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わが国の行政裁判法制度と行政処分手売

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わが国の行政裁判法制度と行政処分手売
第33巻 第2号1995年3月
《
個 人研 究》
わが 国の行 政裁判 法制度 と行政処分 手続
田中舘
照
橘☆
TheJapaneseAdministrativeProcedureAct:TheAvailabilityof
JudicialReviewofAdministrativeActions
ShokltsuTanakadate
一
一
行政 手続法 の歴 史 的経 緯
平 成5年(1993年)11月12日
過 し て 制 定 され た が,こ
明 治 憲 法 下 で は,ド
,「 行 政 手 続 法 」(法 律88号)が,日
本 国憲 法制 定後 約 半世 紀 を経
の わ が 国 の行 政 手 続 法 制 は,歴 史 的 に は つ ぎ の よ う な 経 緯 を辿 っ た 。
イ ツ 型 の行 政 法 制 度 に依 拠 し,ド イ ツ 的 な 「法 律 に よ る行 政 の 原 理 」 を採 用
し,処 分 の 相 手 方 の 権 利 ・利 益 を 擁 護 す る とい う行 政 手 続 に は 関 心 が な か った 。
第 二 次 大 戦 後,ア
メ リカ 法 の 思 想 に基 づ き,日 本 国 憲 法 が 制 定 され,行 政 手 続 の 根 拠 を 日本 国 憲 法
31条 の 「何 人 も法 律 の 定 め る 手 続 に よ ら な け れ ば … 自 由 を 奪 は れ … な い 」 に求 め る解 釈 論 が 展 開 さ れ
た 。 一 方,ア
メ リ カ で は1946年 に 行 政 手 続 法 が 制 定 さ れ た 。 わ が 国 で も個 別 的 に行 政 手 続 の 規 定 が 設
け られ た が,こ
二
れ ら の 規 定 は 一 定 し て い な か った 。
日本 国 憲 法 施 行 後13年 を 経 た 昭 和35年10月
に,日 本 公 法 学 会 が 行 政 手 続 法 を主 題 と して と り あ
げ た こ と も あ り,こ の 頃 か ら行 政 手 続 に関 す る研 究 発 表 が 多 くな っ た 。 昭 和37年10月
に事 後 救 済 手 続
としての行政不服審査法及び行政事件訴訟法が制定 されたが,こ れ らの法律の審議過程 において も行
政手続法の制定が論議 された。
昭 和38年9月18日
決 を 下 し,ま た,同
に,東 京 地 裁 は 「個 人 タ ク シ ー事 業:免許 申 請 却 下 処 分 取 消 請 求:事件 」 に つ い て 判
地 裁 は,同 年12月25日
「
群 馬 中 央 バ ス 事 件 」 に つ い て 判 決 を 下 し た が,両
判決 と
も行 政 手 続 の 立 場 か ら介 入 し,裁 判 所 が 行 政 手 続 に 関 心 を持 っ て い る こ と を示 し た 。
三
昭 和39年2月
に 第 一 次 臨 時 行 政 調 査 会 は,168条
か らな る1宥 政 手 続 法 草 案 」 を ま と め て,政
府 に 答 申 した 。 し か し,こ の 「行 政 手 続 法 草 案 」 は残 念 な が ら立 法 化 さ れ な か っ た 。 そ の 理 由 は,基
☆本学法学部教授
一 重49一
明治大学社会科学研究所紀要
本 的 に は,行 政 庁 側 に とっ て は行 政 手 続 法 に よ り行 政 手 続 が 統 一 さ れ る こ とが 行 政 の 多 様 性 に 対 し障
碍 とな る こ と,ま た,行 政 庁 の 処 分 手 続 を適 正 手 続 の 立 場 か ら厳 格 に規 制 す る こ とは 行 政 の 能 率 性,
敏 速 性 の 要 請 に 合 致 しな い こ と な どの 反 対 論 が 主 張 さ れ た た め で あ っ た 。 しか し,昭 和40年 以 降,高
度経済成長か ら派生 した公害環境問題の解決 を求 める住民の意識が 高まり,行 政手続 の理論が住民の
参 加 と い う形 で 実 践 に移 さ れ る よ う に な った 。
こ の よ う な状 況 に あ っ て,最
高 裁 は,昭 和46年10月28日,前
述 の 個人 タ クシ ー事業 免 許 申請 却 下処
分 取 消 請 求 事 件 訴 訟 の 判 決 に お い て,免 許 の 申 請 人 に 対 し,そ の 主 張 と証 拠 の 提 出 の 機 会 を 与 え る と
い う 「公 正 な千 続 」 に よ っ て 免 許 の 許 否 に つ い て判 定 を う け る べ き法 的 利 益 を 保 障 す る必 要 が あ る と
い う判 断 を下 し た 。
四
昭 和50年 代 に入 り,行 政 手 続 と の 関 係 で 情 報 公 開 の 問 題 が 提 起 さ れ た 。 具 体 的 に は,昭 和51年
