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10/14 序章 諸宗教をどのように見ていくのか
ニニアン・スマート『世界の諸宗教』を読む 2004,10,14 櫻井義秀 序章 1 世界中の諸世界観を理解することの重要性 1)文明のダイナミズムを知る、味わう。 2)多元化した現代社会、多文化主義の政治においては、様々な価値観、世界観を知った上 で生活することが不可欠になる。 3)自身の価値観、世界観を形成する基礎としての歴史理解が必要。 本書の構成 Ⅰ 諸宗教文化の興亡の歴史 Ⅱ 諸宗教・文化間の交流、グローバルな世界へ 2 宗教の特徴 宗教とは何かを本質的に定義するよりも、ある特定の宗教を多元的に理解することから、 宗教の特徴を把握した方が、理念的論争に時間を浪費せずに済むし、はるかに宗教に関す る洞察力をはぐくむ。 例:キリスト教は教派ごと、同じ教派でも地域ごとに異なり、このような主流の既成教 会以外に、新宗教に近い教派や宗教運動もある。 諸宗教を理解する諸次元: 1)行事と儀礼の次元 参拝、説教、祈祷、供犠 2)経験的・感情的な次元 宗教行為が喚起する感情(畏敬、平安、無心、愛、希望、感謝、怒り等々) 宗教的経験(ヌミナスな経験 3)物語的ないし神話的次元 4)教義的・哲学的次元 絶対他者、神秘的存在への遭遇 生まれ変わり体験) 世界創造の物語から創始者の伝記→口伝から教典・経典へ 物語・儀礼の根拠として 社会上層部へ受け入れられる段階で形 成。但し、多くの宗教史が教義的相違にばかり注目し、他の次元を見ないのはバランスを 欠く。 5)倫理的・法的次元 戒律、トーラー、シャリーア等 6)社会的・制度的な次元 教会、サンガ、ウンマという宗教共同体 変革期のカリスマ的 指導者 7)有形的な次元 聖遺物、像、建築、自然物、聖地等々 これらの諸次元は、宗教によって濃淡、強弱の差はある。 1 3 世俗的な諸世界観の特質 1) ナショナリズム 19 世紀から 20 世紀にかけての民族的アイデンティティを基盤とした 国民国家形成の動き 近代国家 植民地化 反植民地闘争 を経て形成 国民国家の諸特徴そしてナショナリズムの宗教的次元 1 行事と儀礼の次元 国歌、国旗、記念日、戦没者追悼施設、記念式典 2)経験的・感情的な次元 愛国心の情熱 3)物語的ないし神話的次元 4)教義的・哲学的次元 5)倫理的・法的次元 民族自決権、政治的イデオロギー或いは宗教そのもの 愛国心、納税義務、徴兵制等 6)社会的・制度的な次元 7)有形的な次元 国史、英雄伝 国家体制そのもの これまた国の建造物、国土等 近年、トランスナショナルな動き 2) マルキシズム 1.グローバリゼーション 2.多文化主義 初版が 1989 年なので一項設けてあるが、二版目としては多少現代性と いう点では問題があるが、しかし、20 世紀における主要な世俗的イデオロギーであっ たことは間違いない 1 行事と儀礼の次元 記念式典等々 2 経験的・感情的な次元 3 物語的ないし神話的次元 4 教義的・哲学的次元 5 倫理的・法的次元 3) 赤 国際主義!? 革命への傾倒 メーデー、革命記念日 階級闘争の歴史的発展段階論 共産主義による救済論 団結 6 社会的・制度的な次元 7 有形的な次元 愛国心 共産党独裁 社会主義リアリズムという芸術 科学的人間主義 1 行事と儀礼の次元 知識人や現代人の意識 ない 2 経験的・感情的な次元 文化・芸術 3 物語的ないし神話的次元 4 教義的・哲学的次元 5 倫理的・法的次元 例外がスポーツ! ない 科学史 ヒューマニズムであるが複雑 功利主義 2 6 社会的・制度的な次元 7 有形的な次元 教育制度 摩天楼とスタジアム 日本の場合は? 現代社会では、このような世界観のシステムが混合し、競合しあってきた 4 もろもろの起源、形成、再形成 世界の諸宗教と諸文化には起源と展開の時代があり、展開は起源にはない変化を含むこ とが多い。それらは異なる宗教・文化伝統の影響を受けたものであることが多い。 再形成としては、16-19 世紀にかけてのヨーロッパによるアジア、アフリカ、南北アメリ カ大陸の征服・植民地化、或いは政治・文化的な影響力の行使等があり、20 世紀における 2つの世界大戦と戦後体制によって、現代世界が形成され、諸宗教・文化がそれぞれにお ちつけられたのである。 感想・質問 1 諸宗教を歴史的に学ぶことの意義に関しては同感。この種のテキストは、アメリカの 「帝国主義」的政治・経済・文化行動に眉をひそめる人々が書いたとみるべきか、或いは、 帝国の支配者らしく、多文化主義を用意しようとしているとみるべきか? 2 宗教の特徴を7つの次元で分析的に記述しようとしているのは、宗教学・宗教史学と してオーソドックスであり、初学者にも専門家にも説得的である。世俗化された宗教とし ては、科学的人間主義の後継者、或いは亜流としてアメリカニズムを挙げたい。 1 行事と儀礼の次元 独立記念日 2 経験的・感情的な次元 愛国心 3 物語的ないし神話的次元 大統領選挙 各種の宣戦布告 国際主義!? 建国神話 共和主義とキリスト教→仮想敵からの解放者(共産 主義体制、イスラームファンダメンタリズム国家、テロリズム) 4 教義的・哲学的次元 5 倫理的・法的次元 民主主義 同盟諸国 6 社会的・制度的な次元 7 有形的な次元 軍隊 自由主義的資本主義 圧倒的な軍事力と経済力 ファーストフード カジュアルスタイル 英語 おそらく、日本の近年の国家主義的展開もこの次元で考察可能ではないか。 3