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製鉄実験による鉄製品のー4C年代測定原理の検 と展望
製 鉄 実 験 に よ る鉄 製 品 の 山 田哲 也 1) 1) ・塚 本 敏 夫 1) 14 C年 代 測 定 原 理 の検 証 と展 望 ・小 野 直 俊 2 )・小 田 寛 貴 3) ・中 村 俊 夫 3) (財 ) 元 興 寺 文 化 財 研 究 所 保 存 科 学 セ ンター 〒 630-0257 奈 良 県 生 駒 市 元 町 2-14-8 Tel:0743-74-6419, Fax:0743-73-0125 E-mai l:g-hoz on@kc n. ne. j p 2) 名古 屋 大学 3) 名古 屋大 学 大学院工学研 究科 〒 464-8602 名 古 屋 市 千 種 区 不 老 町 年代測定資 料研 究セ ンター 〒464-8602 名 古 屋 市 千 種 区 不 老 町 Tel:052-789-2578, Fax:052-789-3095 1. は じめ に 古 代 製 鉄 に お い て は 、純 度 の 高 い 鉄 を 作 る た め に 、木 炭 な ど の 炭 素 を 還 元 剤 と し て 用 い 、 鉄 鉱 石 や 砂 鉄 中 の 酸 化 鉄 を 還 元 す る 方 法 が 採 られ て き た 。 これ ら の 製 鉄 法 に よ り造 られ た 古 代 の 鉄 製 品 は 、そ の 成 分 中 に 木 炭 の 成 分 で あ る 炭 素 0程 度 含 ん で い る を 数 % か らそ の 1/1 。 従 って 、鉄 製 品 中の炭 素 の年 代 は、製 錬 過 程 で 使 用 さ れ た 木 炭 の 原 料 で あ る 樹 木 の 年 輪 形 成 時 期 に 由来 し て い る と 考 え ら て い る 。 こ の 前 提 条 件 を用 い て 、 これ ら の 炭 素 を 効 率 よ く、 か つ 、高 純 度 で 抽 出 す る 事 に よ り、鉄 製 品 の 年 代 測 定 方 法 と して 加 速 器 質 量 分 析 法 を用 い た放 射 性炭 素 ( 14 C ) 年 代 測 定 法 が 利 用 さ れ て い る 。 しか し、 そ の 前 提 条 件 が 正 し い か ど う か の 検 証 は 行 わ れ て い な い の が 現 状 で あ る 。 ま た 、い く ら測 定 資 料 の 少 量 化 が は か られ た と は い え 、非 破 壊 で は な く破 壊 分 析 で 測 定 を 行 っ て お り、 か け が え の な い 文 化 財 を 少 量 で も 、 破 壊 分 析 す る の で あ れ ば 、 き ち ん と分 析 法 の 有 効 性 を検 証 す る必 要 が あ る 。 本 報 告 で は 、 ま ず 、年 代 測 定 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 の 有 効 性 を検 証 す る た め 古 代 の 製 鉄 方 法 に よ る 製 鉄 実 験 を 行 い 、 そ の 際 、使 用 した 砂 鉄 や 木 炭 と製 鉄 実 験 に よ り得 ら れ た 鉄 塊 の 性 に つ い て 検 証 を行 っ た た の で こ こで 報 告 す る 14 。 C年 代 測 定 結 果 の 相 関 関 係 を 求 め 、前 提 条 件 の 有 効 ま た 、併 せ て 、遺 跡 出 土 遺 物 の 。 -87一 14 C 年 代 測 定 を行 っ 2. 製 鉄 実 験 に よ る 14 C年 代 測 定 原 理 の 検 証 2 - 1. 製 鉄 実 験 製 鉄 方 法 は 砂 鉄 製 錬 法 で 行 い 、 製 鉄 炉 に は 、 粘 土 製 の 小 型 竪 形 炉 (内 径 20 c m、 高 さ 100c m) を作 製 し使 用 し た 。 砂 鉄 は 、 熊 本 県 荒 尾 市 関 川 岩 本 橋 周 辺 の 山 砂 鉄 を 採 取 し使 用 。 年 代 の 推 定 と な る 木 炭 は 、 岩 手 県 産 の 10- 30年 も の の 松 材 を 1996年 に 製 炭 し た も の を 使 用 し た 。 操 業 時 間 は 、 約 5時 間 操 業 し 、 製 錬 を行 っ た 。 