の ロ ッ キ ー ド事 件 の 発 生 の 頃 か ら情 報 公 開 の 要 求 が 明 白 に 叫 ばれ る に い た った の で あ る。 そ の よ う な
時 期 に,情 報 公 開 に つ い て 注 日 され た の が,外
時 報887号1頁)で
務 省 機 密 漏 洩 事 件 判 決(最
高 昭 和53・5・31決
・判 例
あ っ た 。 こ の 事 件 を 契 機 と し て,国 民 の 「知 る権 利 」 に対 す る 要 求 が 一 気 に 表 面
化 し,ま た,航 空 機 購 入 に 関 す る疑 惑 問 題 な どが 社 会 的 に も政 治 的 に も,ま た 法 的 に も問 題 と な り,
内閣総理大臣の諮問機関 として 「航空機疑惑課題等防止対策に関す る協議会」が設置された。同協議
会 は,(1)政 治 の 浄 化 と企 業 倫 理 の確 立 を 検 討 す べ き こ と,(2)行 政 の 公 正 確 保 の た め に 行 政 指 導 の 根
拠,手 続,責
任 の 所 在 を明 確 に す る こ と,(3)許 認 可 の 運 用 に 当 た っ て は民 意 を反 映 さ せ る た め の 対 策
を講 ず べ き こ と,(9)一 般 的 行 政 手 続 の 整 備 を 長 期 的 課 題 と して検 討 す べ き こ と,な
の 提 言 が な され た2年 後,昭
和56年3月
ど を提 言 した 。 こ
に 第 二 次 臨 時 行 政 調 査 会 が 発 足 し,昭 和58年3月
を行 っ た が,行 政 手 続 に関 し て は,情 報 公 開,個
人 情 報 の 保 護,オ
に最 終答 申
ンブ ズ マ ン制 度 の 必 要 性 を 提 言 し
た に止 まった。
五
ま た,平 成 元 年 に,第 二 次 臨 時 行 政 改 革 推 進 審 議 会 は,「 公 的 規 制 の 在 り方 に 関 す る小 委 員 会
報 告 」 に お い て,「 個 別 法 を 越 え た 行 政 手 続 に 関 す る 基 本 的 ル ール を 確 立 す べ く,手 続 法 制 の 整 備 に
向 け た 検 討 作 業 を早 期 に 本 格 化 さ せ る べ きで あ る」 と指 摘 した 。 こ の よ う な 公 的 規 制 緩 和 の推 進 と連
動 して,行 政 手 続 法 制 の 整 備 の 重 要 性 が 認 識 さ れ,法 制 化 の 動 きが 一 気 に加 速 され た 。
,
六
平 成2年{1990年)4月
向 上,公
の 第 二 次 行 革 審 最 終 答 申 に お い て は,「 行 政 手 続 の 内 外 へ の 透 明 性 の
正 の 確 保 等 を図 る た め,処 分 手 続 等 に 関 し,法 制 の統 一 的 な 整 備 に 向 け て,専 門 的 な 調 査 審
議 機 関 を 設 置 して,検 討 す る と と も に,早 期 に 結 論 を 得 て 実 施 に移 す もの と す る。 これ に 際 し,行 政
指 導 に関 す る手 続 的 な 規 制 及 び 事 後 救 済 制 度 に つ い て も検 討 す る 」 こ とが 提 言 され,同
月,そ
の提 言
を実 施 に 移 す こ とが 閣 議 決 定 され た 。
平 成2年10月31日,第
三 次 臨 時 行 政 改 革 推 進 審 議 会 の 下 に 「公 正 ・透 明 な 行 政 手 続 部 会 」 が 設 置 さ
一150一
第33巻
れ,行
第2号1995年3月
政 手 続 法 案 の 本 格 的 検 討 が 開 始 さ れ た 。 こ の 部 会 で は,(1)こ れ ま で の 行 政 手 続 法 に関 す る研
究 ・検 討 の 経 緯 に つ い て の 概 況 説 明,②
の 内 容 の 紹 介,(3)行 政 手 続 の 日的,迅
ア メ リカ ・ ドイ ツ ・フ ラ ン ス 等 の 諸 外 国 に お け る行 政 手 続 法
速 性 ・簡 素 化 の 要 請,情
報 公 開 制 度 との 関 連,一
般 法 た る行 政
手 続 法 と個 別 の 法 律 との 関 係,(4)行 政 手 続 法 と し て整 備 す べ き手 続,{5)地 方 公 共 団体 の 行 う手 続 の 問
題 等 に つ い て の 討 議 が 行 わ れ た 。 そ し て,平 成5年(1993年)11月12日
に 「行 政 手 続 法 」(法 律88号)
が 制 定 され た 。
行 政 手 続 法 は,適 正 手 続 の 法 理 に 基 づ き,「 不 利 益 処 分 」 に つ い て は 通 知 と聴 聞 の 要 件 を課 して い
る が,「 申 請 に 対 す る処 分 」 に通 知 と聴 聞 の 要 件 を課 す こ とに つ い て は 明 文 を も っ て 規 定 し て い な い。
本 研 究 で は,行 政 手 続 法 が 制 定 さ れ る以 前 の 判 例 を中 心 と し て,行 政 処 分 の 決 定 手 続 と適 正 手 続 と
の か か わ り合 い に つ い て 検 討 を加 え た 。
二
一
憲 法31条 と 「行政 手 続Jと
最 高裁 が
の 関係 につ い て の裁 判例
