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デッキ亀裂を防止する新型Uリブ鋼床版構造の提案(鋼構造シンポジウム)

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デッキ亀裂を防止する新型Uリブ鋼床版構造の提案(鋼構造シンポジウム)
デッキ亀裂を防止する新型 U リブ鋼床版構造の提案
論文
New Orthotropic Steel Deck with Trough Ribs Preventing Deck Cracks
坂野 昌弘*
西田 尚人**
○楠元 崇志***
石井 博典****
池末 和隆*****
Masahiro SAKANO Naoto NISHIDA Takashi KUSUMOTO Hironori ISHII Kazutaka IKEZUE
ABSTRACT In this study, considering the primary cause of deck cracks should be the
deflection of deck plate inside of trough ribs, two types of orthotropic steel deck systems are
proposed to reduce the deflection. They are the deck support (U) type and the deck stiffening
(D) type. As a result of finite element analysis, the U model can reduce the local stress at the
longitudinal weld to about 3% of that of the traditional (N12) model with the same deck plate
thickness of 12mm, whereas the D model can reduce the local stress to about 50% of N12 model,
with moderate stress concentrations at the other welds around rib plates.
Keywords:鋼床版, トラフリブ, 補剛板, 有限要素解析
Orthotropic Steel Deck, Trough Rib, Rib Plate, Finite Element Analysis
1.はじめに
本研究では,デッキ亀裂の主原因は U リブ
新設の U リブ鋼床版のデッキプレート(以
内のデッキのたわみ変形であると考え
2)その
下デッキと称する)と U リブとの溶接ルート
面外変形を低減するために,2 種類の新型 U リ
部からデッキ側に進展する亀裂(以下デッキ亀
ブ鋼床版構造を提案する.それらは、U リブ内
裂と称する)は,路面の陥没を招くおそれがあ
でデッキを直接支持するデッキ支持タイプと,
る危険な損傷であり,これまでに様々な対策が
デッキの面外剛性を上げて変形を抑えるデッ
検討されている
1)~3)
.平成 24 年度に改定され
キ補剛タイプであり,FEM 解析を用いてそれ
た道路橋示方書 4)では,この亀裂の発生を防止
らの応力集中低減効果について検討した.
するため,デッキ厚を 16mm とすることが規定
された.これにより,新設鋼床版についてはデ
2. 提案構造
ッキ貫通の可能性は小さくはなったが,従来鋼
本検討で提案する構造は 2 種類あり,何れに
床版に比べ鋼重増となることは避けられない.
ついても軽量化を狙ってデッキ厚は 12mm,U
リブ厚は 6mm とした.
関西大学環境都市工学部 教授
(〒564-0073 大阪府吹田市山手町 3-3-35)第 2 種正会員
**修士(工学) 関西大学大学院 博士前期課程(研究当時)
***
関西大学大学院 博士前期課程(〒564-0073 大阪府吹田市山手町 3-3-35)
*工博
****博士(工学)
㈱横河ブリッジホールディングス 総合技術研究所 部長
(〒261-0002 千葉県千葉市美浜区新港 88)
*****修士(工学)
㈱横河ブリッジホールディングス 総合技術研究所 主任
(〒261-0002 千葉県千葉市美浜区新港 88)
1
1 つ目のデッキ支持タイプは,図-1 に示すよ
うにデッキを支持する補強板を U リブウェブ
の内側に溶接で取付けて,デッキ側はメタルタ
ッチで支持する構造である.
補強板厚は 9mm で,
溶接長は 80mm に設定した.
60
:載荷位置
60
200
な応力集中箇所が生じることが予想されるの
で、補強板のサイズや形状についてパラメトリ
ックに検討した.
:載荷位置
d
80
補強板
40
t
80
40
補強板厚
メタルタッチ
θ
h
補強板
R
図-2 デッキ補剛タイプ
3.検討ケース
検討ケースは表-1 に示す合計 15 ケース設定
した.補強を行わない標準構造のケースは,平
成 21 年以前まで標準的にデッキ最少板厚とし
て使用されていた 12mm (N12)と,現状の最小板
厚である 16mm (N16)の 2 ケース設定した.提
案構造は,デッキ支持タイプを 1 ケース (U),
デッキ補剛タイプ(D)は,補強板の形状等による
補強効果の違いを検討するため,補強板と U リ
ブ間のギャップ d,補強板の角取り角度 θ,補強
板の角取り部の曲率 R,補強板の高さ h,板厚 t
をパラメトリックに変化させた 12 ケース設定
した.