2- 2. 分 析 試 料 製 錬 に 用 い た 砂 鉄 と製 錬 さ れ た 鉄 塊 の 化 学 組 成 分 析 を 行 い 、製 錬 に 使 用 し た 木 炭 1点 と 製 錬 さ れ た 鉄 塊 2 点 の 加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る った。 14 C年 代 測 定 を 行 2 - 3 . 結 果 と考 察 砂 鉄 と鉄 塊 の 化 学 組 成 分 析 結 果 を Tabl e 1 ・ 2に 、 菰 微 鏡 組 織 を Photo 1 ・2に 示 した 。 ま た 、 木 炭 と鉄 塊 の 14 C 年 代 測 定 結 果 を Tabl e 3に 示 し た 。 14 C 年 代 か ら 暦 年 代 へ の 較 正 は 、 Manr l i ngandMel hui s h(1994) の デ ー タ に 基 づ い て 行 っ た。 製 錬 に 用 い た 砂 鉄 は 、化 学 組 成 分 析 よ りチ タ ン ・バ ナ ジ ウ ム の 含 有 率 が 高 く 砂 鉄 特 有 の 特 徴 を 表 して お り、寂 微 鏡 組 織 か ら も チ タ ン鉄 鉱 を 観 察 す る こ とが できた 。 ま た 、 問 題 と な る 炭 素 に つ い て は 、 0. 08% とか な り低 い 値 を 示 し た 。 ま た 、製 錬 さ れ た 鉄 塊 は 、化 学 組 成 分 析 に よ り炭 素 を 1. 66%含 有 し、顕 微 鏡 組 織 か ら 銑 鉄 の 中 の 炭 素 が 黒 鉛 の 形 で 存 在 して い る こ とが 観 察 さ れ た 。 こ の こ と か ら、 製 錬 に 用 い た 木 炭 の 炭 素 が 、 製 錬 課 程 で 鉄 塊 中 に 取 り込 ま れ て 行 く こ とが 検 証 さ れ る 木 炭 と鉄 塊 の 14C 。 年代測定結果 は、 14 C / 12 C 比 (- R ) が 1. 000以 上 で あ る た め に 、A D 1950年 か ら後 の 年 代 と して 、そ れ ぞ れ 14 C年 代 値 が 負 の 値 を 示 して い る 。 ま た 、 歴 年 代 に 補 正 し た 結 果 は 、 木 炭 で は 1989 年 頃 を 、 鉄 塊 で は 1982-1983年 頃 を 示 して い る 。製 鉄 実 験 に 使 用 し た 木 炭 は 、10- 30年 も の の 松 材 を 伐 採 後 、 す ぐ に 製 炭 して お り、 14 C年 代 測 定 結 果 と比 較 し て も 、 矛 盾 の な い 結 果 が 得 られ た O 木 炭 の 歴 年 代 よ り鉄 塊 の 暦 年 代 の 方 が 古 い 年 代 を 示 して い る の は 、 木 炭 か ら測 定 試 料 を 採 っ た 位 置 が 、 伐 採 に よ り大 気 に 対 して 閉 鎖 系 が 形 成 さ れ た と き の 最 終 形 成 年 輪 で は な く 、1989年 頃 の 年 輪 の 位 置 か ら試 料 取 り を行 っ た 結 果 で あ り 、 ま た , . 鉄 塊 中 の 炭 素 は 、 10- 30年 も の の 木 炭 中 の 炭 素 が 燃 焼 す る こ と に よ り均 一 化 さ れ た 結 果 で あ る と考 え られ る 。 い ず れ に して も 、 こ れ ら の 結 果 か ら、 鉄 塊 中 の 炭 素 の 由 来 は 、 製 錬 の 際 に 用 い られ た 木 炭 で あ り 、 そ の 14 C年 代 は 、 木 炭 の 原 料 で あ る 樹 木 の 年 輪 形 成 時 期 に 由 来 し て お り 、 14 C 年 代 測 定 法 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 に は 有 効 性 が 認 め る こ とが で き る 。 