,成 田 空 港 内 工 作 物 等 使 用 禁 止 命 令 取 消 等 請 求 訴 訟 上 告 審 判 決(平
判 ・nll,.,和61年(行 ツ)第11号)に
お い て 憲 法31条
成4・4・1大
と 行 政 手 続 と の 関 係 に つ い て 直 接 触 れ た こ と は,
「
行 政 手 続 」 と い う法 概 念 が 法 理 論 上 確 認 さ れ た とい う こ とで あ り,注 目 す べ き こ とで あ っ た 。・
す な わ ち,最 高 裁 は,本 判 決 に お い て,「 憲 法31条 の 定 め る法 的 手 続 の保 障 は,直 接 に は刑 事 手 続
に 関 す る もの で あ る が,行 政 手 続 に つ い て は,そ れ が 刑 事 手 続 で は な い との理 由 の み で,そ の す べ て
が 当 然 に 同 条 に よ る 保 障 の枠 外 に あ る と判 断 す る こ と は相 当 で は な い 」 と判 示 し,憲 法31条 の 「
法的
手 続 の 保 障 」 規 定 は 行 政 手 続 に も適 用 さ れ う る こ とを 明 白 に し た の で あ る。
二
従 来 か ら,憲 法31条 の 法 定 手 続 の 保 障 の 規 定 が 行 政 手 続 に も適 用 され る か 否 か は議 論 の あ る と
こ ろ で あ っ た 。 た と え ば,東
京 地 裁 昭 和54年9月13日
判決
く
判 例 時 報963号20頁)は,道
路 法8条
の
決 定 に 至 る手 続 に関 し,「 憲 法31条 の 規 定 は,そ の 位 置 及 び 表 現 等 か ら 考 え て直 ち に本 件 決 定 に 関 す
る 手 続 の よ う な行 政 手 続 に適 用 が あ る もの と解 す る こ とは で き な い 」 と判 示 し,憲 法31条 の 行 政 手 続
へ の 適 用 を排 除 し た 。 一 方,農
地 法20条 の 許 可 に つ い て 理 由 の 記 載 が 問 題 とな っ た 事 案 に つ い て,東
京 地 裁 平 成 元 年12月22日 判 決{訟
務 月 報36巻6号1123頁
〉 は,「 行 政 手 続 に つ い て 憲 法31条 の 適 用 な
い し準 用 が あ る か ど う か は しば ら くお き,行 政 手 続 が 公 正 な 手 続 に よ っ て な さ れ な けれ ば な らな い こ
と は い う ま で もな い 」 と判 示 して い る よ う に,憲 法31条 が 行 政 手 続 の 根 拠 規 定 と な るか とい う点 に つ
い て は 判 断 を 回 避 して い た 。
ま た,以 下 に掲 げ る最 高 裁 判 所 の 代 表 的 な4つ の 判 決 に お い て も,憲 法31条 と行 政 手 続 との 関 係 は
必 ず し も明 白 で は な か っ た 。 す な わ ち,
(1)関
税 法118条1項
に よ る第 三 者 の 財 産 権 の 侵 害 と適 正 手 続 の 原 期 との 関 係 が 問 題 と な った 関 税
一151一
明治大学社会科学研究所紀要
法 違 反 未 遂 被 告 事 件(最
高 昭 和37・11・28判
・判 例 時 報319号6頁)に
お い て,最:高
裁 は,「 第 三 者 の
所有物の没収 は…その刑事処 分の効果が第三者に も及ぶ もので あるか ら,所 有物 を没収せ られ る第三
者 に つ い て も,告 知,弁
明 の 機 会 を与 え る こ とが 必 要 で あ っ て … 適 正 な 法 律 手 続 に よ らな い で,財 産
権 を 侵 害 す る制 裁 を科 す 」 こ と は 憲 法31条 に違 反 す る と し た 。
②
個人 タクシー事業の免許 に係 る処分 と適正手続 の原則 との関係が問題 となった事件(最 高昭和
46・10・28判
・判 例 時 報64i号22頁)に
つ い て,最
高 裁 は,「 免 許 の 許 否 を 決 し よ う と す る 行 政 庁 と し
て は,事 実 の 認 定 に つ き… 不 公 正 な 手 続 を と っ て は な ら な い 」 「申 請 人 に そ の 主 張 と証 拠 の 提 出 の 機
会 を与 え な け れ ば な ら な い 」,申 請 人 は 「こ の よ うな 公 正 な 手 続 に よ っ て免 許 の 許 否 に つ き 判 定 を う
くべ き法 的 利 益 を 有 す る」 と判 示 した 。
(3)所 得税法 に基づ く質問検査 と適正手続 との関係が問題 となった川崎民商税務検査拒否事件(最
高 昭 和47・ll・22判
・判 例 時 報684号17頁)に
つ い て,最
高 裁 は,憲
法38条1項
に よ る 保 障 は,「 純 然
た る 刑 事 事 件 に お い て ば か りで な く,そ れ 以 外 の 手 続 に お い て も実 質 上,刑 事 責 任 追 求 の た め の 資 料
