必要となっている。また,書庫の収容限界が近づいて
おり,全体的な施設改善が必要となっている。さらに図書紛失防止のためのブック・ディ
ティクティブ・システムがないことは蔵書管理上問題がある。
図書館利用環境は概ね充実している。(1)閲覧室の座席:座席数は混雑時には不足がちで
あるが,1日あたりの利用者数からすると十分確保されている。(2)開館日数・時間:第二
171
部学生にも対応しており,開館時間は問題ない。土日祝日開館も考えられるが,職員の勤
務形態から考えると困難であり,そこまでの要望も少ない。(3)図書館ネットワーク:図書
館ホームページに新着情報一覧,OPAC検索窓,他図書館・データベースへのリンクな
どを設け,快適なサービスを提供している。
活字離れが言われている中,図書館利用が大きく減少していないのは,蔵書選定の適切
性,オリエンテーションや図書館だよりの発行などによると思われる。視聴覚資料の活用
が減っているのは,自宅での視聴覚環境が向上したため,図書館での利用が減った可能性
がある。地域住民の利用は,活発とはいえない。
【将来の改善策】
図書購入に関しては,限られた予算を有効に利用するため,予算配分,選定方法の適切
性をアンケート調査や利用状況から常に点検を続ける。必要な予算確保について,設置者
に対し訴え続けていく。
予算と時間を要するが,書庫の拡大(状況が許せば図書館の建て替え)を設置者に要求
する。一方で利用見込みのない古い資料の除籍を行い,保管スペースを確保する。
施設の老朽化と所蔵スペースの不足については,予算問題の解決という課題があるが,
増改築を含めた抜本的な対策およびブック・ディティクティブ・システムの導入を検討し
要求していく。
利用環境には,特に問題がないため,現状を維持する。
利用状況の改善をめざした利用しやすい環境作りのために,新入生オリエンテーション,
『図書館だより』,学生図書委員による選書といった活動を継続・発展させる。視聴覚教材
については,自宅環境も考慮して,教材選定を行っていく。
(b) 専門職員の配置
【現状の説明】
現在図書館は,図書館司書資格を持つ専任職員1名(副館長),専任職員2名,図書館司
書資格を持つ非常勤職員1名の4名体制になっている。
【点検・評価】
今日の図書館に求められている課題は大きく,特に情報支援,研究支援のためのレファ
レンス能力を持つ図書館運営を支える専門職員の配置は欠かせないが,その点で本学は十
分な体制となっていない。
加えて,本学図書館の職員は3年程度で他部署に異動するため,職員の技能蓄積・育成
のための人事のあり方に検討が必要である。
夜間の開館を含む図書館職員の業務を配慮すると,専門職員が不足しており,改善が必
要である。
172
【将来の改善策】
適切な専門職員の配置を設置者とともに検討を続ける。さらに職員の研修もこれまで以
上に充実を図る。
(c) 学術情報へのアクセス
【現状の説明】
図書館ホームページには,オンライン目録OPAC検索窓があり,利用者は学内外から
のアクセスが可能である。
国内外の他の大学との連携・協力についてはILL(Interlibrary Loan:相互貸借)サー
ビスを利用している。
近年まで,鹿児島県大学図書館協議会(県大図協)が中心となって県下大学・短大・高
等専門学校での図書横断検索システムが運営されていたが,予算問題で活動を停止してい
る。鹿児島県大学連携事業および県大図協では,鹿児島県の公立図書館も加えた横断検索
システムの構築を検討している。
また,現在,鹿児島県内大学間で学術情報のデータベース構築が検討されている。
【点検・評価】
本学の図書館のネットワークのアクセスについては,十分整備されている。
現在,他図書館との相互利用サービスは,ILLを通じて,文献複写と相互貸出の依頼
と受付という形で行われている。広範囲にわたる学生や教職員の専門分野全てをカバーす
るには,他図書館所蔵の文献入手も必要になるので,複写サービスは重要である。現在複
写依頼はウェブ上でできるので,手続きは簡単になったが,将来的には県内の大学図書館
と公立図書館による図書相互貸し出しシステムの検討などが必要である。
学術情報の電子化に伴い,研究者・研究業績のデータベース化に対応する必要が生じて
おり,また,そのための大学間協力をいっそう進める必要がある。資料収集についても他
図書館との連携は重要であると考えられる。
【将来の改善策】
本学の図書館ネットワークについては,現状の環境を維持していく。
ILL利用を継続するとともに,ILL利用を支援するために図書館のレファレンス業
務の充実を図る。職員の配置育成について,設置者に要求していく。
県内大学間で,①大学図書館横断検索システムの構築に向けて連携を強化する。②公立
図書館との相互貸借システムの可能性を追求する。③学術情報データベースの構築を進め
る。
173
(d) 図書館の地域開放
【現状の説明】
鹿児島県立短期大学附属図書館公開実施要項にもとづき,県内に住所または勤務先を有
する者に開放されている。
利用状況については,
(a)図書,図書館の整備 ④利用状況 (2)地域住民の利用 を参照。
また,図書館の地域公開と地域の知識欲に本学が応えることを目的に,毎年一つのテー
マを設けて,金曜日の夜に数回にわたって図書館主催の金曜講演会を開催している。
(第7
章「社会貢献」参照)
【点検・評価】
地域に開放はされているものの,学外利用者はわずかである。
金曜講演会については,第7章「社会貢献」参照。
【将来の改善策】
今後,学外利用者の増加のためには,図書館利用についての情報発信を強化する。また,
金曜講演会については継続的に行っていく。
174
第 12 章
管理運営
目標
本学が掲げる教育理念を達成する上で,本学の組織運営の適切さは不可欠な条件である。
本学は,高等教育機関として相応しい環境を維持し,民主的かつ効率的な運営を行う。
175
(a) 教授会
【現状の説明】
大学の管理運営に関連する構成組織の責務と権限は,国の「学校教育法」と「短期大学設
置基準」を法的根拠として,設置者である鹿児島県が「鹿児島県立短期大学の設置及び管理
に関する条例」(昭和39年),「鹿児島県立短期大学学則」,
「同処務規程」を定めて基本規程
とし,各構成組織と構成員の責務と権限を明確にしている。また,この基本規程にしたがっ
て大学の業務活動と運営を円滑かつ適切に行うために,以下で述べるように,本学では教授
会運営,学科運営,委員会等の諸規程等(約80)を定めて明確な活動の根拠としている。
鹿児島県立短期大学学則第 37 条により本学には教授会が置かれている。
教授会は,学長,教授,准教授,講師,助教および助手によって構成される。助手は出席