I -88- 製 鉄 実 額 試 料 (砂 鉄 ) の 化 学 組 成 分 析 Tabl e l Chem i calcom posi ti on ofi ron-m anufacturi ng experi m ent(i ron sand) * 第一 鉄 試料 各 種別 ( F e O) ( T 全 o t 鉄 a F 一 分 e )( M 金e 属鉄 t a F 川 e c ) 酸化 薮化 ガ( u ンn マ oン ) チタン 二酸化 ( Ti O, ) 酸化 クロム ( Cr , 0. ) Tabl e2 第2 鉄 珪素 ( F e 1 01 ) 二較化 ( S i O l ) 薮化 硫 ( S 黄 ) 五穀化燐 ( P z O∼ ) * * * * ミニ ウム シウム ネ シウム カ リウム ( A J z O , ) 酸化アル 炭素 ( C) ( Ca O) 醗化 I ( Mg O) マグ 転化 カル ( C 鍋U ) 八 一 ナ ( ∨ シ ◆ )ウ ム * ( K z O) 酸化 造淳 成分 リウム ( Na 2 0) 穎化 ナ ト T 造薄成分 o t a JFe T o T t a i O J z F e 製 鉄 実 験 試 料 (鉄 塊 ) の 化 学 組 成 分 析 Chem i calcom posi ti on ofi ron-m anufacturi ng experi m ent(i ron l um p) 種別 試料名 C Si Mn S P Cu ¶ ∨ Nj Cr Zr (o ^ 6 ' ) Tabl e3 製 鉄 実験 に お け る放 射 性 炭 素 年 代 AMS 14c agesofi ron-m anufacturi ng experi m ent(i ronl um p andcharcoal ) sa- ・ e 6. 3 C( ‰) R〔 ( . 4C ,. 2C) 臥, 4 C,. 2 C) s T ) 荒尾市復 原実験 鉄塊 1 -23. 8±0. 1 1. 258±0. X) 8 ( -1 843±51 -26. 5±0. 1 1. 259±0. 013 ー1 848±81 -26. 7±0. 1 1. 170±0. 008 -1 260±53 鉄塊 2 木炭 - 89- , 4 ca Be( V,BP) Cdi b l r c a d t e A d D r Tl ge 3. 源 内 峠 遺 跡 出 土 鉄 塊 の -4 C年 代 測 定 2.の 結 果 か ら製 鉄 実 験 の 鉄 塊 に お い て 、14 C 年 代 測 定 法 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 の 有 効 性 が 認 め られ た の で 、 製 鉄 遺 跡 出 土 鉄 塊 に 対 し て も 、そ の 有 効 性 に つ い て 検 証 を行 っ た 。 3 - 1. 遺 跡 の 概 要 と 測 定 試 料 源 内 峠 遺 跡 は 、滋 賀 県 草 津 市 瀬 田 丘 陵 北 側 に 位 置 す る 製 鉄 遺 跡 で 、周 辺 に は 近 江 国 府 跡 や 木 瓜 原 遺 跡 。野 路 小 野 山 遺 跡 等 の 製 鉄 遺 跡 、 山 の 神 遺 跡 ・笠 山 遺 跡 等 の 窯 業 遺 跡 な ど 多 く の 遺 跡 が 集 中 して お り 、 律 令 期 (7世 紀 ∼ 9 世 紀 ) の 生 産 ・流 通 ・消 費 の 一 大 拠 点 の 一 つ で あ っ た こ と が 知 ら れ て い る 。 遺 跡 の 時 代 と し て は 、 出 土 し た 須 恵 器 か ら、 7世 紀 後 半 に 操 業 を 開 始 し 、 8世 紀 代 ま で 存 続 し た と考 え られ る 。 源 内 峠 遺 跡 出 土 の 鉄 塊 2点 と鉄 塊 中 の 錆 に 巻 き 込 ま れ て い た 木 炭 片 1点 (製 鉄 時 に 使 用 し た 木 炭 と考 え られ る ) を 加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る 14 C年 代 測 定 を 行 っ た 。 測 定 資 料 に 供 し た 鉄 塊 は 、 埋 没 中 に 表 面 が か な り錆 化 して い た た め 、 土 壌 等 に よ る 炭 素 汚 染 の 影 響 を 考 慮 し、鉄 塊 中 心 部 の 金 属 鉄 が 完 全 に 残 っ て い る 部 分 を 、 測 定 資 料 を と した 。 3 - 2. 結 果 と考 察 C年 代 測 定 結 果 を Tabl e 4 に 示 し た 。 