図-1 デッキ支持タイプ
下側スリット上部の U リブと横リブの回し溶
接部の応力集部をさけるために 6),補強板は下
側スリット上部から十分に離して設置した.な
お,本構造は U リブ内で直接デッキを支持でき
ることから,大きな応力低減効果が期待できる
が,メタルタッチで支持するため,ある程度の
製作精度が要求される.
2 つ目のデッキ補剛タイプは,図-2 に示すよ
うにデッキ下面に溶接によって補剛板を取付
け、デッキのたわみを抑制する構造である.本
構造では,補剛板と U リブのギャップ部に新た
表-1 検討ケース
モデル名
補強板とUリ
デッキ厚
補強板取付 補強板R 補強板高さ 補強板厚
ブのギャップ
(mm)
け角度(°) (mm)
(mm)
(mm)
(mm)
無補強
12
無補強
16
デッキ支持
116
9
8
75
∞
45
補強方法
N12
N16
U
D(8,75,∞,60,9)
D(20,75,∞,60,9)
D(20,45,∞,60,9)
D(20,30,∞,60,9)
D(20,30,凹90,60,9)
D(20,30,凹120,60,9)
デッキ補剛
D(20,30,凸120,60,9)
D(20,30,凸90,60,9)
D(20,30,∞,30,9)
D(20,30,∞,90,9)
D(20,30,∞,60,16)
D(20,30,∞,60,25)
12
20
30
凹90
凹120
凸120
凸90
∞
60
9
30
90
60
2
16
25
4.解析方法
られているとおり 2) ,U リブ内中央にシングル
タイヤを模擬した 50kN(ダブルタイヤ軸重
200kN 相当)の等分布荷重を載荷した.
境界条件は横リブ下部全体を鉛直方向に拘
束した.また 1/4 モデルとしているため,対称
部では対称方向の変位と回転を拘束した.なお,
U リブ支持タイプでのメタルタッチ箇所につい
ては,デッキと補剛板上面の節点を共有させて
モデル化した.
鋼床版デッキ亀裂発生位置の局所的な応力評価
については,FEM を用いた様々な検討が行われて
いるが,未だに十分に解明されていない.ここで
は,出来るだけ簡易的な手法で、概略的な評価を
行うことを目的として,シェル要素を用いた FEM
解析を行った.
FEM 解析は汎用ソフト Nastran で実施した.
対象部には一般部と横リブの交差部があるが,
デッキ亀裂の発生しやすい 7)横リブ交差部を対
象とした.各モデルのデッキのたわみ変形やデ
ッキと U リブの溶接部等の応力分布について
検討することを目的とし,また,すみ肉溶接を
無視していることから,着目部付近の要素サイ
ズは全モデル共通で 4mm 四方とした.
材料定数は鋼材の縦弾性係数を 200GPa,
ポア
4)
ソン比 0.3 とし ,弾性解析を行った.荷重は
デッキ亀裂が発生しやすい荷重としてよく知
5.解析結果
各モデルについて,デッキの鉛直変位の最大
値と,デッキと U リブの溶接部の最小主応力,
および補強板の溶接部や母材部の最大または
最小主応力の一覧を表-2 に,また,デッキと U
リブの溶接部の最小主応力と,補強板の溶接部
の最大または最小主応力を図-3 に示す.