できるが議決権を持たない。教授会運営を円滑に行うために,事務局長が幹事を行い,事務
局次長,学生部次長,会計課長,教務課長,図書館副館長が参加している。
教授会は本学の意思決定機関であり,全学的視野から本学の理念,教育目標,アドミッシ
ョン・ポリシー,カリキュラム決定,教員人事,学生指導の全般にかかわっている。教授会
の下に各種委員会が設置されている。
学則 38 条により,教授会は次の審議事項を分掌する。
(1)学長の選考に関する事項
(2)教授,准教授,講師,助教及び助手の人事に関する事項
(3)学則及び学内諸規程に関する事項
(4)学科及び専攻課程に関する事項
(5)教育課程に関する事項
(6)学生の入学,退学,転学等,休学,留学及び卒業に関する事項
(7)学生の成績に関する事項
(8)学生の厚生補導に関する重要な事項
(9)学生の賞罰に関する事項
(10)自己評価等に関する事項
(11)その他本学の教育研究及び運営に関する重要な事項
また,教授会は,学長,三役(学生部長,図書館長,地域研究所長)
,学科長,入試委員
長,教務委員長,学生委員長,人事委員,教員選考委員を選出する。
教授会は,鹿児島県立短期大学教授会運営規程に基づき,学長が招集し,原則として休業
期間を除き毎月1回定例会が開催される。他に必要に応じて臨時教授会が開催される。
本学の最終的な意思決定は教授会が行うが,あらかじめ委員会が審議事項を調査・審議し
ている。教授会の議事は,各委員会・事務局から提出される議題を議事運営会議が調整し,
そこで確認された議案に基づいて行われる。議事運営会議の議長は学長があたる。
教授会は構成員の3分の2以上の出席で成立する。教授会の議長は学長が担う。議案は,
その内容により,構成員の出席の過半数または3分の2以上の賛成等で議決される。幹事が
176
議事要録を作成する。
【点検・評価】
教授会運営は学則等諸規程に則り,以下のように適正に行われている。
2007(平成 19)年より,戦略的で効率的な大学運営についての改善のための議論が行わ
れ,教授会運営,委員会運営,決裁システムなどが大幅に改革された。現在は,その改革の
定着化の過程にあり,教授会を中心とする学内運営は,当初の改革方針の実現と改善のため
の調整が課題となっている。
学科代表からなる委員会において審議された事項について,教授会で審議されており,全
構成員の意思が反映されている。教育課程については,教務委員会が分掌した上で,教授会
で審議されている。また,人事については,人事委員会の提案を教授会で審議し,投票によ
り決定している。
教授会運営の円滑化を目指し,本学運営体制が,委員会,学科での事前調整に力を入れて
きたことは評価すべきであるが,これは同時に次の二つの問題をも生み出すことになってい
た。第一は,意思決定に迅速さを欠くということである。定例教授会が月1回であり,各委
員会も月1回開催が通常であって,これに学科での審議を加えると,一つの議題を決定する
のに,数ヶ月の日数を要する。第二は,新しい戦略的課題を検討する体制に欠けてきた点で
ある。
今日の本学を取り巻く状況変化に戦略的,機動的に対応するために,2006(平成 18)年
度より大学組織運営の戦略化と効率化を図るため,自己点検・評価とその改善に努めてきた。
第一は,自己評価・将来構想委員会の設置と,中長期構想に対応した学内運営の形成である。
第二は,それにもとづく単年度計画の明確化であり,各委員会は,年度末に当該年度課題と
達成情況,翌年,翌年以降の課題についての総括を行い,全学運営委員会での審議に基づい
て,毎年 4 月教授会において,学長から当該年度の一般方針の提案が行われるようにし,学
内運営の骨子を明瞭にしながら,学内運営を行うように改善を行った。
【将来の改善策】
今後も,教授会運営の効率化のため,自己評価・将来構想委員会における中長期方針の検
討,全学運営委員会による短期方針の具体化,各委員会における個別課題の解決を前提に,
全学の総意の円滑な形成を図る。
(b) 学長,学科長,三役の役割と選任手続き
【現状の説明】
(b)-1 学長
本学の処務規程において,学長の役割は,「知事の命を受け,大学の事務を総理し,所属
職員を指揮監督する」こととされており,予算執行,本学事務に関する学長名の文書往復,
177
教職員の任免に関する具申,職員の服務および賞罰,職員の出張命令および旅行依頼,職員
の服務上の願・届出等の処理,非常勤職員の任免,教育上の実習委託,授業料の減免,情報
公開および個人情報保護,その他簡単な事件に関すること等を専決することができる。
学長は,教授会議長,議事運営会議議長,自己評価・将来構想委員会委員長,FD委員会
委員長,人事委員会委員長,衛生委員会会長を兼任する。
学内におけるリーダーシップを高め,戦略的な発議を行うために,2006(平成 18)年度
から,学長の総務運営委員会(現:全学運営委員会)へのオブザーバー参加体制,三役会議
のオブザーバー体制がとられ,三役,学科長とのパイプを強化し,学長のリーダーシップが
強められた。
これまで,学長はすべての決裁を行わなければならなかったため,決裁に多くの時間を割
く必要があった。学長不在時や事故などによる学長の決裁不能時に対応するため,2006(平
成 18)年度,鹿児島県立短期大学処務規程第3条を改正し,第1位~第3位までの代決者
を決定した。
学長は,鹿児島県立大学学長選考規程および細則に基づき,教授会で選出される。規程で
は,教授会が選出した学長選考管理委員会が候補者の推薦者を募集する。推薦については,
学長,常勤の教授,准教授,講師および助教ならびに助手代表1名および事務職員代表1名
が可能である。選出に当たっては,無記名による投票で行われる。学長,常勤の教授,准教
授,講師,助教,助手代表1名,事務職員代表1名がそれぞれ1票を投じることができる。
学長に選出された者は,県知事によって任命される。学長の資格は大学の教授の経歴を有す
ることである。学長の任期は4年とし,再任を妨げないが引き続き6年を越えて存在できず,
通算して 10 年を限度とする。
(b)-2 学科長
本学処務規程によれば,学科長の役割は,学長を補佐して学科の事務を掌理することであ
る。学科長は,議事運営会議,全学運営委員会,自己評価・将来構想委員会,FD委員会に
出席して,全学の活動を管理すると同時に,学科会議を招集し,議長を務める。第一部商経
学科と第二部商経学科にあっては,これらを一つの学科と見なし,商経学科長を1名おいて
いる。
学科長は,鹿児島県立短期大学管理職選考規程に基づき,教授職より選出される。学科長
の任期は2年であり,再任は妨げられていないが,連続2期4年を限度とする。
(b)-3 三役(学生部長,図書館長,地域研究所長)