14 C年 代 か ら暦 年 代 へ の 較 正 は 、 St ui v( ョ rand P( ∃arson( 1993) に よ り作 成 さ れ た 樹 輪 較 正 曲 線 を 用 い た。 鉄 塊 と木 炭 の Tabl e4 14 源 内峠 遺 跡 出 土 遺 物 の放 射 性 炭 素 年 代 AMS H c agesofarchael ogi caIremai nsatGennai tougesi tes (i ron 一 ump and charcoal ) s n 崇 e 源 内峠遺跡 鉄塊No. 1 源 内峠遺跡 鉄塊No. 2 源 内峠遺跡 鉄塊No. 2 よ りの木炭 AmS .= t p' E g, Yi e 誌g of cf 0 2 61 3 cl ‰】 芸 a B B p 3 ca■ i b l r c a a 7 e A d , r r ge 1. 06 6. 66 -27. 7±0. 1 1 495±157 41 4( 598) 673 2. 41 3. 51 -1 5. 0±0. 1 1 292±58 785 668( 709, 748, 754) 6. 76 1. 76 -25. 7±0. 1 1 288±83 663( 71 2, 746, 756) 823 838( ) 861 一一90- C 年 代 測 定 結 果 か ら、 鉄 塊 N0.2 とそ の 錆 中 の 木 炭 の 年 代 に 大 き く矛 盾 の な い 結 果 が 得 られ た こ の こ と か ら も 、鉄 塊 中 の 炭 素 の 由 来 は 製 錬 の 際 に この 14 。 C 年 代 測 定 を行 う に あ た り、 こ の よ う な 試 料 を 測 定 し 、鉄 塊 と木 炭 の 年 代 差 を検 用 い られ た 木 炭 で あ る と考 え て よ い と思 わ れ る 。 ま た 、製 鉄 遺 跡 に お け る 14 証 して 行 く こ と に よ り、測 定 結 果 の 信 頼 度 を 上 げ る こ とが 可 能 に な る と考 え ら れ る 。 ま た 若 干 、暦 年 代 の 幅 が あ る が 、 こ れ ら の 年 代 と 出 土 須 恵 器 の 形 式 か ら の 年 代 と も大 き く 矛 盾 の な い 結 果 が 得 られ た 。 以 上 の こ と よ り、 遺 跡 出 土 資 料 か ら も 、 14 C年 代 測 定 法 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 に は 有 効 性 が 認 め る こ とが で き た 。 4. 課 題 と展 望 今 回 は 、 14 C年 代 測 定 の 根 拠 と な る 前 提 条 件 の 検 証 を主 目 的 と し た た め 、 分 析 資 料 は 、 製 錬 工 程 で 得 られ た 資 料 を対 象 と した 。 そ の 結 果 、製 錬 遺 跡 出 土 の 鉄 塊 に つ い は 、 14 C 年 代 測 定 法 の 適 応 は 可 能 で あ っ た 。 しか し 、 今 後 、 鉄 製 品 C年 代 測 定 を行 っ て い く上 で は 、精 錬 鍛 冶 や 鍛 錬 鍛 冶 の 製 作 工 程 お け る 各 生 成 品 が 、各 工 程 の 違 い に よ り炭 素 履 歴 が ど の よ う に 影 響 を 受 け て い る か に つ い て も そ れ ぞ れ 検 証 して 行 く こ とが 重 要 な 課 題 で あ る つ ま り、鉄 製 品 の 製 作 工 程 内 に お け る 炭 素 の 履 歴 に は 、精 錬 鍛 冶 や 鍛 錬 鍛 冶 の 時 間 差 (製 錬 。精 錬 鍛 冶 ・鍛 錬 鍛 冶 の 工 程 を 一 連 の 流 れ の 中 で 製 品 を作 製 す 全般の 14 。 る 場 合 と 、あ る 工 程 間 で 鉄 素 材 の ま ま で あ る 程 度 の 時 間 を お い て 製 品 を 作 製 す る 場 合 ) や 空 間 差 (精 錬 ・製 錬 鍛 冶 ・鍛 錬 鍛 冶 を 同 一 の 場 所 で 行 う 場 合 と 、 各 工 程 毎 に 鉄 素 材 の 加 工 場 所 が 異 な る 場 合 ) を考 え て ゆ く必 要 が あ る に は 、各 製 作 工 程 に使 用 す る材 料 。 