表-2 解析結果一覧
デ
ッ
キ
補
剛
モ
デ
ル
補強板
モデル名
鉛直変位(mm)
デッキとUリブ
の溶接部
N12
-1.03 (100%)
-325 (100%)
N16
-0.51 (50%)
-169 (52%)
U
-0.24 (23%)
-9 (3%)
-160
D(8,75,∞,60,9)
-0.36 (35%)
-97 (30%)
239
D(20,75,∞,60,9)
-0.38 (37%)
-170 (52%)
326
D(20,45,∞,60,9)
-0.39 (38%)
-176 (54%)
260
D(20,30,∞,60,9)
-0.42 (41%)
-190 (58%)
189
200
D(20,30,凹90,60,9)
-0.52 (50%)
-238 (73%)
31
332
D(20,30,凹120,60,9)
-0.48 (47%)
-221 (68%)
74
298
D(20,30,凸120,60,9)
-0.39 (38%)
-176 (54%)
266
D(20,30,凸90,60,9)
-0.39 (38%)
-173 (53%)
298
D(20,30,∞,30,9)
-0.66 (64%)
-245 (75%)
73
331
D(20,30,∞,90,9)
-0.41 (40%)
-187 (58%)
195
205
D(20,30,∞,60,16)
-0.37 (36%)
-167 (51%)
162
145
D(20,30,∞,60,25)
-0.34 (33%)
-152 (47%)
170
111
溶接部
母材部
最大または最小主応力(MPa)
赤字:N16の最小主応力-169MPaよりも10MPa以上絶対値が大きい値
3
最大主応力(MPa)
400
■補強板溶接部のデッキ側またわUリブ側
■補強板溶接部の補強板側
■デッキとUリブの溶接部
300
200
100
最小主応力(MPa)
0
-100
-200
-300
-400
補強方法
無し
デッキ厚
12mm 16mm
ギャップ
無し
角取り角度
無し
デッキ
支持
デッキ補剛
12mm
20mm
8mm
75°
30°
45°
凹90 凹120 凸120
∞
R
高さ
無し
補強板厚
無し
60mm
30mm 90mm
60mm
116mm
∞
凸90
16mm
9mm
25mm
図-3 各モデルの最大・最小主応力の比較
線
デッキプレート下面
溶
デッキプレート下面
はデッキと U リブの溶接部で-325MPa,それぞ
れ生じている.今回の解析ではメッシュサイズ
は 4mm とそれほど小さくはないが,それでも
疲労亀裂発生を検討するのに十分大きな応力
集中が生じている。これ以降のケースでは,N12
モデルの最大鉛直変位 1.03mm と溶接部の最小
主応力-325MPa を,どの程度まで低減できるか
が焦点となる.
溶
接
-1.03
接
線
5.1 無補強モデル
図-4 にデッキ厚 12mm の無補強モデル
(N12)
,
図-5 にデッキ厚 16mm の無補強モデル(N16)に
ついて,鉛直変位と,デッキ下面および各部の
最大および最小主応力の分布図を示す.
デッキ厚 12mm の場合には,鉛直変位の最大
値は載荷位置直下のデッキ中央で 1.03mm、最
大主応力はデッキ下面で 181MPa、最小主応力
0.35
181
-325
横リブ
横リブ
単位:㎜
変形量3倍
(1)鉛直変位
単位:MPa
単位:MPa
(2)最大主応力分布
(3)最小主応力分布
図-4 鉛直変位および最大・最小主応力, N12 モデル
4
デッキ厚 16mm の場合には,最大鉛直変位は
0.51mm,最大主応力は 106MPa,最小主応力は
-169MPa と,それぞれ N12 の半分程度まで低減
しており,デッキ厚 12mm よりも疲労耐久性が
向上していることが本解析でも示されている.
また、提案構造の疲労耐久性を評価する上で,
N16 の溶接部の最小主応力の絶対値 169MPa が
一つの指標となる.
-0.51
溶
溶
接
接
線
デッキプレート下面
線
デッキプレート下面
0.15
106
-169
横リブ
横リブ
単位:㎜
変形量3倍
単位:MPa
(1)鉛直変位
単位:MPa
(2)最大主応力分布
(3)最小主応力分布
図-5 鉛直変位および最大・最小主応力, N16 モデル
溶
接
線
デッキプレート下面
0.11
線
デッキプレート下面
48
溶
-0.24
N16 モデルの溶接部の最小主応力-169MPa と同
程度以下で応力集中の範囲も小さいことから,
亀裂発生の可能性も低いと考えられる.また,
この部位では,U リブと補強板の角度が鋭角に
なっていることから,補強板の形状などで改善
が可能と考えられる.
以上のように,デッキ支持モデルはデッキ亀
裂に対して著しい疲労耐久性向上効果が期待
できることが明らかとなった.なお,デッキの
最大鉛直変位が 1mm 程度であることから,デ
ッキと補強板のメタルタッチ部に関しては,隙
間を 1mm以下とする製作精度が必要となる.