本学には,学生部長,附属図書館長,地域研究所長を置き,三役とよんでいる。三役は,
以下のように事務組織を分掌している。
178
表 12-1 三役と事務組織 2009(平成 21)年 5 月1日現在
学生部(教務課・学生課)
学生部長
図書館
図書館長
地域研究所
地域研究所長
三役は,全学運営委員会,議事運営会議,自己評価・将来構想委員会の構成員であり,ま
た,その職務にしたがって各種委員会に参加している。
表 12-2 三役が参加する委員会・会議
2009(平成 21)年 5 月1日現在
委員会・会議
三役の配置
議事運営会議
学生部長,図書館長,地域研究所長
全学運営委員会
学生部長,◎図書館長,地域研究所長
自己評価・将来構想委員会
学生部長,図書館長,地域研究所長
入試委員会
学生部長
教務委員会
学生部長
学生委員会
学生部長
国際交流委員会
◎地域研究所長
地域研究・生涯学習委員会
◎地域研究所長
図書館・情報システム委員会
◎図書館長
FD委員会
地域研究所長
◎印は,委員会委員長を兼ねる。
三役は必要に応じて,三役部会で打ち合わせを行っている。
三役部会は不定期に開催され,
学内運営全般に関する事項および緊急な全学的課題の事項を取り扱っている。
三役は,鹿児島県立短期大学管理職選考規程に基づき,教授会の選挙によって教授職から
選出される。任期は2年であり,再任は妨げられていないが,同一の職については連続2期
4年を限度とする。
【点検・評価】
学長の役割としては概ね適切な制度となっている。しかし,学内の意思決定は教授会が行
っているため,学長の裁量には制約がある。また,予算の編成については設置者が最終的な
決定を行っている。これらは,学長の独断を防ぐ一方で,学長のリーダーシップが発揮しに
くいシステムとなっている。この間,大学運営の戦略化や効率化を目指して,一定の改革が
行われてきたが,今後も学長のリーダーシップが発揮しやすい環境作りが必要である。学長
の選任手続きは透明,公正であり,適切といえる。
学科長の役割としては概ね適切な制度となっている。しかし,学科会議で取り扱う事項が
179
多いため,学長の補佐など全学的な役割が看過されやすいといえる。学科長の選任手続きは
適切であり,当面改革の必要がない。
規程における三役の役割は適切であるが,対外的な役割や突発的な事項など規定外の業務
を担当する事が多く,結果として過重な負担となり,適切とはいえない。三役の選任手続き
は適切であり,当面改革の必要がない。
【将来の改善策】
学長の権限と教授会の役割を検討することで,
リーダーシップが発揮しやすい環境整備を
行っていく。引き続き,適切な選任手続きを行っていく。
学科会議を効率的に行うことで,学長の補佐を中心とした全学的な業務とのバランスをと
る。引き続き,適切な選任手続きを行っていく。
本来業務以外の役割については,なるべく他の教員への分担を行う。引き続き,適切な選
任手続きを行っていく。
(c) 教学組織と設置者との関係
【現状の説明】
本学は鹿児島県立短期大学の設置および管理に関する条例によって設置されている。
本学は教授会自治の下で運営されており,学長および教員人事,教学・研究活動の運用に
ついて設置者はそれを尊重している。
学則改正をする場合には,教授会の議を経て,知事が制定する。
学内の諸規定に関しては,教授会が決定するが,法令に準じているか,規程集の表記が適
切であるかなどについては,県の指摘を反映して調整している。
授業料は設置者の条例(鹿児島県立短期大学授業料等徴収条例)によって定められている。
また,本学の予算は本学からの予算要求に基づき,知事が編成し,鹿児島県議会での議決に
よって最終的に決定される。
設置者における本学に関する事務は,総務部学事法制課が所掌している。本学の運営につ
いては,県監査委員による監査が行われている。
2008(平成 20)年度から,本学の学長,学生部長等教学組織の代表および事務局長と学
事法制課との定期的な協議の場を設け,意見交換を行っている。
【点検・評価】
条例および諸規則に基づき設置者と本学の役割分担は適切に行われており,設置者は大学
の自治を尊重している。しかし,設置者の財政難を背景に,予算要求において,本学の意向
が十分に反映できない状況にある。また,県立大学の特性として年度途中の外部資金の受け
入れ等,予算手続きに制約がある。
県監査委員による監査では,本学の業務執行については適切であると評価されている。
180
設置者との日常的な接触は主に事務局で行われており,連携はとれている。学事法制課と
の協議は 2008(平成 20)年度に始まったばかりであり,さらに発展させる必要がある。
【将来の改善策】
設置者との役割分担は現状を維持していくとともに,今後も綿密な連携,協力関係をとっ
ていく。予算執行手続きについては学事法制課との協議において,柔軟な対応策を調査・研
究する。
また,鹿児島県民が必要とする高等教育機関のあり方や,本学の将来構想,教育環境の改
善などについて,設置者と意見交換を図っていく。
(d) 意思決定
【現状の説明】
本学においては,教授会の議に基づき,学長が事務を総理している。
本学の管理運営組織は,教授会・学科会議・学内委員会・事務組織によって構成される。
学則に基づき,最終的な意思決定は,教授会の議を経て学長が行っている(教授会について
は本章(a)教授会を参照)
。
【点検・評価】
管理運営に関わる意思決定プロセスについては概ね適切である。ただし,学科会議,委員
会の審議を経ていくために,民主的ではあるが迅速性に欠ける。
【将来の改善策】
民主的なプロセスは維持していくが,学科会議,委員会の審議の効率化を図る。
(e) 管理運営への学外有識者の関与
【現状の説明】
本学の管理運営については,学外有識者が関与するシステムをとっていない。全般的な管
理運営に関する学外有識者の関与については,2009(平成 21)年度から外部評価委員会制
度を立ち上げた。
【点検・評価】
外部評価委員会制度の有効性については,今後の推移による。財務を中心とした県の監査
が,学外有識者による関与の役割を果たしている。
【将来の改善策】
外部評価委員会制度の有効性を確認する(詳細は 14 章参照)。
181
182
第 13 章
財務
目標
①
教育研究目的・目標を具体的に実現するため,設置者との連携を通じて教育研究およ
び管理運営を安定的に確保する財政基盤を確立する。
②
教育研究成果の向上に努め,その実績を挙げ,また地域への貢献を通じて,県立短期
大学としての役割,存在意義について,県民の理解を深めてもらい,その支持を得て,
財政の安定化を図る。
③
県民への説明責任を果たすため,財務内容の明確化,透明性を確保するとともに,最
小限の経費で最大の効果を上げるよう努める。