。 ま た 、更 特 に 、鍛 錬 鍛 冶 の 鍛 錬 課 程 に 用 い る 材 料 に 影 響 を 受 け 、製 品 の 表 面 と 中 心 部 で は 炭 素 の 履 歴 が 変 わ る 可 能 性 が あ る の で は な い か と考 え られ る 。 又 、 鉄 製 品 の 再 利 用 の 問 題 も考 慮 し な け れ ば な らな い 。 こ れ ら の 課 題 を 克 服 す る こ と に よ り、遺 跡 に お け る 絶 対 年 代 の 推 定 値 の 精 度 が 向 上 し 、 指 標 遺 物 を 出 土 しな い 製 鉄 遺 跡 の 年 代 を 明 らか に す る こ とが で き 、 ま た 、製 鉄 方 法 の 推 定 や 鍛 治 工 房 の 操 業 形 態 の 実 体 解 明 に 利 用 可 能 で あ る と考 え る 。 さ ら に 、考 古 学 に お け る 出 土 鉄 製 品 や 鉄 製 文 化 財 に 実 年 代 を 与 え る こ と が 可 能 と な り、 従 来 ま で の 様 式 や 形 式 に よ る 年 代 観 の 一 助 と な る 。 5. お わ Uに 加 速 器 質 量 分 析 計 を用 い た 14 C年 代 測 定 法 は 、鉄 製 品 の よ う な 炭 素 含 有 量 の 低 い 資 料 に も有 効 で あ り、古 代 の 製 鉄 方 法 (製 錬 ) に よ り得 られ た 鉄 塊 等 か ら 炭 素 を 汚 染 さ せ る こ と な く効 率 よ く高 純 度 で 回 収 し 、 14 C 年 代 測 定 を行 っ た と こ ろ 、測 定 結 果 は 使 用 前 の 木 炭 と ほ ぼ 同 一 の 年 代 を 示 し、炭 素 の 履 歴 は 、製 鉄 の 際 に 用 い られ た 木 炭 に 由 来 す る こ の 炭 素 の 年 代 は 、製 鉄 時 に 使 用 し た 木 材 の ー 91- 年 輪 形 成 時 期 に 由 来 して い る と考 え て 差 し支 え な く 、製 錬 過 程 で 使 用 さ れ た 木 炭 の 原 料 で あ る 樹 木 の 育 成 年 代 を 明 らか に す る こ と で 、鉄 製 品 の 製 錬 年 代 を 与 え る こ とが 可 能 で あ る。 4C 年 代 測 定 の 精 確 度 を 高 め る た め ・有 効 精 度 を 上 げ る た め 今 後 、鉄 製 品 の 1 に は 、 年 代 測 定 や 鉄 の 化 学 組 成 に 関 連 す る 自 然 科 学 (年 代 学 。分 析 化 学 ・金 属 学 な ど ) と鉄 製 品 の 背 景 を 考 察 す る 人 文 科 学 (考 古 学 ・歴 史 学 な ど ) と の さ ら な る 学 際 的 な 研 究 が 必 要 で あ る。 謝 辞 本 研 究 を 行 う に あ た り、 製 鉄 実 験 に 協 力 い た だ い た 刀 匠 松 永 源 六 郎 氏 と 、 測 定 資 料 と し て 遺 跡 出 土 鉄 塊 を 提 供 し て い た だ い た 滋 賀 県 教 育 委 員 会 ・ (財 ) 滋 賀 県 文 化 財 保 護 協 会 に深 く こ感 謝 い た し ま す 。 ま た 、化 学 組 成 分 析 及 び 顕 微 鏡 組 織 観 察 は 、 (柿 ) 九 州 テ ク ノ リサ ー チ ・大 揮 正 己 氏 に ご協 力 い た だ い た 。 本 稿 は 、 平 成 9・10 年 度 文 部 省 科 学 研 究 費 代 測 定 に 関 す る 基 礎 的 研 究 」 (研 究 代 表 者 基盤研究( C) ( 2)「古 代 鉄 製 品 年 山 田哲 也 課 題 番 号 09610421) の 成 果 の 一 部 を含 む 。 参考文献 吉 田邦 夫 ( 1992), 加 速 器 質 量 分 析 計 に よ る C-14年 代 測 定 , 国 立 歴 史 民 俗 博 物 館 研 究報告 第 38集 ,171-198. 太 田利 通 , 平沢政広 , 中村 俊 夫 ( 1994), 1 4C年 代 測 定 用 鉄 鋼 試 料 か ら の C 抽 出 法 , 名 Ⅴ), 178-183. 