の 取 得 収 集 に 直 接 結 び つ く作 用 を一 般 的 に有 す る手 続 に は等 し く及 ぶ も の と解 す るの を相 当 とす る 」
と判 示 し て い る 。
(4)バ
ス 路 線 の 免 許 の 不 許 可 処 分 と適 正 手 続 との 関 係 が 問 題 とな っ た 群 馬 中 央 バ ス 事 件(最
一50・5・29判
・判 例 時 報779号22頁)に
つ いて
,最
高昭和
高 裁 は,「 免 許 の 許 否 の 決 定 の 適 正 と 公 正 を 保 障 す
る た め に制 度 上 及 び 手 続 上 特 別 の 規 定 を設 け,全 体 と して 適 正 な 過 程 に よ り右 の 決 定 を な す べ き こ と
が 法 的 に義 務 づ け られ て い る」 「
憲 法31条 が 行 政 手 続 に も適 用 な い し準 用 さ れ る か ど うか は,特 に ご
れ を論 ず る 必 要 は な い と こ ろ で あ る」 と判 示 し た 。
最 高 裁 の 以 上4件
の 判 決 は,憲 法31条 の 適 正 手 続 の 規 定 が 行 政 手 続 に適 用 さ れ る か 否 か が 問 題 と な
っ た 事 案 に つ い て の 判 決 で あ るが,最
高 裁 は 明 確 に判 断 す る こ とを 回 避 し て き た と い う こ とが で き
る。
三
一
群 馬 中央 バ ス事 件第1審,第2審
及び農 高裁 判決 の適正手 続 につ いての見解
わ が 国 の行 政 手 続 の 法 制 に重 要 な 問 題 提 起 を した 群 馬 中 央 バ ス 事 件 の 第1審
裁 の 判 決 を通 じて;行
,第2審
及 び 最高
政 手 続 と適 正 手 続 との 関 係 に つ い て,ど の よ う な こ とが 法 的 に問 題 と な っ て い
る カ}を考 察 し,行 政 手 続 法 制 が 裁 判 上,行
政 上,ど
う い う形 態 で 問 題 と な るの か,そ の 問 題 の所 在 を
検 討 した 。
二
東京地裁判決 において行政処分手続 と適正手続 との関係が問題 となった論点
(1}憲
法V条,31条
は,行 政 上 の 適 正 手 続 の 憲 法 上 の 根 拠 規 定 とな り得 る か 。.
{2)現
行 法 制 上 手 続 規 定 が な い場 合 に,ど の よ う な 手 続 に 従 っ て 行 政 処 分 を行 うの か と い う点 に つ
一152一
第33巻
第2号1995年3月
い て は, 行 政 庁 の 裁 量 に全 く委 ね られ て い る と考 え て よ い か 。
(3} 国 民 は つ ね に恣 意 独 断 を 疑 わ れ る こ との な い よ うな 手 続 に よ っ て 行 政 庁 の 処 分 を受 け る手 続 上
の 保 障 を 受 け て い る か 。 また,行 政 庁 は,他 事 考 慮 を疑 わ れ る こ との な い よ う な行 政 処 分 を行 う義 務
を負 って いない のか。
(4) 裁 判 所 は,行 政 庁 の 専 門 技 術 的 な知 識 ・経 験 な い し公 益 上 の 裁 量 判 断 に よ ら な けれ ば な らな い
よ う な 行 政 処 分 に つ い て,適
正 手 続 の 立 場 か ら介 入 で き る か 。
(5) 国 民 は,行 政 庁 の 専 門 技 術 的 知 識 ・経 験 な い し公 益 上 の 裁 量 判 断 に よ る こ とが 必 要 と さ れ て い
る よ うな 行 政 処 分 が 行 わ れ る手 続 過 程 に お い て,行 政 庁 の 恣 意 独 断 な い し他 事 考 慮 に よ っ て 処 分 が な
さ れ た とい う こ と を簡 単 に 証 明 で き る か 。
(6) 裁 判 所 は,行 政 庁 の 専 門 技 術 知 識 ・経 験 な い し公 益 上 の 裁 量 判 断 に よ る よ う な 行 政 処 分 に つ い
行 政 庁 が 適 正 な 手 続 に 従 っ て処 分 を行 っ た こ と を まず 第 一 に 主 張 立 証 す べ き で あ る と い う方 法 に
て,
よ っ て,
司 法 審 査 を 行 うべ きか 。 行 政 処 分 を行 う手 続 に は,裁 判 所 の 手 続 と同 様 の 厳 格 さ と慎 重 さ が
要求 され るか。
(7) 行 政 庁 の 恣 意 独 断 な い し他 事 考 慮 を疑 う こ とが 客 観 的 に い わ れ が な い とい わ れ る よ う な 適 正 手
続 で あ る か は 一 律 に決 定 す る こ とが で き る か 。
(8) 適正手続 という観点から見た場合,営 業の許可を行 う場合の手続 と公企業の特許 を行 う場 合の
手 続 と は 異 な るか 。
(9} 運 輸 審 議 会 は,現 行 法 上,い わ ゆ る諮 問 機 関 た る性 質 を有 す る に と ど ま る か 。
運 輸 審 議 会 は,事 業 の 免 許 及 び そ の 取 消 し 等 の事 案 に 関 す る限 り,実 質 上 の い わ ゆ る 参 与 機 関