④
科学研究費補助金その他の外部資金の獲得に努める。
183
(a) 教育研究と財政
【現状の説明】
本学は,設置者である鹿児島県の機関として,県内部の予算要求手続きを経て予算配分
を受けて管理運営している。
このことから,本学の財政は,設置者である鹿児島県の予算に依存しているが,県では
2005(平成17)年3月に,非常事態ともいうべき危機的な財政状況を踏まえ県政を支える
行財政基盤を立て直し,持続可能なものとするため,今後の県政運営の基本方針として,
概ね10年程度の中・長期的な視点に立って,あるべき行財政構造の姿やその実現に向けた
改革の方向性を示すために「県政刷新大綱」を策定し,歳入確保と歳出削減に取り組んで
いる。
このため,2005(平成17)年度県全体の一般会計予算は,対前年度比95.7%,短期大学予
算は97.3%となっており,予算の減額幅が大きくなっている。(表13―1)
また,2004(平成16)年度と2008(平成20)年度の予算を比較すると,県全体では90.1%
であり,短期大学予算は98.3%であるが,表13-2記載のとおり,短期大学予算としては,
2007(平成19)年度,2008(平成20)年度は受託研究費が臨時的収入として計上されてお
り,この額を除くと2004(平成16)年度と比較して,それぞれ94.4%,97.2%となってい
る。
いずれにしても,設置者としては本学に対して予算上は一定の配慮をしているといえる。
表13-1
一般会計歳出予算(当初)(人件費を含む。)
区分
短期大学
2004年度
806,012
2005年度
783,970
2006年度
787,906
(単位:千円)
2007年度
769,985
2008年度 08/04年度
792,476
98.3%
県全体一般 857,087,000 820,602,000 806,827,000 792,033,000 772,248,000
会計予算
90.1%
予算
歳入状況については,一般財源のほか,授業料,入学検定料,入学料など表13―2のと
おりである。
概ね,授業料,入学検定料および入学料で全体の33%,県の一般財源から66%で,これ
らで99%を占めている。
184
表13-2
区
短期大学歳入状況(決算)(単位:千円)
分
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
191,241
191,962
200,728
204,134
200,536
197,720
25.5
入学検定料
15,602
15,021
12,582
14,697
13,914
14,363
1.8
入学料
45,832
45,501
50,341
44,045
45,510
46,245
6.0
52
52
52
52
189
79
0.0
2,900
2,894
2,441
2,388
2,465
2,618
0.3
-
-
-
8,900
8.883
3,556
0.5
一般財源
523,153
525,432
502,414
505,807
493,118
509,945
65.9
合計
778,780
780,862
768,558
779,823
764,615
774,526
100.0
授業料
財産収入
諸収入
受託研究費
2008年度 5カ年平均 割合%
歳出状況については,表13-3のとおりである。
短期大学費全体では,2004(平成16)年度と比較して2008(平成20)年度は98.2%であ
り,短期大学予算の伸びと類似しているが,個別の項目では大きな違いがある。
給料・職員手当等の人件費は6億5,000万円前後で推移しているが,物件費等は大幅に
減額しており,特に教育研究費は2004(平成16)年度と比較して2008(平成20)年度は63.5%
となっている。
なお,教育研究費には,教育研究活動費,学術成果刊行費,学生教育実験実習費,地域
研究活動費,図書館図書購入費等が含まれている。また,魅力ある短大事業には,教育機
器整備費や国際学術交流事業費等が含まれている。
教育研究費のうち,教育研究活動費および学生教育実験実習費の個々の教員への配分に
ついては,教授会の下に置かれている全学運営委員会において協議し,その結果を教授会
に報告し,承認を得ることになっている。
本学は九州南端に位置し,各種学会活動の中心は関東,関西方面であることから,学会
に属する教員にとって旅費の負担が大きく,研究活動を行うためには不利な状況にある。
なお,これらの他に科学研究費補助金があり,研究代表者に係るものとして2006(平成
18)年度に510万円,2007(平成19)年度に380万円,2008(平成20)年度に360万円獲得
している。民間からの奨学寄附や研究委託については,実績はないが,独立行政法人農業・
食品産業技術総合研究機構による先端技術を活用した研究高度化事業を2007(平成19)年
度から3年間にわたり受託している。
設置者の財政規模が縮小しつつある中で,本学としても業務の効率化等による経費の抑
制等を図る必要があり,大学としての中・長期的な財政計画は策定し得ない状況にある。
185
表13-3
短期大学歳出状況(決算)(単位:千円)
区
分
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度 08 /04年度
短期大学費
778,780
780,862
768,558
779,823
764,615
98.2 %
給料・職員手当等
637,561
656,347
652,413
656,774
649,437
101.9 %
物件費等
141,219
124,515
116,145
123,049
115,178
81.6 %
(給与費等を除く)
内
管理費
67,283
60,917
60,272
60,583
56,635
84.2 %
訳
教育研究費
47,877
40,045
35,672
33,249
30,385
63.5 %
魅力ある
26,059
23,533
20,201
20,317
19,275
74.0 %
8,900
8,883
短大事業
受託研究費
皆増
【点検・評価】
地方公共団体を設置者とする大学は,一般的に財政基盤が盤石で少なくとも予算が減少
することはないと思われてきた。しかし,昨今の国,地方を通じた財政の逼迫は鹿児島県
のような財政基盤が脆弱な自治体にとっては致命的であり,政策性の高い投資的経費の削
減はもとより,教育研究や人材育成のようなソフトインフラに係る経常的経費にまで及ん
できている。
2005(平成17)年3月に策定された「県政刷新大綱」が概ね10年程度の中・長期的な視
点に立っていることから,この傾向が当分は継続すると見込まざるを得ない。