古屋大 学加速器 質量分析計業績報告書 ( 小 田寛 貴 ( 1994), 加 速器 質量分析計 による 1 4C/1 3C 比 測 定 に お け る 同 位 体 効 果 の 補正 , 名古屋大学 加速器質量分析計業績報告書 ( V), 244-251. 中村 俊 夫 ( 1996), 加速器質量分析法 による 1 4C年 代 測 定 の 現 状 と考 古 学 資 料 へ の 応 Ⅶ ) , 6-20. 用 , 名古屋大学加 速器質量分析計業績報告書 ( T. Nakamur a, M. Hi r asawa, z l ndK. I gaki (1995), AMSRadi ocar bonDat i ngofAnci ent Or i ent alI r onAr ti f actsatNagoyaUni versi t y,RadlocaI ・ bon, 37( 2),629-636. M. St ui ver, G. W. Per son( 1993), Hi gh-pr eci si on Bi decadal Car i br at i on of t he Radi ocar bonTi meScal e.AI )1950-500BCand2500-6000BC,Radl ' C ) Carbon, 35(i), 1-23. M. R. Manni ng, W. H. Mel hui sh(1994), At mospher i cA1 4 cRecor df r om Wel l i ngt on, Tr ends ′93,OakRi dgeNat i onalLab. ,193-202. 一 一92- AR01 砂鉄粒子 ( D∼⑧ ×100 白色粒子 :抄鉄鉱 ( Magneti t e:Fe203・ FeO) ㊨ ×400格子粒子 チタン鉄鉱 ( l J meni t e :FeO・ Ti Oz) 外観写真 ×1. 8 PHOTO. 1 砂鉄の顕微鏡組織 ( 荒尾市 関川、岩本橋周辺) Mi cr oscopJ COr gani zat i onofi r onsand - 93 - ARO2 鉄塊系遺物 ( ねずみ鋳鉄 ) ① ×100noet ch ②④⑥ 魯 ×100 ③⑤⑦⑨ ×400 黒 い片状 は黒鉛 素地はパーライ ト 白色部はセメタイ 外観写真 ×1. 2 PHOTO. 2 鉄塊の顕微鏡組織 Mi cr os copI COr gani zat i onofi r onl ump --94- Veri f i cat i onsof14c agemeas uri ngt heori esofi ronproduct sby an i ron一 manuf act uri ngexperi mentandvi e wst hrought heexperi ment Tet s uyan MADAl) , Tos hi oTSUKAMOTO l ) , Naot os hiONO 2), Hi rot akaODA 3) andTos hi oNAKANURA 3) 1) Ga ngouj iI ns t i t ut ef orRe s e a r c hofCul t ur a lPr ope r t y Ce nt e rofc ons e r va t i ons c i e nc e 2148 Mot oma t il koma ci t yNa r a6300257J APAN .0743746419, Fa x・ .0743730125 Te l' Ema i l:ghozon@kc n・ ne . j p 2) De pa r t me ntofMa t e r i a l sPr oc e s s i ngEngl ne e r i ng,Na goyaUni ve r s i t y goya4648602JAPAN Chi kus a,Na 3) Da t i nga ndMa t e r i a l sRe s e a r c hCe nt e r ,Na goyaUni ve r s i t y ,Na goya4648602JAPAN Chi kus a 7892578, Fa x:0527893095 Te l:052- Abst ract Cagemeas urementofananci enti ronpr oductareregar dedt oorl gl nat ei nannual 14 ri