接
5.2 デッキ支持タイプ
図-6 にデッキ支持(U)モデルについて,
鉛直変
位と,デッキ下面および各部の最大および最小
主応力の分布図を示す.最大鉛直変位と最大主
応力は 0.24mm および 48MPa と,N12 はもちろ
ん,N16 モデルと比較しても半分程度以下に減
少しており,デッキと U リブの溶接部の最小主
応力については,-9MPa とほぼ無応力状態にま
で低下しており,デッキ亀裂の発生は完全に防
止できると考えられる.
なお,補強板と U リブとの溶接部の下部で
-160MPa の最小主応力が生じているが,N12 モ
デルの最小主応力-325MPa の半分程度であり,
-9
補強板
補強板
-160
横リブ
横リブ
単位:㎜
変形量3倍
(1)鉛直変位
単位:MPa
単位:MPa
(2)最大主応力分布
(3)最小主応力分布
図-6 鉛直変位および最大・最小主応力,U モデル
5
-107
5.3 デッキ補剛タイプ
図-7 にデッキ補剛タイプの D(8,75,∞,60,9) モ
デルについて,鉛直変位と,デッキ下面および
各部の最大および最小主応力の分布図を示す.
最大鉛直変位は 0.36mm と N16 よりも小さく
U モデルに近い値を示している.デッキと U リ
ブの溶接部についても-97MPa と N12 の 1/3,
N16 の半分近くまで低減しており,デッキ亀裂
に対しては大きな疲労耐久性向上効果が期待
できる.ただし,補強板とデッキの溶接部で
239MPa という N16 の溶接部を上回る大きな最
大主応力が生じており,この部分からの亀裂発
生が懸念される.
(1) ギャップの影響
なお,上記のモデルでは,補強板と U リブ間
のギャップが 8mm と,補強板取り付けのため
のすみ肉溶接のサイズを考えるとギリギリな
ので,すみ肉溶接のサイズと 1cm 程度の余裕を
見込んでギャップの大きさを 20mm に拡大した
D(20,75,∞,60,9)モデルの解析を行った.その結
果,デッキと U リブの溶接部の最小主応力は
-170MPa と N16 モデル並みまで大きくなり,補
強板溶接部の最大主応力も 326MPa とさらに
1.5 倍程度大きくなった.
(2) 補剛板角度の影響
そこで,補強板溶接部の最大主応力を低減す
るために,補強板の角度 75°を 45°,30°と変
化させたところデッキと U リブの溶接部の最
小主応力は-170MPa から-176MPa,-190MPa と
1 割程度大きくなったが,補強板溶接部の最大
主応力は 326MPa から 260MPa、189MPa と
200MPa 以下まで低下させることができた.
デッキプレート下面
溶
135
溶
接
0.15
接
線
デッキプレート下面
線
-0.36
(3) 補剛板の曲率の影響
さらに,各溶接部の最小および最大主応力を
低減させるために,補強板取付け角度を 30°に
固定して,補強板の角取り部に曲率 R を付けて
解析を行った.凹の R90mm と 120mm では,補
強板溶接部の最大主応力を 31MPa と 74MPa ま
で低下できたが,デッキと U リブの溶接部の最
小主応力が逆に-238MPa、-221MPa と大きくな
ってしまい,補強板の母材部でも 300MPa 前後
の最大主応力が生じる結果となった.
曲率を凸にして同様に R120mm と 90mm と
変えてみると,デッキと U リブの溶接部の最小
主応力は-170MPa 程度まで抑えることができた
が,逆に補強板溶接部の最大主応力が 300MPa
近くまで増加した.以上より,凸凹いずれにし
ても曲率を付けることで各溶接部の応力集中
に偏りが生じ,構造ディテールの応力集中を全
体的に低減する方向とはならないことが分か
った.
(4) 補剛板高さの影響
そこで,補強板角取り部の曲率を元に戻し(R
∞)
,補強板の高さを 60mm から 30mm および
90mm に変えてみた.その結果、曲率の場合と
同様に、補強板の高さを小さく(30mm)して剛
性を下げると補強板の溶接部の最大主応力は
73MPa に下がるが,母材部では 331MPa,デッ
キと U リブの溶接部の最小主応力は-245MPa と
大きくなり,逆に補強板の高さを大きく(90mm)
して剛性を上げるとデッキと U リブの溶接部
の最小主応力は-187MPa まで下がるが,補強板
の最大応力が 200MPa 程度まで上がることが分
かった.