設置者である県が本学を継続して維持していく方針である限り,本学運営に必要な財政
基盤は確保されるが,県の厳しい財政状況が例え改善されたとしても,以前の水準を回復
し,さらに充実させていくには相当の期間を要すると思われる。従って,設置者への財政
依存度を低める努力が必要である。
そのためには,補助金収入や受託研究等の事業収入など,外部資金の増加を図ることが
不可欠である。
【将来の改善策】
設置者に対しては,本学が学問の府であり,県の将来を担う人材育成機関であること
を重視してもらい,県の財政政策と並行的に考えるのではなく,長期的視野の下で安定し
た財政措置をして貰うよう引き続き要請していくこととする。
外部資金の受け入れについては,2007(平成19)年度に奨学寄付金を受け入れるための
要綱は制定したので,2009(平成21)年度中に委託研究に係る受託のための制度(要綱)
を制定することについて設置者と協議を進める。
また,外部資金の導入を推進するため,研究成果を広く外部に提供し,受託研究など外
186
部からの研究資金を導入するとともに,学内の多様で先進的な研究活動の活性化を図り,
競争的外部資金の獲得を目指す。また,競争的資金獲得のための申請方法研修会や助成制
度の紹介など支援体制を整備する。
なお,教務事務や学生管理事務のIT化を進め,人件費の抑制に努め,無駄な経費や非
効率的な事務,不用意な出費などは極力排除し,教育研究水準の確保を図ることとする。
(b) 外部資金等
【現状の説明】
文部科学省の科学研究費補助金および農林水産省の受託研究費は,現在本学唯一の外部
資金である。
科学研究費補助金については,研究代表者に係るものとして,2004(平成16)年度190
万円(採択率14%),2005(平成17)年度590万円(同30%),2006(平成18)年度510
万円(同25%),2007(平成19)年度380万円(同18%),2008(平成20)年度360万円(同
11%)を受け入れている。表13-4に記載のとおり,申請件数は毎年度10件内外で推移し
ているが,近年採択率および補助金総額が低下傾向にある。
受託研究費については,2007(平成19)年度から2009(平成21)年度の3年間にわた
り「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」による産学官連携の受託研究費として
年間約9百万円(3年間)を受け入れている(表13-2,表13-3)。
外部資金の取扱いについては,科学研究費補助金のように本学で受け入れ後研究者に交
付する資金,「先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」のように県予算に計上後に
県の歳出として処理される資金があるが,いずれも支出管理は県の会計規則に則して事務
局で行っている。
表13-4
科学研究費補助金(研究代表者に係るもののみ)
区分
2004年度
2005年度
2006年度
2007年度
2008年度
申請件数
7
9
8
11
9
採択件数
1
3
2
2
1
採択率(%)
14
33
25
18
11
補助金総額
1,900
5,900
5,100
3,800
3,600
(単位;千円(直接経費))
【点検・評価】
科学研究費補助金については,申請件数は年10件内外で推移しているが,申請を前提と
した学内のシステム作りや採択率を高める工夫をするなど,今後はさらに申請件数を上げ
る努力をしていかなければならない。
国立大学法人を始め,他の公立短期大学も地方独立行政法人化が進み,それぞれが科学
187
研究費補助金や外部資金の獲得に懸命となりはじめた現在,設置者の財政に依存するのみ
では発展性がないだけでなく淘汰されていきかねないし,良い意味での刺激も排除してし
まいかねない。
特に,設置者である鹿児島県の財政状況が厳しく,教育研究費が減額されてきている中
で,外部研究資金の獲得は,研究活動の成果として評価される一方,本学における研究財
源の補完につながり,ますます重要性が高まっており,より一層の増加を図っていく必要
がある。
なお,奨学寄付金制度については導入済みであるが,受託研究制度については本学で要
綱案を作成し現在設置者と内容を協議中である。共同研究制度については今後導入を検討
する。
【将来の改善策】
本学における外部資金の獲得状況は,十分とはいえない。
本学の学問領域の性質が外部資金の獲得を困難にしている側面もあるが,今後は,設置
者,外郭団体,地域社会との連携・協力を図り,外部資金を増加するため,研究成果を広
く外部に提供し,本学の地域における存在意義を高めていく。
科学研究費補助金の申請および獲得は,本学の教員の教育研究に取り組む姿勢を示すも
のであり,交付申請を行うよう働きかける。
受託研究制度を発足できるよう,2009(平成21)年度に設置者に働きかけるとともに,
共同研究制度を早期に発足させる。
(c) 予算の配分と執行
【現状の説明】
本学の予算は,設置者である県の一般会計予算として扱われ,教育費(款)の中の短期
大学費(目)として計上される。その内訳は,節,細節,細々節と分類され,さらに具体
的な単価や数量など積算の基礎が明確にされている。従って,これら計上されている予算
については,費目ごとに執行の時期や数量などを確認の上で,県の会計規則に則った財務
会計システム(鹿児島県の会計処理電算ソフト)を通して事務局会計課で執行していくこ
ととなっている。
これらのうち,教育研究活動費および学生教育実験実習費は,教育研究活動に直接関係
する予算であり,各教員が自主的計画的に教育研究を行っていくために,年度当初に,教
授会の議を経て予め各教員に配分した上で,執行していくこととなっている。
【点検・評価】
本学予算については,予算要求に基づき設置者が査定し議会で議決されたとおりに配分
を受け執行されていくので,配分のための裁量や駆け引きの生じる余地はない。また,執
188
行についても,支出専門の責任者(出納員)が県の予算規則,会計規則等に従い,財務会
計システムにより行うので厳正正確である。
教育研究に係る予算については,従来からのルール(各教員基本的に均等)で振り分け,
最終的に教授会で了承して配分する仕組みとなっている。配分後の執行は他の予算と同じ
手続きにより,厳密に管理されている。教員個々についてみると不足気味のケースや執行
残のでるケースなど種々であり,配分の可否については意見の分かれるところである。
教育研究関係費の配分については教授会の議を経ることとしていることから,明確性,
透明性は確保されている。また,予算計上および会計処理システムからして配分と執行の
プロセスは明確かつ透明であり,適切であるといえる。