ngf or mat i vet i meoft het reeswhi ch i sraw mat eri aloft hecharcoalwhi ch t he car bonwhi chi si ncl udedi nani r onpr oducthadus edbyrefi ni ngproces s・14Cage meas urementus i nganaccel er at ormas ss pect romet er( AMS)i sut i l i zedbyt het hi ng whi chext ract scar bon by hi gh purl t y ef f i ci ent l yasan agemeas uri ng way ofan i ronproduct .But ,t heveri fi cat i ont heprecondi t i oni sri ghti snotper for med. I nordert overi f yt heprerequi s i t eef fi ci encywhi chbecomesfoundat i onof14Cage meas urement sof an anci enti ron product ,we wental ong i ron一 manuf act uri ng experi mentby an anci enti ron一 manufact uri ng wayJn t hatcase,We wental ong veri fi cat i on aboutprerequi s i t e ef fi ci ency i n ques t ofa cor rel at i on of 14c age meas uri ngres ul t soft hei ronl umpwhi chwasgotbyus i ngi r onS andandcharcoal . Moreover,l tWasuni t edand 14 C agesofexcavat i onr emai nsweremeas ured・ C agemeas ur ement susi ngAMSwasval i dont hedat awhosecar boncont entl i ke 14 ani ronpr oducti sl ow,Wi t houtt hefactt hatcar bnnwasmadet opol l ut ef rom t hei ron l umpcl as swhi ch wasgotbyanci enti ronmanufact uri ng way( r efi nement ),when - 95一 t hey went ,ameas ur i ng r es ul tr ecover si tby hi gh pur l t y ef f i ci ent l y and s howed charcoalbef or eus eandroughl yi dent i calage,1 tCOul dver i f y14 Cagemeas urement s asf oracareerofcar bonas i ar es ul tt oorl gl nat eOnt hechar coalwhi chus edatt he t i meofi ronmanuf act ure.Mor eover,byi ti st houghtt ] hatageofcar boni nt hei r on l umpwhi chwasdoner ef i nementor l gl nat eSi nanannualr i ngf or mat i vet i meoft he woodwhi chwasus edatt het i meofi ronmanufact ur eandi sJ uS t i f i abl eandcl ari f yi ng r eari ngageon t het r eeswhi ch i sr aw mat er i aloft hecharcoalwhi chwasus ed by ・ refi nementproces s,i twaspos s i bl et ogl Ver ef i nementageofani ronpr oduct 一 一96一