(1①
と し て の 性 格 を有 す る か 。
(1D 運 輸 審 議 会 は,一 般 乗 合 旅 客 自動 車 運 送 事 業 の免 許 申 請 事 業 の 審 理 に あ た っ て,も
っ ぱ ら公 益
的 判 断 の み を行 う機 関 か 。 当 該 事 業 に対 す る専 門 技 術 的 判 断 は大 臣 か 事 務 当 局 が 行 う べ き こ とか 。
道路運送法弟6条 第1項 の免許基準について公益的判断 と専門技術的判断 とを区別 することが
α2)
実 際 上 で き るか 。
〈13)
運 輸審議会が運輸省設置法第6条1項1号
の定 める法律案の立案に関する事項 を取 り扱 う場合
の公聴会 と自動車運送事業の免許 とその取消 しに関わるような個別的行政処分 について行 う公聴会 と
は 同 じで あ る と考 え て よ い か 。
(垂
の
公 聴 会 の 審 理 手 続 は,審 理 の 対 象 と な る事 項 の性 質 に よ り異 な るか 。
(15)運輸審議会 が公聴会 を開 くか否かを決定す る基準は何か。
q⑤
運 輸 審 議 会 が,処 理 箏 件 数 の 多 い こ と を理 由 に,公 聴 会 中 心 主 義 の 原 則 を緩 和 す る こ とは,適
正 な処 分 手 続 の点 か らい って 妥 当 か 。
(17) 道 路 運 送 法 第6条
と 」,
第5号
て い る が,
第1項
第1号
は,「 当 該 事 業 の 開 始 が 運 送 需 要 に 対 し適 切 な も の で あ る こ
は 「そ の 他 当 該 事 業 の 開 始 が 公 益 上 必 要 で あ り,且 つ,適 切 な もの で あ る こ と」 と定 め
この よ う な 抽 象 的 免 許 基 準 で は,ど の よ う な事 実 が 重 要 で あ り,ど の 点 が 問 題 で あ る か に
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明治大学社会科学研究所紀要
つ い て,申 請 人 や利 害 関 係 人 が 的 確 に 認 識 す る こ とが で き る で あ ろ う か 。
(18)運 輸 審 議 会 が 決 定(答
合,そ
申)を 下 す た め に運 輸 省 内部 部 局 の 提 供 す る 資 料 に 基 づ い て 判 断 す る場
の 資 料 に つ い て 申 請 人 及 び利 害 関 係 人 に反 証 の 機 会 を与 え る こ と は,適 正 手 続 に合 致 す るか 。
⑲
処 分 権 者 で あ る運 輸 大 臣 は,運 輸 審 議 会 の 答 申 を ど の 程 度 尊 重 し な けれ ば な らな い か 。
⑳
運 輸 審 議 会 の 手 続 内 容 に 違 法 が あ れ ば,そ の 答 申 に 基 づ く処 分 も 当 然 違 法 とな る か 。
⑳
公聴会 において運輸省の職員が事案の問題点 を説明せず,運 輸審議会 も主張 ・立証すべ き点を
明 ら か に し な か っ た 場 合,申 請 人 に対 し十 分 な 主 張 ・立 証 の 機 会 を 与 え た こ とに な るか 。
吻
運輸審議会 は公聴会で主張 された意見 をどの程度考慮 して判断すべきか。
⑳
運 輸 審 議 会 が,独
立 性,公 正 さ に お い て 劣 る 運 輸 省 所 管 局 の 意 見 を聞 くた め 審 議 を遅 らせ る こ
と は妥 当 か 。
⑫の 運 輸 審 議 会 は,係 属 中 の 事 件 数 が 多 い こ とを 理 由 に 現 地 調 査 を 省 略 で き る か 。
(25)処 分 権 者 が 直 接 利 害 関 係 を有 す る 事 案 に つ い て処 分 を す る こ と は,適 正 手 続 に 反 し な い か 。
㈹
処分権老 である運輸大臣 く
被告)が 巾請却下処分 を し,訴 訟が提起 された後 に新たに収集 した
資 料 に基 づ く判 断 を却 下 理 由 と し て の べ る こ とは,適 正 手 続 に 反 し な い か 。
⑳
処分 の内容の正 当性が客観的 に明 白である場合には,処 分手続の毅疵 は処分取消事 由 とな らな
い と解 し て よ い か 。
三
東 京 高 裁 判 決 に お い て 行 政 処 分 手 続 と適 正 手 続 との 関 係 が 問 題 と な っ た 論 点
(1)運
輸 審 議 会 は,答
申決 定 を す る まで に2年 以 上 の期 間 を 経 過 して ・
い る に もか か わ ら ず,そ の 間
に 当:事者 の 意 見 聴 取 を し な か っ た こ と は妥 当 か 。
②
運 輸 審 議 会 に お け る公 聴 会 の 手 続 に は,事 案 の 争 点 に つ い て 当 事 者 に 主 張 ・立 証 を促 し,攻
撃 ・防 禦 の 方 法 を尽 さ せ る司 法 手 続 の よ うな 厳 格 な 手 続 が 要 求 され る か 。
{3)運
輸 審 議 会 は,積 極 的 に 申 請 者 に対 し事 案 の 問 題 点 を指 摘 し て 主 張 ・立 証 を 促 す 義 務 が あ る