設置者の公会計制度が適用されること,単年度主義であることや教育研究関係費に限ら
ず削減が続いていることなども本学予算の執行・確保の問題の一因となっている。
【将来の改善策】
教育研究関係費の配分については,多様な考え方が可能であり,学科や研究内容,研究
の進捗度によっても意見が異なってくると見られるので,見直すとしても軽々に結論は出
せないが,少なくとも公平性,実態に応じた柔軟性のあるルール作りを目指す。
(d) 財務監査
【現状の説明】
本学は設置者が県であり,県の施設の一つであることから,県民,県議会,監査委員か
ら常に監視される構造を持っている。また,設置者自らが管理し費用を負担する立場にあ
ることから,それぞれ所管部署を通じて平素厳正な取扱いや運営を要求してくる。従って,
これらに対するアカウンタビリティを確保するために,平素から法令や条例等に準拠した
適正な事務処理に心掛けるとともに,必要に応じて,説明資料の作成や執行状況の把握な
どを行っている。
学生や保護者へのアカウンタビリティの履行については,特段の履行システムは有して
おらず,決算状況を県議会等による審査で代行している形である。
本学が県の施設として受ける監査等は,県議会における決算審査と監査委員による監
査が主であるが,このほかに設置者内部の自主的なものとして,出納局長による会計検査
と,職員間で行われる年4回の自主検査があり,これには同一地域の他の出先機関と相互
乗り入れ検査1回を含む。
【点検・評価】
県議会および監査委員の監視を受けるシステムは,社会通念上最も厳格な監視を受ける
ものと考えてよく,言い換えると,県議会や監査委員に対するアカウンタビリティを果た
せるような財務運営を強いられているといえる。監査委員の監査は,財政に限らず事務内
189
容を含んで広範にわたり,監査委員事務局の事務職員による予備監査を含めると相当の水
準の監査となる。議会においては,県政全般を審議することから,県予算の0.1パーセン
トに相当する本学予算が具体的に議論されることは少ないが,議会は地方自治法第98条に
基づく検査権など厳しい監査権限を有していること,県民の意向を代表していることなど
から設置者共々に抑止力が強く働き,執行はもとより予算編成において厳しいチェックが
行われる。これらのチェックに適切に対応していくことがアカウンタビリティの履行であ
ると考えている。
学生等受益者に対するアカウンタビリティについては,大学を取り巻く今日の諸情勢等
から履行を検討する時期に来ているとも言えるが,議会や情報公開制度等を通じ県民には
一定の方法が確保されていることなどから,独自に履行のためのシステムを準備しようと
いう結論には至ってない。
県議会から具体的に本学の財務内容を審査されることはほとんどないが,アカウンタビ
リティをいつでも果たせるようにしておくという意味でその監査システムは適切に機能
していると言える。監査委員による監査は,県の各機関共通の調書と本学特有の業務に係
る調書とを予め作成し,監査委員事務局職員による予備監査が行われた後,監査委員によ
る監査が行われることとなっており,厳正かつ精密なチェックを受ける。
出納局長による会計検査は,出納事務について技術的,構造的にチェックし財務会計の
ルールに従い適正に行っているかを検査する。自主検査は,日常における単純ミスや懈怠
を自主的にチェックするものであり,何れも定期的に行うことによって適切に機能してい
る。また,県の出先機関と相互に行うことによって検査の精度を高めると同時に事務処理
技術の向上につなげている。
このほかコンピュータによる財務会計システムには,システム内で機械によるチェック
が自動的に行われており,予算オーバーや異なる予算費目からの支出などは防止される。
【将来の改善策】
今後民間等からの外部資金導入を推進していく方向であること,受益者からの負担水準
を引き上げていく必要性が生じてくる可能性があり得ることなどから,受益者に対するア
カウンタビリティの履行方法を検討する。
本学の監査システムは,設置者である県の監査システムがそのまま適用されることとな
っており,しかも設置者と同じ周期で的確に機能していることから運用も適切であり,特
段の改善等は必要ないと考えている。
190
第 14 章
自己点検・評価
目標
①
自己点検・評価を恒常的に行い,これを改善・改革のために連結させるためのシステ
ムとして,自己点検・評価委員会と将来構想委員会と合併,再編してきた「自己評価・
将来構想委員会」は,評価と改善とが同一組織で連続して検討できる点で有効な措置
と判断されるので,このシステムを更に維持・発展させていく。
②
学外者による検証は過去に実施し有効性を確認した経験をもとに,今後も外部委員の
協力を得て,これを実施していく。また,その成果を改善・改革のための中・長期計
画に反映させる。
③
自己点検・評価の規程(外部評価規程も含む。
)は,それがシステムとして有効に機能
しているかどうかについて,定期的に点検・評価の際に見直す。
191
(a) 自己点検・評価
【現状の説明】
本学では,序章で述べてきたように,自己点検・評価活動の恒常化を担う組織として,
他の大学に先駆けて,1994(平成6)年の比較的早い時期から,「自己点検・評価委員会」
を設置してきたが,2008(平成 20)年4月に教授会運営のための委員会活動の改善を目的
として,その任務と分掌事項および委員構成を大幅に変更した。その結果,従来の「自己
点検・評価委員会」を「自己評価及び外部評価に関する事項」を主な分掌事項とする「自
己評価・将来構想委員会」に変更した。
この委員会は,教授会組織としての常設委員会であり,その存在の根拠を学則中の委員
会規程に明記してきている。委員は,学長(委員長),三役(学生部長,附属図書館長,地
域研究所長)と三学科長,そして事務局長,および学長が指名するものなどの各部門の責
任者から構成される。その主な任務である「自己評価及び外部評価に関する事項」は,学
則の中に明記し,新たに 2008(平成 20)年 12 月に,総則,自己点検・評価,認証評価,
外部評価,実施体制の全 21 条からなる「鹿児島県立短期大学教育研究等点検・評価規程」
を定め,恒常的かつ全学的な体制を整備した。
自己点検・評価は,全教職員の理解と認識を深めるために,全教職員から意見を反映さ
せる形ですすめ,その成果は自己点検・評価報告書にまとめられ,教授会に報告される。
自己点検・評価結果の改善事項は,自己評価・将来構想委員会をはじめ,関連の部署(委
員会)において審議し,実施に繋げていくことになる。
さらに,認証評価に焦点をあてた評価のみではなく,毎年度末に委員会活動の評価を各
委員長が「当該年度において実施・達成したこと」,「翌年度課題」,