補強板
補強板
-97
239
横リブ
横リブ
単位:㎜
変形量3倍
単位:MPa
単位:MPa
(1)鉛直変位
(2)最大主応力分布
(3)最小主応力分布
図-7 鉛直変位および最大・最小主応力, D(8, 75, ∞, 60, 9) モデル
6
図-8 に補強板厚 16mm の D(20,30,∞,60,16) モ
デルについて,鉛直変位と,デッキ下面および
各部の最大および最小主応力の分布図を示す.
デッキの最大たわみも 0.37mm と N12 の 1/3,
N16 の 2/3 まで減少し,各部の最小および最大
主応力の絶対値も N16 の 169MPa 以下となって
おり、N16(現行のデッキ厚 16mm)と同程度の
疲労耐久性が期待できる.
(5) 補剛板厚の影響
次に、補強板の高さを 60mm に戻し,補強板
の厚さを 9mm から 16mm,25mm と大きくして
解析を行った.その結果、デッキと U リブの溶
接部の最小主応力は-190MPa から-167MPa,
-152MPa と減少して N16 モデル以下となり,補
強 板 溶 接 部 の 最 大 主 応 力 も 189MPa か ら
162MPa、170MPa と低下して,全体的に応力集
中がバランスされた状態となった.
デッキプレート下面
160
線
-167
接
0.16
線
デッキプレート下面
溶
接
-0.37
溶
162
補強板
補強板
145
単位:㎜
変形量3倍
横リブ
単位:MPa
横リブ
単位:MPa
図-8 鉛直変位および最大・最小主応力, D(20, 30, ∞, 60, 16) モデル
6.まとめ
本研究では,デッキ亀裂に対する防止効果を
検討するために,U リブ内のデッキたわみが大
きくなるような荷重条件下で FEM 解析を行っ
た.得られた主な結論は以下のとおりである.
(1) デッキ支持タイプは,デッキ厚 12mm の従
来型と比較して,デッキと U リブの溶接部
の応力を 1/30 程度まで大幅に低減すること
が可能であり,デッキ亀裂に対する抜本的
な疲労耐久性向上効果が期待できる.な
お,最大鉛直変位は 1mm 程度であるた
め,メタルタッチに関しては,必要な製作
精度を確保する製作方法と管理方法の検討
が必要である.
(2) デッキ補剛タイプでも,デッキと U リブの
溶接部の応力を半分程度まで低減すること
ができる.デッキ厚 12mm の場合でも,ギャ
ップをある程度小さくし,補強板厚を 16mm
あるいは 25mm とすることで,デッキ厚
16mm の標準構造と同程度の疲労耐久性が
得られる可能性がある.
7.今後の課題
本稿では,デッキき裂の防止を目的として,
デッキ支持タイプとデッキ補剛タイプの 2 種類
の新型鋼床版構造を提案し,簡易なモデルを用
いた FEM 解析により,それらの補強効果につい
て概略的な検討を行った.今後,疲労試験によ
る検証を実施する予定である.
【参考文献】
1) 工藤祐琢:鋼床版の U リブ横リブ交差部に発
生するデッキ貫通き裂抑制対策の検討,土木
学会第 68 回年次学術講演概要集,I-571,
2013.9.
2) 坂野昌弘,西田尚人,田畑晶子,杉山裕樹,
奥村学,夏秋義広:内面溶接による U リブ鋼
床版の疲労耐久性向上効果,鋼構造論文集,
第 21 巻,第 81 号,pp.65-77,2014.3.
3) 土木学会 鋼構造委員会:鋼床版の疲労(2010
7
年改訂版),2010.12
4) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説Ⅱ鋼橋
編,2012.3.
5) 日本道路協会:鋼道路橋の疲労設計指針,
2002.3.
6) Fisher, J.W. and Roy, S.: Durability of steel
orthotropic bridge decks, Bridge Maintenance,
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IABMAS 2014), pp.117-130, 2014.7.
7) 小野秀一,平林泰明,下里哲弘,稲葉尚文,
村野益巳,三木千壽:既設鋼床版の疲労性状
と鋼繊維補強コンクリート敷設工法による
疲労強度改善効果に関する研究,土木学会論
文集 A,Vol.65 No.2,pp.335-347,2009.4.
8
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