か 。
{4)運
㈲
輸 審 議 会 が 申 請 事 案 を 審 理 す る に 当 っ て 現 地 調 査 を し な か っ た こ と は不 当 か 。
運 輸 審 議 会 が 事 務 当 局 の 意 見 を徴 す る こ と に よ り,自 由 心 証 の 実 が 失 わ れ る こ と に な らな い
かQ
㈲
運輸審議会の委員6名 のうち交代 した3名 の新委員 は公聴会に関与 せず,公 聴会の速記録が紛
失 した た め そ の 審 議 内 容 も知 る こ とが で き なか っ た は ず で あ る の に,新 委 員 が 加 わ っ て な さ れ た 同 審
議 会 の 答 申 は 公 正 を 欠 く決 定 とい え な い か 。
(7)行
政 庁 が 行 う処 分 の 性 質,目
的,内
容 に よ り,処 分 を行 う場 合 の 公 正 な 手 続 の 内 容 は 異 な る
か 。
(8)申
請 事 案 に つ い て どの よ う な 手 続,方
法 で 審 理 し,聴 聞 を行 うか は行 政 庁 の 裁 量 に委 ね られ る
べ き で あ る の か。
一15?一
第33巻 第2号1995年3月
(9)運 輸 審 議 会 は,行 政 庁 の 意 志 決 定 に参 与 す る 実 質 上 の 参 与 機 関 か,あ
ω
るい は諮 問機 関 か。
運輸審議会の審理手続 に違法事由があった場合には,自 動車運送事業の免許 申請却下処分は当
然 に違 法 とな る の か 。
四
最高裁判決 において行政処分手続 と適正 手続 との関係が問題 となった論点
U)行
政 庁 は,憲 法31条 が 刑 事 手 続 だ け で な く行 政 手 続 に も適 用 な い し準 用 さ れ る こ と を明 白 に し
て 行 政 処 分 を行 わ な けれ ば な らな い か 。
②
一般乗合旅客 自動車運送事業 の免許 の許否を決定 する手続 において,陸 運局長 による聴聞 と運
輸 審 議 会 に お け る 公 聴 会 の 重 要 性 は異 な る の か 。
(3)諮
問 機 関 の 審 理,決
定(答
申)の 過 程 に 重 大 な 法 規 違 反 が あ る場 合 に は,こ れ を 経 て な さ れ た
処 分 は違 法 と し て 取 消 され る か 。
(4)法
が 公 聴 会 の 審 理 を 要 求 して い る場 合,申
請 者 に ど の よ う な形 で 意 見 と証 拠 を提 出 さ せ れ ば,
「適 正 手 続 」 に 合 致 した とい え る か 。
以.ヒ の 論 点 の う ち,と
くに 重 要 な 点 は,(1》 憲 法 正3条,31条
と適 正 手 続,(2)国
民 に対 す る行 政 上 の 適
正手続の保障の限界,③ 行政庁の専門技術的知識 ・経験に基づ く処分に対す る裁判所 の介入の方法,
(4)営業 の 許 可 及 び 公 企 業 の 特 許 と適IE手 続 との 関 係,(5藩
会 が 決 定(答
議 会 の 公 聴 会 と適 正 手 続 との 関 係,(6)審 議
申)を 下 す た め の 内 部 部 局 の 資 料 と利 害 関 係 者 に対 す る反 証 の 機 会 の 保 障 と の 関 係,(7)
直接利害関係 を有 する処分権者 が行 う処分 と適正手続 との関係,(8}審 議会の委員の交代 と適正手続 と
の 関 係,(9}審 議 会 の 審 理 手 続 の 違 法 と免 許 申 請 却 下 処 分 との 関 係,⑩
料 提 出 の 限 界,な
五
公聴 会 の審 理 にお け る当局 の資
どで ある。
群馬中央バ ス事件の東京地裁判決 のほかに,行 政処分 について適正手続の遵守 を積極的 に要求
した 判 決 と し て,公 有 水 面 埋 立 免 許 取 消 請 求 事 件(松
山 地 昭 和43・7・23決
が あ る。 す な わ ち,裁 判 所 は,公 有 水 面 埋 立 法 弟4条3号
・判 例 時 報548号63頁)
に 「
該 当 す る と き は地 方 長 官 は埋 立 を免 許
す る こ とが で き る 旨 を い うの み で あ っ て,右 免 許 に あ た り,こ れ に よ っ て 不 利 益 を受 け る利 害 関 係 人
の 権 利 を 保 障 す る た め の手 続 規 定 を 全 く も う け て お らず,他 の 法 令 中 に も右 の 手 続 を定 め た もの が 見
当 らない(右 免許 に基づ く工事の実施に より利害関係人 に生ずる損害の補償 に関す る規定 は存在す る
が,い
ま こ こ で 問 題 に し て い る の が 右 免 許 処 分 の 際 の 権 利 保 障 規 定 で あ る か ら,こ れ は 別 問 題 で あ
る)。 しか し な が ら 当裁 判 所 は,同
に あ た っ て は,少
条 に い う 免 許 処 分(同
法 第92条 の 承 認 処 分 も同 様 で あ る)を す る
く と もそ の 公 有 水 面 に 関 し権 利 を 有 す る 者 に 右 免 許 に 関 し意 見 を 述 べ る 機 会 を与 え