「再来年度以降の課題」
を申し送り事項として全学運営委員会に提出するシステムになっている。
【点検・評価】
自己評価・将来構想委員会の委員には事務組織の責任者が含まれ,教員組織の責任者と
相互に活発な意見を交換し,一体となって推進している。これは本学の自己点検・評価シ
ステムが持つ長所である。実際の活動は,その多くが管理職に委ねざるをえず,過重な負
担となっている。
各委員会の次年度の委員会活動に対する「申し送り事項」は,各委員会の活動だけでな
く,全学の運営においても,点検・評価自体をそれで終わらせるのではなく,改善に結び
つくシステムとして有効である。
自己点検・評価報告書を中心とした自己評価・将来構想委員会の活動と,年度ごとの委
員会の活動が有機的に結びついているとは言えない。
【将来の改善策】
自己評価・将来構想委員会を中心とした活動は継続して行っていく。管理職の負担軽減
192
のためにも,自己点検・評価活動に関わることができる委員会構成員以外の若手,中堅層
教員の育成を行っていく。
全学運営委員会が年度途中の経過も含め各委員会の取り組み状況を把握することで,自
己評価・将来構想委員会との連携を図る。
(b) 自己点検・評価と改善・改革システムの連結
【現状の説明】
自己点検・評価活動の目的は,大学の教育研究機能の改善と発展を期するものであって
点検・評価の結果をもとにして大学の機能改善を確実に実行する必要がある。本学では,
そのための最も重要で中心的なものが「自己評価・将来構想委員会」である。
2007(平成 19)年度までは「自己評価委員会」と「将来構想委員会」が独立したであっ
たが,自己評価の結果を確実で計画的な改善活動に結びつけることを目的として 2008(平
成 20)年度に改組再編した。
自己評価・将来構想委員会は,自己点検・評価にもとづいて中長期計画を検討し,全学
運営委員会をはじめとした各委員会に改善・改革の具体化を要請するシステムとなってい
る。
【点検・評価】
自己評価・将来構想委員会を中心としたシステムは自己点検・評価の結果を改善・改革
に連結するために最適である。委員会はまだ2年足らずの存在ながら,前回の自己評価報
告の成果に基づいて,平成 18 年度改革を契機に,カリキュラムと管理運営(組織運営)の
双方の改革を実践し,引き続き改善・改革活動を継続している。中・長期計画を含む将来
構想の構築は課題として残っている。
【将来の改善策】
現行システムを継続する。中・長期計画の構築においては,学内だけでなく,県の高等
教育政策への働きかけを検討する。
(c) 自己点検・評価に対する学外者による検証
【現状の説明】
これまで二回,外部評価を受けてきた。一回目は 1993(平成5)年にまとめられた自己
点検・評価報告書である『鹿児島県立短期大学の教育と研究―現状と課題』をもとに,県
内有識者 6 人(鹿児島県立短期大学懇話会)による外部評価を受けた。これは,公立短期
大学では全国で初めての試みであった。その評価結果を受けて,教育理念の見直し(「地域
社会への寄与」の文言の挿入)等を行った。これは教授会において認知され,続く改善活
動の礎となった。
193
1998(平成 10)年~1999(平成 11)年の教育研究活動の自己点検・評価を 2000(平成
12)年度に行い,その自己点検評価を対象に,二回目の外部評価が 2002(平成 14)年に県
内有識者 10 人により行われ,その評価結果は,より地域に密着したカリキュラムの再編等
に反映されてきた。
今回は,本報告書をもとに,2009(平成 21)年度に策定した「鹿児島県立短期大学教育
研究等点検・評価規程」に基づき,2010(平成 22)年1月に県内外の有識者からなる外部
評価委員による評価を受ける予定である。
【点検・評価】
これまでも外部評価の結果を受けた改革を行ってきたが,明確なシステムに基づくもの
ではなかった。今回,規程を作成した上で,外部評価を受けるため,より計画的な改善へ
と繋がると思われる。
現在のシステムでは外部評価の内容を直近の自己点検評価報告には反映できないが,次
年度以降,委員会活動など学内運営改善への重要な手段となっている。
【将来の改善策】
2009(平成 21)年度に策定した「鹿児島県立短期大学教育研究等点検・評価規程」によ
りシステム化された外部評価を全学的に反映させる方策を自己評価・将来構想委員会が中
心に検討する。
(d) 短期大学に対する指摘事項および勧告等への対応
これまでに,文部科学省から本学に対して明示的に改善点の指摘を受けたことはない。
外部評価については適切に対応してきている((c)自己点検・評価に対する学外者による
検証を参照)
。第三者評価機関からの評価を受けたことはない。いずれも指摘があれば適切
に対応する。
194
第 15 章
情報公開・説明責任
目標
県立短期大学として,関係法規を遵守し,社会への説明責任を果たすため,教育・研究
の成果および運営状況について,情報公開を積極的に行い,本学の教育・研究活動に対す
る県民の理解が得られるように努める。
195
(a) 財政公開
【現状の説明】
本学は,設置者である鹿児島県の機関として,県内部の予算要求手続きを経て予算配分
を受けて管理運営している。
従って,学校法人が作成する財務に関する諸表は存在せず,本学の財務情報については
設置者である鹿児島県が作成する一般会計予算書,決算書等の中に含まれており,これら
については監査委員の監査を受け,県議会の審査を経て,鹿児島県のホームページや県庁
舎に開設されている県政情報センターにおいて閲覧できる。
【点検・評価】
鹿児島県の予算書,決算書においては,県全体の財政状況を網羅しているため,本学単
体の財政収支状況を理解するのは困難であり,県民をはじめ社会に対して説明責任を十分
果たしているとはいいがたい。
【将来の改善策】
事務局会計課が中心となって,鹿児島県一般会計予算書,決算書の中から本学単体部分
を抽出し,一般に理解しやすいよう加工した概要版を作成して公開することを検討する。
(b) 自己点検・評価
【現状の説明】
序章に記載のとおり,本学では過去5回の自己点検・評価報告書を作成して関係者に配
布されている。2006(平成 18)年4月に作成されたワーキンググループの報告書を元にし
た自己評価は全教職員に配布されている。
【点検・評価】
過去行われてきた自己点検・評価は学校教育法に基づく努力規定によるものであり,学
内の諸改革を進める上では一定の効果があったが,外部に対する情報発信としては不十分
であった。
今回進めている自己評価,外部評価は学校教育法に基づく認証評価に繋がるものであり,
その公表は分かりやすいものを目指す。
【将来の改善策】