る こ とが 適 正 手 続 を保 障 し た 憲 法 第31条 の 要 求 す る と こ ろ で あ る と考 え る。」 と判 示 して い る。
この判決 は,公 有水面埋立法 に免許 により不利益 をうける利害関係者の権利 保護 のための手続規定
が な い場 合 で も,憲 法31条 の 規 定 を 根 拠 に 適 正 手 続 の 保 障 が 認 め ら れ る と判 示 し た の で あ る 。
一155一
明治大学社会科学研究所紀要
しか も,本 判 決 は,憲 法31条 は行 政 手 続 や 財 産 的 利 益 の 剥 奪 の 場 合 に も適 用 され る と断 定 し て い
る。 す な わ ち,「 憲 法31条 は行 政 手 続 や 財 産 的 利 益 の 剥 奪 に関 して も適 用 が あ る と解 す べ き か とい う
点 に つ い て は,周 知 の よ う に 多 くの 議 論 が あ る け れ ど も」 と前 置 き し て,「 当 裁 判 所 は 右 の い ず れ の
場 合 に つ い て も同 条 の 適 用 を肯 定 す る の が 相 当 で あ る と考 え る 」 と明 言 し て い る。
そ し て,こ の よ う な 憲 法31条 と行 政 手 続 と の 関 係 を 前 提 と して ,公 有 水 面 埋 立 免 許 と告 知,聴 聞 と
の関 係 に つ い て,裁 判 所 は 「本 件 に お い て は,か
か る告 知,聴
聞 の 機 会 が 申 立 人 に対 し与 え られ た こ
と を うか が う に た る資 料 は な い」 「した が っ て,本 件 処 分 は憲 法31条 に違 反 す る疑 い が あ る 」 と した
の で あ る。
四
一
憲法31条 と行政 手続 に関す る下級審 の見解 と学説
憲 法31条 が 行 政 手 続 に適 用 さ れ る か 否 か に つ い て の 裁 判 所 の 見 解 は
れ る と す る説,②
,(1)憲 法31条 が 直 接 適 用 さ
身 体 の 自 由 な ど に刑 罰 類 似 の 重 大 な 侵 害 を及 ぼ す 手 続 に は 適 用 さ れ る と す る説
,③
行 政 行 為 の 種 類 に よ っ て適 用 す る か 否 か を 決 定 す る とす る 説 な ど に 分 類 す る こ とが で き る。
下 級 審 に お い て は,憲 法31条 を行 政 手 続 に適 用 す る こ とを 全 く否 定 す る見 解 は 少 な い と い え よ う。
最 高 裁 は,従 来,憲
法3ユ条 を 適 正 手 続 の 保 障 の 根 拠 規 定 と して 明 確 に は 認 め ず ,個 人 の 生 命,身 体 の
自 由 を剥 奪 す る処 分,個
人 の 意 志 と無 関 係 に刑 罰 類 似 の制 裁 を科 す る手 続,た
よ る 強 制 処 分 な ど に つ い て は適 用 す る とい う見 解 を採 用 し て い た(最
とえ ば伝 染 病 予 防 法 に
高 昭 和41・12・27判
・民 集20巻
10号2279頁)。
`
二
憲 法31条 と適 正 手 続 に関 す る学 説 は,(1)憲 法31条 は行 政 手 続 に は適 用 され な い と す る説(行
手 続 不 適 用 説),(2)憲 法31条 は行 政 手 続 に つ い て も適 正 な 手 続 を 要 求 す る とす る 説(行
説),(3)憲 法31条 は行 政 作 用(処
分)の
政
政手続適 用
手 続 に も ま た そ の 実 体 に も適 用 され る とす る説(行
政 手続 ・
実体 適 用 説)に 分 け られ る。
この う ち,(1'の 行 政 手 続 不 適 用 説 は,そ の 根 拠 と して ,(i)憲 法31条 が 「そ の 他 の 刑 罰 を 科 せ られ な
い 」 と規 定 し,と
く に 「刑 罰 」 に 関 す る 規 定 と い う 文 言 を 使 用 し て い る こ と
,{ii》憲 法31条
は同条以 後
に続 く各 種 の 刑 事 手 続 条 項 を 導 く一
一 般 的,総 則 的 規 定 の 地 位 に置 か れ て い る こ とか ら,同 条 が 刑 事 手
続 に関 す る もの で あ る と推 測 で き る こ と,を 主 張 して い る。
五
一
むすび
国民 は
,行 政庁が行政処分 を行 う場合適正手続 を遵守することをどの程度行政庁 に要求できる
一156一
第33巻 第2号1995年3月
か,す
な わ ち,行 政 庁 の 側 か ら す れ ば,行 政 処 分 を行 う場 合,ど
の 機 会 の 供 与)に
拘 束 され る か,と
の 程 度 適 正 手 続 の 原 則(告
知 ・聴 聞
い う点 に つ い て の 裁 判 所 の 見 解 の 動 向 を考 察 し て お か な け れ ば な
ら な い。
憲法31条 の行政手続 への適用 についての裁判所 の見解 は,身 体の自由な どに刑罰類似の重大な侵害
が な さ れ る よ うな 行 政 手 続 に つ い て適 用 す る とす る説 が 支 配 的 で あ る 。 し か し,国 民 の 権 利 を 擁 護
し,民 主 的 な適 正 な行 政 を行 わ せ る た め に は,行 政 庁 が 適 正 な 手 続 の 要 件 に 従 っ て処 分 を 行 った か 否
か とい う点 に つ い て 裁 判 所 の 審 査 が 行 わ れ な け れ ば な らな い と考 え る。
二
わ が 国 の 行 政 手 続 に つ い て は,(1}単 に手 続 が 適 正 で な け れ ば な ら な い と い う よ う な抽 象 的 な 理
念 を脱 し,い か な る行 政 機 関 の い か な る 内 容 の 手 続 が 適 正 な 手 続 と し て 認 め られ る の か,②
さ らに,
その手続の蝦疵が どの程度 であれば処分の適否,効 力に影響 を及 ぼすのかな どの行政手続上の実質的
検 討 が な さ れ な け れ ば な らな い の で あ る。 こ れ は,具 体 的 に適 正 手 続 と は ど の よ う な もの で あ る の
か,強
い て い え ば,行 政 手 続 の 司 法 手 続 化 は ど の 限 界 ま で 要 求 され るか とい う こ とで もあ る。 た しか
に,行 政 手 続 を 司 法 手 続 に 類 似 させ る と い う こ と は,現 代 国 家 の 行 政 が 営 む 機 能 の 範 囲 と そ の 膨 大 な
量 か ら し て,迅 速 か つ能 率 的 な 行 政 を 阻 害 す る こ とに な ろ う。 しか し,国 民 の権 利,自
由 を最大 限 に
保 障 す る た め に は,適 正 な 手 続 を確 保 す る こ とが 必 要 で あ り,こ れ を無 視 す る こ と は で き な い と考 え
る。 手 続 の 保 護 の な い と こ ろ に,権 利 ・自 由 の 真 の 保 障 は あ り得 な い か ら で あ る。
行 政 手 続 法 が 制 定 され た が,以
」二に 指 摘 した よ う な τ適 正 手 続 」 の 法 理 を 前 提 とす る 法 的 問 題 は今
後 も提 起 され る こ とが 予 測 され る し,そ れ が ど の よ うに わ が 国 に 定 着 す るか は,国 民 の 行 政 手 続 法 に
対 す る関 心 と裁 判 所 の 適 正 手 続 法 理 の 正 しい 適 用 如 何 に よ り決 定 され て い く こ と と考 え る。
註
こ の 行 政 手 続 法 の 編 成 は,つ
第1章
ぎ の よ う で あ る。
総 則 一 目 的 等(1条),定
義(2条),適
用 除 外(3条),国
の 機 関 等 に対 す る処 分 等 の 適 用
除 外(4条)
第2章
条),理
申請 に対 す る処 分 一 審 査 基 準(5条),標
由 の提 示(8条),情
準 処 理 期 間(6条),申
報 の 提 供(9条),公
聴 会 の 開 催 等(10条),複
請 に対 す る 審 査,応
答(7
数 の行 政 庁 が関与 す る処
分(11条)
第3章
条),不
不 利 益 処 分 一第1節
利 益 処 分 の 理 由 の 提 示(14条),第2節
加 人(17条),文
書 等 の 閲 覧(18条),聴
陳 述 書 等 の 提 出(21条
条),聴
通 則 一 処 分 の 基 準(12条),不
聴 聞 一 聴 聞 の 通 知 の 方 式(15条),代
理 人(16条),参
聞 の 主 宰 く19条),聴 聞 の 期 日 に お け る 審 理 の 方 式(20条)i
〉,続 行 期 日 の 指 定(22条),当
聞 調 書 及 び 報 告 書(24条),聴
利 益 処 分 を し ょ う とす る場 合 の 手 続(13
事 者 の 不 出 頭 等 の 場 合 に お け る聴 聞 の 終 結(23
聞 の 再 開(25条),聴
一257一
聞 を 経 て さ れ る 不 利 益 処 分 の 決 定(26
明治大学社会科学研究所紀要
条),不
服 申 立 て の 制 限(27条),役
特 例(28条),第3節
弁 明 の 機 会 の付 与 一弁 明 の 機 会 の 付 与 の 方 式(29条),弁
の 方 式(30条),聴
第4章
員 等 の 解 任 等 を命 ず る不 利 益 処 分 を し ょ う とす る場 合 の 聴 聞 等 の
明 の機 会 の付 与 の通 知
聞 に関 す る 手 続 の 準 用(31条)
行 政 指 導 一行 政 指 導 の 一 般 原 則(32条),申
に関 連 す る行 政 指 導(34条),行
請 に 関 連 す る 行 政 指 導(33条),許
政 指 導 の 方i式(35条),複
認可 等 の権 限
数 の 者 を対 象 とす る行 政 指 導(36条)
第5章 届 出一届 出(37条).、
第6章
補 則 一地 方 公 共 団体 の 措 置(38条)
(た な か だ て
ρ
一158一
し ょ う さ つ)
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