県立短期大学として,自己点検・評価結果について,その資料の所在を周知するため,
鹿児島県の広報誌やホームページを活用し,説明責任を果たす。
また,自己点検評価結果,認証評価結果,外部評価結果については,本学のホームペー
ジで公表し,冊子の報告書を作成した場合は,関係諸機関に配布する。
196
(c) 個人情報保護
【現状の説明】
本学は,鹿児島県個人情報保護条例(平成 14 年鹿児島県条例第 67 号)に規定する実施
機関である。鹿児島県立短期大学処務規程(昭和 33 年訓令甲第 12 号)により個人情報保
護に関しては,学長が県知事の権限を専決できる。
上記条例に基づき,個人情報が記載された公文書を使用する事務は,個人情報取扱事務
登録簿に登録され,一般の閲覧に供している。また,個人情報の開示については,事務局
総務課が個人情報取扱事務窓口として位置づけられている。
開示請求の実績としては,同条例第 23 条の規定に基づく実施機関が定める簡易な開示の
申出により,入試成績の開示がある。(表 15―1)
表 15-1
過去4年間の開示状況
年度
2006
2007
2008
2009
受 験 者 数
777
652
760
723
開示請求者数
97
81
81
86
【点検・評価】
個人情報の保護については,鹿児島県個人情報保護条例および鹿児島県個人情報保護条
例施行規則(平成 15 年鹿児島県規則第1号)が適用され,本学が実施機関として保有する
個人情報は適正に取り扱われ,個人の権利利益は保護されていると考えている。
【将来の改善策】
鹿児島県個人情報保護条例および鹿児島県個人情報保護条例施行規則に基づき,引き続
き適正に取り扱う。
また,FD委員会が中心となって教職員に対して個人情報の取扱の重要性とともに鹿児
島県個人情報保護条例等の周知を図る。
197
198
終 章
おわりに
鹿児島県立短期大学は,2010(平成 22)年に創立 60 周年を迎える。本学が,この間,主
として鹿児島という地域において,
「ケンタン」と愛称され,県民からの信頼と理解とを得
て,地域の経済,文化の期待に応えてきたことは,この長い歴史自体が証明してくれてい
る。
やや,具体的に本学の教育活動と関わって見ると,学生の入学に関わる「インプット」
部分においては,少子化の時代,一般的には志願者数が文科省の統計に待つまでもなく,
この 10 年間に急減しているなかで,本学の入試倍率は依然として高く,定員割れを辛うじ
て免れている。一方,卒業段階での「アウトプット」においても,地域経済のパイ(90%
を越える中小企業)に適応していることもあり,その存続・発展に寄与し,これまた,こ
の 10 数年間,就職率は 90%を越えてきた。ここには,公立大学ゆえの「授業料」の低廉ゆ
えに,国立四年制大学との併願も多く,従って,比較的,学力の優れた子弟の志願者が多
いこと,一方,長期の不景気の「伸び悩み」を「バネ」にしての四年制大学よりも短期大
学卒の方の「即戦力」と雇用形態の変化等,外部社会からの誘因要因も機能していること
には違いない。ただ,こうした,どちらかと言えば,比較的に本学にとっては有利とも見
える外部要因とともに教職員の身分が安定した地方公務員であること等に依拠して,
「今日
の危機」的状況に対して,安定感に浸りきっているわけでは決してない。
厳に,四年制大学への進学者は間違いなく増加してきており,経済危機もより深刻化し
てきているなかで,公立大学ゆえに今日の財政的危機がそのまま,校舎の老朽化だけでは
なく,研究活動をはじめ,日常レベルでの運営費の度重なる削減等,今回の点検・評価項
目の多くの領域において,例外なく被さってきている状況もまた深刻である。
そうしたなかで,いかに低い財政予算(税金)のなかで,最大限の効果を「教育」とい
う短期においては成果が測定しにくいシステムのなかで挙げていくかに,教員も職員も一
体となって,取り組んできている領域が,大学の中心的な「スループット」としての教育
活動の過程である。幸い,学生による本学での授業評価においては高い満足度を得てきて
いるが,今回の点検・評価により,これまでにも分かっていたことが,より鮮明に見えだ
し,見えていなかったことも共通認識されるようになってきたことのもつ「意味」は大き
い。改革はその見えてきたことによって始まるからである。教育活動は,概して,本学で
も例外ではないが,そこへの「研究成果の反映」にせよ,授業にせよ,「個業」の慣習に依
拠していることもあり,個人間,組織間が閉塞的な状況になりやすい。
こうした閉塞的な教育研究環境のなかで,認証評価機関の申請に向けての作業において,
「見えてきた」一つの方向性は,マネジメントサイクルとしてのPDCAである(大学基
準協会『大学評価ハンドブック』「大学基準協会が要請する自己点検・評価―自己点検・評
価の実質化」19-20 頁,2009 年度評価者用)。
「現状」の説明に立って「点検・評価」
(Check)
を行い,そこから「改善方策」(Action)を生み出し,「到達目標」(理念・目的・目標の実
現手段)を策定するという方式(システム)は,本学においても,おそらく他の大学とも
類似しているものと見られるが,この方式が共有されれば(基準協会でも 2009 年用に開発
されたもので,まだ多くの検証例も少ないと考えられる)
,特に教育組織間は開かれた状況
において,評価と改革とがより密接に結びつく可能性がある。だが,実際には,このシス
テムでは,数値化が比較的に可能なハードな領域(財務,施設・設備,図書館等)は別と
しても,教育活動をはじめ,全ての組織(委員会)がこのサイクルで動いているとは,こ
れまでも言い難い。そこに,現状は説明でき,点検・評価は行われても「改善方策」の具
体が策定しにくい理由があったと考えられる。点検・評価と改善方策との日常性が必要に
なるのではないかという結論に至った。
本学では,そのためにも,既に平成 18 年度改革において新たに再編した組織である自己
点検・評価委員会と将来構想委員会とがセットとなって再編された「自己評価・将来構想
委員会」(FD活動も含め)において,教育活動や管理運営活動だけではなく,全ての評価
項目において,PDCAがもう少し,目に見える形で,しかも分かりやすく,機能するよ
うに今回の知見を踏まえて,本学のさらなる発展のために取り組んでいく。
鹿児島県立短期大学
学長
学生部長
附属図書館長
地域研究所長
文学科長
生活科学科長
商経学科長
事務局長
自己評価・将来構想委員会
教授
教授
教授
教授
教授
教授
中留 武昭(委員長)
木戸 裕子
朝日 吉太郎
岡村 俊彦
轟 義昭
揚村 固
田口 康明
池田 篤信
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